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|[[File:DB 120.2 120 201-9 Hamburg 7184.jpg|120px|電気車の例]][[File:Tep60 bogie.jpg|120px|動力を伝える台車]]<br />[[File:Fotothek df n-10 0000348.jpg|122px|機関士による制御]][[File:Speedmeter-3SL-2M-150P.jpg|118px|速度計]]
 
|}
 
'''電気車の速度制御'''(でんきしゃのそくどせいぎょ)は、[[電気機関車]]や[[電車]]など[[電気]]を動力とする[[鉄道車両]](電気車)を対象とした[[速度]]の制御方法である。本項では電気車に用いられる[[電動機]]の特性、および起動時や加速時の出力制御について、'''定トルク制御域'''、'''定出力制御域'''、'''特性領域'''と呼ばれる速度領域に分けて解説する。
 
 
 
== 概要 ==
 
<div style="float:right; width:300px; border: solid 1px gray; background:#f5faff; font-size:80%; padding:0.3em; margin:0.3em;">
 
<div style="text-align:center; background:#cedff2; font-size:120%;">'''基本用語'''</div>
 
* '''電気車''' - 電車や電気機関車など電気を動力として走行する車両。
 
* '''力行'''(りっこう) - 車両が駆動力を発して走行する状態。
 
* '''惰行'''(だこう) - 車両が惰性で走行する状態。
 
* '''[[電動機]]''' - いわゆる電気モーター。電力を回転運動に変換する原動機。
 
* '''[[トルク]]''' - 回転力とも。回転運動における力に相当。
 
* '''回転数''' - 回転速度。単位時間あたりの回転回数。
 
* '''出力''' - パワー・馬力とも呼ばれる[[仕事率]]。力×速度、あるいはトルク×回転数で表せる。
 
</div>
 
[[1879年]]、[[シーメンス]]([[ドイツ]])が[[電車]]の試験運行を実施して以来、[[電気]]を動力とした[[鉄道]]([[電気鉄道]])は発展を続け、現代では鉄道の主たる方式となっている。
 
 
 
一般的な電気車の構成は下図のとおりである。パンタグラフ等の[[集電装置]]によって外部より電力を取り入れ、[[運転席]]からの指令によって制御装置によって走行に適した電力に変換し、台車に装荷した[[電動機]]に電力が送られ、[[トルク]]すなわち回転力を発する。
 
[[ファイル:Electric motor car.png|left|350px|一般的な電気車の構成]]
 
{{clear}}
 
[[ファイル:Tractive effort curve.png|thumb|250px|牽引力と速度の関係]]
 
電動機から車輪に伝達されたトルクは牽引力となり、走行にともなって発生する[[列車抵抗]]を差し引くと、電気車の加速力が得られる(右図)。
 
 
 
電気車に特徴的であるのは、[[レシプロエンジン]]を搭載した鉄道車両や[[自動車]]のように複雑な[[トランスミッション|変速装置]]を持たないことである。すなわち[[歯数比|ギア比]]は固定であり、かつ[[トルクコンバータ]]や[[クラッチ]]などの機構を有することなく、始動から高速走行まで対応している。この実現のため、始動トルクが大きい電動機を採用したうえで、速度に応じて電動機を制御する。起動時から低速域では一定の大きなトルクを発し、中速域に達すると[[仕事率|出力]]を最大に保ったまま加速する制御が用いられている。
 
 
 
以下、電気車に用いられる電動機の特性について述べ、その代表例として[[直巻整流子電動機]]、[[かご形三相誘導電動機]]について解説する。さらに、電動機の特性や[[鉄道の電化|電化方式]]、技術の変遷によって分類されるさまざまな制御方式を、従来の[[抵抗制御]]・弱め界磁制御から最新の[[可変電圧可変周波数制御|インバータ制御]]に至るまでその機構について説明する。
 
 
 
== 電気車と電動機 ==
 
=== 電気車に求められる電動機特性 ===
 
鉄道車両は停止状態から高速域まで幅広い速度で走行し、[[線形 (路線)#勾配|勾配]]や牽引重量の変化により負荷が変動することから、電気車の動力源として電動機には次のような特性が求められる。
 
* 起動時のトルクが大きいこと。
 
* 速度の向上とともにトルクが減少していくこと。
 
* 幅広い速度域で性能を発揮でき、速度の制御が容易であること。
 
産業用の電動機、たとえば[[送風機]]や[[ポンプ]]は起動時の負荷が小さく、速度とともに負荷が上昇するものが多いが、鉄道車両は始動時に牽引重量や出発抵抗といった大きな負荷が作用するため、起動時に大きなトルクが必要である。
 
 
 
また、[[粘着式鉄道|一般の鉄道]]は、レールと車輪に生じる[[摩擦]]によって駆動力(トルク)を伝達する。これを[[粘着式鉄道|粘着]]と呼ぶが、鉄同士の小さな摩擦であることから、しばしば[[空転]]を引き起こす。ここで、電動機が速度の向上とともにトルクが減少する特性を持っていれば、空転を起した車輪は回転速度が急激に上がることでトルクを失い、再粘着して空転が収束しやすい。
 
 
 
このほか、負荷や電圧の変動に耐えられることや、複数の電動機を用いても負荷の不均衡が生じにくいことなどが必要とされる。
 
 
 
=== 直流整流子電動機 ===
 
<div style="float:right; width:300px; border: solid 1px gray; background:#f5faff; font-size:80%; padding:0.3em; margin:0.3em;">
 
<div style="text-align:center; background:#cedff2; font-size:120%;">'''直流と交流'''</div>
 
* '''[[直流]]''' - 流れる方向が変化しない電流。[[電池]]のようにプラス・マイナスの電源[[電極]]が定まっている。
 
* '''[[交流]]''' - 時間とともに流れる方向が変化する[[電流]]。家庭用のコンセントから得られる[[単相交流]]や、3系統からなる[[三相交流]]などがある。
 
</div>
 
[[ファイル:Electric motor 150px.gif|thumb|150px|整流子電動機の動作。外側に配置される界磁と、内側で回転する電機子による構成。手前は整流子とブラシ。]]
 
電動機は回転する軸を持つ'''回転子'''と、回転子との相互作用によりトルクを発生させる'''固定子'''から構成される。電気車には、回転子に'''電機子'''、固定子に'''界磁'''と呼ばれる[[電磁石]]をそれぞれ配置した[[直流整流子電動機]]([[電磁石界磁形整流子電動機]])が古くから用いられてきた。この電動機は、電機子の回転に応じて極性を変えるための[[整流子]]やブラシを必要とするが、始動トルクが大きい、速度制御が容易などの利点を持つ。
 
 
 
さらに直流整流子電動機は、界磁と電機子を並列に接続する[[分巻整流子電動機|分巻]]、直列に接続する[[直巻整流子電動機|直巻]]、これら双方を合わせ持つ[[複巻整流子電動機|複巻]]に分類され、下表のように特性が異なる。このほか界磁を別電源とする他励方式もあり、その特性は分巻に類似する。
 
 
 
{|class="wikitable" style="font-size:80%;text-align:center;"
 
|+ 直流整流子電動機の種類と特性
 
|-
 
|colspan="4"|[[ファイル:Serie Shunt Coumpound.png|300px]]<br />図中 -  M-電機子 ・ f-界磁
 
|-
 
!種別!!分巻電動機!!直巻電動機!!複巻電動機
 
|-
 
!界磁
 
|電機子と並列<br />(図-A)||電機子と直列<br />(図-B)||並列および直列<br />(図-C)
 
|-
 
!特性
 
|トルクは負荷電流に比例<br />定速度特性||始動トルク大<br />トルクは電流の2乗に比例<br />負荷に応じ速度変化||分巻と直巻の中間特性
 
|}
 
上記の中では、始動トルクが大きく速度変化の容易な'''直巻電動機'''が電気車の電動機として適しており、古くから使われている。また、界磁の制御がしやすい複巻電動機も、定速度制御や回生ブレーキを目的に採用されることがある。
 
 
 
[[ファイル:DC Series Motor T-n curve.png|thumb|160px|[[直巻整流子電動機]]における回転速度(横軸)と発生トルク(縦軸)の関係。]]
 
ここで、直巻電動機の特性について整理しておく。整流子電動機においてトルク(<math>T</math>)は、界磁による磁束(<math>\phi\,</math>)と電機子電流(<math>I_a\,</math>)の積に比例する。
 
*<math>T = k \cdot \phi \cdot I_a </math>
 
また、磁束は界磁電流(<math>I_f\,</math>)に比例し、直巻電動機では界磁電流と電機子電流が一致することから、磁束は電機子電流に比例する。したがって、直巻電動機のトルクは電機子電流の2乗に比例する。
 
*<math>\phi = k_1 \cdot I_f = k_1 \cdot I_a</math>
 
*<math>T = k \cdot \phi \cdot I_a = k_2 \cdot I_a^2</math>
 
(ここに<math>k , k_1 , k_2\,</math>は任意の定数)
 
 
 
一方、電動機は発電機と基本構造が同じであり、界磁の中で電機子が回転すると起電力が発生する。これは電動機に与える電圧と逆向きに作用するため、逆起電力と呼ばれる。逆起電力は回転数と磁束の積に比例して増加することから、回転数が上がると電機子電流が流れにくくなりトルクが低下する。
 
 
 
これらの結果をまとめると、直巻電動機の特性は、
 
* 電流は回転数に反比例する。
 
* トルクは回転数の2乗に反比例する。
 
となり、右図に示す性能曲線が得られ、[[#電気車に求められる電動機特性|電気車が求める特性]]に合致したものとなる。
 
 
 
=== 三相交流電動機 ===
 
<div style="float: right; width: 250px; border: solid 1px gray; background: #f5faff; font-size: 80%; padding: 0.3em; margin: 0.3em;">
 
<div style="text-align: center; background: #cedff2; font-size: 120%;">'''単相交流と三相交流'''</div>
 
* '''[[単相交流]]''' - 1系統の電線を流れる交流。家庭用電源や鉄道の[[交流電化]]に用いられる。
 
* '''[[三相交流]]''' - 波形の[[位相]]を120度ずらした3系統で構成される交流。
 
{| border="0" class="wikitable"
 
|- style="text-align:center;"
 
|[[ファイル:AC wave.gif|110px|単相交流]]
 
|[[ファイル:3phase AC wave.gif|110px|三相交流]]
 
|- style="text-align:center;"
 
|単相交流
 
|三相交流
 
|}
 
</div>
 
[[ファイル:Induction-motor-3a-partial-180px.gif|thumb|180px|かご形三相誘導電動機。<br />固定子に三相交流を流すと、誘導電流を生じた回転子が回転。]]
 
前項では直流電源による電動機について述べたが、さらに[[交流|交流電源]]を使用する電動機について解説を加える。
 
 
 
整流子電動機も交流電源で使用が可能であるが、交流電源には'''[[誘導電動機]]'''や'''[[同期電動機]]'''が一般に広く使われる。整流子電動機が整流子とブラシにより極性を変えて回転するのに対し、これらの電動機は電圧の向きが周期的に変化する交流電源に同期して回転するものである。
 
 
 
これらの電動機は回転速度が電源周波数に依存するため、細かな速度制御が難しく、鉄道車両のような使用速度域の広い電動機には不向きとされてきた。しかし、20世紀後半のパワーエレクトロニクスの発展によって、[[可変電圧可変周波数制御|電圧や周波数を自在に制御]]できる[[インバータ]]が開発されると、一気に電気車の電動機として採用が進んだ。
 
 
 
とりわけ電気車に採用が多いのは、'''[[かご形三相誘導電動機]]'''である。この電動機は三相交流を流す固定子と、かご形構造の回転子により構成される。固定子に電流を流すと、三相交流の波形に応じた回転磁界が発生し、かご形の回転子に誘導電流が流れて回転する仕組みである。整流子電動機とは異なり、回転子の誘導電流は回転磁界によって自然に生じるものであり、回転子へ電流を流すための整流子・ブラシを必要としないことから、小型・軽量化が図れるとともに高回転・高出力化も容易で保守性にも優れる。
 
