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{{otheruses|動物の器官|砂を入れた袋|土嚢}}
 
[[Image:Gesier.jpg|thumb|250px|[[アヒル]]の砂嚢]]
 
  
'''砂嚢''' (さのう、[[英語|英]]: '''gizzard'''、鳥類においては '''ventriculus'''、'''gastric mill'''、 '''gigerium''' とも) は[[鳥類]]、[[爬虫類]]、[[ミミズ]]、[[魚類]]などに見られる消化器官である。分厚い筋肉からなる袋状あるいは管状の器官で、食べたものをすりつぶす機能を持つ。小石などを利用して消化の助けとする種もある。[[昆虫]]や[[軟体動物]]では、砂嚢の中に[[キチン質]]の小板や歯のような構造を持つものもある。
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'''砂嚢''' (さのう、[[英語|英]]: '''gizzard'''、鳥類においては '''ventriculus'''、'''gastric mill'''、 '''gigerium''' とも)  
  
==名称==
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動物の消化管の一部で、内側がキチン質の厚い層で覆われ、強力な筋肉をもつ器官の総称。砂嚢は、堅い穀粒や繊維質に富んだ食物を摂食する動物にみられ、これらの食物を砕いて消化を容易にする。貧毛類のミミズでは嗉嚢(そのう)に続く丸い部分で、摂食した砂や土の粒を摩砕と研摩によって小さくし、腸における有機物の吸収の効率を高める。軟体動物では、紅藻・褐藻などを摂食するアメフラシ(後鰓(こうさい)類)は、クチクラの歯をもって藻類を破砕する砂嚢と、濾過(ろか)器として働く砂嚢の二つをもつ。頭足類のマダコ、コウイカは肉食動物ではあるが、食道に続いて砂嚢をもち、この砂嚢は胃としても働き、消化を行う。昆虫のうち直翅(ちょくし)類などでは、嗉嚢に続く球形の部分が砂嚢を形成する。ゴキブリの砂嚢は、6本の放射状に配列された歯をもつ。鳥類の胃は、消化酵素ペプシンを出す前胃と、それに続く砂嚢に分かれていて、とくに草食性の種類では、砂嚢はキチン質の層も筋肉層もきわめてよく発達している。鳥類は歯をもたないが、食物は前胃で消化酵素と混ぜられたのちに砂嚢で時間をかけてそしゃく・消化される。この仕組みは、食物を摂取したのちにすぐ飛翔(ひしょう)するのに都合がよいと考えられる。
英語での名称 ''gizzard'' は[[中英語|中世の英語]]の ''giser'' に由来する。この語は[[古フランス語]]が元だが、その元は[[ラテン語]]で[[内臓]]を意味する ''gigeria'' である<ref>{{cite web |url=http://www.merriam-webster.com/dictionary/gizzard |title=Gizzard |publisher=Merriam-Webster Online Dictionary |accessdate=2009-02-05}}</ref>。そのラテン語と同じく[[印欧祖語]]から派生した[[ペルシャ語]]の ''jigar'' (肝臓、liver の意) が ''gigeria'' の元ではないかと考えられている。
 
 
 
日本語での砂嚢、あるいは'''砂肝'''(すなぎも)、'''砂ずり'''という俗称は、家禽類を調理する際に砂嚢に砂礫が見られることに由来する<ref> 改訂新版 [[世界大百科事典]]、平凡社、2007.</ref>。
 
 
 
==構造==
 
[[Image:PigeonAnatomy.png|thumb|240px|[[ハト]]の消化器官。8 が砂嚢。両足の間の[[十二指腸]]の右側に見える。]]
 
鳥類は、ついばんだ食べ物をまず必要に応じて[[素嚢]]に飲み込む。食べた物はそれから、消化液を分泌する[[前胃]]に送られる。それに続いて砂嚢 (筋胃とも呼ばれる) に送られる。砂嚢では、あらかじめ飲み込まれていた砂礫によって食べたものを[[咀嚼]]して胃に送る。
 
 
 
===砂嚢の砂===
 
動物の中で歯を持たない種では、小石や砂を飲み込んでおいて消化の助けとするものがある。鳥類はそのために砂嚢を持つが、全ての鳥類が砂礫などを飲み込んでいるわけではない。砂礫などを飲み込む種では、以下のようにして咀嚼を行う。
 
:'''鳥類は砂礫を飲み込んで、砂嚢中でそれらを歯の代わりとして、植物の種などの食べたものを砕き、消化の助けとする<ref name="Solomon">Solomon, E.P., Berg L.P., and Martin D.W., 2002. ''Biology Sixth Edition''. Thomson Learning Inc., Australia, Canada, Mexico, Singapore, Spain, United Kingdom, United States pp.&nbsp;664</ref>。'''
 
砂嚢に飲み込まれている砂礫は[[胃石]]と呼ばれ、多くの場合角の取れた滑らかな形状をしており、咀嚼とあわせて胃の中を洗浄する機能も果たしている。しかしあまりに滑らかだと咀嚼に適さないため、その場合には[[吐き戻し]]により排出される。
 
 
 
