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リーマンのゼータ関数 ζ(s) (s = 1/2 + ix) の実部(赤色)と虚部(青色)。最初の非自明な零点Im s = x = ±14.135, ±21.022, ±25.011 に現れる。

テンプレート:Millennium Problems 数学において、リーマン予想(リーマンよそう、: Riemann hypothesis, : Riemannsche Vermutung)は、リーマンゼータ関数零点が、負の偶数と、実部1/2複素数に限られるという予想である。ドイツの数学者 テンプレート:Harvs により提唱されたため、その名前が付いている。名前は密接に関連した類似物に対しても使われる。例えば有限体上の曲線のリーマン予想。リーマン予想は、英語表記 Riemann hypothesis の直訳であるリーマン仮説と表記したり、RH と略すこともある。

リーマン予想は素数の分布についての結果を含んでいる。適切な一般化と合わせて、純粋数学において最も重要な未解決問題であると考える数学者もいる[1]。リーマン予想は、ゴールドバッハの予想とともに、ヒルベルトの23の問題のリストのうちの第8問題English版の一部である。クレイ数学研究所ミレニアム懸賞問題の1つでもある。

リーマンゼータ関数 ζ(s)1 を除くすべての複素数 s で定義され、複素数の値をとる関数である。その零点(つまり、関数値が 0 となる s)のうち、負の偶数 s = −2, −4, −6, … はその自明な零点と呼ばれる。しかしながら、負の偶数以外の零点も存在し、非自明な零点と呼ばれる。リーマン予想はこの非自明な零点の位置についての主張である:

リーマンゼータ関数のすべての非自明な零点の実部は 1/2 である。

いいかえると、

リーマンゼータ関数のすべての非自明な零点は、複素数平面上の直線 1/2 + iテンプレート:Hsptt実数)上にある。ここで i虚数単位である。この直線を臨界線 (critical line) という。

リーマン予想に関する非専門の本がいくつかある。例えば ブルーバックス (2015)[2]Derbyshire (2003), Rockmore (2005), テンプレート:Harvs, du Sautoy (2003).本 Edwards (1974), Patterson (1988), Borwein et al. (2008), Mazur & Stein (2015) は数学的な入門を与え、Titchmarsh (1986), Ivić (1985), Karatsuba & Voronin (1992) は進んだモノグラフである。さらに、John Forbes Nash Jr. と Michael Th. Rassias によって編集された本 Open Problems in MathematicsEnglish版 は、Alain Connes によるリーマン予想に関する広範なエッセイを取り上げている[3][4]

概要

リーマン素数の分布に関する研究を行っている際にオイラーが研究していた以下の級数をゼータ関数と名づけ、解析接続を用いて複素数全体への拡張を行った。

ゼータ関数を次のように定義する(s は実部が 1 より大きい複素数とする。このとき、この級数は絶対収束する)。

[math]\zeta(s) = \sum_{n=1}^\infty \frac{1}{n^s} = 1 + \frac{1}{2^s} + \frac{1}{3^s} + \frac{1}{4^s} + \cdots .[/math]

1859年にリーマンは自身の論文の中で、複素数全体 (s ≠ 1) へゼータ関数を拡張した場合、

ζ(s) の自明でない零点 s は、全て実部が 1/2 の直線上に存在する。

と予想した。ここに、自明な零点とは負の偶数 (−2, −4, −6, …) のことである。自明でない零点は 0 < Re s < 1[注 1] の範囲にしか存在しないことが知られており(下記の歴史を参照)、この範囲を臨界帯という。

なお素数定理はリーマン予想と同値な近似公式[注 2]からの帰結であるが、素数定理自体はリーマン予想が真であるという仮定がなくとも証明できる。この注意は歴史的には重要なことで、実際リーマンがはっきりとは素数定理を証明できなかった理由はリーマン予想の正否にこだわっていたためであると思われている(素数分布とのゼータ関数との関係は下記#素数の分布や、リーマンゼータ関数素数定理リーマンの素数公式の項を参照のこと)。

