男性差別

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男性差別(だんせいさべつ)とは、男性に損害となる性差別のことである。対義語の一つで、女性への差別は女性差別という。類義語として、「男嫌い」を意味するミサンドリー英語: misandry)がある。

概要

男性差別には、基本的人権に関るものなど社会制度の差別や、文化的・慣習的な行動様式としての差別がある。

男女が共に損害を被っている社会問題について、さも女性だけが苦しんでいるかのように述べるのは間接差別による男性差別であり、家庭内暴力などの被害者を女性に限定して議論を進めることが不当な立法や行政を促進しているとの批判や指摘もある[1]。(なお、国連女子差別撤廃条約では、間接差別も直接差別と同様に性差別に当たると定めており、日本は国連の女子差別撤廃委員会から「間接差別の禁止の法制化」について1994年と2003年に勧告を受けている[2]。)また、女性専用車両レディースデーなどの措置や、アファーマティブ・アクションなどの男女間格差を是正するための女性優遇の措置によって、男性差別が惹起されているという意見もある。レディースデーなどは商業活動であり差別ではないとの意見もある[3]。同じ性差別でも女性差別に比して司法の場で認められ始めた時期は遅いが、近年では2013年11月25日に大阪地裁が遺族年金について違憲判決を下すなどしている(後述)。

事例

アメリカ

  • 18歳から25歳までの永住権保持者または市民の男性には選抜徴兵登録制度English版に郵便局で登録することが強制されている。拒否すると、州によっては罰金刑に処される他、政府の奨学金を受けられなくなるなどの各種不利益を受ける[4]。ただし、この男性限定の選抜徴兵登録については、連邦最高裁で男性差別ではなく合憲との判決が下されている。
  • 1996年7月9日付けのボストン・グローブ紙では、13歳の少年を強姦したとして訴えられた37歳の女性の事件を報道したが、その中で「少年も望んでいたに違いないさ」「夢のようなことさ」「間違いなく強姦だけど、男の子は若いうちから性的に活発じゃなきゃっていう社会通念があるから、みんなどこかで許容してしまっているのよ」といった、男性被害者に対する偏見があるとしている[5]
  • 2005年に、8歳の少年が14歳の少女にわいせつ行為をされた際に「たとえ初めは少女が誘ったにせよ少年は対等の行為参加者だった」として少年のほうが「未成年者へのわいせつ行為」で訴えられた事件が報道された(後に検察側は起訴を取り下げた)。怒った母親は、こういう場合に親は息子が起訴されることを恐れず、州の担当部署に堂々と訴えるべきだと述べている[6]
  • アメリカ合衆国では女子大学に男子学生を入学させないことを差別であるとしている[7]。一方で、男子大学もディープ・スプリングス大学、ハンプデン・シドニー大学、モアハウス大学、ワバシュ大学、聖ヨハネ大学(ミネソタ州)など数校が存在している[8]

イギリス

  • かつて男性の自動車保険の保険料は女性の2倍であった。BBCの自動車番組トップ・ギアではそれを皮肉って「ペニスを切り落とせ」と言う台詞が出てくるほどであった[9]。なおこのような格差が生まれた背景は、男性は女性に比べ運転機会が多く、女性に比して44:32で事故発生を起こす危険性が高いため、男性の保険料を高く設定する必要があるためであり、単なる性別差別ではない。また現在では、同じ保険であれば男女で同じ保険料とするよう法律で定められている。

韓国

  • 兵役の有無[10][11]韓国の男子学生の46.3%は、韓国内に兵役などの男性差別があると考えている[12]
  • 2006年に民法が改正されるまでは、婚姻可能年齢を男性は満18歳、女性は満16歳と定めていた(日本と同じ)[13]。しかし、現在は男女平等の観点から男女とも満18歳に統一されている。
  • 国家有功者・独立有功者及びそれらの遺族について、国家養老施設で保護される条件が、女性は60歳以上、男性は65歳以上と定められている[13]
  • 直系尊属家族の手当需給権者が男性尊属の場合は60歳、女性尊属の場合は55歳と定められている[13]
  • 2008年、ソウル地下鉄に女性専用車両を導入する計画が、女性団体からの反対などにより保留となった[14]
  • 大韓航空には客室乗務員の募集と採用において男性を排除する採用慣行が存在するため、2008年に国家人権委員会からこれを男性差別だと判断され、この採用慣行を是正するように勧告された[15]

