将棋の戦法一覧

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将棋の戦法一覧(しょうぎのせんぽういちらん)は、著名な将棋の戦法(囲いを含む)の一覧である。

戦法の分類

戦法と戦型

将棋戦法とは、効果的な攻め・守りの手順や陣形のことである。狭義には攻めの戦法だけを指し、守りの戦法は囲いと呼ばれて区別される。ただし、守りを主眼に置いた駒組の場合には、守りの戦法も狭義の戦法となる[1]

将棋には様々な戦法があるが、ある場面で効果的な戦法が別の場面でも効果的であるとは限らない。そこで、現在では、両陣を含む盤面全体における最序盤の局面の進行をいくつかの型(戦型)に大別した上で、戦型ごとに効果的な戦法を分類するのが一般的である[2]。ここでは、戦法の一覧を見る上で不可欠な戦法分類の理解を助けるために、まずは代表的戦型について説明する。なお、どの戦型で対局が行われるのかは攻め・守りの基本方針に関わるから、自ら主導して戦型を選択した側の対局者[3]にとっては、戦型自体が戦法の一つでもある。

まず、戦法は、最強の駒である飛車の使い方によって居飛車振り飛車に大別される。居飛車は飛車を初期位置である右翼に居たまま使う戦法であり、振り飛車は飛車を左翼に振って(移動して)使う戦法である。なお、飛車の初期位置は厳密には右翼のうち右から2番目の筋(先手ならば2筋、後手ならば8筋)であるが、右から3番目や4番目の筋も右翼であることは異ならないから、これらの筋で飛車を使う戦法も居飛車に含まれる[4]。飛車を中央である5筋で使うものについては、通常玉将を右翼に囲う点など、他の振り飛車との共通点が多いため、一般的に振り飛車に分類されるが、他の居飛車との共通点が多い戦法は居飛車に分類されることもある[5]

互いに居飛車と振り飛車のどちらを採るかという基準により、戦型は3つに大別できることになる。すなわち、双方が居飛車の相居飛車、一方が居飛車で他方が振り飛車の対抗型、双方が振り飛車の相振り飛車である。

相居飛車

相居飛車は、互いに飛車を右翼から動かさずに同じ形で駒組が始まるので、相手に出遅れるとたちまち不利に陥りやすい。例えば、相手が飛車先の歩兵を進めてきたとき、放っておくと相手だけが飛車先の歩交換を実現して自分が不利になってしまうことが多い。したがって、相手の歩交換を阻止するために銀将や角行で受けるか(この場合は後ほど自分が飛車先の歩兵を進めていけば相手も同じように受けることが想定される)、あるいは自分も歩交換できるようにすぐに飛車先の歩を進めて行くかという2つの選択肢が有力となる。

このように、相居飛車は双方が駆け引きをしながら相手の駒組に歩調を合わせて自分の駒組をすることになり、必然的に両者の駒組は似通ったものとなる。その結果、相居飛車の最序盤で先手・後手が初手から互いに損のない手を指していくと、大半が以下の相居飛車四大戦型のいずれか、あるいはそのバリエーションと言える形になる。なお、いずれにも分類できない戦型は相居飛車力戦と呼ばれる。

相居飛車四大戦型
戦型名 矢倉戦 角換わり 相掛かり 横歩取り
飛車先 銀将で受けて矢倉囲いを目指す[6] 銀将(角交換前は角行)で受ける 受けずに相互に歩交換を仕掛ける 受けずに相互に歩交換をする
角道 開けたらすぐ銀将などで閉じる[7] 開けて角交換をする しばらく開けない[8] 開けて歩兵を横の飛車で取らせる
最序盤の例

これらの戦型ごとに様々な戦法が開発されている。相居飛車の戦法には、その戦型ならば先手でも後手でも採用可能なものもあれば、先手のみあるいは後手のみの戦法もある[9]