現在もリーマン予想は解決されていない。数学における最も重要な未解決問題の一つである。リーマンのゼータ関数を特殊な場合に含むL関数に対しても同様の予想を考えることができ、これを一般化されたリーマン予想(Generalised Riemann Hypothesis:GRHと略される)と呼んでいる。

最近では、虚部が小さい方から10兆個 (X. Gourdon and P. Demichel, 2004) までの複素零点はすべてリーマン予想を満たすことが計算されており、現在までにまだ反例は知られていない。現在では多くの数学者が(当然のことだが、はっきりした根拠を持たずに)リーマン予想は正しいと考えているようである。しかし無限にある零点からみれば有限に過ぎない10兆個程度の零点の例などは零点分布の真の姿を反映するには至らないとして、この計算結果に対して慎重な数学者もいる。歴史上有名な数学者の中でもリーマン予想を疑っていた数学者はいる[5]

リーマンゼータ関数

リーマンゼータ関数は実部が 1 よりも大きい複素数 s に対して絶対収束無限級数

[math]\zeta(s) = \sum_{n=1}^\infty \frac{1}{n^s} = \frac{1}{1^s} + \frac{1}{2^s} + \frac{1}{3^s} + \cdots[/math]

によって定義される。レオンハルト・オイラー(リーマンの生まれる40年前に死んだ)はこの級数がオイラー積

[math]\zeta(s) = \prod_{p:\text{ prime}} \frac{1}{1-p^{-s}} = \frac{1}{1-2^{-s}} \cdot \frac{1}{1-3^{-s}} \cdot \frac{1}{1-5^{-s}} \cdot \frac{1}{1-7^{-s}} \cdots \frac{1}{1-p^{-s}} \cdots[/math]

に等しいことを示した、ここで無限積はすべての素数 p を走り、再び実部が 1 より大きい複素数 s に対して収束する。オイラー積の収束は、どの因子も零点を持っていないから、ζ(s) がこの領域において零点を持たないことを示している。

リーマン予想はこの級数とオイラー積の収束領域の外側での零点について議論する。予想が意味をなすために、関数を解析接続して、すべての複素数 s に対して有効な定義を与える必要がある。これは以下のようにディリクレのエータ関数English版の言葉でゼータ関数を表すことによってできる。s の実部が 1 よりも大きければ、ゼータ関数は

[math]\left( 1 - \frac{2}{2^s} \right) \zeta(s) = \sum_{n=1}^\infty \frac{(-1)^{n+1}}{n^s} = \frac{1}{1^s} - \frac{1}{2^s} + \frac{1}{3^s} - \cdots[/math]

を満たす。しかしながら、右辺の級数は s の実部が 1 より大きいときだけでなく、より広く s の実部が正のときにいつでも収束する。したがって、この代わりの級数はゼータ関数を Re s > 1 からより大きい領域 Re s > 0 に、1 − 2/2s の零点 s = 1 + 2πin/logテンプレート:Tsp2 を除いて、拡張する(ディリクレのエータ関数を参照)。ゼータ関数はこれらの除かれた値にも極限を取ることによって拡張でき、s = 1 における一位の極を除いて、正の実部を持つすべての s の値に対して有限値を与える。

0 < Res < 1 において、ゼータ関数は関数等式

[math]\zeta (s)=2^s \pi^{s-1} \, \sin \left( \frac{\pi s}{2} \right) \, \Gamma (1-s)\, \zeta (1-s)[/math]