 
 
かご形三相電動機のトルク(<math>T</math>)は、電源電圧(<math>V</math>)、電源周波数(<math>f_i</math>)、回転磁界の回転速度(<math>n_s </math>)、回転子の回転速度(<math>n_r </math>)と、
 
* <math>f_s = s \cdot f_i = (n_s - n_r) / n_s \cdot f_i</math>
 
* <math>T = k(V / f_i)^2 \cdot f_s</math>
 
の関係にある。ここに、<math>s</math>は[[同期速度#滑り|すべり]]、<math>f_s</math>はすべり周波数と呼ばれるもので、すべりは磁界と回転子の回転速度の差であり、回転子に自励電流を生じさせ誘導電動機にトルクを与えるものである。上式から、誘導電気の特性は、
 
* トルクは電圧の2乗に比例し、電源周波数の2乗に反比例する。
 
* トルクはすべり周波数に比例する。
 
* 電圧と周波数を比例させれば≡電圧/周波数を一定に加速すれば定トルクが得られる。
 
となり、ここで電源電圧およびすべり周波数を一定とすれば、直巻電動機と同様に『トルクが回転数の2乗に反比例』の特性が得られる。
 
 
 
このほか、インバータと組み合わせる三相交流電動機として、'''[[永久磁石同期電動機]] (PMSM)''' がある。回転子として永久磁石を用いたもので、誘導電動機に比べ損失が少なく、高い効率が得られることが特長である。また、熱の発生が小さいことから密閉構造とすることができ、騒音軽減や電動機内部への粉塵浸入の抑制も容易である。このような特長から、[[電気自動車]]や[[ハイブリッドカー]]ではPMSMの採用が目立っている。一方で、誘起電圧が発生することから場合によっては惰行時にもインバータによる制御が必要であったり、複数の電動機を同期させて制御するのが難しいなどの課題もある。
 
 
 
<!--
 
[[同期電動機]]の採用例を以下に挙げる。
 
* [[フランス国鉄]] [[TGV]] - [[電磁石同期電動機]]を採用していたが、新しいモデルでは[[かご形三相誘導電動機]]に替わっている。
 
* [[東京地下鉄]] [[営団02系電車|02系電車]] - [[営団01系電車|同01系電車]]での試験の後、02系の電機子チョッパ制御社を対象にPMSMを用いて更新改造を始めている。
 
* [[東日本旅客鉄道]] [[JR東日本E331系電車|E331系電車]] - [[JR東日本E993系電車|E993系電車]]で採用された駆動方式、[[ダイレクトドライブ]]との組み合わせで量産先行車として製造。
 
(以上4行、他の領域とは異質で均衡を欠くためコメントアウトし、実態記述に適切な[[可変電圧可変周波数制御#使用される電動機]]に移動)
 
-->
 
 
 
== 速度制御の基本 ==
 
=== 電気車における速度制御 ===
 
本来、速度制御とは電動機に与える特性値を調整して、負荷とつり合う回転速度を得ることを指す用語である。しかし、鉄道車両は負荷が大きく、目標とする速度に達するまで相応の時間を要することから、異なる手法が採られる。
 
 
 
一般に電気車では、各速度領域における可能な限りの出力を得て、目標となる速度までいち早く加速するよう制御する。目標速度に達すると、電動機の出力を切ってしまい('''ノッチオフ'''という)惰性で走行するか、もしくは出力を低減して速度を維持するといった手法が採られる。このように、電気車においては、出力の制御を行った結果として得られる速度を、慣例的に速度制御と呼んでいる。
 
 
 
{| class="wikitable" style="font-size:80%;text-align:center;"
 
|+ 電動機と電気車における速度制御の違い
 
!電動機の速度制御!!電気車の速度制御
 
|-
 
|電圧や界磁を制御<br />↓<br />負荷とつり合う速度で定回転||電圧や界磁を制御し<br />最大の加速力を得る<br />↓<br />目標の速度に達する<br />↓<br />加速を止め惰行運転<br />または定速度制御
 
|}
 
[[ファイル:DC Series Motor T-n curve-1.png|thumb|160px|図A - 速度制御の考え方<br />低速域ではトルクを抑え、高速域ではトルクを向上させる]]
 
[[ファイル:DC Series Motor T-n curve-2.png|thumb|160px|図B - 速度に応じて特性曲線(細線)を変え、太線に沿った制御を行う。]]
 
前述のとおり電気車の電動機は始動[[トルク]]が大きく、速度とともにトルクが低下する特性が求められる。しかしながら、このような特性の電動機は速度が低いほどトルクや電流が大きくなるため、低速度から所定の特性を発揮させると、[[粘着式鉄道|粘着力]]以上のトルクを発生して[[空転]]を起こしたり、過剰な[[電流]]が流れて電動機を焼損するといった問題を生じる。また、速度が上がるにつれて急速にトルクが低下するため、高速化の障害となりかねない。
 
 
 
そこで多くの場合、低速域では電流およびトルクを抑制して一定値に保ち、高速域ではトルクがあまり低下しないよう制御を行う。図Aはこの制御の考え方をグラフに示したものであり、回転数が低いときはトルクを抑えて'''''T1'''''に保ち、回転数が'''''V1'''''を越えると低下するトルクの向上を図る。これを実現するため、速度に応じて電圧や界磁等を変化させ、異なる特性曲線(図Bの細線)を得てトルクの制御を行う。
 
 
 
具体的な特性設計基準となる考え方としては、レールと車輪の粘着力限界を前提に、降雨など一般的悪条件で空転や滑走を起こさない範囲で加速・減速トルクを設定することが実用上の最大加速度、最大限速度を得る基本になる。
 
 
 
一般的には定加速、定減速制御と思われている応荷重装置も、動作の実態は粘着力限界内制御装置であり、軽荷重ではそれに応じてトルクを減じて、空転・滑走を起こさない限界内で動作させる装置である。この考え方だと直巻電動機である必要はなく、分巻電動機や誘導電動機、同期電動機を鉄道車両に使うことができる。
 
 
 
粘着力は速度が上がるに連れて減少するが、制御系に速度情報を取り込まないシステムでは速度'''''V1'''''以下が定トルクであるが、速度情報を取り込んで低速では大トルクとして引張力を上げることが可能で、近年の新幹線車両などは粘着力速度特性を想定して速度に応じてトルクを変えている。
 
 
 
以下、図Bを参照しながら速度域ごとに制御方法を概説する。
 
 
 
=== 定トルク制御 ===
 
起動時から低速域においては、必要とする以上のトルクを電動機が発生するため、電流を抑制して一定のトルクに保つ。主として電動機への電圧を変えることで制御する。起動時は電圧をごく低くしておき、図Bにおける左端の細線の特性を得る。速度が上がるとトルクは低下するため、これに合わせ徐々に電圧を上げていくと、特性曲線は順に右へ移動していき、'''トルクをほぼ一定'''に保つことができる。このとき、電動機の電流は一定に制御され、[[仕事率|出力]]は速度とともに増加する。この制御は電圧が最大となる回転数'''''V1'''''まで行う。
 
 
 
鉄道車両の走行抵抗は一般に小さく、低速領域では速度にかかわらず大きな変化はないことから、電動機の発生トルクが一定であれば、ほぼ一定の[[起動加速度|加速度]]が得られる。このことから、定トルク制御を行う速度領域を'''定加速度領域'''と呼ぶことがある。
 
 
 
=== 定出力制御 ===
 
電動機へ与える電圧(印加電圧)が最大となる(=回転数が'''''V1'''''に達する)と、そのままでは後述の[[#特性領域|特性領域]]として電動機の特性により速度反比例で電流が低下し、トルクが速度の2乗に反比例して急激に低下する。ここでさらに加速をしたい場合は、電圧制御以外の方法で電流やトルクの低下を抑制する制御方法が採られる。すなわち印加電圧はそのままに、最大電圧到達以降も一定電流で加速を続けると一定入力電力(=一定電圧×一定電流)となり、一定出力になる。これを'''定出力制御'''と呼ぶ。[[整流子電動機]]では[[電気車の速度制御#弱め界磁制御|界磁を弱める制御]]、[[誘導電動機]]ではすべり周波数を増やす制御を行って、その制御限界まで電流を一定に保つよう制御する。これにより、トルクは速度に反比例するようになり、速度の2乗に反比例する特性領域としてそのまま運転するよりもトルク低下を防いで加速力を確保できる。
 
 
 
定出力制御は必ず行われるものではなく、かつては弱界磁制御をしない車両が普通だったし、定トルク制御領域を広く取り、そのまま特性領域へ移行する方式もある。交流電化専用車両では[[変圧器]]次第で印加電圧の制御幅を広く採れるため、このようなケースがしばしば見られる。
 
 
 
=== 特性領域 ===
 
速度が上がり最大電圧に達すると(回転数'''''V1''''')、あるいは定出力制御が限界に達すると(回転数'''''V2''''')、これ以上の速度向上は電動機の特性に依存する。すなわち、速度に反比例して電流は低下し、トルクは速度の2乗に反比例して低下していく。
 
 
 
以下、表に各速度領域における速度上昇と印加電圧、電流、発生トルク、出力の関係について示す。
 
{| class="wikitable" style="font-size:80%;text-align:center;"
 
|+ 表 - 各速度領域における速度上昇と特性の関係
 
!rowspan="2"|速度領域!!定トルク制御域!!定出力制御域!!特性領域
 
|-
 
|起動から低速域||中速域||高速域
 
|-
 
!電圧
 
|<span style="color:blue;">▲</span>増加<br />速度に比例||一定(最大値)||一定(最大値)
 
|-
 
!電流
 
|一定||一定||<span style="color:orange;">▼</span>低下<br />速度に反比例
 
|-
 
!トルク
 
|一定||<span style="color:orange;">▼</span>低下<br />速度に反比例||<span style="color:red;">▼</span>急激に低下<br />速度の2乗に反比例
 
|-
 
!出力
 
|<span style="color:blue;">▲</span>増加<br />速度に比例||一定||<span style="color:orange;">▼</span>低下<br />速度に反比例
 
|}
 
 
 
== 速度やトルクを制御する方法 ==
 
=== 電動機の印加電圧を変える方法 ===
 
[[整流子電動機]]の速度制御にあたってもっとも効果的な方法は、電動機に作用する電圧(印加電圧)を変えることである。速度やトルクの制御が容易で、広い速度範囲を制御できるため、[[#定トルク制御|定トルク領域]]で用いられる。
 
 
 
下図は速度変化と電圧の制御について概念を示したものである。回転速度が低いときは逆起電力が小さく、高い電圧を電動機にかけると過大電流が流れることから、低い電圧で起動する(図中Step-1)。やがて回転速度が上がってくると、電機子の逆起電力が増加し、電機子電流が減少して発生[[トルク]]が下がってゆく(図中Step-2)。そこで印加電圧を上げ、電機子電流を確保する(図中Step-3)。この要領で速度の上昇とともに電圧を上げ、電機子電流とトルクを一定に保ちながら制御を行うのが、電圧による速度の制御である。
 
 
 
{| class="wikitable"
 
|+ 図解 - 速度の変化と電圧の制御
 
|- style="text-align:center;"
 
!step-1!!step-2!!step-3
 
|-
 
|[[ファイル:Armature voltage control-1.png|250px]]||[[ファイル:Armature voltage control-2.png|250px]]||[[ファイル:Armature voltage control-3.png|250px]]
 
|- style="font-size:0.8em;"
 
|style="width:250px;"|起動時。逆起電力が小さいので、印加電圧を低くして起動する。
 
|style="width:250px;"|回転速度が上がるにつれ、逆起電力が増加して電機子電流が減少する。
 
|style="width:250px;"|そこで、印加電圧を上げて、電機子電流を確保する。
 
|}
 
 
 