矢倉戦や角換わりでは、銀将金将を縦に並べて相手の飛車先をしっかり受け止める矢倉囲い系統の囲い[10]を左翼に構築し、ここに玉将を囲うことが多い[11]。一方、相掛かりや横歩取りでは、飛車先を受けないために急に戦いが始まることに加えて、飛車先交換を終えて自由になった相手の飛車が縦横無尽に走って様々な場所から攻撃を仕掛けてくるため、玉将を中央付近に置いたまま自陣全体を素早く守れる中住まい系統の囲いが使用されることが多い。

対抗型

対抗型では、角行と飛車の位置関係を見れば明らかなように、当初から居飛車側と振り飛車側で全く異なる非対称な形で駒組が始まる。そのため、相居飛車と比べるとある程度相手の駒組から独立して自分の駒組を進めることができ、居飛車側・振り飛車側の双方で様々な戦法が使用できる。

対抗型は、まず振り飛車側がどの筋に飛車を振っているかによって以下のように分類される。なお、飛車を一番左の筋(先手ならば9筋、後手ならば1筋)に振った場合も名目上は振り飛車になるが、特に確立した戦法はない。

対抗型四大戦型
戦型名 中飛車戦 四間飛車戦 三間飛車戦 向かい飛車戦
飛車を振る筋 左から5番目(5筋) 左から4番目(先手6筋・後手4筋) 左から3番目(先手7筋・後手3筋) 左から2番目(先手8筋・後手2筋)
最序盤の例

なお、ここでは説明を平易にするために先手居飛車・後手振り飛車の対抗型に統一して図解しているが、実際には先手振り飛車・後手居飛車の対抗型もある。

振り飛車側は、これらの飛車を振る筋に応じて様々な戦法がある。特に、どの筋に飛車を振る場合でも、角交換を防ぐために角道を閉じて駒組をするノーマル系振り飛車と、必要なときに角交換できるように角道を開けたままにして(あるいは実際に角交換を行ってから)駒組をする角交換系振り飛車のうち、どちらにするかを選択することができる。なお、上図では戦型について理解しやすいようにノーマル系を記載した(角交換系については個々の戦法の記事を参照)。

これに対して、居飛車側としては、簡易な囲いのままですぐに攻め込む急戦か、振り飛車側と同等あるいはそれ以上に固い囲いを築いてから攻め込む持久戦かを選択できる。急戦については、振り飛車側の飛車を振る筋に応じて様々な戦法がある。持久戦の場合はどのように攻めるかではなくどのように固く玉将を囲うかに主眼が置かれることになるので、守りの戦法たる囲いの名前がそのまま狭義の戦法の名前となる。

囲いについては、居飛車側も振り飛車側も飛車と反対側(居飛車は左翼、振り飛車は右翼)に玉将を移動し、相手の飛車が横から攻めてくるため、横からの攻めに強い形の囲いを構築するのが一般的である。居飛車側の囲いは、急戦ならば固くはないが短手数で囲える舟囲い系統の囲い、持久戦ならば手数はかかるが固い居飛車穴熊系統の囲いが選択されることが多い。振り飛車側の囲いは、短手数で囲えて固い美濃囲い系統の囲いが主に使われる。この他、居飛車側が美濃囲いを構築する左美濃や振り飛車側が穴熊囲いを構築する振り飛車穴熊などもある。

相振り飛車

互いに飛車を振る相振り飛車については、従来は振り飛車党同士の対戦で互いに譲らなかった場合などに出現する限定的な戦型とされていた。しかし、近年では相手の出方に応じて相振り飛車にする作戦が試されるようになり、居飛車党の棋士もしばしば指すようになった。とは言え、相居飛車や対抗型と比べて実戦例が少ないのは事実であり、相居飛車や対抗型ほど細かく戦法が整備されているわけではない。

相振り飛車は互いにどの筋に飛車を振るかによってある程度の分類がなされる。最も実戦例が多いのは後手の三間飛車に対して先手が向かい飛車に振るものである。この他、近年では相三間飛車など様々な形が試されるようになっている。