を満たす。すると残りのすべての零でない複素数 s に対して ζ(s) を、この方程式が帯の外側でも成り立つと仮定し、ζ(s)s の実部が正でないときに方程式の右辺に等しいとすることで定義できる。s が負の偶数のとき、因子 sin(πs/2) が消えるから ζ(s) = 0 である。これらがゼータ関数の自明な零点である(s が正の偶数のときにはこの議論は適用しない、なぜならば正弦関数の零点はガンマ関数が負の整数の引数を取るからその極によって打ち消されるからである)。値 ζ(0) = −1/2 は関数等式からは定まらないが、s0 に近づくときの ζ(s) の極限値である。関数等式はまた、ゼータ関数が自明な零点の他には実部が負の零点を持たないことも意味しており、したがってすべての非自明な零点は、s の実部が 01 の間の臨界帯 (critical strip) にある。

歴史

テンプレート:Expand section

帰結

リーマン予想の仮定の下で真である命題や、リーマン予想と同値である命題が、多く知られている。

同値な命題

以下の各命題は、リーマン予想と同値である。

  • ある定数 C が存在して、十分大きな任意の x に対し、
[math]|\pi(x) - \operatorname{li}(x)| \leq C \sqrt{x} \, \log x[/math]
が成り立つこと[6]。ここに li x対数積分を表す。これは
[math]\pi(x) = \operatorname{li}(x) + O(x^{1/2 + \epsilon})[/math]
と表現しても同じことである。ただし、Oランダウの記号である。
  • 任意の自然数 n に対して
[math]\sigma(n) \le H_n + e^{H_n} \log H_n[/math]
が成り立つこと[7]。ここに Hnn 番目の調和数、すなわち
[math]H_n = \sum_{k=1}^n \frac{1}{k}[/math]
で定義される有理数である。

素数の分布

リーマンの明示公式English版は、与えられた数よりも小さい素数の個数を、リーマンのゼータ関数の零点を渡る和で表すものであり、予想される位置の周りでの素数の振動の大きさがゼータ関数の零点の実部によって制御されることを述べている。特に、素数定理における誤差項は、零点の位置に密接に関係している。例えば、β が零点の実部の上界であれば、差 π(x) − Li(x) は error bound O(xβ log(x)) を持つ[8]1/2 ≤ β ≤ 1 であることが既に知られている[9]

Von Koch (1901) はリーマン予想が素数定理の誤差に対する「最良の」上界を導くことを示した。Schoenfeld (1976) による,Koch の結果の正確なバージョンによれば、リーマン予想から

[math]|\pi(x) - \operatorname{Li}(x)| \lt \frac{1}{8\pi} \sqrt{x} \, \log (x), \qquad \text{for all } x\ge 2657[/math]

が従う、ただし π(x)素数計数関数であり、log(x)x自然対数である。

Schoenfeld (1976) はまた、リーマン予想から

[math]|\psi(x) - x| \lt \frac{1}{8\pi} \sqrt{x} \, \log^2 (x), \qquad \text{for all } x \ge 73.2[/math]

が従うことを示した。ここで ψ(x)第二チェビシェフ関数である。

Dudek (2014) はリーマン予想から次が従うことを示した:任意の x ≥ 2 に対して、ある素数 p が存在して、

[math]x - \frac{4}{\pi} \sqrt{x} \, \log x \lt p \le x[/math]

が成り立つ。これはクラメルの定理の明示的なバージョンである。

数論的関数の増大

リーマン予想は、上記の素数計数関数に加えて、他の多くの数論的関数の増大に関する強い上界も導く。

1つの例はメビウス関数 μ に関するものである。等式

[math]\frac{1}{\zeta(s)} = \sum_{n=1}^\infty \frac{\mu(n)}{n^s}[/math]

が、実部が 1/2 よりも大きいすべての s に対して右辺の和が収束して成り立つという主張は、リーマン予想と同値である。このことから次のことも結論できる:Mertens 関数

[math]M(x) = \sum_{n \le x} \mu(n)[/math]

によって定義すると、すべての ε > 0 に対して

[math]M(x) = O(x^{\frac{1}{2} + \varepsilon})[/math]

が成り立つという主張は、リーマン予想と同値である[10](これらの記号の意味については、ランダウの記法を参照)。order nRedheffer 行列の行列式は M(n) に等しいので、リーマン予想はこれらの行列式の増大に関する条件としても述べることができる。リーマン予想は M の増大度についてかなりきつい制限を与える、というのも Odlyzko & te Riele (1985) がわずかに強い Mertens 予想English版

[math]|M(x)| \le \sqrt{x}[/math]

を反証したからである.

