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| | |awards = [[勲一等旭日大綬章]]（1915年） | | |awards = [[勲一等旭日大綬章]]（1915年） |
| | |debut_works = 『於母影』（1889年） | | |debut_works = 『於母影』（1889年） |
| − | |spouse = 登志子（1889年 - 1890年）<br />[[森志げ|志げ]]（1902年 - 1922年） | + | |spouse = |
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| − | |children = [[森於菟|於菟]]（長男）<br />[[森茉莉|茉莉]]（長女）<br />[[小堀杏奴|杏奴]]（次女）<br />不律（二男）<br />[[森類|類]]（三男）
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| − | |influences = [[ハンス・クリスチャン・アンデルセン|アンデルセン]]、[[ヨハン・ヴォルフガング・フォン・ゲーテ|ゲーテ]]、[[ウィリアム・シェイクスピア|シェイクスピア]]、[[フリードリヒ・フォン・シラー|シラー]]、[[ゲアハルト・ハウプトマン|ハウプトマン]]、[[アルトゥル・ショーペンハウアー|ショーペンハウアー]]、[[エドゥアルト・フォン・ハルトマン|フォン・ハルトマン]]、[[夏目漱石]]、依田學海など
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| − | |influenced = 多くの日本の作家
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| | }} | | }} |
| − | '''森 {{JIS2004フォント|鷗}}外'''（もり おうがい、[[1862年]][[2月17日]]（[[文久]]2年[[1月19日 (旧暦)|1月19日]]） - [[1922年]]（[[大正]]11年）[[7月9日]]）は、[[日本]]の[[明治]]・[[大正]]期の[[小説家]]、[[評論家]]、[[翻訳家]]、[[大日本帝国陸軍|陸軍]][[軍医]]（[[軍医総監#旧日本軍における軍医総監|軍医総監]]＝[[中将]]相当）、[[官僚]]（[[高等官]]一等）。[[位階]][[勲等]]は[[従二位]]・[[勲一等旭日大綬章|勲一等]]・[[金鵄勲章|功三級]]・[[博士（医学）|医学博士]]・[[博士（文学）|文学博士]]。本名は'''森 林太郎'''（もり りんたろう）。 | + | '''森 {{JIS2004フォント|鷗}}外'''（もり おうがい、[[1862年]][[2月17日]]（[[文久]]2年[[1月19日 (旧暦)|1月19日]]） - [[1922年]]（[[大正]]11年）[[7月9日]]） |
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| − | [[石見国]]津和野（現・[[島根県]][[津和野町]]）出身。[[東京大学大学院医学系研究科・医学部|東京大学医学部]]<ref group="注">入学時は第一大学区医学校予科</ref>卒業。
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| − | 大学卒業後、陸軍軍医になり、[[陸軍省]]派遣留学生として[[ドイツ]]でも軍医として4年過ごした。帰国後、訳詩編「[[於母影]]」、小説「[[舞姫]]」、翻訳「[[即興詩人]]」を発表する一方、同人たちと文芸雑誌『[[しがらみ草紙]]』を創刊して文筆活動に入った。その後、[[日清戦争]]出征や[[小倉市|小倉]]転勤などにより、一時期創作活動から遠ざかったものの、『[[スバル (文芸雑誌)|スバル]]』創刊後に「[[ヰタ・セクスアリス]]」「[[雁 (小説)|雁]]」などを発表。[[乃木希典]]の[[殉死]]に影響されて「[[興津弥五右衛門の遺書]]」を発表後、「[[阿部一族]]」「[[高瀬舟 (小説)|高瀬舟]]」など歴史小説や史伝「澁江抽斎」等も執筆した。
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| − | 晩年、[[帝室博物館]]（現在の[[東京国立博物館]]・[[奈良国立博物館]]・[[京都国立博物館]]等）総長や[[帝国美術院]]（現[[日本芸術院]]）初代院長なども歴任した。
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| − | == 生涯 ==
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| − | === 生い立ち ===
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| − | [[1862年]][[2月17日]]（[[文久]]2年[[1月19日 (旧暦)|1月19日]]）、[[石見国]][[鹿足郡]]津和野町田村（現・[[島根県]][[津和野町]]町田）で生まれた<ref>[http://www.sanin-chuo.co.jp/www/contents/1493244667215/index.html 作家 森鴎外（もりおうがい）（島根県津和野町生まれ）] [[山陰中央新報]] 2018年7月11日閲覧。</ref>。代々[[津和野藩]]の[[御典医|典医]]を務める森家では、祖父と父を婿養子<ref group="注">祖母も養子であり、祖父母の代で森家の血筋が絶えていた。このため{{JIS2004フォント|鷗}}外は、親戚の[[西周 (啓蒙家)|西周]]と血が繋がっていない。</ref>として迎えているため、久々の跡継ぎ誕生であった<ref group="注">{{JIS2004フォント|鷗}}外誕生の前年、祖父の白仙が[[東海道]]の[[土山宿]]で病死したため、とくに祖母は{{JIS2004フォント|鷗}}外を白仙の生まれ変わりといって喜び、後年、{{JIS2004フォント|鷗}}外が留学と出征から無事帰国するたびに、はらはらと涙を落としたという（[[#小金井1999|小金井（1999）]]）。</ref>。
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| − | 藩医家の嫡男として、幼い頃から[[論語]]や[[孟子#書物としての『孟子』|孟子]]、オランダ語などを学び、[[養老館]]では[[四書五経]]を復読した。当時の記録から、9歳で15歳相当の学力と推測されており<ref>[[#平川ら1997a|平川ら（1997a）]]、15頁。同書は、学生、作家、軍医、家庭人の側面から、{{JIS2004フォント|鷗}}外の実像にせまった。</ref>、激動の[[明治維新]]に家族と周囲から将来を期待されることになった。
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| − | [[1872年]]（[[明治]]5年）、[[廃藩置県]]等をきっかけに10歳で父と上京。[[墨田区]][[東向島|曳舟]]に住む。東京では、官立医学校（ドイツ人教官がドイツ語で講義）への入学に備え、ドイツ語を習得するため、同年10月に私塾の進文学社<ref group="注">ドイツ人教員がいて生徒の1割強が華族の身分。当時の父親の収入を踏まえると、西周が学費も世話をしたという説がある。</ref>に入った。その際に通学の便から、政府高官の親族・[[西周 (啓蒙家)|西周]]の邸宅に一時期寄食した。翌年、残る家族も住居などを売却して津和野を離れ、父が経営する医院のある[[千住]]に移り住む。
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| − | === 陸軍軍医として任官 ===
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| − | [[1873年]]（明治6年）[[11月]]、入校試問を受け、第一大学区医学校（現・[[東京大学大学院医学系研究科・医学部|東京大学医学部]]）[[予科]]に実年齢より2歳多く偽り、12歳で入学（新入生71名。のちに首席で卒業する[[三浦守治]]も同時期に入学）<ref group="注">校名が頻繁に変更されたように当時は、大学制度確立の過渡期に当たる。{{JIS2004フォント|鷗}}外が入学した明治6年度は、予科（[[旧制高等学校]]に相当する課程）の入学年齢制限が14歳–17歳であった（明治7年度は15歳以下の入学が見合わされており、明治8年度は入学年齢制限が16歳 - 20歳に引き上げられた）。また9月入学の予定であったもの、明治6年度は、定員100名に達しなかったため、学生募集が続けられた。最終的に実年齢をいつわった11歳の{{JIS2004フォント|鷗}}外のほか、17歳の上限年齢を超えた18歳と19歳の応募者も入学した（計71名）。[[本科]]に進めるのは30名に過ぎず、上級の落第者と編入生を加え、予科生は厳しい競争にさらされた。ちなみに、予科71名の新入生はドイツ語の能力で3クラスに分けられており、{{JIS2004フォント|鷗}}外の属した中位のクラスでストレートに本科を卒業したのは24名のうち11名、下位のクラスでストレートに本科を卒業したのは41名のうち2名であった（[[#平川ら1997a|平川ら（1997a）]]、129–134頁）。</ref>。
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| − | 定員30人の本科に進むと、ドイツ人教官たちの講義を受ける一方で、[[佐藤元長]]に就いて[[漢方医学|漢方]]医書を読み、また文学を乱読し、[[漢詩]]・[[漢文]]に傾倒し、[[和歌]]を作っていた<ref>[[#平川ら1997a|平川ら（1997a）]]、112-118、142頁。[[依田學海]]から漢文を、[[佐藤応挙]]から漢詩と和歌を、[[伊藤松渓]]（孫一）から漢詩を学んでいた。</ref>。
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| − | 語学に堪能な{{JIS2004フォント|鷗}}外は、後年、執筆に当たって西洋語を用いるとともに、中国の[[故事]]などをちりばめた。さらに、自伝的小説「[[ヰタ・セクスアリス]]」で[[語源]]を西洋語の学習に役立てる逸話を記した<ref group="注">自伝的小説「ヰタ・セクスアリス」に主人公の[[哲学者]][[金井湛]]の体験として「寄宿舎では、その日の講義のうちにあった術語だけを、希臘拉甸の語原を調べて、赤インキでペエジの縁に注して置く。教場の外での為事は殆どそれ切である。人が術語が覚えにくくて困るというと、僕は可笑しくてたまらない。何故語原を調べずに、器械的に覚えようとするのだと云いたくなる。」と記された。</ref>。
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| − | [[1881年]]（明治14年）[[7月4日]]、19歳で本科を卒業。卒業席次が8番であり<ref group="注">卒業席次が8番となった理由として、卒業試験の最中に下宿が火事になって講義ノート類を焼失したり、[[外科学]]のシュルツ教授が{{JIS2004フォント|鷗}}外の講義ノートに漢文の書き込みを見つけて反感を買ったりした等が挙げられる。また妹の回想には、下宿に同居して{{JIS2004フォント|鷗}}外の世話をしていた祖母が、卒業試験前に文学書を読みふける{{JIS2004フォント|鷗}}外を心配するくだりがある。しかし、首席で卒業した[[三浦守治]][[東京大学|東京帝国大学]]教授が門下生に
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| − | {{Quotation|余ガ大学ニ在ルヤ同級生ニ森林太郎ノ俊才アリ、[[高橋順太郎]]ノ勉強アリ。共ニ畏敬セル競争者ナリキ}}
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| − | と語ったなど、卒業席次上位10名の中で他者より5 - 7歳年下の{{JIS2004フォント|鷗}}外は、なかなか優秀であった。[[#山崎2007|山{{JIS2004フォント|﨑}}（2007）]]、38頁。</ref>、大学に残って研究者になる道は閉ざされたものの、[[文部科学省|文部省]]派遣留学生としてドイツに行く希望を持ちながら、父の病院を手伝っていた。その進路未定の状況を見かねた同期生の[[小池正直]]（のちの[[陸軍省#医務局|陸軍省医務長]]）は、陸軍軍医本部次長の[[石黒忠悳]]に{{JIS2004フォント|鷗}}外を採用するよう長文の熱い推薦状を出しており、また小池と同じく陸軍軍医で日本の[[耳鼻咽喉科学]]の創始者といわれる親友の[[賀古鶴所]]{{small|（かこ・つると）}}は、{{JIS2004フォント|鷗}}外に[[陸軍省]]入りを勧めていた。結局のところ{{JIS2004フォント|鷗}}外は、同年[[12月16日]]に陸軍軍医副（中尉相当）になり、東京陸軍病院に勤務した<ref group="注">{{JIS2004フォント|鷗}}外の陸軍省入りには、当時の[[軍医総監]]、[[林研海|林紀]]と昵懇の間柄である[[西周 (啓蒙家)|西周]]の助力も働いていたようで、[[1882年]]（明治15年）[[5月]]には同期の中で初の「[[軍医本部]]付」となった。[[#山崎2007|山{{JIS2004フォント|﨑}}（2007）]]、41–42頁。</ref>。
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| − | 妹・[[小金井喜美子]]の回想によれば、若き日の{{JIS2004フォント|鷗}}外は、[[四君子]]を描いたり、庭を写生したり、職場から帰宅後しばしば寄席に出かけたり（喜美子と一緒に出かけたとき、ある落語家の長唄を聴いて中座）していたという<ref>[[#小金井1999|小金井（1999）]]、35–37, 39頁。</ref>。
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| − | === ドイツ留学 ===
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| − | [[File:Mori-Ogai-Gedenkstätte.jpg|thumb|250px|森{{JIS2004フォント|鷗}}外記念館、ドイツ・ベルリン]]
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| − | 入省して半年後の[[1882年]]（明治15年）5月、東京大学医学部卒業の同期8名の中で最初の軍医本部付となり、[[プロイセン王国]]の陸軍衛生制度に関する文献調査に従事し、早くも翌年3月には『[[医政全書稿本]]』全12巻<ref group="注">『[[医政全書稿本]]』全十二巻の前部は、[[陸軍衛生制度]]のほか、軍隊での儀礼や法制、経理、給与、設営などが取り上げられた。また、その後部は、[[軍陣衛生]]の各論で構成された。二十歳の{{JIS2004フォント|鷗}}外は、そうした膨大な内容の稿本を十か月ほどで編集したのである。[[#山崎2007|山{{JIS2004フォント|﨑}}（2007）]]、45頁。</ref>を役所に納めた。[[1884年]]（明治17年）6月、[[衛生#衛生学|衛生学]]を修めるとともに[[ドイツ帝国]]陸軍の衛生制度を調べるため、ドイツ留学を命じられた<ref group="注">明治17年留学生のメンバーは[[森林太郎]]、[[片山国嘉]]、[[丹波敬三]]、[[長與稱吉]]、[[田中正平]]、[[宮崎道三郎]]、[[隈川宗雄]]、[[萩原三圭]]、[[穂積八束]]、[[飯盛挺造]]、の10名、鷗外がこの10名を[[飯盛挺造#日東十客歌|日東十客ノ歌]]を書いている。（鷗外留学始末、5p）</ref>。[[7月28日]]、[[明治天皇]]に拝謁し、[[賢所]]に参拝。[[8月24日]]、陸軍省派遣留学生として[[横浜港]]から出国し、[[10月7日]]に[[フランス]]の[[マルセイユ]]港に到着。同月11日に首都[[ベルリン]]に入った。鷗外は横浜からマルセイユに至る航海中のことを「航西日記（こうせいにっき）」に記している。
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| − | {{wikisource|航西日記}}
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| − | 最初の1年を過ごした[[ライプツィヒ]]（1884年[[11月22日]]–翌年[[10月11日]]）で、生活に慣れていない{{JIS2004フォント|鷗}}外を助けたのが、昼食と夜食をとっていたフォーゲル家の人達であった<ref group="注">{{JIS2004フォント|鷗}}外は、ドレスデンに移った年のクリスマス休暇で、ライプツィヒに出かけた。予定を延ばして滞在したものの、[[12月30日]]さらに滞在を勧める人たちに別れを告げた。[[#金子1992|金子（1992）]]、15–18頁。</ref>。
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| − | また、黒衣の女性ルチウスなど下宿人たちとも親しくつき合い、[[ライプツィヒ大学]]では[[フランツ・ホフマン|ホフマン]]など良き師と同僚に恵まれた。演習を観るために訪れた[[ザクセン王国]]の首都[[ドレスデン]]では、[[ドレスデン美術館]]の[[アルテ・マイスター絵画館]]にも行き、[[ラファエロ・サンティ|ラファエロ]]の「[[システィーナの聖母]]」を鑑賞した。
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| − | | |
| − | 次の滞在地ドレスデン（[[1885年]][[10月11日]]–翌年[[3月7日]]）では、主として軍医学講習会に参加するため、5か月ほど生活した。王室関係者や軍人との交際が多く、王宮の舞踏会や貴族の夜会や宮廷劇場などに出入りした。その間、2人の大切な友人を得た。1人は{{JIS2004フォント|鷗}}外の指導者で[[ザクセン王国]]軍医監の{{仮リンク|ウィルヘルム・オーギュスト・ロート<!-- 同名多数 -->|de|Wilhelm August Roth|label=ウィルヘルム・ロート}}で、もう1人は外国語が堪能な同僚軍医のヴィルケ（鷗外はヰルケと表記）<ref group="注">キルケの名は、ドレスデン滞在時の日記に17回登場し、{{JIS2004フォント|鷗}}外がドレスデンを離れた後も、つき合いが続いていた（[[#金子1992|金子（1992）]]、42頁）。</ref>である。{{JIS2004フォント|鷗}}外はドレスデンを離れる前日、[[ハインリッヒ・エドムント・ナウマン|ナウマン]]の講演に反論し、のちに[[ミュンヘン]]の一流紙「[[:de:Allgemeine Zeitung|Allgemeine Zeitung]]」上で論争となった。
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| − | ミュンヘン（[[1886年]][[3月8日]]–翌年[[4月15日]]）では、[[ミュンヘン大学]]の[[マックス・フォン・ペッテンコーファー|ペッテンコーファー]]に師事した。研究の傍ら、邦人の少なかったドレスデンと異なり、同世代の[[原田直次郎]]や[[近衛篤麿]]など名士の子息と交際し、よく観劇していた。
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| − | 次のベルリン（[[1887年]][[4月16日]]–翌年[[7月5日]]）でも、早速[[北里柴三郎]]とともに[[ロベルト・コッホ|コッホ]]に会いに行っており、[[細菌学]]の入門講座をへてコッホの衛生試験所に入った<ref group="注">近代[[細菌学]]の開祖とされるコッホは、[[ミュンヘン大学]]の恩師[[マックス・フォン・ペッテンコーファー|ペッテンコーファー]]と対立していたが、北里柴三郎の勧めもあり、{{JIS2004フォント|鷗}}外はコッホにも師事した。</ref>。
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| − | 9月下旬、[[カールスルーエ]]で開催される第4回[[赤十字社|赤十字]]国際会議の日本代表（首席）としてドイツを訪れていた石黒忠悳に随行し、通訳官として同会議に出席。9月26日・27日に発言し、とりわけ最終日の27日は「ブラボー」と叫ぶ人が出るなど大きな反響があった<ref group="注">9月26日は、[[オランダ]]代表の「欧州外の戦争で傷病者を救助すべきか否か」という問題提起に、「眼中唯〃欧州人の植民地あるを見て発したる倉卒の問いなり」と発言。翌27日の最終日は、石黒忠悳の許可を得て「アジア外の諸邦に戦いあるときは、日本諸社は救助に力を尽くすこと必然ならんと思考す」と演説し、喝采を博した。ちなみに、その演説主旨は、4月18日に同期の[[谷口謙]]と共に[[乃木希典]]、[[川上操六]]の両少将を訪問したとき、どちらかの少将の発言内容とほぼ同じである。もっとも当時、あまり知られていない極東の小国（[[モンゴロイド]]で非[[キリスト教]]徒の国）の通訳官が、国際会議で発言すること自体、相当勇気が必要であろう。[[#山崎2007|山{{JIS2004フォント|﨑}}（2007）]]、66–67, 70–73頁。</ref>。
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| − | 会議を終えた一行は、[[9月28日]]に[[ウイーン]]に移動し、万国衛生会に[[日本政府]]代表として参加した。11日間の滞在中、{{JIS2004フォント|鷗}}外は恩師や知人と再会した。[[1888年]]（明治21年）1月、[[大和会]]の新年会でドイツ語の講演をして公使の[[西園寺公望]]に激賞されており、18日から[[田村怡与造]]大尉の求めに応じて[[カール・フォン・クラウゼヴィッツ|クラウゼヴィッツ]]の『[[戦争論#日本での成立|戦争論]]』を講じた。留学が一年延長された代わりに、地味な隊付勤務（プロイセン近衛歩兵第2連隊の医務）を経験しており、そうしたベルリンでの生活は、ミュンヘンなどに比べ、より「公」的なものであった。ただし、後述するドイツ人女性と出会った都市でもあった。