==動物の砂嚢==
 
===鳥類===
 
鳥類はすべて砂嚢を持つ。[[シチメンチョウ]]、[[ニワトリ]]、[[アヒル]]、さらには[[エミュー]]の砂嚢は料理に多く用いられる (後述)。
 
 
 
===魚類===
 
世界各地の河口域で見られる[[ボラ科]]の魚類や、[[アメリカ]]や[[メキシコ]]の淡水湖や清流に住む[[アロサ]]には砂嚢がある。[[アイルランド]]の淡水湖やスコットランドの[[ファーマナ州]]の[[メルヴィン湖]] ([[:en:lough Melvin|lough Melvin]]) の[[ギラルー]] ([[学名]]: ''Salmo stomachius''、[[英語|英]]: [[:en:gillaroo|gillaroo]]、[[ブラウントラウト]]の一種) の砂嚢は、主なエサである巻き貝の殻を砕くことができる。
 
 
 
===爬虫類===
 
[[ワニ目]]は[[アリゲーター]]も[[クロコダイル科]]も砂嚢を持っている。
 
 
 
====恐竜====
 
[[恐竜]]も多くの種で砂嚢を持っていたと考えられており、以下の恐竜の化石で胃石が見つかっている。
 
* [[プシッタコサウルス]]
 
* [[マッソスポンディルス]]
 
* [[プラテオサウルス]]
 
* [[オメイサウルス]]
 
* [[アパトサウルス]]
 
* [[バロサウルス]]
 
* [[ディクラエオサウルス]]
 
* [[セイスモサウルス]]
 
[[クラオサウルス]] (''[[:en:Claosaurus|Claosaurus]]'') にも砂嚢があったと考えられていたが、現在ではそれは、A) クラオサウルスではなく[[エドモントサウルス]] (''Edmontosaurus annectens'') であった、B) 川の流れで丸くなった石であった、のどちらかではないかと考えられている<ref>Creisler, Benjamin S. 2007. Deciphering duckbills. Page 199 in Carpenter, Kenneth (ed.). Horns and Beaks: Ceratopsian and Ornithopod Dinosaurs. Indiana University Press: Bloomington and Indianapolis.</ref>。
 
 
 
===無脊椎動物===
 
無脊椎動物では多くの種が砂嚢を持っており、消化の役割を果たしている。
 
 
 
==人間との関わり==
 
<!--[[File:FriedGizzards.JPG|thumb|砂嚢と肝臓の揚物]]-->
 
ヒトの生活において[[家禽]]の砂嚢は、世界各地で食用として用いられている<ref>{{cite book |url=http://books.google.com/books?client=safari&rls=en-us&q=gizzard%20recipe&oe=UTF-8&hl=en&um=1&ie=UTF-8&sa=N&tab=wp |title=List of cookbooks containing gizzard recipes |publisher=Amazon.com |accessdate=2009-02-05}}</ref>。
 
 
 
[[ニワトリ]]の砂嚢を焼いたものは、[[ハイチ]]および[[東南アジア]]全域で[[露店]]や[[屋台]]で供されている。[[インドネシア]]では、家禽のフライのコース料理の一部として砂嚢と肝臓が提供される。[[ポルトガル]]では砂嚢の[[煮込み]]が、[[アメリカ合衆国中西部|米国中西部]]では[[シチメンチョウ]]の砂嚢の漬物 (ピクルス) が軽食としてある。[[ハンガリー]]では[[パプリカ]]ともに煮られる。[[ナイジェリア]]では砂嚢を煮る、あるいは焼いて、[[シチュー]]や揚げたプランテーン (plantain、料理用バナナ) とともに食される。米国南部では揚げた砂嚢に辛いソースあるいは蜂蜜とマスタードをかけ、あるいはエビ類 (crawfish) とエビソースに合わせた料理があり、[[ニューオーリンズ]]では[[ガンボ (料理)|ガンボ]] (gumbo) と呼ばれている。シカゴではバターで焼いて揚げたものがある。ヨーロッパでは、砂嚢とマッシュポテトを組み合わせた料理が多く見られる。[[フランス]]の[[ドルドーニュ県|ドルドーニュ]]地方ではペリゴール・サラダ (Perigordian Salad) にクルミ、クルトン、レタスとともに砂嚢が用いられる。米国[[ミシガン州]]ポッターヴィル (Potterville) の商工会議所では、2000年から毎年6月に「砂肝祭り (gizzard fest)」を開催しており、週末のイベントとして砂嚢の早食いコンテストが行われている<ref>{{cite web |url=http://www.gizzardfest.com/gizzardfest.html |title=Gizzard Fest |publisher=Potterville Chamber of Commerce |accessdate=2011-02-15}}</ref>。
 
 
 
[[パキスタン]]では砂嚢は一般にサングダナ ("Sangdana") と呼ばれているが、この語はペルシャ語の Sang (石) と dana (粒) に由来している。パキスタンでは焼いてから煮た砂嚢をカレーにした料理がある。
 
 
 