リーマン予想は μ(n) の他の数論的関数の増大率についての多くの予想とも同値である。典型的な例は次の Robin の定理English版 {{#invoke:Footnotes | harvard_citation }} である:σ(n)

[math]\sigma(n) = \sum_{d \mid n} d[/math]

で与えられる約数関数とすると、

[math]\sigma(n) \lt e^\gamma n \log \log n[/math]

がすべての n > 5040 に対して成り立つことと、リーマン予想が真であることが同値である。ここで γEuler–Mascheroni 定数である。

別の例は Jérôme FranelEnglish版 によって発見され、ランダウによって拡張された[11]。リーマン予想は Farey 数列の項がかなり規則的であることを示すいくつかの主張と同値である。1つのそのような同値は以下のようである:Fn1/n で始まり 1/1 までの order n の Farey 数列とすると、すべての ε > 0 に対して

[math]\sum_{i=1}^m \left| F_n(i) - \frac{i}{m} \right| = O\left(n^{\frac{1}{2} + \varepsilon}\right)[/math]

が成り立つという主張は、リーマン予想と同値である。ここで

[math]m = \sum_{i=1}^n \phi(i)[/math]

は order n の Farey 数列における項の数である。

群論からの例として、g(n)ランダウの関数English版とする、つまり n 次の対称群 Sn の元の最大位数とする。Massias, Nicolas & Robin (1988) はリーマン予想が十分大きい全ての n に対する上界

[math]\log g(n) \lt \sqrt{\operatorname{Li}^{-1}(n)}[/math]

と同値であることを示した.

リンデレーフ予想とゼータ関数の増大

リーマン予想は様々なより弱い結果も導く。その1つは リンデレーフ予想English版である。これは臨界線上のゼータ関数の増大率に関する予想で、任意の ε > 0 に対して、t → ∞ のとき

[math]\zeta \left( \frac{1}{2} + it \right) = O(t^\varepsilon)[/math]

が成り立つというものである。

リーマン予想はまた、臨界帯の他の領域におけるゼータ関数の増大率に対するかなり鋭い上界も与える。例えば、

[math]e^\gamma \le \limsup_{t \rightarrow +\infty} \frac{|\zeta(1+it)|}{\log \log t} \le 2 e^\gamma[/math]
[math]\frac{6}{\pi^2} e^\gamma \le \limsup_{t \rightarrow +\infty} \frac{1/|\zeta (1+it)|}{\log \log t} \le \frac{12}{\pi^2} e^\gamma[/math]

を与えるので、ζ(1 + it) とその逆数の増大率は2倍の違いを除いて分かることになる[12]

素数の間隔が大きいことの予想

素数定理は平均的に素数 p とその次の素数の間の間隔English版log p であることを意味する。しかしながら、素数間の間隔には平均よりもはるかに大きいものもある。クラメルはリーマン予想を仮定してすべての間隔が O(p log p) であることを示した。これは、リーマン予想を用いて証明できる最もよい上界でさえ、正しいと思われるものよりも遥かに弱い場合である。すなわち、クラメルの予想English版はすべての間隔が O((log p)2) であることを意味しており、これは平均間隔よりは大きいが、リーマン予想から導かれる上界よりは遥かに小さいのである.数値計算はクラメルの予想を支持している[13]

リーマン予想に同値な主張

リーマン予想に同値な多くの主張が発見されているが、これまでのところそれらがリーマン予想を証明する(あるいは反証する)のに大きな進展をもたらしたことはない。いくつかの典型的な例は以下のようである。(他に約数関数English版 σ(n) に関するものがある。)

Riesz の判定法Riesz (1916) によって与えられた、以下の主張である:

[math]-\sum_{k=1}^\infty \frac{(-x)^k}{(k-1)! \zeta(2k)} = O\left(x^{\frac{1}{4}+\varepsilon}\right)[/math]

がすべての ε > 0 に対して成り立つこととリーマン予想が成り立つことは同値である。

Nyman (1950) はリーマン予想が真であることと次が同値であることを示した:

[math]f(x) = \sum_{\nu=1}^n c_\nu \rho \left(\frac{\theta_\nu}{x} \right)[/math]

の形の関数全体のなす空間、ただし ρ(z)z の小数部分で、0 ≤ θν ≤ 1 で、

[math]\sum_{\nu=1}^n c_\nu \theta_\nu = 0,[/math]

は、単位区間上の二乗可積分関数全体のなすヒルベルト空間 L2(0, 1) において稠密である。Beurling (1955) はこれを次を示すことで拡張した:ゼータ関数が実部が 1/p よりも大きい零点を持たないこととこの関数空間が Lp(0, 1) において稠密であることは同値である。

Salem (1953) はリーマン予想が真であることと次が同値であることを示した:積分方程式

[math]\int_0^\infty \frac{z^{-\sigma-1} \phi(z)}{e^{x/z} + 1} \, dz = 0[/math]

1/2 < σ < 1 に対して非自明な有界な解 φ を持たない。

Weil の判定法English版はある関数の正値性がリーマン予想と同値であるという主張である.関連するのは Li の判定法English版で,ある数列の正値性がリーマン予想と同値であるという主張である。

Speiser (1934) はリーマン予想が次の主張と同値であることを証明した:ζ(s) の導関数 ζ′(s) は帯

[math]0 \lt \Re(s) \lt \frac12[/math]

に零点を持たない。ζ(s) が臨界線上に1位の零点しか持たないことはその導関数が臨界線上に零点を持たないことと同値である。

一般リーマン予想の帰結

いくつかの応用は ディリクレの L 級数数体のゼータ関数のためにただのリーマン予想ではなく一般リーマン予想を用いる。リーマンゼータ関数の多くの基本的な性質はすべてのディレクレ L 級数に容易に一般化できるので、リーマンゼータ関数に対するリーマン予想を証明する手法がディレクレ L 級数に対する一般リーマン予想に対してもうまくいくというのはもっともらしい。一般リーマン予想を用いて初めに証明されたいくつかの結果は、後にそれを用いない無条件の証明が与えられたが、これらは通常はるかに難しい。以下のリストにある結果の多くは Conrad (2010) から取られている。

  • 1913年、グロンウォールは一般リーマン予想が類数1の虚二次体の Gauss のリストが完全であることを導くことを示した。しかし後に、Baker, Stark および Heegner が、一般リーマン予想を用いないこれの無条件の証明を与えた。
  • 1917年、ハーディとリトルウッドは、一般リーマン予想は
[math]\lim_{x \to 1^-} \sum_{p\gt 2} (-1)^{(p+1)/2} x^p = +\infty[/math]
という Chebyshev による予想を導くことを示した。この予想はある意味で、4 を法として 3 に合同な素数は 1 に合同なものよりも多いということを言っている。
  • 1923年、ハーディとリトルウッドは、一般リーマン予想は奇数に対するゴールドバッハ予想の弱い形、すなわち十分大きい任意の奇数は3つの素数の和であることを導くことを示したが、1937年、Vinogradov は無条件下での証明を与えた。1997年、DeshouillersEnglish版, Effinger, te Riele, および Zinoviev は、一般リーマン予想は5よりも大きい任意の奇数は3つの素数の和であることを導くことを示した。
  • 1934年、Chowla は、一般リーマン予想は次を導くことを示した:等差数列 a mod m の最初の素数はある固定された定数 K に対して高々 Km2log(m)2 である。
  • 1967年、Hooley は一般リーマン予想が原始根に関する Artin の予想English版を導くことを示した。
  • 1973年、Weinberger は一般リーマン予想が idoneal 数English版の Euler のリストが完全であることを導くことを示した。
  • Weinberger (1973) は、すべての代数体のゼータ関数に対する一般リーマン予想が次を導くことを示した:類数 1 の任意の数体は、ユークリッド整域であるか、あるいは判別式が −19, −43, −67, あるいは −163 の虚二次体である。
  • 1976年、G. Miller は一般リーマン予想が次を導くことを示した:数が素数であるかどうかミラー判定法によって多項式時間で判定できる。2002年,Manindra Agrawal, Neeraj Kayal および Nitin Saxena は、AKS素数判定法を用いて無条件にこの結果を証明した。
  • Odlyzko (1990) は、一般リーマン予想を数体の判別式と類数のより鋭い評価を与えるためにどのように使うことができるかを議論した。
  • Ono & Soundararajan (1997) は一般リーマン予想が次を導くことを示した:Ramanujan の整二次形式English版 x2 + y2 + 10z2 は、ちょうど18個の例外を除いて、それが局所的に表すすべての整数を表す。