シンガポール

  • 鞭打刑は、18歳から50歳の男性で医師が執行可能と判断した者のみを対象としている[16]

台湾

  • 一部の鉄道会社で2006年6月1日から女性専用車両の半年間の試験運行を行ったが、「同じ運賃を払う男性の権益侵害」などの反対意見があり、試験運行後は実施されなかった[17]

チェコ

ノルウェー

  • 「母と子ども」専用で、父親は利用できない病院等の公的機関がある[19]

フランス

  • 政治のクオータ制 — 政治のクォータ制に対しては、フランスなどでは「平等原理の侵害」、「逆差別」と見なす意見が多く、女性やフェミニスト運動家からも逆差別としてとらえられており、「女性枠を作るのなら、なぜ黒人枠やイスラム教徒枠、ほかのマイノリティー枠はないのか?」といった疑問も呈されている[20]。また、フランスでは過去に、クォータ制に関する法律に対して違憲判決が出されたこともある[21]

日本

政治

  • クオータ制 — 日本では、内閣府男女共同参画局が中心となって、政治分野での女性の数を増やすために、性別を基準に一定の人数や比率の女性を議員候補者などに割り当てるクオータ制の導入を検討している[22]
  • 強姦罪 — かつて刑法177条から180条で規定されていた強姦罪では、女性に対する強姦の規定だけしか存在しなかった。これは、明治の女卑的な強姦罪規定において強姦による妊娠が重要視されたためでもあり、同様に肛門性交や口淫も含まれない。この定義の範囲を拡大して、男性に対する強姦も重大な犯罪とされることを確保することが、性差別是正の観点により国連自由権規約委員会から日本に対して勧告されていた[23]メイル・レイプ逆レイプも参照のこと。2017年7月13日に、男性が被害者の場合を含む強制性交等罪の規定が設けられることに伴い、強姦罪の名称は廃止された。
  • 助産師 — 保健師助産師看護師法では助産師資格についての規定があるが、第三条にて資格対象を女性のみに限定しており[24]、男性差別の観点から疑問が呈されている[25]
  • 遺族年金 — 遺族年金の支給対象において妻は条件がないのに対し、夫は55歳以上との条件がある[26]。また、配偶者を亡くした際に支給される遺族基礎年金においては、子を持つ妻が支給される対象とされ、子を持つ夫は支給の対象とされない[27]。なお、このような男女間で支給要件が異なる遺族年金については、男性差別で違憲であるとして提訴されている(この提訴の例では遺族補償年金)[28][29]。対応が必要な政治課題として俎上に挙がったこともある[30]
  • 労働災害遺族年金 — 夫が死亡した妻に対しては無条件で労災遺族年金支給されるのに対し、妻が死亡した夫に対しては55歳未満の場合は支給されない[31]
    • 大阪地方裁判所は2013年11月25日、地方公務員災害補償法によるこの規定を憲法違反であると判断した[32]が、大阪高等裁判所で開かれた第二審では、労働環境の男女格差は現在も歴然として存在するとして、遺族年金の男女で異なる支給条件は憲法14条の法の下の平等には違反しないとし、男性側の請求を棄却した[33]。2017年3月21日に最高裁が2審判決を支持し、男性の敗訴が決定した[34]
  • 寡婦年金 — 夫と死別した妻に対しては寡婦年金が支給される場合があるが、妻と死別した夫に対しては支給されない[35]。こういった女性だけにしか年金が支給されない点については、男性だからという理由で年金を受ける権利が与えられないのには違和感を覚えるという、男女平等や男性差別の観点から疑問が呈されている[36]
  • 児童扶養手当 — 2010年7月までは児童扶助手当が母子家庭には支給されるが父子家庭に対しては児童扶養手当が支給されなかったが、父子家庭を不当に排除しているとの批判もあり[37]、2010年8月に児童扶養手当法が改正され、父子家庭に対しても支給されるようになった[38]
  • 後遺障害に傷が残る後遺障害について、女性の方が保険金額が高くなる(自賠責保障法施行令第2条別表2による 男性への14級適用に対して2階級高い12級 大きな傷の場合には男性が12級適用に対して5階級高い7級[39])。その理由として、女性の方が容姿を重要視されるという考え方がある[40]労働災害において、このような扱いは違憲であると京都地方裁判所が判例を示し[41]、これを受けて、認定業務を担当する厚生労働省労災補償部補償課は基準見直しを決定[42]。等級表の制定は1947年(昭和22年)、等級表の元になった基準が制定されたのは労災保険法の前身の「工場法」によるもので1936年昭和11年)であるという[43]
  • 女性枠 — 九州大学は、2012年度の理学部数学科の入学試験後期日程において「女性枠」を導入しようとしていたが、男性差別であるとの批判が多数寄せられたため、2011年5月19日に導入の取りやめを決定した[44]
  • 丸刈り自衛隊の新隊員への訓練、警察学校の学生、日本の刑務所受刑者においては、男性に対してのみ丸刈りが画一的に課せられている。また、一部の学校では校則や部活動の規則[45]として、丸刈りやスポーツ刈りを規定している学校もある。一方で大抵の場合、女性受刑者は髪型が自由で、収監時に染髪されている状態だった場合は、そのままでいることが黙認されている[46]
  • 男子大学の不在 — 2014年現在、日本の大学に男子校は一つも存在しない[47]のに対し、女子大学は私立に多数存在するほか、2012年4月時点において、国立ではお茶の水女子大学奈良女子大学の2校、公立4年制大学では福岡女子大学群馬県立女子大学の2校、公立短期大学では山形県立米沢女子短期大学岐阜市立女子短期大学の2校が女子大学である。例えば、お茶の水女子大学大学院においては、「日本においては、女性にとって大学院進学と研究の機会における実質的な平等が保障されていないことに考慮」するという理由によって、男性の入学を認めていないが[48]、女子大学のこういった方針や設立の趣旨には、日本の戦前の学校制度(旧制大学は原則男子のみの入学で、女子の高等教育機関として女子高等師範学校高等女学校専攻科・旧制女子専門学校が置かれた)の影響がみられる[49][50]。女子大学や女子短大には、医学部、薬学部、看護学科や栄養学科といったような専門資格の取れる学部・学科も存在するため、資格取得機会の面や機会均等な教育を受ける権利の面において男性差別となりうる可能性が指摘されている[50]
  • 公立図書館における女性専用席 — 女性専用・優先席が設置されている公立図書館がある。東京都台東区中央図書館、東京都荒川区南千住図書館[51]、東京都江東区東雲図書館、東京都葛飾区お花茶屋図書館等で実施されており、「不公平だ」などと男性から抗議が寄せられている[52][53]

