重根 (多項式)

提供: miniwiki
移動先:案内検索

重根(じゅうこん、英称multiple root)とは、1 変数多項式 f(x) ののうち重複度が2以上のもののことをいう。

概要

1 変数多項式 f(x) が、定数 a≠0 ,α12, … αn を用いて

[math]f(x) = a(x-\alpha_1)(x-\alpha_2)\cdots(x-\alpha_n)[/math]

の形に因数分解され、α1, α2, ..., αn の中に 2 つ以上同じ値がある場合、その値を f(x) の重根という。

方程式 f(x) = 0 の解は一般に

[math] \left\{\begin{matrix} y&=&f(x) \\ y&=&0 \end{matrix}\right. [/math]

つまり xy-座標系において y = f(x) と x 軸との交点の x 座標である。 f(x)が1変数多項式のとき、 y = f(x) がx=αで x 軸に接するなら、αは f(x) の重根となる。したがってf(x)はx=αでの微分も0となり、x=αがf(x) の重根であることと

[math] \left\{\begin{matrix} f(\alpha)&=&0 \\ f'(\alpha)&=&0 \end{matrix}\right. [/math]

であることは同値である。

定義

K 上の多項式 f(x) と K の元 α に対し、(x - α)2 | f(x) が成立するとき、すなわち 2 以上の自然数 k と多項式 g(x) で

[math]f(x)=(x-\alpha)^k g(x)[/math]

を満たすものが存在するとき、α を f(x) の重根という。特に g(x) が α を根に持たないならば、k を根 α の重複度(ちょうふくど、multiplicity)という。

判別式

多項式 f(x) の根を α1, α2, ..., αn とし、その全体から作られる最簡交代式(差積)の平方

[math]D_f := \prod_{1\leq i \lt j\leq n}(\alpha_i -\alpha_j)^2[/math]

を多項式 f(x) あるいは方程式 f(x) = 0 の判別式(はんべつしき、discriminant)という。

これは「代数方程式が重根を持つかどうか」 を判別するための式である。すなわち、判別式が 0 であることとその代数方程式が重根を持つこととが同値となる。このことは判別式を差積に取り替えても変わらない。にもかかわらず差積の平方を判別式とするのは、それが方程式の係数によって必ず記述できるからである。これは、

  1. 差積の平方が根に関する対称式となること、
  2. 対称式が基本対称式で表すことができること、
  3. 根の基本対称式が方程式の係数によって記述されること(根と係数の関係

によって保証される。

たとえば、二次方程式 ax2 + bx + c = 0 の根を α, β とすると根と係数の関係により

[math]\alpha + \beta = -\frac{b}{a},[/math]
[math]\alpha\beta = \frac{c}{a}[/math]

が成り立ち、判別式すなわち差積の二乗は

[math](\alpha - \beta)^2 = (\alpha + \beta)^2 - 4\alpha\beta = \left(-\frac{b}{a}\right)^2 - 4\times\frac{c}{a} = \frac{b^2 - 4ac}{a^2} [/math]

となる。a2 > 0 であるので、実用上は分母を掃った b2 - 4ac を判別式として用いることが多い。

関連項目