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| − | 同年[[7月5日]]、{{JIS2004フォント|鷗}}外は石黒と共にベルリンを発ち、帰国の途についた。[[ロンドン]]（[[保安条例]]によって東京からの退去処分を受けた[[尾崎行雄]]に会い、詩を4首贈った）や[[パリ]]に立ち寄りながら、[[7月29日]]マルセイユ港を後にした。[[9月8日]]横浜港に着き、午後帰京。同日付けで[[陸軍軍医学校|陸軍軍医学舎]]の教官に補され、11月には[[陸軍大学校]]教官の兼補を命じられた。帰国直後、ドイツ人女性が来日して滞在一月（1888年[[9月12日]] - [[10月17日]]）ほどで離日する出来事があり、小説「[[舞姫]]」の素材の一つとなった<ref group="注">現在、来日したドイツ人女性について3人の名が挙がっている。[[#植木2000|植木（2001）]]は、年上の既婚者'''エリーゼ・ヴァイゲルト'''（Elise Weigert。ヴィーゲルトWiegertの可能性も指摘された）説を否定し、遺産を得ていた仕立物師の娘'''アンナ・ベルタ・ルイーゼ・ヴィーゲルト''' (Anna Berta Luise Wiegert)（[[1872年]][[12月16日]]- [[1951年]]）説を新たに唱え、AnnaとLuiseが{{JIS2004フォント|鷗}}外の子供達の名（杏奴、類）と一致すること等も指摘した。[http://www.asahi.com/travel/traveler/TKY200703030197.html 森{{JIS2004フォント|鷗}}外と「エリス」―ドイツ・ベルリン]。しかし、その後に刊行された[[#林2005|林（2005）]]と[[#小平2006|小平（2006）]]は、植木説ではなく、従来の主流である年上の既婚者説をとった。[[2010年]]11月19日、植木説に基づくTV番組NHKハイビジョン特集「{{JIS2004フォント|鷗}}外の恋人～百二十年後の真実～」（90分）が放送された。放送直後、[[#今野2010|今野（2010）]]が刊行され、当時15歳のドイツ人女性が単身来日でき、また偽名でも日独間を行き来できる可能性があったこと等を明らかにした。[[2011年]]3月、[[六草いちか]]が'''エリーゼ・マリー・カロリーネ・ヴィーゲルト'''説を発表した。その根拠として、名前、出生地、帰国後の職業、{{JIS2004フォント|鷗}}外帰国時の年齢（21歳）、{{JIS2004フォント|鷗}}外の娘の名前：茉莉と杏奴（エリーゼのミドルネームと妹がアンナ）等を挙げた。[[#六草2011|六草（2011）]][http://book.asahi.com/clip/TKY201103090709.html {{JIS2004フォント|鷗}}外「舞姫」のモデルは彼女？ 洗礼記録発見、経歴一致][http://www.jiji.com/jc/zc?k=201211/2012110600062&g=soc 鴎外「舞姫」モデルの晩年明らかに＝ベルリン在住のライターが調査]</ref>。後年、文通をするなど、その女性を生涯忘れることは無かったとされる<ref>[[#小堀1981|小堀（1981）]]、195-196頁。</ref>。鷗外はドイツ留学中のことを「獨逸日記」に記している。
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| − | {{wikisource|獨逸日記}}
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| − | === 初期の文筆活動 ===
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| − | [[1889年]]（明治22年）[[1月3日]]、『[[読売新聞]]』の付録に「[[小説]]論」<ref group="注">日本で最初に、[[エミール・ゾラ|ゾラ]]の文学的傾向の実体を紹介するものとなった。ちなみに、日本でゾラの自然主義の影響が出始めたのは、明治30年代である。[[#山崎2007|山{{JIS2004フォント|﨑}}（2007）]]、100頁。</ref>を発表し、さらに同日の読売新聞から、弟の[[三木竹二]]と共に[[ペドロ・カルデロン・デ・ラ・バルカ|カルデロン]]の戯曲「調高矣津弦一曲」（原題：サラメヤの村長）を共訳して随時発表した。その翻訳戯曲を高く評価したのが[[徳富蘇峰]]であり、8月に蘇峰が主筆を務める[[民友社]]の雑誌『[[国民之友]]』夏期文芸付録に、訳詩集「[[於母影]]」（署名は「S・S・S」（[[新声社]]の略記）<ref group="注">[[新声社]]の同人は、[[落合直文]]、[[市村さん次郎|市村瓚次郎]]、[[井上通泰]]、[[三木竹二]]（{{JIS2004フォント|鷗}}外の実弟）、[[小金井喜美子]]（実妹で既婚）、{{JIS2004フォント|鷗}}外本人の計6名。ただし竹二は、「於母影」の共訳に参加していない。[[#山崎2007|山{{JIS2004フォント|﨑}}（2007）]]、103頁。</ref>）を発表した。その「於母影」は、日本近代詩の形成などに大きな影響を与えた。また「於母影」の原稿料50円を元に、竹二など同人たちと日本最初の評論中心の専門誌『[[しがらみ草紙]]』を創刊した（日清戦争の勃発により59号で廃刊）<ref group="注">『しがらみ草紙』は、3号に[[坪内逍遥]]と[[幸田露伴]]の、4号に[[山田美妙]]と[[石橋忍月]]の文が掲載され、その地位が高まった。最盛期に2,000部が売られた。</ref>。
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| − | このように、外国文学などの翻訳を手始めに（「[[即興詩人]]」「[[ファウスト]]」などが有名）<ref group="注">{{JIS2004フォント|鷗}}外の「翻訳」（広義）ぶりの現代的意味は、[[#長島2005|長島（2005）]]が参考になる。ちなみに、『{{JIS2004フォント|鷗}}外全集』53巻（岩波書店、1951-1956年）の内訳は、著作編33巻、翻訳編18（戯曲10、小説6、戦論・医事2）巻、別巻2である。</ref>、熱心に評論的啓蒙活動を続けた。当時、情報の乏しい欧州ドイツを舞台にした「舞姫」を蘇峰の依頼により『国民之友』に発表した。続いて「[[うたかたの記]]」「[[文づかひ]]」を相次いで発表したが、とりわけ、日本人と外国人が恋愛関係になる「舞姫」は、読者を驚かせたとされる。そのドイツ三部作をめぐって[[石橋忍月]]と論争を、また『しがらみ草紙』上で[[坪内逍遥]]の記実主義を批判して[[没理想論争]]を繰り広げた。
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| − | [[1889年]]（明治22年）に東京美術学校（現[[東京藝術大学]]）の美術解剖学講師を<ref group="注">[[日清戦争]]後、[[東京美術学校]]に復職した後、[[審美学]]と[[西洋美術史]]を講じた（[[#新関2008|新関（2008）]]、180頁）。</ref>、[[1890年]]9月から約2年間[[東京専門学校]]の科外講師を<ref>『早稲田大学百年史』第3編P1040</ref>、[[1892年]]（明治25年）9月に[[慶應義塾大学]]の審美学（[[美学]]の旧称）<ref group="注">（[[#山崎2007|山{{JIS2004フォント|﨑}}（2007）]]、202頁）は、「遅れた社会に科学を育てるには条件が必要。それは「標準」である。「芸術」の「標準」として{{JIS2004フォント|鷗}}外は乾いた日本の土壌に「審美学」を植え付けようとした」と指摘した。</ref>講師を委嘱された（いずれも日清戦争出征時と小倉転勤時に解嘱）。
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| − | === 日清戦争出征と小倉「左遷」 ===
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| − | [[1894年]]（明治27年）夏、[[日清戦争]]勃発により、[[8月29日]]に東京を離れ、[[9月2日]]に広島の[[宇品港]]を発った。翌年の[[下関条約]]の調印後、5月に[[近衛師団]]つきの従軍記者・[[正岡子規]]が帰国の挨拶のため、[[第2軍 (日本軍)#日清戦争における第2軍|第2軍]]兵站部軍医部長の{{JIS2004フォント|鷗}}外を訪ねた<ref group="注">当時[[遼東半島]]にいた{{JIS2004フォント|鷗}}外などとの交際は、[[遼東半島|遼東]]五友の交わりといわれた。その五友とは、新聞『[[日本 (新聞)|日本]]』の[[正岡子規]]と[[中村不折]]、『[[読売新聞]]』の[[河東銓]]（かわひがし せん。俳人[[河東碧梧桐]]の兄）、[[久松定謨]]、{{JIS2004フォント|鷗}}外の5人である（[[#佐谷2009|佐谷（2009）]]、54頁）。[http://blog.hix05.com/blog/2009/01/post-892.html#more 子規との交際は小倉に転勤するまでつづき]、不折とは生涯続いた。</ref>。
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| − | 清との戦争が終わったものの、{{JIS2004フォント|鷗}}外は日本に割譲された[[台湾]]での勤務を命じられており（朝鮮勤務の[[小池正直]]とのバランスをとった人事とされる）、[[5月22日]]に宇品港に着き（心配する家族を代表して訪れた弟の竹二と面会）、2日後には初代台湾総督の[[樺山資紀]]等とともに台湾に向かった。4か月ほどの台湾勤務を終え、[[10月4日]]に帰京。
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| − | 翌[[1896年]]（明治29年）1月、『しがらみ草紙』の後を受けて[[幸田露伴]]・[[斎藤緑雨]]と共に『[[めさまし草|卍]]』を創刊し、合評「[[三人冗語]]」を載せ、当時の評壇の先頭に立った（[[1902年]]廃刊）<ref group="注">1月に創刊された『[[めさまし草]]』は、3月から「三人冗語」が掲載され、9月以降これに[[依田学海]]・[[饗庭篁村]]（あえば こうそん）・[[森田思軒]]・[[尾崎紅葉]]等が加わり、「雲中語」として評判になった。[[尾崎紅葉|紅葉]]・[[川上眉山]]・[[正岡子規]]・[[高浜虚子]]・[[落合直文]]などが文を寄せた。また「[[於母影]]」の共訳者であった[[井上通泰]]の実弟、[[柳田國男]]も松岡国男名で歌評を書いており、[[夏目漱石]]の俳句も掲載された（3号）。</ref>。
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| − | その頃より、評論的啓蒙活動が戦闘的ないし論争的なものから、穏健的なものに変わっていった<ref>[[#池内2001|池内（2001）]]、67頁</ref>。[[1898年]]（明治31年）7月9日付『[[万朝報]]』の連載「弊風一斑 蓄妾の実例」の中で、[[児玉せき]]との交情をあばかれた<ref group="注">「[[児玉せき]]（32）なる女を十八、九の頃より妾として非常に寵愛し、かつて児まで挙けたる細君を離別してせきを本妻に直さんとせしも母の故障によりて果たす能わず」とある。現代教養文庫、1992年、14頁。児玉に関しては、[[森まゆみ]]が「[[無縁坂]]の女」として章を立て、いきさつ等を記した。[[#森まゆみ2000|森まゆみ（2000）]]、297-343頁。</ref>。
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| − | [[画像:Mori Ogai house Kokura.jpg|thumb|220px|森{{JIS2004フォント|鷗}}外旧居（[[北九州市]][[小倉北区]][[鍛冶町 (北九州市)|鍛冶町]]）]]
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| − | [[1899年]]（明治32年）6月に軍医監（[[少将]]相当）に昇進し、東京（東部）・大阪（中部）とともに[[都督部]]が置かれていた[[小倉市|小倉]]（西部）の[[第12師団 (日本軍)|第12師団]]軍医部長に「左遷」<ref group="注">この人事は、{{JIS2004フォント|鷗}}外本人の受け止め方を別にして当時の状況を踏まえれば、左遷といえるのか疑問視する声もある（[[#松本1997|松本 （1997）]]、108-111頁）。その小倉転勤は、前任者の[[江口襄]]（作家[[江口渙]]の父。渙の『わが文学半生記』青木文庫、1953年には父の友人として{{JIS2004フォント|鷗}}外の名が何度か登場）が着任後わずか8か月で辞職（軍医の開業禁止を受け、病院での診療に専念）したために行われた穴埋め人事である。このため、後任の{{JIS2004フォント|鷗}}外は、ほかの新設5師団の軍医部長5名と同じように[[1902年]]（明治35年）3月まで在任した。</ref>された。19世紀末から新世紀の初頭を過ごした小倉時代には、歴史観と近代観にかかわる一連の随筆などが書かれた<ref>「{{JIS2004フォント|鷗}}外漁史とは誰ぞ」（文壇時評）、「[[原田直次郎]]」（日本の近代西洋絵画）、「[[潦休録]]」（近代芸術）、「[[我をして九州の富人たらしめば]]」（社会問題）、「[[義和団の乱|北清事件]]の一面の観察」（講演録）、「[[新社会合評]]」（[[矢野竜渓]]『新社会』の評論で[[社会主義]]などを記述）（[[#池内2001|池内（2001）]]、73-92頁）。</ref>。
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| − | またドイツ留学中、田村怡与造に講じていた難解なクラウゼヴィッツの『戦争論』について、師団の将校たちに講義をするとともに、師団長・[[井上光]]などの依頼で翻訳を始めた<ref group="注">末弟の[[森潤三郎]]は、『[[戦争論]]』の翻訳について「この事は軍人社会に兄の声望を重からしめ、[[山縣有朋|山県]]元帥に名を知られる因となった。」と書いた（[[#森潤三郎1942|森潤三郎（1942）]]）</ref>。その内部資料は、ほかの部隊も求めたという。
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| − | 小倉時代に「圭角がとれ、胆が練れて来た」と末弟の[[森潤三郎]]が記述したように、その頃{{JIS2004フォント|鷗}}外は、社会の周縁ないし底辺に生きる人々への親和、慈しみの眼差しを獲得していた<ref group="注">後年、小倉時代を素材にした短編小説『鶏』で表れたように、田中美代子は、小倉での生活によって「それまで一途に中央志向に凝り固まっていた{{JIS2004フォント|鷗}}外は、だが次第に、日本の懐深く息づいている土着の魂というべきものに目覚めていったのではなかろうか。」と指摘した（[[#森鴎外1996|森{{JIS2004フォント|鷗}}外（1996）]]、「解説」）。また、「上京して以来、（中略）ドイツでの留学生活を除いて、{{JIS2004フォント|鷗}}外の生活の場であり続けた東京と比べると、人々の生活・行動規範が緩やかで、ある意味で自由奔放な北九州のローカル都市・小倉と、そこで生活する人々の生活風俗は、{{JIS2004フォント|鷗}}外にとって異質で、新鮮な世界を意味していた」（[[#末延2008|末延（2008）]]、112、114頁）。</ref>。
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| − | 私生活でも、[[徴兵検査]]の視察時などで各地の歴史的な文物、文化、事蹟との出会いを通し、特に後年の史伝につながる掃苔（探墓）の趣味を得た<ref group="注">[[貝原益軒]]（博多）の墓を皮切りに、[[加藤清正]]（熊本）、[[高山彦九郎]]（久留米）、[[広瀬淡窓]]（大分県[[日田]]）など、文人と武人の墓を探して参り、墓碑を筆記した。また東京に出張する途中、客死した祖父、森白仙（1861年、東海道の[[土山宿]]で没）の墓も参った。[[#末延2008|末延（2008）]]、117頁。</ref>。
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| − | 新たな趣味を得ただけではなく、[[1900年]]（明治33年）1月に先妻・[[赤松登志子]]が[[結核]]で死亡したのち<ref group="注">[[西周 (啓蒙家)|西周]]等とともに幕府派遣留学生であった[[赤松則良]]海軍中将の長女、登志子との結婚生活は、1年半ほどで破綻した。
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| − | [[1888年]]（明治21年）[[9月8日]]に{{JIS2004フォント|鷗}}外が帰国した直後、[[9月12日]]にドイツ人女性が来日して[[10月17日]]に離日した出来事をきっかけに、留学中より西周から話のあった縁談が急に進み（[[9月18日]]に祖母が、[[10月17日]]に母と弟の竹二が西邸を訪問）、翌年2月24日に{{JIS2004フォント|鷗}}外と登志子は結婚した（[[#森まゆみ2000|森まゆみ（2000）]]、148頁）。{{JIS2004フォント|鷗}}外の弟2人、登志子の妹2人、女中が同居し、また新居には同人などが数多く出入りした。後年、[[幸田露伴]]は、{{JIS2004フォント|鷗}}外宅に行くと夜12時になっても1時になっても引き留められたと回想し、[[内田魯庵]]も、夜が更けたので帰ろうとすると「マダ早いよ、僕の処は夜が昼だからね。眠くなったらソコの押入から夜具を引きずり出してゴロ寝をするさ。賀古なぞは12時が打たんけりや来ないよ」といわれ、実際に[[賀古鶴所]]が12時すぎに来たのに数回出会ったと回想した。[[1890年]]（明治23年）[[1月]]に小説「舞姫」が発表されると、[[9月13日]]に長男[[森於菟|於菟]]が生まれたものの、[[10月4日]]に{{JIS2004フォント|鷗}}外は同居する弟2人を連れて[[赤松家]]所有の家を出て行った（仲人の西周が激怒し、{{JIS2004フォント|鷗}}外は西邸の出入りを禁じられた）。
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| − | 離婚の理由は、登志子の容姿や嫁姑問題（[[#平川ら1997a|平川ら 1997a]]、177–178頁）など、いくつか推測されてきたものの、わかっていない。[[森於菟|於菟]]によれば、父{{JIS2004フォント|鷗}}外は母に[[結核]]をうつされたと祖母が語ったという。その真相は不明であるが、少なくとも{{JIS2004フォント|鷗}}外は、1909年に戯曲「仮面」（離婚して2年後に結核が発症したことを示唆）を作り、また没する10年ほど前から結核が発症していた。[[#森まゆみ2000|森まゆみ（2000）]]、137-183頁。[[#山崎2007|山{{JIS2004フォント|﨑}}（2007）]]、98-99頁。</ref>、母の勧めるまま[[1902年]]（明治35年）1月、18歳年下の[[森志げ|荒木志げ]]と見合い結婚をした（41歳と23歳の再婚同士）。さらに、随筆『二人の友』に登場する友人も得た。1人は[[曹洞宗]]の僧侶、[[玉水俊虠]]（通称、安国寺）で、もう1人は同郷の俊才[[福間博]]<ref group="注">[[1875年]]（明治8年）5月に[[島根県]][[安濃郡 (島根県)|安濃郡]]で生まれ、37歳で没。{{JIS2004フォント|鷗}}外は随筆「二人の友」を発表しており、のちに[[芥川龍之介]]も[[第一高等学校 (旧制)|第一高等学校]]でドイツ語を習った[[福間博|福間]]を回想して随筆「二人の友」を発表した。</ref>である。2人は、{{JIS2004フォント|鷗}}外の東京転勤とともに上京し、{{JIS2004フォント|鷗}}外の自宅近くに住み、交際をつづけた<ref group="注">ただし僧侶の[[玉水俊虠|玉水]]は、敬愛する{{JIS2004フォント|鷗}}外の後を追うように上京したものの、嫁姑問題にかかわったため、森家に出入りできなくなり、失意のうちに東京を離れた。小倉の新婚時代には、家主の10歳くらいの娘で、{{JIS2004フォント|鷗}}外にかわいがられた盲目の八重も、「お祖母さんがそんなに毎日伺ってはお邪魔じゃろうと申しますが、また伺いました」といって{{JIS2004フォント|鷗}}外宅によく来ていた。ときには、「お祖母さんが怒ると私の事を穀盗人と申します。そう言う時は森さんがそれはそれは御親切に慰めて下さいます」と、目に涙をたたえて{{JIS2004フォント|鷗}}外の新妻に訴えることもあった。[[#小堀1981|小堀（1981）]]、150頁。</ref>。
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| − | === 軍医トップへの就任と旺盛な文筆活動 ===
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| − | [[1902年]]（明治35年）3月、[[第1師団 (日本軍)|第1師団]]軍医部長の辞令を受け、新妻とともに東京に赴任した。6月、廃刊になっていた『めざまし草』と[[上田敏]]の主宰する『芸苑』とを合併し、『芸文』を創刊（その後、出版社とのトラブルで廃刊したものの、10月に後身の『万年艸』を創刊）。当時は、12月に初めて戯曲を執筆するなど、戯曲にかかわる活動が目立っていた。
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| − | [[1904年]]（明治37年）2月から[[1906年]]（明治39年）1月まで[[日露戦争]]に[[第2軍 (日本軍)#日露戦争における第2軍|第2軍]]軍医部長として出征<ref group="注">凱旋した[[1906年]]（明治39年）[[1月12日]]には、親族のほか、[[佐佐木信綱]]や[[上田敏]]、[[小山内薫]]など一同で祝宴が催された。</ref>。
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| − | [[1907年]]（明治40年）10月、[[軍医総監|陸軍軍医総監]]（[[中将]]相当）に昇進し、陸軍省医務局長（人事権をもつ軍医のトップ）に就任した<ref group="注">慣例として前任者（小倉「[[左遷]]」人事をした[[小池正直]]）の推薦が必要であった。その小池は、7歳年上であったが、{{JIS2004フォント|鷗}}外とは同窓生であり、かつて{{JIS2004フォント|鷗}}外を採用してもらえるように[[陸軍軍医監]]の[[石黒忠悳]]に熱い推薦状を提出した。学生時代の2人を知る[[緒方収二郎]]は、{{JIS2004フォント|鷗}}外を「強記は実に天才」、小池を「沈黙謹厳」と評した（[[#山崎2007|山{{JIS2004フォント|﨑}}（2007）]]、41、310–311頁）。また小池は、7か月間の外遊から帰国後、トップの[[医務局長]]に就任するまでの半年間、{{JIS2004フォント|鷗}}外と毎月1–2度会っていた。老朽軍医の淘汰を断行した小池の初回人事では、その淘汰で空いたポスト二つのうち[[第2師団 (日本軍)|第二師団]]（仙台）ではなく、[[近衛師団]]（東京）の軍医部長に{{JIS2004フォント|鷗}}外をつけた。{{JIS2004フォント|鷗}}外が小倉にいた[[1900年]]（明治33年）[[5月]]末、小池医務局長の推薦にもとづく軍医の叙勲が行われ、{{JIS2004フォント|鷗}}外は小池と同等に[[勲四等]]に叙せられた。
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| − | 日露戦争後、第一軍–第四軍の軍医部長経験者5名のうち中央に残されたのは{{JIS2004フォント|鷗}}外だけであり、会議などでも{{JIS2004フォント|鷗}}外がナンバー2の地位にあることが明確にされた。以上のように、{{JIS2004フォント|鷗}}外に関する小池の人事では、小倉「左遷」だけが特異であった。その理由として[[#山下2008|山下（2008）]]は、「左遷」人事をした小池には{{JIS2004フォント|鷗}}外への悪意がなく、「左遷」には別の理由があったとした。また「左遷」人事の背景として、[[日清戦争]]後の台湾平定での[[日本の脚気史|脚気]]大流行とその隠蔽、[[陸軍大臣#歴代の陸軍大臣|陸軍大臣]]の[[高島鞆之助]]とその後任[[桂太郎]]など台湾での出来事を知る[[将官]]による責任追及とその反動（[[山県有朋]]元帥や[[大山巌]]元帥や[[児玉源太郎]]などと懇意である[[石黒忠悳]]（衛生の総責任者）の保身運動）という複雑なものを挙げた。</ref>。
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| − | 同年9月、美術審査員に任じられ、第1回[[日展|文部省美術展覧会]]（初期文展）西洋画部門審査の主任を務めた<ref>[[#山崎2007|山{{JIS2004フォント|﨑}}（2007）]]、837頁。[[#新関2008|新関（2008）]]、180頁。</ref>。
