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{{生物分類表
 
|名称 = ブラウントラウト
 
|画像 = [[File:Salmo_trutta.jpg|250px]]
 
|画像キャプション =
 
|省略 = 条鰭綱
 
|目 = [[サケ目]] {{Sname||Salmoniformes}}
 
|科 = [[サケ科]] {{Sname||Salmonidae}}
 
|属 = [[タイセイヨウサケ属]] {{Snamei||Salmo}}
 
|種 = '''ブラウントラウト''' {{snamei|S. trutta}}
 
|下位分類名 = 多型
 
|下位分類 =
 
* ''Salmo trutta'' morpha ''trutta''
 
* ''Salmo trutta'' morpha ''fario''
 
* ''Salmo trutta'' morpha ''lacustris''
 
|学名 = {{snamei|Salmo trutta}}<br />{{AUY|Linnaeus|1758}}<ref>{{FishBase species|genus=Salmo|species=trutta}}</ref>
 
|和名 = チャマス(茶鱒)
 
|英名 = [[:en:Brown trout|Brown trout]]<br />[[w:Sea trout|Sea trout]]
 
|status = LC
 
|status_ref = <ref>{{IUCN|assessors=Freyhof, J.|year=2013|title=''Salmo trutta''|version=2014.3.|id=19861}}</ref>
 
}}
 
[[File:Salmo trutta fario-1.jpg|thumb|right|200px|河川型]]
 
[[File:Faroe stamp 250 brown trout (salmo trutta fario).gif|right|thumb|200px|1994年2月に[[フェロー諸島]]で発行された切手]]
 
'''ブラウントラウト'''(学名:''Salmo trutta'')は、[[サケ目]][[サケ科]]に属する魚で、3つの型からなる。河川型 (''fario'') と 降湖型 (''lacustris'') はブラウントラウトと呼ばれ、降海型 (''trutta'') は'''シートラウト'''と呼ばれる。別名:ブラウンマス、茶マス、茶色マス等。種小名の ''trutta'' は、[[ラテン語]]で[[マス]]を意味する言葉 ''{{Lang|la|trutta}}'' に由来する。
 
  
== 概要 ==
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'''ブラウントラウト'''(学名:''Salmo trutta''
ブラウントラウトは一生の大部分を淡水域で過ごすのに対して、降海型 (''trutta'') シートラウトは海を回遊し、産卵の時のみ、生まれ故郷の淡水域に戻ってくる。ブラウントラウトも淡水域を回遊しており、降湖型 (''lacustris'') は、湖沼を主な生活圏とする個体群で、湖から川に遡上し産卵するが、湖の岸で産卵を行うこともある。河川型 (''fario'') は流水を生息域とし、高山の小川に住むことが多いが、時に大きな河川に住むこともある。産卵のために川を遡るグループと遡らないグループは、同じ川に住むものであっても遺伝的に異なることが知られている。 但し、他の地域に移植した場合、河川型 (''fario'') も降海型 (''trutta'') になる可能性がある。
 
  
ブラウントラウトは一般に[[ヨーロッパ]]と[[アジア]]に生息していると思われているが、実際には極付近まで周遊する。また[[ギリシャ]]や[[エストニア]]には海から遠く淡水のみで生活するものもある。[[絶滅危惧種]]とはされていないが、いくつかの地域では、生息域の破壊や乱獲などによって数が減っている。''fario'' 型は比較的冷たく、酸素の豊富な陸水を好み、特に山地の大きな水流に多いが、他のサケ科の魚の最適温度よりは温かい摂氏15.5-18.3度程度である。
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硬骨魚綱サケ目サケ科に属する魚。体色は黄褐色、体側に粗大な黒点と朱紅点が散在する。分布はヨーロッパの北部・中部の全域、黒海、カスピ海、アラル海周辺から北アフリカにも及ぶ。地域による亜種が多い。一般に淡水生活型であるが、一方、降海・遡河(そか)型のシートラウトがあり、両者の関係はヤマメとサクラマスの関係に似る。南アメリカやタスマニア島に移殖されたブラウン型のものからシートラウトが現れることから、両型に本質的な差のないことがわかる。日本にはおもに北アメリカを経て移入され、中禅寺湖、上高地梓(あずさ)川沿いの池や山岳地帯の冷水湖に放され、小魚、水生昆虫を貪食(どんしょく)して大きく成長する。池中養殖はかなりむずかしい。野生的で釣りの対象としておもしろく、肉味は佳良である。
  
ブラウントラウトは標準的なサイズの魚で、ある地域では20kg以上になり、また小さな川では1kg程度以下のものもある。[[国際ゲームフィッシュ協会]] ([[w:IGFA|IGFA]]) の公認記録では、18.25kgのものが[[1992年]]5月に[[アーカンソー州]]の[[リトルレッド川]]で釣られた記録が残っている。
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{{テンプレート:20180815sk}}
  
