小将棋

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小将棋(しょうしょうぎ)は、将棋の一種であり、2人で行うボードゲーム(盤上遊戯)の一種である。

ルール

小将棋は歴史的背景によって詳しいルールが失われてしまい、文献にしか載っていないものであるため、当時の正式なルールは現存しない。

簡単に言えば、現在よく知られた本将棋醉象を加え、持ち駒再使用ルールを除いたものである。

基本ルール

  • 縦横9マスずつに区切られた将棋盤の上で行う。
  • 自分から見て手前の三段を自陣、反対に相手から見て三段を敵陣という。
  • 競技者双方が交互に、盤上にある自分のを1回ずつ動かす(本将棋とは違い持ち駒という概念はない)。
  • 駒は、玉将(玉)または王将(王)・醉象(象)・飛車(飛)・角行(角)・金将(金)・銀将(銀)・桂馬(桂)・香車(香)・歩兵(歩)の10種類あり、それぞれ動きが決まっている。
  • 開始時には、右図のように双方の駒を並べる。
  • 玉将または王将、金将以外は以下の方法により「成る」ことができる。
    • 敵陣の外側にある駒を敵陣内へ移動させたとき。
    • 歩兵、香車の場合は一番奥の段にたどり着いたとき。
  • 自分の駒を動かすときに動く先に相手の駒があるとき、その駒を取ることができる。
  • 本将棋とは違い、相手の駒を取っても自分の持ち駒にすることはできない

駒の動き

  • ○はその位置に動ける。
  • \│/─はその線上を他の駒に突き当たらない限りどこまでも動ける。
  • ☆はその場所まで飛び越えて動ける。
元の駒 動き 成駒 動き
玉将(ぎょくしょう)

王将(おうしょう)

全方向に1マス動ける。

取られると負け[1]

- - -
醉象(すいぞう)
 
真後ろ以外の方向に1マス動ける。 太子(たいし)
玉将と同一[1]
飛車(ひしゃ)
   
   
縦横に何マスでも動ける。

飛び越えては行けない。

龍王(りゅうおう)
飛車の動きに斜めに1升の動きを足したもの。
角行(かくぎょう)
 
   
 
斜めに何マスでも動ける。

飛び越えては行けない。

龍馬(りゅうめ[2]
角の動きに縦横に1升の動きを足したもの。
金将(きんしょう)
   
縦横と斜め前に1マス動ける。 - - -
銀将(ぎんしょう)
   
 
前と斜めに1マス動ける。 成銀(なりぎん)
   
金と同じ。
桂馬(けいま)
 
     
   
前へ2、横へ1の位置に移動できる。

その際、駒を飛び越えることができる。

成桂(なりけい)
   
金と同じ。
香車(きょうしゃ)
   
     
前方に何マスでも動ける。

飛び越えては行けない。

成香(なりきょう)
   
金と同じ。
歩兵(ふひょう)
   
     
前方に1マス動ける。 と金(ときん)
   
金と同じ。

上の表では便宜的に成銀を「全」、成桂を「圭」、成香を「杏」と表示している。

初期配置

  • 開始時には駒を次のように並べる。

盤面を図として表示する場合、下側が先手、上側が後手となる。先手から見て、将棋盤の右上のマスを基点とし、横方向に1、2、3、…、9、、縦方向に一、二、三、…、九とマスの位置を表する座標を決められている。棋譜はこの数字を用いて表現する。

勝敗の決め方

  • 相手の玉将(王将)を追い詰めて王手の回避ができない状態(詰み)にした場合、勝ちとなる。
  • 双方が駒を消耗し合い駒枯れになった場合、玉将2枚と成金1枚だけがあったときは成金のある側が勝ちとなる。つまり、玉将以外の駒を持っていた方が勝ちとなる。
    • 駒枯れになっても相手の玉将を詰ますことができない場合、合意によって引き分けとなる。(持将棋という)。例えば、玉将だけになった場合は合意によって引き分けとなる。
  • 太子がいる場合、太子と玉将の両方を取らないと勝ちにならない。

反則

  • 同一局面が数回発生した場合(千日手)、最後の局面となる手を戻し別の手にすること。
  • 連続して王手をし千日手の場合、王手を仕掛けた方が別の手にすること。
  • 1回持ち上げた駒はかならず動かさなくてはならない。
    • ただし、どうあがいても動かすことのできない駒の場合、無効となる。