電圧を変えるには、簡便な手法からパワーエレクトロニクスを用いた手法まで、さまざまな手法が用いられてきた。以下にその方法を概説する。
 
 
 
; [[#抵抗制御|抵抗制御]]
 
: 電動機の始動時には[[抵抗器|始動抵抗]]を電動機と直列に配置し、過大電流を防ぐことがしばしば行われる。抵抗制御は始動抵抗を段階的に用意し、速度制御に応用したものである。簡便な方法であり、電気車の速度制御として古くから広く用いられている。一方で、抵抗による損失が避けられないこと、抵抗値を変える際(進段時)にショックが生じ、滑らかな加速ができないことが欠点として挙げられる。
 
; [[#直並列組合せ制御|直並列組合せ制御]]
 
: 複数の電動機の配列を、[[直列回路と並列回路|直列・並列]]に切り替えることによって、各電動機の印加電圧を変える方法である。細かな制御はできないが、抵抗制御と組み合わせることで、抵抗損失を減らしたり、制御段数を増やして進段時のショックを和らげる効果がある。
 
; 電圧制御
 
: 電源電圧を直接変化させる方法で、制御の応答が速く効率的であるが、直流電圧を制御するのは難しく、装置が大がかりで高価となりやすい。
 
: この方法は[[交流電化]]から発展が見られた。'''[[分巻整流子電動機#ワードレオナード方式|ワードレオナード制御]]'''は交流電源に[[電動発電機]]を組み合わせたもので、発電機の界磁制御によって出力電圧を制御する方式である。電圧を自在に制御でき、直流への整流も同時に行えるが、電動機や発電機が別途必要なことから、重量が大きく設備費が高額となることが欠点で、電気車において主たる方式とはならなかった。また、交流は変圧器を用いて電圧を簡単に変えることができることから、変圧器の巻数を可変として出力電圧を制御し、直流に整流する仕組みが'''[[#タップ制御|タップ制御]]'''である。さらに、整流器に制御電極を組み合わせると、連続的に電圧を変化できる'''位相制御'''が可能である。当初、[[水銀整流器]]が用いられ、その後シリコン整流器に制御電極を設けた[[サイリスタ]]の登場によって、無接点の'''[[#サイリスタによる連続位相制御|サイリスタ連続位相制御]]'''へと発展した。位相制御は交流波形の一部分を取り出し、パルス状の電源を得て平均電圧を制御するものである。
 
:一方、[[直流電化]]では、サイリスタを直流電源に適用した'''[[#電機子チョッパ制御|サイリスタチョッパ制御]]'''(電機子チョッパ制御)がある。直流電源に対し高速でスイッチオン・オフを行い、平均電圧を制御するもので、連続制御が可能となり、安定した回生ブレーキも得られる。このような方式を[[パルス変調|パルス幅変調(PWM)]]と言う。その一方、交流とは異なりスイッチをオフにするための機構が別途必要で、装置も高価であった。
 
{|class="wikitable" style="font-size:85%;"
 
|+ 電圧制御の方式
 
!方式!!ワードレオナード!!タップ制御!!位相制御!!チョッパ制御
 
|- style="text-align:center;"
 
!動作
 
|colspan="3" style="background-color:#fdd;"|交流→直流(可変電圧)・交流(可変電圧)
 
|style="background-color:#ddf;"|直流→直流(可変電圧)
 
|- style="text-align: center;"
 
!概念図
 
|[[ファイル:Voltage control-Ward-Leonard.png|150px|ワードレオナード方式]]
 
|[[ファイル:Voltage control-tap.png|150px|タップ制御]]
 
|[[ファイル:Voltage control-phase.png|150px|位相制御]]
 
|[[ファイル:Voltage control-chopper.png|150px|チョッパ制御]]
 
|-
 
!特徴
 
|style="width:11em;"|電動発電機を用いて、出力電圧を連続制御。
 
|style="width:11em;"|変圧器の巻線比率を変えて、出力電圧を制御。
 
|colspan="2" style="width:22em;"|スイッチング素子により、導通時間(電気を流す時間)を変え、平均電圧を連続制御。
 
|}
 
 
 
=== 界磁を制御する方法 ===
 
{{Vertical_images_list
 
|幅= 230px
 
| 1= DC motor field control-1.png
 
| 2= 界磁が強いとき。逆起電力が大きく、流れる電流は小さい。
 
| 3= DC motor field control-2.png
 
| 4= 界磁が弱いとき。逆起電力が小さくなり、たくさんの電流が流れる。
 
}}
 
整流子電動機に界磁調整器を取り付け、界磁の磁束を調整してトルクを制御する方法である。界磁の制御は、印加電圧を制御する方法に比べ効果は小さいが、電流の一部のみを扱うため装置が小型で費用も抑えられる。そこで、電圧による制御が限界に達した中速域から高速域において、加速特性の向上を目指した[[#定出力制御|定出力制御]]に広く用いられる。
 
 
 
さて、[[#直流整流子電動機|直流整流子電動機]]の節で前述のとおり、整流子電動機においてトルク(<math>T\,</math>)は界磁による磁束(<math>\phi\,</math>)と電機子電流(<math>I_a\,</math>)の積で表されることから、一見するとトルクは界磁に比例するように見える。
 
 
 
<math>T = k \cdot \phi \cdot I_a</math>
 
 
 
しかしながら実際には逆で、回転する電動機においてトルクは界磁の強さに反比例する特性を持つ。電機子が回転すると逆起電力を生じ、電機子電流が流れにくくなる。一方、逆起電力は回転数と界磁の強さに比例するため、界磁が強いと電機子電流は小さくなり、逆に界磁を弱めると多くの電流が流れるようになる。結果として、電機子電流が大きい後者の方が、トルクは大きくなる。このように、界磁を弱めることでトルクを増加させる方法を'''弱め界磁'''と呼ぶ。弱め界磁は中・高速域でのトルク特性の改善に用いられる。電圧の制御とは異なり、速度の上昇にともなうトルクの低下そのものは免れないものの、低下幅を抑制し、出力(=回転速度×トルク)を一定に保つことができる。
 
 
 
速度ともに上昇する逆起電力に着目し、電圧の制御と比較すると、
 
* 電圧の制御 - 逆起電力に合わせ印加電圧を制御する
 
* 界磁の制御 - 逆起電力そのものを制御する
 
このように言い換えられる。
 
 
 
この特性を活かし、複巻電動機を用いて界磁を制御すると[[定速運転]]が可能となる。これは、速度が上昇すると逆起電力を上げて速度を下げ、速度が下がりすぎると逆起電力を低下させて速度を上げる機構である。
 
 
 
このほか界磁の制御方法として、複巻電動機を用いた[[界磁チョッパ制御]]・[[界磁位相制御]]や、直巻電動機を対象とした[[界磁添加励磁制御]]などがある。これらは、比較的高価な[[チョッパ制御]]や[[サイリスタ位相制御|位相制御]]を、装置が小型で済む界磁制御に適用し、低コストで[[回生ブレーキ]]を可能としたものである。加速時の制御においては、弱め界磁と原理に大きな差はない。
 
 
 
=== 電圧と周波数を制御する方法 ===
 
[[ファイル:VVVF AC wave.gif|thumb|200px|インバータによる交流出力波形。低回転域では電圧と周波数を比例的に増加させ、高速域では周波数のみを増す。]]
 
回転子が電機子の回転磁界を追って回転する[[誘導電動機]]や[[同期電動機]]の速度を制御する場合は、その単体特性に従い印加電圧と[[周波数]]を比例的に変える必要がある(右図前半)。電動機の誘起起電圧にインピーダンス降下を加えた電圧を供給して任意速度での運転を行う。これは直流電動機の起動と同じであるが、交流だから周波数の一致と位相関係が問題になる。
 
 
 
初期の電気車では、機械的な回転変流器を車内に設置し、電圧・周波数を可変とした三相交流を作ることを試みたが、必ずしも成功とは言えず、広く普及するには至らなかった。
 
 
 
その後、パワーエレクトロニクスの進歩によりPWMを用いた[[インバータ]]が開発されると、無接点による[[VVVFインバータ制御|VVVF制御]](可変電圧可変周波数制御='''V/f一定制御''':V-f比例制御)が可能となり、旧来の整流子電動機を凌駕するようになった。
 
<!--
 
インバータを用いた制御では、定トルク領域において、電圧と周波数の双方を速度に応じて比例的に増していく(右図前半)。基本的にはこの電圧と周波数を比例させる制御('''V/f一定制御''')が主流であったが、近年では更に瞬時変化の過渡応答特性の改善のため'''ベクトル制御'''を加えている。電圧と周波数を比例させる制御を「可変電圧可変周波数」制御から直訳してVVVF制御と名付けて主に鉄道界で使われる呼称となった。これはインバータが最高出力電圧に達するまでは定電流制御でもあり定スベリ周波数制御でもある。
 
 
 
また、電圧が最大限に達して更に周波数のみを上げると、誘導電動機の場合では定電流制御のまま周波数を上げるとすべり周波数が増加するが、印加電圧と電流が一定だから一定入力となりトルクと速度が反比例する定出力特性となる。すべり周波数が上限近くに達した後、さらに周波数を上げると、スベリ周波数一定の特性領域となり、電源周波数のみを増加させ、電流と速度が反比例し、速度の2乗とトルクが反比例る特性となる(右図後半)。
 
 
 
同期電動機の場合は、スベリはゼロで、回転磁界と回転子磁界の遅れ角δの半角の正弦に比例したトルクを生ずる。最大電圧到達以降はそのままでは電動機誘起電圧が速度に比例して過電圧となり、その補償電流が流れて励磁を打ち消して平衡する。
 
 
 
日本の量産鉄道車両では誘導電動機ばかりだが、フランスのTGVでは同期電動機を使っている。
 
 
 
(起動から特性領域までの特性曲線は、抵抗制御やチョッパー制御の特性曲線に酷似している。スベリ周波数増加領域と弱界磁領域、および、双方の定トルク領域、特性領域が丁度対応する。鉄道では折れ点を合わせてVVVF制御車と抵抗制御車を併結運転している例もある)
 
-->
 
{{-}}
 
 
 
== 制御方式の変遷と各制御方式の詳説 ==
 
{{節スタブ}}
 
本節では、実際に用いられる代表的な制御方法を変遷とともに示し、各速度領域における制御の実際について述べる。まず、下表におもな速度制御の手法について、一覧を示した。速度制御の名称は特徴的な部分を抜き出したものとなっているが、実際は速度領域によって複数の制御方法を併用しているものがある。たとえば、界磁制御に特徴のあるものは、定トルク領域では大半が抵抗制御を採用している。
 
{| class="wikitable" style="font-size:80%;"
 
|+ 表 - おもな制御方式と各領域での実制御
 
|- style="text-align:center;"
 
!rowspan="2"|制御方式!!rowspan="2"|電化方式!!rowspan="2"|電動機!!colspan="2"|速度制御の方法!!rowspan="2"|回生ブレーキ!!rowspan="2"|摘要
 
|-
 
!定トルク制御域!!定出力制御域
 
|- style="text-align:center;"
 
!抵抗制御
 
|rowspan="4"|直流・(交流)*
 
|rowspan="2"|直巻
 
|抵抗制御(+組合せ制御)
 
|rowspan="2"|分流回路による弱め界磁
 
|style="background:#ccc;"|一般に不可
 
|rowspan="3"|
 
<!-- |style="text-align:left;"| -->
 
|- style="text-align:center;"
 
!チョッパ制御<br />(電機子チョッパ)
 
|チョッパ装置による電圧制御
 
|可
 
|- style="text-align:center;"
 
!他励界磁制御<br />界磁チョッパ制御
 
|複巻
 
|rowspan="2"|抵抗制御(+組合せ制御)
 
|分巻界磁の制御による弱め界磁
 
|可
 
|- style="text-align:center;"
 
!界磁添加励磁制御
 
|直巻
 
|位相制御電流の添加による弱め界磁(※)
 
|可
 
|style="text-align:left;"|※界磁の位相制御に別途三相交流電源が必要。
 
|- style="text-align:center;"
 