排中律

リーマン予想のいくつかの帰結はその否定の帰結でもあり、したがって定理である。{{#invoke:Footnotes | harvard_citation }} は,Hecke, Deuring, Mordell, Heilbronn 定理の彼らの議論において、次のように言っている:

The method of proof here is truly amazing. If the generalized Riemann hypothesis is true, then the theorem is true. If the generalized Riemann hypothesis is false, then the theorem is true. Thus, the theorem is true!![注 3]     (punctuation in original)

一般リーマン予想が偽であるということによって何が意味されるかを理解するのに注意を払うべきである:ちょうどどのクラスのディレクレ級数が反例を持っているのか特定すべきである。

リトルウッドの定理

リトルウッドの定理は素数定理における誤差項の符号に関するものである。すべての x ≤ 1023 に対して π(x) < Li(x) であることが計算されており、π(x) > Li(x) であるような x の値は知られていない。このを参照。

1914年、リトルウッドは次のことを証明した:

[math]\pi(x) \gt \operatorname{Li}(x) + \frac13 \frac{\sqrt{x}}{\log x} \log \log \log x[/math]

となるような任意に大きい x の値が存在し、

[math]\pi(x) \lt \operatorname{Li}(x) - \frac13 \frac{\sqrt{x}}{\log x} \log \log \log x[/math]

となるような任意に大きい x の値も存在する。したがって、差 π(x) − Li(x) は無限回符号を変える。Skewes 数は最初の符号変化に対応する x の値の評価である.

リトルウッドの証明は2つの部分からなっている。リーマン予想を偽と仮定する部分(Ingham 1932, Chapt. V の約半ページ)と、リーマン予想を真と仮定する部分(約12ページ)である。

ガウスの類数予想

ガウスの類数予想は,与えられた類数を持つ虚二次体は有限個しかないという(ガウスの Disquisitiones Arithmeticae の article 303 において最初に述べられた)予想である.それを示す1つの方法は、判別式 D → −∞ のとき類数 h(D) → ∞ となることを示すことである.

リーマン予想に関わる以下の定理は Ireland & Rosen 1990, pp. 358–361 に記されている:

定理 (Hecke; 1918). D < 0 を虚二次体 K の判別式とする。すべての虚二次ディレクレ指標の L 関数に対する一般リーマン予想を仮定する。このとき

[math]h(D) \gt C \frac{\sqrt{|D|}}{\log |D|}[/math]

となるような絶対的な定数 C が存在する。

定理 (Deuring; 1933). リーマン予想が偽ならば,テンプレート:Mabs が十分大きいとき h(D) > 1 である.

