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| 作品名 = ブラック・レイン
 
| 原題 = Black Rain
 
| 画像 =
 
| 画像サイズ =
 
| 画像解説 =
 
| 監督 = [[リドリー・スコット]]
 
| 脚本 = クレイグ・ボロティン<br />ウォーレン・ルイス
 
| 製作 = [[スタンリー・R・ジャッフェ]]<br />シェリー・ランシング
 
| 製作総指揮 = クレイグ・ボロティン<br />ジュリー・カーカム
 
| 出演者 = [[マイケル・ダグラス]]<br />[[アンディ・ガルシア]]<br />[[高倉健]]<br />[[ケイト・キャプショー]]<br />[[松田優作]]<br />[[若山富三郎]]
 
| 音楽 = [[ハンス・ジマー]]
 
| 主題歌 = [[グレッグ・オールマン]]<br />「I'll be Holding On」
 
| 撮影 = [[ヤン・デ・ボン]]
 
| 編集 = [[トム・ロルフ]]
 
| 配給 = {{flagicon|USA}} [[パラマウント映画]]<br />{{flagicon|JPN}} [[ユナイテッド・インターナショナル・ピクチャーズ|UIP]]
 
| 公開 = {{flagicon|USA}} 1989年9月22日<br />{{flagicon|JPN}} 1989年10月7日
 
| 上映時間 = 125分
 
| 製作国 = {{USA}}
 
| 言語 = [[英語]]<br />[[日本語]]
 
| 製作費 = $30,000,000(概算)
 
| 興行収入 = $134,212,055<ref name="Gross">{{Cite web|url=http://www.boxofficemojo.com/movies/?id=blackrain.htm|title=Black Rain|work=[[Box Office Mojo]]|publisher=[[Amazon.com]]|accessdate=2012-04-16}}</ref>
 
| 配給収入 = 13億5000万円<ref>『キネマ旬報ベスト・テン85回全史 1924-2011』(キネマ旬報社、2012年)480頁</ref> {{flagicon|JPN}}
 
| 前作 =
 
| 次作 =
 
}}
 
『'''ブラック・レイン'''』(''Black Rain'')は、[[1989年]]公開の[[アメリカ合衆国の映画]]である。[[大阪]]の街を舞台に日米の刑事たちが協力してヤクザと戦う物語を描いた。豪華な日本人キャストでも話題になった。劇場映画作品としては[[松田優作]]の遺作である。
 
 
 
== ストーリー ==
 
ニューヨーク市警殺人課の刑事ニック・コンクリンは妻と離婚し、その子供の養育費を稼ぐのに日々苦労していた。そして、彼は麻薬密売事件の売上金を横領した嫌疑をかけられ、内務捜査官たちから査問を受けていた。そんなある昼下がり、ニックと、同僚のチャーリー・ビンセントは、レストランに居た日本のヤクザの幹部と子分を、もう一人のヤクザが刺殺する現場に出くわす。追跡の末に男を逮捕するものの、日本国内での犯罪で指名手配されていたため、その男・佐藤浩史を日本に護送することになった。
 
 
 
佐藤を護送する任に就き日本まで向かう二人だったが、到着した先の空港で警察官を装った佐藤の手下たちに佐藤を引き渡してしまう。権限がないにも関らず、強引に[[大阪府警察|大阪府警]]の捜査に加わろうとするニックとチャーリーだが、刑事部長の大橋警視はそれを許さず、二人の銃を押収した上で松本正博警部補を二人の監視役につけた。ニックとチャーリーは松本から佐藤に関する情報を受け取る一方、佐藤のアジトに突入する大阪府警の捜査に強引に参加し、松本は大橋に監督不行き届きを叱責される。ニックは佐藤のアジトからくすねたドル紙幣を燃やし、紙幣が偽札であることを突き止め松本に知らせようとするが、証拠品を盗んだことを咎められ険悪な状態に陥ってしまう。
 
 
 
しっくりこないニックと松本の関係を修復しようとチャーリーがクラブで仲を取り持とうとするが、ニックは佐藤への執着から一人席を外し、クラブ・ミヤコ外人ホステスのジョイスへ情報収集のため近付く。クラブ・ミヤコの帰り道、ふとしたことからニックはチャーリーとはぐれてしまう。チャーリーは自分のパスポートをコートごと暴走族に奪われたことで、佐藤の罠にはまる。そして佐藤は自分を逮捕したことへの復讐として、ニックの目の前で相棒のチャーリーをなぶり殺しにする。ニックは佐藤への復讐を誓い本格的に佐藤を追うことになる。
 