経済

  • アファーマティブ・アクション(積極的差別是正措置) — 男女雇用機会均等法では、男女間の処遇差の改善には積極的差別是正措置が最適としている[54]が、この制度は男性差別になるという反対意見もある(女性差別解消に関する積極的差別是正措置に反対する人の5人に1人が「同じ能力を持つ男性が差別される」ことを理由に挙げている[55])。
  • 男女雇用機会均等法 — 1985年に勤労婦人福祉法から改正され、男女の均等な雇用と待遇の確保を目的に男女雇用機会均等法が制定された。当初この法律は、雇用における女性差別のみを禁止していた。その後、女性へのセクシャルハラスメントを禁止し、さらに2007年4月1日施行の改正法で、「女性に対する差別を禁止する法律」から「性別による差別を禁止する法律」へと大きく変わり、雇用における男性への差別のほか、セクハラも女性と同様に禁止された。しかし、守衛・警備員は防犯上の要請から男性に従事させることは適用除外にし、坑内業務の一部の作業へ女性を就かせることを禁止する。公衆浴場で女性従業員が男性の浴室の清掃をすることはあっても逆の場合は無いなど、男女の不平等な扱いはまだ残されている[56]
  • 就職差別 — 客室乗務員秘書・受付事務・一般事務などの事務職、介護・看護・保育などの専門職、食品・菓子店等のパートタイマーは、女性が多数を占める職種である[57]。こういった職種では、男女雇用機会均等法が定められているために公には性別を特定しての募集はされていないものの、男性という理由で不採用となるケースがある(求人広告でも「女性が活躍しています」「扶養控除範囲内で勤務できます」と暗に女性のみの応募を前提とした文言が書かれている事もある)[58]。実際に事務職は「女性の仕事である」として断られた男性が、これを男性差別であるとして提訴にいたった例もある[59]。近年では一般職を志望する男性が増えてきており[60]、一般職セミナーの会場で男子学生を目にすることも多くなった。しかし男性では一般職では面接段階で落とされる、もしくは面接さえ受けられないことも多く、特に一般職を志望する男性は「向上心がない」などの批判を受けることさえある[56]。一般職を志望しても性差別により不採用とされる可能性が高いと考える男性に、女性の活用を目的に設けられたエリア総合職が注目され始めており、あるメーカーでは、エリア総合職を導入したところ、男性社員の3分の1が応募したことがあった[61]。日本航空と全日空では、2009年現在、契約制客室乗務員としての募集は事実上は女性のみを対象としており、男性にはいわゆる総合職(客室系総合職)としての採用しか行っていない。
  • 看護学校・看護師 — 厚生労働省によると、雇用機会均等法は「女性に対する差別」を禁じており「男性差別」を直接規制していなかったこともあり、看護師は男性であることを理由に採用しない事業者は多い[59]。(ただし、2007年の改正によって男性差別も明確に規制されるようになった。)また、看護学校の男性の入学者数は1割前後の学校が大半であるといわれている[62]。こういった影響もあり、2010年現在、看護師の職場では男性はわずか5.6%で女性が大多数であり、そうした職場においては、男性は男くさいと嫌われる半面「男らしさ」を期待されることも多く、「男のくせに大したことない」というレッテルを一度貼られてしまうと全く無視されてしまう場合もあるといった、男性に対する偏見があると指摘されている[63]
  • 服装・染髪などの服務規定 — 企業や事業所等が定めた、身だしなみや髪型等に関した服務規程には、男性にのみ適用される片務的なものも存在する[64]。なお、男女で異なる服務規程を募集や採用上の条件につけることは、労働者が性別により差別されることを禁じた男女雇用機会均等法違反になるとされている(第5条:「事業主は、労働者の募集及び採用について、その性別にかかわりなく均等な機会を与えなければならない。」)[65]。一部企業にある染髪に関する規定は、事実上男性に対してのみ適用されている場合がほとんどである。服装に関する規定でも、男性はスーツがほとんどだが、女性は特に規定がない場合もある。スーツは自宅で洗濯することが容易でなく、定期的にクリーニングに出す必要があり、これも男性にとって負担となっている。[66][67]
