ボストン・ダイナミクス

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ボストン・ダイナミクス英語: Boston Dynamics)は、ロボットの研究開発を手がけるアメリカ合衆国企業国防高等研究計画局 (DARPA) の支援の下開発した四足歩行ロボットビッグドッグ[1]や、人間のシミュレーションを行うCOTSソフトウェアDI-Guyといった製品を開発している。2013年12月にインターネット関連サービス大手のGoogle社に買収された[2]。2017年6月にソフトバンクグループが買収することを発表し[3][4]、2018年1月から3月の間に買収手続きが完了した。[5]

沿革

ボストン・ダイナミクスは1992年マサチューセッツ工科大学 (MIT) においてロボットと人工知能を研究していたマーク・レイバートEnglish版(当時教授)が、同大学をスピンアウトして設立された。[6][2]

設立当初は、American Systems Corporation社とともにNAWCTSDEnglish版との契約に下、DI-Guyというソフトウェアによる3Dシミュレーションを用いた米海軍用の航空機の発進トレーニングビデオを更新する業務に携わっていた。[7]

2013年12月13日、ボストン・ダイナミクス社はインターネット関連サービス大手のGoogle社に買収された。この買収はアンディ・ルービンが進める同社のロボティクスプロジェクトにおける8社目の買収であった。[8]

2016年3月にGoogle社が短期的には収益が期待できないとして売却を検討していると報道された[9][10]。2017年6月9日、ソフトバンクグループは子会社を通じてボストン・ダイナミクス社を買収することを発表[3][11]

2017年4月に行われたTEDカンファレンスにおいて、これまで開発してきたロボットについての講演が行われた。

製品

ビッグドッグ

ビッグドッグは、2005年にボストン・ダイナミクス社がFoster-MillerEnglish版社、NASAジェット推進研究所ハーバード大学と共同で開発した四足歩行ロボットである。[12] ビッグドッグはDARPAの出資の下[13]、車両が走行できない荒地において、兵士に随伴し物資を運搬するロボットラバを実現することを目指して開発された[14]。車輪の代わりとして、ビッグドッグには4本の脚が装備されており、この脚を用いることで車輪以上の踏破性を実現している。ビッグドッグは"世界で最も野心的な脚を持ったロボット" ("the world's most ambitious legged robot") とされており、340 lb (150 kg) の荷物を運びながら4 mph (6.4 km/h) の速度で兵士に随伴して行動することが可能で、35度以上の傾斜を持つ荒れた地形をも踏破することができる。[15]

ボストン・ダイナミクス社では、ビッグドッグを発展させた米軍向けの四足歩行ロボットLegged Squad Support SystemEnglish版 (LS3) の開発も行っている[16]

チーター

チーター (Cheetah) は、ボストン・ダイナミクス社が開発した四足歩行ロボットである。28mph(45.06km/h)でのギャロップ走行が可能で、2012年8月には脚を持ったロボットによる陸上移動において世界最速を記録した。これ以前の世界記録は、1989年MITにおける13.1 mph (21.08 km/h) であった。チーターの開発は、DARPAのMaximum Mobility and Manipulationプログラムの出資の下で行われた。チーターは脚に関節を持っており、それらを一歩ごとに曲げることで、実際の動物のような歩行と速度を実現している。最初に公開されたチーターは、研究室内で外部からケーブルによる電力供給を受けた上で、高速のトレッドミル上で走行する実験室レベルのものであった。しかし2013年10月3日には、ワイルドキャットと名付けられた新型による、屋外でのより自然に近い環境での実験の模様が公開されている[17][18]

リトルドッグ

リトルドッグ (LittleDog) は、ボストン・ダイナミクス社がDARPA向けに開発した小型の研究用四足歩行ロボットである。リトルドッグは他の研究機関が用いるテストベッドとして開発された。ボストン・ダイナミクスはリトルドッグをDARPAの標準プラットフォームとして整備している。[19][20]

RiSE

RiSEは、ボストン・ダイナミクス社が開発したロボットの一つで、小型の鉤爪を備えた脚を用いて、壁や木々、フェンスといった垂直な構造物を登ることができる。RiSEは壁面の状態に応じて姿勢を変えることができ、さらに急勾配でのバランス取りを助ける尻尾も備える。RiSEは小型のロボットで、長さが0.25 m、重量は2 kgで、登攀速度は0.3 m/sである。[21]

RiSEの6本の脚はペアのモーターにより駆動される。搭載されたコンピュータは脚の動きの制御と通信の管理、それに姿勢や脚ごとの負荷、接触状況などの各種センサーの機能を提供する。

ボストン・ダイナミクスによるRiSEの開発には、ペンシルベニア大学カーネギーメロン大学カリフォルニア大学バークレー校スタンフォード大学それにルイス・アンド・クラーク・カレッジEnglish版の研究成果が用いられている。RiSEの研究もDARPAの出資の下行われた。

PETMAN

PETMAN (Protection Ensemble Test Mannequin)[22]は、ボストン・ダイナミクス社が開発した化学防護服のテスト用の人型ロボットである。PETMANは同社が公開した初の人型ロボットであり、二足歩行に加え、実際の人間のような様々な動きを再現することが可能となっている。こうした技術の多くは、ビッグドッグの開発から派生したものである。[23]

