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詰み(つみ)とは、(将棋やチェスに代表される)チャトランガ系統のボードゲームの用語の一つ。先手・後手どちらかの玉将(キング)が、完全に捕獲された状態を指す。戦いの最終目標であり、どちらかが「詰み」になった時に勝敗が決する。チェスの場合はチェックメイト(英語: Checkmate、ペルシア語: شاه مات - Shāh Māt)とも呼ばれている。本稿では主に、将棋とチェスの「詰み」(チェックメイト)について解説する。
Contents
概説
- 将棋の王手にもチェスのチェックにも、さまざまな形(局面)が存在する。王手(チェック)されてはいるが、次の手で簡単に回避できる形も無数にある。だが数ある王手の中で絶対に逃れる事ができない形があり、それを「詰み」(チェックメイト)と呼んでいる。つまり「詰み」とは王手の形の一つであり、その中で最も厳しい物を指している。
- 将棋でもチェスでも、詰んだ時点で対局は終了となり、敵の玉将(キング)を詰めた側の勝ち(詰まされた側の負け)となる。実際に玉将(キング)を取る行為までは行わない。
- 詰みの形は多種多様で、複雑な物も数多く存在する。また(特に実戦では)、味方の駒だけではなく敵の駒も詰みの形に関係する場合が多い。
将棋の「詰み」
「詰み」の基本
立場を逆に考えた場合、次の3つの条件が全部そろった時が「詰まされた」状態である。
- 自分の手番である。
- 相手に王手されている。
- 合法手がない。つまり、反則にならずに次に動かせる(打てる)駒が一つもない。
図1は最も基本的な詰みの一例で、「頭金(あたまきん)」と呼ばれている。
- 敵味方含めて1つの駒で玉を詰ませることは不可能であるため、この例のように詰みは2つ以上の駒が連携した形となっている。[1]
- 詰みは玉将以外の全ての駒で行うことができる[2]。後述の打ち歩詰めでなければ、最後に歩で詰めてもよい(突き歩詰め)。
「詰み」の例
図2から図7は、すべて後手玉が詰まされた局面(状況)である。これらはごく一部の例であり、他にも詰みの形は様々な物がある。
- 図2は香車を使った詰みの一例。
- 図3は桂馬を使った詰みの一例。
- 図4は3枚の駒が連携した詰みの一例。
- 図5は桂馬のみによる詰みの一例。
- 図6は有名な頓死(とんし)の詰みの一例。先手が5五にあった角を、3三に動かしたところ。
- (飛車と馬の両王手で、序盤戦ながら後手玉が詰んでいる。)
- 図7は実戦での詰みの一例。敵味方の駒が複雑にからみあっているが、詰みとは無関係の駒も多く見られる。
日本将棋連盟による「詰み」の定義
一方の側が玉以外の駒の利きを敵玉の存在するマス目に合わせるような指し手、つまり玉に取りをかけることを“王手”といい、かけた側から見れば“王手をかける”という。王手をかけられた側が、その王手を次の一手で解除することが不可能になった状態、つまり次にどのように応接しても玉を取られてしまうことが防げない状態を“詰み”といい、玉側からみれば“詰まされた”という。 — 日本将棋連盟『将棋ガイドブック』「15 王手と詰み」
「詰み」と類似している将棋用語
- 「即詰み」
- 王手、王手の連続で、すぐに詰んでしまう形(局面)を指す。「即詰みがある」「即詰み手順」「以下、即詰み」といった表現で使用されている。
- 「詰める」と「詰ます」
- 相手の玉を詰みの状態にもっていくことを、「詰める」あるいは「詰ます」と呼ぶ。現在では慣習上、どちらの言葉も広く使われている。(ただし日本語としては、「詰める」の方が正しい[3]。)
- 「詰めろ」[4]
- これは「詰み」とは意味が異なる将棋用語である。「詰めろ!」と命令しているのではなく、「詰み」になる直前の状態(局面)を指している(上記の「即詰みがある」局面)。発音する時もアクセントを変えて、「詰める」の命令形と区別する場合が多い(→ 詳細は必至を参照)。
特殊な「詰み」
- 打ち歩詰め(うちふづめ)
- 最後に持ち駒の歩を打って相手を詰ますこと。将棋では反則とされていて、打ち歩詰めをした側が負けとなる。(詳細は打ち歩詰めを参照。)対して、盤上の歩を突いて詰ます(突き歩詰め)のは反則ではない。
- 都詰め(みやこづめ)
- 5五の地点(将棋盤の中央)で王が詰んだ状態。右図の例では、後手玉が都詰めになっている。あまり実戦では見られないが、詰将棋などでは有名な物もある。