  • 育児 — 男性は女性に比べ、育児休業を取得することが困難である場合が多い。育児休暇の取得は法律によって男女平等に認められているが、厚生労働省が発表した2011年度の雇用均等基本調査によると、女性の育児休業取得率87.8%に対し、男性の育児休業取得率はわずか2.63%と極めて低くなっている[68]。この背景としては、企業・職場において女性に比べて男性の育児休暇取得に対する理解がないことや、男女を問わず「男は仕事、女は家庭」といったステレオタイプなジェンダー・バイアス(性的偏見、性差別)の風潮があることが指摘されている[69]。『日経スペシャル ガイアの夜明け』で取り上げられた際には「男性の育児休暇制度だけを整備しても休暇取得率は上がらない。企業の、職場の意識を変える必要がある」という提起がされている[70]
  • 肉体労働・命の危険が伴う労働 — 男女共同参画について、兵庫県が職員の意識、実態を調査したところ、見直すべき職場慣行として、「引っ越しなどの力仕事は男性のみでする傾向にあり、負担が大きい」「男性の方が長時間残業を強いられている」「災害時の人員配備で女性が免除されている」などの問題点が挙げられた[71]
  • 女性専用車両・座席等 — 東京都営地下鉄大阪市営地下鉄などの主に都市鉄道において『痴漢対策』として、女性専用車両が導入されている。J-CASTニュース「女性専用は「男性差別」 ネット上で批判盛り上がる」では、「インターネット上のブログ等では「男女平等なら男性専用車両を作るべきだ」といった意見も少なくない」と紹介されている[72]。女性専用車両の導入が広まるにつれて、「女性専用車両に性差別を感じる。導入はやめて欲しい」など、女性専用車両に対する疑問や不満の意見もみられるようになり[73]痴漢冤罪痴女を防止する点から、男性専用車両の導入を求める声もある。詳細は女性専用車両及び女性専用車両の問題を提言した番組を参照。また痴漢対策とは明らかに無縁な通常車両より豪華な設備や女性専用車両のみ通常より料金が格段に安いもの痴漢対策の不要なリクライニングシート車両なども数多く存在する。
  • 女性専用化粧室(航空機内) — 全日本空輸 (ANA) が、2010年3月1日より国際線の中型機と大型機に女性専用のトイレを設置すると発表した[74]。なお、「体調不良時」には男性も使用できるとされていたが、女性専用トイレと同時に男性向けのトイレを設置するわけではなかったため、海外でも報道されて話題になり[75]、男性差別に当たるとの指摘や[76]男性専用を求める声があったため[77]廃案となり、2012年現在、ANA国際線のシートマップには女性専用化粧室は存在しない[78]
  • 商店における男性の入場制限・禁止規定 — 飲食店を中心とした一部商店には、女性のみの入店を許可し、男性の入店を制限・禁止しているものがある。例えば、2006年4月、JR北海道函館駅内に、「16時までは女性のみ」入店をうたったパスタ店が開店したが、「男性差別では」という批判が寄せられた[79]。その後、開店2か月後の2006年6月には、批判が寄せられたことを背景として女性専用の時間帯は14〜16時にまで縮小した(運営側は、「お客の要望に応えた」と説明している)。なお、女性専用時間を縮小したところ、来客数は増えているという[80]東京都新宿区にあるタカノフルーツバー(飲食店、新宿高野の一部)は、午後5時までは女性同伴でない限り男性は利用できないとしている。平成25年4月までは、全時間帯において男性は女性同伴でない限り利用できなかった[81]
  • レディースデー・女性限定割引 — さまざまな商業施設、特にホテルなどの宿泊施設や居酒屋などを中心とした飲食店映画館パチンコ店ゲームセンターなどのアミューズメント施設、インターネットカフェマンボー等)において、「レディースデー」や「レディース・プラン」などと称し、女性客のみに対して割引や特典の提供をしたり、無料提供サービスを行ったりしている。ただし、一部では「レディースデー」と対になった「メンズデー」を別の日に行うことや同等の男性限定割引キャンペーンを行うことで差別問題を相殺しているケースも希にあるが、レディースデーのような広がりは見られていない。日本会議のように、女性については「女性会員」の制度を設けて会費の割引を行ない、男性と同じ権利と特典が得られるようにしている団体もある。
  • 2006年3月には、ニスコム株式会社、株式会社パソナグループなどに、男性差別による就職差別が行われたとして男性が提訴した例もある[82]

