機体記号
機体記号(きたいきごう、英語:aircraft registration)とは、航空機に付けられる個別の記号。国籍記号と登録記号により構成される[1]。
俗に英語のレジストレーション(registration)を略して単にレジ、レジスタ、レジ番と呼ぶ場合もある。国土交通省航空局では識別記号と表記している[2]。
航空機認識の表示方法が数字のみの場合もあるが、こちらはアメリカ空軍(テールコード)、ロイヤルエアフォース(イギリス)や航空自衛隊(日本)などの軍用機に対し用いられる。そのため民間機に「機体数字」といった呼び方はしない。
なお船舶にも個別認識番号があるが、本稿では民間航空機に対してつけられる機体記号について記載する。
Contents
概要
国際民間航空機関(ICAO)に加盟する世界各国の国家および地域の民間航空機を認識するためにつけられるのが機体記号である。
アルファベットもしくはアルファベットと数字を組み合わせた国籍記号で国籍を表し、ダッシュに続けて数字もしくはアルファベットによって登録された順に交付される番号で登録記号を表す。アメリカや日本など、ダッシュを使わない国もある。日本では航空法施行規則に定められており、133条は「航空機の国籍は、装飾体でないローマ字の大文字JA(以下「国籍記号」という。)で表示しなければならない」、134条は「登録記号は、装飾体でない4個のアラビア数字又はローマ字の大文字で表示しなければならない」としている。
イギリスのような数字が入らないアルファベットのみの表記される場合は、無線連絡などの際に後ろの二文字に因んだフォネティックコードで呼ばれることがある。例えば、英国海外航空781便墜落事故の事故機であるデ・ハビランド DH.106 コメット"G-ALYP"は"Yankee Papa"(ヤンキー・パパ[3])と呼ばれていた。
また、コールサインを所有しない航空会社や個人所有機などでは日本でも無線連絡などの際にフォネティックコードで呼ばれている。例えば警視庁航空隊のシコルスキー S-92JA02MPは、無線連絡の際、"ジュリエット・アルファ・ゼロ・ツー・マイク・パパ"と呼ぶ。
アメリカの民間航空会社の機材では、機体記号の最後の2文字が航空会社のIATA航空会社コードになっていることが多い。例えば、アメリカン航空なら"AA"、旧パンアメリカン航空なら"PA"といった具合である。日本貨物航空もこの法則に当てはまる(JA02KZなど)。また、最近の「JA+3桁数字+1つのアルファベット」のスタイルになってからは、日本航空が末尾にJ、全日空が末尾にAを用いている。
また、消防や警察の所有機では110や119といった緊急通報用電話番号を含む組み合わせ[4]、国の機関では自国に関する記号[5][1]、社有のビジネス機では会社に関する組み合わせ[6]など所属先にちなんだ記号を申請する例もある。
機種名にちなんだ番号を使用することもあり、例えばブリティッシュ・カレドニアン航空で導入されたDC-10には"G-DCIO"(IOを10に見立てている)という番号が使用されたことがあった。
個人所有の機体は、所有者の名前や誕生日、機体の登録年月日などを含む並びを申請していることがある。
研究機関の試作機や市販のキットなどを組み立てた自作航空機のため国籍記号とは別に専用の記号を設けている国もあり、日本では超軽量動力機にはJR、ジャイロプレーンにはJE[7]、これら以外の自作航空機を新規登録するとJXで始まる識別記号が付与され[2]国籍記号のJAは使用されない。
表示する位置は各国の航空法により異なっており[1]、日本では固定翼機は主翼の右上面と左下面、尾翼か胴体の側面、回転翼機は胴体の下面と側面である[1]。回転翼機の尾翼は胴体側面と見なされる[1]。日本ではエンジンカウルには描かれないが、アメリカでは許可されている[1]。
かつては塗装で描いていたが、現代ではステッカーが主流となっている[1]。
国籍記号一覧
国家名もしくは地域名 | 国籍記号 | 登記記号規則 |
---|---|---|
アフガニスタン | YA | abc |
アルバニア | ZA | abc |
アルジェリア | 7T | abc |
テンプレート:AND | C3 | abc |
テンプレート:ANG | D2 | abc |
テンプレート:ATG | V2 | abc |
アルゼンチン | LQ | abc |
アルゼンチン | LV | abc |
アルメニア | EK | 12345 |
テンプレート:ARU | P4 | abc |
オーストラリア | VH | abc |
オーストリア | OE | abc |
アゼルバイジャン | 4K | ab1 or ab12 or 12345 |
バハマの旗 バハマ | C6 | abc |
バーレーン | A9C | ab |
バングラデシュ | S2 | abc |
バルバドス | 8P | abc |
ベラルーシ | EW | 123ab or 12345 |