 
 
事あるごとに反発し合うニックと松本だが、やがて捜査を進めていくうちに信頼関係が生まれていく。捜査を進める内に偽札製造を巡る抗争が背景の事件であり、それが親分である菅井と、元子分で新興勢力の佐藤との抗争でもあることが判明していく。ニックと松本は再び佐藤のアジトを捜索し、クラブ・ミヤコのホステスの影が見えるようになり彼女を尾行。銀行の貸金庫から"ある物"を取り出し、尾行をまく工作をするもののニックにあっさりと見破られ空港でのニセ警官の一人を見かけ、その男を尾行することにする。ニックは佐藤と菅井の会談現場を目撃し、佐藤を後一歩まで追い詰めたものの、大阪府警に邪魔された上、取り逃がしてしまう。その上ニック自身勝手な行動をしたということでアメリカへ強制帰還させられることになり、松本も停職処分を受ける。
 
 
 
佐藤への復讐を諦めきれないニックは出発直前の飛行機から脱走し、松本のいる家へ向かい再び捜査をしようと持ちかけるが、「組織人として、これ以上は協力できない」と断られてしまう。そこでニックは、ジョイスから菅井に接触するための情報を得た後、佐藤逮捕のための協力を菅井に申し出る。菅井は佐藤と手打ちになったことを理由に申し出を断るが、「個人である自分が、相棒の復讐のために勝手に佐藤を抑える」と条件を付けたことで、ニックを手打ちの会談場所である郊外の農場に連れ出す。ニックは周囲の森に身を隠すが、そこに松本が現れ協力を申し出る。そこでニックは、佐藤が周囲に子分を配置して菅井を殺そうとしていることを知る。
 
 
 
佐藤は手打ちの場で菅井を襲い、それを合図に子分たちが菅井の子分と銃撃戦になる。ニックも会談場に乗り込み、逃走する佐藤を追跡する。ブドウ畑で佐藤を追い詰めたニックは格闘戦の末に佐藤を逮捕して松本と共に大阪府警に連行し、二人は大橋から表彰される。松本はニックを空港まで見送り、彼の息子宛てに土産を手渡し、ニックもお返しに松本の息子宛ての品を手渡し、搭乗口に向かう。松本がニックの土産を開けると、箱の中には行方不明になっていた偽札の原板が入っていた。それに驚いた松本がニックを呼び止めると、ニックは彼に向かってサムズアップをして帰国していった。
 
 
 
== スタッフ ==
 
*監督:[[リドリー・スコット]]
 
*撮影監督:[[ヤン・デ・ボン]]
 
*音楽:[[ハンス・ジマー]]
 
*日本側ラインプロデューサー:水野洋介
 
*日本側キャスティング:室岡信明
 
*協力:[[日産自動車]]、[[スズキ (企業)|スズキ]]、[[パナソニック|松下電器産業]]、ペプシコ・ジャパン
 
*日本側制作協力:[[フィルムリンク・インターナショナル]]、[[電通]]
 
 
 
== キャスト ==
 
* ニック・コンクリン(N.Y市警の刑事):[[マイケル・ダグラス]]
 
* チャーリー・ビンセント(N.Y市警の刑事):[[アンディ・ガルシア]]
 
* 松本正博警部補(大阪府警刑事部捜査共助課の刑事):[[高倉健]]
 
* ジョイス(クラブ・ミヤコのホステス):[[ケイト・キャプショー]]
 
* 佐藤浩史(菅井の元子分):[[松田優作]]
 
* 大橋警視(松本刑事の上司・大阪府警刑事部長):[[神山繁]]
 
* オリヴァー(ニックの上司):[[ジョン・スペンサー (俳優)|ジョン・スペンサー]]
 
* 片山(佐藤の子分):[[ガッツ石松]]
 
* 梨田(佐藤の子分):[[内田裕也]]
 
* 菅井国雄:[[若山富三郎]]
 
* 菅井の用心棒:[[安岡力也]]
 
* 菅井の用心棒:[[プロフェッサー・タナカ]]
 
* 吉本(佐藤の子分):[[國村隼]]
 
* 菅井の子分:[[島木譲二]]
 