- 雪隠詰め(せっちんづめ)
- 将棋盤の片隅(1一、9一、1九、9九)[5]で王が詰んだ状態。実戦でもよく現れる形であり、穴熊囲いなどが崩された場合こうなってしまうケースが多い。「雪隠(せっちん)」とは便所のことで、かつて便所は家の隅に配置されるのが慣習だったため。転じて「状況が行き詰ってどうにもならないさま」を指す言葉としても使われる。
その他
- プロの公式戦においては、完全に詰むまで指すことは極めて稀であり、自玉が即詰みの筋に入っている場合や、必至の場合など、ルール上は指し続けることができるものの、詰みが避けられないと判断した時点で投了するのが普通である。
- 最近では玉将だけでなく、飛車(竜王)や角行(竜馬)、金将などの駒が死ぬことも「詰む」ということがあるが(例:「飛車が詰む」など)、これは本来の用法ではなく、玉将以外の駒を殺したり取ったりしても当然その時点で直接勝ちになるわけではない。
チェスの「詰み」
チェックメイトの基本
- チェスの詰みはチェックメイト(Checkmate)またはメイト(mate)と呼ばれている[6]。
- チェックメイトの考え方は、将棋の「詰み」の概念と重なる部分が多い。
立場を逆に考えた場合、次の3つの条件が全部そろった時が「チェックメイトされた」状態である。
- 自分の手番である。
- 相手にチェックされている。
- 合法手がない。つまり、反則にならずに次に動かせる駒[7]が一つもない。
チェックメイトの詳細
- チェックメイトの状態は、「mate」あるいは「#」(シャープ)で表現する。
- 例:43.Qe7#(43手目に白がクイーンをe7に動かして、黒をチェックメイトした。)
- チェックメイトは(キング以外の)すべての駒で行う事ができる[8]。ポーンを動かしてチェックメイトにする事も、ルール上まったく問題ない。
- 中級者・上級者同士の実戦(主に公式戦)では、チェックメイトまでゲームを続けるケースはほとんどない。適切な局面で、劣勢な側が自分からリザイン(投了)するのが一般的である。
- チェックメイトの語源は、ペルシア語の「Shah Mat」と言われている。意味は「待ち伏せにあった王、打ち負かされた王」。決して「死んだ王」という意味ではない[9]。
チェックメイトの例
次のチェス図2~4は、すべて白に黒がチェックメイトされた局面。実戦のチェックメイトは、将棋同様に敵味方の駒(ピース、ポーン)が複雑にからみあうケースが多い。
- チェス図2: クイーンとルークを使ったメイト
- 白のg7のクイーンがルークであっても、やはり黒はチェックメイトされている。
- チェス図3: クイーンとポーンを使ったメイト
- 将棋の頭金(あたまきん)に似ており、俗に「頭クイーン」とも呼ばれている。
- チェス図4: 2つのビショップを使ったメイト
- あまり実戦では見られないが、エンディングの基本形の一つである。
- チェス図5: 実戦例1
- 実戦でのチェックメイト(白勝ち)
- チェス図6: 実戦例2
- 実戦でのチェックメイト(黒勝ち)
チェックメイトとステイルメイト
チェックメイトとは別の状況として、ステイルメイトと呼ばれる状況が発生する事がある。これは「自分の手番」で「合法手がない」が、相手に「チェックはされていない」状況である。これが発生してもゲームは終了となるが、チェックメイトとは別の扱いになっている。チェスにおいてはステイルメイトは非常に重要な概念であり、どんなに戦力差が開いていても引き分けとなる。尚、ステイルメイトは将棋でも理論上は発生しうるが、公式戦ではステイルメイトに相当する規定はなく、慣習的に詰みと同様にステイルメイトされた側の負けとされている。
特殊なチェックメイト
スマザード・メイト
Smothered mate (窒息メイトとも)
- 自陣の駒によって逃げ道をふさがれているキングを、ナイト単独でチェックメイトにすること。
バックランク・メイト
Back rank mate
- 味方のポーン等が障害となり、自陣の最下部(白なら1ランク、黒なら8ランク)で詰まされる事。黒側の3つのポーンに注目して欲しい。実戦でも多く見られる形で、メイトする駒はルークかクイーンである。
- (バックランクの定義については、「チェスボード内の名称」の図5を参照。)
エポレット・メイト
Epaulette mate (肩章メイトとも)