ベルギー | OO | abc |
ベリーズ | V3 | abc |
ベナン | TY | abc |
テンプレート:BMU | VP-B | ab |
テンプレート:BMU | VQ-B | ab |
ブータン | A5 | abc |
ボリビア | CP | 1234 |
ボスニア・ヘルツェゴビナ | T9 | abc |
ボツワナ | A2 | abc |
ブラジル | PP | abc |
[[ファイル:テンプレート:Country flag alias ブラジル|border|25x20px|テンプレート:Country alias ブラジルの旗]]ブラジル | PR | abc |
[[ファイル:テンプレート:Country flag alias ブラジル|border|25x20px|テンプレート:Country alias ブラジルの旗]]ブラジル | PT | abc |
テンプレート:VGB | VP-L | ab |
ブルネイ | V8 | abc or ab1 or 123 |
ブルガリア | LZ | abc |
ブルキナファソ | XT | abc |
ブルンジ | 9U | abc |
カンボジア | XU | 123 |
カメルーン | TJ | abc |
カナダ | C-F | Fabc, Gabc, Iabc |
テンプレート:CPV | D4 | abc |
テンプレート:CYM | VP-C | ab |
テンプレート:CAF | TL | abc |
テンプレート:CHA | TT | abc |
チリ | CC | abc |
台湾 | B | 12345 |
中国 | B | 1234 |
コロンビア | HK | 1234a |
コモロ | D6 | abc |
コンゴ民主共和国 | 9Q | abc |
テンプレート:COG | TN | abc |
コスタリカ | TI | abc |
クロアチア | 9A | abc |
キューバ | CU-T | 1234 |
キプロス | 5B | abc |
北キプロス・トルコ共和国 (国際的未承認) |
トルコのTCを使用 | abc |
チェコ | OK | abc or abc12 or 1234 or A123 [1] |
デンマーク | OY | abc |
ジブチ | J2 | abc |
テンプレート:DMA | J7 | abc |
ドミニカ共和国 | HI | 123ab |
エクアドル | HC | abc |
エジプト | SU | abc |
エルサルバドル | YS | abc |
赤道ギニアの旗 赤道ギニア | 3C | abc |
エリトリアの旗 エリトリア | E3 | abc |
エストニア | ES | abc |
エチオピア | ET | abc |
[[ファイル:テンプレート:Country flag alias フォークランド諸島|border|25x20px|テンプレート:Country alias フォークランド諸島の旗]]フォークランド諸島 | VPF | ab |
フィジー | DQ | abc |
フィンランド | OH | abc |
フランス | F | abcd |
フランス領アンティル | F-OG | ab |
テンプレート:GUF | F-O | abc |
ガボン | TR | abc |
ガンビア | C5 | abc |
ジョージア | 4L | 12345 or abc |
ドイツ | D | abcd |
ガーナ | 9G | abc |
[[ファイル:テンプレート:Country flag alias ジブラルタル|border|25x20px|テンプレート:Country alias ジブラルタルの旗]]ジブラルタル | VPG | ab |
ギリシャ | SX | abc |
テンプレート:GRD | J3 | abc |
グアテマラ | TG | abc |
ギニア | 3X | abc |
ギニアビサウ | J5 | abc |
ガイアナ | 8R | abc |
ハイチ | HH | abc |
ホンジュラス | HR | abc |
香港 | B-H; B-K; B-L (Bは中国の国籍記号) |
ab |
ハンガリー | HA | abc |
アイスランド | TF | abc |
インド | VT | abc |
インドネシア | PK | abc |
イラン | EP | abc |
イラク | YI | abc |
アイルランド | EI | abc |
イスラエル | 4X | abc |
イタリア | I | abcd |
コートジボワール | TU | abc |
ジャマイカ | 6Y | abc |
日本 | JA | 1234 or 123a or 12ab or a123 |
ヨルダン | JY | abc |
カザフスタン | UN | 12345 |
ケニア | 5Y | abc |