[[イディッシュ語]]では砂嚢は "pipik'lach" ([[へそ]]の意) と書かれる。[[ユダヤ教]]において[[カーシェール]]な種の鳥の砂嚢は、内面が緑あるいは黄色がかっている。この内膜をそのままにして調理すると非常に苦くなるため、調理の前に取り除く。ヨーロッパ東部のユダヤ教の伝統的な料理では、ニワトリの砂嚢、首、脚は混ぜて調理することがあるが、カーシェール的な制約から肝臓は煮なければならないため、肝臓を他と混ぜて調理することはない。カーシェールな肉を売る店では、チキンスープ用として砂嚢、首、脚をニワトリ胴の中に入れたものが見られる。
 
 
 
[[ネパール]]の[[ゴルカ郡|ゴルカ]]地方では、砂嚢は肝臓やトマト、ニンニク、チリとともに揚げたカーチマーチ (''karchi-marchi'') と呼ばれる副菜があり、飲酒時にも供される。
 
 
 
[[インド]]の[[パンジャブ州|パンジャブ]]地方では、[[大根]]、チリ、ニンニクと煮たジブジャブ (''Jib-Jab'') という飲料 (ジブジャブ・ジュース) がある。
 
 
 
[[ウガンダ]]や[[カメルーン]]、[[ナイジェリア]]では、調理されたニワトリの砂嚢は、その食事の際のもっとも年長、あるいはもっとも人徳のある男性に与える習慣がある。
 
 
 
[[西洋料理]]において[[ジブレッツ]]には鳥類の心臓、肝臓、砂嚢などが含まれているが、これはそのまま、あるいはスープにして供される。また保存食でもある。
 
 
 
[[台湾]]では「([[当て字]] 腱) kiān」と称し、砂嚢は時間をかけて調理され、スライスしてタマネギあるいは醤油とともに食される。
 
 
 
[[中華人民共和国|中国]]本土では、「肫、胗 zhēn」と称し、鶏の他、[[アヒル]]の砂嚢が、脚、首、心臓、舌、頭部などアヒルの他の部位とともにたれで煮込んだ料理「滷鴨肫」として食べられている。真空パックにした商品もあり、軽食として家庭や旅行中にもよく食べられている。[[四川省]]と[[湖北省]]が砂嚢料理の産地として知られている。また[[湖北省]]の[[武漢市]]には「久久丫」 (Jiǔjiǔyā) という、辛い砂嚢の料理を売りにした料理チェーン店がある。中国の北部では[[北京ダック]]店の料理のひとつとして砂嚢がある。
 
 
 
[[日本]]では'''ズリ'''あるいは'''砂肝'''と呼び、主に[[焼き鳥]]料理の素材のひとつにされる。また[[九州]]では[[唐揚げ]]にされる。
 
 
 
== 用語の用法 ==
 
英語の ''gizzard'' という語は、俗語的に腸、あるいは臓物一般の意味で用いられることもある。日本語の「砂嚢」にはそういった混用はないが、砂嚢の俗称としての「砂肝」には「肝」の字が含まれるため、ときおり誤用が見られる。
 
 
 
== 参考文献==
 
{{reflist}}
 
* Dyce, Sack, Wensing, 2002. ''Textbook of Veterinary Anatomy'' Third Edition, Saunders. ISBN 0-7216-8966-3
 
  
 
==関連項目==
 
==関連項目==
{{commonscat|Bird anatomy|鳥類の体の構造}}
 
 
* [[胃]]
 
* [[胃]]
 
* [[前胃]]
 
* [[前胃]]
* [[鳥類の体の構造]]
 
  
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[[Category:魚類学]]
 
[[Category:魚類学]]

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砂嚢 (さのう、: gizzard、鳥類においては ventriculusgastric millgigerium とも)

動物の消化管の一部で、内側がキチン質の厚い層で覆われ、強力な筋肉をもつ器官の総称。砂嚢は、堅い穀粒や繊維質に富んだ食物を摂食する動物にみられ、これらの食物を砕いて消化を容易にする。貧毛類のミミズでは嗉嚢(そのう)に続く丸い部分で、摂食した砂や土の粒を摩砕と研摩によって小さくし、腸における有機物の吸収の効率を高める。軟体動物では、紅藻・褐藻などを摂食するアメフラシ(後鰓(こうさい)類)は、クチクラの歯をもって藻類を破砕する砂嚢と、濾過(ろか)器として働く砂嚢の二つをもつ。頭足類のマダコ、コウイカは肉食動物ではあるが、食道に続いて砂嚢をもち、この砂嚢は胃としても働き、消化を行う。昆虫のうち直翅(ちょくし)類などでは、嗉嚢に続く球形の部分が砂嚢を形成する。ゴキブリの砂嚢は、6本の放射状に配列された歯をもつ。鳥類の胃は、消化酵素ペプシンを出す前胃と、それに続く砂嚢に分かれていて、とくに草食性の種類では、砂嚢はキチン質の層も筋肉層もきわめてよく発達している。鳥類は歯をもたないが、食物は前胃で消化酵素と混ぜられたのちに砂嚢で時間をかけてそしゃく・消化される。この仕組みは、食物を摂取したのちにすぐ飛翔(ひしょう)するのに都合がよいと考えられる。

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