* 佐藤の情婦(クラブ・ミヤコのホステス):[[小野みゆき]]
 
* 松本の息子:[[ケン・ケンセイ]]
 
* フランキー(賭けレースの元締め):[[ルイス・ガスマン]]
 
* 大橋の部下:[[阿波地大輔]]、佐々五郎、[[チャンバラトリオ|伊吹太郎]]
 
* 農夫に変装した刺客:[[アル・レオン]]
 
* 手打ちの場のヤクザの組長:[[林彰太郎]]
 
* 指詰めの刀を持ってくる組長:[[小幡利城]]
 
* ニックにうどんの食べ方を教える女性:[[津島道子]]
 
 
 
== 日本語吹き替え ==
 
{| class="wikitable" style="text-align:center"
 
|-
 
! rowspan="2"|役名
 
! rowspan="2"|俳優
 
! colspan="2"|日本語吹替
 
|-
 
! [[フジテレビジョン|フジテレビ]]版 || ソフト版
 
|-
 
| ニック・コンクリン || [[マイケル・ダグラス]] || [[小川真司]] || [[内田直哉]]
 
|-
 
| 松本正博警部補 || [[高倉健]] || [[大塚明夫]] || [[立木文彦]]
 
|-
 
| 佐藤浩史 || [[松田優作]] || 英語シーンカット || [[高階俊嗣|髙階俊嗣]]
 
|-
 
| チャーリー・ビンセント || [[アンディ・ガルシア]] || [[江原正士]] || [[森川智之]]
 
|-
 
| ジョイス || [[ケイト・キャプショー]] || [[一城みゆ希]] || [[深見梨加]]
 
|-
 
| 大橋警視 ||colspan="3"|[[神山繁]]
 
|-
 
| 佐藤の子分 ||colspan="2"|[[ガッツ石松]] || [[後藤哲夫]]
 
|-
 
| 菅井国雄 || [[若山富三郎]] ||rowspan="2"|[[小林勝彦]] ||rowspan="2"|[[藤本譲]]
 
|-
 
| オリヴァー || [[ジョン・スペンサー (俳優)|ジョン・スペンサー]]
 
|-
 
|}
 
*フジテレビ版 - 初回放送:[[1996年]][[3月9日]]20:59-23:09『[[ゴールデン洋画劇場]]』
 
:その他の声の出演:[[上田敏也]]、[[小島敏彦]]、[[亀井三郎]]、[[緒方賢一]]、[[筈見純]]、[[立木文彦]]、[[後藤敦]]、[[神谷和夫]]、[[松本大 (声優)|松本大]]、[[茶風林]]、[[大川透]]
 
:演出:[[伊達康将]]、翻訳:宇津木道子、調整:荒井孝、効果:[[サウンドボックス]]、制作:[[東北新社]]
 
* DVD版
 
:演出:久保宗一郎、翻訳:宇津木道子(追加翻訳:杉田朋子)
 
 
 
== 概要・撮影背景 ==
 
{{出典の明記|date=2015年10月|section=1}}
 
=== 概要 ===
 
*日本側のキャスティング担当者とロケーションアレンジャーのおかげで外国映画の中でよく見受けられる「おかしな日本像」は多くはない。
 
*[[松田優作]]は、この映画の撮影の時点ですでに[[癌]]に侵されていたが、病をおして撮影に臨んだ(癌の事実を知っていたのは[[安岡力也]]のみだった)。しかし、映画公開直後に急死してしまい、この映画がもとで親交を深めたチャーリー役の[[アンディ・ガルシア]]は彼の死を悼んだ。この作品制作中の評判で松田優作の次回作は[[ロバート・デ・ニーロ]]出演、[[ショーン・コネリー]]監督作品のオファーが来ていた。
 
*なお、題名の『ブラック・レイン(Black Rain)』とは、原爆投下や空襲によって起こる煤混じりの雨を指している(作中、菅井が大阪空襲後の黒い雨に纏わる因縁をニックに語る)。菅井はアメリカが戦後日本人にもたらした個人主義が、義理人情の価値観を喪失した佐藤のようなアウトローを産んだと暗にアメリカ人を批判し、「黒い雨」という言葉を象徴的に用いる。同年公開の邦画『[[黒い雨 (映画)|黒い雨]]』のように戦争をストーリーの中心に据えた映画ではない。
 
 
 