テンプレート:KIR | T3 | abc |
北朝鮮 | P | 123 |
韓国 | HL | 1234 |
クウェート | 9K | abc |
キルギス | EX | 12345 or 123 |
ラオス | RDPL | 12345 |
ラトビア | YL | abc |
レバノン | OD | abc |
レソト | 7P | abc |
テンプレート:LBR | A8 | abc |
リビア | 5A | abc |
リトアニア | LY | abc |
ルクセンブルク | LX | abc |
マカオの旗 マカオ | B-M | ab |
マケドニア | Z3 | abc |
マダガスカル | 5R | abc |
マラウイ | 7Q | abc |
マレーシア | 9M | abc |
モルディブ | 8Q | abc |
マリ | TZ | abc |
マルタ | 9H | abc |
マーシャル諸島 | V7 | 1234 |
モーリタニア | 5T | abc |
モーリシャス | 3B | abc |
メキシコ | XA | abc |
[[ファイル:テンプレート:Country flag alias メキシコ|border|25x20px|テンプレート:Country alias メキシコの旗]]メキシコ | XB | abc |
[[ファイル:テンプレート:Country flag alias メキシコ|border|25x20px|テンプレート:Country alias メキシコの旗]]メキシコ | XC | abc |
ミクロネシア連邦 | V6 | abc |
モルドバ | ER | abc or 12345 |
モンテネグロ | 4O | abc |
モナコ | 3A | abc |
モンゴル | JU | 1234 |
テンプレート:MSR | VPL | ab |
モロッコ | CN | abc |
モザンビーク | C9 | abc |
ミャンマー | XY | abc |
[[ファイル:テンプレート:Country flag alias ミャンマー|border|25x20px|テンプレート:Country alias ミャンマーの旗]]ミャンマー | XZ | abc |
ナミビアの旗 ナミビア | V5 | abc |
ナウル | C2 | abc |
ネパール | 9N | abc |
オランダ | PH | abc |
テンプレート:ANT | PJ | abc |
ニュージーランド | ZK | abc |
ニュージーランド | ZL | abc |
ニカラグア | YN | abc |
ニジェール | 5U | abc |
ナイジェリア | 5N | abc |
ノルウェー | LN | abc |
オマーン | A4O | ab |
パキスタン | AP | abc |
パレスチナ | SU-Y | ab |
パナマ | HP | 1234abc |
パプアニューギニア | P2 | abc |
パラグアイ | ZP | abc |
ペルー | OB | 1234 |
フィリピン | RP-C | 1234 |
ポーランド | SP | abc |
ポルトガル | CS | abc |
カタール | A7 | abc |
[[ファイル:テンプレート:Country flag alias レユニオン|border|25x20px|テンプレート:Country alias レユニオンの旗]]レユニオン | F-OD | ab |
ルーマニア | YR | abc |
ロシア | RA | 12345 or 1234K |
ルワンダ | 9XR | ab |
[[ファイル:テンプレート:Country flag alias セントヘレナ|border|25x20px|テンプレート:Country alias セントヘレナの旗]]セントヘレナ | VQ-H | ab |
テンプレート:KNA | V4 | abc |
テンプレート:LCA | J6 | abc |
セントビンセント・グレナディーン | J8 | abc |
テンプレート:WSM | 5W | abc |
サンマリノ | T7 | abc |
サントメ・プリンシペ | S9 | abc |
サウジアラビア | HZ | abc or ab1 or ab12 or abc1 |
セネガル | 6V | abc |
[[ファイル:テンプレート:Country flag alias セネガル|border|25x20px|テンプレート:Country alias セネガルの旗]]セネガル | 6W | abc |
テンプレート:SYC | S7 | abc |
シエラレオネ | 9L | abc |
シンガポール | 9V | abc |
スロバキア | OM | abc |
スロベニア | S5 | abc |
テンプレート:SLB | H4 | abc |
ソマリア | 6O | abc |