相振り飛車戦型
戦型名 相振り飛車
最序盤の例

囲いは自分の飛車と反対側の右翼に玉将を移動した上で、相手の飛車が上から攻めてくるため、上からの攻撃に強い金無双・右矢倉系統の囲いを使用することがある。この他、美濃囲い系統や振り飛車穴熊系統などの対抗型振り飛車で使われる囲いも頻繁に使われる。

その他

通常の戦型の分類に当てはまらない進行を見せる将棋は、力戦型と呼ばれる。力戦型では近い戦型の戦法を応用して使うこともあれば、独自に工夫して攻め方・守り方を構想する場合もある。

相手に正しく対応された場合には自分が不利になってしまうことが明らかになっている戦法を奇襲戦法(またはハメ手、B級戦法など)と言う。奇襲戦法の多くは、初見の相手を惑わせて罠に嵌める目的で使われる。なお、現在奇襲戦法扱いされている戦法の中には、元々正統な戦法だったものの完全な対策が確立されて奇襲でしか成立しなくなったものもあり、奇襲戦法に分類されるか否かは程度の問題である。

駒落ち将棋では、平手では通用しない駒落ち専用の戦法が存在する。

この他に、戦法として成立していないがやってしまいがちな手を冗談として戦法扱いすることがある。

相居飛車の戦法

  • 矢倉・角換わりの囲い
    • 矢倉囲い系統:金矢倉、銀矢倉、総矢倉、片矢倉(天野矢倉・半矢倉)、へこみ矢倉、菱矢倉、流れ矢倉、菊水矢倉(しゃがみ矢倉)、富士見矢倉、土居矢倉、高矢倉、角矢倉、矢倉穴熊、カブト囲い
    • その他:雁木囲い右玉カニ囲い

対抗型居飛車の戦法

  • 対向かい飛車急戦
    • 棒銀、4六銀(左銀)戦法
  • 対振り飛車急戦の囲い
    • 舟囲い系統:舟囲い(7九銀型・6八銀型・5七銀左型)、箱入り娘、セメント囲い、二枚囲い

対抗型振り飛車の戦法

  • 対抗型振り飛車の囲い

相振り飛車の戦法

  • 相振り飛車
    • 中飛車:中飛車左穴熊
    • 四間飛車
    • 三間飛車
    • 向かい飛車
  • 相振り飛車の囲い
    • 金無双系統:金無双、右矢倉
    • その他:左玉、対抗型振り飛車の囲い(美濃囲い、振り飛車穴熊)も使われる

その他の戦法

  • 駒落ちの戦法・囲い

棋士の得意戦法・戦法の歴史など

居飛車

居飛車党の棋士

振り飛車

振り飛車党の棋士

  • 大野源一 - 「振り飛車名人」の異名を持つ。三間飛車での捌きを得意とした。久保利明に大きな影響を与えた。
  • 松田茂役 - ツノ銀中飛車からの力戦を得意とし、「ムチャ茂」の異名をとった。大野と並ぶ現代振り飛車の祖。
  • 大山康晴 - 元々は正統派の居飛車党であったが突如として振り飛車党に転向した。相振り飛車は極端に嫌っており、相手が飛車を振った時は必ず居飛車で対抗しているため、対抗型党ともいえるであろう。四間飛車隆盛のもとを築いた。
  • 大内延介 - 振り飛車穴熊を得意とする。
  • 森安秀光 - 「だるま流」と称される粘り強い指し回しは、後進の棋士に強い影響を与えた。
  • 小林健二 - 「スーパー四間飛車」の著者。
  • 中田功 - 三間飛車における中田功XPの創始者。その棋風はコーヤン流と称されトッププロにも高評価を受けている。
  • 杉本昌隆 - 四間飛車を得意とする。「相振り革命」シリーズの著者でもある。
  • 藤井猛 - 振り飛車に革命を起こした藤井システムの創始者。四間飛車を得意とする。対抗型における居飛車も高勝率を誇る。序盤研究は緻密かつ独創的で、棋界一とも言われている。大駒を切って駒損を恐れず豪快に攻め込む棋風は、「ガジガジ流」と称される。
  • 久保利明 - 元は57銀型のノーマル三間飛車を好んで指していた。現在は石田流ゴキゲン中飛車を得意とする。駒の捌きを重視する気風から「捌きのアーティスト」と称される。
  • 鈴木大介 - 豪快にして繊細な棋風で力戦をいとわない。角交換振り飛車を得意とする。
  • 近藤正和 - ゴキゲン中飛車の創始者。受けが常識である中飛車に革命を起こす。
  • 窪田義行 - 窪田流とも言うべき独特の力強い棋風。
  • 佐々木慎 - あらゆる振り飛車を指しこなす、振り飛車のオールラウンダー。手厚い受けが得意で着実な棋風でありつつ、独特でユニークな理論にも定評がある。久保利明は同じ振り飛車党で期待している後輩に佐々木慎の名を挙げている。
  • 里見香奈 - 力戦中飛車、ゴキゲン中飛車などを得意とする。

