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| |FPSG= [[フィート重量ポンド]]毎秒(ft lbf/s) | | |FPSG= [[フィート重量ポンド]]毎秒(ft lbf/s) |
| }} | | }} |
− | '''電力'''(でんりょく、{{lang-en-short|electric power}})とは、[[単位時間]]に[[電流]]がする[[仕事 (物理学)|仕事]](量)のことである<ref name="physics" />。なお、「[[電力系統]]における電力」とは、単位時間に電気器具によって消費される[[電気エネルギー]]を言う<ref>[[#近角(2013) |近角(2013)]] p.363 <br /> | + | '''電力'''(でんりょく、{{lang-en-short|electric power}}) |
− | '''消費電力'''(electricity consumption)とも呼ばれる</ref>。[[国際単位系]](SI)においては[[ワット]][W] が[[単位]]として用いられる。
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− | なお、電力を時間ごとに[[積算]]したものは[[電力量]](electric energy)と呼び、電力とは区別される。つまり、電力を時間積分したものが電力量である。
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− | == 概要 ==
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− | [[ファイル:Solar panels on house roof.jpg|thumb|160px|屋根にソーラーパネルを設置して自家発電している家]]
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− | [[ファイル:HUUSYA.JPG|thumb|160px|家庭で用いられることのある小さな風力発電機]]
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− | 専門用語では、「電力」とは[[単位時間]]に[[電流]]がする[[仕事 (物理学)|仕事]](量)のことである。単位は[[W]]([[ワット]])であり<ref name="physics" />、電圧Vの電源から電流Iが流れているとき、電力はV・Iという[[数式|式]]で表せる<ref name="physics">『改定版 物理学事典』「電力」</ref>。つまり電力は、[[電圧]]と[[電流]]の[[積]]である<ref>電気学会『電気磁気学 電気学会大学講座』</ref>(物理学概念の分類体系で言うと、[[仕事率]] (power) に分類されるわけである)。なお、一般用語(非専門用語)では、「電力」が、[[電気]]の形で伝えられる[[エネルギー]]を指していることも多い。なお専門用語ではこのエネルギーに関しては「[[電力量]]」と呼び分けて区別している。
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− | 一般的に言うと、電力は[[電池]]や[[発電機]]で作られている。電力は個人が小規模に作ることも可能である。たとえば[[ソーラーパネル]]や小さな[[風力発電機]]や[[マイクロ水力発電|小さな水力発電機]]などを用いて、家庭で消費する電力をまかなったり、家庭で消費する以上につくり余剰分を販売することもできる。
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− | 電力を[[商品]]として([[供給]])[[販売]]することで[[収益]]([[売上]])や[[利益]]を得ている会社を[[電力会社]]と言う(世界的に見ると電力会社には様々な規模のものがあり、大手もあれば小規模のものもある。日本では小規模のものとして[[PPS]]([[特定規模電気事業者]])という位置づけのものが登場した。)。最初の電力会社、[[トーマス・エジソン]]の会社が設立した[[:en:Pearl Street Station|Pearl Street Station]]は[[直流送電|直流方式で送電]]し一時期はそれが標準となっていたが、[[ニコラ・テスラ]]やジョージ・ウェスティングハウスは[[交流送電]]を推し、両陣営間で激しい対立が起き、結果として交流送電方式が普及し(そのいきさつや理由については「[[電流戦争]]」の記事で詳説)、現代の電力会社は一般的には電力を[[三相交流]]で供給しており、電圧としては高圧電力・低圧電力の両方を販売している。電力会社の業界を電力業界という。
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− | 1990 年代から、欧米を中心として、世界中の多くの国や地域において、'''電力の自由化'''が積極的に進められている<ref name="jiyuuka_keizaigaku_hashi">『電力自由化の経済学』はしがき</ref>。
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− | [[欧州]]の各国の電力事業は、各国それぞれの歴史を持っている<ref name="yokuwakaru_6_1">『よくわかる最新スマートグリッドの基本と仕組み』6章-1 pp.134-135</ref>。かつてはひとつの国にひとつの電力事業業者、という形が一般的であったが<ref name="yokuwakaru_6_1" />、1999年に欧州電力市場では《市場の自由化》が導入され、各国でいくつもの電力事業業者が活動するようになった<ref name="yokuwakaru_6_1" />。欧州のなかでも、いちはやく自由化された電力市場を整備したのは[[英国]]であった<ref name="yokuwakaru_6_1" />。
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− | 英国ではかつて英国電力公社が英国全体に電力を供給しており、発電も送電も全て行っていた<ref name="yokuwakaru_6_1" />。1990年にその英国電力公社が民営化され、その時に、同時に'''[[発電]]事業と[[送電]]事業の分離'''が行われ、消費者に電力を供給する'''配電事業'''にはいくつもの電力供給事業者が参加できるようになった<ref name="yokuwakaru_6_1" />。消費者は、(ちょうど、携帯電話の通信サービスを比較して決められるように)電力の価格などを比較して、自分が利用する電力供給事業者を選択できるようになった<ref name="yokuwakaru_6_1" />(なお送電に関しては、英国ではもともとひとつの電気事業者が全国の電力供給を管理していたため、結果として、高圧送電系統は[[ナショナルグリッド]]1社が送電系統管理事業者として運用する方式を採用した<ref name="yokuwakaru_6_1" />。)。このようにして英国では、'''発電・送電・配電が完全に分離'''された<ref name="yokuwakaru_6_1" />。