南アフリカ共和国 | ZS | abc |
[[ファイル:テンプレート:Country flag alias 南アフリカ|border|25x20px|テンプレート:Country alias 南アフリカの旗]]南アフリカ共和国 | ZT | abc |
[[ファイル:テンプレート:Country flag alias 南アフリカ|border|25x20px|テンプレート:Country alias 南アフリカの旗]]南アフリカ共和国 | ZU | abc |
[[ファイル:テンプレート:Country flag alias 南スーダン|border|25x20px|テンプレート:Country alias 南スーダンの旗]]南スーダン | Z8 | abc |
セルビア | YU | abc |
スペイン | EC | abc |
スリランカ | 4R | abc |
スーダン | ST | abc |
スリナム | PZ | abc |
テンプレート:SWZ | 3D | abc |
スウェーデン | SE | abc |
スイス | HB | abc |
シリア | YK | abc |
テンプレート:TAH | F-OH | ab |
タジキスタン | EY | 12345 |
タンザニア | 5H | abc |
タイ | HS | abc |
トーゴ | 5V | abc |
テンプレート:TON | A3 | abc |
トリニダード・トバゴ | 9Y | abc |
チュニジア | TS | abc |
トルコ | TC | abc |
トルクメニスタン | EZ | a123 |
テンプレート:TCA | VQ-T | ab |
テンプレート:TUV | T2 | abc |
ウガンダ | 5X | abc |
ウクライナ | UR | 12345 or abc |
アラブ首長国連邦 | A6 | abc |
イギリス | G | abcd |
[[ファイル:テンプレート:Country flag alias 国連|border|25x20px|テンプレート:Country alias 国連の旗]] 国際連合 | 4U | abc |
アメリカ合衆国 | N | 12345 or 1234a or 123ab or 1234 |
テンプレート:URU | CX | abc |
ウズベキスタン | UK | 12345 |
バヌアツ | YJ | ab1 or ab12 |
ベネズエラ | YV | 123 |
ベトナム | VN | 1234 or a123 |
イエメン | 7O | abc |
テンプレート:ZMB | 9J | abc |
ジンバブエの旗 ジンバブエ | Z | abc |
各国の事情
アメリカ
現在の登録番号は、
- 国籍記号「N」
- 1〜9999の数字
- アルファベット列2桁以下(0桁可)かつ数字とあわせ5桁以下
を続ける。ただし、1〜99(アルファベットなし)は連邦航空局 (FAA) により予約されている。『N1』はFAAのロッキード ジェットスターに与えられた。
1929年から1948年12月31日までは、現在と異なるシステムで番号登録されていた(すでに登録された旧形式の番号は、1953年1月1日までに切り替えられた)。旧形式では、Nの次の1文字「class prefix」で種類分けされていた。たとえば、民間機の多くは「NC+数字」で登録されていた(なお、この「NC」は prefix code などと呼ばれるが、国籍記号は「NC」ではなく「N」だけである)。この形式は、国籍記号が導入される1929年以前からアメリカ国内で使われていた形式が元になっており、それ以前は「C+数字」だったのが「NC+数字」に切り替わった。
class prefix の意味は次のとおり(1948年以前に廃止されたものも共に挙げる)。
- C = 商用機 (commerce)、自家用機、郵便機
- G = グライダー (glider) ※1937年廃止
- L = 軍用機など (limited)
- P = 自家用機 (private) ※1927年廃止、「NP+数字」の形では使われなかった
- R = 農薬散布用の農業機、レース機など (restricted)
- S = 州 (state) または連邦政府の保有する機体 ※1937年廃止
- X = 実験航空機 (experimental)
軍用機はテールコードで管理されている。
クロアチア
クロアチアの国籍記号は現在「9A」であるが、ユーゴスラビアから独立した一時期「CR」という機体記号を国際的承認なしに暫定的に使用していた。
サンマリノ
サンマリノは唯一、空港やヘリポートがないため登録されている航空機はない。
ソ連
かつてのソビエト連邦の機体記号は国名のロシア語表記(Союз Советских Социалистических Республик)を略した「СССР-12345」[8]という形であった。キリル文字で表記されているが、これをラテン文字アルファベットに転記すると「SSSR」となる。