※千日手についての詳細なルールが失われているため、何回で千日手が成立するかは不明である。 現在の本将棋のルールから考えれば同一局面4回発生であり、 過去のルールで考えれば同一手順3巡である また攻めているほうが打開責務の可能性もありうる。

歴史

小将棋は現在の本将棋の元となったものである。小将棋というのは時代背景によって大きく2つの種類がある。平安時代頃に将棋が大陸から渡来してきて、日本人に使用されていた頃のもの(通称:平安小将棋)と、その後の時代(室町時代頃)に遊ばれたものがある。この記事に掲載しているものは後者のものであり、前者のものは平安小将棋に分割しておく。

平安小将棋…小将棋(大将棋などの要素を吸収)→本将棋(駒の再利用と醉象の削除)

小将棋が競技されなくなった理由として、『諸象戯図式』には2つの複合的な理由が掲載されている。

  • 戦国時代頃には既に先手必勝・後手必勝となる定跡が完成されていたこと。
  • それにより、後奈良天皇天文年間に醉象の駒の取り除きを命じたこと。

しかしこの理由には確かな信憑性が欠けており、またいつ頃駒の再利用が付け加えられたのかなど、不明な部分が多い。

朝倉象棋

朝倉象棋(あさくらしょうぎ)は、将棋の変形ルールのひとつである。朝倉氏の根拠であった福井市に伝わり、廃れていたが後述の発掘以降現在でもイベントとして対局が行われている。

1973年一乗谷朝倉氏遺跡から発掘された174枚の将棋のから醉象が1枚だけ含まれており、当時は醉象を含んだ将棋が指されていたとされている[3]。このことから、福井で朝倉象棋が指されるようになった。

駒の初期配置は小将棋と同じで、醉象・太子のルールについても小将棋と同じである。取った駒は玉将と醉象(太子)を除いて、持ち駒として再利用できることが、小将棋との違いとなる。

小象棋(醉象・猛豹のある小将棋)

  • 本将棋醉象1枚(先後手で2枚)のほか猛豹2枚(先後手で4枚)を加えたもの。したがって駒数は計46枚。
  • 江戸時代には、駒の配置に2通り(猛豹の位置が「銀将」の上とされる[4] が、「金将」の上という異説あり)[5] の図面(及び並べ方を覚える為の詩歌[6]) が現存し、持ち駒の再使用の可否が不明[7]
  • 成りは敵陣三段目以内。不成の選択も可だが、「行き処のない歩香桂」の扱いについては記載が無い。
  • 「猛豹」の成駒は「角行」、「醉象」が「太子」だが、「金将」は不成か「飛車」[8]に成るか書かれた文献(及び小象棋「金将」駒の出土・発掘による現物確認)がない。
  • 上記理由により、現在は中将棋[9] ・朝倉将棋のように指せる競技者が不在となっている[10]

脚注

  1. 1.0 1.1 醉象が太子に成ると、玉将(王将)と同じ働きを持つ。玉将(王将)が取られても太子が存在する場合、太子が取られるまでは試合を続行する。
  2. 「りゅうま」とも言う。
  3. 参考資料として、増川宏一『将棋の駒はなぜ40枚か』(集英社、ISBN 4-08-720019-1)の65ページ以降「四二枚型と四〇枚型」をあげておく。醉象以外の中将棋の駒は発掘されておらず、行われていたのが小将棋であったことが強く示唆されている。
  4. 山本亨介『将棋庶民史』(朝日新聞社 1972年)
  5. 西澤太兵衛貞仁『諸象棋図巧(諸象戯図式)』(1696年)元禄六年)
  6. 「両営玉王之上醉象在。左右金将之首猛豹有。」(伊藤看壽『将棋図式(象戯図式)』(1755年)宝暦五年)
  7. 木村義徳『持駒使用の謎 日本将棋の起源』(日本将棋連盟 2001年)
  8. 中将棋(中象棋)では「金将」は成ると「飛車」。さらに大型の将棋では「奔金」。
  9. 中将棋は故・大山康晴が指し、現役でも神崎健二安用寺孝功が、教室やブログ、テレビ・ニコ生などで言及する場合がある。
  10. 増川宏一 「ものと人間の文化史 (23‐1) 将棋 (1)」 (法政大学出版局 、1977/11)

関連項目