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| − | '''体操伝習所'''（たいそうでんしゅうじょ、旧字：體操傳習所）は、[[1878年]]（明治11年）10月、[[東京府]]（現在の[[東京都]][[千代田区]]）に設立された[[体育]]教員・指導者の養成機関である。 | + | '''体操伝習所'''（たいそうでんしゅうじょ、旧字：體操傳習所） |
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| − | ==概要==
| + | 1878年東京に設置された文部省直轄の西洋式体操の教育機関。アメリカ人 G.A.[[リーランド]]を教師として西洋の体操を導入し，リーランドの退任後は[[坪井玄道]]がその跡を継いで日本の学校体育の基礎確立の中心となった。 86年廃止され，高等師範学校体操専修科に引継がれた。 |
| − | 明治政府により設立された日本最初の体育の研究・教育機関で、修業年限は2年。体育教授法の研究と体育教員の養成を目的とし全国の学校に近代体育を普及させ、[[音楽取調掛]]とともに実技科目教員を供給することにより、知的科目に偏っていた[[東京高等師範学校|東京師範学校]]の教員養成を補完する役割を果たした。[[1885年]][[東京高等師範学校|東京師範学校]]の附属校となり、翌[[1886年]]東京師範の[[東京高等師範学校|高等師範学校]]昇格にともない廃止され、同校「体育専修科」に改編された。同科は東京高等師範学校「体育科」への改組を経て[[東京教育大学]][[体育学部]]に継承されたため、一般には[[筑波大学]]体育専門学群の源流と位置づけられている。
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| − | ==沿革==
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| − | 明治政府が欧米的な教育制度を導入する過程で、[[体育]]（「体術」もしくは「体操」）も[[学制]]・[[教育令]]のなかで[[旧制小学校|小学校]]・専門学校（大学以外の高等教育機関を意味し後年の[[旧制専門学校]]とは異なる）の教育科目として規定されることとなったが、多くの場合は規定のみで実施されることはなく、実施された場合も教授法の確立をみていなかったことから各学校ごとの試行錯誤に任されていた。また教員養成機関として設立された[[東京高等師範学校|東京師範学校]]も知的教科を中心とする知育に偏重していたため体育教員の養成も後手に回っていた。
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| − | [[文部省]]は以上のような状況を挽回し、学校体育の整備を本格的に進めるため[[1878年]]10月直轄機関として「体操伝習所」を設立した。伝習所には[[アメリカ合衆国|アメリカ]]・[[アマースト大学]]卒業の医学士[[ジョージ・アダムス・リーランド|リーランド]]が教員として招聘され、彼を中心に「軽体操」（[[ダンベル|木唖鈴]]・球竿・棍棒・木環などの軽手具を使用した体操）が欧米人に比べて小柄な日本人に適当な体育法として採用され、これの全国的普及が進められていくことになった。[[1881年]]7月には伝習所の第1回給費生21名が卒業し、以降廃止まで約300名に及ぶ卒業生たちが各地の[[師範学校]]に体育教師として赴任し、また彼らにより100冊以上に及ぶ体育・スポーツの専門書が刊行されたことで、地方への軽体操および近代的な学校体育の普及を進めていく中心となった。
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| − | 同年、リーランドの辞任・帰国にともない彼の通訳であった[[坪井玄道]]が伝習所の主任教員となり、翌[[1882年]]にはリーランドの指導した運動法と彼の体育論を坪井が解説した『[[新撰体操書]]』が伝習所から出版された。こののち伝習所では[[1883年]]の[[徴兵令]]改正にともなう[[旧制中学校|中学校]]・師範学校での「[[歩兵操典]]」実施の提言など、[[国家主義]]的傾向が強まることになるが、その一方で坪井を中心に軽体操と戸外遊戯（[[二人三脚|二人三脚競走]]、[[綱引き|綱引]]、[[サッカー|フートボール]]、[[ソフトテニス|ローンテニス]]、[[野球|ベースボール]]など）の重要性が強調されるなど独自の体育法も追求された。
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| − | ==年表==
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| − | *[[1878年]][[10月25日]]：文部省直轄機関として設立。リーランドが教員となり伝習員（生徒）を募集。
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| − | *1878年[[11月1日]]：坪井玄道、教員となりリーランドの通訳にあたる。
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| − | *1878年[[11月9日]]：体操伝習所規則制定。
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| − | *[[1879年]][[3月20日]]：東京府下[[神田区|神田]][[一ツ橋]]に事務室・教場が新築された。
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| − | *1879年[[4月7日]]：第1回伝習員（官費生）25名が入学。
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| − | *[[1880年]]9月：科目に[[兵式体操]]が加わる。
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| − | *[[1881年]]7月：第1回給費生21名が卒業。
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| − | *1881年7月2日：主任教員リーランドが辞任。坪井玄道が後任の主任教員となる。
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| − | *[[1882年]]：伝習所より『[[新撰体育書]]』の刊行。
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| − | *[[1884年]]2月：伝習所、小学校・中学校・師範学校での軍事教育（歩兵操練科）の実施の可否に関し諮問を受ける。
