履歴書

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履歴書(りれきしょ)とは、学業や職業の経歴など人物の状況を記した書類のことで、就職転職時に選考用の資料として用いられる。また、学歴や職歴によって給与や資格などを決定する手続き(査定)において、それを証明する各種の書類とともに提出する。履歴書は、法律で書式を定められているわけではないため、基本的に自由形式である。

なお、アメリカ合衆国およびカナダ英語圏地域にて用いられるレジュメRésumé日本では英文履歴書とも呼ばれる)は、日本でいう「職務経歴書」に近いものである。

芸能人では『芸歴書』と称するところもある。

日本の履歴書

日本では日本工業規格JIS Z 8303「帳票の設計基準」の附属書A)の規格に従った履歴書用紙が市販品として流通している。JISはあくまで「製品仕様の工業規格」であって、個人に使用を義務づける法令は存在しない。JIS規格の他に、一般用・転職用・パート/アルバイト用などの様々な様式がある[1]

通例、履歴書を作成する時は、市販の履歴書用紙に必要事項を記入し、上半身を写した証明写真(縦4センチ・横3センチが一般的)を貼付することが多い。用紙サイズはB4タイプ(二つ折りにしてB5サイズ)が主流だが、A4タイプのものもある。最近では、履歴書は市販のものだけでなく、ウェブサイト上からダウンロードしたものや、Microsoft WordPDFなどのファイルフォーマットを指定する企業も増えている。

選考で不採用となった場合、不採用を伝える旨の書面と共に、履歴書を志望者に返却する場合はあるものの、法律で義務づける根拠がないため、募集時に「履歴書は返却しない」(廃棄する)旨を提示する事業所も存在するが、記載された個人情報が漏洩し悪用される危険性もあるため、近年では問題視されている。また、選考を辞退した場合も、志望者本人に返却する場合があり、どちらにしても履歴書の返却は、法律で義務付けられていない。

個人情報の保護に関する法律施行後は、履歴書を就業利用以外に利用したり、漏洩した場合安全管理措置義務違反として行政処分の対象となるが、故意に返却しない行為は処分の対象にならない[2]

記載事項

JIS Z 8303の解説に、以下の項目についての様式例が挙げられており、これに従っているものが多い。用途によっては、これ以外の欄(特技趣味など)を設けた様式を使用したり、就職活動では大企業中堅企業エントリーシートと呼ばれる独自の様式を使用する場合があり、印鑑も必要とする場合がある(印鑑は、シヤチハタは不可とする企業も多い)。

最近では、携帯電話電話番号電子メールアドレスを記入することが多く、逆に偽造防止の観点からも、印章は、印影で偽造され、成りすまし銀行預金が引き出される危険性があるため、記入欄から削除された。

  • 氏名、ふりがな
  • 性別
  • 生年月日満年齢
  • 郵便番号、現住所
  • 電話番号固定・携帯電話)
  • 電子メールアドレス(記入欄のない場合もある)
  • 連絡先(現住所以外に連絡を希望する場合のみ記入)
  • 学歴、職歴
  • 資格免許運転免許証など)、検定○級(英検)、TOEIC○点など(資格名以外にも、認定団体の名称を書くことが多い)
  • 賞罰(最近の市販履歴書(JIS規格など)では記入欄を設けていない)
  • 志望の動機
  • 本人の希望(給料、職種、勤務時間、勤務地など)
  • 自己PR
  • 通勤時間
  • 扶養家族(配偶者除く)の人数(最近の市販履歴書には欄を設けていないものもある)
  • 配偶者およびその扶養義務の有無(最近の市販履歴書には欄を設けていないものもある)
  • 本人が未成年の場合は、保護者の氏名、郵便番号、住所、電話番号(最近の市販履歴書には記入欄を設けていないものもある)

誤字・脱字など書き損じた場合は、修正液や訂正印で書き直さずに、再び新しい用紙で書き直す。

市販の履歴書によっては、記入項目に大きく違いがあり、趣味・特技・得意学科・性格・家族欄があるものから、職務経歴書が付属されているものもある。

かつては本籍欄・家族構成欄がある履歴書も多数市販されていたが、部落差別思想・信条の詮索につながるという問題から、現在では設けていない。また、賞罰欄についても、前科照会事件において「前科は本人の同意なくみだりに開示されない」と最高裁判所確定判決が出されたことから、現在では設けていない。

慣習と傾向

履歴書を一律に指定する法律は無いため、求められる書式や作成方法は一定ではない。日本の場合一部の企業公共職業安定所(ハローワーク)などは「手書き」(自筆)で記載するよう指示しているが、パソコンワープロ表計算など)で作成し、印刷したのを持参するか、電子メールに添付し送信するよう求める場合もある(パソコンやプリンターがなく、または電子メールが利用できない場合は、手書きでも構わない)。