!タップ制御
 
|rowspan="3"|交流
 
|rowspan="3"|直巻
 
|変圧器のタップ切換による電圧制御
 
|rowspan="3"|分流回路による弱め界磁(※)
 
|style="background:#ccc;"|不可
 
|rowspan="3" style="text-align:left;"|※定トルク制御のみとする場合もあり。
 
|- style="text-align:center;"
 
!無電弧タップ切換
 
|タップ切換と位相制御併用による電圧制御
 
|rowspan="2"|可<br />(要サイリスタインバータ)
 
|- style="text-align:center;"
 
!サイリスタ位相制御
 
|位相制御による電圧制御
 
|- style="text-align:center;"
 
!VVVFインバータ制御
 
|直流・(交流)*
 
|IM<br />PMSM
 
|可変電圧可変周波数制御
 
|すべり周波数制御
 
|可
 
|
 
|}
 
<nowiki>*</nowiki>電化方式の『(交流)』は、交流でも可能であるが、いったん直流に整流してから制御するものを示す。
 
 
 
=== 古典的な直流電気車の制御 ===
 
{{Double image aside
 
|1= right
 
|2= Ernst Werner von Siemens.jpg
 
|3= 120
 
|4= Frank j. sprague.jpg
 
|5= 100
 
|6= ジーメンス(左)とスプレイグ(右)
 
}}
 
電気鉄道の始まりは[[ドイツ]]の電気技術者[[ヴェルナー・フォン・ジーメンス]]によるものであった。ジーメンスは[[1879年]][[ベルリン]]で開かれた商業博覧会で電気機関車の展示と電車の試験運行を実施し、その2年後の[[1881年]]、ベルリン・リヒターフェルデ間において路面電車の営業運転を開始した。この電車は小型の[[二軸車 (鉄道)|二軸車]]であり、2本の[[軌条|レール]]から直流電源を得て走行する方式であった。一方[[アメリカ合衆国|アメリカ]]では、電気駆動の父と呼ばれる[[フランク・スプレイグ]]が[[1888年]]に[[リッチモンド (バージニア州)]]で路面電車の運行を開始するとともに、架線集電や弱め界磁、[[総括制御]]といった直流電気車の基本システムを確立した。
 
 
 
この[[直流電化]]で直巻電動機を駆動する手法は、電圧の制御に損失が伴う課題を抱えているものの、変圧器や整流器が不要であり、構造が簡便かつ低コストで構成できる利点を有していた。このことから、さまざまな改良を加えながらも、基本のシステムはインバータ制御が普及する[[20世紀]]末まで広く用いられた。
 
 
 
==== 抵抗制御 ====
 
[[ファイル:Rheostatic control ja.gif|thumb|250px|抵抗制御の概念図。速度上昇とともに抵抗を減らし、電圧を上げていく。]]
 
[[ファイル:SC curve on rheostatic control.png|thumb|250px|抵抗制御における回転速度と電流の関係の例。1N(全抵抗状態)から5N(抵抗なし)まで赤線をたどって制御する。]]
 
古くから用いられてきた直流電気車の制御は、以下を基本とする。
 
{| class="wikitable" style="font-size:85%"
 
|-
 
!電化方式
 
|[[直流電化]](数百[[ボルト (単位)|ボルト]]から数千ボルト)
 
|-
 
!電動機
 
|[[直巻整流子電動機]]
 
|-
 
!定トルク制御
 
|抵抗制御・直並列組合せ制御
 
|-
 
!定出力制御
 
|弱め界磁制御
 
|}
 
ここで基本となるのは抵抗制御である。直巻整流子電動機は[[電流]]が回転速度に反比例することから、停止状態で電源電圧をそのまま作用させると、過大電流が流れ電動機を焼損したり、過大な[[トルク]]を発して車輪が[[空転]]を起こしてしまう。そこで、右図に示すように[[抵抗器]]を電動機と[[直列回路と並列回路|直列]]に配置して起動する。これによって電流は低く抑えられ、電源電圧は抵抗値に応じて電動機と抵抗器に分配される。起動時では、電動機の抵抗値に相当する逆起電力はほぼゼロであるため、電源電圧の大半は抵抗器に作用する。
 
 
 
やがて回転速度が上がってくると、電動機には印加電圧と逆向きの逆起電力が増加し、これにともなって電流が減少し発生トルクも下がっていく。ここで抵抗器の一部を短絡すると、電動機の印加電圧が上昇するとともに、電流とトルクが回復する。この要領で、回転速度に応じて電流が変化する電動機の特性に合わせ、段階的に抵抗を減らし、電流とトルクをほぼ一定に保つのが抵抗制御である。
 
 
 
抵抗値の切り替えを'''進段'''と呼び、機関車では[[機関士]]が[[電流計]]を見ながら手動で操作し、電車では制御装置が電流値を検出して自動進段する方法が主流である。このときの電流値を'''限流値'''という。また、抵抗器は電流を流すと熱を発するため、進段せずに電流を流し続けると過熱して損傷する。したがって、抵抗制御は速度を上げるための過渡的な制御であり、速やかに進段してすべての抵抗を短絡しなければならない。速度制限のある[[線形 (路線)#勾配|上り勾配]]など、進段途中の速度を維持したまま力行を行う場合は、運転士のノッチ操作により電源のオン・オフを繰り返す『ノコギリ運転』<ref group="註">ノコギリ運転 - 目標速度に達したところでノッチオフし、速度がある程度下がると再加速を行う運転方法。速度と時間をグラフにすると[[鋸|ノコギリ]]の歯のようなギザギザな線を描くことからこの名がある。特定の速度領域で連続力行できない場合に行う。</ref>を行う必要がある。
 
 
 
抵抗制御のひとつの問題として、段階制御であることが挙げられる。抵抗値の進段を行う瞬間に電流値が跳ね上がり、これにともなってトルクが急変する。抵抗制御の電気車が発車してしばらくの間、加速に段階的なショックを伴うのはこのためである。トルクの急変は乗り心地を損ねるばかりでなく、空転を引き起こす原因ともなることから、進段段数を多くして影響を抑えることが望ましい。図示の事例では4個の抵抗器を順に短絡する5段階の制御を示したが、抵抗値の異なる抵抗器を用意し、これらを組み合わせれば多段階の抵抗値が得られる。たとえば、抵抗値が異なる4組の抵抗器を用意すれば、理論上得られる抵抗値の[[2の冪|組み合わせ]]は16通りとなる。しかし、このような方法そのままではスイッチの開閉回数が極端に多くなり、また、各スイッチが電流を遮断する能力を持つ必要があるので、寿命的にもコスト的にも問題がある。さらに空転に対して条件の厳しい貨物用の[[電気機関車]]などでは、数段階の副抵抗器を別途用意し、進段時に小刻みな制御段を挿入して電流の微調整を可能とするものがあり、これを超多段制御、または[[ノギス]]の副尺([[バーニヤ]])に例えて'''[[バーニア制御|バーニア抵抗制御]]'''と呼ぶ。
 
 
 
==== 直並列組合せ制御 ====
 
{{Vertical_images_list
 
|1= resistor loss.png
 
|3= resistor loss half.png
 
|4= 抵抗損失<br />上段 - 組合せ制御なし<br />下段 - 組合せ制御あり
 
}}
 
抵抗制御におけるもう一つの問題として、抵抗損失がある。抵抗制御は電動機の印加電圧を抑えるため、余分となる電圧を抵抗器にかけ、電力の一部を熱として捨てる方法である。起動時は大半が抵抗器で消費され、進段にともなってその量は減っていくが、すべての抵抗を短絡するまでに消費する電力の半分が熱損失となってしまう(右図上段)。この損失は抵抗制御では避けられないが、これを低減する手法として'''組合せ制御'''の併用が一般に行われる。
 
 
 
一般に電気車では単一ではなく、複数の電動機が用いられる。組合せ制御は、これら複数の電動機配列を[[直列回路と並列回路|直列・並列]]に切り替えることで、個々の電動機への印加電圧を変えるものである。たとえば4個の電動機について考えてみると、4個直列の場合は電動機には電源電圧の4分の1しか作用しないが、そのうち2個づつを並列につなぎ替えると電源電圧の2分の1が電動機に作用する(下図左)。この特性を利用すると、起動時には直列として印加電圧を抑え、速度が上がった段階で並列に切り替え印加電圧を起動時の2倍にすることができる。
 
 
 
この方法は電動機個数の組合せに限りがあることから、2段階ないし3段階程度の大雑把な電圧制御しかできないが、抵抗制御と併用することで抵抗損失を減らすことができる。たとえば2段階の組合せ制御に対し、直列および並列でそれぞれ抵抗制御を行なうと、右図下段に示すように抵抗損失を半分にすることができる。さらに、制御段数も増やすことができ、進段時のショックを小さくする効果も得られる。
 
 
 
また、抵抗制御は抵抗器の過熱を避けるため進段途中の速度維持が制限されるが、組合せ制御を併用することによって、途中段階の速度維持が可能となる。下図右に示す直列最終段は抵抗器を使用しないため、連続使用が可能である。
 
 
 
{| class="wikitable" style="font-size:80%;"
 
|- style="text-align:center;"
 
|style="width:240px;"|[[ファイル:Serial para.png|230px|直列と並列]]<br />電源電圧 '''''E'''''<br />印加電圧 - 1/4E(直列)・1/2E(並列)
 
|style="width:260px;"|[[ファイル:SC curve on rheostatic control2.png|250px|抵抗制御と組合せ制御による速度と電流の関係]]
 
|- style="padding:5px;"
 
|style="width:240px;"|'''2段組合せ'''の例。上段直列、下段並列。<br />並列時は直列時の2倍の電圧が電動機に作用する。
 
|style="width:260px;"|抵抗制御と組合せ制御による速度と電流の関係。直列および並列最終段は、抵抗を用いないので連続使用が可能。
 
|}
 
 
 
==== 弱め界磁制御 ====
 
[[ファイル:WF t-n curve.png|thumb|180px|界磁を弱めると(青線)、回転速度nにおけるトルクはT1からT2に増加する。]]
 
抵抗制御・組合せ制御が最終段に達すると、電動機の印加電圧は最大となり、これ以上の電圧向上はできなくなる(下図step-1)。この状態で回転速度をさらに上げていくと逆起電力が増加し、回転速度に反比例して電機子電流(<math>I_a\,</math>)が低下する(下図step-2)。また、[[直巻整流子電動機|直巻電動機]]は[[電機子]]と[[界磁]]を直列としていることから、電機子電流がそのまま界磁電流となり、磁束(<math>\phi\,</math>)・電機子電流とも低下し、結果としてトルク(<math>T\,</math>)は回転数の2乗に反比例して急激に低下してしまう(右図赤線)。
 
 
 
<math>T = k \cdot \phi \cdot I_a</math>
 
 
 
ここでトルクの低下を抑制するには'''弱め界磁'''を用いる。下図step-3に示すように、界磁電流の一部を短絡したり別回路に流すことで界磁を弱めると、逆起電力が低下し電機子電流が回復する。このとき界磁磁束は小さくなるためトルクの低下は免れないものの、電機子電流を確保することで速度上昇にともなうトルクの低下幅を抑制できる(右図青線)。
 
 
 
界磁を弱める方法として、界磁の中間にタップを設けて界磁の一部を短絡する方法('''界磁タップ制御'''または'''部分界磁式''')や、界磁と並列に抵抗を配置して界磁電流の一部をバイパスさせる方法('''界磁分流制御'''または'''分路界磁式''')がある。いずれも段階的に界磁を制御する方法が採られ、ほぼ電機子電流が一定となるように制御する。これにより出力(=トルク×回転速度)を一定に保ったまま、加速することができる。界磁タップ制御は電動機の界磁巻線そのものにタップ端子を設ける必要があり、界磁磁束の制御段数も界磁分流制御ほど多くできないという欠点がある。
 
 
 