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− | 現在、欧州各国で行われている電力事業の形態というのは、上記の英国の形態と似たものになっている<ref name="yokuwakaru_6_1" />。つまり、'''発電と送電の分離'''されており、送電に関しては送電系統管理事業者が行っている<ref name="yokuwakaru_6_1" />。そして欧州の各国はそれぞれ隣接する国々と高圧電線で結ばれ、日々、電力の輸出・輸入が行われている<ref name="yokuwakaru_6_1" />。
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− | [[グリーン電力]]とは、[[風力発電]]や[[太陽光発電]]、[[バイオマス発電]]、[[小規模水力発電]] 等々、温室効果ガスの排出が少なくて[[環境]]への負荷が小さい[[自然エネルギー]]や[[再生可能エネルギー]]によって発電された電力のことである<ref name="zukai_78">『図解入門ビジネス最新温暖化対策の基本と仕組みがよーくわかる本』p.78</ref>。
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− | 2000年代に入り、欧州で[[風力発電]]の導入がかなり進みはじめてから、発電出力の変動に伴う供給の不安定化の問題への対応策が打たれるようになっており、[[EU]]レベルで[[スマートグリッド]]化が検討されるようになった<ref name="yokuwakaru_6_1" />。
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− | 日本では第二次世界大戦前に、電力の供給を[[独占]]する体制(電力独占体制)が形成された<ref>渡哲郎『戦前期のわが国電力独占体』</ref>。日本においても、1995年の[[電気事業法]]の改正により、[[電力自由化]]に向けての様々な動きが始まった<ref name="jiyuuka_keizaigaku_hashi" />。1995年に制度化されたのはIPP(Independent Power Producer 卸供給事業者)で、IPPが発電した電力を既存の10電力会社が買い取るという仕組みで、IPPが需要家に直接販売するわけではない。だから、電力料金に直接影響を与えるものではなかった<ref>吉松崇「電力会社が原発に固執するのは何故か」(『世界』岩波書店 第824号 2011年12月 292ページ)</ref>。
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− | {{See also|電力自由化}}
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− | === 電力消費量 ===
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− | 2012年時点での全世界の電力消費量は20兆9千億kWhである<ref name='sikiku'>http://www.yonden.co.jp/life/kids/museum/energy/world/005.html</ref>。
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− | ==== 国別 ====
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− | 電力の消費量が多い順に国を挙げると中国、アメリカ合衆国、日本、ロシア、インドとなる<ref name='sikiku' />
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− | ただし、国民一人当たりの電力消費量の多い順に挙げると、カナダ、アメリカ、韓国、日本の順になる<ref name='sikiku' />。カナダは、湖や河川など豊富な水資源に恵まれていて電気料金が安いので一人あたりの消費量が特に多いのである<ref name='sikiku' />。一方、中国は一人当たりの電力消費量は世界平均ほどだが、国民の人数が大きいので国全体の電力消費量が大きくなっている(なお中国は急速に経済成長しているので電力不足が深刻化している)<ref name='sikiku' />。
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− | ====家庭での電力の消費量====
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− | 家庭での電力の消費の量やその内訳というのは、国、地域、季節、日々の[[気温]]ごとにかなり異なっている。
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− | 参考までに、日本の家庭の一世帯あたりの電気消費量は、平成21年度(2009年4月〜2010年3月、[[冷夏]]・[[暖冬]]であった期間)の通年では4,618 [[kWh]]/世帯であった。内訳としては、大きいものから[[電気冷蔵庫]]14.2%、[[照明器具]]13.4%、[[テレビ]]8.9%、[[エアコン]]7.4%と試算された<ref>資源エネルギー庁による[[試算]]。「平成21年度 民生部門エネルギー消費実態調査」(有効回答数10,040)および「機器の使用に関する補足調査」(1,448件)を用いて日本エネルギー経済研究所が試算した数字である。</ref><ref>資源エネルギー庁「[http://megalodon.jp/2014-0830-1026-57/www.enecho.meti.go.jp/category/saving_and_new/saving/data/13summer0172.pdf 省エネ 性能カタログ 2013年夏版]」</ref>。