(特に藤井猛、久保利明、鈴木大介の3人は「振り飛車御三家」と呼ばれる。)

振り飛車の歴史

振り飛車がいつごろ考案されたのかについては分かっていない。しかし、江戸時代初期の最古の棋譜にも採用されていることから、その当時はすでに考案されて知られていたことが明らかであり、長い歴史を持つ。しかし、江戸中期以降は平手で指すのは損な戦法と考えられており、もっぱら駒落ち(左香落ち)で弱点となる左辺を守るための戦法として使われていた。

昭和になって振り飛車を復活させたのが大野源一である。大野は独自の研究により、振り飛車が平手でも通用することを明らかにした。さらに大野の弟弟子の升田幸三大山康晴両巨頭らがこれを流行させ、振り飛車は再びプロの戦法として認識されるに至った。特に、升田は、升田式石田流を考案し、後に流行する角交換も辞さない攻撃的振り飛車の魁となった。

振り飛車が一躍脚光を浴びたのは、左辺に飛角を集めることで右辺で自玉を効率的に守れる(短手数で固い美濃囲いが構築できる)こと、角筋で敵玉方向を睨んでいるので居飛車側が簡単に固い囲いを構築できないこと、互いの玉が互いの飛車から遠い側に囲われるので相居飛車とは異なり一度の攻めで勝負が付くことはないことなどのメリットがあるためである。これらのメリットゆえに、振り飛車側は、相手に攻めさせて、その反動で駒を捌いていけば(「捌く」とは、駒をよく働かせることを指す将棋の専門用語である。盤上の駒を持ち駒にすることによって働きが増すと考えられる場合は、駒を交換することもまた「捌き」の一つである)、最終的に玉の堅さを活かして勝つことができるというものであった。

しかし、その後、居飛車党の田中寅彦によって振り飛車側の美濃囲いよりもさらに固く囲うことを可能にして振り飛車のカウンターを封じる居飛車穴熊戦法が普及し、単純な捌き合いでは勝てないことが増えたことから、振り飛車党の棋士は一時なりを潜めた。故に、これ以降の振り飛車は、前述のような戦い方だけではなく、居飛車穴熊をいかに克服するかをテーマに多様な戦い方をする戦法となっている。

居飛車穴熊対策として注目を集めたのが、藤井猛が考案し、1998年に竜王位を奪取する原動力となった藤井システムである。藤井システムは、居飛車穴熊囲いが組まれる寸前に総攻撃を仕掛けるという攻めの戦法であり、カウンターを狙う受けの戦法と考えられていた振り飛車の概念を覆し、「振り飛車の革命」と呼ばれた。

また、藤井システムと前後して角交換も可能な「攻める中飛車」と呼ばれるゴキゲン中飛車が台頭してからは中飛車も流行するようになり、その流行ぶりは居飛車党が後手番で主導権を握るための戦術として採用するほどである。従来、振り飛車では、角は敵玉を睨むと同時に相手の飛車先を受けるために使っているため、角交換は損とされていた。しかし、居飛車穴熊への対抗策として、駒が偏るので打ち込みの隙が多いという穴熊の弱点をつくために角交換を可能にしたのがゴキゲン中飛車の特徴である。

