壬生義士伝

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壬生義士伝
著者 浅田次郎
発行日 2000年4月30日
発行元 文藝春秋
ジャンル 歴史小説
日本の旗 日本
言語 日本語
形態 上製本
ページ数 (上) 392 / (下) 376
コード (上) ISBN 978-4-16-319140-9
(下) ISBN 978-4-16-319150-8
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壬生義士伝』(みぶぎしでん)は、浅田次郎による日本歴史小説

南部地方 (岩手県)盛岡藩の脱藩浪士で新選組隊士の吉村貫一郎を題材とした時代小説である。新選組で守銭奴や出稼ぎ浪人などと呼ばれた吉村貫一郎の義理と愛を貫く姿を描いた作品で、2000年に第13回柴田錬三郎賞を受賞した。

浅田次郎にとっては初の時代小説で、綿密に取材を重ねて執筆した作品である。『週刊文春』に1998年9月3日号から2000年3月30日号まで掲載され、文藝春秋より上下巻で2000年に単行本化、2002年に文庫化された。

浅田の長女が岩手の医科大学に入学し、盛岡で一人暮らしを始めたことから、何度か盛岡を訪れ、盛岡(南部藩)藩士を主人公にした作品を制作しようとしたことが、本作のきっかけである。

あらすじ

慶応四年一月。鳥羽・伏見の戦いの大勢は決し、幕軍は潰走を始めていた。そんな中、大坂盛岡藩蔵屋敷に満身創痍の侍が紛れ込む。かつて盛岡藩を脱藩し、新選組の隊士となった吉村貫一郎であった。保護を求める吉村に対し、蔵屋敷差配役であり吉村の旧友であった大野次郎右衛門は冷酷にも彼に切腹を命じる。 時は流れ、大正4年。北海道出身の記者が、吉村を知る人々から聞き取り調査を行っていた。彼らによって明かされた彼の生涯とは。

書籍

  • 『壬生義士伝』上、文藝春秋、2000年4月。ISBN 978-4-16-319140-9
  • 『壬生義士伝』下、文藝春秋、2000年4月。ISBN 978-4-16-319150-8
  • 『壬生義士伝』上(『文春文庫』)、文藝春秋、2002年9月。ISBN 978-4-16-764602-8
  • 『壬生義士伝』下(『文春文庫』)、文藝春秋、2002年9月。ISBN 978-4-16-764603-5

テレビドラマ

2002年1月2日に時代劇ドラマになった。(新春ワイド時代劇 「壬生義士伝〜新選組でいちばん強かった男〜」:テレビ東京)本作はギャラクシー賞選奨・ATP特別賞・橋田賞を受賞している。

あらすじ

鳥羽・伏見の戦い。今や官軍となっていた薩長連合、対する会津藩兵らと新撰組は賊軍という立場に貶められた。戦況は不利かと思われ数名の藩兵らが撤退する最中、錦の御旗を掲げた薩長連合に向かって走り出し、勇ましく刀を抜き最後まで戦おうとする一人の男の姿があった。

男の名は吉村貫一郎――撃たれようとも立ち上がり、なおも戦おうとするその姿に、新撰組の仲間達は「逃げろ、お前は生き延びるんだ!」と叱咤激励し、彼を戦場から逃がす。

キャスト

  • 主題歌
    • CHAGE and ASKA「夢の飛礫」(作詞:CHAGE/作曲:CHAGE、Tom Watts/編曲:十川知司)
テレビ東京 新世紀ワイド時代劇
前番組 番組名 次番組
宮本武蔵
(2001年)
壬生義士伝〜新選組でいちばん強かった男〜
(2002年)
忠臣蔵~決断の時
(2003年)
※この作品以後「新春ワイド時代劇」

テンプレート:新春ワイド時代劇

映画

壬生義士伝
監督 滝田洋二郎
脚本 中島丈博
原作 浅田次郎
出演者 中井貴一
三宅裕司
村田雄浩
夏川結衣
中谷美紀
佐藤浩市
音楽 久石譲
撮影 浜田毅
編集 冨田功
冨田伸子
製作会社 松竹
テレビ東京
テレビ大阪
電通
衛星劇場
カルチュア・パブリシャーズ
アイ・ビー・シー岩手放送
配給 松竹
公開 日本の旗 2003年1月18日
上映時間 137分
製作国 日本の旗 日本
言語 日本語
興行収入 6.0億円[1]
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企画段階で監督を務める予定だった盛岡市出身の相米慎二が、2001年9月9日に急死。2003年滝田洋二郎により映画化した。