=== 撮影の背景 ===
 
*ストーリー中盤の[[製鉄所]]のシーンで、早朝に製鉄所の制服に身を包んだ作業員達が、大挙して[[自転車]]で作業場へと向かう風景が描かれている。中国と混同しているのではないかと言われるこの場面に関してリドリー・スコットは、バイクを追跡するも道を阻まれ苛立つ[[シーケンス]]を演出するために意図的に設定した場面であり、決して中国と混同したものではないと語っている(「[[キネマ旬報]]」インタビューより)。製鉄所などの広大な敷地をもつ作業所内では自転車の利用は珍しくないが、現実には連絡バスや自動車の利用も多く、出退勤時に自転車であふれかえるような光景は見られない。
 
*リドリー・スコットは『ブレードランナー』で描かれていたような雑多で猥雑なイメージを日本に求めていたが、実際の日本はかなり清潔な街並みであったために驚いたという。そのためにロケーションはそれらを満たすであろう新宿歌舞伎町を当初予定地に挙げていた。
 
*撮影にあたっては、日本側の警察による交通規制の協力がほとんど得られない事情からロケ地調整に苦労した。
 
**当初の監督の希望ロケーションは東京新宿歌舞伎町であったが、警察との折衝の結果不可能となり、比較的警察協力の融通が利く大阪、関西方面に変更された。10週間の撮影を計画したものの、各所で期待した協力が得られなかったために5週間で切り上げて帰国した<ref>{{PDFlink|[http://www.jetro.go.jp/jfile/report/05000987/05000987_001_BUP_0.pdf 諸外国におけるロケーション・ハンティング戦略実態調査報告-日本貿易振興機構]}}6ページ参照</ref>。[[広島市]]もロケの候補になっていた。撮影できなかった部分は後述のとおり米国で行った。
 
**ラストシーンのニックと佐藤の一戦の舞台であるブドウ畑農場は、日本国内という設定ではあったが日本の農地の風景ではない。アメリカの裕福な日本文化マニアの外国人の私有地(サンフランシスコ郊外<ref>IMDbに拠れば[[ナパ郡 (カリフォルニア州)|ナパバレー]]である。</ref>ということが『[[SmaSTATION!!#SmaSTATION-6|SmaSTATION6]]』の松田優作特集で公表された)を借りて撮影された。山林の中に立っている標識の漢字は外国人が適当に書いたもので場所が国外ということを分からせてくれる。また、このシーンで登場する佐藤が乗った[[メルセデス・ベンツ W126|メルセデス・ベンツSクラス]]([[ケーニッヒ]]仕様車)は、ダミーの「大阪」ナンバーをつけた対米輸出仕様車である。
 
**他にも強制送還されるニックが飛行機から抜け出す空港のシーン、チャーリーが佐藤一味に殺される地下駐車場のシーン、菅井の自宅豪邸、クラブ・ミヤコのシーン、佐藤のアジトシーンもアメリカや香港で撮影されている(後者2つについては主要キャスト以外の日本人が英語訛りの日本語を話しているためそれがわかる)。
 
*ケイト・キャプショーの登場場面のほとんどは米国で、カメラの切り替えでいかにも大阪でロケを行っているように見せている。唯一日本で撮影したシーンが使われているのは、今はなき[[心斎橋]](地名ではなくかつての長堀川域に実在し、1910年に二代目として架橋され、同川が埋め立てられ長堀橋筋となって以降の1964-95年の間、歩道橋として再利用されていた橋の名前を指す。2014年現在は心斎橋筋通路に欄干部が再々利用されている)の上でホームレスの男性に「これでパンでも買って」というシーンである。加えて菅井宅は『[[ブレードランナー]]』のデッカード宅と同じロサンゼルスのエニス・ブラウン邸<ref>IMDbに拠れば住所は2607 Glendower Avenue, Los Feliz, Los Angeles, California, USA</ref>である(特徴的な[[フランク・ロイド・ライト]]作のブロック壁で判別可能)。
 