{| class="wikitable"
 
|+ 図解 - 弱め界磁制御
 
|- style="text-align:center;"
 
!step-1!!step-2!!step-3
 
|-
 
|[[ファイル:Field weakening control-1.png|230px]]||[[ファイル:Field weakening control-2.png|230px]]||[[ファイル:Field weakening control-3.png|230px]]
 
|- style="font-size: 0.8em;"
 
|style="width:230px;"|回転速度が上がり、印加電圧が最大となった状態。
 
|style="width:230px;"|さらに回転速度を上げると、逆起電力が上昇し電流が減少する。電圧はこれ以上上げられない。
 
|style="width:230px;"|界磁電流をの一部をバイパスして界磁を弱めると、逆起電力が低下し、電流が確保できる。
 
|}
 
 
 
弱め界磁は電圧を変えることなく中高速域のトルク特性を向上できるが、際限なく界磁を弱めていくと[[整流子機の電機子反作用|電機子反作用]]により磁束が乱れ、整流不良を起こしてしまうことから、一般に全界磁(弱め界磁を用いない状態)の35%程度にまで弱めることが限界とされる。さらに界磁を弱める場合は、電機子反作用を抑える補償巻線を界磁に付与することで25%程度まで可能となる。
 
 
 
また、弱め界磁はトルク向上の手段として用いられる以外に、逆にトルクを抑制する目的で使われる場合もある。逆起電力は回転速度に比例するため、回転速度がごく低い起動時はほとんど発生しない。したがって起動時に界磁を弱めた場合、逆起電力の影響はごく小さく、電機子電流はほとんど増加しない一方で、界磁磁束のみが小さくなることから、トルクは抑えられる方向へ作用する。この特性を利用して起動時のトルクを低く抑え、発車時の衝動を抑制する方式を'''弱め界磁起動'''と呼ぶ。
 
 
 
=== 交流電気車の制御 ===
 
{{Vertical_images_list
 
|幅= 180px
 
|枠幅= 190px
 
|画像1= Mh JB kleine scheidegg.jpeg
 
|説明1= 世界初の交流電化。スイスの[[ユングフラウ鉄道]]。
 
|画像2= Shinkansen-0 300 700.JPG
 
|説明2= 交流電化を採用する日本の[[新幹線]]。
 
}}
 
黎明期の電気鉄道は、市街電車や都市近郊路線など近距離運行の鉄道に用いられた。これらは[[直流電化]]によるものであったが、長距離路線の電化が計画されると[[交流]]方式が送電面で優位と考えられるようになり、19世紀末にはスイスで世界初の[[交流電化]]が行われている。その後国土の広いヨーロッパやアメリカを中心に採用されたほか、第二次世界大戦後は交流電気車技術の発展が進み、日本の[[新幹線]]も交流電化を採用している。
 
 
 
交流は直流に比べ電圧の制御が容易であり、高電圧を用いることで送電損失が小さく、変電所などの地上設備コストが低い利点を備えるほか、電気車の制御面においても低損失・粘着力向上などの利点を有している。
 
 
 
==== 交流電気車と電動機 ====
 
交流電気車は交流電化区間で走行する電気車を指すもので、必ずしも電動機として交流電動機を使用するわけではない。電化方式と電動機の組合せとして、次に示す方式がある。
 
; 三相交流を取り入れ、交流誘導電動機を駆動するもの。
 
: 初期の電化方式で用いられた方法。三相交流を用いることから電力設備・集電設備が複雑であり、誘導電動機の速度制御が難しかったことから、広く普及するには至らなかった。
 
; 単相交流を取り入れ、交流のまま整流子電動機を駆動するもの。
 
: 20世紀前半にアメリカやドイツで採用された方式。界磁に電磁石を用いた整流子電動機はユニバーサルモーターとも呼ばれ、直流だけでなく交流でも使用可能である。ただし、周波数の高い商用電力(50Hzや60Hz)では整流不良を起こすため、16 2/3Hz(16.7Hz、50Hzの3分の1)など特殊な周波数で電化が行われた。
 
; 単相交流を直流に変換し、整流子電動機を駆動するもの。
 
: [[1950年代]]に[[フランス]]を中心に実用化された方法。電気車に整流器を備え、取り入れた交流を直流に変換してから、直流整流子電動機を駆動する。電化には商用電力をそのまま使用でき、広く普及した。
 
; 単相交流をコンバータ・インバータにより三相交流に変換し、交流電動機(誘導電動機・同期電動機)を駆動するもの。
 
: 20世紀後半から用いられる現在の標準方式。[[可変電圧可変周波数制御]](VVVFインバータ)により、三相交流電動機を制御する方法。インバータの動作は直流電源を必要とするため、いったんコンバータにより直流に変換を行う。
 
 
 
ここでは主として、単相交流を直流に変換し、整流子電動機を駆動する電気車について述べる。交流電化では1万ボルト以上の高い[[電圧]]が用いられていることから、[[電動機]]に適した数百ボルトまで電圧を下げ、さらに直流電動機を駆動するため交流を直流に[[整流器|整流]]する必要がある。
 
 
 
{| class="wikitable" style="font-size:85%"
 
!電化方式
 
|[[交流電化]](1万数千[[ボルト (単位)|ボルト]]から数万ボルト)
 
|rowspan="5" style="text-align:center;"|[[ファイル:Tap and phase control.png|250px|交流電気車の電圧制御には、電圧を直接制御するタップ制御と、波形の一部を取り出す位相制御が用いられる]]<br />タップ制御と位相制御
 
|-
 
!電動機
 
|[[直巻整流子電動機]]
 
|-
 
!定トルク制御
 
|タップ制御・位相制御
 
|-
 
!定出力制御
 
|弱め界磁制御
 
|-
 
!特記事項
 
|変圧器による降圧・直流への[[整流器|整流]]が必要
 
|}
 
交流は[[変圧器]]を用いて電圧を簡単に変えられる特性を持っており、変圧器を可変として電圧を制御する'''タップ制御'''が利用できるほか、波形の一部を取り出し平均電圧を制御する'''位相制御'''も可能である。この二つの電圧制御は幅広い速度制御に応用でき、抵抗制御に代表される[[直流電化]]に比べ損失が少なく、[[粘着式鉄道|粘着性能]]においても有利である。
 
 
 
==== タップ制御 ====
 
{{Vertical_images_list
 
|幅= 250px
 
|1= High_voltage_tap_control.gif
 
|2= 高圧タップ制御の概念図。
 
|3= Low_voltage_tap_control.gif
 
|4= 低圧タップ制御の概念図。
 
|5= AC_DC_Rectifier.png
 
|6= 交流の直流(脈流)への整流と、波形の平滑化。
 
}}
 
変圧器は入力側の1次[[巻線]]と出力側の2次巻線から構成され、1次巻線に交流を流すと[[電磁誘導]]により2次巻線に電流が流れる仕組みである。2次巻線の出力電圧は1次巻線と2次巻線の巻数比率に比例することから、数万[[ボルト (単位)|ボルト]]に及ぶ架線電圧を巻線比率を調整することによって、電動機に適した[[電圧]](千数百 - 数百ボルト)に下げることができる。
 
 
 
ここで、巻線に[[タップ (変圧器)|タップ]]を設けて巻数を可変とすれば、タップの切り換えによって異なる出力電圧が得られる。これを電動機の電圧制御に応用したのが'''タップ制御'''である。高圧側に前置した単巻変圧器のタップで切り替えを行なってから降圧変圧器で降圧するものを'''高圧タップ制御'''、2次巻線に対して行なうものを'''低圧タップ制御'''と呼ぶ。高圧タップ制御はタップで扱う電流が小さく、切り替え段数が多く取れる利点を有しているが、[[:ファイル:High voltage tap control.gif|前置の単巻変圧器でタップ切換]]を行うため、変圧器が大型となり重量も増加する。このため、単巻変圧器と降圧変圧器の鉄心の一部(帰線磁路)を共用にして軽量化を図ったが、一見トランスの一次側をタップ切換するように見えて一部に誤解が拡がった。高圧タップ式では水銀整流器による整流をセンタータップ式回路にして、運転管理の必要な陰極を共通電位にして簡素化を図っても電圧切換は一組で済んだことで初期には主流だったが、大容量シリコン整流器の出現で、電圧切り替え機構が一組で済むブリッジ整流回路の採用が楽になり、以降は低圧側での制御が主流となった。右図中段は低圧タップ制御の事例である。電動機の回転速度に合わせタップを切り替え、電動機の印加電圧を制御する。
 
 
 
一方、変圧器のタップ制御で得られるのは交流であり、直巻電動機を駆動するためには、[[整流器]]を用いて[[直流]]に変換する必要がある。初期の交流電気車では'''[[水銀整流器]]'''が用いられた。水銀整流器は位相制御が可能であったが、振動対策や取り扱いが難しく、後に開発された[[半導体素子]]による'''シリコン整流器'''へ移行した。また、元々の交流は[[正弦波]]であり、整流器で得られる電流は周期的に波を持った[[脈流]]となることから、平滑回路を挿入してなだらかな直流とする(右図下段)。変圧器のタップ制御は、抵抗制御とは異なり損失がほとんどなく、電圧の制御幅も自由度が高いことが特長である。<!-- さらに、大型の磁気増幅器による位相制御が実現されてタップ間の連続的進段が可能になり、利用可能粘着力=牽引力が大きく採れた。←後に重複、∴削除 -->
 
 
 
ところで、"タップ制御車は空転に強い"という俗説がある。タップ制御では”電動機が並列に接続され抵抗がないため空転が収束しやすく再粘着性に優れる”などという解説が巷にあふれているが、これは全面的に正しいとは言い難い(少なくとも上記の「理由」は明確に間違いである)。[[空転]]が発生した場合、当然にモーターによる逆起電力が急増し、回路電流が減る。自動進段制御の場合はこれを補う制御が行われ(抵抗制御・直並列組合せ制御の場合は抵抗が抜かれ)トルクが戻り、ますます空転するというサイクルを繰り返す。進段をしなければ回路電流は減り続けやがて空転が収まるはずであるが、再粘着時に回転が減ることで逆起電力も減少するためモーターにかかる電圧を減じない限り再度空転するはずである。よって空転を起こさない程度まで回路電流を減らして(ノッチを戻して)維持しなければ空転は収まらず運転を継続できないが、抵抗制御の場合は抵抗がすべて抜けた直列、直並列、あるいは並列の最終段以外において[[抵抗器]]の[[熱容量]]による制限で連続運転ができない。
 
これに対し、印加電圧を直接制御するタップ制御では、どのノッチでも連続運転可能であるため、空転しない最大の出力をかけて運転することが容易である。この点はタップ制御(サイリスタ位相制御でも同様ではある)の利点であるが、空転検知能力がなく自動進段を備えたタップ制御車を仮定すると、上述の通り空転が始まった場合には自動進段の抵抗制御車同様収まる見込みはない。しかしながら、国鉄の製造した交流専用機関車は全車手動進段であるから、空転時に勝手に進段してしまうこともない。すなわち、空転に強いという理由の半分は手動進段であることに依っている訳である。
 
{{-}}
 
 
 
==== 位相制御と無電弧タップ切換 ====
 
{{Vertical_images_list
 
|幅= 250px
 
| 1= phase control ja.gif
 
| 2= 位相制御による電圧連続制御。制御極に信号電流(トリガ)を流すと整流器がオンになることを利用。
 
| 3= Arc less tap control.gif
 
| 4= [[サイリスタ]]による無電弧タップ制御。2組のサイリスタ (T1,T2) を用いて、タップ間の電圧を連続制御する。サイリスタのほか[[磁気増幅器]]でも可。
 
}}
 
[[#タップ制御|タップ制御]]は電力効率や再粘着性能に優れる一方で、有限個のタップ切換による段階制御であることから、抵抗制御と同様に切換時のトルク急変が伴い、[[空転]]そのものが発生しにくいわけではない。また、タップ切換時には大きな電流を切り入りするため、タップに[[電弧]](アーク放電)を生じやすく、変圧器を損傷しやすいリスクを抱えている。
 