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− | なお、同じ日本の家庭の消費電力の内訳でも、夏で最大需要が発生する日の日中(14時ころ)の消費電力の内訳は、資源エネルギー庁推計によると、エアコン53%、冷蔵庫23%、テレビ5%、照明5%だとのことである<ref>[http://megalodon.jp/2014-0830-1034-59/www.env.go.jp/chemi/heat_stroke/ic_rma/2301/mat08-5.pdf 資源エネルギー庁作成の節電に関するパンフレット]</ref>。
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− | 国ごとの大まかな統計資料は「[[消費電力]]」の記事に掲載している。
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− | {{Seealso|消費電力}}
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− | ==== 節電 ====
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− | 電力を節約すること、電力消費量を減らすことを[[節電]]という。
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− | == 定義 ==
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− | 電気回路において電力を供給する装置を電源(electric source)、電力を消費する装置を負荷(electrical load)と呼ぶ。
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− | === 定常電流の電力 ===
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− | [[直流回路]]の中でも特に電圧や電流が時間的に変化しない定常電流の回路<ref>例えば、電源が乾電池、負荷が豆電球しかない直流回路を流れる電流は定常的(定常電流)である。</ref>においては、電力は時間に関わらず
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− | :<math>P = VI = I^2R = \frac{V^2}{R}</math>
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− | :ただし、P : 電力[W]、V : 電圧[V]、I : 電流[A]、R : 抵抗[Ω]
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− | となる。
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− | | |
− | === 正弦波交流電流の電力 ===
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− | [[交流]]とは、時間ともに大きさと向きが周期的に変化する電圧または電流を言う<ref>[[#安岡(2012)|安岡(2012)]] p.23</ref>。そのため、三角波やのこぎり波も交流となるが、大きさが時間と共に正弦波(sine wave)状に変化する交流を特に正弦波交流と呼ぶ<ref>すなわち、正弦波交流は sin 関数と cos 関数で表すことができる。</ref>。[[交流回路]]に代表される電圧や電流が時間的に変化する回路においては、電力も時間に依存して変動をすることから<ref>負荷によっては電圧と電流間で[[位相差]]が発生する場合もある。</ref>、定常な場合と違って様々な量が定義される。
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− | | |
− | ここで、電圧の波高値(peak value)を V<sub>m</sub>、電流の波高値を I<sub>m</sub> そして周期(period)を Tとする。さらに、瞬時電力(instantaneous electric power)を p(t) で表す。なお、瞬時電流(instantaneous current)を i(t)、瞬時電圧(instantaneous voltage)を v(t) とすれば、
| |
− | : <math>p(t) = v(t) \cdot i(t)</math>
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− | が成り立つ。
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− | | |
− | ==== 有効電力(effective power) ====
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− | 瞬時電力を1周期 T に渡って平均した値を'''有効電力'''(effective power)と呼ぶ<ref>[[#安岡(2012)|安岡(2012)]] p.28</ref>。電力料金請求の対象となるのはこの有効電力である。
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− | | |
− | 有効電力 P は、
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− | {{Quotation|
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− | <math>P = \frac{1}{T} \int_0^T p(t) \mathrm{d}t</math>
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− | }}
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− | で定義される。
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− | | |
− | ここで、[[電力回路]]に代表される正弦波交流回路に限った上で、具体的に有効電力を算出することとする。
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− | | |
− | 正弦波交流であることから、瞬時電流 i(t) と瞬時電圧 v(t) を
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− | :<math>v(t) = V_m \sin(\omega t)</math> 、 <math>i(t) = I_m \sin(\omega t - \phi)</math>
