芦田伸介

提供: miniwiki
2018/8/11/ (土) 21:35時点におけるAdmin (トーク | 投稿記録)による版 (1版 をインポートしました)
(差分) ← 古い版 | 最新版 (差分) | 新しい版 → (差分)
移動先:案内検索

芦田 伸介(あしだ しんすけ、1917年3月14日 - 1999年1月9日)は、日本俳優。本名は蘆田 義道(あしだ よしみち)[1]

満州で演劇活動に加わり、敗戦の引き揚げ後に劇団民藝に入団。1950年代からは日活のアクション映画に常連出演し、舞台を中心に映画・テレビドラマと幅広く活躍した。渋い演技に定評があり、ドラマ『七人の刑事』『氷点』の演技で人気を得た。著書に自伝『ほろにがき日々』など。妻は元タカラジェンヌ香久美ひかる(本名:石川明子)。娘婿は俳優の松山英太郎、孫は女優の由夏と俳優の芦田昌太郎

来歴・人物

1917年(大正6年)3月14日島根県松江市に生まれる。生家は松江藩の典医や剣術指南役を務めた家柄で、父は剣道教師だった[2]。松江商業学校(現在の島根県立松江商業高等学校)を経て、東京外国語学校マレー語学科に入学する[2][3]

1937年(昭和12年)、学校を中退して満州に渡り、大連で『ワーニャ伯父』の舞台を観て新劇の世界を志す[4]。満州電業に勤める傍ら新京放送劇団に加わり、やがて劇団仲間の森繁久彌らと放送劇団・コッコ座を結成する[2][3]1943年(昭和18年)、満洲映画協会の『血銭芙蓉』で映画に初出演する[4]。満州在留中、芦田は石川明子という女性と恋愛関係にあった。石川は新京の放送局でピアノ弾きをしていたが、渡満前は香久美ひかるという芸名のタカラジェンヌだった[5][注釈 1]。父が満州キリスト教団布教区長を務める牧師で、厳格な人だったため、なかなか結婚を認めてもらえなかった。窮余の一策、森繁の取り成しで結婚の許しを得、1945年(昭和20年)2月に結婚した[5][6]。結婚から6ヶ月後に敗戦を迎え、妻子を抱え生死の境をさまよったが、1947年(昭和22年)にやっとのことで帰国する[4]

帰国後は森繁らと劇団を作るが失敗し、劇団文化座を経て1949年(昭和24年)に劇団民藝に入団する[4]。舞台で活躍し、民藝がユニット出演する『原爆の子』『夜明け前』などの独立プロ映画にも出演する。当時は精悍でぶっきらぼうで、男くさい渋い地味な脇役を演じた[4]1950年代後半になるとアクション映画全盛の日活で悪役や刑事役を演じて常連出演するが、1958年(昭和33年)3月2日未明、NHKでラジオドラマの仕事を終えての帰路、乗車していたタクシーが小石川橋の都電の安全地帯に衝突する、という事故に遭遇。後部座席からフロントガラスを顔面から突き破り、顔面の裂傷や右眼球破裂など147針に及ぶ重傷を負う。顔の傷と共に失明の危機や、事故のショックにより一時失語症となり、役者生命が危ぶまれるが、翌年には再起を果たす[7]

1961年(昭和36年)、TBSの人気ドラマ『七人の刑事』に沢野部長刑事役でレギュラー主演。さらに1966年(昭和41年)のNETのドラマ『氷点』で深い葛藤を内に秘めた中年男を演じ、この2作で爆発的な人気を得た。また、舛田利雄監督の映画『わが命の唄 艶歌』では、艶歌の竜と呼ばれる名物レコードディレクター・高円寺竜三(モデルは馬渕玄三[注釈 2]を演じ、後にドラマ『涙の河をふり返れ〜艶歌より』『海峡物語』でも同役を演じるほどの当たり役となった。

1970年(昭和45年)、劇団民藝を退団し、以降は商業演劇新派にも出演した。映画・テレビでも多くの作品で活躍した。1997年(平成9年)、日本新劇俳優協会副会長に就任する[2]

1989年(平成元年)頃からC型肝炎肝臓がんを患って闘病生活を続けるが[2]、俳優としての活動は精力的に続けた。1999年(平成11年)1月9日肝臓癌のため東京都中央区国立がん研究センターで死去。81歳没。同年11月10日、松江市名誉市民の称号を贈られる。