== 生活史 ==
 
多くの地域で環境への適応力に優れ、個体、個体群で生態を変化する事が知られている<ref name="kasenh20"/>が、母川回帰率は低い。成熟までに必要な期間はオスが、1年から2年、メスが2年から3年とされ寿命は5年から8年。[[マスノスケ]]、[[ギンザケ]]の様に1年程度を淡水で過ごした後、[[スモルト]]化した個体は降海する。但し、生息域が寒冷地で有った場合は更に1年から2年程度淡水生活を送ることも報告されている。
 
 
冬期(11 - 2月)に産卵を行い、2月から3月初旬に孵化した稚魚は4月から5月頃に浮上する。浮上後は淡水で生活をし、1年で10cm程度、2年で20cm程度、3年で25cmから30cm程度に成長する。1歳魚の以降の生活史は、「1.終生河川残留(回遊範囲は狭い)」、「2.終生河川残留(回遊範囲はやや広い)」、「3.降湖型」、「4.降海型」の4種類あることが知られている。河川遡上する降海型個体の一部には未成熟個体が存在していて、「海水温の低下に伴い塩分耐性が低下する」とされているため、河川の下流域に越冬目的で遡上し滞在すると考えられている<ref name="kasenh20"/>。
 
 
海を回遊するものはサイズが若干大きく、寿命も長い。ブラウントラウトは昼も夜も活動し、一日中餌を食べ続ける。淡水では川底の[[無脊椎動物]]、小さな魚、[[カエル]]、水面近くを飛ぶ[[昆虫類]]なども食べる。従来は、30cmを越すと魚食性が強くなるとされていたが、20cmを越すと強い魚食性を示す(水域によっては12cmの報告もある)<ref name="BNSRC02-04">真山紘、{{PDFlink|[http://salmon.fra.affrc.go.jp/kankobutu/bulletin/BNSRC02-04.pdf 千歳川にあける廿クラマス幼魚およびフラウントラウトによる浮上期ヴクラマス稚魚の捕食]}} 独立行政法人水産総合研究センター さけますセンター</ref>。
 
 
淡水のものは[[フライ・フィッシング]]の対象にもなりやすく、海を回遊するものは主に夜、[[ルアー]]を使って釣られる。
 
 
ブラウントラウトの産卵はタイセイヨウサケと良く似ている。平均、メスの体重1kgあたり2000個の卵を産む。北海道[[長野県]][[梓川]]上流<ref>上原武則、[http://id.nii.ac.jp/1097/00000015/ サケ科魚類における異属間(ブラウントラウト×カワマス)の天然交雑] 長野女子短期大学研究紀要 1996(4), p8-19</ref>、[[知床半島]]、[[秋田県]]では天然イワナとの交雑が確認されている。更に、水産試験場の耐病性を高めた種の作出を狙った人為的な交雑例でも[[ニジマス]]、[[イワナ]]との交雑種も可能である<ref>沢本良宏ほか、[http://agriknowledge.affrc.go.jp/RN/2010712313 ニジマス四倍体との交雑による異質三倍体の作出] 長野県水産試験場事業報告 7号, p.1-9(2005-03)</ref>。
 
 
ブラウントラウトは、世界的に広く分布するニジマスと比較してやや癖があるといわれるが食用にも好まれ、[[刺身]]、寿司ダネなどの生食か[[燻製]]として食べられる。多くのレシピもあり、[[フライ (料理)|フライ]]、[[グリル]]、オーブン焼きなどニジマスとほぼ同様の調理が可能である。
 
 
=== 日本での回遊調査 ===
 
人為的な放流の他に降海型個体の降河河川とは異なる水域への遡上による、生息域の拡大が懸念されている。また、日本での生活史は不明であったことから、(財) 河川環境管理財団らのグループが2006年と2007年に[[戸切地川]]、[[久根別川]]、[[函館湾]]を中心とした水域で調査を行った。その結果<ref name="kasenh20">宮下和士、{{PDFlink|[http://www.kasen.or.jp/seibikikin/h20/pdf/rep2-05.pdf  降海型ブラウントラウトの移動生態の解明に関する研究]}} 河川環境管理財団</ref>によれば、
 
* 成長の良い個体は0歳魚の春からスモルト化し降海するが、多くは1年程度を淡水で生活し、1歳魚の3月から6月に降海する。
 
* 42個体(0歳から3歳魚)の耳石を分析した結果、17個体は、1回目の降海履歴が確認され、25個体では、降海履歴が確認されなかった。
 
* 海上捕獲の1個体と河川遡上していた2個体では複数回の降海履歴を確認した。
 
しかし、降海個体が別な河川に遡上しているのか、および自然繁殖しているのかは確認できなかった。
 
 
== 人工的な繁殖 ==
 
ブラウントラウトは釣り目的の自然界への放流や[[釣堀]]への供給のため、北アメリカ、南アメリカ、[[オーストラリア]]、[[ニュージーランド]]、日本などに持ち込まれた。いくつかの国、特にオーストラリアや[[北海道]]などでは地域の淡水生態系が破壊されて問題となっており、北海道ではサケやマスの卵や稚魚を活発に捕食するため、[[2000年代]]に入ってからは特に注目されてきている。また食品として重要な魚であり大量に人工孵化させられるため、[[コルシカ島]]や[[アルプス山脈|アルプス]]の窪地などの閉鎖系では、天然[[個体群]]が絶滅してしまったところもある。
 
