ポーン

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テンプレート:チェスの駒 ポーン (Pawn、♙♟) はチェスの駒の一種で、歩兵を表している。

初期配置

白ポーンはチェスボードの2ランク、黒ポーンは7ランクのマスに配置する。


厳密にいえば、各ポーンには名前がついている。

  • ahのポーン : ルーク・ポーン(Rook’s Pawn)
  • bgのポーン : ナイト・ポーン(Knight’s Pawn)
  • cfのポーン : ビショップ・ポーン(Bishop’s Pawn)
  • dのポーン : クイーン・ポーン(Queen’s Pawn)
  • eのポーン : キング・ポーン(King’s Pawn)


記述式の棋譜を扱うのでなければ、あまり気にする必要はない。
ただし両端のルーク・ポーンについては、終盤戦で注意を要する場合もある[1]

基本的な駒の動き

チェスの駒の中で、ポーンだけは動かし方と敵の駒の取り方が違っている。将棋とも性質が大きく異なるため、特に注意が必要とされている。

動きの基本

前方(相手側)に1マスずつ進む事ができる。後戻りはできない。
直前のマスに味方の駒がある場合、前へ進む事ができない。
直前のマスに敵の駒がある場合、取る事も進む事もできない。

ポーンの初手

スタート地点にいるポーンは、(そのポーンの)初手に限り前方へ2マス進む事ができる。
2マスではなく、あえて最初から1マスずつ動いても問題はない。
スタート地点にいる場合でも、味方や敵の駒を飛び越える事はできない。
2マス先に敵の駒がいる場合は、直前に敵の駒がいる場合と同じく、取ることができない。

敵の駒の取り方 (1)

斜め前方に敵の駒があった場合、駒を取ってそのマスに進む事ができる。
斜め前方に敵の駒がなければ、ポーンは斜めに進む事ができない。

敵の駒の取り方 (2)

両方の斜め前に敵の駒がある場合は、どちらを取るか選ぶ事ができる。
ただし、同時に両方とも取る事はできない。
駒を両方とも取らずに、その間を通過させる事もできる。
その他

「アンパッサン」についてはアンパッサンを、「プロモーション」については次節を参照。

プロモーション(昇格・成る)

ファイル:Chess pll44.png ファイル:Chess qll44.png ファイル:Chess nll44.png ファイル:Chess rll44.png ファイル:Chess bll44.png

ポーンの動きは前方に進むだけで、後方に戻ることはできない。相手側の最終ランクに到達したポーンは、それ以上動けなくなってしまう。そのため、プロモーション(昇格・成る)[2]と呼ばれるルールが決められている。

相手側の最終列に達したポーンは、同色(味方)のクイーンビショップナイトルークのどれか好きな駒に昇格させなくてはならない。以前はこれらの駒への昇格だけでなく、敵駒への昇格や、昇格させずにポーンのままでいることも禁じられていなかった。しかし現在では、同色駒への昇格のみが公式規定で決められている。ポーンを到達させたプレイヤーは、同じ1手の一部としてポーンを昇格する駒に取り換える。取り換えたい駒が物理的に余っていない場合の対策は後述の通り。将棋の「成り」に似ているが、チェスの駒の中でプロモーションできるのはポーンだけである。

テンプレート:Chess diagram small

テンプレート:Chess diagram small


  • b7ポーンをb8に進め、クイーンに昇格させる場合、白はポーンをb8から取り去り、代わりにクイーンを置く。
  • その場合、棋譜は「b8=Q」または「b8Q」となる。
  • 後述のアンダープロモーションの場合は、ポーンを昇格させたい駒に取り換える。

ほとんどの場合、ポーンはクイーンに昇格する。仮に8個のポーン全部がクイーンに昇格したとしても、チェスのルール上は特に問題ない。しかし通常の駒のセットでは、クイーンは白黒それぞれ1個ずつしか用意されていない(別に昇格用として予備のクイーンが1個ずつ入っている駒のセットもある)。そのため一般的には、以下の方法でプロモーションに対応している。