*佐藤の愛人をニックと松本が尾行するシーンは[[神戸市|神戸]]で撮影されている。
 
**神戸ナンバーの車だらけの中、佐藤の部下、梨田が乗ったタクシーだけは「なにわ」ナンバーだった。
 
**銀行の支店や駅に「[[元町 (神戸市)|元町]]」と表示されている(撮影に使われた銀行の出入り口は[[りそな銀行|旧協和銀行]]元町支店で、統廃合され現存しない)。
 
**明らかに[[神戸市バス]]とわかるバスが映っている。
 
**意味不明な街頭演説の音声(「社会党の今村マサコでございます…」と聞き取れる)が流れているが、なぜか英語訛りがある。
 
*DVD特典のメイキングによれば、クライマックスシーンは2バージョン撮影されている。1つ目は「ニックが佐藤を殺すバージョン」。しかし「ニックが何かを学んだなら殺さないはず」と考えた監督たちは、「殺さず連行するバージョン」も撮影した。監督の心には「殺せ」という叫びも聞こえたが、殺せば物語は行き詰る上、佐藤は死なせるには魅力的すぎると思え、両方とも撮影して後で決めることにしたという。
 
**警察に連行されるシーンは上映版では杭をカメラフレームに収めたカットから警察署内の扉を開ける場面に切り替わるが、第一試写版では警察署内の廊下を通過して階段を上がり扉を開ける流れが撮影され、終始ふてぶてしい笑顔を浮かべる佐藤が収録されており、一般公開前のプレス用資料には、これらの場面スチルが配布されていた。
 
*米国のスタッフを驚かせた逸話として、佐藤がバイクに乗るシーンは全てスタント無しで松田優作本人が演じたことが挙げられる。しかし松田は一連の「[[遊戯シリーズ]]」にてスタントを全て本人がこなしており、松田はこれを当然と考えており、自分のやり方が正しかったと後に述懐している(「[[プレイボーイ]]」誌、松田優作インタビューより)。
 
*佐藤がバイクに乗るシーンで着用しているゴーグル風のサングラスは日本側で調達された1987年の[[ジャン=ポール・ゴルチエ]]製コレクションである。市販モデルは平面レンズタイプであったが、レンズに映り込む光を複雑にしたいと監督から要請があり、球面レンズに交換された。
 
*大阪府警の機動隊員はジュラルミンの楯ではなく、狙撃用のライフルを持っていた。
 
*ラストの空港のシーンで、松本がニックに「お子さんに」と渡す箱の包装は、当時関西圏で中堅の玩具チェーン店「いせや」の物であるので、中身は玩具と想像できる。公開当時、いせや常連客の間で話題になり、問い合わせがよくあったという。ちなみに逆にニックが松本に渡した箱の包装は阪急百貨店の物である(Hankyuの英字ロゴが確認できる)。
 
 
 
=== キャスティングについて ===
 
*ホテル内でスコット監督と行われた佐藤役のオーディションには、決定した松田優作の他に、[[萩原健一]]、[[根津甚八 (俳優)|根津甚八]]、[[小林薫]]、[[世良公則]]、[[田代まさし]]、[[遠藤憲一]]などが参加していた(「[[プレイボーイ]]」誌インタビューより)。
 
**このオーディションで松田優作は、自分で締めていたネクタイを外し、それを手錠に見立て手首に結び本番さながらの迫真の演技を披露し佐藤役を獲得した。松田は当初、一次審査(書類選考)の時点で落とされていたが日本側のスタッフが、松田がそのようなレベルの役者ではないとアメリカ側のスタッフを説得し実現したものだった。
 
**[[萩原流行]]もオーディションを受けたが意中の役は射止められなかった。その際、松本刑事の部下役で打診されたが丁重に断った。しかし、松本役が高倉健だと後で知って後悔したと[[日本テレビ放送網|日本テレビ]]『[[カミングダウト]]』<ref>放送日は不明だが、2004年12月に発売された番組本に掲載されている。</ref>で語っている。
 
**元々は『[[海と毒薬 (映画)|海と毒薬]]』をベルリン映画祭で見たプロデューサーが主演の[[奥田瑛二]]に佐藤役を打診したが、本作と同時期に公開された『[[千利休 本覺坊遺文]]』との撮影スケジュールが合わず、断ったため、オーディションが行われた([[山口猛]]著『松田優作 炎静かに』より)。
 
**[[木村祐一]]もオーディションを受けたがすぐに終わり、落選した。木村によると島木譲二はパチパチパンチをやって合格したらしい(『[[ダウンタウンDX]]』2007年12月13日放送分より)。
 
**先述の木村同様、[[今田耕司]]もオーディションに参加しており、当時会社命令で他の吉本芸人ともどもオーディションを受けるも本人は乗り気でなく、オーディション中も自身の質問に対し、コメディアンである事を伝えると外国人スタッフから「コメディアンなら何か面白い事をやってみろ」と要求されるも外国人に自分のギャグを披露しても伝わるわけがないと思った今田が「いや、ボクは別にいいです」と答えたところ、質問したスタッフが不思議そうな表情を浮かべながら「お前はチャンスがいらないのか?」と云われた。
 