定理 (Mordell; 1934). リーマン予想が偽ならば、D → −∞ のとき h(D) → ∞ である。

定理 (Heilbronn; 1934). 一般 Riemann 予想がある虚二次 ディレクレ指標の L 関数に対して偽ならば、D → −∞ のとき h(D) → ∞ である。

(Hecke と Heilbronn の仕事において、現れる L 関数は虚二次指標に付随するものだけであり、それは一般リーマン予想が真であるあるいは一般リーマン予想が偽であることが意図されているのはそれらの L 関数に対してのみである。ある三次のディレクレ指標の L 関数に対して一般 リーマン予想が成り立たなければ、一般リーマン予想は成り立たないが、これは Heilbronn が考えていたような一般リーマン予想の不成立ではなく、したがって彼の仮定は単に一般リーマン予想が偽であるというものよりも限定されていた。)

1935年、Carl Siegel はリーマン予想や一般リーマン予想を全く用いずに結果を強化した。

Growth of Euler's totient

1983年、J. L. NicolasEnglish版 は、無限個の n に対して

[math]\varphi(n) \lt e^{-\gamma} \frac{n}{\log \log n}[/math]

であることを示した {{#invoke:Footnotes | harvard_citation }}。ただし φ(n)Euler のトーシェント関数で,γEuler の定数である。

Ribenboim は次のように注意している:

The method of proof is interesting, in that the inequality is shown first under the assumption that the Riemann hypothesis is true, secondly under the contrary assumption.[注 4]

一般化と類似物

テンプレート:Expand section

ディリクレの L 級数と他の代数体

リーマンのゼータ関数を、形式的には似ているがはるかに一般的な大域的 L-関数に置き換えることによって、リーマン予想を一般化することができる。このより広い設定において、大域的 L-関数の非自明な零点の実部が 1/2 であると期待される。リーマンのゼータ関数のみに対する古典的なリーマン予想よりもむしろ、これらの一般化されたリーマン予想が、数学におけるリーマン予想の真の重要性の理由である。

一般化されたリーマン予想 (generalized Riemann hypothesis) は、リーマン予想を全てのディリクレの L-関数へ拡張したものである。とくにこの予想は、ジーゲルの零点English版1/21 の間にある L 関数の零点)が存在しないという予想を含んでいる。

拡張されたリーマン予想 (extended Riemann hypothesis) は、リーマン予想を代数体の全てのデデキントゼータ関数へと拡張したものである。有理数体のアーベル拡大に対する拡張されたリーマン予想は、一般化されたリーマン予想と同値である。リーマン予想は代数体のヘッケ指標L-関数へ拡張することもできる。

大リーマン予想English版 (grand Riemann hypothesis) は、全ての保型形式のゼータ関数(例えばヘッケ固有形式English版メリン変換)へ拡張したものである。

証明の試み

テンプレート:Expand section リーマン予想を証明したと発表した数学者もいるが、正しい解答として受け入れられたものはいまだ存在しない。Watkins (2007) はいくつかの正しくない解答をリストしており、より多くの正しくない解答は頻繁に発表されている

零点の位置

テンプレート:Expand section

零点の個数

関数等式を偏角の原理と合わせて考えれば虚部が 0T の間にあるゼータ関数の零点の個数は s = 1/2 + iT に対して次で与えられる:

[math]N(T) = \frac{1}{\pi} \mathop{\mathrm{Arg}}(\xi(s)) =\frac{1}{\pi} \operatorname{Arg} \left( \Gamma \left(\frac{s}{2} \right) \pi^{-s/2} \zeta(s) \frac{s(s-1)}{2} \right).[/math]

ここに偏角は、偏角 0∞ + iT から出発し、直線 Im s =T に沿って連続的に変化させることで定義される。これは大きいがよく分かっている項

[math]\frac{1}{\pi} \operatorname{Arg} \left(\Gamma \left(\frac{s}{2} \right)\pi^{-s/2} \frac{s(s-1)}{2}\right) = \frac{T}{2\pi} \log \frac{T}{2\pi} - \frac{T}{2\pi} + \frac{7}{8} + O(1/T)[/math]