 
 
これらの問題は、切り換えるタップの電圧差を連続的に制御して、トルクの急変や電弧発生を解消することで解決できる。これを電弧(アーク)が生じないことから'''無電弧タップ制御'''、または'''タップ間連続電圧制御'''と呼び、電圧の連続制御には'''[[サイリスタ位相制御|位相制御]]'''を用いる。整流器に制御極(ゲート)を設けると、特定のタイミングで整流器をオンにできる。この特性を利用し、交流電流の波形に合わせてオンするタイミングをずらすことにより、平均電圧を連続的に制御するのが位相制御の仕組みである(右上図)。
 
 
 
位相制御の歴史は比較的古く、[[1935年]]には[[水銀整流器]]による格子位相制御と[[#直並列組合せ制御|組合せ制御]]を併用した電気機関車が[[ドイツ]]で試作されている。その後、第二次世界大戦を挟んで、[[1950年代]]から交流電気車の技術開発が活発化し、水銀整流器によってタップ間の電圧を連続的に制御できる車両が開発される。この当時は、[[トランジスタ]]が発明され[[真空管]]に取って代わっていった時代であり、ほどなく水銀整流器も[[半導体素子]]であるシリコン整流器へと移行し、安定した性能が得られるようになった。その一方で、シリコン整流器は位相制御ができなかったため、無電弧タップ切換を行うには'''[[磁気増幅器]]'''の併用を必要とした。その後、制御極付きのシリコン整流器である'''[[サイリスタ]]'''が開発され、[[1960年代]]から電気車の位相制御に用いられるようになった。
 
 
 
右下図は、サイリスタを二組用いて'''無電弧低圧タップ切換'''を行う場合の概念を示したものである。1段目のタップを投入するとき、サイリスタT1を無点弧(出力ゼロ)の状態にしておくと、タップに電流が流れないためアークを生じない。次に、サイリスタT1によって位相制御を行い、1段目のタップ電圧をゼロから最大まで制御したのち、2段目のタップをサイリスタT2に投入し同様に連続位相制御を行う。サイリスタT2の電圧が最大に達すると、T1はすべてT2に包含され電流が流れなくなるため、1段目のタップを切ってもアークはやはり生じない。この要領で、二組のサイリスタを交互に用いることにより、タップ切換でアークを生じることなく連続的な電圧制御が可能となる。図の例ではサイリスタを用いたが、二組の磁気増幅器を用いても同様の制御が行える。
 
 
 
{{-}}
 
 
 
==== サイリスタによる連続位相制御 ====
 
{{Vertical_images_list
 
|幅= 250px
 
| 1= Thyristor phase control ja.png
 
| 3= Phase control by 4-thyristors.gif
 
| 4= サイリスタ連続位相制御(4分割、混合ブリッジ)の回路(上)と動作(下)。サイリスタT1からT4まで順に位相制御し、電圧を連続制御する。
 
| 5= JRQ783-main circuit.png
 
| 6= [[JR九州783系電車]]のサイリスタ連続位相制御(純ブリッジ)回路。界磁制御回路付き。
 
}}
 
サイリスタの開発によって小型軽量な半導体素子による連続電圧制御が可能となると、さらに考え方を一歩進めて、タップ切換器をなくしてしまうことが考えられた。タップ切換は機械的な[[開閉器|スイッチ]]によって行われるが、これをサイリスタに置き換えて完全な無接点化を実現し、機器構成の簡素化・軽量化や[[メンテナンス]]性の向上を図るものである。この方式を一般に'''サイリスタ連続位相制御'''、あるいは単に'''サイリスタ制御'''と呼ぶ。
 
 
 
右図はサイリスタ連続位相制御の構成を示したものである。[[変圧器]]の2次巻線を分割してそれぞれにサイリスタを配置し、[[ダイオード|ダイオードブリッジ]]を介して接続するダイオードブリッジに代え、サイリスタを順に位相制御すれば、右図下段のように出力電圧を連続的に変化させることができる。本方式において、サイリスタは分割された2次側出力の位相制御を行うとともに、タップスイッチの役目も兼ねており、故障の原因となりやすい機械的なスイッチをまったく用いないことが特長である。図は4分割の事例を示したが、容量に応じて6分割としたり、出力の小さい[[電車]]では[[国鉄711系電車|2分割の例]]もある。
 
 
 
また、サイリスタを用いた交流電気車は制御回路を逆にして、比較的簡単に[[回生ブレーキ|電力回生ブレーキ]]が使用できる。[[整流子電動機]]を直流発電機として用い、サイリスタブリッジで[[インバータ]]回路を構成して、得られた交流電力を[[架線]]に戻すものである。回生ブレーキを使用する構成の場合、主回路とは別に界磁用の位相制御回路を組み、[[分巻整流子電動機|分巻電動機]]を用いて界磁を他励とすることがある。電機子電流とは別に、界磁を連続制御することによって、安定した回生ブレーキや勾配抑速ブレーキにおける定速制御を実現している。
 
 
 
サイリスタ制御は優れた特性を持つ一方、位相制御は滑らかな[[正弦波]](サインカーブ)を途中でカットする方法であり、出力電圧が不連続で乱れたものとなる。これによって交流電源の[[周波数]]とは異なる[[高調波]]を生じ、[[変電所]]や[[信号保安|信号設備]]などの地上設備に有害な[[誘導障害]]を引き起こすことがある。位相制御を行う無電弧タップ切換も同様であるが、タップ段数に比べてサイリスタ制御の2次巻線分割数は少なく、波形の乱れが大きい後者の問題はとりわけ顕著である。これを防止するため、車両や地上設備にフィルタを設けるなどの処置を必要とする。
 
 
 
またブリッジ(整流回路)にはサイリスタとダイオードで構成された'''サイリスタ・ダイオード混合ブリッジ'''と、ブリッジがすべてサイリスタで構成された'''サイリスタ純ブリッジ'''とがあり、後者は位相制御と整流をまとめて行う方式であり、'''純サイリスタ制御'''とも呼ばれる<ref group="註">{{Cite book|和書|title=電気鉄道技術入門|year=2008|publisher=[[オーム社]]|pages=p.65-p.67|id= ISBN 9784274501920}}</ref>。
 
{{-}}
 
 
 
==== 交流電気車と弱め界磁の組合せ ====
 
[[ファイル:AC-DC t-n curve.png|thumb|250px|直流電気車と交流電気車の速度-牽引力特性の例]]
 
[[#抵抗制御|抵抗制御]]を用いた直流電気車では印加電圧が最大に達すると[[#弱め界磁制御|弱め界磁制御]]により中高速域のトルク特性を改善するが、同様に直流整流子電動機を用いる交流電気車でも弱め界磁を用いることは可能である。しかしながら、電源電圧と電動機個数の組合せで最大印加電圧が決定する直流電気車とは異なり、交流電気車では変圧器の設定で幅広い電圧制御が可能であることから、必ずしも弱め界磁を必要としない場合がある。
 
 
 
右図は、抵抗制御と弱め界磁制御を用いた直流電気車(青線)と、交流電気車(赤線)の速度と牽引力の関係を示した事例である。一般に直流電気車は[[#定トルク制御|定トルク領域]](抵抗制御)が低い速度で頭打ちとなり、弱め界磁により[[#定出力制御|定出力制御]]を行って中高速域のトルク特性を補うのに対し、交流電気車では比較的高い速度まで定トルク(電圧制御)で制御できる。したがって、とくに弱め界磁を利用しなくても、あるいはわずかに界磁を弱めるだけで十分な高速性能が得られる。初代[[新幹線]]車両である[[新幹線0系電車|0系]]は定トルク領域を167km/hの高速度まで設定し、弱め界磁を用いない設計であった。一方、さらなる高速性能を確保したい場合は、弱め界磁の併用も有効である<ref group="註">新幹線0系電車の後継である[[新幹線100系電車|100系]]も同様に弱め界磁を用いない設計であったが、270km/h運行を目指した[[グランドひかり]]編成(100N系)では高速性能向上のため80%の弱め界磁を追加した。</ref>。
 
 
 
=== 直流電気車へのサイリスタの適用 ===
 
[[ファイル:Phase and chopper control.png|300px|thumb|位相制御(左)と'''チョッパ制御'''(右)]]
 
[[サイリスタ]]の登場は、直流電気車ではこれまで一般に不可能であった、連続電圧制御による粘着力特性の改善や低損失、無接点化、また安定した回生ブレーキの使用を可能とした。本節では、サイリスタに代表される半導体素子を直流電気車の速度制御に適用した事例について述べる。
 
 
 
直流電気車に対し主として用いられる制御方式が[[チョッパ制御]]である。これはサイリスタのスイッチング作用を直流電源に適用したもので、交流電気車における位相制御と同様に、連続的にかつ無接点で電圧制御を行うことが可能である。また、直流電気車においても、容量は小さいながら制御用の交流電源を有しており、これを位相制御することによって界磁を制御し、速度制御や回生ブレーキに応用する方式も用いられる。
 
 
 
{| class="wikitable" style="font-size:85%; text-align:center;"
 
!電化方式
 
|colspan="5"|[[直流電化]] (数百[[ボルト (単位)|ボルト]]から数千ボルト)
 
|-
 
!制御方式
 
!style="font-weight:normal;"|電機子チョッパ制御
 
!style="font-weight:normal;"|界磁チョッパ制御
 
!style="font-weight:normal;"|界磁位相制御
 
!style="font-weight:normal;"|界磁添加励磁制御
 
!style="font-weight:normal;"|高周波分巻チョッパ
 
|-
 
!電動機
 
|[[直巻整流子電動機|直巻電動機]]
 
|colspan="2"|[[複巻整流子電動機|複巻電動機]]
 
|直巻電動機
 
|[[分巻整流子電動機|分巻電動機]]
 
|-
 
!定トルク制御
 
|チョッパ制御
 
|colspan="3"|抵抗制御・直並列組合せ制御
 
|チョッパ制御
 
|-
 
!定出力制御
 
|弱め界磁制御
 
|界磁チョッパ制御
 
|colspan="2"|界磁の位相制御
 
|界磁チョッパ制御
 
|}
 
 
 
==== チョッパ制御の仕組み ====
 
[[ファイル:Step-down chopper for electric cars.gif|thumb|250px|チョッパ制御の概念。高速でスイッチのオンオフを行い、オン時間の長さで平均電圧を制御。]]
 
チョッパとは『切り刻む』ことを意味する''chop''に由来し、電流を切り刻むことによって電圧制御を行う方法である。右図は'''降圧チョッパ'''の概念を示したもので、一定の電圧で供給される直流電源に対し、高速でスイッチのオン・オフを行い、[[デューティ比|スイッチオンとオフの時間比率]]を変えることによって、任意の電圧に落とすことができる。すなわち、オンの時間を短く取れば平均電圧は低くなり、逆にオンの時間を長くすると高い平均電圧が得られる。このように一定の周期の中で、オンオフの時間を変えて電圧を制御する方法を、[[パルス幅変調]] (PWM) と言う。
 
 
 
ここでスイッチの役目を果たすのが、サイリスタをはじめとする[[半導体素子]]であり、無接点で高速なスイッチングを行う。チョッパ制御は、交流における[[サイリスタ位相制御|位相制御]]と同様の作用を持ち、電圧を連続的に制御できる利点を有している。
 
 
 
その一方で、サイリスタはスイッチオンの動作のみを持ち、電流がゼロになるまでスイッチオンを維持する特性がある。交流を用いた位相制御では周期的に電流がゼロになることから、自然にスイッチがオフとなるのに対し、直流を用いるチョッパ制御では強制的にスイッチオフとするための回路が別途必要となる。このため、大電流を扱うチョッパ装置は、回路構成が複雑で高価なものとなりがちであった。後にPWMを行う素子として登場した[[ゲートターンオフサイリスタ|GTOサイリスタ]]や[[絶縁ゲートバイポーラトランジスタ|IGBT]]は、スイッチオンに加え[[自己消弧素子|スイッチオフの動作も合わせ持つ半導体素子]]である。
 