求人情報などで履歴書の提出を求める場合、

  • 手書きのみ(パソコンでの作成は不可)
  • 手書き、パソコンでの作成のどちらも可
  • パソコンでの作成のみ(やむを得ない場合は手書きも可)
  • パソコンでの作成のみ(手書きは不可)

のどちらにすればよいかを指定することがほとんどなく、応募者も判断に迷うため、インターネット上でも「パソコン」と「手書き」のどちらが良いかで論争が巻き起こっている[3]。完全な結論には達していないものの、少なくとも現在は手書き→パソコンへの過渡期を迎えており[4]、2005年時点で、パソコンを許容する企業も約95%を占めるようになった[5]

欧米の場合、(日本とは対照的に)手書きの履歴書は、「ビジネス文書として職業意識や技能が欠けている」 (unprofessional) と看做される、「読みにくい」「光学文字認識(OCR)にかけることが出来無い」などの理由により選考から外れるため、企業から別途指定がない限り、必ずパソコンで作成する[6][7]

手書きで履歴書を作成すると、手間と時間はかかるが、パソコンであれば短時間で同じものが何枚も作成(複写)できるうえ、誤字や内容の変更(住所の変更、資格の追加など)も容易に修正できる。つまりパソコンを使った方が、多くの企業に応募ができるため、そういった意味では、パソコンで履歴書を作成したほうが有利と考えられ、さらにパソコンがある程度扱えるという証明にもなるが、前述通り「短時間で大量に作成できる」ことから、およそ半数の採用担当者は手間をかけた「手書きの履歴書の方を評価する」という調査結果もある[8]

また、「手書きの文字には人柄が表れる」という考えの下で、あえて「手書きの履歴書のみ」という条件をつけ、それ以外は採用しないという企業もある[9]

「手書きに手間と時間をかけるのを嫌うことで、応募者が減る」ため、人事側としては手間が省ける。しかしながら、「手書きの履歴書を書いてくる応募者」が「そうでない応募者よりよい」人材ということは一概に言えず、他の部署にとっては、自ら選択肢(応募者)をわざわざ狭めているため、企業全体としては、むしろマイナス要因とも考えられる。

さらに応募者側から見ても、就職活動において良い印象を与えない。また、合否の判定に仕事のスキルとは関係ない「履歴書やエントリーシートを書くのに、手間をかけられるか」という条件がまず挙がるため、企業側が求めている人材として「履歴書を手書きで書く熱意」「手書きで丁寧に書けるか」を重視するが、実際は建前であって、単に人事部の手間を省くための方便だと考えられる場合も多い。

アメリカの履歴書

アメリカ合衆国では、紙の履歴書も極僅かに使われてはいるものの、インターネットの普及以降は「ジョブサイト」や「LinkedIn」で就職情報を交換するため、ファイルフォーマットでの履歴書が合理的かつ一般化している。また応募者の「熱意」や「忠誠心」などの精神的なものより、「即戦力として貢献できるか」を重視する実理的文化風土のため、電子メールに履歴書を添付したり、ファクシミリで送ることも一般的である。

特に、ある程度以上の規模の企業では、実際の募集部署に履歴書が届く前に人事担当者や就職エージェントによる前段階選別(プリスクリーニング)が行われ、ファイルフォーマットの履歴書は、募集職に関連したキーワードをコンピュータ検索[10]するのに適しているので重宝がられる。逆に手書きの履歴書は、書き手によっては読みにくい場合があることと、「パーソナルコンピュータでビジネス文書の作成すらできない」ことの証拠にもなるため、まず使われることはない。

特に定まった書式はなく「自由形式」であるが、典型的には以下のような項目と順序で作成する。

  • 氏名及び連絡先(必ず氏名を書く必要は無く、ニックネームがある場合はここに書く)
  • 目的:求職している地位(管理職、エンジニア、販売員など)
    • 事業分野(建設、小売、医療など)
    • 職務分野(開発、顧客管理、研究など)
  • 自己紹介ハイライト:得意分野、過去の功績、特殊技能など。
  • 資格:政府のセキュリティクリアランス、機械操縦免許、在留資格(査証)など、職務に直接関係する特殊なもののみ。
  • 職歴:最近のものから、逆時系列順に以下の項目(応募職務分野に関係ないものやアルバイト的なものは記載しないこともある)
    • 肩書き(カストマサポートエンジニア、電話オペレータなど)
    • 会社名、事業部門、所属部署、場所(州と市)
    • 期間(年・月ー年・月)
    • 担当職務、成果など(最も重要)
  • 学歴:最終学歴のみ、または大学以上の高等教育機関や職業訓練機関は名称、コース(分野)、期間もしくは卒業・中退・終了時期、取得資格・学位を列挙
  • その他:職歴と学歴に記載できない職務に関連した自己アピール、または勤務地・勤務形態・勤務時間の希望など
  • 照会先:応募者の身分・経歴の問い合わせ先(氏名・連絡先・関係)もしくは「要求に応じる」との一文。近年では省略されることが多い