文化・社会

  • 女性が多い職業の職務を男性が行うことで利用者が抵抗感を示す[83]

メディア

性別による差別に関する法令

日本

日本では、日本国憲法において法の下の平等を定めており、性別により差別されないという規定がある[85]。ただし、憲法は本来国と私人の間の関係を規律するものであって、私人同士の関係には原則として直接適用されない(最判昭和48年12月12日など)。一方各種法令の中には、私人によるものも含めて性別による差別を明確に禁じるものがある[86]。この節ではそういった法令の性差別に関連する部分について言及する。

法律・条例 章・節 条文
日本国憲法 第三章 第十四条 すべて国民は、法の下に平等であつて、人種信条性別、社会的身分又は門地により、政治的、経済的又は社会的関係において、差別されない[85]
男女雇用機会均等法 第二章 第一節 第五条 事業主は、労働者の募集及び採用について、その性別にかかわりなく均等な機会を与えなければならない。
男女雇用機会均等法 第二章 第一節 第六条 事業主は、次に掲げる事項について、労働者の性別を理由として、差別的取扱いをしてはならない。
  • 一 労働者の配置(業務の配分及び権限の付与を含む。)、昇進、降格及び教育訓練
  • 二 住宅資金の貸付けその他これに準ずる福利厚生の措置であつて厚生労働省令で定めるもの
  • 三 労働者の職種及び雇用形態の変更
  • 四 退職の勧奨、定年及び解雇並びに労働契約の更新
教育基本法 第一章 第四条 教育の機会均等 — すべて国民は、ひとしく、その能力に応じた教育を受ける機会を与えられなければならず、人種、信条、性別、社会的身分、経済的地位又は門地によって、教育上差別されない[87]
大阪府男女共同参画推進条例 7条1項 何人も、職場、学校、地域、家庭その他社会のあらゆる場において、性別による差別的取扱いをしてはならない。
男女平等参画推進なごや条例 6条 何人も、職場、学校、地域、家庭その他の社会のあらゆる分野において、性別による差別的取扱いを行ってはならない。
東京都男女平等参画基本条例 14条1項 何人も、あらゆる場において、性別による差別的取扱いをしてはならない。