英語版のタイトルは『When the Last Sword Is Drawn』。

受賞歴

あらすじ

人殺しとしてしか生きられない自分に絶望し、他人に絶望し、滅ぶべき時代のあだ花の身であった男(佐藤浩市)が新選組で出会ったのは、守銭奴と呼ばれながら家族への愛と侍としての義に生きるため身を削る田舎侍(中井貴一)だった…。

江戸時代が終わり、明治の御代となってのちの話である。感冒に罹患したと思われる孫を連れて、老人が町医者に駆け込んでくる。町医者は新天地である満州に医院を移すため、引っ越しの最中であった。医者の夫人が孫を診察し、老人は待合室で一息つく。ふと老人の目に、古びた一枚の写真が映った。その写真に写った武士は、老人のよく知る人物であった。老人は町医者に問わず語り、昔を思い出して行く。老人が斎藤一と呼ばれていた頃に出会った男、吉村貫一郎の生き様だった。

京都で血気盛んだった新選組の、入隊してきたばかりの吉村貫一郎と出会った頃から語り始める。

キャスト

スタッフ

テンプレート:日本アカデミー賞最優秀作品賞

漫画化作品

コミックチャージ』(角川書店2007年17号より連載。作画はながやす巧。2010年度の日本漫画家協会賞・優秀賞受賞作。原作に比べ幾分の省略や、漫画として描くのに適した視点や構図にした上での若干のアレンジはあるが、全体的な構成や展開は原作に忠実かつ精緻に描写している。また、第一部に登場する居酒屋の親父の名前を明らかにするなど、補足的にオリジナル要素を付与した部分もある。

『コミックチャージ』が2009年1月20日付けで廃刊したため、2009年9月9日創刊の『別冊少年マガジン』(講談社)に移籍し、2010年1月9日発売の2月号より第1話からの再連載を開始。第二章はこちらが初の連載となる。2012年3月号にて第二章までの連載が終了した。

そして、第三章は2014年4月17日創刊の隔月刊雑誌型コミックス『画楽.mag』(集英社ホーム社・画楽ノ杜)に移籍、創刊号から連載が開始された。これに伴い、単行本が集英社から同日に再発売されている。

