同音異義語

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同音異義語(どうおんいぎご)とは、発音は同じだが、互いに区別される

具体例

日本語においては、漢語の中に頻繁に見ることが出来る。

  • いどう(移動、異同、異動、胃同、医道など)
  • かんし(監視、看視、環視、冠詞、諫止、漢詩、菅氏、韓紙など)
  • きかん(期間、機関、器官、気管、帰還、基幹、季刊など)
  • こうしょう(交渉、高尚、公証、考証、口承、鉱床、厚相、哄笑、工廠、興商、工商、公傷、公称、校章、工匠、好尚、高唱、公娼、高唱、高承、交鈔、康正、行賞、口証、孝昭、高翔、甲生、興正、交唱、口誦、咬傷、香粧、高商)
  • こうせい(更生、校正、恒星、更正、構成、公正、攻勢、後世、抗生など多数)
  • さんか(参加、賛歌、酸化、傘下、惨禍、産科、讃歌、三化、山河、三価、酸価)
  • しこう(嗜好、思考、志向、至高、歯垢、試行、施行、指向、紙工、施工、伺候、刺咬)
  • しんせい(申請、新生、親政、神聖、心性、真正、新星など)
  • せいか(製菓、成果、盛夏、生家、聖歌、生花、正貨、聖火など)
  • せんだい(仙台「宮城県」、川内「鹿児島県」、先代、千台、専大など)

など、数え上げればきりがない。へんざい(偏在、遍在)、れいぐう(冷遇、礼遇)、きょうえん(競演、協演)、ばいしゅん(売春、買春)などのようにほぼ正反対の意味の言葉が同音になる場合、おしょくじけん(汚職事件、お食事券)、おきもの(置き物、御着物)のようにそれだけでは同音でも異義語でもないのに丁寧語にした瞬間に変わるものもある。

中国語には、中古漢語は約3500個音であるし、現代北京語には約1200個音あり、広東語には約1800個音がある。その結果、中国語を表す文字である漢字を日本語に導入した事で、音に違いは無くとも意味を区別出来るさまざまな表記の組み合わせが生まれた。中国語においては発音が異なる漢字に対し、日本語においては同じ発音を割り当てざるを得ない事例が頻発し、同音異義語の数も莫大なものになった。混同を避けるため、「私立」を「わたくしりつ」、「市立」を「いちりつ」、「買春」を「かいしゅん」と読むなど、口頭では本来とは違う読み方をしたり、片方の意味のほうがより広く知れ渡っているようなケースでは、ほぼ同じ意味の単語(「礼遇」の代わりに「厚遇」や「優遇」など)を代用するなどして区別することがある。

朝鮮語では、開音節と閉音節が存在するので、日本語よりは同音異義語が少ないが、日本語と同じく声調の区別は無く、また無声音有声音の対立がなく、母音の長短は表記されないので(日本語はニンギョとニンギョーなど長音の区別があるため単純計算で2倍)、やはり漢語には同音異義語は多い。例えば검사(コムサ:検査・検事)、독자(トクチャ:独自・読者)、실업(シロプ:実業・失業)のように日本語ならば区別できるものもある。このため一般に普及しているハングル専用表記では同音異義がしばしば問題となり、文脈からの判断が難しい場合は漢字が併記される場合がある。

ちなみに日本語において最も同音異義語が多いとされる熟語は「こうしょう」であり、『スーパー大辞林3.0』では48語が該当する(交渉・考証・工匠・高尚・鉱床・口承・厚相・哄笑・公称・工廠・公証・公娼・校章など)。『広辞苑』第6版には50もの仮名見出しがある[1]

音素の制約による同音異義語の増加

カタカナ表記における英語のLight(ライト:光)とRight(ライト:正しい、右)のように、ある言語が外来語を示す際、自国語の表音文字では表記できない(≒発音できない)音素があるとき、代替文字に複数の音素を内包させざるを得ない(または足りない音素を省略する)ために同音異義語は増えてゆく。シルバーシートなど座席のことを日本語のカタカナで「シート」と表記するが、この英語は seat [siːt]、一方、切手シートなど一枚の紙や一枚の敷布も日本語のカタカナで「シート」と表記するが、これに対応する英単語はsheet [ʃiːt] である。この二つの単語は、英語では文字も発音も違うが、日本語では区別できない。

