無政府状態

提供: miniwiki
移動先:案内検索

無政府状態(むせいふじょうたい、: anarchy)は、国家などの社会集団において支配や統制が無い状態。この用語は当初は指導者不在の意味で使用されたが、1840年にピエール・ジョゼフ・プルードンが新しい政治思想であるアナキズム(無政府主義)の用語としても使用した。

用語

: anarchy の語源は古代ギリシア語の「ἀναρχία」で、「支配する者のない」を意味する。この語は、無秩序な無政府状態との否定的な意味でも、既成の権威を否定して調和的社会結合を目指すという積極的な意味でも使用されている[1]

無政府状態

無政府状態は、革命内戦戦争などによって既存の行政機関が崩壊し、新たな行政機関が樹立されない場合に生じることが多い(現在の日本領内で起きた事例としては、八重山自治会が挙げられる)。旧行政機関の支配地域全体にわたって無政府状態が生じることもあれば、行政機関の支配が及ばない一部の地域のみが無政府状態となることもある。地震など大災害によって行政機関が一時的に壊滅状態に至った際に、局地的に無政府状態に陥る事もある(例:ハイチ大地震)。歴史的に有名な無政府状態の例としては17世紀のイングランド内戦時のイングランドフランス革命時のフランス、1930年代のスペイン内戦時のスペイン、1991年頃以降のソマリアソマリア内戦)等があげられる。

17世紀-18世紀市民革命期には、政治体の発展過程を理論付けるために、人間の自然状態についての考察が盛んに行われた。トマス・ホッブズは『リヴァイアサン』において人間の自然状態を「万人の万人による闘争」であると説いた。これはあくまでも理論的な考察にすぎないが、政府がない状態においては社会秩序が保たれないという意味で人間の自然状態を無政府状態と位置づけるものであるといえる。

哲学者のイマヌエル・カントは統治状態を4つに分類した[2][3]

  1. 武力無き法と自由:無政府状態
  2. 自由なき法と武力:専制
  3. 自由と法なき武力:野蛮
  4. 自由と法のある武力:共和制

無政府主義

脚注

  1. アナキズム - 世界大百科事典
  2. Kant, Immanuel (1798). "Grundzüge der Schilderung des Charakters der Menschengattung". In Anthropologie in pragmatischer Hinsicht. AA: VII, s.330.
  3. Louden, Robert B., ed. (2006). Kant: Anthropology from a Pragmatic Point of View. Cambridge University Press. p. 235.

関連項目