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| − | [[1909年]]（明治42年）に『[[スバル (文芸雑誌)|スバル]]』が創刊されると、同誌に毎号寄稿して創作活動を再開した（[[木下杢太郎]]のいう「豊熟の時代」）。「半日」「[[ヰタ・セクスアリス]]」「鶏」「[[青年 (小説)|青年]]」などを同誌に載せ、「仮面」「静」などの戯曲を発表。『スバル』創刊年の7月、{{JIS2004フォント|鷗}}外は、東京帝国大学から文学博士の[[学位]]を授与された。しかし、直後に「ヰタ・セクスアリス」（同誌7月号）が発売禁止処分を受けた。しかも、[[内務省 (日本)|内務省]]の[[警保局|警保局長]]が陸軍省を訪れた8月、{{JIS2004フォント|鷗}}外は陸軍次官・[[石本新六]]から戒飭{{small|（かいちょく）}}された。同年12月、「予が立場」でレジグナチオン（諦念）をキーワードに自らの立場を明らかにした。
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| − | [[1910年]]（明治43年）、[[慶應義塾大学]]の文学科顧問に就任（教授職に[[永井荷風]]を推薦）し、慶應義塾大学幹事の[[石田新太郎]]の主導により、上田敏を顧問に、永井荷風を主幹にして、「'''[[三田文學]]'''」を創刊した。また、その年には、5月に[[大逆事件]]の検挙が始まり<ref group="注">{{JIS2004フォント|鷗}}外は、[[1910年]]（明治43年）[[12月10日]]、被告26人が出廷した[[大審院]]特別法廷（非公開）の[[高等官]]傍聴席にいたとの説がある。なお同年[[12月14日]]、[[与謝野鉄幹]]と大逆事件弁護人の[[平出修]]とを供応した。その平出は、{{JIS2004フォント|鷗}}外から一週間にわたって[[無政府主義]]・[[社会主義]]に関する講義を受けたと伝えられている。[[#平川ら1997b|平川ら（1997b）]]、303–306頁。</ref>、9月に[[朝日新聞|東京朝日新聞]]が連載「危険なる洋書」を開始して6回目に{{JIS2004フォント|鷗}}外と妻の名が掲載され、また国内では[[南北朝正閏論#南北朝正閏問題|南北朝教科書問題]]が大きくなりつつあった。そうした閉塞感がただよう年に「ファスチェス」で発禁問題、「沈黙の塔」「食堂」では社会主義や無政府主義に触れるなど政治色のある作品を発表。
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| − | [[1911年]]（明治44年）にも「カズイスチカ」「妄想」を発表し、「青年」の完結後、「雁」と「灰燼」の2長編の同時連載を開始。同年4月の「文芸の主義」（原題：文芸断片）では、冒頭「[[芸術#ジャンル|芸術]]に主義というものは本来ないと思う。」とした上で、
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| − | {{Quotation|無政府主義と、それと一しょに芽ざした社会主義との排斥をする為に、[[個人主義]]という漠然たる名を附けて、芸術に迫害を加えるのは、国家のために惜むべき事である。学問の自由研究と芸術の自由発展とを妨げる国は栄えるはずがない。|<ref>[[#森鴎外2000|森{{JIS2004フォント|鷗}}外（2000）]]、「文芸の主義」138–140頁。初出1911年4月。</ref>}}
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| − | と結んだ。
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| − | また陸軍軍医として、懸案とされてきた軍医の人事権をめぐり、陸軍次官の石本新六と激しく対立した。ついに医務局長の{{JIS2004フォント|鷗}}外が石本に辞意を告げる事態になった。結局のところ陸軍では、医学優先の人事が継続された。階級社会の軍隊で、それも一段低い扱いを受ける衛生部の{{JIS2004フォント|鷗}}外の主張が通った背景の一つに、[[山縣有朋]]の存在があったと考えられている<ref group="注">陸軍に絶大な影響力をもつ山縣有朋とは、親友の[[賀古鶴所]]を通して関係があった。[[1906年]]（明治39年）[[6月10日]]、{{JIS2004フォント|鷗}}外と賀古が[[佐佐木信綱]]と[[井上通泰]]ら4名を酒楼「常盤」に招いて歌会を起こすことを勧め、その後、賀古が山縣に話のついでに告げたところ、山縣も力をそえることになった（[[#山崎2007|山{{JIS2004フォント|﨑}}（2007）]]、285頁）。その歌会常盤会は、山縣が他界するまで15年間続いた。もっとも5か月後、前年から体調を崩していた{{JIS2004フォント|鷗}}外も他界した。{{JIS2004フォント|鷗}}外が山縣の誕生祝の宴に初めて招かれたのは、陸軍省医務局長を退く前年の1915年である。</ref>。
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| − | [[1912年]]（明治45年）から翌年にかけて、五条秀麿を主人公にした「かのやうに」「吃逆」「藤棚」「鎚一下」の連作を、また司令官を揶揄するなど戦場体験も描かれた「鼠坂」<ref group="注">末延は、小説「鼠坂」についての見出しに「「剣」に屈服した新聞記者」と副題をつけた（[[#末延2008|末延（2008）]]、246–281頁）。</ref>などを発表した。当時は、身辺に題材をとった作品や思想色の濃い作品や教養小説や戯曲などを執筆した。もっとも公務の傍ら、『[[ファウスト]]』などゲーテの3作品をはじめ、外国文学の翻訳・紹介・解説もつづけていた。
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| − | [[1912年]]（[[大正]]元年）8月、「実在の人間を資料に拠って事実のまま叙述する、{{JIS2004フォント|鷗}}外独自の小説作品の最初のもの」<ref>[[#池内2001|池内（2001）]]、137頁。</ref>である「羽鳥千尋」を発表。翌[[9月13日]]、[[乃木希典]]の殉死に影響を受けて5日後に「[[興津弥五右衛門の遺書]]」（初稿）を書き終えた<ref group="注">乃木希典の殉死と「興津弥五右衛門の遺書」に関する通説・定説には、批判もある（[[#池内2001|池内（2001）]]、147–157頁）。</ref>。
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| − | これを機に歴史小説<ref group="注">{{JIS2004フォント|鷗}}外の歴史小説は、「[[阿部一族]]」「大塩平八郎」「堺事件」戯曲「曾我兄弟」（[[1914年]]3月）まで「権力と民衆」への視点を基本構図としながらも、殺伐とした物語が多かった。
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| − | 「安井夫人」（[[1914年]]4月）以来、「山椒大夫」、「じいさんばあさん」、「最後の一句」、「高瀬舟」など家族の情を主体としたものが多くなっていく。[[#山崎2007|山{{JIS2004フォント|﨑}}（2007）]]、655頁</ref>に進み、歴史其儘の「[[阿部一族]]」、歴史離れの「[[山椒大夫]]」「[[高瀬舟 (小説)|高瀬舟]]」などののち、史伝「渋江抽斎」に結実した。ただし、[[1915年]]（大正4年）頃まで、現代小説も並行して執筆していた。[[1916年]]（大正5年）には、後世の{{JIS2004フォント|鷗}}外研究家や評論家から重要視される随筆「空車」{{small|（むなぐるま）}}を<ref group="注">「空車」に対し、これまで様々な解釈がなされている。近年も注目すべき解釈が提示された。[[#池内2001|池内（2001）]]、198–207頁。</ref>、[[1918年]]（大正7年）1月には随筆「礼儀小言」を著した<ref group="注">[[唐木順三]]に従えば、「礼儀小言」は大正期の日本人の暮らしと思想のあまりの大変動に恐怖を感じた明治人、{{JIS2004フォント|鷗}}外の大正的なるものに対する深刻な憂いの表明である（[[#片山2007|片山（2007）]]、106頁）。</ref>。
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| − | === 晩年 ===
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| − | [[File:Mori Ogai Tomb.jpg|thumb|180px|永明寺の墓]]
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| − | [[1916年]]（大正5年）4月、任官時の年齢が低いこともあり、トップの陸軍省医務局長を8年半勤めて退き、予備役に編入された。その後、[[1918年]]（大正7年）[[12月]]、帝室博物館（現[[東京国立博物館]]）総長兼[[図書寮#宮内省図書寮|図書頭]]に<ref group="注">[[東京国立博物館#沿革|帝室博物館]]では月・水・金曜日（8時から16時まで）に、図書寮では火・木・土曜日（8時から13時まで）に勤務した。
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| − | 博物館総長として毎秋、{{JIS2004フォント|鷗}}外は正倉院の虫干しに立ち会わなければならず、奈良や京都に1か月ほど滞在していた。また、総長就任の4年間で博物館の歳出が大幅に増え、就任4年目で就任直前の2倍強になった。館内の構造物について「分類陳列」方法が改まり、「時代別陳列」に変更された。また、[[正倉院]]の参観資格が緩和され、[[帝室技芸員]]や[[古社寺保存会]]委員や美術審査員などのほか、「学術技芸ニ関シ相当ノ経験アリト認メタル者」にも参観の道が開かれた。[[#山崎2007|山{{JIS2004フォント|﨑}}（2007）]]、705-707、785頁。</ref>、翌年1月に帝室制度審議会御用掛に就任した<ref group="注">すでに臨時宮内省御用係として1913年（大正2年）2月から、[[勅語]]や[[令旨]]など、特別な文章の起草、執筆にかかわっていた。
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| − | [[1915年]]（大正4年）5月には、即位式前の[[大正天皇]]から[[漢詩#日本の漢詩|漢詩]]を所望され、「応制の詩」をつくった。御用係は総長・図書頭就任時に免じられたものの、特別な文章へのかかわりは[[1921年]]（大正10年）頃まで続いた。[[#山崎2007|山{{JIS2004フォント|﨑}}（2007）]]、625、702–703頁。</ref>。
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| − | さらに[[1918年]]（大正7年）9月、[[帝国美術院]]（現[[日本芸術院]]）初代院長に就任した。元号の「明治」と「大正」に否定的であったため、宮内省図書頭として天皇の[[諡]]と元号の考証・編纂に着手した。しかし『帝諡考』は刊行したものの、病状の悪化により、自ら見い出した[[吉田増蔵]]に後を託しており、後年この吉田が未完の『元号考』の刊行に尽力し、元号案「昭和」を提出した<ref group="注">一連の経緯は、[[#猪瀬2002|猪瀬（2002）]]が詳しい。</ref>。
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| − | [[1922年]]（大正11年）[[7月9日]]午前7時過ぎ、親族と親友の賀古鶴所らが付きそう中、[[腎萎縮]]、[[肺結核]]のために死去。{{没年齢2|1862|2|17|1922|7|9}}。
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| − | {{Quotation|余ハ石見人森林太郎トシテ死セント欲ス}}
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| − | で始まる最後の[[遺言]]（[[7月6日]]付け）が有名であり<ref group="注">ただし、遺言を残した翌7月7日に天皇と皇后から[[葡萄酒]]が下賜され、8日に[[摂政]]宮（のちの[[昭和天皇]]）から御見舞品が下賜され、[[従二位]]に叙せられた。{{JIS2004フォント|鷗}}外本人は、遺言を残した6日夜半から容体が悪化し、7日夕刻から昏睡状態に入っており、没した翌10日の東京朝日新聞が最期の様子を次のように報じた。
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| − | {{Quotation|8日午後の注射以来少しく容体を持直し、午後10時頃には何事か看護の人に言はうと試みていたが聞きとれなかった。それから不安のうちに夜が明けて9日午前4時にわかに容体が変わったので……|[[#山崎2007|山{{JIS2004フォント|﨑}}（2007）]]、811-813、843頁［一部を平仮名にし、句読点を入れた］}}
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| − | もっとも、死去する前日の8日に従二位に叙せられたことで、[[#大谷2000|大谷（1983）（2000）]]は{{JIS2004フォント|鷗}}外最後の遺言を疑問視し、{{JIS2004フォント|鷗}}外の[[叙爵]]への執着を指摘した。[[#志田2009|志田（2009）]]は{{JIS2004フォント|鷗}}外が石黒忠悳によって[[貴族院 (日本)|貴族院]]議員に推挙された際に喜んでお受けしたい旨の返書を送ったという日記(大正5年1月6日)の記述を挙げ、{{JIS2004フォント|鷗}}外が臨終の際に袴を履いていたのは[[叙爵]]の使者を迎えるためだったと指摘した。</ref>、その遺言により墓には一切の栄誉と称号を排して「''森林太郎ノ墓''」とのみ刻された。上京した際に住んだ鷗外ゆかりの地である向島の[[弘福寺]]に埋葬され、遺言により[[中村不折]]が[[墓碑銘]]を筆した。[[戒名]]は貞献院殿文穆思斎大居士。なお、[[関東大震災]]後、[[東京都]][[三鷹市]]の[[禅林寺 (三鷹市)|禅林寺]]<ref group="注">「立ち依（よ）らば、大樹の陰、その名は{{JIS2004フォント|鷗}}外、[[森林太郎]]」と書いた[[太宰治]]は、希望した通り、{{JIS2004フォント|鷗}}外の墓の前（はす向かい）に埋葬された（[[#猪瀬2002|猪瀬（2002）]]、9頁）。</ref>と出生地の津和野町の[[永明寺]]に改葬された。
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| − | == 人物評 ==
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| − | === 評論的啓蒙活動 ===
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| − | {{JIS2004フォント|鷗}}外は自らが専門とした文学・医学、両分野において論争が絶えない人物であった。文学においては理想や理念など主観的なものを描くべきだとする[[理想主義]]を掲げ、事物や現象を客観的に描くべきだとする[[写実主義]]的な没理想を掲げる[[坪内逍遥]]と衝突する。また医学においては近代の西洋医学を旨とし、和漢方医と激烈な論争を繰り広げたこともある。和漢方医が7割以上を占めていた当時の医学界は、ドイツ医学界のような学問において業績を上げた学者に不遇であり、日本の医学の進歩を妨げている、大卒の医者を増やすべきだ、などと批判する。[[松本良順]]など近代医学の始祖と呼ばれている長老などと6年ほど論争を続けた。
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| − | {{JIS2004フォント|鷗}}外の論争癖を発端として論争が起きたこともある。逍遥が『[[早稲田文学]]』に[[ウィリアム・シェイクスピア|シェークスピア]]の評釈に関して加えた短い説明に対し、批判的な評を『しがらみ草紙』に載せたことから論争が始まった。このような形で{{JIS2004フォント|鷗}}外が関わってきた論争は「戦闘的評論」や「論争的啓蒙」などと評される。もっとも、30歳代になると、[[日清戦争]]後に『めさまし草』を創刊して「合評」をするなど、評論的[[啓蒙]]活動は、戦闘的ないし論争的なものから、穏健なものに変わっていった。さらに、小倉時代に「圭角が取れた」という家族の指摘もある。
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| − | === 幅の広い文芸活動と交際 ===
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| − | 肩書きの多いことに現れているように、{{JIS2004フォント|鷗}}外は文芸活動の幅も広かった。たとえば、訳者としては、上記の訳詩集「於母影」（共訳）と、[[1892年]]（[[明治]]25年）–[[1901年]]（明治34年）に断続的に発表された「即興詩人」とが初期の代表的な仕事である。「於母影」は明治詩壇に多大な影響を与えており、「即興詩人」は、流麗な雅文で明治期の文人を魅了し、その本を片手にイタリア各地を周る文学青年（[[正宗白鳥]]など）が続出した。
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| − | 戯曲の翻訳も多く（弟の[[三木竹二|竹二]]が責任編集を務める雑誌『歌舞伎』に掲載されたものは少なくない）<ref group="注">たとえば、日本初の西洋風演出による新劇運動として、その後の演劇界に多大な影響を与えた[[自由劇場]]の第一回旗揚げで上演されたのは、[[ヘンリック・イプセン|イプセン]]作・{{JIS2004フォント|鷗}}外訳「ジョン・ガブリエル・ボルクマン」（[[小山内薫]]の演出）であった（[[1909年]]11月）。
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| − | 当時の{{JIS2004フォント|鷗}}外は、「草創期の新劇にとって非常に大きな力」となり、「ある時期、{{JIS2004フォント|鷗}}外が西洋の近代戯曲への窓口だったといっていい」とまで評価されている。（[[#平川ら1997c|平川ら（1997c）]]、176–177頁）。</ref>、歌劇（オペラ）の翻訳まで手がけていた<ref group="注">[[国民歌劇協会]]が作曲家[[クリストフ・ヴィリバルト・グルック|グルック]]生誕200年を祝って[[1914年]]（[[大正]]3年）[[7月2日]]に上演を予定し、{{JIS2004フォント|鷗}}外に訳を委嘱した。ただし、第1稿は留学先のドイツから持ち帰った台本を底本としたため、協会の楽譜に合わず、その後、第2稿は完成したものの、[[第一次世界大戦]]の勃発など諸般の事情によって上演されなかった。
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| − | しかし、91年後の[[2005年]]（[[平成]]17年）9月18・19日、その幻のオペラは、関係者の尽力により、{{JIS2004フォント|鷗}}外が希望したフル[[オーケストラ]]で初演された（上野・[[旧東京音楽学校奏楽堂|東京藝術大学奏楽堂]]）。DVD：森{{JIS2004フォント|鷗}}外訳オペラ『オルフエウス』紀伊国屋書店、KKCS-65。</ref>。
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| − | ちなみに、訳語（和製漢語）の「交響楽、交響曲」を作っており、6年間の欧米留学を終えた演奏家、[[幸田延]]（露伴の妹）と洋楽談義をした（「西楽と幸田氏と」）。そうした外国作品の翻訳だけでなく、帰国後から演劇への啓蒙的な評論も少なくない<ref group="注">たとえば、[[1889年]]（明治22年）8月、発足したばかりの[[日本演芸協会]]の文芸委員になっており、同年10月刊行の『しがらみ草紙』創刊号で「演劇改良論者の偏見に驚く」を発表。</ref>。
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| − | 翻訳は、文学作品を超え、ハルトマン『審美学綱領』のような審美学（[[美学]]の旧称）も対象になった。単なる訳者にとどまらない{{JIS2004フォント|鷗}}外の審美学は、坪内逍遥との没理想論争にも現れており、[[田山花袋]]にも影響を与えた<ref group="注">[[田山花袋]]は、
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| − | {{Quotation|私は殊に{{JIS2004フォント|鷗}}外さんが好きで、『柵草紙』などに出る同氏の審美学上の議論などは非常に愛読した。{{JIS2004フォント|鷗}}外さんを愛読した結果は私もその影響を受けた。|「私の偽らざる告白」『文章世界』1908年9月}}
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| − | と書いた。
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| − | 日露戦争中、第二軍写真班の取材記者として5か月ほど従軍した花袋は、宇品港のある[[広島市]]本町の宿に同軍軍医部長の{{JIS2004フォント|鷗}}外を訪ねており（初対面）、2人は文学談義を交わすなど頻繁に会っていた（[[#平川ら1997a|平川ら（1997a）]]、388、403–405頁）。</ref>。その{{JIS2004フォント|鷗}}外は、上記の通り東京美術学校（現[[東京芸術大学]]）の嘱託教員（美術解剖学・審美学・西洋美術史）をはじめ、慶應義塾大学の審美学講師、「初期文展」西洋画部門などの審査員、[[帝室博物館]]総長や[[日本芸術院|帝国美術院]]初代院長などを務めた<ref group="注">{{JIS2004フォント|鷗}}外が日本の近代美術史に残した足跡の一つに、実質的編集者として展覧会カタログ『原田先生記念帖』を発行したことが挙げられる。その展覧会とは、[[1909年]]（明治42年）[[11月28日]]（日曜日）、[[東京藝術大学|東京美術学校]]校庭の校友会倶楽部で開催された「[[原田直次郎]]没後十周年記念遺作展」である。
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| − | 故人は、[[東京美術学校]]と関係がなかったものの、かつて同校で教鞭を執っていた{{JIS2004フォント|鷗}}外が発起人に[[黒田清輝]]を巻き込み、校友会倶楽部での展覧会開催が実現した。その展覧会カタログは、全出品作23点の写真と、[[黒田清輝]]や[[松岡寿]]、[[長沼守敬]]など同時代人による回想とが掲載されており、明治美術史の貴重な資料となっている。また、日本にまだ美術館[[学芸員]]が存在しなかった当時、公務（[[陸軍省#医務局|医務局長]]等）と執筆活動で多忙を極めていた{{JIS2004フォント|鷗}}外がやり遂げたことは、今日の美術館学芸員の先駆的仕事でもあった。[[#新関2008|新関（2008）]]、138–140頁。</ref>。