一人娘である亜子は、松山英太郎と結婚。一男一女(のちの女優・由夏と俳優・芦田昌太郎)に恵まれるが、その後離婚。後年、芦田は「もう一人の父になりたい」との思いから二人を養子にしている。

受賞・受章歴

出演

映画

太字の題名はキネマ旬報ベスト・テンにランクインした作品

  • 原爆の子(1952年、近代映画協会) - 医者 役
  • 現代人(1952年、松竹) - 検事 役
  • 嫁ぐ今宵に(1953年、新映プロ) - 渋谷社長 役
  • 君に捧げし命なりせば(1953年、新映プロ) - 重役B 役
  • 夜明け前(1953年、近代映画協会・劇団民藝) - 暮田正香 役
  • 縮図(1953年、近代映画協会)
  • 伊豆の踊子(1954年、松竹) - 旦那 役
  • 足摺岬(1954年、近代映画協会) - 病院の助手 役
  • どぶ(1954年、近代映画協会)
  • 若い人たち(1954年、全国銀行従業員組合連合会) - 江口俊雄 役
  • 最後の女達(1954年、創映プロ) - 猪熊中尉 役
  • 黒い潮(1954年、日活) - 三井記者 役
  • 愛すればこそ(1955年、独立映画) - お客 役
  • 愛のお荷物(1955年、日活) - 代議士 役
  • 銀座二十四帖(1955年、日活) - 三ツ星五郎 役
  • 人生とんぼ返り(1955年、日活) - 辻 役
  • (1955年、近代映画協会) - 男 役
  • 第8監房(1956年、日活) - やらずの政 役
  • 真昼の暗黒(1956年、現代ぷろ) - 吉井判事 役
  • 雑居家族(1956年、日活) - 竹山 役
  • 悪魔の街(1956年、日活) - 赤木 役
  • 病妻物語 あやに愛しき(1956年、劇団民藝) - 運転手 役
  • 女優(1956年、近代映画協会) - 矢木新一郎 役
  • 孤獨の人(1957年、日活) - 松井勝 役
  • 私は前科者である(1957年、日活) - 稲田 役
  • 「廓」より 無法一代(1957年、日活) - 鳶辰 役
  • 危険な年齢(1957年、日活) - 道代のパトロン 役
  • 美徳のよろめき(1957年、日活) - 土屋省三 役
  • 裸女と拳銃(1957年、日活) - 神田象山 役
  • 負ケラレマセン勝ツマデハ(1958年、東京映画) - 課長 役
  • 張込み(1958年、松竹) - 捜査第一課長 役
  • 口から出まかせ(1958年、宝塚映画) - 新聞記者 役
  • 殺人と拳銃(1958年、日活) - 丸山部長刑事 役
  • 影なき声(1958年、日活) - 村岡 役
  • 果しなき欲望(1958年、日活) - 刑事 役
  • 獣のいる街(1958年、日活) - 大西刑事 役
  • 紅の翼(1958年、日活) - 佐々木忠弘 役
  • 人間の條件 第1・2部(1959年、にんじんくらぶ) - 松田 役
  • 第三の死角(1959年、日活) - 牧調査部長 役
  • 雑沓に光る眼(1959年、日活) - 浅井刑事 役
  • 網走番外地(1959年、日活) - 岩井看守 役
  • 群集の中の太陽(1959年、日活) - 永野社会部部長 役
  • 絞首台の下(1959年、日活) - 田名網警部 役
  • 爆薬に火をつけろ(1959年、日活) - 世郷隆光 役
  • 銀座旋風児シリーズ(日活)
    • 銀座旋風児(1959年) - 堀田剛造 役
    • 二階堂卓也銀座無頼帖 帰ってきた旋風児(1962年) - 中村捜査課長 役
  • 硫黄島(1959年、日活) - 三井兵曹長 役
  • にあんちゃん(1959年、日活) - 坂井 役
  • 天と地を駈ける男(1959年、日活) - 尾関勇太郎 役
  • 危険な女(1959年、日活) - 杉本隆吉 役
  • 鉄火場の風(1960年、日活) - 高木剛太郎 役
  • 青年の樹(1960年、日活) - 和久達之助 役
  • 喧嘩太郎(1960年、日活) - 大竹部長 役
  • やくざ先生(1960年、日活) - 伊藤刑事 役
  • 闘牛に賭ける男(1960年、日活) - 宗方画伯 役
  • 紅の拳銃(1961年、日活) - 小寺久 役
  • 大海原を行く渡り鳥(1961年、日活) - 磯部 役
