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[[集合論]]において、[[非可算]][[基数]]κが'''弱到達不能基数'''(weakly inaccessible)であるとは、それが[[正則基数|正則]]な[[濃度 (数学)#後続基数と極限基数|極限基数]]であることを言い、'''強到達不能基数'''(strongly inaccessible)または単に'''到達不能基数'''(inaccessible)であるとは、κ未満の任意の基数λに対し、<math>(2^\lambda < \kappa) </math>を満たす正則基数であることを言う<ref>[[ケネス・キューネン]]『集合論 独立性証明への案内』[[藤田博司]]訳、[[日本評論社]]、2008年、ISBN 978-4-535-78382-9</ref>。
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著者によっては非可算性を要求しないこともある(その場合 <math>\aleph_0</math> は強到達不能基数)。弱到達不能基数は{{harvtxt|Hausdorff|1908}}、強到達不能基数は{{harvtxt|Sierpiński|Tarski|1930}}および{{harvtxt|Zermelo|1930}}によって導入された。
 
 
 
"到達不能基数"という用語は曖昧である。1950年頃までは弱到達不能基数を指していたが、以後は普通は強到達不能基数を意味するからである。
 
 
 
定義より、強到達不能基数は同時に弱到達不能基数でもある。[[連続体仮説|一般連続体仮説]]が成り立つ場合は、強到達不能基数であることの必要十分条件は弱到達不能であることになる。
 
 
 
<math>\aleph_0</math> は正則な[[強極限基数]]である。[[選択公理]]を仮定すると、他の全ての無限基数は正則かまたは(弱)極限である。
 
しかしながら、その両方になれるもの、即ち弱到達不能基数は中でも大きいものに限られる。
 
 
 
[[順序数]]が弱到達不能基数であるための必要十分条件は、それが正則順序数であり、かつ、正則順序数の列の極限であることである
 
(0,1, <math>\aleph_0</math> は正則順序数だが正則順序数の列の極限ではない)。強極限かつ弱到達不能な基数は強到達不能である。
 
 
 
強到達不能基数の存在は、[[グロタンディーク宇宙]]が存在するという形で仮定される場合がある。この両者の間には深い繋がりがある。
 
 
 
== モデルと無矛盾性 ==
 
 
 
[[ZFC]]の下では、κ が強到達不能であるとき''V''<sub>κ</sub> がZFCの[[モデル理論|モデル]]になる。
 
ZFの下では、κ が弱到達不能であるとき[[ゲーデル宇宙]]の''L''<sub>κ</sub> がZFCのモデルになる。
 
よって、ZF+"弱到達不能基数が存在する"はZFCが無矛盾であることを導き、[[ゲーデルの不完全性定理|不完全性定理]]よりその存在はZFCで証明できない。
 
つまり、到達不能基数は[[巨大基数]]の一種である。
 
 
 
''V''がZFCの標準モデルで κ が''V''の到達不能基数であるとき、
 
''V''<sub>κ</sub> は[[ツェルメロ・フレンケルの公理系|ZF集合論]]のintended modelになり、
 
Def(''V''<sub>κ</sub> )は[[NBG集合論]]のintended modelになり、
 
''V''<sub>κ</sub> +1は[[MK集合論]]のintended modelになる。
 
ここで、Def(X)はXの Δ<sub>0</sub> 定義可能な部分集合である([[:en:constructible universe]])。
 
しかしながら、''V''<sub>κ</sub> がZFの標準モデルになるために κ が到達不能基数である必要はなく、基数である必要すらない。
 
 
 
VがZFCのモデルであるとする。
 
Vが強到達不能基数を持ってなくても、
 
持っていたとしても κ をVの最小の到達不能基数とすると、
 
''V''<sub>κ</sub> は強到達不能基数を持たないZFCの標準モデルである。
 
すなわち、ZFCが無矛盾ならZFC+"強到達不能基数は存在しない"は無矛盾である。
 
同様にVが弱到達不能基数を持ってなくても、
 
持っていたとしても κ をVの最小の弱達不能基数とすると、
 
''L''<sub>κ</sub> は弱到達不能基数を持たないZFCの標準モデルである。
 
だから、ZFCが無矛盾ならZFC+"弱到達不能基数は存在しない"も無矛盾である。
 
このことから、ZFCからは到達不能基数の存在を証明できないし、ZFCは到達不能基数の非存在と矛盾しない。
 
 
 
