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{{出典の明記|date=2013年2月}}
 
'''重油'''(じゅうゆ)とは、[[原油]]の[[常圧蒸留装置|常圧蒸留]]によって塔底から得られる残油、あるいはそれを処理して得られる重質の[[石油製品]]である。[[ガソリン]]、[[灯油]]、[[軽油]]より[[沸点]]が高く、'''重[[粘度|粘質]]'''であることから名付けられている。しかし[[油]]の一種であるため[[水]]よりは軽い。[[英語]]では、一般に、重油 (heavy oil) よりも'''燃料油''' (fuel oil) と呼ばれる。
 
  
== 重油の性状 ==
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'''重油'''(じゅうゆ)
重油は、[[褐色]]又は黒褐色の重質油で、[[比重]]は0.82 - 0.95程度、[[発熱量]]は10,000 - 11,000kcal/kg程度である。成分は[[炭化水素]]が主なもので、若干(0.1 - 4%程度)の[[硫黄]]分及び微量の[[無機化合物]]が含まれている。
 
  
[[大気汚染]]の原因となる重油中の[[硫黄]]分を低減するため、直接脱硫や間接脱硫などによる[[水素化脱硫装置|脱硫]]を行なうことが近年では一般的となっている。
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原油を蒸留してガソリン,灯油,軽油などの留分を除いたあとの常圧蒸留残油 (常圧残油,直留残油または釜残油) ,またはこれとナフサより重質の留出油との混合物の総称。また直留残油から減圧蒸留によって潤滑油,アスファルト,ピッチなどを除いた場合にも重油と呼んでいる。工業用燃料として重要な役割を占めており,加熱用燃料たとえば製鋼,セメント,冶金,ボイラ用などに用いられる一方,ディーゼル機関の燃料にも使用される。また,カーボンブラックの原料や都市ガス原料,石油コークスの原料などにも用いられる。石炭に比べて熱効率が高いうえ,完全燃焼しやすく,すすや灰も少い,また着火も容易,さらに貯蔵や調節が便利であるなど利点が多いため,日本では 1960年代以降,急速に石炭に取って代る傾向が進んだ。これを第1次エネルギー革命と呼んでいる。重油の比重は 0.9~1.0。発熱量は 1kgあたり1万~1万 1000kcal,品質や用途によって便宜上,A重油,B重油,C重油の3種類に分けられている。A重油は軽油を主成分とし,これに 10%程度の常圧残油を混合して製造されるもので,重油中最も軽質で粘度が低く,硫黄分も少いので,低速ディーゼル燃料として一般に使用される。B重油は軽油 50%,残油 50%程度の混合物で,ディーゼル燃料,バーナー燃料として使用される。粘度の高いC重油は,バーナー燃料として使用される。重油のなかで硫黄含有量の多いものは,加熱する装置や製品の品質をそこなう可能性が大きいうえ,燃焼に伴って発生,排出する硫黄酸化物が産業公害の原因になるので,硫黄分の少い原油の利用,重油中の硫黄分を取除く重油脱硫処理,燃焼ガスから硫黄を取除く排煙脱硫処理,また重油にしないで軽質留分を含めたまま燃焼させる原油生焚きなどの試みが多角的に行われている。石油製品の需要構造が重油から軽油への多消費型へと変化してきたため,ガソリン製造の中心的技術であった重油分解法 (熱分解法,接触分解法,水素化分解法) を,余剰重油から軽油製品を製造する技術として広く応用することも行われるようになった。
 
 
[[消防法]]により、[[危険物]]に指定されている。区分は第4類第3石油類。[[引火点]]は70[[セルシウス度|℃]]以上200℃未満で、非[[水溶性]]である。
 
 
 
== 重油の製造 ==
 
重油は、常圧蒸留残油、[[減圧蒸留装置|減圧蒸留]]残油、減圧軽油、[[溶剤]]脱れき(瀝)残油などの高粘度油に直留軽油や分解軽油などの低粘度油を調合して、その用途に応じて、粘度、硫黄分、[[流動点]]、[[引火点]]、残留[[炭素]]分などの性状を合わせて製品とされる。
 
 
 
重油は原油から各種石油製品を精製した後の残渣油であるが、最近は[[アスファルト]]を[[燃料]]とした[[発電]]も進んでおり、また二次装置<ref>原油蒸溜以降の、[[接触改質]]、[[接触分解]]、脱硫、水素化分解、コーキングなどの工程を行う装置・設備。</ref>の整備が進むことで重油からガソリンや灯油など重油よりも利益が上がる油種をより多く精製するようになったことから、製品としての重油は供給量減少や品質悪化の傾向にあるといわれる。また[[熱分解]]でガス化して[[ジメチルエーテル]]を製造することも可能である。
 
 
 
== 重油の規格・品質 ==
 
重油の種類は、[[粘度|動粘度]]により1種(A重油)、2種(B重油)及び3種(C重油)の3種類に分類される。
 
 
 