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| − | *1884年[[11月17日]]：伝習所、上記諮問に関し報告を行う。
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| − | :小学校高学年での隊列運動、中学校・師範学校での「体操教範」「歩兵操典」の一部を課すよう提言しのち実施された。
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| − | *[[1885年]]12月：伝習所は[[東京高等師範学校|東京師範学校]]附属となる。
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| − | *[[1886年]][[4月29日]]：伝習所は（東京）高等師範学校体育専修科に改組され廃止。
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| − | :伝習所が担っていた兵式体操教員育成の業務は体育専修科に継承された。
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| − | ==参考文献==
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| − | ;事典項目
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| − | *木下秀明「体育・健康教育〈明治前期〉」『日本近代教育史事典』[[平凡社]]、[[1971年]]
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| − | **小項目「体操伝習所」（執筆：木下）ほか。
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| − | ;論文
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| − | *能勢修一「体操伝習所卒業生の体育活動」『鳥取大学教育学部研究報告：教育科学』第13巻1号（[[1971年]]6月）、pp.157-178
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| − | *大久保英哲「体操伝習所卒業生原収造の岩手県における体育活動について」『体育學研究』第32巻第1号（1987年6月）、pp.11-24
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| − | *木村吉次「体操伝習所の「活力統計」に関する一考察」『（中京大学）体育研究所紀要』第5号（1991年）、pp.1-20
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| − | *同「体操伝習所の医学関係図書に関する一考察」『中京大学体育学論叢』第37巻第2号（1996年3月）、pp.1-11
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| − | ;単行書
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| − | *能勢修一『明治体育史の研究：体操伝習所を中心に』（新体育学講座・第37巻）逍遙書院、[[1965年]]
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| − | ==関連項目==
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| − | *[[図画取調掛]]・[[東京美術学校 (旧制)|東京美術学校]] / [[音楽取調掛]]・[[東京音楽学校 (旧制)|東京音楽学校]] - 明治政府によって設立された実技科目教員の養成機関（およびその前身）。
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| − | ==外部リンク==
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| − | *[http://info-d.geijutsu.tsukuba.ac.jp/~stweb/index.html 筑波大学体育ギャラリーST] - 常設展に「体操伝習所 1878-1886」「東京高等師範学校（体育科）1886 - 1952」のコーナーがある。
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| − | *[{{NDLDC|812938}} 国立国会図書館デジタルコレクション『体操伝習所一覧 明治十七年十八年』]
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| − | *{{PDFlink|[http://www.chs.nihon-u.ac.jp/institute/human/kiyou/2/H-002-009.pdf 木下秀明「明治十年代における体操教員の養成について」『日本大学人文科学研究所 研究紀要』第2号（1960年）]}}
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| − | *[http://www.tulips.tsukuba.ac.jp/pub/tsukubane/2503/okuma.html 大熊廣明「体操伝習所旧蔵書が語るもの：特別展「身体と遊戯へのまなざし－日本近代体育黎明期の体操伝習所（明治11年～19年）－」」『つくばね』（筑波大学附属図書館）25巻3号（1998年12月）]
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| − | *{{PDFlink|[http://www.kyoto-seika.ac.jp/event/kiyo/pdf-data/no23/kurisu.pdf 栗巣満「日本体育（身体運動）・スポーツ再考Ⅵ〜学校教育としての日本体育・スポーツ〜」『精華大学紀要』第23号]}}
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| − | *{{PDFlink|[http://hermes-ir.lib.hit-u.ac.jp/rs/bitstream/10086/17487/1/sportsk0270000490.pdf 高津勝「日本におけるスポーツ受容：「創られた伝統」と世界システム・国民国家・生活世界」『一橋大学スポーツ研究』第27号（2008年10月）]}}
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| − | {{筑波大学の源流・前身諸機関}}
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