**クランクイン前に、[[マイケル・ダグラス]]と親交を結んだ[[坂本龍一]]に、高倉健演じる松本正博役をやらないかというオファーがあった<ref>「SELDOM - ILLEGAL - 時には、違法」[[坂本龍一]] 著 1989年 角川書店</ref>。坂本は、当時自身のアルバム「[[ビューティ]]」の制作に時間を割いていた上、「脚本を読んだら、自分ではなくて、[[勝新太郎]]のような渋い俳優がやるべきだと思った」とのことである。坂本のこのアルバムの1曲め"Calling From Tokyo"はニックと菅井が「クラブみやこ」で目を合わせるシーンに使用され、サントラにも収録されている("JAZZ #1"というタイトルの別アレンジとして)。
 
*なお、[[マイケル・ダグラス]]は日本人の殺人鬼を演じないかと[[ジャッキー・チェン]]に言ってきたが、この映画はアジア人を悪く見せたし、ファンが悪者を演じる僕を見たがるとも思わなかった。(自伝“IAM JACKIE CHAN”より)と出演を断ったようである。
 
**ニック役に[[リチャード・ギア]]が候補になっていた。
 
**当初、菅井国雄の役は[[小林桂樹]]が[[オファー]]を受けていた。
 
**この作品のロケを見学していたデコトラの親睦団体である浪花会とロンサムロードのメンバーが、監督から映画出演を依頼された。
 
 
 
=== 使用車両について ===
 
*尾行などで乗ったタクシーはすべて「[[日本タクシー (大阪府)|日本タクシー]]」である。
 
*スタッフが移動に使った車はほとんどが「[[さくらタクシー]]」である。(当時珍しかった自動車電話が全車両に配備されていたため)
 
*アメリカ映画ユニオンの規定により俳優1人につきキャンピングカー1台を用意する必要があったため、日本中のレンタルキャンピングカーが集められ、ロケ現場には全国のナンバーが付いたキャンピングカーが集結した。
 
*アメリカ映画ユニオンの規定によりあたたかい物が食べられるケータリング車が必要であったが、当時の日本にはあまりそういったものがなかったため、縁日などにある「屋台」がロケ現場に用意され、スタッフは撮影時間中いつでも、うどん、やきそば、たこ焼き、飲み物などが用意され、外国人スタッフにはサンドイッチなどが用意された。
 
*ニックのバイクは[[ハーレーダビッドソン]]XLCR、ニックにニューヨークで賭けレースを挑む男は[[スズキ・GSX-F]]1100(1988年式)<ref>[[カウル]]側面に大きくRとデカールが貼ってあるが車両はFである。</ref>。佐藤のバイクは[[スズキ・GSX-R]]1100(1986-1988年式のいずれか)、佐藤の手下はGSX-R400(1987-1989年式のいずれか)、[[スズキ・RH250]]、RA125など佐藤側のバイクは全てスズキ製が使用されている。
 
*[[2ストローク機関|2st]][[単気筒エンジン]]の[[デュアルパーパス|オフロードバイク]]も排気音は[[4ストローク機関|4st]]多気筒のものに殆どの場面で差し替えられている。
 
 
 
=== テレビ放送 ===
 
*地上波全国ネット([[フジテレビジョン|フジテレビ]]『[[ゴールデン洋画劇場]]』)で初放送された際、吹替版ではなく字幕版で放映された。しかし同じ『ゴールデン洋画劇場』で3回目は吹替版が放送され、以降[[テレビ東京]]『[[木曜洋画劇場]]』でも吹替版で放送。出演した日本人キャストの英語台詞部分をキャスト本人が吹き替えるのが通例だが、日本人キャストで本人が吹き替えたのは大橋役の神山繁(DVD版も担当)と佐藤の子分役のガッツ石松のみで、松本役は[[高倉健]]がギャラとスケジュールの関係から起用が見送られ、日本語の台詞も含め[[大塚明夫]]が吹き替えた(DVD版は[[立木文彦]])。一方で吹き替え収録時、故人となっていた若山富三郎は[[小林勝彦]](DVD版は[[藤本譲]])が英語台詞の入る場面(ゴルフ場、菅井の自宅、ニックに散弾銃を渡すシーン)を日本語の台詞も併せて吹替え(吹替台詞も関西弁になっている)、日本語のみの部分は原音で対応した。松田優作は製鉄所内でニックに呼びかけるシーンで英語の台詞を言っているがその箇所だけカットして対応した。
 