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| − | 交際も広く、その顔ぶれが多彩であった。しかし、教師でもあった[[夏目漱石]]のように弟子を取ったり<ref group="注">弟子の有無に限らず、[[松本清張]]による{{JIS2004フォント|鷗}}外と漱石の比較が興味深い（[[#松本1997|松本（1997）]]、93–97頁）。{{JIS2004フォント|鷗}}外と漱石の対比は、生前の{{JIS2004フォント|鷗}}外を知る[[平塚らいてう]]もしており、（[[#金子1992|金子（1992）]]、314-315頁）で読むことができる。</ref>、文壇で党派を作ったりはしなかった。ドイツに4年留学した{{JIS2004フォント|鷗}}外は、閉鎖的で縛られたような人間関係を好まず、西洋風の社交的なサロンの雰囲気を好んでいたとされる。[[高等官|官吏]]生活の合間も、書斎にこもらず、同人誌を主宰したり、自宅で歌会を開いたりして色々な人々と交際した。
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| − | 文学者・文人に限っても、訳詩集「於母影」は5人による共訳であり、同人誌の『しがらみ草紙』と『めさまし草』にも多くの人が参加した。とりわけ、自宅（観潮楼）で定期的に開催された歌会が有名である。その観潮楼歌会は、[[1907年]]（明治40年）3月、{{JIS2004フォント|鷗}}外が[[与謝野鉄幹]]の「新詩社」系と[[正岡子規]]の系譜「根岸」派との歌壇内対立を見かね、両派の代表歌人を招いて開かれた。以後、毎月第一土曜日に集まり、[[1910年]]（明治43年）4月まで続いた。[[伊藤左千夫]]・[[平野万里]]・[[上田敏]]・[[佐佐木信綱]]等が参加し、「新詩社」系の[[北原白秋]]・[[吉井勇]]・[[石川啄木]]・[[木下杢太郎]]、「根岸」派の[[斎藤茂吉]]・[[古泉千樫]]等の新進歌人も参加した（[[与謝野晶子]]を含めて延べ22名）<ref>[[#山崎2007|山{{JIS2004フォント|﨑}}（2007）]]、299頁。</ref>。
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| − | また、当時としては[[女性差別|女性蔑視]]が少なく、[[樋口一葉]]をいち早く激賞しただけでなく、与謝野晶子と[[平塚らいてう]]も早くから高く評価した。晶子（出産した双子の名付け親が{{JIS2004フォント|鷗}}外）やらいてうや純芸術雑誌『番紅花』（さふらん）を主宰した[[尾竹一枝]]など、個性的で批判されがちな新しい女性達とも広く交際した<ref group="注">そうした{{JIS2004フォント|鷗}}外の女性観については、[[#森鴎外2006|森{{JIS2004フォント|鷗}}外（2006）]]が参考になる。同書には、[[樋口一葉|一葉]]や晶子やらいてうの評なども集められている。
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| − | また、[[#金子1992|金子（1992）]]には、{{JIS2004フォント|鷗}}外と[[女性解放運動]]に関する記述があり、らいてうの回想文を引用（322頁）し、{{JIS2004フォント|鷗}}外が日本初の女性団体[[新婦人協会]]の設立にどう関わったのか等を紹介している。ちなみに、若き日の{{JIS2004フォント|鷗}}外は、[[1885年]]（明治18年）9月28・29日に[[ライプツィヒ]]でドイツ初の女性団体「独逸婦人会」（[[1865年]]設立）の第13回総集会を傍聴していた。</ref>。その{{JIS2004フォント|鷗}}外の作品には、女性を主人公にしたものが少なくなく、ヒロインの名を題名にしたものも複数ある（「安井夫人」、戯曲「静」、「花子」、翻訳戯曲「ノラ」（イプセン作「[[人形の家]]」））。
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| − | 晩年は[[東京日日新聞]]に連載していた『北条霞亭』が連載を打ち切られるなどその評価は必ずしも芳しいものではなく、没後、[[新潮社]]と他二社とが全集18巻の刊行を引き受けたので、かろうじて面目が立った。[[1936年]]（昭和11年）、[[木下杢太郎]]ら鷗外を敬愛する文学者らの尽力によって[[岩波書店]]から鷗外全集が漱石全集と並んで刊行され、権威があると思われるようになった<ref>[[#谷沢2012|谷沢（2012）]]343頁</ref>。
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| − | === 軍医として ===
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| − | {{JIS2004フォント|鷗}}外は[[東京大学|東京帝國大学]]で近代西洋医学を学んだ陸軍軍医（第一期生）であった。医学先進国のドイツに4年間留学し、帰国した[[1889年]]（明治22年）8月–12月には陸軍兵食試験の主任を務めた。その試験は、当時の[[栄養学]]の最先端に位置していた。[[日清戦争]]と[[日露戦争]]に出征した{{JIS2004フォント|鷗}}外は、[[小倉市|小倉]]時代を除くと、常に東京で勤務、それも重要なポジションに就いており、最終的に[[軍医総監]]（[[中将]]相当）に昇進するとともに陸軍軍医の人事権をにぎるトップの[[陸軍省#医務局|陸軍省医務局長]]にまで上りつめた。
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| − | [[ビタミン]]の存在が知られていなかった当時、軍事[[衛生]]上の大きな問題であった[[脚気]]の原因について、[[日本の脚気史#明治期の主な脚気原因説|医学界の主流を占めた伝染病説]]に同調した。また、経験的に脚気に効果があるとされた[[麦飯]]について、海軍の多くと陸軍の一部で効果が実証されていたものの、麦飯と脚気改善の相関関係は（ドイツ医学的に）証明されていなかったため、科学的根拠がないとして否定的な態度をとり、麦飯を禁止する通達を出したこともあった。{{JIS2004フォント|鷗}}外が麦飯支給に否定的だった一因として、日本国内の麦の生産量が少なく自給できていないということが挙げられる。{{独自研究範囲|date=2015年1月|数十万人単位で存在する陸軍の兵食は、国内で自給できる食物で賄うべきだという考えは一概に否定されるものではない。}}そもそも、{{JIS2004フォント|鷗}}外は「日本兵食論大意」において「米食と脚気の関係有無は余敢て説かず」としている。{{JIS2004フォント|鷗}}外自身はあくまで陸軍軍医として兵食の栄養学的研究を行っていただけで、脚気の研究をしていたわけではない。{{JIS2004フォント|鷗}}{{要出典範囲|date=2015年1月|鷗外は脚気の原因についての確たる理論や信念を持っておらず、門外漢であるがゆえに、当時の学術的権威の説（これが間違っていたのだが）を採用したのではないかと思われる。}}
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| − | 日露戦争では、[[1904年]]（明治37年）[[4月8日]]、[[第2軍 (日本軍)|第2軍]]の戦闘序列（指揮系統下）にあった[[鶴田禎次郎|鶴田]][[第1師団 (日本軍)|第1師団]]軍医部長、横井[[第3師団 (日本軍)|第3師団]]軍医部長が「麦飯給与の件を森（第2軍）軍医部長に勧めたるも返事なし」（[[鶴田禎次郎]]「[[日露戦役従軍日誌]]」）との記録が残されている（ちなみに第2軍で脚気発生が最初に報告されたのは[[6月18日]]）。その「返事なし」はいろいろな解釈が可能であるが、少なくとも[[大本営]]陸軍部が決め、[[勅令]]（天皇名）によって指示された戦時兵食「白米6合」を遵守した。結果的に、陸軍で約25万人の脚気患者が発生し、[[日本の脚気史#日露戦争での陸軍脚気惨害|約2万7千人が死亡する事態]]となった。
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| − | 脚気問題について{{JIS2004フォント|鷗}}外は、陸軍省医務局長に就任した直後から、[[日本の脚気史#原因解明と治療薬開発|臨時脚気病調査会]]の創設（[[1908年]]・明治41年）に動いた<ref group="注">その創設の半年前、[[1908年]]（明治41年）[[1月18日]]に[[海軍軍医]]の[[本多忠夫]]（[[1913年]]に[[軍医総監]]、[[1915年]]に[[海軍省]]医務局長）は、医学雑誌『[[医海時報]]』の掲載文に「脚気調査会の設置は、早くからわれわれの切望してきたところである」と記述し、その掲載誌も脚気調査会の設置を強く求めていた（[[#山下2008|山下（2008）]]、344頁）。</ref>。
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| − | 脚気の原因解明を目的としたその調査会は、[[陸軍大臣]]の監督する国家機関として、多くの研究者が招聘され、多額の予算（陸軍費）がつぎ込まれた。予算に制約がある中、「脚気ビタミン欠乏説」がほぼ確定して廃止（1924年・大正13年）されたものの、その後の脚気病研究会の母体となった。{{JIS2004フォント|鷗}}外が創設に動いた臨時脚気病調査会は、脚気研究の土台を作り、ビタミン研究の基礎を築いたと位置づける見解がある<ref group="注">山下は続けて「脚気根絶への道を拓いた森林太郎の功績は、ひときわ高く顕彰しなければならない。（中略）論理主義の森と実践主義の[[高木兼寛]]とは見解と手法に相違があり、それが一見対立的な姿に見えた。しかし「[[脚気の撲滅]]」という究極の目的は同じであった。（中略）／明治の脚気紛争のなかに出現したこの[[森林太郎]]と[[高木兼寛]]の脚気業績は、医学史上不滅の業績である。末永く顕彰記念しなければならないのである。」と記述した（[[#山下2008|山下（2008）]]、461頁）。</ref>。
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| − | 反面、「その十六年間の活動は、脚気栄養障害説＝[[ビタミンB群|ビタミンB]]欠乏症（白米原因）説に柵をかけ、その承認を遅らせるためだけにあったようなものであった」と否定的にとらえる見解もある<ref group="注">（[[#坂内2001|坂内（2001）]]、211–231頁）は、{{JIS2004フォント|鷗}}外が最後まで細菌説に固執したという見解のもと、[[1908年]]（明治41年）[[7月4日]]の調査会（第1回会合）で[[寺内正毅]][[陸軍大臣]]が麦飯の効用を強く示唆したにもかかわらず、次の会合で示された活動方針から[[麦飯]]を含む栄養の問題が排除され、また調査会発足時の委員である[[都築甚之助]]が細菌説から栄養説に転じた直後に委員を[[罷免]]された等の見解を示し、調査会の活動を否定的にとらえた。確かに調査方針では、微生物学など「学」の付いた研究分野までしか明記されておらず、その第二条に列記された研究分野は、[[微生物学]]、[[医化学]]、[[病理学]]・[[病理解剖学]]、[[臨床医学]]、[[流行病学]]であり、[[栄養学]]がない（[[#山下2008|山下（2008）]]、362頁）。もっとも、[[栄養学#栄養学の創設|医化学を修めた佐伯矩によって日本で栄養学が芽生えた]]のは、調査会が設立されてから6年後の[[1914年]]（大正3年）であった。初期の調査会では、[[1910年]]（明治43年）3月–10月と[[1911年]]（明治44年）6月–[[1912年]]（大正元年）10月の[[日本の脚気史#臨時脚気病調査会による食餌試験と食物調査|2回にわたり、食餌試験が行われた]]。また、[[#坂内2001|坂内（2001）]]は[[都築甚之助|都築]]が「罷免」されたと理解したのに対し、（[[#山下2008|山下（2008）]]、375頁）は「辞任」とする。その[[都築甚之助|都築]]は、[[1910年]]（明治43年）3月の調査会で[[日本の脚気史#未知栄養素の抽出|「脚気ノ動物試験第一回報告」をしており、同年12月9日に委員を辞めた]]。翌春、[[東京医学会]]総会で未知栄養障害説を発表（脚気ノ動物試験第二回報告）しており、のちに森委員長の配慮によって調査会でも発表した。その後も、製糠剤アンチベリベリンの開発とその効否試験など、精力的に研究を続けた。</ref>。
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| − | | |
| − | なお、晩年の{{JIS2004フォント|鷗}}外は、同調査会で調査研究中の「脚気の原因」について態度を明らかにしなかった<ref group="注">[[1914年]]（大正3年）[[9月]]に刊行された{{JIS2004フォント|鷗}}外と[[小池正直]]の共著『[[衛生新編]]』（改訂増補第5版、上下2冊、全1,830頁）では、初めて「[[脚気]]」が記載された。ただし、当時脚気の原因をめぐって医学界が混乱していたこともあり、権威者の見解を列記しただけで、{{JIS2004フォント|鷗}}外自らの見解を記述していない。[[#山下2008|山下（2008）]]、421–422頁。</ref>。
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| − | ==== 脚気惨害をめぐる議論 ====
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| − | 陸軍の脚気惨害をめぐって、{{JIS2004フォント|鷗}}外の責任に関しての議論は絶えない。批判の一方擁護論もあり、鷗外は脚気被害をなくすため腐心し、後世に貢献したとする。そのうち{{JIS2004フォント|鷗}}外への批判として、（副食物が貧弱な）米食を麦食に変えると脚気が激減する現象が多く見られたにもかかわらず、麦食を排除し続けた姿勢について激しい非難がある<!--「Wikipedia:引用のガイドライン」に基づき、著作権物からの長文引用を削除--><ref>[[#志田2009|志田（2009）]]、16–18、237頁。</ref>。また、鷗外が岡崎桂一郎著「日本米食史 - 附食米と脚気病との史的関係考」(1912)に寄せた序文で「私は臨時の脚気病調査会長になって（中略）米の精粗と脚気に因果関係があるのを知った」と自ら記述している事実から、鷗外は脚気病栄養障害説が正しいことを知りながら、あえてそれを排除、細菌原因説に固執して、調査会の結論を遅らせていたとの指摘もある<ref>[[#志田2009|志田（2009）]]、145–153頁</ref>。{{JIS2004フォント|鷗}}外を擁護するものとして、以下の見解がある<ref group="注">[[#山下2008|山下（2008）]]、471–472、448頁。また山下は、[[ビタミン]]の存在を知っている後世から、その存在を知らなかった前世に対して安易に批判すべきではないとした。特に「基礎栄養学、ビタミン学、脚気医学の専門知識がない」門外漢による批判を戒めた。</ref>。
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| − | * 陸軍の脚気惨害の責任について、戦時下で陸軍の衛生に関する総責任を負う大本営陸軍部の[[大本営#組織|野戦衛生長官]]（[[日清戦争]]・[[石黒忠悳]]、[[日露戦争]]・[[小池正直]]）ではなく、隷下の一軍医部長を矢面に立たせることへの疑問。
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| − | * {{JIS2004フォント|鷗}}外が白米飯を擁護したことが陸軍の脚気惨害を助長したという批判については、[[日露戦争]]当時、麦飯派の[[寺内正毅]]が[[陸軍大臣]]であった（麦飯を主張する軍医部長がいた）<ref group="注">後年、寺内は脚気病臨時調査会の第1回会合のあいさつで、自ら長年[[脚気]]を患い麦飯で治癒した経験があること、[[陸軍]]への麦飯導入を石黒に激しく反対されたことを披瀝（ひれき）し、
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| − | {{Quotation|〔日清戦争〕当時は此席に居らるゝ森局長の如きも亦石黒説賛成者にして余を詰問せられし一人なりし}}
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| − | と発言した。</ref>にもかかわらず、[[大本営]]が「[[勅令]]」として指示した戦時兵食は、日清戦争と同じ白米飯（精白米6合）であった。その理由として、軍の輸送能力に問題があり、また脚気予防（理屈）とは別のもの（情）もあったとの指摘である。その別のものとは、白米飯は庶民あこがれのご馳走であり、麦飯は貧民の食事として蔑まれていた世情を無視できず、また部隊長の多くも死地に行かせる兵士に白米を食べさせたいという心情とされる<ref>[[#山下2008|山下 2008]]、289頁</ref>。
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| − | * {{JIS2004フォント|鷗}}外の「陸軍兵食試験」が脚気発生を助長したとの批判については、兵食試験の内容（当時の栄養学に基づく栄養試験であり、脚気問題と無関係の試験）を上官の[[石黒忠悳|石黒]]にゆがめられたためとの見解を示した<ref group="注">兵食試験をあたかも脚気の試験であったかのように誤用し、試験成績を独断的にゆがめたのが上官の石黒忠悳であった。石黒の誤用により、兵食試験は誤解されたとの見解。[[#山下2008|山下（2008）]]、448–449頁。</ref>。
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| − | 以上を端的にいえば、{{JIS2004フォント|鷗}}外が脚気問題で批判される多くは筋違いとの見解である。ただし、そもそも建軍当初は金銭で支払われていた兵士への食費が仕送りなどに化けて（必要な食事を採らず）兵士の栄養状態が悪化したことから「必要なカロリーと栄養を任務として摂取する」ための給食へと変化した経緯がある以上、現場指揮官の情などというものは部下を健康に保つという任務を果たした上での話でしかなく、兵士の健康を保つためであれば軍として輸送能力を確保するのが本筋であり、輸送能力や医学的素養の無い現場の「情」を口実とするのはそれこそ筋違いであり、兵士を健康に保つ軍医としての任務を果たしたとは到底いえない。以下に{{JIS2004フォント|鷗}}外への批判の主なものを記す。
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| − | * [[高木兼寛|海軍の兵食改良]]を徹底して非難したこと。{{JIS2004フォント|鷗}}外は留学先からわざわざ高木を非難する論文まで送っており、これは日本国内における脚気栄養説への攻撃にも利用された。コッホが細菌を発見するまで人類は病気のメカニズムすら把握していなかった。海軍や高木が行い、陸軍でも日露戦争開戦前に取り入れて成果の挙がっていた「原因は（当時は）わからないが結果として脚気が治る」という対症療法を認めなかった、あるいは軍の輸送能力や現場からの要求という「情」を持ち出してむしろ後退させた結果が、日露戦争での陸軍の脚気死亡者2万7800名（海軍はほとんどなし）となって現れた。日露戦争での戦死者は4万7000人に上るが、ロシア側には「歩行もままならない幽鬼のような日本兵」が当時の新兵器である機関銃を備えた陣地に無謀な攻撃を仕掛け、なすすべもなく撃ち倒されたという記録がある。戦病死よりもまだ名誉の戦死の方がマシであると兵士や現地指揮官に思わせ、無為な戦死者を生んだ原因は、陸軍軍医部上層部の脚気根絶の無理解、あるいは栄養説への反発と保身にあった。
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| − | * 論理にこだわりすぎて学術的権威に依拠しすぎたこと<ref group="注">松田(1990)は鷗外を中心とする陸軍関係者の態度を、東京大学の「不遜としか言いようのない思い上がり」と指摘している（106-107頁）</ref>。原因が判明しないまま全軍に取り入れることはできないというのは一面で正しいものの見方であるが、経験が蓄積され、あるいは研究が進展してからもなお細菌説に固執した。{{JIS2004フォント|鷗}}外は自身同様にコッホに師事した北里柴三郎が「脚気細菌説は誤り」としたときはこれを批判した。北里がペスト菌を発見した際もこれを痛烈に批判している。軍医、しかも高官にまで出世する立場にあるならば、ビタミンなどの微小栄養素が発見前であることから原因の説明ができない高木の栄養説を攻撃する前に、徴兵主体の兵士の健康を確保するべきであったが、{{JIS2004フォント|鷗}}外にとってそれは重要ではなかった。コッホの助言によって東南アジアでの同種の栄養素欠乏症であるベリベリの調査が行われ「動物実験とヒトの食餌試験」という手法が日本にも導入された。この結果、細菌説の支持者だった臨時脚気病調査会の委員が栄養説へ転向したが、会長の{{JIS2004フォント|鷗}}外はこれを罷免した。また麦飯派の寺内が求めた麦飯の効能の調査については、栄養の問題そのものを調査会の活動方針から排除した。
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| − | * 日清戦争時に上官の石黒に同調したこと<ref group="注">この見解については、保身や党派性を、医師としての公衆に対する義務より優先させたとの批判がある。[[#志田2009|志田（2009）]]、179頁</ref><ref group="注">この見方とは逆に、土岐頼徳からの「言葉巧みな側近の者にたぶらかされているのではないか」との上申（吉村、1994, 下巻 P.211）、「森の主張をコピーしたような批判を繰り返していた」（松田、1990, P.103）など、石黒の側が森に同調していたとの指摘は当時から現在まで存在する</ref>。石黒は日清戦争当時に土岐頼徳からの麦飯支給の稟議を握りつぶし、日清戦争後の台湾の平定（乙未戦争）でも白米の支給を変えてはならないと通達した。石黒自身は、脚気を根絶可能とし、実際に患者を減らした海軍と異なり「脚気根絶は甚だ困難」という談話さえ発表している。土岐が台湾で独断の麦飯支給で脚気の流行を鎮めると、軍規違反を問うて即刻帰京させ、5年後に予備役に追い込んだが軍法会議は開かなかった。軍法会議を開いた場合、軍規違反を起こした士官の上官としての統率責任と、そもそもなぜ軍規違反に至ったかの経緯が公になるためである。しかし石黒が隠そうとした「麦飯で脚気が減った」経緯を知る元台湾鎮台司令官高島鞆之助は陸軍大臣になると石黒を辞任させた。{{JIS2004フォント|鷗}}外が同調した上官とはこのような人物であり、同じ陸軍の軍医が麦飯で脚気を減らしてもなお高木の栄養説の欠陥を批判するのみで脚気患者を減らすことを目的とした対策は採らず、日露戦争での膨大な戦病死を惹起した。
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| − | 日本で脚気の原因が栄養にあることが認められたのは海外での研究の結果であり、海外での成果が確定すると細菌説の支持者は一斉に手のひらを返した。{{JIS2004フォント|鷗}}外が初代会長を務めた臨時脚気病調査会は原因が栄養であるという国内での研究の阻害こそすれ、その研究に貢献したとは言い難いものであったといわれる所以である。ただし、当時の日本は年間で1万から2万人が脚気によって死亡しており、またコレラの流行で4万人が死亡するなど病死の捉え方、あるいは生命の価値というものが現代とは大きく異なる部分があった。「パンを食うぐらいなら、麦飯を食うぐらいなら死んだほうがマシ」という声は脚気が即死するような病でないこともあって少なくなかった。日本で脚気患者が根絶といってよい程度に激減するのは、ビタミンを薬品として大量供給できるようになった1960年代以降のことである。
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| − | == 年譜 ==
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| − | [[画像:Birthplace of Mori Ogai 20170503.jpg|thumb|230x230px|史跡・森{{JIS2004フォント|鷗}}外生家]]