日本語の漢字の音読みでは、かつて「収集(しうしふ)」「少将(せうしゃう)」「葬送(さうそう)」などは発音・表記共に区別していたが、それぞれ「しゅうしゅう」「しょうしょう」「そうそう」と発音が単純化され、本来は異音であった単語が同音語へと変わり、結果として多くの同音異義語が生まれた。

また、韓国語では頭音法則により同音異義語が増大している。たとえば이해(イヘ:異解)と리해(リヘ:理解)、北の朝鮮語ではこれらの2つの熟語を区別できるが、南の韓国語では語頭の子音の(ラ行)を忌避しているために2つとも이해(イヘ:異解・理解)となっている。

英語における同音異義語

英語においては、日本語よりもはるかに音素の数が多く(例えば日本語の「ア」に相当する音が、ӕ、a、ɑ、ʌ、əの5種類存在する)、同音異義語の数ははるかに少ない。ただし音素の数に対して文字の数が少ないので、表記と発音の不一致という問題が生じている。

もっとも、少ないながらもいくらかの例が見受けられ(antとaunt、capitalとcapitol、gorillaとguerrilla、knowとno、rightとwriteとriteとwright、sonとsun、nightとknight、meetとmeatとmete、airとheir、alterとaltar、stationaryとstationery、flowerとflour、marshalとmartial、sewとsoとsowなど)、また以下のような同音もしくは類似音を利用した「だじゃれ」もある。(問題となる語の語源は同じなので同音異義語というより、多義語を用いた例である)

  • Did you hear about the guy whose whole left side was cut off? He's all right now.
  • 左半分が切り落とされたヤツを聞いたことがあるか?そいつは今all rightだってさ。(all rightは「全て右(右半分しか残ってない)」とも「大丈夫」とも訳せる)
  • Spring forward, fall back.
  • 前に飛び出し、後ろに戻る。/春に進めて、秋には戻す(夏時間)。
  • Two is the oddest prime number, since it is the only even one.
  • 偶数(even)奇数(odd)と奇妙(odd)を掛けたジョーク。最後のoneは代名詞で幾多の素数の中の一つのもの。(意味は:数字の2は最も奇妙(odd/数学的には奇数を意味する単語)な素数である、なぜならば唯一の偶数の素数(代名詞one)であるから。)(最初に2、最後にoneを置くのも洒落の類とみなせば二重の掛詞となる。)

原文におけるこれらの技法を日本語に翻訳することは不可能に近いので、日本語ではまったく別のしゃれを使って訳にあてることが多い。これは、逆に日本語の洒落を英語に翻訳するときも同様である。

フランス語における同音異義語

フランス語には、つづりは違っても発音が同じ語が多い。たとえばpaix(ぺ)「平和」とpet「屁」とpaie「しはらう(1・3人称単数現在」とpaît「<牧草>を食べる(3人称単数現在)」、au(オ)とhaut「高い」とeau「水」、fin(ファン)「終わり」とfaim「飢え」とfeint「うわべの」、sang(ソンに近いサン)「血」とsans「~なしに」とcent「百」とsent「感じる(3人称単数現在)」、saint(サン)「聖なる(男性形。女性形は sainte(サント)となる)」とsain「健康な」とseins「乳房」とceint「巻く(3人称単数現在)」、sale(サル)「きたない」とsalle「部屋」とsal-「『塩』をあらわす接頭辞」、lait(レ)「ミルク」とlaid「みにくい」、mer(メール)「海」とmaire「市長」とmère「母」、ou(ウ)「または」とoù「どこ」とaoût「8月」など。またリエゾンのせいで違う意味の文が同じ発音になる「同音異義文」もある。例 Il est tout vert. (イレトゥヴェール)「彼はまっさおだ」Il est ouvert. 「彼はあけっぴろげだ」

同音異義語を利用した言葉遊び

駄洒落
同音異義語を複数つなげ合わせて面白い文章を作る言葉遊びの一種である。例として「貴社の記者が汽車で帰社する」がある。
語呂合わせダブル・ミーニング
その記号や単語の発音の別の意味を隠語として扱う。
なぞかけ
教養や知識を必要とする言葉遊び。
言葉遊び
言葉の持つ音の響きやリズムを楽しんだり、同音異義語を連想する面白さ可笑しさを楽しむ遊びである。
掛詞
意味は違うが同じ仮名で書く言葉に、ふたつ以上の意味をこめて表現する方法。

関連項目

脚注

  1. 増井元『辞書の仕事』(岩波文庫 2013年p.96)。

外部リンク