日本の履歴書を比較すると以下の事柄が特徴的である。

  • 職務に直接関係する本人の情報のみ記載(趣味や家族構成、普通自動車免許などは書かない)
  • 職歴・学歴は最新のものから逆時系列的に列挙
  • 性別・年齢・顔写真生年月日などを要求することは、子役モデルなど、企業側が合理的理由による明確な説明責任が立証出来無い限り、年齢や容姿・人種などによる、違法な人種差別・年齢差別・就職差別に繋がるので、記載は禁止かつ質問も違法である。なので、履歴書には記載・添付せず、入社が正式に決まり、初出社の社員登録時に誕生日を記入する[11]

また、生地、出身、就業可能資格(市民権査証)確認以外の目的での国籍、信仰する宗教宗派家族構成、健康障害者状態などによる就職差別も、同様に違法となるので、会社側は要求できないが、記載することは本人の自由である。

ただし、麻薬覚醒剤などの違法薬物の使用の前歴の審査は厳しく、会社によっては採用決定前に会社の指定する検査機関で、薬物使用の有無を検査することを要求される。同様に、過去に重罪犯歴がないかどうかを専門機関に調査させる会社もあるが、この場合も調査に必要な情報(現在及び過去の氏名と住所、生年月日、社会保障番号など)は会社には渡さず、調査機関のみに開示する。

履歴書のスペースに書ききれない、自己PRおよび「熱意」の表現として、「カバーレター」と呼ばれる、簡潔な手紙を添えることもある。

その他

自伝や歴史などのタイトルとして、『○○の履歴書』などの表現を使うことがある。(例 『巨人、大鵬、卵焼き 私の履歴書』 大鵬幸喜著、『辛抱の履歴書』 水戸泉眞幸著、日本経済新聞リレー連載コラム『私の履歴書』)

脚注

  1. en 転職大辞典トップ, http://www.enjapan.com/tenshoku-daijiten/8126/ . 2015閲覧. 
  2. 履歴書の取り扱いと個人情報トラブル 千葉県消費者センター 個人情報相談窓口
  3. 「転職時の「履歴書」はPCで 「見やすさ」「内容」が重要」、『J-CASTニュース』、2009年8月23日http://www.j-cast.com/2009/08/23047653.html 
  4. Chris Rickborn 「「履歴書」は消えて、採用活動は効率化する(今はまさに時代の転換点)」、『TechCrunch Japan』、2012年4月18日http://jp.techcrunch.com/archives/20120415rip-paper-resumes/ 
  5. 「第1回 履歴書って手書きじゃなきゃダメ?」、『キャリア&転職研究室』 (人材バンクネット)、2005年1月17日http://www.jinzai-bank.net/careerlab/info.cfm/qa/001/ 
  6. Resumes, CVs and Covering Letters in English, EnglishClub, http://www.englishclub.com/business-english/resumes-cv.htm . 2012閲覧. 
  7. “Writing an Effective CV”, DRILL Career Guide, Drill Business Services, http://www.drill.cz/en/for-candidates/drill-career-guide/writing-an-effective-cv/ . 2012閲覧. 
  8. ライフネット生命保険調べ、1000人回答:「『パソコン作成よりも手書きを評価する』との回答は全体の51・1%と過半数に達し、『どちらとも言えない』が30・0%。」 『履歴書は手書きが好印象 採用担当者アンケート』 共同通信、2011年11月19日http://www.47news.jp/CN/201111/CN2011111901000350.html 
  9. 「「手書きの履歴書」就職に有利は本当か」、『J-CAST会社ウォッチ』、2010年2月24日http://www.j-cast.com/kaisha/s/2010/02/24060849.html?p=all 
  10. Microsoft WordExcelなどのソフトには、印刷前の文書内に含まれる文字列を検索できる機能が備わっているのが多く、キーワードによる検索が容易にできる。
  11. 海外労働情報 アメリカ合衆国”. 独立行政法人 労働政策研究・研修機構. . 2008閲覧.

関連項目

外部リンク