中国
中華人民共和国、台湾(中華民国)、香港、澳門(マカオ)の4つの国及び地域は、全て中国の国籍記号である「B」を国表記記号として使用している。なお、中国本土と台湾は双方ともBプラス数字といった機体記号を使用している。そのため、過去に同じ機体記号が存在していた可能性もあるが、現在では中国は4桁、台湾は5桁となっているため重複は無い。香港と澳門は機体記号が全てローマ字であるので、区別がしやすい。
香港がイギリスから中国に返還される前まではVR-H**という機体記号が割り当てられていた。また澳門も1999年まで中国とは別の機体記号(旧宗主国のポルトガルと同じ記号)が割り当てられていた。返還に際して、中国に対してVR-Hが香港時代からそのまま割り当てられているが、現在は使用されていない。また、この時点まで同じVR-を使用していたイギリス領の各地では、VR-がイギリスと中国の両方に割り当てられてしまうと不具合が生じるので、香港返還と同時にVP-に変更された。
ドイツ
ドイツの機体記号は、戦前までは「D-1929」といった、現在のイギリスなどに近い表記方法であった。戦後民間航空が再開された時に現在のスタイルになった。
旧東ドイツは1973年まで「DM-ABC」、それ以後は「DDR-ABA」という形であった。DDRはドイツ語の国名"Deutsche Demokratische Republik"の略称である。(例示した「DDR-ABA」はインターフルクのエアバスA310で、ドイツ統一時に「D-AOAA」となったが会社自体がなくなったため短命に終わった)
日本
日本では、航空法により、国土交通省(航空機登録原簿)への登録をして交付された航空機登録証明書に記載された国籍記号と登録記号を表示しなければならない。(詳しくは航空機の登録を参照)
かつては"JA"の後ろは機種別の登記になっており、航空機の機種別に次のように分類した登録をすることとしており、民間の航空会社だけでなく警察・消防・海上保安庁・航空局などの官庁で運用する航空機にも適用されている。ただし、自衛隊で運用されている航空機の場合は航空法による機体記号の適用除外であるため、数字のみで構成される独自の機体記号が用いられている。
- 0001〜0999 第三種滑空機
- 1001〜1999 特殊航空機
- 2001〜2999 第一種、第二種滑空機、動力滑空機
- 3001〜4999 ピストン単発飛行機
- 5001〜5999 ピストン多発飛行機
- 7001〜7999 ピストン・ヘリコプター
- 8001〜8999 ジェット機、ターボプロップ機
- 9001〜9999 ターボシャフト・ヘリコプター
- A0001〜A9999 熱気球
上記のうち、航空会社でおもに使用されるジェット機およびターボプロップ機についてはさらに細かい分類が行われていた。最初は"JA8000"番台は4発ジェット旅客機(DC-8初号機がJA8001)、"JA8100"番台は大型4発ジェット旅客機(当時はボーイング747のみ)、"JA8300"番台は3発ジェット旅客機(ボーイング727など)、"JA8400"番台は双発ジェット旅客機(ボーイング737など)、"JA8500"番台は大型3発ジェット旅客機DC-10・トライスターなど)、"JA8600"番台から"8800"番台はターボプロップ機(YS-11や測量用のエアロコマンダーなど)、というように分類されていたが、1990年代以降、航空機の登録数が大幅に増加し、この法則では賄いきれなくなり、空いている番号を埋めていった(その中には、かつて忌み数として飛ばされていた番号[9]もあり、8000番台に限り[10]埋めて使用している)。
また、6001〜6999番台においてはピストン多発飛行機が使用するための空白地帯であったが、ヘリコプターの普及に伴い9001〜9999番台が不足したため、6001〜6999番台をヘリコプターの登録枠となった。
さらなる航空機の増加や更新に備えるべく1997年以降“JA+3桁の数字+アルファベット1つ”もしくは“JA+2桁の数字+アルファベット2つ”のパターンになっており、さらに「アルファベットのI(アイ)・O(オー)・S(エス)は使用不可」などの詳細な規則も規定されている(アラビア数字の1・0・5との誤認を防ぐため)。
なお、1997年以前に日本に導入された機体で2桁の数字+アルファベット2つパターンを登録している岐阜県防災航空隊のベル412EP、JA96GF(現在は抹消されている)が挙げられるが、これはアメリカ籍で導入され、翌年の1997年に日本国籍を取得したためである。 [11]
また、戦前までは"J-ABCD"といった、現在のイギリスに近い表記方法であった。1952年に民間航空が再開された時に国籍記号が"JA"となった。例えば神風号はJ-BAAI、ニッポン号はJ-BACIという具合であった。戦後民間航空が再開された時に現在のスタイルになった。