- 自陣の駒によって逃げ道をふさがれているキングを、ルークまたはクイーン単独でチェックメイトにすること。キングを囲う駒の形が、将校の肩章に似ている事から名付けられた。
その他の有名なメイト(すべて初期配置の、白の第一手からのゲーム)
- 白のフールズ・メイト(Fool's mate)
白が最も早く詰む手順
- 1.f3? e5 2.g4?? Qh4#
- 黒のフールズ・メイト(Fool's mate)
黒が最も早く詰む手順
- 1.e4 f6? 2.d4 g5?? 3.Qh5#
- 学者メイト(Scholar's mate)
- 1.e4 e5 2.Qh5 Nc6 3.Bc4 Nf6?? Qxf7#
- レ・ガルのメイト(Légal Trap)
レ・ガルが実際に行った手順
- 1.e4 e5 2. Nf3 Nc6 3. Bc4 d6 4. Nc3 Bg4?! 5.h3 Bh5? 6. Nxe5!! Bxd1?? 7. Bxf7+ Ke7 8. Nd5#
- ボーデン・メイト(Boden's Mate)
ボーデンが実際に行った手順
- 1.e4 e5 2.Nf3 d6 3.c3 f5 4.Bc4 Nf6 5.d4 fxe4 6.dxe5 exf3 7.exf6 Qxf6 8.gxf3 Nc6 9.f4 Bd7 10.Be3 O-O-O 11.Nd2 Re8 12.Qf3 Bf5 13.O-O-O? d5! 14.Bxd5?? Qxc3+ 15.bxc3 Ba3#
その他のチャトランガ系ゲームの「詰み」
- 中国・ベトナムの将棋(象棋、コートゥオン)の「詰み」 → シャンチーを参照。
- 韓国・北朝鮮の将棋の「詰み」 →チャンギを参照。
- タイ王国・カンボジアの将棋の「詰み」 →マークルックを参照。
- ミャンマーの将棋の「詰み」 →シットゥインを参照。
比喩
物事において、どうしようもなくなった時を「詰み」と喩えて言う。例:「方法がない。これ以上無理だ、詰んだ!」等
注釈
- ↑ 本将棋では理論上、1枚の攻め駒(飛車、角行、桂馬、香車、龍王、龍馬のいずれか)で敵の玉将を詰めることができるが、これは敵の玉将の逃げようとする場所が敵の駒に囲まれていて動けず、かつ桂馬以外の場合は合駒ができない(敵に持ち駒がないかあっても二歩などの反則で打てず、かつ移動合もできない)場合に限られるので、「敵味方含めて1つの駒で玉将を詰ませた」とはいえない(このようなケースが実戦で発生することもほとんどない)。また、中将棋、大将棋、天竺大将棋や大大将棋などの大型将棋類では獅子や火鬼、鉤行などの強力な駒1枚で周囲が敵の駒に囲まれていない玉将を詰める、つまり「敵味方含めて1つの駒で玉将を詰ませる」ことができるが、本将棋にはそのような駒はない。
- ↑ 空き王手の場合、「玉将を動かして詰み」ということはありうる。
- ↑ 日本語の文法的には、下記の語法となっている。
- 「詰める」 :他動詞
- 「詰ます」 :自動詞「詰む」+使役の助動詞「せる」
- 王側は相手に詰められることはあっても自ら詰むことはないため、厳密には「詰める」の方が正しい。「詰め将棋」とは表現するが、「詰ませ将棋」とは言わないのと同様である。
- ↑ 「詰めろ」と同じ意味の「詰めよ」もあるが、こちらは使用される事が比較的少ない。
- ↑ 通常先手玉は1九か9九の地点、後手玉は1一か9一の地点で詰まされる形になる。非常に発生しにくいケースである、入玉した後での雪隠詰めを除く。
- ↑ JCA(日本チェス協会)では、「・」を入れた「チェック・メイト」という表現を使用している。
- ↑ 駒 : 厳密にはChessmen、つまりピース(pieces)およびポーン(pawns)を指す。
- ↑ ディスカバードアタックの場合、「キングを動かしてチェックメイト」ということはありうる。
- ↑ http://www.goddesschess.com/chessays/shahmatjan.html "The King Isn't Dead After All! The Real Meaning of Shah Mat or the Lesson of the Commode"], Jan Newton, GoddessChess.com, September 2003
参考文献
日本将棋連盟開発課 『将棋ガイドブック』 日本将棋連盟、2003年11月 ISBN 978-4-8197-0080-1
関連項目
外部リンク