機関車

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機関車(きかんしゃ、: locomotive)は、鉄道車両の一つで、その車両の中に動力装置を有し、駆動を行わない他車を前から牽引、もしくは後から推進して線路上を運転する車両のことである。機関車に牽引・推進されるのは動力を有しない客車貨車のみならず、電気方式の相違・故障・回送などの理由で自車の動力を使用できない、または勾配区間で出力が足りない電車・気動車である場合もある。基本的に機関車は列車の駆動のためだけに存在しており、自車には旅客や貨物を搭載しない場合がほとんどである。

動力源による分類

動力源によって以下のように分類される。

無火蒸気機関車と圧縮空気機関車を総称して無火機関車と呼ぶこともある。

また客車に動力装置を搭載したものは、その動力によって電車気動車と呼ばれている。

用途分類

機関車は、旅客用と貨物用で区分されることがある。旅客用の機関車は高速性能を重視した設計になっているのに対して、貨物用の機関車は牽引力を重視した設計になっている。また冬期において蒸気機関車以外の機関車で蒸気暖房を使用する列車を牽引する場合や、機関車から電源の供給を受ける電気暖房を使用する場合は、それらの暖房方式に対応した機関車が必要となる。ただし短区間で暖房無しを割り切って使う場合や、暖房車により暖房用蒸気の供給を行う場合などもある。

蒸気機関車の時代には、旅客用と貨物用の区分はかなりはっきりとしていた。蒸気機関車の性能特性は動輪の最大回転数が極端には変わらないため、その直径に影響を受ける。動輪が大きい場合は輪軸の原理により高速走行が可能になるが、その分トルクが落ちるので牽引力は犠牲になる。また、蒸気機関車の場合は固定軸距が動輪の大きさと数によって決定されるが、当然これには上限がある一方、動輪の数は多いほど粘着には有利である。従って、旅客用蒸気機関車は概して大きな車輪を比較的少数備え、貨物用では小さな車輪を多数そろえる物が多かった。例えば日本では旅客用蒸気機関車の大半が動輪3軸のC型であり、貨物用の大半は4軸のD型である

電気機関車やディーゼル機関車においても古い物では明確な違いがあった。例えばEF58形EF15形では定格出力、制御系はほとんど同じものを装備しているがギヤ比が大きく異なり、前者は速度重視の旅客型であり、後者は牽引力重視の貨物型である。

その他

電車や気動車に分類される車両の中にも、客室も荷物室もない機関車に近い機能を持つ動力車と客車から構成されるものもある。これらの動力車は特定の客車と固定編成になっていることから、機関車ではなく電車や気動車に分類される。事例としては、フランスのTGV, イタリアのETR500, ドイツのICE1, ICE2, イギリスのIC200などがあげられる。

機関車は単独で走行ができることが原則である。そのため、大部分の機関車は運転台を持つ。アメリカなど列車規模が大きい国では、他の機関車の運転台からの制御を受けることを前提に、それ自体には運転台を持たない機関車があり、Bユニットと呼ばれている。

大部分のテンダー式蒸気機関車・アメリカなどの本線用のディーゼル機関車(キャブ・ユニットカウル・ユニット参照)のように後方の視界を考慮しておらず、連結時のバックなどを除いて基本的に前進のみを想定している機関車と、タンク式や変形テンダーを付けた蒸気機関車・上記以外の電気・ディーゼル機関車のようにどちらの方向にも視界が良く、前進・後退両方向で運行が可能なものがある。ものによっては前者でも、後退運転が不可能ではないが、きわめて限定的であり、かつ運行上・保安上危険であることから転車台デルタ線などで方向転換が必要となるか、総括制御できる車両の場合は背中合わせに連結して2台以上セット[注釈 1]で運行する必要がある。

急勾配区間では機関車1両では出力が不足するため、機関車を2両以上使用したり、補助の機関車を最後部に連結し後押しをさせる場合がある。機関車を2両以上連結することを重連という。

また、勾配区間などで使われる補助の機関車を補助機関車(補機)という。前述した運転台を持たないBユニットは、補機専用の機関車である。なお、日本のEH500形電気機関車のように、二車体連結構造となった機関車も少なくない。通常、こういう構造を持った車両は二車体でも1両として扱われている。

機関車牽引列車では、列車の推進力はすべて機関車がまかなうが、制動力は機関車のみならず被牽引車である客車・貨車も一部分担する。また、(非常ブレーキ装置を除く)運転・制御の機器はすべて機関車に搭載されるのが原則であるが、ヨーロッパを中心に推進運転用に運転台を持った客車や貨車を連結し、機関車を制御する場合も多い(プッシュプル方式)。

脚注

注釈

  1. アメリカではよくみられる方式、日本の機関車では国鉄のDD50が該当。

出典