  • 太陽、海を染めるとき(1961年、日活) - 水田船長 役
  • 真昼の誘拐(1961年、日活) - 大原元警視総監 役
  • 上を向いて歩こう(1962年、日活) - 永井徳三 役
  • 青年の椅子(1962年、日活) - 日東電機工業常務 役
  • 零戦黒雲一家(1962年、日活) - 潜水艦長加藤 役
  • 花と竜(1962年、日活) - 吉田磯吉 役
  • 七人の刑事シリーズ(松竹) - 沢田部長刑事 役
    • 七人の刑事(1963年)
    • 七人の刑事 女を探がせ(1963年)
    • 七人の刑事 終着駅の女(1965年)
  • 赤いハンカチ(1964年、日活) - 林田 役
  • 無頼無法の徒 さぶ(1964年、日活) - 青木警部 役
  • 博徒ざむらい(1964年、大映) - 清河八郎 役
  • ギター抱えたひとり旅(1964年、日活) - 辺見 役
  • 渡世一代(1965年、日活) - 飯塚 役
  • 昭和残侠伝 唐獅子牡丹(1966年、東映) - 田代栄蔵 役
  • 鉄火場仁義(1966年、日活) - 伊之助 役
  • 昭和最大の顔役(1966年、東映) - 三田村正義 役
  • 愛欲(1966年、東映) - 麻生会長 役
  • 女のみづうみ(1966年、現代映画社) - 水木有造 役
  • 新・事件記者 殺意の丘(1966年、東京映画) - 石川六造 役
  • 一万三千人の容疑者(1966年、東映) - 堀塚修 役
  • 赤い天使(1966年、大映) - 岡部軍医中尉 役
  • 黒部の太陽(1968年、石原プロ三船プロ) - 黒崎 役
  • わが命の唄 艶歌(1968年、日活) - 艶歌の竜 役
  • 富士山頂(1970年、石原プロ) - 葛木章一 役
  • 影の車(1970年、松竹) - 刑事 役
  • 戦争と人間(日活) - 伍代喬介 役
    • 第一部 運命の序曲(1970年)
    • 第二部 愛と悲しみの山河(1971年)
    • 第三部 完結篇(1973年)
  • 野良犬(1973年、松竹) - 佐藤 役
  • 人間革命シナノ企画・東宝映像) - 牧口常三郎
  • 球形の荒野(1975年、松竹) - 野上顕一郎 役
  • あいつと私(1976年、東宝企画) - 阿川正人 役
  • 風立ちぬ(1976年、ホリ企画制作) - 水沢欣吾 役
  • 姿三四郎(1977年、東宝映画) - 南小路光康 役
  • 柳生一族の陰謀(1978年、東映) - 土井大炊頭利勝
  • 残照(1978年、東宝映画) - 石沢医師 役
  • 事件(1978年、松竹) - 岡部検事 役
  • 野性の証明(1978年、角川春樹事務所) - 坂本防衛庁長官 役
  • 赤穂城断絶(1978年、東映) - 色部図書
  • ブルークリスマス(1978年、東宝映画) - 相場修司 役
  • 燃える秋(1979年、東宝映画) - 内村教授 役
  • 黄金のパートナー(1979年、東宝映画) - 神谷信博 役
  • 隠密同心 大江戸捜査網(1979年、東宝) - 鳴神鉄山 役
  • 真夜中の招待状(1981年、松竹) - 稲川英輔 役
  • この子の七つのお祝いに(1982年、松竹) - 高橋佳哉 役
  • 小説吉田学校(1983年、東宝) - 鳩山一郎
  • 迷走地図(1983年、松竹) - 桂重信総理大臣 役
  • 春の鐘(1985年、東宝映画) - 三宅藤一郎 役
  • マルサの女(1987年、伊丹プロ) - 蜷川喜八郎 役
  • 次郎物語(1987年、西友学習研究社) - 恭亮 役
  • アナザー・ウェイ ―D機関情報―(1988年、タキ・エンタープライズ) - 北原 役
  • 肉体の門(1988年、東映)- 彫留 役
  • 社葬(1989年、東映) - 野々村典正 役
  • 226(1989年、松竹富士) - 鈴木貫太郎
  • 千利休 本覺坊遺文(1989年、西友) - 豊臣秀吉
  • 少年時代(1990年、東宝) - 校長先生 役
  • 流転の海(1990年、東宝) - 河内善助 役
  • 動天(1991年、トーメン) - 水戸斉昭
  • 落陽(1992年、にっかつ) - 満鉄総裁 役
  • 美味しんぼ(1996年、松竹) - 大原大蔵 役

