年度

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年度(ねんど、: year)とは、暦年とは別に、特定の目的のために規定された1間の区切り方[1]

概説

会計など事務作業を目的としたものが中心で、またその多くは政府機関や業界団体等により決定されている。

例えば会計の年度を会計年度と言う。また学校の年度は学校年度と言い、砂糖の収穫の統計に関わる年度は砂糖年度と言う、といった方法で命名されている。

語法

年度の中には、通常の暦年の上での)と開始点・終了点が一致するものもある[注 1]  日本では多くの場合、グレゴリオ暦1月1日以外を開始点とするものが狭義の「年度」とされ、暦年と区別する意味で「年度」と呼んでいる。ただし、暦策定の目的ではない特定の目的で計算などをするために「1年」を定める必要がありそのための開始日を任意に定めており、たまたま1月1月でも良いのでそうしている場合も「年度」と呼ぶ。 また、単に「○○年の」という意味で「○○年度」という表現が誤って使われている場合もある。

英語では「年度」を総称する表現はなく、「分野+year」と表す。たとえば、「会計年度」は「fiscal year」、「学校年度」は「academic year」である。日本の英文書類などでは「Japan fiscal year」を略してJFYと書かれることがある。

現在の年度は「今年度」、ひとつ前の年度は「昨年度」「前年度」、ひとつ先の年度は「来年度」「次年度」などと呼ぶ。同様に新しい年度は「新年度」である。また、ある年度の開始を「年度始め」(the beginning of the xxxx year)、終わりを「年度末」(the end of the xxxx year)と呼ぶ。

年度の期間

ある日付が何年度かは、年度の種類ごとに差異がある。これは、年度の種類ごとに年度初めが異なる事と、その年数で呼ばれる年度の開始がその暦年(当年)の場合と前年の場合とがある事による。当年に始まる年度の開始より前の日付であれば暦年-1、前年に始まる年度の開始以降の日付なら暦年+1、それら以外であれば暦年と同じ、と、年度の表記は都合3種類あり得る。例えば、2001年7月は、2000いも年度、2001会計年度、2002羊毛年度である。詳細は年度の一覧の項の、「日本の年度」の表を参照。

通常は、当年に年度が始まる。前年に始まる年度は、年度が暦年の後半に始まる場合に多い。ただし例外もあり、この条件で判定はできない。例えば、同じ10月始まりの年度でも、前年10月に始まる農薬年度と当年10月に始まる大豆年度とでは、同じ「2001年度」でも1年ずれている。言い換えると、2002農薬年度と2001大豆年度は同じ期間である。

通常、年度は1年間続き、年度が終了した瞬間に翌年度が始まる。しかし、年度が1年を待たず終了し、次の年度が始まるまで、いずれの年度に属さない期間が続くこともある。アメリカなどの学校年度は、9月に始まり、夏休みが始まる直前の5月半ば[2]~6月[3]ごろに終了する。

年数の表現

YYYY年度

各年度は「平成13年度」「2001年度」などと表現することが多い。つまり通常の暦法による年表記に「度」を付け加えて年度の表記とする。年度途中で改元があった場合の表記であるが、平成元年3月に議決された補正予算は「昭和六十三年度補正予算」とされていたが、昭和元年12月に議決された追加予算は「大正十五昭和元年度」と併記されていた[4]

YYYY/ZZ年度

「2001/02年度」「2001/2002年度」のように、年度が属する2暦年を併記することもある。この表現は、年度が前年に始まるか当年に始まるかを考慮する必要がない。

英語ではこの表現が普通で、「xxxx year 2001/02」のように表す。そのため、アメリカなどの年度を扱うときは日本語でも、「2001/02年度」「2001~02年度」などの表現になる。

様々な年度の一覧(各地域概要)

各例には国名を明示していても、それらの国以外での有無について言及するものではない。

+が付いている年度は同じ年数の暦年に開始し、-が付いている年度は前年に開始する。印のない年度は、不明、あるいは、原則として2暦年を併記する。

会計年度

会計用の年度。


  • ヨーロッパ、中国 - 1月開始(暦年と同じ)。
  • アメリカ(北米) - 10月開始。
  • 日本 - 4月開始+。

各民間企業の会計年度の開始月や決算月は、法人設立時に任意に定めることができる。たとえば10月に始まり9月に終わるとしても良いし、2月に始まり1月に終わるとしてもよい。また、開始月を、所定の手続きにしたがうかたちで変更することもできる。

学校年度

学校における一学年の期間。


  • ヨーロッパ、アメリカ[2]カナダ、中国 - 9月開始。
  • 日本 - 4月開始+。
  • 韓国 - 3月開始

  • 農作物・加工品
    • いも年度 - 日本、9月開始+[5]
    • 生糸年度 - 日本、6月開始+[5]
    • 砂糖年度 - 日本、10月開始+[5]
    • 大豆年度 - 日本、10月開始+[5]
    • でん粉年度 - 日本、10月開始+[5]
    • 穀物年度 - アメリカ、9月開始[6]
    • 小麦年度
      • アメリカ - 6月開始[7]
      • 中国 - 7月開始[8]
    • トウモロコシ年度
      • アメリカ - 9月開始[7]
      • 中国 - 10月開始[8]
    • 米穀年度 - 日本、11月開始-[9][5]
    • コメ年度 - 中国、1月開始[8]
    • 麦年度 - 日本、7月開始+[5]
    • わら工品年度 - 日本、11月開始+[5]
    • 綿花年度 - 日本、8月開始-[5]
    • 羊毛年度 - 日本、7月開始-[5]
    • 醸造年度 - 酒造業界用の年度。日本では国税庁が規定した7月開始のものが使われている[10]
  • 工業製品
    • 農薬年度 - 日本、10月開始-[5]
    • 肥料年度 - 日本、6月開始+(2009年度までは7月開始+)[11]
    • 冷凍年度 - 空調・冷却機器業界用の年度。日本では日本冷凍空調工業会が規定した10月開始のものが使われてきた。冷暖房兼用エアコンの普及により平成15年(2003年)秋をもって廃止となり、以降は4月開始の通常の会計年度が用いられている。