さらに1種は[[硫黄]]分により1号及び2号に細分される。3種は[[粘度|動粘度]]により1号、2号及び3号に細分される。
 
 
 
* [[A重油]]は軽油90%に少量の[[残渣油]]を混ぜたものである。
 
* [[#B重油及びC重油|B重油]]は残渣油と軽油を半量程度ずつ調合したものである(なお、最近B重油はほとんど生産されない)。
 
* [[#B重油及びC重油|C重油]]は90%以上が残渣油である。
 
 
 
一般的に、残留[[炭素]]の多い重油は粘度が高い。重油の硫黄の大部分が有機硫黄分として存在している。
 
 
 
品質は、[[内燃機関]]用、[[ボイラー]]用及び各種[[炉]]用などの燃料として適当な品質の[[鉱油]]であって、次の規定に適合しなければならない。
 
 
 
=== 重油の規格 (JIS K 2205) ===
 
{| class="wikitable"
 
|-
 
! colspan="2" |性状→<br />種類↓!!反応!!引火点<br />℃!!動粘度<br />(50℃)<br />c[[ストークス|St]]<br />(mm{{sup|2}}/s)!!流動点<br />℃<ref group="※">1種及び2種の寒候用のものの流動点は0℃以下とし、1種の暖侯用の流動点は10℃以下とする。</ref>!!残留炭素分<br />質量%!!水分<br />容量%!!灰分<br />質量%!!硫黄分<br />質量%!!
 
|-
 
| rowspan="2" |1種(A重油)||1号||中性||60以上||20以下<br />(20以下)||5以下||4以下||0.3以下||0.05以下||0.5以下||(LSA重油)
 
|-
 
| 2号||中性||60以上||20以下<br />(20以下)||5以下||4以下||0.3以下||0.05以下||2.0以下||(HSA重油)
 
|-
 
| colspan="2" |2種(B重油)||中性||60以上||50以下<br />(50以下)||10以下||8以下||0.4以下||0.05以下||3.0以下||
 
|-
 
| rowspan="3" |3種(C重油)||1号||中性||70以上||250以下<br />(250以下)||-||-||0.5以下||0.1以下||3.5以下||
 
|-
 
| 2号||中性||70以上||400以下<br />(400以下)||-||-||0.6以下||0.1以下||-||
 
|-
 
| 3号||中性||70以上||400を超え1000以下<br />(400を超え1000以下)||-||-||2.0以下||-||-||
 
|-
 
| colspan="11" |{{Reflist|group=※}}
 
|}
 
 
 
A重油の1種1号は、硫黄分(Sulfur、サルファー)が0.5%以下とされ、'''LSA重油''' (Low Sulfur A Fuel Oil) とも呼ばれる。この低硫黄のA重油の色は生産施設にもよるが半透明の黒色か黄色である。また、低硫黄のLSA重油はメーカによってはSCF(出光興産)またはSCFO (Super Clean Fuel Oil) とも称されることがある。
 
 
 
同じくA重油1種2号は、硫黄分が0.5%以上2.0%以下とされ、'''HSA重油''' (High Sulfur A Fuel Oil) とも呼ばれる。
 
 
 
=== JIS規格と国際的名称 ===
 
[[File:residual fuel oil.JPG|thumb|200px|残留燃料油のサンプル]]
 
{| class="wikitable"
 
|-
 
! JIS規格!!国際的名称
 
|-
 
| 軽油||rowspan="2" |GO(Gas Oil : 軽油)<br />DO(Diesel Oil : ディーゼル油)<br />MDF(Marine Diesel Fuel : 船舶用ディーゼル燃料)<br />MDO(Marine Diesel Oil : 船舶用ディーゼル油)
 
|-
 
| A重油
 
|-
 
| B重油|| -
 
|-
 
| C重油||MFO(Marine Fuel Oil : 船舶用燃料油)<br />HFO(Heavy Fuel Oil : 重質燃料油)<br />RFO(Residual Fuel Oil : 残渣燃料油)
 
|}
 
 
 
== 重油の用途 ==
 
=== A重油 ===
 
低硫黄のLSA重油は、主として農耕機や漁業用の中小型船舶の燃料として使用されている。最近では環境問題や大気汚染問題に配慮するため、ビル、ホテル、寮、病院、学校の暖房・給湯用、食品工場の加熱用、クリーニング工場のプレス・温水供給に運用されるボイラーに多く用いられ、農産物用のビニールハウスのボイラー、温風暖房でも使用されている。
 
 
 
高硫黄のHSA重油は、低硫黄のLSA重油を特に必要としない非自動車用[[ディーゼルエンジン]]、及び工場、病院、学校、ビルなどの小・中規模[[ボイラー]]の燃料などに用いられる。
 
 
 