  • クイーンがすでに取られている(もしくは予備のクイーンがある)場合には、それと昇格したポーンを交換して使用する(アンダープロモーションの場合はビショップ、ナイトあるいはルークと昇格したポーンを交換する)。
  • すでに取られた(もしくは予備の)クイーンがなく、ルークがすでに取られていれば、それを上下逆さまにして使用する。
  • クイーンも上下逆さまのルークも使えない場合は、ポーンを1つのマスに2個置いて使用する。
  • それもかなわない時には、目印となるありあわせの物体を付け加える(このようなケースは実戦ではほぼありえないと考えられる)。
  • 大会等では、他のチェス駒のセットからクイーン等を借りるという方法もある。

※ただし、これらは公式なルールではない。

アンダープロモーション

ポーンは最も強力なクイーンに昇格させるのが一般的だが、(ごく稀に)それ以外の駒を選んだ方が良いケースもある。
これはアンダープロモーションと呼ばれ、チェスの戦術の一つとされている。

ファイル:Chess pll44.png 48px ファイル:Chess qll44.png ファイル:Chess rll44.png ファイル:Chess bll44.png ファイル:Chess nll44.png

あえてクイーンを選ばない理由には以下のようなものがある。

  • クイーンに成った時のステイルメイト発生を解消するため(ルーク・ビショップに成る場合)
  • ナイトの特殊な動きを利用するため(ナイトに成る場合)
  • 自らをステイルメイトに入れるため(このケースは実戦でよりも作局で発生する)

上図はアンダープロモーションの一例。白ポーンをクイーンに昇格させてしまうと、黒キングは現在の場所から動けなくなり指し手がなくなってしまう。この結果ステイルメイトが成立し、(白が圧倒的有利な状況にもかかわらず)ゲームは引き分けに終わる。この場合、白はポーンをルークに昇格させればステイルメイトを回避できる。

ポーンの価値

ポーンは単体では最も弱い駒、価値の低い駒である。
しかしチェスの駒の半数はポーンが占めており、欠かすことのできない駒でもある。

  キング クイーン ルーク ビショップ ナイト ポーン
駒の価値 ∞(無限大) 9 5 3 3 1


これらの評価は一般的なものであり、絶対的なものではない。チェスの局面によって駒の価値は変動する。
特にポーンにはプロモーションがあるため、その直前の場所のポーンは価値が跳ね上がる。

  通常のポーン 7ランクの白ポーン 2ランクの黒ポーン
駒の価値 1 3 3

テンプレート:Chess diagram small

テンプレート:Chess diagram small

さまざまなポーンの形

「ポーンはチェスの魂」[3]と言われているように、ポーンは非常に重要な駒である。その形についても様々なケースがあり、重要な物には名前がついている。

  • パスポーン (Passed Pawn) :敵のポーンが正面と両隣りのファイルからなくなり、前進しやすくなったポーン。
  • ダブル・ポーン (Doubled Pawns) :味方同士で縦に2つ重なったポーン。3つの場合は「トリプル・ポーン」と呼ばれている。
  • バックワード・ポーン (Backward Pawn) :出遅れた後方のポーン。
  • アイソレイティッド・ポーン (Isolated Pawn) :孤立したポーン。
  • ポーン・チェーン (Pawn Chain) :ポーンが斜めに連なった状態。
  • フィックスド・ポーン (Fixed Pawns) :お互いの動きを止めあっているポーン。

注釈

  1. ルーク・ポーンは「呪われたポーン」とされていて、パスポーンであってもプロモーションが難しいケースが比較的多い。
  2. この「プロモーション」の訳語に関しては、日本チェス協会(JCA)が日本チェス規約の中で定めている用語に準拠した。
  3. 詳細については「フィリドール」を参照

参考文献

  • 『Chess Training』 Nigel Povah 著 CADOGAN Chess ISBN 1-85744-170-2
  • 『WEAPONS OF CHESS』 Bruce Pandolfini 著 A Fireside Book ISBN 0-671-65972-3
  • 『Best Lessons of a Chess Coach』 Sunil Weeramantry and Ed Eusebi 共著 David McKay Company ISBN 0-8129-2265-4
  • 『はじめてのチェス』 渡井美代子 著 成美堂出版 ISBN 4-415-02549-8

関連項目