Legged Squad Support System

Legged Squad Support System (LS3) は、ビッグドッグの軍用バージョンである。

アトラス

アトラスは、2013年にボストン・ダイナミクス社が公開した3世代目の人型ロボットである[24]。 2017年11月、新たにバク宙を披露するビデオを公開[25]。 2018年5月ランニングして障害物をジャンプする様子が公開された。[26]

スポットロボット、スポットミニ

電気駆動の四足歩行ロボット。

2015年2月に開発社内を散策する動画が公開[27]。ビッグドッグの様な不整地踏破や加速、衝撃に対する姿勢安定もある。エンジン駆動のビッグドックに対してモーター駆動音のみとなったため静音。

2016年6月には全高がスポットロボットの半分ほどに小型化されたスポットミニの動画が公開されている[28]。先端部に首を思わせる折りたたみ式アームとカメラを取り付けることもでき、アーム先端の空中位置固定やキッチンにおかれた物を判別し食器かごやゴミ箱に正しく置く様子が見られる。転倒時はアームを使用して起き上がることができる。

2017年4月にはスポットミニがTEDカンファレンスで動く様子が公開されている。11月には外装が刷新され[29]2018年2月にはドアを開ける映像が公開された。[30]2018年5月11日のステージ上で年内に契約メーカーで100体製造して2019年には量産して販売する計画が語られている。[31]

2018年6月には竹中工務店フジタ、ソフトバンクロボティクスにより建設現場における活用に向けた実証実験を実施[32][33]

参考文献

  1. David Hambling, Robotic 'pack mule' displays stunning reflexes, New Scientist, 3 March 2006.
  2. 2.0 2.1 Google、四足ロボット「BigDog」のメーカーBoston Dynamicsを買収”. ITmedia (2013年12月15日). . 2013閲覧.
  3. 3.0 3.1 “ソフトバンク、ロボット開発の米ボストン・ダイナミクスを買収”. ロイター (ロイター). (2017年6月9日). https://jp.reuters.com/article/softbank-idJPKBN19001L . 2017閲覧. 
  4. ソフトバンクがボストン・ダイナミクスをGoogleから買収』 2017年6月9日 Onebox News
  5. “ソフトバンクによるボストン・ダイナミクスの買収が完了 SBGの子会社に”. ロボスタ (ロボスタ). (2018年5月14日). https://robotstart.info/2018/05/14/softbank-boston-dynamics.html . 2018閲覧. 
  6. About Boston Dynamics (2005), Retrieved on 4 July 2007.
  7. Sharon Foster, "Updating Technology Without Upping the Price: Boston Dynamics completes first phase of catapult trainer upgrade", (subscription required), National Defense, November 1, 2001.
  8. "Google Adds to Its Menagerie of Robots", New York Times, December 14, 2013.
  9. Google is said to put boston dynamics robotics unit up for sale”. bloomberg (2016年3月17日). . 2016閲覧.
  10. In Setback For Robotics Push, Alphabet Has Put Boston Dynamics Unit Up For Sale
  11. ソフトバンクがボストン・ダイナミクスをGoogleから買収』 2017年6月9日 Onebox News
  12. Boston Dynamics”. . 2007閲覧.
  13. Markoff, John (2012年4月9日). “Pentagon Contest to Develop Robots to Work in Disaster Areas”. The New York Times. http://www.nytimes.com/2012/04/10/science/pentagon-contest-to-develop-robots-to-work-in-disaster-areas.html?_r=1 
  14. BigDog Boston Dynamics
  15. BigDog - The Most Advanced Rough-Terrain Robot on Earth”. Boston Dynamics. . 2011閲覧.
  16. LS3 Boston Dynamics
  17. WildCat Boston Dynamics
  18. Creepy Cat Robot Can Run 16mph”. Breitbart. . October 6, 2013閲覧.
  19. Greenemeier, Larry "DARPA Pushes Machine Learning with Legged LittleDog Robot", Scientific American, April 15, 2008
  20. "LittleDog: The Legged Learning Robot" . Accessed on October 20, 2008.
  21. RiSE: The Amazing Climbing Robot”. www.bostondynamics.com. . 14-10-2013閲覧.
  22. http://www.army-technology.com/projects/petman/
  23. Video of petman on the Boston Dynamics youtube channel
  24. Atlas Boston Dynamics
  25. ボストン・ダイナミクスのアトラスにはバク宙が出来る』 2017年11月17日 Onebox News
  26. Video of Atlas on the Boston Dynamics youtube channel
  27. Spot Boston Dynamics
  28. SpotMini Boston Dynamics
  29. Video of SpotMini on the Boston Dynamics youtube channel
  30. Video of SpotMini on the Boston Dynamics youtube channel
  31. “Boston Dynamics、4つ足「SpotMini」を2019年に発売へ”. ITmedia NEWS. (2018年5月13日). http://www.itmedia.co.jp/news/articles/1805/13/news030.html . 2018閲覧. 
  32. “竹中工務店、ソフトバンクロボティクス、ソフトバンクの3社で建設現場におけるBoston Dynamics社の「SpotMini」の活用に向けた実証実験を実施”. 竹中工務店. (2018年6月25日) 
  33. “フジタ、ソフトバンクロボティクス、ソフトバンクの3社で建設現場におけるBoston Dynamics社の「SpotMini」の活用に向けた実証実験を実施”. フジタ. (2018年6月25日). https://www.daiwahouse.com/about/release/group/20180619143727.html . 2018閲覧. 

関連項目

外部リンク