男性差別に対する国際的な動き

近年、男性差別に対する国際的な動きも存在する。例えば、International Men's Dayは、1999年以来、毎年11月19日をその記念日として定め、男性や少年の健康、ジェンダー関係の改善、男女平等の促進、正しい男性のロールモデルの形成、コミュニティ・家族・結婚・育児への男性の貢献などに焦点をあて、男性差別と少年差別を強調しながら世界各国で活動している[88]。なお、2012年8月現在では、この記念日は世界60カ国以上で開催されているが、日本で開催されたことはない[88]

脚注

  1. Warren Farrell "The Myth of Male Power", Berkley Publishing Group, 1994. ISBN 0425143813
  2. 女子差別撤廃委員会第 29 回会期報告(A/58/38)関連部分内閣府
  3. 映画館の「レディースデー」は男女差別なのか?
  4. 選抜徴兵登録制度の公式ウェブサイト
  5. 『少年への性的虐待—男性被害者の心的外傷と精神分析治療』(リチャード・B・ガートナー、1999年の書物の翻訳、2005年) 68・69ページ ISBN 4-86182-013-8
  6. 8-Year-Old Charged For Sexual Conduct With Sitter” (英語). CBSニュース. Canadian Childrens Rights Council (2005年7月28日). . 2012閲覧.
  7. MISSISSIPPI UNIVERSITY FOR WOMEN ET AL. v. HOGAN
  8. 英語版の記事「en:Single-sex education」、「en:Mens colleges in the United States」を参照
  9. Series13 Episode2。内容としては「17歳男性の為のクルマを司会者3人がそれぞれ選べ」というものだが、保険料がネックになっていた。「ペニスを切り落とせ」はそこで登場したセリフである。Zeisel, Hans 1985 Say it with figure Harper & Row:169ff.
  10. 尹載善 『韓国の軍隊―徴兵制は社会に何をもたらしているか』 中公新書、2004年。ISBN 978-4121017628。
  11. チュチュンヨン 『韓国徴兵、オレの912日』 講談社、2006年。ISBN 978-4062810241。
  12. 『韓国の男子学生「大学には男性差別がある」46.3%』 2006年08月13日付配信 朝鮮日報
  13. 13.0 13.1 13.2 「韓国男性を差別する法律の中身とは?」
  14. 中央日報 「女性専用車両、女性が反対?」
  15. “大韓航空、男性差別是正勧告を拒否”. SBS. (2010年1月18日). http://news.sbs.co.kr/sports/section_sports/sports_read.jsp?news_id=N1000694716 
  16. Singapore Criminal Procedure Code Sections 325 to 332
  17. 読売新聞 女性専用車両が不評…3か月で存続危機、2006年9月4日。
  18. AFP BBNews 女性専用車両は「性差別」、チェコ男性ら鉄道会社を刑事告訴、2012年02月23日。
  19. 読売新聞』2007年10月30日朝刊
  20. 普遍主義と積極的差別是正の狭間で〜フランスのクォーター制WEBRONZA, 朝日新聞, 2011年07月21日
  21. まとめ-各国の特徴と日本への示唆東北大学大学院法学研究所教授 辻村みよ子, 内閣府男女共同参画局, 平成19年
  22. 第一部・男女共同参画社会の形成の状況平成23年度男女共同参画白書, 内閣府男女共同参画局
  23. 国連自由権規約委員会の最終見解2008年10月10日
  24. 保健師助産師看護師法
  25. 女性差別撤廃条約日本政府報告書第3回審議 社団法人自由人権協会
  26. 年金の受給(遺族年金) 日本年金機構
  27. この規定は、2012年8月に成立した税と社会保障の一体改革関連法により、2014年4月から見直されることが決まっている。
  28. 遺族年金「男女差は違憲」 自殺教諭の夫が提訴へ 朝日新聞 2010年7月20日
  29. 妻死亡時、夫60歳未満は不支給 「遺族年金 性差別は違憲」と提訴 読売新聞 2011年10月20日
  30. 「女性のライフスタイルの変化等に対応した年金のあり方に関する検討会」報告書(厚生労働省
  31. 夫に冷たい、遺族年金 - 和田雅彦、All About、2006年3月24日。