これ以降、居飛車穴熊対策として、ゴキゲン中飛車はもちろん、升田式石田流を改良した新石田流、角交換四間飛車ダイレクト向かい飛車などの角道を止めない振り飛車、いわゆる角交換系振り飛車が注目され、プロの振り飛車党の間で流行した。

近年では広瀬章人横山泰明戸辺誠など若手の振り飛車党が急増したのに加え、居飛車党である佐藤康光深浦康市が飛車を振るようになるなど振り飛車の勢力が拡大、今や居飛車党をも巻き込みつつある。さらに将棋界の第一人者である羽生善治がタイトル戦という大舞台でも後手番で振り飛車を選択するケースが増えている。一方で若手振り飛車党と目された広瀬、永瀬拓矢菅井竜也が近年は居飛車も指すなど、純粋な振り飛車党は減少傾向にある。

相振り飛車の考え方

振る位置について

振り飛車には、前述の通り中飛車四間飛車三間飛車向かい飛車の4つがあり、したがって相振り飛車の戦型は、相居飛車や居飛車対振り飛車の場合に比べて、多様なものとなる。

中飛車
初期状態に玉将が居る5筋に振るシンプルなコンセプトの戦型。
戦法としては優秀であるが、相振り飛車では分断された戦型に陥りやすいという欠点があるとされる。また、この点を意識して先手の中飛車に対して後手が相振りに持ち込む、という戦型もある。
近年では、相振り中飛車で玉を左側に持っていく「中飛車左穴熊」という指し方もある。
四間飛車
もっとも採用数が多い振り飛車である四間飛車も、相振り飛車でしばしばみられる。
金無双主流時代には、使い勝手の悪さから相振り飛車では少数派であった。
但し、矢倉囲い相手には相性が良いため、囲いを確認の上に振り直す例は少なくない。
三間飛車
後手側での採用例が多い、相振り飛車の代表格戦型の一つ。
金無双主流時代には石田流に組むのが一般的であったが、矢倉囲い相手には相性が悪く、現在は引き飛車が主流となっている。
なお、現在は穴熊囲いとの組み合わせでの後手側の採用例が多い。
向かい飛車
先手側での採用例が多い、相振り飛車の代表格戦型の一つ。
金無双主流時代には浮き飛車に組んでいたが、現在は引き飛車が主流となっている。
バランスが良い戦型の為に、後手側も向かい飛車で挑む例もあるが、矢倉戦法と同じく千日手に陥る危険性が高い欠点を抱えている。
囲いについて

囲いは金無双美濃囲い矢倉囲い穴熊囲い等を用いることが多い。

金無双
以前は相振り飛車の代表的囲いとされてきた囲い。
銀将の位置が「壁銀(先手の場合2八、後手の場合8二と玉の逃げ道を塞ぐ形)」と呼ばれる悪形なので、昨今(2007年現在)は採用例が少なくなっている。
但し、美濃囲いや矢倉囲いは囲いの完成までの手数が掛かるという問題を抱えている上、対後手三間飛車時の三筋対策の銀上がり等の事情もあり、今でも金無双を採用する例が少なくない。
美濃囲い
通常の振り飛車の主流とされる囲い。
四間飛車やヨコからの攻めに強いものの、端や玉頭が弱い。この点はよく金無双と比較される。
また、高美濃囲いや銀冠もしばしば用いられる。
矢倉囲い
昨今は相振り飛車の代表的囲いと呼ばれる囲い。
居飛車の場合とは左右逆の右側に囲うが、美濃囲いと違い同じ名前で呼ぶのが一般的である。
上部に手厚いため、相振り飛車では評価の高い囲いである。ただし、相振り飛車で4筋を突く形はかえって目標となることも多いため、注意が必要とされる。
穴熊囲い
手数が掛かる欠点があるものの、その硬さから昨今は採用例が増えてきた囲い。
主に後手側が三間飛車と組み合わせて使う例が多い。