と小さいがよく分かっていない項

[math]S(T) = \frac{1}{\pi} \operatorname{Arg} \left( \zeta \left( \frac{1}{2} + iT \right) \right) = O(\log T)[/math]

の和である。なので虚部が T の近くの零点の密度は約 (log T)/2π であり、関数 S はこれとの小さな差を記述する。関数 S(t) はゼータ関数の各零点において 1 飛び、t ≥ 8 に対しては零点の間で導関数がおよそ −log t で単調に減少する。

臨界線上の零点

テンプレート:Expand section Hardy (1914)Hardy & Littlewood (1921) は、ゼータ関数に関連したある関数のモーメントを考えることによって、臨界線上には零点が無限個存在することを証明した。Selberg (1942) は、少なくとも(小さい)正の割合の零点は臨界帯上にあることを証明した。Levinson (1974) は、ゼータ関数の零点をゼータ関数の導関数の零点と関連付けることで、それを 1/3 に改善し、Conrey (1989) はさらに 2/5 に改善した。

真偽の議論

テンプレート:Expand section リーマン予想に関する数学の論文はそれが真であるかどうか注意深く明言しない傾向にある。Riemann (1859)Bombieri (2000) のように、意見を述べる人の大半は、リーマン予想は正しいと予想(あるいは少なくとも期待)している。これについて深刻に疑っていることを表明する人は少なく、その中には Ivić (2008)Littlewood (1962) がいる。Ivić は懐疑的に考えている理由を並べている。また Littlewood は、誤りであると信じており、正しいという何らの証拠がない、正しいことを示す想像できる理由も全く存在しない、ときっぱり述べている。サーベイの論文 (Bombieri 2000, Conrey 2003, Sarnak 2008) の共通認識としては、リーマン予想が正しいという証拠は、強いが圧倒的ではないので、おそらく正しいであろうが、これを疑うのも妥当であるとしている。

関連項目

脚注

  1. Re は複素数の実部を示す記号。
  2. 素数計数関数 π(x)対数積分による近似公式を指す。同値命題の節の第一の命題を参照。リーマンの素数公式より、π(x) の対数積分による近似の誤差項はゼータ関数の零点が臨界帯の両端から遠ければ遠いほど小さくなることが分かる。この距離が最大限に遠いということ、即ち全てのゼータ零点が臨界帯の中心線上に整列しており、近似の誤差がその方針で考え得る限り最も小さくなるだろうということがリーマン予想のそもそもの意味である。
  3. ここでの証明の手法は本当にすごい.一般リーマン予想が正しいならば,定理は正しい.一般リーマン予想が間違いならば,定理は正しい.したがって,定理は正しい!!
  4. 証明の手法は次の点で面白い:不等式は初めリーマン予想が正しいという仮定のもとで示され、次に反対の仮定のもとで示される。

出典

  1. Bombieri 2000.
  2. 中村, 亨. (2015). リーマン予想とは何か. 講談社, 東京. 
  3. Nash, J. F. (2016). Open Problems in Mathematics. Springer, New York. 
  4. Connes, Alain (2016). “An Essay on the Riemann Hypothesis”. In: Open Problems in Mathematics (J. F. Nash Jr. and M. Th. Rassias, eds.), Springer: 225–257. doi:10.1007/978-3-319-32162-2_5. 
  5. ダービーシャー 2004, pp. 309, 411.
  6. Helge von Koch, "Sur la distribution des nombres premiers", Acta Mathematica 24 (1901), 159–182. doi:10.1007/BF02403071
  7. Lagarias, Jeffrey C., "An elementary problem equivalent to the Riemann hypothesis." American Mathematical Monthly 109 (2002), no. 6, 534-543.
  8. Ingham 1932, Theorem 30.
  9. Ingham 1932, p. 82.
  10. J.E. Littlewood, 1912; see for instance: paragraph 14.25 in Titchmarsh (1986)
  11. Franel & Landau 1924.
  12. Titchmarsh 1986.
  13. Nicely 1999.

参考文献

和書
洋書

外部リンク


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