  32. 遺族年金、受給資格の男女差「違憲」 大阪地裁が初判断 日本経済新聞 2013年11月25日]
  33. 遺族年金男女差、2審は合憲 1審「違憲」判決を取り消し 大阪高裁 - 産経ニュース、2015年6月19日
  34. 遺族年金の男女差「合憲」 最高裁が初判断 賃金格差踏まえ - 日本経済新聞、2017年3月21日
  35. 寡婦年金を受けられるとき 日本年金機構
  36. 寡夫年金Q&A
  37. なぜ父子家庭を排除するのか しんぶん赤旗 2009年7月8日
  38. 児童扶養手当法(昭和36年法律第238号)NPO法人全国父子家庭支援連絡会が児童扶養手当法改正に大きく貢献し父子家庭にも支給が実現
  39. 後遺障害等級表
  40. 加茂隆康法律事務所
  41. 労災で顔にやけど「性別で差」は違憲…京都地裁 毎日新聞 2010年5月27日
  42. 男女差「違憲」で控訴断念=顔やけど跡の障害認定-厚労省時事通信2010年6月10日
  43. 記者の目:顔の傷労災補償男女差毎日新聞2010年8月27日、古屋敷尚子
  44. 九州大学の「女性枠」入試 「男性差別」批判で取りやめ J-CASTニュース 2011年5月19日
  45. 特に運動部
  46. 福島瑞穂 『福島みずほの刑務所の話』 現代人文社、2003年10。なお、2005年に改正された法律により「受刑者に対する意に反する調髪は衛生上の必要性を除く調髪する事は無い」とされているものの、「衛生上の必要」という名目で、男子に対してのみ丸刈りが強制されている。
  47. 学校教育法による新学制施行以来、国立大学では東京商船大学(現・東京海洋大学)と神戸商船大学(現・神戸大学)、私立大学では東洋食品工業短期大学が男子学生のみだったが、両商船大は1980年代初めに女子学生を受け入れ[1][2]、東洋食品工業短大は2008年度より共学化したことで、現在では男子大学は存在しない。
  48. コース概要 人間文化創成科学研究科お茶の水女子大学大学院
  49. 大学の沿革 お茶の水女子大学
  50. 50.0 50.1 横浜国立大学経営学部助教授 青柳幸一(現・明治大学法科大学院教授) (1984), 国公立女子大学の憲法適合性-高等教育における差別-, 横浜経営研究, 第V巻, http://kamome.lib.ynu.ac.jp/dspace/bitstream/10131/521/1/KJ00000160455.pdf 
  51. 南千住図書館に関しては、抗議により後に暮らしのコーナーに差し替えられている。
  52. 「図書館にも女性専用席、ホームレスや痴漢対策で。「不公平」の声も」 産経新聞、2008年8月30日。
  53. フジテレビで放送されていた2008年6月25日放送のMANNINGENにおいてもこの問題が取り上げられ、65%以上が反対だった。
  54. 「男女雇用機会均等政策研究会」報告書参考(厚生労働省ホームページ)
  55. 積極的差別是正措置に反対する男性の20.7%、女性の17.3% 「男女共同参画に関する世論調査」(総理府(現 内閣府))より
  56. 56.0 56.1 恋愛、結婚、就職から人質救出まで 女に都合良く利用される「男らしさ」の受難SAPIO2009年5月号
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  76. NCFM Rejects All Nippon Airways Women Only BathroomsAviation Online Magazine
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  83. 男性保育士ショック 女児対応で保護者からクレーム」 AERA 2013年6月17日号
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参考文献

  • 竹中英人 『男は虐げられている』 郁朋社、1999年。ISBN 978-4873020297。
  • 千葉展正 『男と女の戦争—反フェミニズム入門』 展転社、2004年。ISBN 978-4886562463。
  • フランシス・バウムリ 『正しいオトコのやり方―ぼくらの男性解放宣言』 学陽書房、1991年。ISBN 978-4313850620。
  • Warren, Farrell (1994). The Myth of Male Power. Berkley Publishing Group. ISBN 978-0425181447. 、邦訳は ワレン・ファレル著、久米泰介訳 『男性権力の神話  《男性差別》の可視化と撤廃のための学問』 作品社、2014年、ISBN 978-4-86182-473-9

関連項目