道 (グラフ理論)

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有向閉道の例。矢印がなければ単なる閉道である。青い頂点は2度通るので、単純な閉道(すなわち閉路)ではない。

グラフ理論において、グラフの(みち)またはパス: path)は、頂点のであり、各頂点とその次の頂点との間に辺が存在する。道は無限の場合もあるが、有限な道には常に始点と終点がある。始点と終点をまとめて端子頂点 (terminal vertices) と呼び、道上の他の頂点を内部頂点 (internal vertices) と呼ぶ。閉道は始点と終点が同じ頂点となっている道である。なお、閉道においてどの頂点を始点とするかは任意である。

道と閉道はグラフ理論の基本的概念であり、グラフ理論の書籍では必ず導入部分で説明されている。例えば、Bondy and Murty (1976)、Gibbons (1985)、Diestel (2005)、Korte et al. (1990) では、道に関するより進んだアルゴリズム的項目を網羅している。

道の種類

無向グラフだけでなく、有向グラフにも道はあり、頂点の列において常に前の頂点から次の頂点へ辺が向かっている。「有向道; directed path」、「有向閉道; directed cycle」といった呼称もよく使われる。

頂点が複数回出現しない道を単純道 (simple path) と呼び、始点/終点以外の頂点が複数回出現しない閉道を単純閉道 (simple cycle) と呼ぶ。最近では "simple"(単純)は最初から含意されていることが多く、閉道と言えば単純閉道を意味し、道といえば単純道を意味する。

ただし常にそういう意味で使われるとは限らない。書籍によっては(例えば Bondy and Murty 1976)、頂点が反復する道を歩道 (walk) と呼び、ここでいう単純道を道 (path) と呼んでいる。歩道(walk)から辺の反復を除いたものを小道(trailという。小道(trail)は頂点の反復を可能とするが、辺は反復できない。

道の上で隣接しない頂点間に辺が存在しない道を誘導道 (induced path) と呼ぶ。

グラフの全ての頂点を含む単純閉道をハミルトン閉路と呼ぶ。

共通する内部頂点を持たない2つの道は互いに「独立」、あるいは「内部頂点が互いに素 (点素)」であるという。 また、共通する内部の辺を持たない2つの道は互いに「辺素」であるという

道を構成する辺の数を道の「長さ」と呼び、複数回出現する辺は複数回カウントする。頂点が1つでも道ということができ、その場合の長さはゼロである。

重み付きグラフは各辺に値(重み)が対応しているグラフである。この場合「道の重み」は、道に属する辺の重みの総和である。重み (weight) ではなく、コスト (cost) とか長さ (length) と呼ぶこともある。

関連項目

参考文献

  • Bondy, J. A.; Murty, U. S. R. (1976). Graph Theory with Applications. North Holland, 12–21. ISBN 0-444-19451-7. 
  • Diestel, Reinhard (2005). Graph Theory, 3rd ed., Graduate Texts in Mathematics, vol. 173, Springer-Verlag, 6–9. ISBN 3-540-26182-6. 
  • Gibbons, A. (1985). Algorithmic Graph Theory. Cambridge University Press, 5–6. ISBN 0-521-28881-9. 
  • Korte, Bernhard; Lovász, László; Prömel, Hans Jürgen; Schrijver, Alexander (Eds.) (1990). Paths, Flows, and VLSI-Layout. Algorithms and Combinatorics 9, Springer-Verlag. ISBN 0-387-52685-4.