ZFCが到達不能基数の存在と矛盾しないかという問題はもっと微妙である。
 
前段落で見られた、「ZFC+"到達不能基数がある"が無矛盾ならば、ZFC+"到達不能基数は存在しない"は無矛盾である」
 
の証明はZFCの中で形式化可能である。
 
しかし、「ZFCが無矛盾ならば、ZFC+"到達不能基数が存在する"が無矛盾」ということの
 
ZFCで形式化された証明は存在しえない。これはゲーデルの第2[[不完全性定理]]からわかる。
 
ZFC+"到達不能基数が存在する"が無矛盾なら自身の無矛盾性はその中で証明できない。
 
ZFC+"到達不能基数が存在する"はZFCの無矛盾性を証明するので、
 
ZFCが「ZFCが無矛盾ならば、ZFC+"到達不能基数が存在する"が無矛盾である」を証明してしまったら
 
ZFCは自身の無矛盾性を証明できることになってしまうが、これは矛盾であるからである。
 
 
 
到達不能基数の存在性に関するZFCで形式化できない議論がある。
 
そのような議論の一つが{{harvtxt|Hrbacek|Jech|1999|p=279}}に表れている。
 
もし集合論のモデル ''M'' の拡大モデルがあれば、''M'' の全ての順序数によるクラスは、それ自体到達不能基数になる。というものである。
 
 
 
== 到達不能基数による真クラスの存在性 ==
 
興味を深い述語を満たす基数によるの真クラスの存在を主張する
 
集合論の重要な公理がいくつも存在する。
 
到達不能基数に関して対応する公理は、全ての基数 μ に対して
 
それより真に大きい到達不能基数 κ が存在すると主張するものである。
 
従って、この公理は到達不能基数による無限のタワーが存在することを保証する
 
(この公理はしばしば到達不能基数公理と呼ばれる)。
 
到達不能基数の存在性と同様に、この公理はZFCの下では証明できない。
 
ZFCの下で、到達不能基数公理は[[アレクサンドル・グロタンディーク|グロタンディーク]]と[[ジャン=ルイ・ヴェルディエール|ヴェルディエール]]の'''universe axiom''': 全ての集合は[[グロタンディーク宇宙]]に属する。と同値である。
 
ZFCの公理に universe axiom (または同値な到達不能基数公理)を付け加えたものはZFCUと表される (これは ZFC に urelements を付け加えたものと混同しないように注意)。
 
この公理系は、例えば全ての[[圏 (数学)|圏]]は
 
適切な[[米田埋め込み]]([[:en:Yoneda embedding]])を持つということを証明するのに役立つ。
 
 
 
これは巨大基数公理より相対的に弱い。これは次の節の言葉で言うところの
 
∞ が 1-到達不能であると言っていることに等しいからである。
 
ここで ∞ は V に属さない最小の順序数、すなわち対象のモデルの全ての順序数によるクラスである。
 
 
 
== α-到達不能基数とhyper-到達不能基数 ==
 
 
 
A順序数αに対して、基数κが'''α-到達不能'''であるとは、
 
κが到達不能でかつβ < αなる全ての順序数βについて、κ未満のβ-到達不能な基数の集合がκの中で非有界であること(κは正則なので、この集合の濃度はκである)。
 
 
 
α-到達不能基数はそれより小さい到達不能基数を数える関数の不動点と同一視できる。
 
例えば ψ<sub>0</sub>(λ) がλ番目の到達不能基数を表すことにしたとき、 ψ<sub>0</sub>(λ) の不動点は1-到達不能基数である。
 
ψ<sub>β</sub>(λ) がλ番目のβ-到達不能基数を表すと
 
すれば ψ<sub>β</sub> の不動点は(β+1)-到達不能基数であり、
 
その値はψ<sub>β+1</sub>(λ) である。
 
αを極限順序数とすると、α-到達不能基数はβ < αなる任意のβについての、 ψ<sub>β</sub>の不動点になる。
 
(その値は ψ<sub>α</sub>(λ) でλ番目のα-到達不能基数)である。
 
この、次に来る大きな基数を作る関数の不動点を得る過程は
 
[[巨大基数]]に関する研究でよく見られる。
 
 
 
'''hyper-到達不能'''という言葉は曖昧である。稀ではあるが1-到達不能の意味で使う人もいる。ほとんどの人はκ-到達不能である基数κのことを指して使っている。(これは決してκ+1-到達不能にはならない)
 
 
 
順序数αに対して、基数κが
 
'''α-hyper-到達不能'''であるとは、κがhyper-到達不能でかつ全てのβ < αなるβに対して、κ未満のβ-hyper-到達不能基数の集合がκ内で非有界であること。
 
 
 
hyper-hyper-到達不能基数なども同様に定義される。
 
 
 
"弱到達不能基数"を"到達不能基数"の代わりに使って、同様に"弱-α-到達不能"や"弱-hyper-到達不能基数"も定義できる。
 
 
 
[[マーロ基数]]は到達不能であり、hyper-到達不能であり、hyper-hyper-到達不能であり、……(以下同様)となっている。
 
 
 