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− | と表すとする。ただし、角周波数 ω について <math>\omega = 2\pi / T</math> とする。ところで、瞬時電圧の実効値を V、瞬時電流の実効値を I とすれば、それぞれ <math>V = \frac{V_m}{ \sqrt{2} } \; , \; I = \frac{ I_m }{ \sqrt{2} }</math> が成り立つ。
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− | | |
− | このとき、有効電力 P は
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− | :<math>\begin{align}
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− | P &= \frac{1}{T} \int_0^T p(t) \mathrm{d}t = \frac{1}{T} \int_0^T v(t)i(t) \mathrm{d}t \\
| |
− | &= \frac{2\pi}{\omega} \int_0^{ \frac{2\pi}{\omega} } V_m I_m \sin(\omega t) \sin(\omega t - \phi) \mathrm{d} t \\
| |
− | &= V_m I_m \frac{2\pi}{\omega} \int_0^{ \frac{2\pi}{\omega} } \frac{ \cos(\phi) - \cos(2\omega t - \phi) }{2} \mathrm{d}t \\
| |
− | &= \frac{V_m I_m}{2} \cos(\phi) \frac{2\pi}{\omega} \int^{ \frac{2\pi}{\omega} }_0 \mathrm{d} t - \frac{V_m I_m}{2} \frac{2\pi}{\omega} \left[ \frac{1}{2\omega} \sin(2\omega t - \phi) \right]^{\frac{2\pi}{\omega} }_0 \\
| |
− | &= \frac{V_m}{\sqrt{2} } \frac{I_m}{\sqrt{2} } \cos(\phi) - 0 = VI \cos(\phi)
| |
− | \end{align}</math>
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− | となる。ここで位相差 φ の余弦 cos(φ) を[[力率]]、位相差 φ 自体を力率角と呼ぶ<ref>力率角が φ = 0 の状態、すなわち力率が cos(φ) = 1 の場合が理想的な状態であり、負荷の力率が1に近いほど「力率が良い」といい、逆にゼロに近いほど「力率が悪い」という。</ref>。
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− | | |
− | ==== 無効電力(reactive power) ====
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− | 電力回路において、有効電力は電力機器を動かすために必要であるが、電圧の調整に使われるものとして電圧と電流の実効値の積に力率角 φ の正弦 sin(φ) をかけたものを'''無効電力'''(reactive power)と呼ぶ。なお、無効電力は、『電力』と銘打っているものの、負荷と電源を往復するだけで消費されない電力である。
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− | | |
− | 記号 Q で表され、単位はバール(記号: var)が用いられる。
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− | :<math>Q = VI \sin\phi</math>
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− | | |
− | 無効電力は、[[自己インダクタンス]]に由来する誘導負荷と、[[静電容量]]に由来する容量負荷から生じる。誘導負荷による無効電力を「遅れ無効電力」、容量負荷による無効電力を「進み無効電力」と呼んでいる。電力関係では電圧を基準として、電流が遅れている場合の無効電力を正とすることが多い。
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− | | |
− | 誘導性負荷は無効電力を増やし、容量性負荷は無効電力を減らす。遅れ無効電力と進み無効電力は互いに打ち消しあう関係であり、これら両者の無効電力が互いに等しい状態(すなわち、無効電力がゼロ)が、最も理想的な状態といえる。
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− | | |
− | インピーダンスを用いれば
| |
− | :<math> \begin{align}
| |
− | Q &=Z I^2\sin\phi =X I^2 \\
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− | &=\frac{X V^2}{Z^2}=\frac{XV^2}{R^2+X^2} \\
| |
− | \end{align} </math>
| |
− | となる。X > 0 であれば Q > 0 であり、これは誘導性負荷で電圧に対して電流が遅れる。
| |
− | アドミタンスを用いれば
| |
− | :<math> \begin{align}
| |
− | Q &=Y V^2\sin\phi =-B V^2 \\
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− | &=-\frac{BI^2}{Y^2}=-\frac{BI^2}{G^2+B^2} \\
| |
− | \end{align} </math>
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− | となる。B > 0 であれば Q < 0 であり、これは容量性負荷で電圧に対して電流が進む。
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− | | |
− | ==== 皮相電力(apparent power) ====