 
一方、回遊性のブラウントラウトは、養殖場のサケやマスに寄生する[[ウオジラミ]]の仲間([[サケジラミ]]など)に感染しやすくなったために年々数が減っている。
 
 
=== 外来種としての影響 ===
 
日本への移入は、1892年に[[カワマス]] (''Salvelinus fontinalis '') の卵に混ざったものとされている。日本では公的機関主導の移植放流では無く、台風による養殖場からの逸出<ref>石崎大介、谷口義則、淀太我、[http://doi.org/10.11369/jji.59.49 岐阜県神通川水系小鳥川におけるブラウントラウトの定着] 魚類学雑誌 Vol.59 (2012) No.1 p.49-54< {{JOI|DN/JST.JSTAGE/jji/59.49}}</ref>や遊漁目的の個人或いは業者が主体となって放流している。他の外来種問題と同じように、在来のサケ科魚類との交雑による[[遺伝子汚染]]と、餌として捕食される水棲生物への影響の他に、生息域の競合の影響が懸念されている。北海道立水産孵化場らの調査によれば、[[北海道]][[千歳川]]の支流では1980年代後半に放流され自然繁殖をしているが、在来種である[[アメマス]]を上流域に追いやり生息数を拡大している<ref>[http://dx.doi.org/10.2331/suisan.68.24 北海道千歳川支流におけるアメマスから移入種ブラウントラウトへの置き換わり] 日本水産学会誌 Vol.68 (2002) No.1 P24-28, {{JOI|JST.Journalarchive/suisan1932/68.24}}</ref><ref>鷹見達也、[http://doi.org/10.2331/suisan.74.432 北海道千歳川支流紋別川で起きた在来種アメマス単独生息域への外来種ブラウントラウトの侵入] 日本水産学会誌 Vol.74 (2008) No.3 P432-434, {{JOI|JST.JSTAGE/suisan/74.432}}</ref><ref>[北海道知床半島の小河川に生息するニジマスとブラウンマス]知床博物館</ref>。[[千歳川]]では[[サクラマス]](ヤマメ)稚魚が餌として高率に捕食されている<ref name="BNSRC02-04"/>。
 
また、[[ヤツメウナギ]]の捕食が確認され<ref>長谷川功、前川光司、[http://doi.org/10.11233/aquaculturesci1953.55.651 北海道で確認された外来種ブラウントラウトによるヤツメウナギ類の捕食] 水産増殖 Vol.55 (2007) No.4 P651-652, {{JOI|JST.Journalarchive/aquaculturesci1953/55.651}}</ref>ているほか、[[豊似湖]]では絶滅危惧種[[ニホンザリガニ]]を含むほかの甲殻類への影響が懸念されている<ref>中田和義、中岡利泰、五嶋聖治、[http://doi.org/10.2331/suisan.72.447 移入種ブラウントラウトが淡水産甲殻類に及ぼす影響:絶滅危惧種ニホンザリガニへの捕食] 日本水産学会誌, Vol.72, pp.447-449 (2006), {{JOI|JST.JSTAGE/suisan/72.447}}</ref>。
 
 
== 脚注 ==
 
{{脚注ヘルプ}}
 
{{Reflist|2}}
 
 
== 参考文献 ==
 
* サケ・マス魚類のわかる本(奥山文弥、井口斎 共著/山と渓谷社 刊)
 
 
== 関連項目 ==
 
{{Commons|Salmo trutta}}
 
* [[マス]]
 
* [[ニホンザリガニ]]
 
 
== 外部リンク ==
 
* [http://fishing-forum.org/zukan/mashtml/M000463_1.htm ブラウントラウト] WEB魚図鑑
 
* [http://www.asahi-net.or.jp/~jf3t-sgwr/inyushu/braun.htm 移入種・ブラウントラウト]
 
 
{{鮭}}
 
 
{{DEFAULTSORT:ふらうんとらうと}}
 
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[[Category:タイセイヨウサケ属]]
 
[[Category:タイセイヨウサケ属]]

2019/5/7/ (火) 16:45時点における最新版

ブラウントラウト(学名:Salmo trutta

硬骨魚綱サケ目サケ科に属する魚。体色は黄褐色、体側に粗大な黒点と朱紅点が散在する。分布はヨーロッパの北部・中部の全域、黒海、カスピ海、アラル海周辺から北アフリカにも及ぶ。地域による亜種が多い。一般に淡水生活型であるが、一方、降海・遡河(そか)型のシートラウトがあり、両者の関係はヤマメとサクラマスの関係に似る。南アメリカやタスマニア島に移殖されたブラウン型のものからシートラウトが現れることから、両型に本質的な差のないことがわかる。日本にはおもに北アメリカを経て移入され、中禅寺湖、上高地梓(あずさ)川沿いの池や山岳地帯の冷水湖に放され、小魚、水生昆虫を貪食(どんしょく)して大きく成長する。池中養殖はかなりむずかしい。野生的で釣りの対象としておもしろく、肉味は佳良である。



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