また、[[火葬場]]で遺体を火葬する際の燃料に使われる事が多かったが、環境面への配慮から灯油やガスに切り替わってきている。
 
 
 
=== B重油及びC重油 ===
 
B重油、C重油は、船舶用の大型ディーゼルエンジン、工場や発電所、[[地域冷暖房]]などの大規模ボイラーの燃料などに用いられる。
 
 
 
B重油及びC重油は粘度が高いため予熱した上で使用される。また、残渣油には不純物が多く含まれることから、船舶用のディーゼルエンジン燃料としてC重油を使用する場合、'''油清浄機'''により不純物を取り除いた上で使用される。それでもなお[[硫黄]]や[[灰]]分を多く含むため、[[レシプロエンジン]]で用いる場合には、燃焼時に生成される[[硫酸]]による[[シリンダーライナー]]の[[腐蝕]]や、[[アブレシブ摩耗]]に注意する必要がある。
 
 
 
== 不正軽油問題 ==
 
A重油には[[軽油引取税]]が課税されないため、軽油に比べて安価であるが、その品質は軽油に非常に類似している。そのため、しばしばトラックなどの自動車用ディーゼルエンジンの燃料に流用される。これは[[不正軽油]]と呼ばれ、[[脱税]]行為であるだけでなく、環境対策上の問題ともなる。
 
 
 
このような脱税目的でのA重油の使用を防ぐために、A重油には[[1991年]](平成3年)から識別剤として[[クマリン]]が添加されている。
 
 
 
また、[[国土交通省]]では、不正使用の防止のため、[[2005年]](平成17年)から、走行中のトラック等の燃料を抜き取り検査を行っている。これは軽油と重油の硫黄分の濃度の違いに着目したもので、硫黄分の濃度の分析を行うことで判別を行う。軽油は硫黄分の濃度が10ppm程度であるのに対して、硫黄分の一番低いLSA重油でも硫黄分の濃度が500ppmにもなるので、抜取った燃料が、法令基準の50ppm以上であれば、厳しく指導を行っている。
 
 
 
== 脚注 ==
 
{{Reflist}}
 
 
 
== 関連項目 ==
 
* [[不正軽油]]
 
* [[軽油]]
 
* [[危険物]]
 
* [[ボトリオコッカス]]
 
 
 
== 外部リンク ==
 
* [http://www.tax.metro.tokyo.jp/kazei/oil/200009f.html 東京都主税局:不正軽油防止の取組 不正軽油はNO!]
 
* [http://www.mlit.go.jp/kisha/kisha05/09/090325_2_.html 国土交通省:不正軽油の排除について]
 
  
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[[Category:石油製品]]
 
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[[Category:第3石油類]]
 
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重油(じゅうゆ)

原油を蒸留してガソリン,灯油,軽油などの留分を除いたあとの常圧蒸留残油 (常圧残油,直留残油または釜残油) ,またはこれとナフサより重質の留出油との混合物の総称。また直留残油から減圧蒸留によって潤滑油,アスファルト,ピッチなどを除いた場合にも重油と呼んでいる。工業用燃料として重要な役割を占めており,加熱用燃料たとえば製鋼,セメント,冶金,ボイラ用などに用いられる一方,ディーゼル機関の燃料にも使用される。また,カーボンブラックの原料や都市ガス原料,石油コークスの原料などにも用いられる。石炭に比べて熱効率が高いうえ,完全燃焼しやすく,すすや灰も少い,また着火も容易,さらに貯蔵や調節が便利であるなど利点が多いため,日本では 1960年代以降,急速に石炭に取って代る傾向が進んだ。これを第1次エネルギー革命と呼んでいる。重油の比重は 0.9~1.0。発熱量は 1kgあたり1万~1万 1000kcal,品質や用途によって便宜上,A重油,B重油,C重油の3種類に分けられている。A重油は軽油を主成分とし,これに 10%程度の常圧残油を混合して製造されるもので,重油中最も軽質で粘度が低く,硫黄分も少いので,低速ディーゼル燃料として一般に使用される。B重油は軽油 50%,残油 50%程度の混合物で,ディーゼル燃料,バーナー燃料として使用される。粘度の高いC重油は,バーナー燃料として使用される。重油のなかで硫黄含有量の多いものは,加熱する装置や製品の品質をそこなう可能性が大きいうえ,燃焼に伴って発生,排出する硫黄酸化物が産業公害の原因になるので,硫黄分の少い原油の利用,重油中の硫黄分を取除く重油脱硫処理,燃焼ガスから硫黄を取除く排煙脱硫処理,また重油にしないで軽質留分を含めたまま燃焼させる原油生焚きなどの試みが多角的に行われている。石油製品の需要構造が重油から軽油への多消費型へと変化してきたため,ガソリン製造の中心的技術であった重油分解法 (熱分解法,接触分解法,水素化分解法) を,余剰重油から軽油製品を製造する技術として広く応用することも行われるようになった。



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