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| − | ※日付は1872年までは旧暦
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| − | * [[1862年]]（[[文久]]{{0}}2年）[[1月19日 (旧暦)|1月19日]] - [[石見国]][[津和野藩]]（現・[[島根県]][[鹿足郡]][[津和野町]]）に、藩医・[[森静泰]]（後に静男と改名）、[[森峰子|峰子]]の長男として生まれる。養子が多かったため、久々の跡継ぎ誕生となる。
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| − | * [[1867年]]（[[慶応]]3年）11月 - [[村田久兵衛]]に[[論語]]を学ぶ。
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| − | * [[1868年]]（[[明治]]元年）3月 - [[米原綱善]]に[[孟子]]を学ぶ。
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| − | * [[1869年]]（明治{{0}}2年） - [[養老館]]で、[[四書]]を一から読み直す。
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| − | * [[1870年]]（明治{{0}}3年） - [[五経]]、[[オランダ語]]を学ぶ。
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| − | * [[1871年]]（明治{{0}}4年） - 藩医の室良悦にオランダ語を学ぶ。
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| − | * [[1872年]]（明治{{0}}5年）
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| − | ** {{0}}6月 - 父とともに津和野を発ち、8月に[[東京]]入り（向島小梅村）。その後、向島曳舟通りに転居。
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| − | ** 10月 - [[ドイツ語]]習得のため、本郷の進文学社（私塾）に入学。
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| − | * [[1873年]]（明治{{0}}6年）
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| − | ** {{0}}6月 - 津和野町の家を売却し、祖母、母なども上京。
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| − | ** 11月、第一大学区医学校予科（現・[[東京大学大学院医学系研究科・医学部|東京大学医学部]]）に入学。同校は、のちに東京医学校に改称。
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| − | * [[1877年]]（明治10年） - 東京医学校は、東京開成学校と合併して東京大学医学部に改組され、その本科生になる。
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| − | * [[1880年]]（明治13年） - 本郷龍岡町の下宿屋「上条」に移る。翌年3月、下宿先で火災に遭い、講義ノートなどを失う。
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| − | * [[1881年]]（明治14年）
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| − | ** 春 - [[肋膜炎]]に罹る。
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| − | ** {{0}}7月 - 東京大学医学部を卒業。父・静男の経営する南足立郡千住町の橘井堂医院に転居。現在でも北千住には森鷗外ゆかりの碑が建てられている。戸籍も東京に移す。その後、明治政府に仕える。
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| − | ** {{0}}9月 - 『[[読売新聞]]』に寄稿した「[[河津金線]]君に質す」が採用される。これが{{JIS2004フォント|鷗}}外の初めて公にされた文章であろう。
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| − | ** 12月 - [[東京陸軍病院]]課僚を命じられて、[[陸軍軍医副]]の任務に就く。
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| − | * [[1882年]]（明治15年）
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| − | ** {{0}}2月 - [[第一軍管区]]徴兵副医官（[[中尉]]相当）になり、[[従七位]]の[[位階]]を授かる。
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| − | ** {{0}}5月 - [[陸軍軍医本部]]課僚になり、[[プロシア]]陸軍衛生制度の調査に駆り出される。
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| − | * [[1884年]]（明治17年）
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| − | ** {{0}}6月 - 陸軍衛生制度、[[衛生学]]研究の目的で、ドイツ留学を命じられる。
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| − | ** 10月 - ドイツに到着。[[ライプツィヒ大学]]でホフマン教授などに学ぶ。
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| − | * [[1885年]]（明治18年）
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| − | ** {{0}}1月 - ハウフの童話を翻訳した「盗侠行」を発表。
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| − | ** {{0}}2月 - ドイツ語で「日本兵食論」「日本家屋論」を執筆。
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| − | ** {{0}}5月 - [[陸軍一等軍医]]（[[大尉]]相当）に昇進。
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| − | ** 10月 - [[ドレスデン]]に移る。
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| − | ** 12月 - ライプツィヒの酒場アウアーバッハスケラーを哲学者の井上哲次郎と訪れ、この時に井上の勧めもあって、『ファウスト』の翻訳を決心する。
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| − | * [[1886年]]（明治19年）3月 - [[ミュンヘン]]に移る。大学衛生部に入学し、[[マックス・フォン・ペッテンコーファー|ペッテンコーフェル]]に[[衛生学]]を学ぶ。
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| − | * [[1887年]]（明治20年）
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| − | ** {{0}}4月 - [[ベルリン]]に移る。
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| − | ** {{0}}5月 - [[北里柴三郎]]と共に[[ロベルト・コッホ|コッホ]]を訪ね、衛生試験所に入る。
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| − | * [[1888年]]（明治21年）
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| − | ** {{0}}3月 - [[プロシア近衛歩兵]]第2連隊の軍隊任務に就く。
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| − | ** {{0}}9月 - 日本に帰国。
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| − | ** 10月 - [[陸軍大学校]]教官に就任。
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| − | ** 12月、『非日本食論将失其根拠』を自費出版。
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| − | * [[1889年]]（明治22年）
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| − | ** {{0}}1月 - 『[[東京医事新誌]]』を主宰。その後、『[[読売新聞]]』に「医学の説より出でたる小説論」が発表され、本格的な文筆活動が始まる。
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| − | ** {{0}}3月 - 写真婚で、[[海軍中将]][[赤松則良]]の長女登志子と婚約。
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| − | ** {{0}}5月 - [[東京芸術大学|東京美術学校]]専修科の[[美術解剖学]]講師に就任。
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| − | ** {{0}}8月 - 『[[国民之友]]』に訳詩編「[[於母影]]」を発表。
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| − | ** 10月 - [[陸軍軍医学校|軍医学校]][[陸軍二等軍医正]]（[[中佐]]相当官）教官心得になる。
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| − | * [[1890年]]（明治23年）
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| − | ** {{0}}1月 - 『[[医事新論]]』を創刊。『[[国民之友]]』に「[[舞姫]]」を発表。
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| − | ** {{0}}8月 - 『[[しからみ草紙]]』に「[[うたかたの記]]」を発表。この作品は、[[石橋忍月]]との論争の火種になる。
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| − | ** {{0}}9月 - 長男・[[森於菟|於菟]]誕生。しかし、まもなく妻登志子と離婚。
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| − | ** 10月 - [[本郷駒込]]千駄木町57に居住を移す。{{JIS2004フォント|鷗}}外は、そこを「[[千朶山房]]」と呼ぶ。
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| − | * [[1891年]]（明治24年）
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| − | ** 1月 - 『[[文づかひ]]』を刊行。
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| − | ** {{0}}8月 - [[医学博士]]の学位を授与される。
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| − | ** {{0}}9月 - 『[[しからみ草紙]]』に「[[山房論文]]」を発表。[[早稲田文学]]で[[坪内逍遥|坪内逍遙]]と[[没理想論争]]を交わす。
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| − | * [[1892年]]（明治25年）
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| − | ** {{0}}7月 - 翻訳小説集『[[美奈和集]]』（春陽堂）を刊行。
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| − | ** {{0}}8月 - 医学と文学の論争から離れて休息を取るため、自宅（観潮楼）を建設。
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| − | ** 11月 - 『[[しからみ草紙]]』に[[ハンス・クリスチャン・アンデルセン|アンデルセン]]の「[[即興詩人]]」を連載。
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| − | * [[1893年]]（明治26年）11月 - 陸軍一等軍医正（[[大佐]]相当）に昇進し、軍医学校長になる。
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| − | * [[1894年]]（明治27年）
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| − | ** {{0}}7月 - [[日清戦争]]勃発。
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| − | ** {{0}}8月 - 東京から[[広島市]]に向かう。
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| − | ** 11月 - [[大連市|大連]]に上陸。
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| − | * [[1895年]]（明治28年）
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| − | ** {{0}}[[4月21日]] - 任 陸軍軍医監<ref>『官報』第3587号「叙任及辞令」1895年6月15日。</ref>
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| − | ** {{0}}5月 - [[下関条約|日清講和条約]]調印後、帰国（帰京することなく広島市にとどまる）。
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| − | ** {{0}}8月 - [[台湾総督府]][[台湾総督府軍務局|陸軍局]]軍医部長になり、台湾に赴任。
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| − | ** {{0}}9月 - 帰国の途につく。
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| − | * [[1896年]]（明治29年）
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| − | ** {{0}}1月 - 『[[めさまし草]]』を創刊。
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| − | ** {{0}}3月 - [[幸田露伴]]、[[斎藤緑雨]]らと共に『めさまし草』に「三人冗語」を連載。
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| − | ** {{0}}4月 - 父・静男死去。
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| − | * [[1897年]]（明治30年）
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| − | ** {{0}}1月 - [[中浜東一郎]]（[[ジョン万次郎|中浜万次郎]]の長男）、[[青山胤通]]らと共に公衆医事会を設立、『公衆医事』を創刊。
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| − | * [[1898年]]（明治31年）
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| − | ** {{0}}8月 - 『[[時事新報]]』にて箴言集「[[智恵袋]]」（ドイツ人作家・[[w:Adolph Freiherr Knigge|Adolf Freiherr von Knigge]]著『Über den Umgang mit Menschen』の抄訳・翻案）連載開始。
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| − | ** 10月 - [[近衛師団]]軍医部長兼軍医学校長に就任。
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| − | * [[1899年]]（明治32年）
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| − | ** {{0}}2月 - 軍医監（[[少将]]相当）に昇任し、[[第12師団 (日本軍)|第12師団]]軍医部長として[[福岡県]]の小倉に赴任。
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| − | ** {{0}}6月 - 『[[二六新報]]』にて箴言集「心頭語」連載開始。
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| − | * [[1902年]]（明治35年）
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| − | ** {{0}}1月 - [[大審院]]判事[[荒木博臣]]の長女志げと再婚。
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| − | ** {{0}}3月 - 東京に転勤。
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| − | * [[1903年]]（明治36年）
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| − | ** {{0}}1月 - 長女・[[森茉莉|茉莉]]誕生。
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| − | ** {{0}}3月 - 『[[新小説]]』にて箴言集「慧語」（スペイン人作家[[バルタサル・グラシアン]]著、[[アルトゥル・ショーペンハウアー|ショーペンハウエル]]訳『Handorakel und Kunst der Weltklugheit （原題[[:es:Oráculo manual y arte de prudencia|{{Unicode|Oráculo manual y arte de prudencia}}]]）』の抄訳・翻案）連載開始。
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| − | * [[1904年]]（明治37年）
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| − | ** {{0}}2月 - [[日露戦争]]勃発。
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| − | ** {{0}}4月 - [[第2軍 (日本軍)#日露戦争における第2軍|第2軍]]軍医部長として、[[広島市]]の宇品港を立つ。『うた日記』を書く。
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| − | * [[1905年]]（明治38年） - [[奉天会戦]]勝利後、残留していたロシア赤十字社員の護送に尽力。
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| − | * [[1906年]]（明治39年）
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| − | ** {{0}}1月 - 帰国。
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| − | ** {{0}}6月 - [[賀古鶴所]]らと歌会「常磐会」を設立（のちに[[山縣有朋]]などが参加）。
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| − | * [[1907年]]（明治40年）
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| − | ** {{0}}3月 - [[与謝野鉄幹]]・[[伊藤左千夫]]・[[佐佐木信綱]]らと自宅で「観潮楼歌会」を開く。
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| − | ** {{0}}6月 - [[西園寺公望]]が主催した歌会「[[雨声会]]」に出席。
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| − | ** {{0}}8月 - 次男・[[不律]]誕生。
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| − | ** 10月 - [[軍医総監|陸軍軍医総監]]・[[陸軍省#医務局|陸軍省医務局長]]となる。
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| − | * [[1908年]]（明治41年）
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| − | ** {{0}}1月 - 弟・[[三木竹二]]死去。
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| − | ** {{0}}2月 - 次男・不律死去。
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| − | ** {{0}}5月 - 文部省の[[臨時仮名遣調査委員会]]委員になる。
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| − | * [[1909年]]（明治42年）