*木曜洋画劇場で、製鉄所構内を走る[[ダンプカー]]の[[あんどん|アンドン]]に描かれていた『[[エンドレスナイト]]([[関西テレビ]]で放送されてた番組)』の文字と『[[フジサンケイグループ]]の目玉マーク』は映像処理されずそのまま放映された。
 
 
 
=== その他 ===
 
*[[ポール・バーホーベン]]、[[ピーター・ハイアムズ]]、[[ジョン・バダム]]が監督の候補になっていた。
 
*主人公がうどんを啜るシーンは、音を立てない食事を旨とする欧米人にカルチャーショックを与え、話題になった。
 
*米国内での[[広告媒体|宣伝素材]]に使われたタイトルの日本語表記がことごとく「ブラック・ンイレ」になっている<ref>その際の[[誤植|誤表記]]に基づく[[POP広告]]の写真が、[[宝島社]]の『[[VOW]]3』(1991年、ISBN 4-7966-0138-4)のp.11に収録されている。</ref>。
 
*文学座つながりの[[渡辺徹 (俳優)|渡辺徹]]が、『太陽にほえろ』で競演中、松田優作から演技指導を受けたらしい。それは、「相手の胸ぐらを掴みながらセリフを言う時、まず相手を睨み深呼吸をいったんしろ、そうするとより怖いセリフになるんだ」というものであった、それを松田自身が実践したのが『ブラック・レイン』で佐藤がレストランに登場するシーンである(『[[ダウンタウンDX]]』より)。
 
*大橋警視役の[[神山繁]]によると、「セリフが毎日変わった。毎日新しいシナリオを渡された」とのこと([[日本放送協会|NHK]]『[[英語でしゃべらナイト]]』で本人談)。
 
*漫画『松田優作物語』では、[[マイケル・ダグラス]]が、チャーリーが佐藤に殺されるシーンの撮影で「チャーリー! 逃げろ!」と叫ぶべきところを、「アンディ! 逃げろ!」と[[アンディ・ガルシア]]の本名のほうを叫んでNGを出してしまったとある。松田優作のあまりの気迫に「アンディ・ガルシアが本当に殺される」と錯覚したという。
 
* [[朝の連続テレビ小説]]『[[純ちゃんの応援歌]]』の撮影で大阪に滞在していた[[唐沢寿明]]はミナミを散歩中に同作の撮影現場に遭遇し、マイケル・ダグラスと高倉健に駆け寄り握手してもらったのが忘れられない大阪の思い出と明かしている<ref>{{Cite news |title=唐沢寿明 健さんとの握手に大感激…映画撮影現場に遭遇 |newspaper=[[スポーツニッポン]] |date=2014-09-14 |url=http://www.sponichi.co.jp/entertainment/news/2014/09/14/kiji/K20140914008928160.html |accessdate=2014-09-15 |format= |agency= |location= |publisher= |id= |page= |pages= |at= |language= |trans_title= |quote= <!--|archiveurl=http://web.archive.org/web/20140915084453/http://www.sponichi.co.jp/entertainment/news/2014/09/14/kiji/K20140914008928160.html |archivedate=2014年9月15日--> |ref= |postscript= }}</ref>。
 
 
 
== 関連項目 ==
 
[[ファイル:Kirin Plaza.JPG|thumb|220px|「クラブみやこ」の外観に使用された[[KPOキリンプラザ大阪]](写真は閉館間際の2007年7月に撮影)]]
 
=== ロケ地 ===
 
==== 大阪市 ====
 
*[[中央区 (大阪市)|中央区]]
 
**[[大阪府庁舎]] - 佐藤のアジトにガサ入れに向かうためパトカーが出動する場面でパトカーが出てくるところは南側の夜間通用口。
 
**[[心斎橋]] - 先述のジョイスが心斎橋(当時あった橋の名前)の上でホームレスの男性に「これでパンでも買って」と言うシーンが撮られた場所。(橋の歩道部分の両端に蛍光灯を長くならべ、スモークをたいて撮影した)背後には今はなきソニータワーが写っている。
 