脚注

  1. 例えば、居飛車穴熊は囲いであるが、狭義の戦法でもある。
  2. なお、棒銀戦法のように様々な戦型で効果を発揮する汎用的な戦法もある。
  3. 対抗型では振り飛車側、相振り飛車では後から振り飛車を明示した側が該当する。相居飛車では両者の盤上の駆け引き・合意によって戦型が決まるため、純粋にどちらか一方の意思とは言えないが、矢倉戦・角換わり(正調角換わり)・相掛かりは先手の主導、角換わり(後手一手損角換わり)・横歩取りは後手の主導で実現することが多いとされている。
  4. なお、右から3番目の筋で飛車を使う戦法は袖飛車、右から4番目の筋で飛車を使う戦法は右四間飛車と呼ばれる。
  5. カニカニ銀中飛車や矢倉中飛車など。
  6. 矢倉戦という名称は元々両対局者が矢倉囲いを完成させて戦っていたことに由来する。しかし、現在では相手の矢倉囲いを阻止するための戦法が進歩した結果、最序盤が従来の矢倉戦と同様の進行(飛車先を受けるために銀将を上がり角道を止める)であっても実際に両者が矢倉囲いを構築しない(できない)ことが多い。このような場合も一般的には矢倉戦の戦型に含める。また、矢倉囲いは矢倉戦に限って現れるということもなく、例えば角交換をしてから矢倉囲いを構築した場合には角換わりの戦型に分類される。
  7. 先手が5手目に7七銀と上がることで角道を閉じると同時に飛車先も受けることができる(いわゆる矢倉旧24手組)。一時期、5手目にまずは歩兵で角道を閉じておき、飛車先を受ける銀将を後回し(もちろん最終的には受ける)にする駒組(いわゆる矢倉新24手組)が流行した。しかし、居角左美濃急戦戦法が考案されて以降は矢倉新24手組で矢倉囲いに組むことは極めて困難になり、再び矢倉旧24手組が定跡となっている。
  8. 最序盤は閉じたまま進行するが、最終的には角行の活用のために角道を開けるのが普通である。なお、最初から角道を開けた横歩取り模様から横歩を取らずに相掛かりになることもある。
  9. 一例を挙げれば、角換わり早繰り銀戦法は先手でも後手でも使える戦法だが、横歩取り8五飛戦法は後手のみが使える戦法である。
  10. なお、角換わりでは角交換がされているため、通常の矢倉囲いとは異なり右金を二段目にとどめて角行の打ち込みを警戒するカブト矢倉や平矢倉などの形が頻繁に使われる。また、矢倉戦では銀将の代わりに角行で飛車先を受ける雁木囲いが使われることもある。
  11. 左翼で飛車先を受けつつあえて玉将を右翼に配置する右玉が使われることもある。
  12. 超速▲3七銀や丸山ワクチンには急戦・持久戦どちらの変化もある。
  13. 一度四間飛車に振り、角交換をした後に向かい飛車に振り直す。
  14. 角交換四間飛車に対して、ダイレクトに向かい飛車に降るため、こう呼ばれる。
  15. 『日本将棋用語事典』pp.61-62

参考文献

  • 塚田泰明監修、横田稔著『序盤戦! 囲いと攻めの形』、高橋書店、1997年
  • 原田泰夫 (監修)、荒木一郎 (プロデュース)、森内俊之ら(編)、2004、『日本将棋用語事典』、東京堂出版 ISBN 4-490-10660-2
  • 上野裕和、2018、『将棋・序盤完全ガイド 相居飛車編(増補改訂版)』、マイナビ出版
  • 上野裕和、2018、『将棋・序盤完全ガイド 振り飛車編(増補改訂版)』、マイナビ出版
  • 上野裕和、2017、『将棋・序盤完全ガイド 相振り飛車編』、マイナビ出版

関連項目

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