第一章
慶応四年(1868年)の一月。鳥羽・伏見の戦いに敗れ、朝廷の信任も失った幕府軍は総崩れの様相を呈していた。新選組も多くの戦死者を出し、勝機も戦う意義も失われつつあった。雪の降る夜、隊から独り離脱した吉村貫一郎は、満身創痍の身を引きずりながら故郷を目指す途中、偶然にもかつての主家である南部藩の大坂蔵屋敷へと辿り着く。しかし差配役の大野次郎右衛門は終始突き放した物腰で貫一郎に切腹を命じる。再会した無二の親友の非情な態度に貫一郎の失意は深まるが、もはや足掻く術も余力も残っていない。通された奥座敷でへたりこむ貫一郎。だがその無念は死に臨む己への嘆きではなかった。
証言〔其の一〕居酒屋『角屋』の親父
時は大正三年(1914年)の七月。夏の長雨が降り続く夜、一人の若者が、東京の神田で学生相手に営む小さな居酒屋を訪れる。彼は店主に世間では「悪役」とされている「新選組」の話を語ってくれるよう頼むのだった。その店主は新選組では貫一郎と同期だった元平隊士で‥‥。
第二章
静寂の中、降り続く雪を奥座敷から眺めながら、武士として戦い続けてきた日々の終焉を悟る貫一郎。こみ上げてくる挫折感を噛みしめつつ、貫一郎は己の生き様を振り返り、故郷の妻に想いを馳せる。
証言〔其の二〕桜庭弥之介
大隈重信原敬率いる立憲政友会を選挙で破り、第2次大隈内閣を発足させてからおよそ半年が経った大正三年(1914年)の秋。東京の京橋にて建設会社を営む名士で、同郷人の原の後援会員でもある桜庭弥之介のもとを若者が訪れる。桜庭はかつて貫一郎が藩校の師範を務めていた頃の教え子であり、貫一郎の長男・嘉一郎と、大野次郎右衛門の長男・千秋とは学友でもあった。桜庭は少年時代の記憶を辿り、尊敬を込めて恩師と幼馴染みの思い出を語る。
第三章
暫しのまどろみから覚め、独り座敷に身を預ける貫一郎の心に去来するのは生きることへの想い。郷里の家族へ、藩校の教え子たちへ、次郎右衛門へ、今も戦い続ける全ての者たちへ、生き伸びてほしいと願わずにはいられなかった。戦で傷負い世の無情に屈しようとも、命を軽んずることなく忠孝を尽くすことこそ武士の道と信じる貫一郎の意志は寸分のぶれも無い。ゆえに死中に一片の活無き戦に進もうとする新選組についていくことはできなかった。「壬生狼」と畏怖を込めて蔑まれる新撰組の危うさを知るからこそ、上から見下ろした思惑に沿うことの空々しさも、そうする他に生きる術の無い悲哀も解りすぎている。心は諦念に満ちようとも問わずにはいられなかった。生きることの意味を。
証言〔其の三〕池田七三郎
若者が訪ねたのは東京は渋谷代々木練兵場の近く、富ヶ谷の一軒家に隠居する稗田利八。老いたその顔には深い傷跡がある。彼は齢十九の頃、武勇の憧れ赴くままに家を飛び出し、名を池田七三郎と変えて新選組入りした元見習隊士だった。勢い任せに己の道を求める七三郎たち少年隊士の教育係が吉村貫一郎であり、彼と共に過ごした日々は七三郎にとって何より確かな支えだった。ひとたび剣を振るえば最強の修羅、普段は威張らず甘やかさず真摯に後輩たちの面倒を見る気さくな優男。逸りつつも挫けやすい若者たちにとって貫一郎は頼もしくも親しめる父親代わりであり、尊敬する先生であった。血生臭い乱世の真っ直中を、深い薫陶と傷を心身に刻みつけながら駆け抜けた遠き日々の面影が語られる。

漫画単行本

原作:浅田次郎/漫画:ながやす巧『壬生義士伝』

角川書店版〈KADOKAWA CHARGE COMICS〉
  1. 2008年5月2日発行 ISBN 978-4-04-725032-1 浦沢直樹からの帯コメントあり。
  2. 2008年9月5日発行 ISBN 978-4-04-725046-8 井上雄彦からの帯コメントあり。
講談社版〈KCデラックス〉
  1. 2010年7月23日発行 ISBN 978-4-06-375955-6 巻末に連載時の扉絵を収録。角川版と同じく、浦沢直樹による新規の帯コメントあり。
  2. 2011年4月8日発行 ISBN 978-4-06-376044-6 巻末に連載時の扉絵を収録。ちばてつや森川ジョージからの寄稿イラストと帯コメントあり。
  3. 2011年9月9日発行 ISBN 978-4-06-376124-5 永井豪藤沢とおるからの寄稿イラストと帯コメントあり。
  4. 2012年4月9日発行 ISBN 978-4-06-376604-2
集英社版〈ホーム社書籍扱コミックス〉
  1. 2014年4月17日発行 ISBN 978-4-83-428430-0
  2. 2014年4月17日発行 ISBN 978-4-83-428431-7
  3. 2014年4月17日発行 ISBN 978-4-83-428432-4
  4. 2014年4月17日発行 ISBN 978-4-83-428433-1
  5. 2014年12月17日発行 ISBN 978-4-83-428439-3

脚注

  1. 「2003年度 日本映画・外国映画 業界総決算 経営/製作/配給/興行のすべて」、『キネマ旬報2004年平成16年)2月下旬号、キネマ旬報社2004年、 160頁。

参考文献

  • 文藝春秋編『浅田次郎新選組読本』、文藝春秋、2004年10月。ISBN 978-4-16-366260-2

関連項目

外部リンク

テンプレート:別冊少年マガジン連載中