**[[KPOキリンプラザ大阪|キリンプラザ大阪]] - [[道頓堀]] - 菅井が経営する「クラブみやこ」とされる外観を撮影。内部はアメリカで撮影。2007年10月末をもって閉館され、解体。跡地は商業ビルLuz Shinsaibashi(ラズ心斎橋)を新たに建設、核テナントとしてスウェーデンのアパレル会社[[H&M]]が入居している。
 
*[[北区 (大阪市)|北区]]
 
**[[阪急梅田駅]]ターミナルビル一階コンコース - チャーリーが[[パスポート]]が入ったコートをバイクの男(吉本)に奪われ追いかけるシーンで登場。現在はリニューアルされて新たに[[梅田阪急ビル]]となり、当時の面影はない。
 
**[[豊崎]] - 菅井が練習していた打ちっぱなしゴルフ場。現存せず。近くに仁丹の看板が映る。
 
*[[淀川区]]
 
**[[十三 (大阪府)|十三]] - サカエマチ商店街という、[[十三ファンダンゴ]]や[[がんこ]]寿司の発祥の地が使われた。ニックとチャーリーが[[暴走族]]に絡まれるシーンが撮られた場所。ネオンサインが光っているのに二人以外歩いている人間は居なかった。
 
*[[福島区]]
 
**[[大阪市中央卸売市場]] - ニックと松本が佐藤の愛人を尾行・張り込みを行ったシーンで登場。
 
*[[城東区]]
 
**[[京橋 (大阪市)|京橋]] - 佐藤らが居た事務所(パチンコ店の上階)を強制捜索するシーン。画面奥に[[大阪環状線]]が走っている。パチンコ店(京一会館)に警官隊が踏み込むところまでが実際にロケが行なわれた京橋での撮影。尚、京一会館はこの日の撮影の為、臨時休業した。事務所に突入、そして家宅捜索中のシーンはアメリカで撮影。
 
*[[阿倍野区]]
 
**[[阿倍野警察署]](建て替え前の旧庁舎) - 高倉健演じる松本刑事が所属する大阪府警刑事部内や刑事部長室でのシーンが撮影された。
 
**[[あべの筋]] - 警察車両が赤色灯を点けて走行しているシーンや歩道のおでん屋台でのニックとチャーリーの会話シーン。道路に[[阪堺電車]]の軌道がある。
 
*[[西成区]]・[[大正区]]・[[住之江区]]
 
**[[千本松大橋]]、[[中山製鋼所]]付近の[[木津川 (大阪府)|木津川]]上空
 
**[[南港ポートタウン]] - 松本刑事の自宅。ニックが訪問する。
 
*[[阪神高速道路]] - ニックと松本が佐藤の愛人を車で尾行。
 
 
 
==== 堺市 ====
 
*[[堺区]]
 
**[[新日本製鐵堺製鐵所]] - 佐藤の子分が乗ったタクシーを追うシーンと、中の事務所で佐藤と菅井らの密談シーンや銃撃シーンで撮影。
 
 
 
==== 神戸市 ====
 
*[[中央区 (神戸市)|中央区]]
 
**[[元町 (神戸市)|元町]] - 先述の尾行シーンが撮られた場所。
 
 
 
== 脚注 ==
 
<references/>
 
 
 
== 文献 ==
 
*アメリカ映画''Black Rain''と日本映画『黒い雨』 との比較研究論文として、Yoko Ima-Izumi([[今泉容子]])著 "Nuclear Bomb Films in Japan and America: Two ''Black Rain'' Films" 『英米文学・英米文化試論:太平洋横断アメリカン・スタディーズの視座から』 [[成田興史]]編、[[晃学出版]]、2007年、ISBN 9784903742021がある。
 
 
 
== 外部リンク ==
 
* {{Allcinema title|20313|ブラック・レイン}}
 
* {{Kinejun title|7918|ブラック・レイン}}
 
* {{Amg movie|133366|Black Rain}}
 
* {{IMDb title|0096933|Black Rain}}
 
 
 
{{リドリー・スコット監督作品}}
 
{{DEFAULTSORT:ふらつくれいん}}
 
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[[Category:警察官を主人公としたフィクション作品]]
 

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