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| − | ** {{0}}3月 - 『[[スバル (文芸雑誌)|スバル]]』に口語体小説「半日」を寄稿。以後、頻繁に寄稿する。
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| − | ** {{0}}5月 - 次女・[[小堀杏奴|杏奴]]誕生。
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| − | ** {{0}}7月 - [[文学博士]]の学位を授与され、また「[[ヰタ・セクスアリス]]」掲載の『スバル』が発売禁止に処される。
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| − | * [[1910年]]（明治43年）
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| − | ** {{0}}2月 - [[慶應義塾大学]]の文学科顧問に就任。『[[三田文学]]』編集委員。
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| − | * [[1911年]]（明治44年）
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| − | ** {{0}}2月 - 三男・[[森類|類]]誕生。
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| − | ** {{0}}5月 - [[文芸委員会]]委員になる。
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| − | ** {{0}}9月 - 『スバル』に「[[雁 (小説)|雁]]」を連載。
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| − | * [[1912年]]（明治45年）
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| − | ** {{0}}1月 - [[文芸委員会]]に頼まれていた戯曲『[[ファウスト]]』の訳を完結させる。
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| − | ** 10月 - 初の歴史小説「[[興津弥五右衛門の遺書]]」を『[[中央公論]]』に発表。
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| − | * [[1913年]]（[[大正]]{{0}}2年）
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| − | ** {{0}}1月 - 『[[中央公論]]』に「[[阿部一族]]」を発表。
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| − | * [[1914年]]（大正{{0}}3年）
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| − | ** {{0}}1月 - 『中央公論』に「[[大塩平八郎]]」を発表。
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| − | ** {{0}}2月 - 『[[新小説]]』に「[[堺事件]]」を発表。
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| − | * [[1915年]]（大正{{0}}4年）
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| − | ** {{0}}1月 - 『中央公論』に「[[山椒大夫]]」を、『[[心の花]]』に「歴史其儘と歴史離れ」を発表。
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| − | ** 10月 - 『中央公論』に「最後の一句」を発表。
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| − | ** 11月、[[大島健一]][[陸軍省#陸軍次官|陸軍次官]]に辞意を表明。同年、[[渋江抽斎]]の調査研究を始める。
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| − | * [[1916年]]（大正{{0}}5年）
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| − | ** {{0}}1月、『中央公論』に「[[高瀬舟 (小説)|高瀬舟]]」を、『新小説』に「寒山拾得」を発表。東京日日新聞と大阪毎日新聞に「渋江抽斎」を連載。
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| − | ** {{0}}3月、母峰子死去。
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| − | ** {{0}}4月13日、[[陸軍省医務局]]長を退き[[予備役]]に編入<ref>『官報』第1108号、大正5年4月14日。</ref>。
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| − | * [[1917年]]（大正{{0}}6年）
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| − | ** 12月 - [[帝室博物館]]総長に就任し、[[高等官]]一等に叙せられる。
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| − | * [[1918年]]（大正{{0}}7年）
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| − | ** 11月 - [[正倉院]]宝庫開封に立ち会うため[[奈良市|奈良]]に一時滞在。以後[[1921年]]（大正10年）まで毎秋、奈良を訪れた。
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| − | * [[1919年]]（大正{{0}}8年）
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| − | ** {{0}}9月 - [[日本芸術院|帝国美術院]]の初代院長に就任。
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| − | * [[1921年]]（大正10年）
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| − | ** {{0}}6月 - [[臨時国語調査会]]長に就任。秋、足に浮腫が出来始めるなど、[[腎臓病]]の兆候が見られ始める。
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| − | * [[1922年]]（大正11年）
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| − | ** {{0}}4月 - [[イギリス]][[エドワード8世 (イギリス王)|皇太子]]の正倉院参観に合わせ、奈良へ5度目の旅行。途中、いくどか病臥する。
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| − | ** {{0}}[[6月29日]] - [[萎縮腎]]と診断される。また、[[肺結核]]の兆候も見られた。
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| − | ** {{0}}[[7月6日|7月{{0}}6日]] - 友人の[[賀古鶴所]]に遺言の代筆を頼む。
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| − | ** {{0}}[[7月9日|7月{{0}}9日]] - 午前7時死去。向島[[弘福寺]]に埋葬される。
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| − | * [[1927年]]（[[昭和]]{{0}}2年） - 墓が[[三鷹市]]禅林寺に移される。分骨され[[津和野町]]永明寺にも墓がある。
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| − | | |
| − | == 栄典 ==
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| − | ;位階
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| − | * [[1893年]]（明治26年）[[12月16日]] - [[正六位]]<ref>『官報』第3142号「叙任及辞令」1893年12月18日。</ref>
| |
| − | * [[1895年]]（明治28年）[[11月15日]] - [[従五位]]<ref>『官報』第3717号「叙任及辞令」1895年11月16日。</ref>
| |
| − | * [[1899年]]（明治32年）[[7月10日]] - [[正五位]]<ref>『官報』第4807号「叙任及辞令」1899年7月11日。</ref>
| |
| − | * [[1904年]]（明治37年）[[9月13日]] - [[従四位]]<ref>『官報』第6367号「叙任及辞令」1904年9月17日。</ref>
| |
| − | * [[1909年]]（明治42年）[[10月20日]] - [[正四位]]<ref>『官報』第7899号「叙任及辞令」1909年10月21日。</ref>
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| − | | |
| − | ;勲章等
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| − | * [[1894年]]（明治27年）[[11月24日]] - 勲六等[[瑞宝章]]<ref>『官報』第3430号「叙任及辞令」1894年12月3日。</ref>
| |
| − | * [[1895年]]（明治28年）
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| − | ** [[9月20日]] - [[旭日章|単光旭日章]]・[[金鵄勲章|功四級金鵄勲章]]<ref>『官報』第3671号「叙任及辞令」1895年9月21日。</ref>
| |
| − | ** [[11月18日]] - [[従軍記章#発行された従軍記章|明治二十七八年従軍記章]]<ref>『官報』第3862号・付録「辞令」1896年5月16日。</ref>
| |
| − | * [[1896年]]（明治29年）[[11月25日]] - 勲五等瑞宝章<ref>『官報』第4027号「叙任及辞令」1896年11月30日。</ref>
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| − | * [[1900年]]（明治33年）[[5月31日]] - 勲四等瑞宝章<ref>『官報』第5072号「叙任及辞令」1900年6月1日。</ref>
| |
| − | * [[1904年]]（明治37年）[[11月29日]] - 勲三等瑞宝章<ref>『官報』第6426号「敍任及辞令」1904年11月30日。</ref>
| |
| − | * [[1906年]]（明治39年）[[4月1日]] - 功三級[[金鵄勲章]]、[[旭日章|勲二等旭日重光章]]、[[従軍記章#発行された従軍記章|明治三十七八年従軍記章]]<ref>『官報』号外「叙任及辞令」1906年12月30日。</ref>
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| − | * [[1915年]]（大正4年）
| |
| − | **[[4月24日]] - 勲一等瑞宝章<ref>『官報』第817号「叙任及辞令」1915年4月26日。</ref>
| |
| − | **[[11月7日]] - [[勲一等旭日大綬章|旭日大綬章]]・[[従軍記章#発行された従軍記章|大正三四年従軍記章]]<ref>『官報』第1194号「叙任及辞令」1916年7月24日。</ref>
| |
| − | **[[11月10日]] - 大礼[[記念章]]<ref>『官報』第1310号・付録「辞令」1916年12月13日。</ref>
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| − | | |
| − | == 主な作品 ==
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| − | === 小説 ===
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| − | {|
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| − | |valign="top"|
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| − | *[[舞姫]]（『[[国民之友]]』、1890年1月）
| |
| − | *[[うたかたの記]]（『国民之友』、1890年8月）
| |
| − | *文づかひ（吉岡書店、1891年1月）
| |
| − | *半日（『スバル』、1909年3月）
| |
| − | *魔睡（『スバル』、1909年6月）
| |
| − | *[[ヰタ・セクスアリス]]（『スバル』、1909年7月）
| |
| − | *鶏（『スバル』、1909年8月）
| |
| − | *金貨（『スバル』、1909年9月）
| |
| − | *杯（『[[中央公論]]』、1910年1月）
| |
| − | *[[青年 (小説)|青年]]（『スバル』、1910年3月–11年8月）
| |
| − | *[[普請中]]（『三田文学』、1910年6月）
| |
| − | *花子（『三田文学』、1910年7月）
| |
| − | *あそび（『三田文学』、1910年8月）
| |
| − | *食堂（『三田文学』、1910年12月）
| |
| − | *蛇（『中央公論』、1911年1月）
| |
| − | |valign="top"|
| |
| − | *妄想（『三田文学』、1911年4月）
| |
| − | *[[雁 (小説)|雁]]（『スバル』、1911年9月–1913年5月）
| |
| − | *灰燼（『三田文学』、1911年10月–1912年12月）
| |
| − | *百物語（『中央公論』、1911年10月）
| |
| − | *かのように（『中央公論』、1912年1月）
| |
| − | *[[興津弥五右衛門の遺書]]（1912年10月、『中央公論』）
| |
| − | *[[阿部一族]]（『中央公論』、1913年1月）
| |
| − | *[[佐橋甚五郎]]（『中央公論』、1913年）
| |
| − | *大塩平八郎（『中央公論』、1914年1月）
| |
| − | *堺事件（『新小説』、1914年2月）
| |
| − | *安井夫人（『太陽』、1914年4月）
| |
| − | *[[山椒大夫]]（『中央公論』、1915年1月）
| |
| − | *じいさんばあさん（『新小説』、1915年9月）
| |
| − | *[[最後の一句]]（『中央公論』、1915年10月）
| |
| − | *[[高瀬舟 (小説)|高瀬舟]]（『中央公論』、1916年1月）
| |
| − | *寒山拾得（『新小説』、1916年1月）
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| − | |valign="top"|
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| − | |}
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| − | | |
| − | === 戯曲 ===
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| − | *[[生田川 (戯曲)|生田川]]
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| − | | |
| − | === 詩歌および作詞 ===
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| − | *[[うた日記]]（春陽堂、1907年）
| |
| − | *[[横浜市歌]]（1909年）<!--説明は、記事「横浜市歌」の方でお願いします。-->
| |
| − | *[[横浜市立横浜商業高等学校]]校歌（1916年）
| |
| − | *[[浜松市歌#旧浜松市歌|浜松市歌]]（初代。1921年発表、[[2005年]]廃止）
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| − | | |
| − | === 翻訳 ===
| |
| − | *[[カルデロン・デ・ラ・バルカ]]「調高矣津弦一曲」(El alcalde de Zalamea)、1889年。※[[三木竹二]]との共訳
| |
| − | *[[於母影]]（[[新声社]]訳『国民之友』夏期付録、1889年）
| |
| − | *[[ハンス・クリスチャン・アンデルセン]]「[[即興詩人]]」（『しからみ草紙』1892年11月から掲載され、『めさまし草』1901年2月完）
| |
| − | *[[ヨハン・ヴォルフガング・フォン・ゲーテ|ゲーテ]]『[[ファウスト]]』（[[ファウスト 第一部|第一部]]：1913年1月、[[ファウスト 第二部|第二部]]：3月、冨山房）
| |
| − | * [[オスカー・ワイルド]]「[[サロメ (戯曲)|サロメ]]」
| |
| − | * [[アルトゥル・シュニッツラー]]「みれん」「恋愛三昧」ほか
| |
| − | *[[ゲアハルト・ハウプトマン|ゲルハルト・ハウプトマン]]『寂しき人々』
| |
| − | *[[ヘルベルト・オイレンベルク]]「女の決闘」
| |
| − | | |
| − | === 史伝 ===
| |
| − | *[[澁江抽齋 (史伝)|澁江抽齋]]（『東京日日新聞』『大阪毎日新聞』、1916年1月 - 5月）
| |
| − | *[[伊澤蘭軒 (史伝)|伊澤蘭軒]]
| |
| − | *[[北条霞亭 (史伝)|北条霞亭]]<ref group="注">史伝の新版は、『鷗外歴史文学集』（全13巻、岩波書店）に、一部の小説作品や、[[漢詩]]と共にある。</ref>（続篇として[[狩谷棭斎]]を執筆する予定だった）
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| − | *[[帝諡考]]
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| − | | |
| − | === 評伝 ===
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| − | *[[ゲルハルト・ハウプトマン]]<ref>{{NDLDC|871635}}</ref>
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| − | | |
| − | === 随筆 ===
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| − | *サフラン（『[[番紅花]]』1914年3月）
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| − | *空車{{small|（むなぐるま）}}（『東京日日新聞』『大阪毎日新聞』1916年5月）
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| − | *[[礼儀小言]]（『東京日日新聞』『大阪毎日新聞』1918年1月）
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| − | | |
| − | === 日記 ===
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| − | *北游日乘（1883年2月 - 3月、同年9月 - 1884年2月）
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| − | *航西日記（1884年8月 - 10月）
| |
| − | *獨逸日記 (1889年10月 - 1893年5月）
| |
| − | *隊務日記（1888年3月- 7月）
| |
| − | *還東日乘（1888年7月 - 9月）
| |
| − | *觀潮樓日記（1892年8月 - 10月）
| |
| − | *徂征日記（1894年8月 - 1895年10月）
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| − | *小倉日記（1899年6月 - 1902年3月）
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| − | *委蛇錄（1918年1月 - 1922年7月）
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| − | | |
| − | == 家族 親族 ==
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| − | === 先祖 ===
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| − | 典医としての森家（森氏）は、1650年前後（[[慶安]]年間）から[[1869年]]（[[明治]]2年）の[[版籍奉還]]に及ぶ。
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| − | <pre>
| |
| − | 玄佐━玄篤━玄叔━周菴━玄佐━玄碩━玄叔━周菴━秀菴━立本━秀菴━白仙━静泰━┳林太郎
| |
| − | ┣篤次郎
| |
| − | ┣喜美子
| |
| − | ┗潤三郎
| |
| − | </pre>
| |
| − | 父に藩医の森静泰（静男）、母に峰子。父はのちに[[北千住]]で橘井堂医院を開業。鷗外も4年間住んでおり、北千住に森鷗外の碑が建立されている。
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| − | | |
| − | === 妻子 ===