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− | 正弦波交流回路において、電圧の実効値 V と電流の実効値 I の積を'''皮相電力'''(apparent power)と呼ぶ<ref>その意味は表向き(見かけ)の電力である。</ref>。
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− | :<math>S = VI </math>
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− | 単位はボルトアンペア(記号: VA)が用いられる。記号としては S で表されることが多い。
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− | | |
− | この皮相電力 S と有効電力 P、無効電力 Q そして力率 cos(φ) との間には以下の関係
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− | :<math>S^2 = P^2 + Q^2</math>
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− | :<math>P =S\cos\phi =\sqrt{S^2 -Q^2}</math> 、 <math>Q =S\sin\phi,~
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− | |Q| =\sqrt{S^2 -P^2}</math>
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− | が成り立つ。
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− | | |
− | なお、インピーダンスを用いれば
| |
− | :<math> \begin{align}
| |
− | S &=ZI_\text{e}^2 =I_\text{e}^2\sqrt{R^2+X^2} \\
| |
− | &=\frac{V_\text{e}^2}{Z} =\frac{V_\text{e}^2}{\sqrt{R^2+X^2}}
| |
− | \end{align} </math>
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− | | |
− | となり、アドミタンスを用いれば
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− | :<math> \begin{align}
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− | S &=YV_\text{e}^2 =V_\text{e}^2\sqrt{G^2+B^2} \\
| |
− | &=\frac{I_\text{e}^2}{Y} =\frac{I_\text{e}^2}{\sqrt{G^2+B^2}} \\
| |
− | \end{align} </math>
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− | となる。
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− | === 非直線性回路の電力 ===
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− | 上記は電圧・電流ともに正弦波の場合であるが、[[ダイオード]]などの非直線性素子が入った回路においては電流が正弦波とはならず、説明が複雑となる。基本は瞬時電圧と瞬時電流から瞬時電力を求め、それを平均することによりまず有効電力Pを求める。
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− | | |
− | また、電圧Vの実効値と電流Iの実効値の積から、皮相電力Sが求められる。
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− | : <math>S = |V||I|</math>
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− | さらに、皮相電力と有効電力、無効電力Qの関係式
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− | : <math>S = \sqrt{P^2 + Q^2}</math>
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− | | |
− | を変形すると、皮相電力と有効電力から無効電力が求められる。
| |
− | : <math>Q = \sqrt{S^2 - P^2}</math>
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− | | |
− | 非直線性回路では、電圧が正弦波であっても電流に[[高調波]]成分を含むことになり、従来力率改善に用いられた[[同期調相機]]や電力用[[コンデンサ]]では十分な改善効果が得られないだけでなく、電力用コンデンサなどに障害を与える場合がある。特に、コンピュータなどに内蔵される[[スイッチング電源|AC-DCコンバータ]]や、[[省エネルギー]]のための[[インバータ]]制御機器が問題になる<ref>{{Cite web|date=|url=http://www.eccj.or.jp/qanda/he_qa/elec/d0406.html|title=電気設備に高調波が及ぼす影響|publisher=一般財団法人省エネルギーセンター|accessdate=2013-10-21 |archiveurl=http://web.archive.org/web/20091228011132/http://www.eccj.or.jp/qanda/he_qa/elec/d0406.html |archivedate=2009-12-28}}</ref>。このため、高調波成分を減少させ、力率を改善するための規制が行われることも多い。
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− | === 固有電力(intrinsic power) ===
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− | 起電力Eとその内部抵抗rと外部抵抗Rにおいての電源より供給できる最大電力。または消費電力が最大になるときの最大電力。
