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箱物行政(はこものぎょうせい)とは、庁舎学校公民館博物館運動施設などの公共施設の「建設」に重点を置く地方自治体政策を揶揄する表現のこと。

概要

日本において、国や地方公共団体などの行政機関が行った公共事業のなかには、施設や建造物の整備(設置すること)そのものが目的になり、計画や運用で本来明確にすべき「それを何に利用するか」や「どのように活用するか」が十分に検討されないまま事業を進めた結果、整備された施設が有効に活用されないばかりか維持管理の後年度負担が財政に悪影響を及ぼす非効率で無駄な事業となる事例が見られる。このように資材や機材を投入して建設することが第一義となり事業の便益を考慮しない行政手法を批判的に述べた用語で、そのような経緯で建設された施設を箱物と呼ぶことに由来する[1]。過度にインフラストラクチャー整備に重点を置く行政姿勢を批判する視点からの言葉である。

本来、道路橋梁ダム空港港湾公園上下水道多目的ホールなどのインフラ整備を行う公共事業は、最終的にそれらの施設が有効に活用されることで地域に直接的・間接的な経済波及効果を期待するものとされてきた。同時に公共事業は不況時に財政出動による有効な経済対策の一つと考えられていた。ただ、日本ではしばしばこれら施設の建設工事そのものが景気浮揚を目的として行われ、1980年代ごろから社会問題として認識され始め、こと1990年代からは財政状態に問題を抱えるところも方々に見出せ、過去の放漫財政の見直しという意味合いから厳しい目を向けられる箱物も方々に見出され報じられていった。

批判の論点

箱物の建設を批判する立場からは、これらの新施設の多くは建設行為そのものが目的となるあまり、国からの補助金獲得のため補助要件に見合う規格とするため、施設の採算性や機能性や定員数などが無視されたり、完成後に施設を運営する職員の質・教育などが不充分である、との批判がなされてきた。

この状況においては、新施設を建設したものの、起債で確保した建設費の償還や施設の運営維持費・修繕費などが負債として発生するが、利用度が振るわず施設の利益だけでは運営できないため税金で補填され続け、最終的に施設が莫大な赤字を発生させた挙句に閉鎖される状況も生まれてきている。

収益を目的としない施設においても、必要以上の設備である場合に維持費などが必要十分な施設よりも過剰に負担として発生、その一方で自治体が施設設置当時ほどの経済状態ではなく(あるいは当時見越したほどの発展が起こらず)同負担が支えきれないなどの問題に陥るケースもある。

バブル時代のツケ

日本でいわゆる「箱物」と呼ばれる施設群が乱立したのは、1980年代後半から1990年代にかけての時期、つまりバブル景気期とその後のバブル崩壊期とされている。特に1990年代中盤には主に景気対策として国費ベースで10兆円前後の予算が公共事業に投じられており、多数の施設が建設された。しかし、公共事業を重視する行政姿勢を「箱物行政」とする認識が国民の間に急速に広まり、1990年代末頃に国・地方双方の財政状況が悪化したこともあり、予算に占める公共事業費の割合は狭められ、2000年代中盤には公共事業費は国費ベースで7兆円前後にまで減少した。

1990年代後半頃からは、行政側も公共事業の計画策定や事業評価に費用便益分析を導入し、無駄とされるような施設建設の回避を図っている。

脚注

関連項目

外部リンク