抜毛症

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抜毛症(ばつもうしょう、Trichotillomania、トリコチロマニア)とは、正常な毛を引き抜いてしまう性癖によって脱毛斑が出現する精神障害。抜毛癖(ばつもうへき)[1]とも呼ばれ、また主に頭髪を引き抜く症例が目立つことから禿頭病(とくとうびょう)とも呼ばれる。DSM-IVICD-10では、衝動制御の障害に含まれる。本人が全く自覚せずに、無意識のうちに抜いている場合もある[2][1]。人によっては症状が5、6年経っても治らない人もいる。

定義

精神医学的障害の一種である。

頻度

一説によると人口の0.5〜2%が抜毛症だとされる。しかし、医者の考えや判断によってこの割合はかなり変化するため、あまり正確な情報ではない。小学生から思春期の女子に多いが[2]、成人も発症する[1]。頻度としては円形脱毛症の10〜20%であるが、抜毛行為自体は学童期の癖としてはかなり多い。また、家庭や学校での人間関係で悩んでいる場合が多い。知能低下はないことが多い。大人しい内向的性格に多いとされる。

原因

様々な要素が複合して起こるものとされ、明確な一つの原因はない。かつては、ストレス不安が主な原因であると考えられていた。しかし、最近では抜毛症は神経細胞と脳のコミュニケーションの一部に支障があるために起こるという説も有力である。ただ、現段階ではいずれの説も推測の域を越えてはいない。

症状

脱毛斑は手の届きやすい前頭部に多い。前の方が利き腕側に偏って脱毛し、直線上の脱毛斑になる。毛の太さも正常で抜けやすさはない。毛を食べてしまう食毛症を合併している場合がある。 また、頭髪のみならず、眉毛まつげなどの体毛を抜くこともある[1]。脱毛に因る地肌の傷が出来た際、かさぶたを無理にはがして食べることや、爪噛みをして爪を食べることも、広義においては認められる。

治療

よく患児の悩みを聞くとともに、毛を抜くことを怒ったりせず家族や周囲の人々が温かく接することが大事である。症状が強い場合、精神科などでの治療も必要である[1]認知行動療法薬物療法が有効であることを示す事例もある[3]

また、先述のようにストレスや不安が原因である場合の治療については、「ストレス管理」「ストレス#対処」や「全般性不安障害#治療」も参照。

サプリメント

N-アセチルシステイン投与で一部に改善が見られたとの報告がある。[4]

脚注

  1. 1.0 1.1 1.2 1.3 1.4 嵯峨賢次 『家庭医学大全科-ビッグ・ドクター-最新版』「抜毛癖」 法研、2004年。
  2. 2.0 2.1 小林太刀夫監修 『最新家庭の医学』 第12次改訂版、時事通信社、2001年。
  3. 小野 真吾・天保 英明・栗林 理人・兼子 直 (2001).抜毛症を伴った神経性食欲不振症の1女性例.心身医学,41,475.
  4. Grant, J. E.; Odlaug, B. L.; Won Kim, S. (2009). “N-Acetylcysteine, a Glutamate Modulator, in the Treatment of Trichotillomania: A Double-blind, Placebo-Controlled Study”. Archives of General Psychiatry 66 (7): 756–63. doi:10.1001/archgenpsychiatry.2009.60. PMID 19581567. 

関連項目