私鉄

提供: miniwiki
2018/8/4/ (土) 15:56時点におけるAdmin (トーク | 投稿記録)による版
(差分) ← 古い版 | 最新版 (差分) | 新しい版 → (差分)
移動先:案内検索


私鉄(してつ,Private railway)は、私企業のみにより運営が行われる鉄道軌道、またはその事業者をさす言葉である。

アメリカの私鉄

今日のアメリカにおける私鉄は、一般客向けの定期旅客列車を運行していない[1]。鉄道を所有する企業は社内の輸送システムとして使うだけである。 かつては中近距離旅客輸送を担ったインターアーバンと呼ばれる都市間電車を運転する企業が全米各地に存在したが、モータリゼーションの進展によりほとんどが撤退し、わずかに残ったものも公営化済み[2]である。

大韓民国の私鉄

日本統治下の私鉄路線は、韓国ではアメリカ占領時期に国有化された。これに伴い、朝鮮鉄道京春鉄道などの路線が1946年5月7日国有化され、咸平軌道などの路面電車だけが私鉄として残された。その後、1960年代に路面電車が全廃され、韓国の鉄道は完全に国有のみとなった(その後、ソウル地下鉄1号線の開業などで、国有以外の公営鉄道も増えている)。

現在、韓国において「私鉄」とされる国有鉄道・公営鉄道以外の路線は、全羅南道和順郡和順線한국어版や、慶尚北道浦項市ポスコ線といった専用鉄道のみとなっている。

なお、空港鉄道ソウル市メトロ9号線新盆唐線など、民間資本で設立された鉄道事業者がいくつか存在するが、路線運営のみを担う形であるため「私鉄」とはやや異なる。

中国の私鉄

中国では2006年に羅定鐵路が競売で深圳市中技實業 (集團)有限公司に売却され、中国において最初で唯一の私鉄となっている。

ドイツの私鉄

ドイツ連邦共和国の民間鉄道が正式に1949年以来、非連邦政府が所有する鉄道と呼ばれている。

日本の私鉄

日本における定義

日本では、民営鉄道(みんえいてつどう、略称「民鉄」=みんてつ)とも呼称され、JRグループや第三セクター鉄道、場合によっては東京地下鉄などの鉄道や軌道を除く、いわゆる日本民営鉄道協会(民鉄協)に属する鉄道事業者を指すことがある。

1987年日本国有鉄道(国鉄)が分割民営化されたことにより、すべてのJR各社もすでに組織形態は公社ではなく私企業(株式会社)となっている。JR貨物JR北海道JR四国が依然として全発行済み株式鉄道建設・運輸施設整備支援機構に保有され旅客鉄道株式会社及び日本貨物鉄道株式会社に関する法律(JR会社法)による規制を受ける特殊会社である一方、JR東日本JR西日本JR東海(本州3社)とJR九州は、株式上場後民間保有の株式の割合が高くなったことから、JR会社法による規制から外れ、その後いずれも完全民営化がすでに完了したため、事実上民間の鉄道事業者であるといえる。

しかし、歴史的な経緯から、「私鉄」という場合、JR各社は含めないのが一般的である。これは、「私鉄」が「国鉄」の対義語であり、JRが日本国有鉄道改革法(国鉄改革法)で「国鉄」の事業を引き継いだ法人と位置づけられているからである。また、JR自体も「JR線」と「私鉄線」を別けて表示している[3]

完全民営化された本州3社が民鉄協に非加入で、JR各社の労働組合も、国鉄時代から活動している国鉄労働組合(国労)か国鉄動力車労働組合(動労)・鉄道労働組合(鉄労)などを前身とする全日本鉄道労働組合総連合会(JR総連)・日本鉄道労働組合連合会(JR連合)のいずれかに属し、この点でも日本私鉄労働組合総連合会(私鉄総連)などに加入している組合が多い他の鉄道事業者とは一線を画する。ただし、少数派の組合である全国鉄動力車労働組合(全動労)はその後JR以外の組合と組織統合し、全日本建設交運一般労働組合(建交労)という上部団体を結成した。

一方、東京地下鉄は帝都高速度交通営団時代から民鉄協に加入し、大手私鉄の一つに数えられ、その労働組合も営団時代から私鉄総連に加入しているが、2010年現在でも全株式を日本国政府及び東京都が保有し、東京地下鉄株式会社法の規制を受ける特殊会社である。また、株式会社の形態ながらも自治体が出資する第三セクター鉄道の中にも青い森鉄道神戸高速鉄道など民鉄協に加入する事業者がある。

したがって、日本における私鉄(民鉄)の定義としては、概して言えばJRを除いた民間事業者による鉄道ということになる。国鉄及びその承継法人ではない民間企業の形態をとる事業者の運営による鉄道・軌道及び事業者自体を指し、狭義では公営企業・東京地下鉄・第三セクター鉄道の鉄道・軌道と事業者自体を含めず、最も広義ではそれらも含める[4]

経営規模における私鉄の区分

日本の私鉄各社は経営規模等によって大手私鉄中小私鉄に区分される(中小私鉄の中でも規模の大きい会社を準大手私鉄として3つに区分することもある)。これらの区分は民鉄協によるもので、明確な定義・基準は存在しない。国土交通省においても民鉄協による区分が用いられる。

明治期は以下が5大私鉄とされた[5]

詳細は、これらの各項目を参照のこと。

私鉄各社の事業展開

私鉄各社は鉄道事業のほか、異業種にその企業の直営または企業グループによって参入しているのが顕著に見られ、多種の異業種に亘って事業展開する鉄道事業者の企業グループが幾つも見られる(殊に大手私鉄)。異業種では、百貨店、不動産業、レジャー関連、宿泊施設などが挙げられ、不動産業においては沿線のデベロッパーとなってきた事業者もある。

東京急行電鉄西武鉄道阪急電鉄近畿日本鉄道名古屋鉄道西日本鉄道のように、鉄道事業以外では企業グループ全体が自社沿線を超えた事業活動をする事業者も存在する。

しかし、分割民営化後のJR各社もその関連企業が鉄道事業以外に多種の事業展開を行っており、私鉄各社のみに顕著な特徴ではなくなった。


脚注

  1. ほとんどの定期長距離旅客列車は1971年5月1日に発足したアムトラック(全米鉄道旅客公社)に移管され、最後まで自社運行を続けたリオグランデ鉄道1983年4月24日をもって定期旅客列車の運行を終了した。
  2. シカゴ - サウスベンド (インディアナ州)サウスショアー線はNICTD(インディアナ州北部通勤輸送公団、日本車輌製造. “米国・NICTD(インディアナ州北部通勤輸送公団)向け電車 1号車完成記念式典”. . 2015/10/30閲覧.)が、フィラデルフィア - ノリスタウン (ペンシルベニア州)ノリスタウン高速線English版SEPTAが運営している。
  3. http://www.jreast.co.jp/renrakuteiki/index.html
  4. たとえば、鉄道ファン誌に掲載される「RAIL NEWS」では、記事をJR、第三セクター、民鉄(およびその他)に分類して掲載しているが、公営企業は広義の私鉄と解釈し「民鉄」に分類されている。
  5. 「表7 五大私鉄及び官設鉄道の連帯輸送比率」『鉄道』(p162)

参考文献

関連項目

外部リンク