対合

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対合(たいごう、ついごう、involution)は、自分自身をそのとして持つ写像である。

[math]f^{-1}(x) = f(x), \mbox{ for any }x.[/math]

これは空間上の変換であって、二回繰り返すと恒等変換となる(元に戻る)という性質

[math]\lambda(\lambda(x)) = x, \mbox{ for any }x[/math]

を持つものと言ってもよい。ただし、それ自身が恒等変換となるものは通常は除いて考える。またこれは変換群に属する位数 2 の元

[math]\sigma \mbox{ which satisfies } \sigma^2 = \mathrm{identity}[/math]

を指すと言っても同じことであり、それを理由に一般の(抽象群)においても位数 2 の元を対合と呼ぶことがある。

  • 平面上の任意の点 x を、ある直線 l に関して対称な点 φ(x) に写す操作(鏡映)φ は、明らかに φ(φ(x)) = x を満たすから φ は平面上の対合である。
  • 集合 A に対し、普遍集合 S において A の補集合 Ac をとる操作は、(Ac)c = A を満たすから、この変換は S冪集合における対合である。
  • 複素数 z に対しその共役複素数 z* をとる複素数体 C 上の変換は、 (z*)* = z を満たすから対合である。

対合つき代数系

G が与えられ、その上の写像 I: GG が対合であって、次の関係

[math](gh)^I = h^I g^I, \mbox{ for any } g, h \in G[/math]

を満たすとき、対合 IG の群構造と両立するといい、組 (G, I) を対合付きの群と呼ぶ。群の逆元をとる演算

[math]g \mapsto g^{-1}[/math]

g, hG の元とすれば

[math](g^{-1})^{-1} = g,[/math]
[math](gh)^{-1} = h^{-1}g^{-1}[/math]

を満たすので、これは群が標準的に持つ群構造と両立する対合である。

また、環 R とその上に対合 "*": RR

[math](r + s)^* = r^* + s^*, \mbox{ for any } r,s \in R,[/math]
[math](rs)^* = s^* r^*, \mbox{ for any } r,s \in R,[/math]
[math]1_R^* = 1_R[/math]

を満たすものの組 (R, "*") として対合付き環の概念が得られる。もっと一般に必ずしも可換でないものを含む二項演算(と単項演算、0項演算)のみからなる代数系 A にその上の対合 σ が存在するとき、σ が A からその逆代数系 Aopp への準同型となる(つまり、二項演算の順番を逆にし、単項、0 項演算と可換となる)とき、代数系 A の構造と対合 σ は両立するといい、組 (A, σ) を対合つき代数系と呼ぶ。たとえば、n 次全行列環 Mn(K) (K は可換環あるいは体)に、行列を転置させる写像 t を考えたとき、x, y を行列、λ をスカラーとすると

[math]{}^t\!({}^t\!x) = x,[/math]
[math]{}^t\!(x + y) = {}^t\!x + {}^t\!y[/math]
[math]{}^t\!(xy) = {}^t\!y{}^t\!x[/math]
[math]{}^t\!(\lambda x) = \lambda{}^t\!x[/math]

が満たされるので、(Mn(K), t) は対合つき多元環である。

L が対合となる自己同型 σ を持つとき、σ の固定体を F とすると、拡大 L/F は二次拡大である。

対合で生成される群

鏡映群コクセター群は、(位数 2 の元という意味での)対合からなる生成系を持つ群である。

関連項目