ピン (チェス)

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ファイル:Chess pin rook.png
実戦でのピンの一例
(ビショップがルークにピンされている。)

チェスにおけるピン (pin) とは、敵の駒が動けないように「釘付け」にした状態を指す。チェスの最も基本的な戦術(タクティクス)の一つ。

ピンの基本

ピンに関する格言

  • ピンは剣より強し。」Fred Reinfeld(アメリカの著名なチェス作家)[1]
  • ピンされた駒の防衛力は、単なる幻想に過ぎない。アロン・ニムゾヴィッチ[2]

概説

  • ピンを仕かける事ができる駒は、クイーンルークビショップの3つである。これら直線で動ける駒で、敵のキングクイーン等の価値の高い駒を間接的に攻撃する。
  • 間接的に狙われた駒は、すぐに取られるわけではない。しかしその間にある守り駒は動きが制限された状態になる。
  • この守り駒を「釘付け」にした状態を「ピン」と呼ぶ。攻撃を受けた側は、「ピンされた」と表現する。

チェスの駒の価値

ピンを理解するためには、あらかじめ敵・味方の駒の価値を知っておく必要がある。

  キング クイーン ルーク ビショップ ナイト ポーン
駒の価値 ∞(無限大) 9 5 3 3 1
  • この評価は絶対的なものでない。(キングだけは例外であるが、)局面によって駒の価値は変動する。

ピンを利用した攻撃

  • あくまでピンは、駒を釘付けにした状態である。ピンできたからといって、すぐに局面が有利になるとは限らない。
  • しかしピンを利用する事により、通常では予想もつかないような攻撃を繰り出す事ができる。


図05: 黒は白クイーンを取ることが絶対にできない。


図07: 黒が白ルークを取れば、自分のクイーンを取られてしまう。

ピンと串刺し(スキュア)の違い

大事な駒が利き筋の前面にあるのか背後にあるのかで、戦術の名称が異なる。

  • ピン: 重要な駒が間接的に攻撃されている。攻撃側の目的は、敵の守り駒を動けなくすること。
  • 串刺し(スキュア): 重要な駒が直接攻撃にさらされている。攻撃側の目的は、背後の駒を取ること。

テンプレート:Chess diagram small

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ピンの解消方法(アンピン)

  • ピンにはさまざまな形があり、その対処もさまざまである。中には、どう対処しても駒損になってしまう局面もある。
  • しかし正しく対処すれば、ピンが解消できる局面も少なくない。


初手から、 1.e4 e5 2.Nf3 Nc6 3.Nc3 d6 4.Bb5 (図12)

黒ナイトが白ビショップにピンされていて、現在動く事ができない。すぐに不利になるわけではないが、ピンの状態は早めに解消した方が安心できる。


黒の対処例

 その(1) 4...Bd7
 その(2) 4...a6 5.Bxc6 bxc6
 その(3) 4...a6 5.Ba4 b5

ピンに関する用語

絶対ピン

  • 敵のキングを的としてピンした場合、その威力は絶大となる。これは「絶対ピン」と呼ばれている。
  • ピンを外さない限り守り駒は絶対に動く事ができない。


図14: 黒にはb5のナイトを守る方法がない。どんな手を指しても、次にナイトを取られてしまう。

相対ピン

  • キング以外の駒を的としてピンする事は、「相対ピン」と呼ばれている。
  • ピンされてはいるが、絶対に動けないという事ではない。しかし動けば、その背後にある価値の高い駒を取られてしまう。
  • 絶対ピンよりも相対ピンの方が、実戦で目にする機会は多い。

図16: 黒は白ナイトを取る事ができない。白ナイトを取ると、自分のビショップを失う事になる。

  • 相対ピンの場合、ピンされた駒が絶対に動けないという状況ではない。次の例は有名なゲームで「レガールのメイト」と呼ばれている。

図17: ここで黒がナイトをピンしたのは大失敗だった。

図18:黒は白クイーンを得た代わりに、チェックメイトにされてしまった。

クロス・ピン

  • 二つのピンが重なって双方向(十字型、X型)の攻撃になっているものは、「クロス・ピン」(cross-pin)と呼ばれている。「ダブル・ピン」(double pin)と表記される場合もある。

ピンの応用

  • チェスの戦法や戦局(序盤・中盤・終盤)を問わず、ピンはさまざまな場面で登場する。
  • ピンとピンとを組み合わせたり、串刺しやフォークなどの他の戦術と組み合わせて行う攻撃は、実戦で非常に効果的となる。

名称

1980年代以前のいくつかの日本語書籍にはピン・アップ (pin up) という表記も見られる[3][4]

参考文献

  • 『Winning Chess Tactics』 Seirawan Silman Microsoft Press ISBN 1-55615-474-7
  • 『挑戦するチェス』 権田源太郎 著 中央公論事業出版 ISBN 4-89514-159-4
  • 『はじめてのチェス』 渡井美代子成美堂出版 ISBN 4-415-02549-8
  • 『チェス入門』 金田英二 著 日東書院

注釈

  1. “The pin is mighter than the sword.”
  2. "The defensive power of a pinned piece is only imaginary."
  3. 『チェス入門』、79頁。
  4. チェス和書:技法書レビュー - 翻訳家・水野優による日本のチェスの技法書レヴュー。金田『チェス入門』の書評を参照。