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| − | * 先妻 登志子（1871-1900。海軍中将[[赤松則良]]娘）：1889年に結婚したが1年半後で破綻<ref>[http://www.47news.jp/smp/news/201209/SM0913_857330.html 森鴎外、別居「気性合わず」 元妻の親族が記した文書発見、静岡新聞2012/09/13 ]</ref><ref group="注">[https://www.evernote.com/shard/s13/sh/22fd2e17-85c5-4030-a172-1a7655fceb38/4e620445ef8f1929a03ae9c9e15edfa1?noteKey=4e620445ef8f1929a03ae9c9e15edfa1¬eGuid=22fd2e17-85c5-4030-a172-1a7655fceb38 「気性合わず、文筆活動の妨げ」 鴎外妻との関係文書 : 静岡 （2012年9月14日 読売新聞））]明治23(1890)年10月6日付で、当時、佐世保の鎮守府指令長官であった父親の赤松則良に対して、長男の[[赤松範一]]が鷗外と妹登志子夫婦の生活の実情を報告するために書いた手紙の下書きが見つかり、鷗外が「私の気性として、日頃夫婦で遊歩することもなく、談話も好まない。文筆活動の妨げになるので、登志子とよく相談した」という趣旨の発言し、於菟については「別段牛乳にても無害」と言い、引き取った旨が記されていた。</ref>。鷗外と別れたのち、1900年に再婚先で[[結核]]で死亡。
| |
| − | ** 長男 [[森於菟|於菟]]（おと、医学者、台北帝国大学医学部教授などを歴任）
| |
| − | *後妻 - [[森志げ|志げ]]（1880－1936。大審院判事荒木博臣の娘）：1902年結婚。鷗外の前に、[[渡辺勝太郎 (実業家)|渡辺勝太郎]]（銀行家・[[渡辺治右衛門]]の息子）と短い結婚をしており、再婚<ref>[http://kotobank.jp/word/%E6%A3%AE%E3%81%97%E3%81%92 森しげ]朝日日本歴史人物事典</ref>。小説「波瀾」を著しており（『樋口一葉・明治女流文学・泉鏡花集』現代日本文学大系5、筑摩書房、1972年）、義妹の小金井喜美子とともに雑誌『[[青鞜]]』の賛助員になった。
| |
| − | ** 長女 [[森茉莉|茉莉]]（まり、随筆家・小説家）
| |
| − | ** 次女 [[小堀杏奴|杏奴]]（あんぬ、随筆家）
| |
| − | ** 次男 不律（ふりつ、夭折）
| |
| − | ** 三男 [[森類|類]]（るい、随筆家）
| |
| − | 4人の子供はいずれも鷗外について著作を残しており、とりわけ茉莉（国語教科書に載った『父の帽子』）と杏奴（『晩年の父』）が有名である。母親の違う於菟は、他の子供たちとはまた違った父親像を綴っている。全員が当時としては[[キラキラネーム|異色の名前]]だったが、これは本人の名前「林太郎」が外国人には発音しづらかったことから来ているもので、世界に通用する名前にしようとしたため。ちなみに孫・[[山田爵|爵]]（茉莉の子）も鷗外の命名による<ref group="注">NHK BSプレミアム（[[2014年]]7月23日放送）の『孫のナマエ〜鷗外パッパの命名騒動7日間』という、孫の命名に関するエピソードがドラマになった。ここで鷗外は「伯爵」などの「爵」ではなく、「雀」の「𣝣」から採ったとしている。この番組では鷗外を「[[キラキラネーム]]」の元祖としていた。</ref>。
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| − | | |
| − | === 弟妹 ===
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| − | * 弟 篤次郎（[[三木竹二]]）：明治期を代表する劇評家で、内科医。演劇雑誌『歌舞伎』を主宰し、歌舞伎批評に客観的な基準を確立した（三木竹二『観劇偶評』、[[渡辺保]]編、岩波文庫、2004年）。
| |
| − | * 妹 [[小金井喜美子|喜美子]]：明治期に[[若松賤子]]と並び称された翻訳家で、また随筆家・歌人でもあった（『鷗外の思い出』岩波文庫、1999年。『森鷗外の系族』岩波文庫、2001年）。
| |
| − | * 義弟 [[小金井良精]]：喜美子の夫。初期の[[文部科学省|文部省]]派遣留学生（鷗外の前年にドイツ留学）。24歳で帰国し、27歳のとき[[お雇い外国人|高給のドイツ人教官]]に代わって東京帝国大学医学部教授に就任。後年、[[医科大学#分科大学期|帝国大学医科大学]]学長（現[[東京大学]]大学院医学系研究科研究科長・医学部長）等をつとめた<ref>[http://www.m.u-tokyo.ac.jp/information/deans.html 歴代医学部長]</ref>。小金井夫妻の孫の1人が小説家の[[星新一]]。
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| − | | |
| − | === 傍系 ===
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| − | * [[西周 (啓蒙家)|西周]]：鷗外の曾祖父の次男、森覚馬が西家を継いで生まれた子。幕末明治維新の西洋法学者・啓蒙家で、[[貴族院 (日本)|貴族院]]議員や[[元老院議官]]などの要職を歴任。上京後の一時期、鷗外少年は、西周邸から進文学社に通学した。
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| − | | |
| − | === 家系図 ===
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| − | {{familytree/start}}
| |
| − | {{familytree| | | A-1 |y| A-2 | | | | | | | | | | | | | | A-3 |A-1=森静泰|A-2=峰子|A-3=[[小林親真|小林又兵衛]]}}
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| − | {{familytree| | | | | |)|-|-|-|-|-|-|-|v|-|-|-|.| | | | | |!| }}
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| − | {{familytree| B-1 | | |!| | | B-2 | | |!| | | |!| B-3 |y| B-4 |B-1=[[赤松則良]]|B-2=荒木博臣|B-3=小金井良達|B-4=幸}}
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| − | {{familytree| |!| | | |!| | | |!| | | |!| | | |!| | | |!| }}
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| − | {{familytree| C-1 |y| C-2 |y| C-3 | | C-4 | | C-5 |~| C-6 |C-1=登志子|C-2='''林太郎'''<br>（'''森鷗外'''）|C-3=[[森志げ|志げ]]|C-4=篤次郎<br>（[[三木竹二]]）|C-5=[[小金井喜美子|喜美子]]|C-6=[[小金井良精]]|boxstyle_ C-2=background-color: #FDFC8F;}}
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| − | {{familytree| |,|-|'| | | |`|-|v|-|-|-|-|-|-|-|v|-|-|-|v|-|-|-|.| }}
| |
| − | {{familytree| D-1 | | D-2 |y| D-3 | | D-4 |~| D-5 | | D-6 | | D-7 |D-1=[[森於菟|於菟]]|D-2=[[山田珠樹]]|D-3=[[森茉莉|茉莉]]|D-4=[[小堀四郎]]|D-5=[[小堀杏奴|杏奴]]|D-6=不律|D-7=[[森類|類]]}}
| |
| − | {{familytree| |!| | | | | |!}}
| |
| − | {{familytree| |!| | | | | E-1 |E-1=[[山田爵|山田𣝣]]}}
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| − | {{familytree| |)|-|-|-|v|-|-|-|v|-|-|-|v|-|-|-|.| }}
| |
| − | {{familytree| E-2 | | E-3 | | E-4 | | E-5 | | E-6 |E-2=[[森真章|真章]]|E-3=[[森富|富]]|E-4=[[森礼於|礼於]]|E-5=[[森樊須|樊須]]|E-6=[[森常治|常治]]}}
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| − | {{familytree/end}}
| |
| − | | |
| − | == その他のエピソード ==
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| − | {{雑多な内容の箇条書き|date=2011年8月}}
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| − | * 常日頃、文人の自分と軍医である自分のそれを厳格に分けて考えていた。あるとき文壇の親しい友人が軍服姿で停車場に立っていた森を目にして、何気なく話しかけたら、その友人を怒鳴りつけたことがある。
| |
| − | * 軍医でなおかつ、軍の一人でもあることを意識しており、自分の子である杏奴と散歩をしていると、「わー中将が歩いているぞ」と子供たちがバラバラと駆け寄ってきた。軍の人間は日露戦争の影響で人気があった。しかし鷗外を見つめていた子供たちの1人が、襟の深緑色を見て、「おい、なんだ、軍医だよ」と声を上げ、子供たちが散るように去ってしまったことにかなり落胆してしまったそうである。
| |
| − | * [[1892年]]（明治25年）に[[東京府]][[東京市]][[本郷 (文京区)|本郷区]]の千駄木（現・[[東京都]][[文京区]]）に建設し、晩年まで過ごした住居「観潮楼」跡地に、文京区立本郷図書館鷗外記念室が置かれたが休室となり、2012年に文京区立森鷗外記念館として開館した。
| |
| − | * 子どもたちは鷗外を「パッパ」と呼び、茂子のことを「お母ちゃん」と呼んでいた。
| |
| − | * 細菌学、衛生学を究めて以来、[[ルイ・パスツール|パスツール]]同様[[潔癖症]]になってしまい、果物などの食べ物も加熱しないと食べられなくなってしまった。煮て砂糖をかけた果物が好きで、食卓には水蜜桃、杏、梅などがのった。
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| − | * [[風呂]]は嫌いで、[[たらい]]を前に身を清めるのが日課であった。
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| − | * [[下戸|酒は飲めず]]、大の[[甘党]]だった。[[あんパン]]や「消毒してあって、滋養に富んでいる」[[焼き芋]]が好物であった<ref>[[#嵐山2000|嵐山 2000]]</ref>。娘（茉莉・杏奴）の著書によると「[[饅頭]]の[[茶漬け]]」を好んで食べていた。あんこが好きで、汁粉も飲んだ。[[木村屋總本店|木村屋]]の[[あんぱん]]も好物だった。宮中のデザートで出されたキャラメルやチョコレートなどをそっと軍服に隠し入れて、子どもたちへの土産にすることもあった。
| |
| − | * たった一種類料理ができて、「玉子をどろどろに柔らかく煮る」ことで弁当におかずによく作ったが、お酒を入れすぎてお酒臭い時もあった（杏奴「晩年の父）。「技巧のない料理」が好きだった<ref>大本泉『作家のごちそう帖』（[[平凡社新書]] [[2014年]]pp.14-23）。</ref>。
| |
| − | * 木下杢太郎は鷗外を「[[テーベ|テエベス]]百門の大都」と評し、「文学と自然科学と、和漢の古典と泰西の新思潮と芸術家的感興と純吏的の実直とが孰れも複雑な調帯の両極を成している」（『芸林間歩』所収「森鷗外」）と述べている。
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| − | | |
| − | == 脚注 ==
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| − | {{脚注ヘルプ}}
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| − | === 注釈 ===
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| − | {{Reflist|group="注"|2}}
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| − | === 出典 ===
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| − | {{Reflist|2}}
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| − | | |
| − | == 参考文献 ==
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| − | <!-- 本文などで出典として用いられていない文献を削除。2010年11月 -->
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| − | * {{Cite book|和書|author=嵐山光三郎|authorlink=嵐山光三郎|year=2000|month=9|title=文人悪食|series=新潮文庫|publisher=新潮社|isbn=4-10-141905-1|ref=嵐山2000}}
| |
| − | * {{Cite book|和書|author=池内健次|authorlink=池内健次|year=2001|month=12|title=森鷗外と近代日本|series=Minerva21世紀ライブラリー 67|publisher=ミネルヴァ書房|isbn=4-623-03559-X|ref=池内2001}}
| |
| − | * [[猪瀬直樹]]「元号に賭ける」、{{Cite book|和書|year=2002|month=9|title=天皇の影法師|series=日本の近代猪瀬直樹著作集 10|publisher=小学館|isbn=4-09-394240-4|ref=猪瀬2002}}
| |
| − | * {{Cite book|和書|author=植木哲|authorlink=植木哲|year=2000|month=4|title=新説 鷗外の恋人エリス|series=新潮選書|publisher=新潮社|isbn=4-10-600587-5|ref=植木2000}}
| |
| − | * {{Cite book|和書|author=大谷晃一|authorlink=大谷晃一|origdate=1983-04|year=2000|month=9|title=鷗外、屈辱に死す|series=ノアコレクション 3|publisher=編集工房ノア|ref=大谷2000}}
| |
| − | * {{Cite book|和書|author=片山杜秀|authorlink=片山杜秀|year=2007|month=9|title=近代日本の右翼思想|series=講談社選書メチエ 396|publisher=講談社|isbn=978-4-06-258396-1|ref=片山2007}}
| |
| − | * {{Cite book|和書|author=金子幸代|authorlink=金子幸代|year=1992|month=11|title=鷗外と〈女性〉 森鷗外論究|publisher=大東出版社|isbn=4-500-00588-9|ref=金子1992}}
| |
| − | * {{Cite book|和書|author=小金井喜美子|authorlink=小金井喜美子|year=1999|month=11|title=鷗外の思い出|series=岩波文庫|publisher=岩波書店|isbn=4-00-311611-9|ref=小金井1999}}
| |
| − | * {{Cite book|和書|author=小平克|authorlink=小平克|year=2006|month=6|title=森鷗外「我百首」と「舞姫事件」|publisher=同時代社|isbn=4-88683-577-5|ref=小平2006}}
| |
| − | * {{Cite book|和書|author=小堀杏奴|authorlink=小堀杏奴|year=1981|month=9|title=晩年の父|publisher=岩波書店〈岩波文庫〉|isbn=4-00-310981-3|ref=小堀1981}}
| |
| − | * {{Cite book|和書|author=小堀杏奴|year=2003|month=1|title=朽葉色のショール|edition=新版|series=[[講談社文芸文庫]]|publisher=講談社|isbn=4-06-198319-9|ref=小堀2003}}
| |
| − | * {{Cite book|和書|author=小堀桂一郎|authorlink=小堀桂一郎|year=1998|month=11|title=森鷗外 批評と研究|publisher=岩波書店|isbn=4-00-025283-6|ref=小堀1998}}
| |
| − | * {{Cite book|和書|author=今野勉|authorlink=今野勉|year=2010|month=11|title=鷗外の恋人 百二十年後の真実|publisher=日本放送出版協会|isbn=978-4-14-081442-0|ref=今野2010}}
| |
| − | * {{Cite book|和書|author=坂内正|authorlink=坂内正|year=2001|month=5|title=鷗外最大の悲劇|series=新潮選書|publisher=新潮社|isbn=4-10-603500-6|ref=坂内2001}}
| |
| − | * {{Cite book|和書|author=佐谷眞木人|authorlink=佐谷眞木人|year=2009|month=3|title=日清戦争 「国民」の誕生|series=講談社現代新書 1986|publisher=講談社|isbn=978-4-06-287986-6|ref=佐谷2009}}
| |
| − | * {{Cite book|和書|author=志田信男|authorlink=志田信男|year=2009|month=1|title=鷗外は何故袴をはいて死んだのか 「非医」鷗外・森林太郎と脚気論争|publisher=公人の友社|isbn=978-4-87555-540-7|ref=志田2009}}
| |
| − | * {{Cite book|和書|author=末延芳晴|authorlink=末延芳晴|year=2008|month=8|title=森鷗外と日清・日露戦争|publisher=平凡社|isbn=978-4-582-83407-9|ref=末延2008}}
| |
| − | * {{Cite book|和書|author=谷沢永一|authorlink=谷沢永一|year=2012|month=8|title=文豪たちの大喧嘩 鷗外・逍遙・樗牛|series=ちくま文庫|publisher=筑摩書房|isbn=978-4480429766|ref=谷沢2012}}
| |
| − | * {{Cite book|和書|author=長島要一|authorlink=長島要一|year=2005|month=10|title=森鷗外 文化の翻訳者|series=岩波新書|publisher=岩波書店|isbn=4-00-430976-X|ref=長島2005}}
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| − | * {{Cite book|和書|author=新関公子|authorlink=新関公子|year=2008|month=2|title=森鷗外と原田直次郎 ミュンヘンに芽生えた友情の行方|publisher=東京藝術大学出版会|isbn=978-4-904049-03-7|ref=新関2008}}
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| − | * {{Cite book|和書|author=林尚孝|authorlink=林尚孝|year=2005|month=4|title=仮面の人・森鷗外 「エリーゼ来日」三日間の謎|publisher=同時代社|isbn=4-88683-549-X|ref=林2005}}
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| − | * {{Cite book|和書|editor=[[平川祐弘]]・[[平岡敏夫]]・[[竹盛天雄]]編|year=1997|month=5|title=鷗外の人と周辺|series=講座 森鷗外 第1巻|publisher=新曜社|isbn=4-7885-0597-5|ref=平川ら1997a}}
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| − | * {{Cite book|和書|editor=平川祐弘・平岡敏夫・竹盛天雄編|year=1997|month=5|title=鷗外の作品|series=講座 森鷗外 第2巻|publisher=新曜社|isbn=4-7885-0598-3|ref=平川ら1997b}}
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| − | * {{Cite book|和書|editor=平川祐弘・平岡敏夫・竹盛天雄編|year=1997|month=6|title=鷗外の知的空間|series=講座 森鷗外 第3巻|publisher=新曜社|isbn=4-7885-0603-3|ref=平川ら1997c}}
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| − | * {{Cite book|和書|author=松本清張|authorlink=松本清張|year=1997|month=11|title=両像・森鷗外|series=文春文庫|publisher=文藝春秋|isbn=4-16-710684-1|ref=松本1997}}
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| − | * {{Cite book|和書|author=松本清張|year=1974|title=鷗外の婢|series=新潮文庫|publisher=新潮社|ref=松本1974}}
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| − | * {{Cite book|和書|author=森鷗外|others=[[田中美代子]]解説|year=1996|month=7|title=森鷗外全集 13 独逸日記・小倉日記|series=ちくま文庫|publisher=筑摩書房|isbn=4-480-03093-X|ref=森鴎外1996}}
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| − | * {{Cite book|和書|author=森鴎外|editor=[[千葉俊二]]編|year=2000|month=11|title=鷗外随筆集|series=岩波文庫|publisher=岩波書店|isbn=4-00-310068-9|ref=森鴎外2000}}
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| − | * {{Cite book|和書|author=森鷗外|editor=[[金子幸代]]編・解説|year=2006|month=4|title=鷗外女性論集|publisher=不二出版|isbn=4-8350-3497-X|ref=森鴎外2006}}