日本の年度

行政の会計年度

日本では明治6年からは、大蔵省の会計年度は7月に始まり翌年の6月末に終わるとしていた[12]。だが明治15年に朝鮮で反乱が起き、(予算作成時には想定していなかった)多額のお金を、急遽、海軍の軍備拡張に使った結果、年度途中でその年度の予算を使い果たしてしまい、実際上は政府の財政は赤字になってしまった[12]。当時の大臣松形は、それをそのまま正直に「赤字です」と国民に明らかにしてしまっては問題が大きいと判断し、大蔵省の役人の「入れ知恵」も用いて、赤字額がおよそ1年の予算(財政)の3ヶ月分にあたったので、翌年度の収入3ヶ月分をあらかじめ繰り入れる計算をして、さも赤字が無いかのように見せるという誤魔化しをした[12]。だが3ヶ月ずらした分、その翌年度も通常に運営しても3ヶ月分が足りず赤字となる、という連鎖が起き、そのまま放置しては半永久的に詐欺的な状況の連鎖が毎年続いてしまうので、やはりその連鎖を解消する必要があると感じた大蔵大臣の松方正義が、その3ヶ月分をチャラにしてしまうために、年度開始月を3ヶ月繰り上げ、4月に年度が始まることにしてしまえば赤字の分がさも無かったかのように誤魔化せる、と判断し、その法案を通した[12]。その結果、日本の行政の会計年度は4月始まりとなった[12]。つまり実は、日本の行政の会計年度が4月始まりになったというのは、もともとは明治時代の大蔵省が赤字を隠蔽するために行ったインチキが(ソフトな表現を選べば「辻褄合わせ」が)主たる原因である[12]。(なお、行政の会計年度の開始月が4月になったのと連動して日本の学校の年度「学校年度」も4月始まりとなった。日本の学校年度の開始月が4月になったのは、会計年度がそう変更されたのが原因である。その結果、(インチキをおこなった大蔵大臣はそこまで考えていなかったであろうが)偶然にも、日本では入学時期に桜が見られることになった、という、良い作用もあった[12])。

現在の日本における具体的な年度の例としては、4月1日から翌年3月31日までを括る「会計年度」や「学校年度」などが一般にも用いられる。本来は、種類を特定して使用するものであるが、国の会計年度や学校年度が4月から3月までであるため、単に年度というと、4月からのものを意味するのが一般的である[13]。この区切りは明治時代から続く。


以下の表に、日本の年度を記す。なお、暦年より上の行は、年度が前年に始まる。

日本の年度
-------- 12月 1月 2月 3月 4月 5月 6月 7月 8月 9月 10月 11月 12月 1月
羊毛年度 B年度 C年度
綿花年度 B年度 C年度
農薬年度 B年度 C年度
米穀年度 B年度 C年度
暦年 A年 B年 C年
会計年度 A年度 B年度
学校年度 A年度 B年度
生糸年度 A年度 B年度
肥料年度 A年度 B年度
麦年度 A年度 B年度
酒造年度 A年度 B年度
いも年度 A年度 B年度
砂糖年度 A年度 B年度
大豆年度 A年度 B年度
でん粉年度 A年度 B年度
わら工品年度 A年度 B年度

脚注

  1. 欧米での行政の会計年度などがそうである。
出典など
  1. 大辞泉「年度」
  2. 2.0 2.1 Academic Year - コトバンク栄陽子留学研究所『留学用語集』より)
  3. academic year - weblio研究社新英和中辞典』より)
  4. 昭和元年12月29日官報第3号
  5. 5.00 5.01 5.02 5.03 5.04 5.05 5.06 5.07 5.08 5.09 5.10 種類別の年度区分 (PDF) やまがたアグリネット(山形県)、2011年6月13日閲覧。
  6. 米国農務省2012/13年度のトウモロコシの生産見通しを据え置く 世界の飼料穀物の需給動向 - 農畜産業振興事業団
  7. 7.0 7.1 国際価格と需給体制の変化 - 伊東正一
  8. 8.0 8.1 8.2 中国の食糧需給問題 農林水産省
  9. ミニマム・アクセス米に関する報告書 p.17(注1) 農林水産省
  10. [1]
  11. 業界展望 - 10大ニュース”. 全国肥料商連合会. . 2013閲覧.
  12. 12.0 12.1 12.2 12.3 12.4 12.5 12.6 NHK『チコちゃんに叱られる!』2018年4月27日放送。
  13. 国の法律でもこの用例は多い。例えば、国と地方の協議の場に関する法律第4条第1項。

外部リンク