 
 
==== 電機子チョッパ制御 ====
 
{{Vertical_images_list
 
|幅= 250px
 
|枠幅=
 
|画像1= Armature chopper control.png
 
|説明1= 電機子チョッパ制御の力行時回路。
 
|画像2= Armature chopper control-R.png
 
|説明2= 同回生ブレーキ時。回路を昇圧チョッパに組み替える。
 
}}
 
[[電機子チョッパ制御]]は主回路にチョッパ制御を適用したもので、電機子電流の電圧制御をチョッパで行う方式である。旧来[[#抵抗制御|抵抗制御]]や[[#直並列組合せ制御|直並列組合せ制御]]により行っていた、電動機への印加電圧の制御を'''降圧チョッパ'''に置き換え、連続的に電圧を制御するものである。抵抗を用いないことから損失が小さく、電圧を連続的に制御できるため空転を起こしにくく、[[粘着式鉄道|粘着性能]]に優れる。
 
 
 
また、電機子チョッパ制御では[[回生ブレーキ]]を有効に利用できる利点を有している。回生ブレーキは電動機をブレーキ時に発電機として利用し、得られた電力を電車線([[架線]]等)に返還するブレーキ方式であり、回生電圧は架線電圧を上回る必要がある。[[直巻整流子電動機]]の[[起電力]]は回転速度に比例するため、回転速度が低いときは十分な電圧が得られず、旧来の抵抗制御等による方法では広い速度域で回生ブレーキを利用することが困難であった。これに対し電機子チョッパ制御では、力行時の降圧チョッパ回路を、低い電圧を高くする'''昇圧チョッパ'''に組み替えることが可能であり、低速時の起電力が低い場合でも電圧を上げて架線に戻すことが可能となった。
 
 
 
一方で、電機子チョッパは、[[パワーエレクトロニクス]]が発展途上にあった[[1960年代]]から[[1970年代]]に実用化されたため、
 
* 電機子を流れる大きな電流を制御することから、装置が大がかりで導入コストが高い。
 
* [[#サイリスタによる連続位相制御|位相制御]]と同様、高調波を生じ誘導障害を引き起こすことがある。
 
などの問題も有していた。
 
 
 
また、昇圧チョッパの利用によって低速域まで回生ブレーキが使用できる反面、高速域では電動機の起電力が架線の電圧を大きく超え、回生ブレーキの使用が難しくなる問題も抱えていた。このため、電機子チョッパ制御では一般に[[#直並列組合せ制御|直並列組合せ制御]]を行わないが、高すぎる回生電圧を制御するためにブレーキ時に直並列の組み替えを行う車両もある。
 
 
 
このように、本方式は粘着性能に優れ、抵抗損失を生じない一方で、高速域の回生ブレーキに難のある方式であった。このため、高速運転は行わないが、高い加速度(高い粘着性能)を必要とし、トンネル内の温度上昇を抑制する必要のあった[[地下鉄道|地下鉄]]車両にしばしば用いられた。
 
 
 
==== 界磁制御への適用 ====
 
<div style="float:right; width:250px; border: solid 1px gray; background:#f5faff; font-size:80%; padding:0.3em; margin:0.3em;">
 
<div style="text-align: center; font-size: 120%;">'''界磁制御方式の特徴'''</div>
 
<div style="text-align: center; background: #cedff2; font-size: 120%;">利点</div>
 
* 回生ブレーキ利用が可能。
 
* 定速制御が可能。
 
* 導入コストが比較的低い。
 
* 高調波や励磁音の発生が小さい。
 
<div style="text-align: center; background: #cedff2; font-size: 120%;">欠点</div>
 
* 抵抗制御が基本のため抵抗損失があり、粘着性能に劣る。
 
* 停止までの回生ブレーキが不可(打ち切り)。
 
<hr />
 
<div style="text-align: center;">(電機子チョッパとの比較)</div>
 
</div>
 
主回路にチョッパ制御を適用した[[#電機子チョッパ制御|電機子チョッパ制御]]は、直流電気車の性能に変革をもたらしたが、大電流を扱う制御装置が高価なことが問題であった。そこで、主回路よりも扱う電流の小さい界磁調整器に対し、サイリスタ等の半導体素子を適用する方式が開発された。すなわち、起動時における定トルク制御は旧来の[[#抵抗制御|抵抗制御]]を踏襲してコストを抑える一方、弱め界磁制御やブレーキ時において界磁を積極的に制御し、幅広い速度域での[[回生ブレーキ]]の使用や[[定速運転|定速度制御]]を可能とするものである。
 
 
 
さて、回生ブレーキを扱う場合、電動機が発する電圧が低いと回生電力を架線に戻すことができず、高すぎる電圧は電力施設を損傷してしまう。このため、電動機の発する電圧を一定の幅に制御しなくてはならない。電動機から得られる電圧(<math>E\,</math>)は、界磁磁束(<math>\phi\,</math>)および回転数(<math>n\,</math>)と以下の関係にある。
 
 
 
<math>E = k \cdot \phi \cdot n</math>
 
 
 
すなわち、回生電圧は界磁の強さ(界磁磁束)と速度(回転数)に比例するため、速度が落ちるにつれて回生電圧は低下してやがて失効する。電機子チョッパでは低下した電圧を昇圧チョッパによって高めることで、低い速度での回生ブレーキに対応していた。これに対し界磁を制御する方法では、回転数(<math>n\,</math>)の変化に合わせて、界磁磁束(<math>\phi</math>)を変えることで回生ブレーキを実現する。つまり、速度が高いときは界磁を弱め、速度が低くなると界磁を強めて、幅広い速度域で一定幅の電圧を得る。ただし、界磁の制御だけでは限界があり、ある速度(一般に15km/hから30km/h程度)を下回ると十分な回生電圧が得られなくなり、空気ブレーキ等に切り替えられる。
 
 
 
界磁を自由に変化させるには、電機子と界磁が直列の[[直巻整流子電動機|直巻電動機]]よりも、電機子と界磁が独立した[[分巻整流子電動機|分巻電動機]]が適している。その一方で、起動から力行にいたる速度制御には直巻電動機が適しているため、直巻と分巻の特性を合わせ持つ[[複巻整流子電動機|複巻電動機]]を用いたり、力行時と回生時で界磁の特性を直巻・分巻に使い分ける制御などが行われる。また直巻電動機の界磁を別電源で駆動・制御すれば電気的には分巻特性に当たり、全電圧を印加する元々の分巻コイルよりもインダクタンスが桁外れに低く、時定数が小さくなるので制御系としては高速応答になり安定動作となる。
 
 
 
代表的な方式として、次の3方式が挙げられる。これらの方式は抵抗制御を基本とするため抵抗損失は避けられないが、安価に回生ブレーキを実現できるため、多くの電車に採用された。
 
[[ファイル:Separately field control.png|thumb|250px|界磁位相制御]]
 
[[ファイル:Field chopper control.png|thumb|250px|界磁チョッパ制御]]
 
 
 
; [[界磁位相制御]]
 
: 電動機として直巻界磁と分巻界磁の二つを持つ複巻電動機<ref group="註">一部には直巻電動機を使用する界磁位相制御方式もある。</ref>を使用し、分巻界磁は補助電源によって他励方式とするのが特徴である。このため'''他励界磁制御'''とも呼ばれる。補助電源は、制御機器の動作や[[空気調和設備|空調機器]]などに使われるもので、直流電気車であっても一般に三相交流で供給される。この三相交流電源を励磁装置によって[[サイリスタ位相制御|位相制御]]することにより、分巻界磁の連続制御を行う。
 
: 励磁装置には一般にサイリスタ等が用いられるが、これら半導体素子の登場以前にも[[磁気増幅器]]で位相制御し、本方式を採用した事例もある。
 
; [[界磁チョッパ制御]]
 
: 界磁位相制御と同様に複巻電動機を用いるが、本方式は分巻界磁を直巻界磁と並列に配置する。分巻界磁を流れる直流電流を[[チョッパ制御]]することで、界磁の連続制御を行う方式である。他の方式と同様、抵抗制御で起動し、界磁の連続制御は弱め界磁制御や回生ブレーキ時に用いられる。
 
: チョッパ制御登場以前に、可変抵抗により分巻界磁の界磁調整を行う方式が存在し、本方式はこれを[[電力用半導体素子]]に置き換えたものと言える。旧来の界磁調整器に比べ保守性・応答性の面で有利であり、電機子チョッパに比べても回路が安価であったことから、多数の採用例がある。
 
: 一方、複巻電動機は構造が複雑で、負荷や架線電圧の変動に弱く、保守に手間がかかるという難点を合わせ持っていた。
 
; [[界磁添加励磁制御]]
 
: 他の方式と異なり、コスト・保守面で有利な直巻電動機を用いることが特徴である。直巻界磁に分流回路を設けるとともに、補助電源による励磁装置から直巻界磁に電流を添加して界磁の連続制御を行う。励磁装置は、一般に三相交流の補助電源を位相制御するが、直流の補助電源から[[インバータ#電力変換系のインバータ回路|DC-DCコンバータ]]として動作する形式もある。
 
: 力行時は抵抗制御により起動し、弱め界磁制御域に達すると誘導コイルに電流を分流させるとともに、励磁装置から分流回路とは逆向きの電流を添加する。この電流を徐々に弱めていくと直巻界磁の電流が減少し、連続的な弱め界磁制御を行うことができる。
 
: 一方、回生ブレーキ時においては、バイパスダイオードによって電機子電流はすべて誘導コイルに流れる。直巻界磁には励磁装置からの電流のみが流れ、直巻電動機でありながら非常に高速応答の界磁を持つ分巻電動機として制御でき、幅広い速度での安定した回生ブレーキを可能にしている。
 
{{Triple image
 
|1= center
 
|2= Field added excitation control-1.png
 
|3= 250
 
|4= Field added excitation control-2 250px.gif
 
|5= 250
 
|6= Field added excitation control-3 250px.gif
 
|7= 250
 
|8= 界磁添加励磁制御の概念図。<br />力行(全界磁)。抵抗制御で起動する。
 
|9= 力行(弱め界磁)。速度が上昇すると添加電流を連続制御して弱め界磁を行う。
 
|10= 回生ブレーキ。速度の変化に合わせて界磁を連続制御する。
 
}}
 
[[#電機子チョッパ制御|電機子チョッパ制御]]が地下鉄を中心に用いられたのに対し、これらの手法は高速運転を行う郊外電車や優等列車に用いられた。高速電車においては、界磁制御領域が広いため抵抗損失の影響は軽微である一方、回生電力は速度の二乗に比例するため、高速域での回生ブレーキ性能に優れる本方式が一般に有利となる。
 
 
 
=== VVVFインバータ制御 ===
 
交流電動機を、その特性に合わせて任意の速度、回転数で動作させるために、(静止)インバータにより任意の周波数と電圧を発生させる方式を一般に「[[インバータ]]方式」というが、鉄道関係ではそれを「電圧-周波数比例制御」として特に「[[VVVFインバータ制御|VVVFインバータ方式]]」、あるいは「VVVF方式=[[可変電圧可変周波数制御]]方式」と呼んでいる。VVVFは可変電圧可変周波数を直訳した和製英語である。
 
 
 
交流の周波数(同期速度)を追って回る交流モータを使う場合、従前は任意周波数の電源がなかなか得られず、商用周波数 (50Hz、60Hz) 固定の電源で起動させるため、任意速度での運転ができず商用周波数での同期速度付近でのみ運転可能で、起動トルクが小さかったり、効率を落としたり、定常運転時は大出力交流モータを軽負荷で使っていた。そうした経過で従前は、その動作特性も、取り扱い法も商用周波数固定でのものが広く知られているだけで、回転数、周波数特性はほとんど記述が無く知られていなかった。
 
 
 