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| − | * {{Cite book|和書|author=森潤三郎|authorlink=森潤三郎|year=1942|title=鷗外森林太郎|publisher=丸井書店|ref=森潤三郎1942}}
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| − | * {{Cite book|和書|author=森まゆみ|authorlink=森まゆみ|year=2000|month=7|title=鷗外の坂|series=新潮文庫|publisher=新潮社|isbn=4-10-139022-3|ref=森まゆみ2000}}
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| − | * {{Cite book|和書|author=山{{JIS2004フォント|﨑}}國紀|authorlink=山崎國紀|year=2007|month=7|title=評伝 森鷗外|publisher=大修館書店|isbn=978-4-469-22189-3|ref=山崎2007}}
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| − | * {{Cite book|和書|author=山下政三|authorlink=山下政三|year=2008|month=11|title=鷗外森林太郎と脚気紛争|publisher=日本評論社|isbn=978-4-535-98302-1|ref=山下2008}}
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| − | * {{Cite book|和書|author=六草いちか|authorlink=六草いちか|year=2011|month=3|title=鷗外の恋 舞姫エリスの真実|publisher=講談社|isbn=978-4-06-216758-1|ref=六草2011}}
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| − | * {{Cite book|和書|author=森千里|authorlink=森千里|year=2013|month=1|title=鷗外と脚気 曾祖父の足あとを訪ねて|publisher=NTT出版|isbn=978-4-75-715086-7|ref=森千里2011}}
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| − | * 大原敏行『明治長編詩歌 孝女白菊 －井上哲次郎・落合直文から ちりめん本、 鷗 外、画の世界までー』（創英社、2015年）、ISBN 978-4-88142-935-8
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| − | *廣木寧『江藤淳氏の批評とアメリカ』慧文社、2010年、ISBN 978-4-86330-040-8
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| − | *廣木寧『天下なんぞ狂える―夏目漱石の『こころ』をめぐって』（下）（慧文社）2016年 ISBN 978-4-86330-171-9
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| − | == 関連項目 ==
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| − | {{雑多な内容の箇条書き|date=2011年8月}}
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| − | * [[井上通泰]]：『於母影』の共訳者で、歌会常磐会の創設メンバーの1人。
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| − | * [[上田敏]]：一緒に雑誌『芸文』『万年艸』を創刊する等、親交を深めた。
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| − | * [[木下杢太郎]]：医学生時代、鷗外に進路を相談。後年、鷗外の心境を深く理解した。
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| − | * [[黒田清輝]]：[[東京芸術大学|東京美術学校]]の後輩教員。鷗外の依頼を受け、故原田直次郎展の発起人を務めた。
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| − | * [[佐佐木信綱]]：『めさまし草』に歌を発表し、長年にわたって親交を深めた。
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| − | * [[太宰治]]：希望した通り、鷗外の墓のはす向かいに埋葬された（[[禅林寺 (三鷹市)|禅林寺]]）。
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| − | * [[田山花袋]]：とくに鷗外の審美学（[[美学]]の旧称）が好きで、その影響を受けたと書いた。
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| − | * [[永井荷風]]：鷗外の推薦で[[慶應義塾大学]]教授に就任。生涯その恩を忘れなかった。
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| − | * [[中村不折]]：鷗外の自宅から別荘の表札、墓碑銘まで書いた。
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| − | * [[萩原三圭]]：ともに[[ドイツ]]の[[ライプツィヒ大学]]に[[留学]]した。
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| − | * [[原田直次郎]]：ドイツ留学時代からの友人。
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| − | * [[吉田増蔵]]：晩年の鷗外に乞われて上京し、[[元号]]や[[勅語]]や[[皇族#明治憲法下|皇族]]名などに関わった。
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| − | <div style="float:left;vertical-align:top:white-space:nowrap;margin-right:1em">
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| − | * [[青山胤通]]
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| − | * [[石黒忠悳]]
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| − | * [[小山内薫]]
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| − | * [[落合直文]]
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| − | * [[北里柴三郎]]
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| − | * [[中濱東一郎]]
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| − | * [[北原白秋]]
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| − | * [[小池正直]]
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| − | </div><div style="float:left;vertical-align:top:white-space:nowrap;margin-right:1em">
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| − | * [[幸田露伴]]
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| − | * [[斎藤緑雨]]
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| − | * [[高木兼寛]]
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| − | * [[田村怡与造]]
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| − | * [[夏目漱石]]：親交が少なからずあり、また文人として対比されることもある。
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| − | * [[樋口一葉]]
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| − | * [[平塚らいてう]]
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| − | </div><div style="float:left;vertical-align:top:white-space:nowrap;margin-right:1em">
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| − | * [[平出修]]
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| − | * [[藤田嗣治]]
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| − | * [[正岡子規]]
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| − | * [[与謝野晶子]]
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| − | * [[与謝野鉄幹]]
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| − | * [[依田學海]]
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| − | * [[柳田國男]]
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| − | </div><div style="float:left;vertical-align:top:white-space:nowrap;margin-right:1em">
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| − | * [[交響曲]]（訳語）
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| − | * [[戦争論#日本での成立|戦争論]]
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| − | * [[美学#日本の美学|美学]]
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| − | * [[飛行機]]（訳語）
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| − | * [[エルヴィン・フォン・ベルツ]]
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| − | </div>{{clear|left}}
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| − | * [[ORGAI]] - 日本語[[ワードプロセッサー]][[ソフトウェア]]。名前は鷗外から取った。
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| − | == 外部リンク ==
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| − | {{Wikisource|Category:森鴎外|森鴎外}}
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| − | {{Wikiquote|森鴎外}}
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| − | {{Commons&cat|Mori_Ogai|Mori_Ōgai}}
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| − | * {{青空文庫著作者|129}}
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| − | * [http://moriogai-kinenkan.jp/ 文京区立鴎外記念館]（[[文京区]]）
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| − | * [http://rarebook.dl.itc.u-tokyo.ac.jp/ogai/index.html 鴎外文庫書入本画像データベース]（[[東京大学総合図書館]]。鴎外の自筆草稿や書入本を見ることができる）
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| − | * [http://www.horagai.com/www/who/65morio1.htm 森鴎外経歴]
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| − | * [http://www.geocities.jp/sybrma/25moririntarou.yuigon.htm 森鴎外遺言]
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| − | * [http://www.mars.dti.ne.jp/~akaki/ 近代文学研究会：『舞姫』論、鴎外の医学方面での活動]
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| − | * [http://www.pref.shimane.lg.jp/life/bunka/shinkou/internet_kikakuten/bungaku/bungakusha/mori.html 島根ゆかりの文学者 森 鴎外]
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| − | * [http://iaaw.hu-berlin.de/seminar-fuer-ostasien-studien/japan/mori-ogai-gedenkstaette 森{{JIS2004フォント|鷗}}外記念館 ベルリン]（ドイツ語）
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| − | * [http://bunzo.jp/archives/category/080guntai_kakke.html 防衛研究所図書館「軍隊と脚気」]
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| − | * [http://blog.hix05.com/blog/2008/04/post-578.html 壺齋閑話「森鴎外晩年の歴史小説」]
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| − | * [{{NDLDC|1087212/30}} ニコニコ写真帳 第一集] 軍服姿の森鴎外（国立国会図書館近代デジタルライブラリー）
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| − | * {{Internet Archive author |sname=Mori Ōgai|name=Mori Ōgai}}
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| − | * {{Librivox author |id=3099}}
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| − | {{-}}
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| − | {{Start box}}
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| − | {{S-off}}
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| − | {{Succession box
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| − | |title = {{Flagicon|JPN}} [[日本芸術院#歴代院長|帝国美術院長]]
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| − | |years = 1919年 - 1922年
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| − | |before = ''（新設）''
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| − | |after = [[黒田清輝]]
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| − | }}
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| − | {{Succession box
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| − | |title = {{Flagicon|JPN}} [[帝室博物館]]総長
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| − | |years = 1917年 - 1922年
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| − | |before = [[股野琢]]
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| − | |after = {{small|総長心得}}<br />[[神谷初之助]]
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| − | }}
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| − | {{Succession box
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| − | |title = [[図書寮|図書]]頭
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| − | |years = 1917年 - 1922年
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| − | |before = [[山口鋭之助]]
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| − | |after = [[五味均平]]
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| − | }}
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| − | {{S-mil}}
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| − | {{Succession box
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| − | |title = [[陸軍省#医務局|陸軍医務局長]]
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| − | |years = 第7代：1907年11月13日 - 1916年4月13日
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| − | |before = [[小池正直]]
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| − | |after = [[鶴田禎次郎]]
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| − | }}
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| − | {{End box}}
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| − | {{森鴎外}}
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| − | {{Normdaten}}
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| | + | 小説家，軍医。本名，林太郎。 1881年東京大学医学部卒業。軍医となり，軍医総監医務局長に進んだ (1916辞任) 。 84～88年ドイツに留学，M.[[ペッテンコーファー]]らについて衛生学を学んだが，K.[[ハルトマン]]の美学に傾倒。帰国後ハルトマンの『審美論』を紹介 (1892～93) するかたわら，共訳詩集『[[於母影]] (おもかげ) 』，著訳集『[[水沫 (みなわ) 集]]』，小説『[[舞姫]]』や『うたかたの記』 (90) ，翻訳『[[即興詩人]]』，文芸誌『[[しがらみ草紙]]』『[[めさまし草]]』などにより浪漫主義，理想主義の確立に貢献した。日露戦争前後の沈黙を経て，小説『ヰタ・セクスアリス』 (1909) ，『青年』 (10～11) ，『[[雁]] (がん) 』などを発表，夏目漱石と並ぶ反自然主義の巨匠と目された。大正期には『[[阿部一族]]』や『山椒大夫』 (15) ，『高瀬舟』 (16) などの歴史小説に新しい分野を開き，『渋江抽斎』 (16) ほかの史伝でその頂点をきわめた。 |
| | + | |
| | + | {{テンプレート:20180815sk}} |
| | {{DEFAULTSORT:もり おうかい}} | | {{DEFAULTSORT:もり おうかい}} |
| | [[Category:森鴎外|*]] | | [[Category:森鴎外|*]] |