JA001Aは朝日新聞社航空部が報道機として導入したセスナ サイテーション560に与えられ、2018年現在は岡山航空株式会社が所有している[12]。
日本では、自動車の登録番号と同様に一度使用された機体記号は、同一の機体を国内で再登録する場合(海外に売却した機体を買い戻し再登録する場合、修理のため抹消した機体を再登録する場合)を除いて、原則として二度と使用しない。全日空のボーイング767-381F(製造番号.33404)のJA601Fは2002年8月に同社保有で登録された後、2011年2月に売却されタンパ・カーゴなどで使用されていた。2015年12月に全日空が買い戻したが、同じ登録記号が使用された。日本航空のボーイング747-246F(製造番号.22477)のJA8151は1994年にアメリカのサザン・エア・トランスポートに売却されたのちに、1999年に日本航空に復帰したがJA8937として再登録された。前述の全日空の事例とは異なり、異なる登録記号が使用されている。異なる機体に対する再割り当ての事例は確認されており、2006年12月に登録された全日空のボーイング777-381ER(製造番号.32650)のJA777Aは、1997年に事故により大破し抹消登録されたロビンソン R44の登録記号と同じである。
日本では修理不能となった航空機を登録抹消し、一度外国籍に登録し、再び日本国籍を再登録する事例(個人保有(元・アジア航測)のJA8600など)も存在する。
日本国政府専用機は現在航空自衛隊に所属するため、専用のシリアルナンバー(機体番号)が付けられている。アメリカから日本へのフェリーでは民間機扱いで登録されていたが、後にそれぞれ「1号 - JA8091→20-1101、2号機 - JA8092→20-1102」へと変更された。また3号機の導入を見越してJA8093も割り振られていたが、導入が見送られたため未使用のまま現在も欠番である。
登録記号は新規登録時に希望する並びを申請できるが、登録記号取扱規則により制限がある[1]。熱気球のみ登録は国土交通省ではなく日本気球連盟に登録を行う。[13]
超軽量動力機等のスポーツ、レクレーション等を目的とした飛行や、自作機などによる試験飛行の機体登録の際に付与される識別記号には、国籍記号のJAは使用されず、それぞれJR、JE、JXから始まる6文字の記号が申請順に割り当てられる[7][2]。これらの識別記号はアルファベット2文字とアラビア数字4文字で構成するが、超軽量動力機とジャイロプレーンにおいてアラビア数字4文字の記号が不足する場合には下1桁から3桁までアルファベットを含めて構成することしている。ただし除外されるアルファベットについてはI、O及びQとなっており、登録記号取扱規則で除外されるSは使用可能となっている。
- JR0201〜6ZZZ 超軽量動力機(舵面操縦型)
- JR7001〜7ZZZ 超軽量動力機(体重移動操縦型)
- JR8001〜9ZZZ 超軽量動力機(パラシュート型)
- JE0001〜9ZZZ ジャイロプレーン
- JX0001〜9999 超軽量動力機やジャイロプレーンの要件を満たさない自作航空機
『JX0001』は大西勇一がスバル・1000のエンジンを流用して制作したモーターグライダー『スバルプレン』で、現在は向井千秋記念子ども科学館で展示されている。この他にオープンスカイプロジェクトのM-02J(モーターグライダー)には『JX0122』が、超小型ヘリコプターのホームビルト機であるGEN H-4の試験機には『JX0076』と『JX0077』が割り当てられている。
モナコ
モナコには空港はないが、ニースのコート・ダジュール空港からモナコまで、ヘリ・エア・モナコによるヘリコプター定期便が運航されているほか、遊覧飛行用や自家用も登録されている。
ロシア
アエロフロート・ロシア航空など、ロシアの航空会社が西側諸国の企業であるボーイング製やエアバス製の旅客機を運用する際にはリース機として導入し、他国の機体記号(バミューダ諸島のVQ-B/VP-BやアイルランドのEI)を登録している場合が多い。ただしサハリン航空など、ボーイング製の機体であってもロシアの機体記号で登録している航空会社もある。
国名との対応
一覧を参照すればわかるように、国家名と国籍記号はほとんど一致していないことが見て取れ、国籍記号から国家名を連想しにくい。国籍記号と国家名の頭文字が合致しているものは
- 日本 = JA pan
- カナダ = C anada
- イタリア = I taly
- フランス = F rance
- ドイツ = D eutschland
- ジンバブエ = Z imbabwe
- エストニア = ES tonia
- エチオピア = ET hiopia
- イギリス = G reat Britain
くらいしかない。
ほかには、
- オーストリアの"OE"は、原語であるドイツ語の国名"Österreich"の頭文字Öの代替として使用されているものであること