テレビドラマ

舞台

  • 三太物語(1951年、劇団民藝) - 村長 役
  • 山びこ学校(1951年、劇団民藝) - 村の青年 役
  • 炎の人(1951年、劇団民藝) - モーヴ 役
  • 巖頭の女(1952年、劇団民藝) - 戸黒俊平 役
  • 冒した者(1952年、劇団民藝) - 若宮 役
  • 十三階段(1952年、劇団民藝) - 岩木五兵衛 役
  • 五稜郭血書(1952年、劇団民藝) - 住吉丸の松五郎 役
  • 民衆の敵(1953年、劇団民藝) - 紳士 役
  • 日本の気象(1953年、劇団民藝) - 小日向 役
  • 常磐炭田(1954年、劇団民藝) - 間島鉄五郎 役
  • 神は知っていた(1954年、劇団民藝) - 医師ルイ・グロ 役
  • 闇の力(1954年、劇団民藝) - ミートリッチ 役
  • 大和の村(1955年、劇団民藝) - 津田菊二郎 役
  • ヴィルヘルム・テル(1955年、劇団民藝) - フュールスト 役
  • 恐怖(1955年、劇団民藝) - ジョン・オハラ 役
  • 帰らぬ人(1956年、劇団民藝) - 松木捜査主任 役
  • 最後の人びと(1956年、劇団民藝) - レーシチ 役
  • 遠い凱歌(1956年、劇団民藝) - 小林 役
  • 漁船天佑丸(1957年、劇団民藝) - クレメンス・ボス 役
  • 運命(1959年、劇団民藝) - 風間東作 役
  • どん底(1960年、劇団民藝) - メドヴェージェフ 役
  • 時と緋笠一家(1960年、劇団民藝) - 緋笠朔二郎 役
  • イルクーツク物語(1960年、劇団民藝) - セルジューク、ステパン・エゴーロヴィチ 役
  • 火山灰地(1961年、劇団民藝) - 辻章平 役
  • 台風(1963年、劇団民藝) - 石川宗吉 役
  • 狂気と天才(1963年、劇団民藝) - ケーフェルト伯爵 役
  • 夜明け前(1964年、劇団民藝) - 青山寿平次 役
  • 冬の時代(1964年、劇団民藝) - ショー 役
  • 開かれた処女地(1965年、劇団民藝) - イポリット・シャールイ 役
  • 地下室の噴水(1965年、劇団民藝) - ショー 役
  • 報いられたもの(1966年、劇団民藝) - ウィルフレッド・シダー 役
  • 白い夜の宴(1967年、劇団民藝) - 祖父 役
  • 汚れた手(1967年、劇団民藝) - ポール公 役
  • ヴェニスの商人(1968年、劇団民藝) - アントーニオー 役
  • 斬られの仙太(1968年、劇団民藝) - 水木庄左衛門 役
  • 正義の人々(1969年、劇団民藝) - スクーラトフ 役

吹き替え

CM

書籍

  • 『ほろにがき日々』、勁文社、1977年
  • 『歩いて走ってとまるとき』、勁文社、1996年 ISBN 9784766925807

脚注

注釈
  1. 石川(香久美)は宝塚歌劇団27期生で、同期に乙羽信子月丘夢路越路吹雪らがいた
  2. 五木寛之原作の『艶歌』で登場する人物である
出典
  1. 芦田伸介”. イザワオフィス. 1997年6月18日時点のオリジナルよりアーカイブ。. 2012閲覧.
  2. 2.0 2.1 2.2 2.3 2.4 芦田伸介、新撰 芸能人物事典 明治〜平成、コトバンク、2015年7月28日閲覧
  3. 3.0 3.1 森繁1999、p.34-35
  4. 4.0 4.1 4.2 4.3 4.4 キネマ旬報1979、p.12
  5. 5.0 5.1 藤原作弥『満州、少国民の戦記』、新潮社、1984年
  6. 森繁1999、p.34-35
  7. 芦田伸介『歩いて走ってとまるとき』、勁文社、1996年
  8. ドラマ 追跡 - NHK名作選(動画・静止画) NHKアーカイブス

参考文献

関連項目

外部リンク

  1. 中公文庫『笑ゥせぇるすまん』1巻164ページにて、モブキャラクターが「芦田伸介に似ている」という旨の発言をしており、頼母自身も「芦田本人に少し似ている」旨の発言をするシーンがあるが、アニメ版ではその発言・描写がカットされた。