同期速度とは回転磁界の速度で、電機子構造が2・P極の場合、周波数f/Pとなる。小型機に一般的な4極構造ではf/(4/2) が同期速度。60Hzであれば2極で60rps(毎秒回転数)、4極で30rps、6極で20rpsが同期速度である。60を掛ける記述は秒速-分速単位換算のrpm(毎分回転数)表示である。
 
 
 
====トルクの電圧・周波数特性====
 
[[ファイル:emf_3vf.gif|thumb|260px|電動機の1相誘起電圧と回転数]]
 
トルクの周波数特性としては、(電圧V/周波数f)<sup>2</sup> に比例し、さらに誘導電動機では、停動トルクより微少な場合はスベリ周波数f<sub>s</sub> に比例する(一般的な「すべり率S」ではなく「すべり周波数f<sub>s</sub> 」であることに注意)。同期電動機では電機子磁界と回転子磁界の角度δに関して sin(δ/2) に比例する。これを式で表現すれば、
 
 
 
* <math>T = k_1 \phi I \fallingdotseq k_2(V/f)^2 f_s</math>
 
ここに、<math>k_1 , k_2</math>は比例定数、Iは電機子電流、<math>\phi</math>は鎖交総磁束、Vは電圧、fは電源周波数、<math>f_s</math>はすべり周波数である。すなわち V/f を一定にして(=電圧と周波数を比例させて)ゼロから徐々に増やして起動すればよく、周波数に応じた任意の速度での運転ができる。
 
 
 
==== 任意周波数電源をパワー半導体で構成 ====
 
近年の電力用半導体の進歩により、任意周波数、任意電圧の交流電力を生成する[[インバータ]](直流-交流変換器)が得られるようになり、交流モータの特性に合わせて、電機子誘起起電力+インピーダンス降下の電圧を供給して駆動することで任意の速度で運転できるようになった。電機子誘導起電力は磁界が一定であれば回転数、すなわち周波数に比例するから、供給電圧/周波数をほぼ一定にして速度制御することがVVVFインバータ制御の基本である。
 
 
 
==== 鉄道車両では ====
 
鉄道車両ではこの電圧・周波数比例領域(V/f一定領域)を特に「'''VVVF領域'''(=可変電圧可変周波数領域)」と呼んでいる。インバータの最大電圧以降の高速領域は電圧一定で周波数を上げるので「'''CVVF領域'''(=定電圧可変周波数領域)」と呼ぶが、CVVF領域のうち、電流一定で加速を続ける領域は、誘導電動機であればスベリ周波数を増やして加速するが供給電力としては一定(=電圧一定×電流一定)なので「'''定電力領域'''」と呼び、トルクは回転速度に反比例する。停動トルク(脱出トルク)に近づくとスベリは増やせなくなり周波数のみを増やす「'''特性領域'''」となり、トルクは回転速度の2乗に反比例する。これは、'''V/f一定・すべり周波数制御'''と呼ばれている。
 
 
 
近年では更に瞬時変化の[[過渡応答]]特性の改善のため'''ベクトル制御'''を加えている。空転や滑走など急激な負荷の変化に対しスベリ周波数制御だけで追従制御したのでは整定時間が大きく掛かり、加速、減速が鈍くなってしまう。これを高速演算で最適位置に駆動磁界を作ることで応答遅延を防ぐ過渡状態収束制御である。
 
 
 
同期電動機の場合は、すべりはゼロで、回転磁界と回転子磁界の遅れ角δの半角の正弦に比例したトルクを生ずる。最大電圧到達以降はそのままでは電動機誘起電圧が速度に比例して過電圧となり、直流励磁型同期電動機では速度に反比例で励磁磁束を減らす調整が求められる。
 
 
 
[[永久磁石同期電動機]] ('''IPMSM''') の場合は、回転子鉄心が突極形であるため、永久磁石によるトルクだけでなくリラクタンストルクが利用できる。定出力領域では回転子磁界に対して電流位相を進めることで、永久磁石による回転子磁界を弱め('''弱め磁束制御''')、全体の発生トルクに対するリラクタンストルクの割合を増すことで、既存の誘導モーターと同等の力行性能を確保する。なお弱め磁束制御は必要に応じて惰行時にも行われるが、この制御の原理は同機調相機の減磁作用と同じである。すなわち、惰行時の弱め磁束制御では力率が0%となるため、電機子電流が流れていても消費電力は0であり、電流の増減に関わらず力行・回生トルクともに発生しない。
 
 
 
==== 直流電動機制御との比較 ====
 
直流電動機制御との比較でいえば、「電機子誘起起電力(=逆起電力)+内部抵抗降下」を直流電動機に加えて起動させるのが[[#抵抗制御|抵抗制御]]や[[#チョッパ制御の仕組み|チョッパ制御]]の基本だから、VVVFインバータ制御はその制御に周波数と位相が加わるだけで基本は同様である。「定電力領域」と「特性領域」についても直流電動機の「弱界磁領域=定電力領域」「特性領域」と変わらない。またVVVF領域も定トルクに制御すれば抵抗制御直流電動機での「定トルク領域」と同様である。
 
 
 
鉄道では折れ点を合わせてVVVF制御車と抵抗制御車を併結運転している例もある。
 
 
 
==== インバータの制御対象 ====
 
インバータ制御の対象となる鉄道用交流モータは、日本やドイツなどでは[[かご形三相誘導電動機|かご形誘導電動機]]がほとんどだが、TGVなどフランスの鉄道(機関車)では[[電磁石同期電動機]]が用いられていることもあった(新しい車両では誘導電動機が採用されている)。ともに回転磁界を直に作れる三相交流式である。誘導電動機のすべり率Sは回転子での電力損割合なので、定スベリ周波数制御をすると低速回転ほど損失率が増え効率が下がるので、低速回転になる直接駆動モーター (DDM) ではスベリ回転のない同期電動機が選ばれることが多い。しかしながら低速回転電動機のため重量が嵩み、新幹線保守の経験から「線路損傷が軸重の4乗と速度の2乗に比例する」ことが分かり、回生制動技術も発達したこともあって、JR東日本の試作車[[JR東日本E993系電車|E993系]]、量産車先行車[[JR東日本E331系電車|E331系]]1編成(=7両編成×2:14両)と試用車両に留まり、量産車は作られないまま一般方式の次世代車である[[JR東日本E233系電車|E233系]]が投入された。
 
 
 
=== 交流直流両用車両 ===
 
交流電化区間と直流電化区間を直通する列車は、当初はその境界で機関車を付け替え両区間直通していた。北陸本線米原駅 - 田村駅間では当初、交流直流の間を蒸気機関車牽引で繋ぐ間接切替方式がとられたほか、黒磯駅などでは駅構内で架線への給電を切り換える地上切替方式がとられたが、列車の高速化要求に伴い、交直両区間にデッドセクションを設けて走行中に車上切替方式に移行し、これを直通できる「交直両用」車両が開発された。
 
 
 
その構造は、基本的には直流車両に直流変電設備を乗せて、切り換えて使うものであり、走行特性としては直流車両に準じる。
 
 
 
==== シリコン整流器式 ====
 
直流用の[[新性能電車]]の構造をベースとしてトランスとシリコン整流器を搭載した車両が常磐線と関門トンネル運用を含む鹿児島本線に投入された。当初は電源周波数毎に別形式として投入されたが、長距離用車両から50/60Hz両周波数共用形式となった。基本的な走行装置は低い周波数の50Hzに対応していれば60Hz兼用にでき、周辺装置の共用化で3電源化したことで大阪 - 青森間特急「白鳥」などが運行された。シリコン整流器では回生制動が不可能だが、当初の新性能電車は発電制動方式のみ採用していたので支障はなかった。
 
 
 
==== PWMコンバータ式 ====
 
ところが、[[#VVVFインバータ制御|VVVFインバータ制御]]車両になると、整流部に可逆性のある (PWM) コンバータを採用して、高力率で広範に回生制動を可能にして効率改善を図ると共に、交流専用車両に匹敵する高い粘着力を利用でき、高加速度、高減速度、あるいは電動車を減らせるようになった。
 
<!--
 
==== 位相制御、チョッパー制御共用式 ====
 
--><!-- 以下の節は「交流電化」項の記事とすべきか迷うところ --><!--とりあえず前の節に含むと変なので節を変えます。適宜ご検討ください。 -->
 
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=== 日本における交流電化の特質 ===
 
日本での[[交流電化]]技術の開発は、低周波数電化によって交流電動機が用いられた欧州とは異なり、商用周波数で電化が行われたため直流電動機使用が主流となり、また従前直流変電所に給電されていた20kV特別高圧(給電端22kV)規格をそのまま架線に供給して行われたことで、交流電化か直流電化かの違いは、実質的には直流変電設備を車載にするか、地上に置くかの違いになった。
 
 
 
直流電動機の最高動作電圧に規定されるので、直流の供給電圧は現行 (300V - 3000V) より高く出来ず、地上・車上どちらかで降圧することになるが、交流では車上での降圧が容易なため特別高圧給電にして変電所設置間隔を1桁延ばして地上設備費の低減を図ったというのが実情である。
 
 
 
しかしながら、交直両用車両は常時変電設備を積んで走り、しかも直流電化区間に入ると、変電設備の二重投資で死重化してしまい、直通列車のある鉄道での交直混在には大きな問題があったことが指摘されるようになった。
 
 
 
一方で、交流電化の技術は東海道新幹線へと発展的に引き継がれ、直流電化では極めて困難な高速大量輸送を担っている。
 
-->
 
 
 
== 脚注 ==
 
{{reflist|group=註}}
 
 
 
== 参考文献 ==
 
* 松本雅行 『電気鉄道』 森北出版、2007年、41 - 58頁。
 
* 前田隆文 『電気応用と情報技術』 東京電機大学出版局、1999年、37 - 50頁。
 
* 石井幸孝 『入門鉄道車両』 交友社、1970年、6 - 53頁。
 
* 伊原一夫 『鉄道車両メカニズム図鑑』 グランプリ出版、1987年、26 - 37・180 - 190頁。
 
* {{Cite book
 
|author = Michael C. Duffy
 
|coauthors= Institution of Electrical Engineers
 
|year= 2003
 
|title= Electric railways 1880 - 1990
 
|publisher= IET
 
|pages= pp247 - 248}}
 
* {{PDFlink|[http://www.fe-technica.co.jp/html/QA/library/pdf/30.pdf 交流調整機に関するQ&A ]|218 [[キビバイト|KB]]}} 富士電機テクニカ、14頁
 
* 宮上行生、岡本研一、沢邦彦『直流電車用サイリスタチョッパ制御装置』 [http://www.fujielectric.co.jp/company/jihou_archives/contents_43-02.html 富士時報 第43巻第2号(1970年)] 205 - 213頁。
 
*『電気鉄道ハンドブック』同編集委員会コロナ社2007年2月刊(電気学会)
 
*『インバータ制御電車概論』飯田秀樹・加我敦著、電気車研究会2003年8月刊(新京成8800型開発者)
 
 
 
== 関連項目 ==
 
* [[鉄道車両]]
 
** [[電気機関車]]
 
** [[電車]]
 
*** [[交直流電車]]
 
*** [[交流型電車]]
 
* [[電動機]]
 
** [[整流子電動機]]
 
** [[誘導電動機]]
 
* [[マスター・コントローラー]] - [[主制御器]]
 
** [[抵抗制御]]
 
** [[チョッパ制御]]([[電機子チョッパ制御]]など)
 
** [[サイリスタ位相制御]]
 
** [[可変電圧可変周波数制御]]([[VVVFインバータ制御]])
 
* [[起動加速度]]
 
* [[鉄道の電化]]
 
** [[直流電化]]
 
** [[交流電化]]
 
 
 
{{Rail-stub}}
 
{{DEFAULTSORT:てんきしやのそくとせいきよ}}
 
[[Category:鉄道車両工学]]
 
[[Category:鉄道車両の制御方式|*てんきしやのそくとせいきよ]]
 

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