- アイルランドの"EI"は、原語であるアイルランド語国名"Éire"
- トルコの"TC"は、原語であるトルコ語の国名"Türkiye Cumhuriyeti"のそれぞれの頭文字からであること
- キューバの"CU-T"の"CU"は、"Cuba"、ロシアの"RA"は、"Russia"からであること
- ベトナムの"VN"は、"Vietnam"、ウクライナの"UR"がUkrajina、ルクセンブルクの"LX"がLuxemburgに基づくものであること
- リトアニアの"LY"は、リトアニア語の国名である"Lietuvos"から、iを大文字にした際に数字の「1」と混同しないためYに変えたもの。
- ラオスの"RDPL"は、フランス語による正式国名"République démocratique populaire lao"のそれぞれの頭文字からであること
が推測できるのみである。
脚注
- ↑ 1.0 1.1 1.2 1.3 1.4 1.5 1.6 1.7 機体記号のひみつ - 実験用航空機レポート - JAXA
- ↑ 2.0 2.1 2.2 自作航空機に関する試験飛行等の許可について - 国土交通省航空局
- ↑ 書籍によっては「ヨーク・ピーター」になっている場合もある。
- ↑ JA01TA:大分県防災OITAから。JA291F:福井県防災291がふくいと読める。JA119A:東京消防庁119の部分は消防緊急通報用電話番号
- ↑ 飛翔がアメリカで実験を行う際に取得した機体記号はN288JA
- ↑ N155AN:日産自動車、155の部分をISSに見立てている
- ↑ 7.0 7.1 超軽量動力機又はジャイロプレーンに関する試験飛行等の許可について - 国土交通省航空局
- ↑ アルファベットのCやPと同じ形だが、読みはエス・エス・エス・エルである。
- ↑ 死を連想させる"JA***4"、"JA**42"や苦を連想させる"JA***9"など。日本航空ではDC-8で欠番とされた"JA8004"が後に日本エアシステムのMD-90に登録されている。全日空では、ボーイング727で欠番とされた"JA8304"が後に同社のエアバスA320、"JA8342"が後に同社のボーイング767-300に、トライスターで欠番とされた"JA8504"は後に同社のボーイング737-500に、フォッカー F27で欠番とされた"JA8609"が後に同社のエアバスA320にそれぞれ登録されている。なお、全日空のボーイング737(-200)で欠番とされた"JA8404"は、結局同社のボーイング737(-500)で登録されている。
- ↑ 全日空のDH104で欠番とされた"JA5004"と"JA5009"、DC-3で欠番とされた"JA5044"と"JA5049"と"JA5099"、日本航空のDC-4で欠番とされた"JA6004"、DC-6で欠番とされた"JA6204"、DC-7で欠番とされた"JA6304"は未使用のまま現在も欠番である。
- ↑ “登録記号取扱規則(抜粋)(平成8年より運用) (PDF)”. 国土交通省航空局. . 2013閲覧.
- ↑ 機体記号 : JA001A (岡山航空) 徹底ガイド | FlyTeam(フライチーム)
- ↑ “日本気球連盟とは”. 日本気球連盟. . 2016閲覧.
関連項目
- ナンバープレート
- 船籍 - 船舶の国籍
- IMO番号 - 国際海事機関が船舶、所有者、管理者に与える番号。廃船になるまで変更されない。
- 船舶番号 - 日本の船舶に与えられる登録番号
- 鉄道の車両番号
- 国際識別記号 - 自動車を登録した国、または地域を示す国際交通における車両の識別記号。機体記号と同じ記号の国もある。
外部リンク
- JA Search 日本の民間登録航空機検索データベース(個人サイト)
- 日本の航空会社、官公庁、報道関係登録機リスト(個人サイト)
- United States Aircraft Registry Search (連邦航空局)
- Australian Aircraft Registry Search
- Canadian Aircraft Registry Search
- Finnish Aircraft Register
- New Zealand Aircraft Registry Search
- Swedish Aircraft Search
- Danish Aircraft Registry Search
- United Kingdom Aircraft Registry Search
- Annex 7 to the Convention on International Civil Aviation
- Article 20 of the Convention on International Civil Aviation
- Supplement to Annex 7 of the Convention on International Civil Aviation