== 到達不能基数のモデル理論的な二つの特徴付け ==
 
 
 
一つ目として、基数κが到達不能であることはκが以下のreflection propertyを満たすことと同値である。: 全ての U &sub; V<sub>&kappa;</sub>に対してある &alpha; < &kappa; が存在して <math>(V_\alpha,\in,U\cap V_\alpha)</math> が
 
<math>(V_\kappa,\in,U)</math> の[[初等部分モデル]]になる
 
(実は、そのようなαの集合はκの中で[[Club集合|club]]である)。
 
全ての n &ge; 0に対して &kappa; が
 
<math>\Pi_n^0</math>-[[記述不能]] であるというのもこの条件に同値である。
 
 
 
ZFの下で∞がreflection propertyよりいくらか弱い条件を満たすことが
 
証明可能である。ここで、部分構造 (V<sub>&alpha;</sub>, &isin;, U &cap; V<sub>&alpha;</sub>)は 式の有限集合に関して'初等的'であることのみ要求される。
 
 
 
結局、この弱化の理由は
 
モデル理論的充足関係 <math>\models</math> は定義できるが、
 
真理性は定義できないことによる。
 
[[タルスキの定義不可能性定理|タルスキの定理]]による。
 
 
 
二つ目は、ZFCの下で
 
κが到達不能基数であることと
 
(V<sub>&kappa;</sub>, &isin;)が[[二階述語論理]]のZFCのモデルであることが
 
同値であることが証明できる。
 
 
 
この場合、上のreflection propertyによって、
 
あるα < κが存在して(V<sub>&alpha;</sub>, &isin;)が[[一階述語論理]]の
 
ZFCの標準モデルとなる。
 
だから到達不能基数の存在はZFCの標準モデルの存在より強い仮定である。
 
 
 
==脚注==
 
{{Reflist}}
 
 
 
==関連項目==
 
*[[マーロ基数]]
 
*[[Club集合]]
 
*[[内部モデル (数学)]]
 
*[[フォン・ノイマン宇宙]]
 
*[[構成可能集合]]
 
 
 
== 参照 ==
 
* {{citation
 
| author=Drake, F. R.
 
| title=Set Theory: An Introduction to Large Cardinals
 
| series = Studies in Logic and the Foundations of Mathematics
 
| volume=76
 
| publisher=Elsevier Science Ltd
 
| year=1974
 
| isbn=0-444-10535-2
 
}}
 
*{{Citation
 
| last1=Hausdorff
 
| first1=Felix
 
| author1-link=フェリックス・ハウスドルフ
 
| title=Grundzüge einer Theorie der geordneten Mengen
 
| doi=10.1007/BF01451165
 
| year=1908
 
| journal=[[Mathematische Annalen]]
 
| issn=0025-5831
 
| volume=65
 
| issue=4
 
| pages=435–505
 
}}
 
* {{citation
 
| last1=Hrbacek
 
| first1=Karel
 
| last2=Jech
 
| first2=Thomas
 
| author2-link=Thomas Jech
 
| title=Introduction to set theory
 
| publisher=Dekker
 
| location=New York
 
| edition=3rd
 
| isbn=978-0-8247-7915-3
 
| year=1999
 
}}
 
* {{citation
 
| last=Kanamori
 
| first=Akihiro
 
| year=2003
 
| publisher=Springer
 
| authorlink=Akihiro Kanamori
 
| title=The Higher Infinite: Large Cardinals in Set Theory from Their Beginnings
 
| edition=2nd ed
 
| isbn=3-540-00384-3
 
}}
 
*{{Citation
 
| last1=Sierpiński
 
| first1=Wacław
 
| author1-link=ヴァツワフ・シェルピンスキ
 
| last2=Tarski
 
| first2=Alfred
 
| author2-link=アルフレト・タルスキ
 
| title=Sur une propriété caractéristique des nombres inaccessibles
 
| url=http://matwbn.icm.edu.pl/tresc.php?wyd=1&tom=15
 
| year=1930
 
| journal=[[Fundamenta Mathematicae]]
 
| issn=0016-2736
 
| volume=15
 
| pages=292–300
 
}}
 
*{{Citation
 
| last1=Zermelo
 
| first1=Ernst
 
| author1-link=エルンスト・ツェルメロ
 
| title= Über Grenzzablen und Mengenbereiche
 
| url=http://matwbn.icm.edu.pl/tresc.php?wyd=1&tom=16
 
| year=1930
 
| journal=[[Fundamenta Mathematicae]]
 
| issn=0016-2736
 
| volume=16
 
| pages=29–47
 
}}
 
 
 
{{DEFAULTSORT:とうたつふのうきすう}}
 
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[[Category:巨大基数]]
 
[[Category:数学に関する記事]]
 

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