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− | [[電気工学]]では'''最大電力供給条件'''という。分野によっては[[マッチング]]とも。記号はPまたはPmax、単位はワット (W)。
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− | rは内部抵抗、Rは外部抵抗として説明する。
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− | 直流電力の公式
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− | : <math>P=VI=RI^2</math>
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− | これを1とする。
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− | 起電力
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− | : <math>E=rI+RI</math>
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− | ゆえに
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− | : <math>I=\frac{E}{r+R}</math>
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− | となる。これを2とする。
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− | | |
− | 1へ2を代入
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− | <math>\begin{alignat}{2}
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− | P&=R\left(\frac{E}{r+R}\right)^2 \\
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− | &=\frac{E^2}{r}\cfrac{1}{\cfrac{r}{R}+\cfrac{R}{r}+2} \\
| |
− | \end{alignat}</math>
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− | | |
− | 相加平均と相乗平均の関係を分母に用いると<math>P=\frac{E^2}{4r}</math>という公式が導き出される。
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− | == 関連項目 ==
| |
− | * [[電力工学]] - [[電力回路]] - [[系統連系]]
| |
− | * [[電力計]] - [[電力量計]]
| |
− | * [[力率]] - [[インピーダンス]] - [[アドミタンス]]
| |
− | * [[実効値]] - [[平均]]値
| |
− | * [[仕事率の比較]]
| |
− | * [[消費電力]]
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− | | |
− | == 脚注 ==
| |
− | <references />
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− | | |
− | == 参考文献 ==
| |
− | * 野村宗訓『電力:自由化と競争』同文舘出版、2000
| |
− | * 南部鶴彦『電力自由化の制度設計:系統技術と市場メカニズム』東京大学出版会、2003
| |
− | * 橘川武郎『日本電力業発展のダイナミズム』名古屋大学出版会、2004
| |
− | * 井上雅晴『電力自由化2007年の扉』[[エネルギーフォーラム]]、2004
| |
− | * 八田達夫、田中誠『電力自由化の経済学』[[東洋経済新報社]]、2004
| |
− | * 穴山悌三『電力産業の経済学』NTT出版、2005
| |
− | * 打川和男、内藤高志『図解入門ビジネス最新温暖化対策の基本と仕組みがよーくわかる本』[[秀和システム]]、2008
| |
− | * {{cite book | 和書 | author=安岡 康一 | title=基本を学ぶ 電力工学 | publisher=オーム社 | year=2012 | ref=安岡(2012) }}
| |
− | * {{cite book | 和書 | title=理解しやすい物理 物理基礎収録版 | editor=近角 聰信, 三浦 登(編) | publisher=文英堂 | year=2013 | ref=近角(2013) }}
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| | | |
| + | (1) 電流によってなされる単位時間あたりの仕事。単位はワット,略号W。直流では電圧と電流の積であるが,交流では各瞬間での電圧と電流の積の時間平均として求められる。実効値 <i>V</i> の交流電圧を印加したとき,回路に流れる電流の実効値 <i>I</i> ,その間の位相差をθとすると電力は <i>VI</i> cos θ である。交流では[[皮相電力]],[[無効電力]]などと区別するため有効電力とも呼ばれる ([[交流電力]] ) 。 (2) 一般に電力というときは電気エネルギーによる動力の意味がある。電力は発電・送電・配電の段階を経て需要者に届く。 ([[電力系統]] ) |
| + | {{テンプレート:20180815sk}} |
| {{DEFAULTSORT:てんりよく}} | | {{DEFAULTSORT:てんりよく}} |
| [[Category:電気理論]] | | [[Category:電気理論]] |
| [[Category:物理量]] | | [[Category:物理量]] |
| [[Category:産業]] | | [[Category:産業]] |
− |
| |
− | [[da:Effekt (fysik)#Effekt i elektriske kredsløb]]
| |
− | [[et:Võimsus#Võimsus elektrotehnikas]]
| |
− | [[sv:Effekt#För likström (DC) och spänning]]
| |