ソニー・インタラクティブエンタテインメント

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株式会社ソニー・インタラクティブエンタテインメント: Sony Interactive Entertainment Inc.、略称: SIEI[1]SIE Inc[2])は、家庭用ゲーム機PlayStationシリーズ)、ならびにゲームソフトの開発、製造、販売などを行うソニーグループ企業。旧称、株式会社ソニー・コンピュータエンタテインメント (SCE) 。

100%出資子会社として日本にポリフォニー・デジタル各地域子会社を持つ。また、グループ統括会社としてアメリカ合衆国サンマテオソニー・インタラクティブエンタテインメントLLC: Sony Interactive Entertainment LLC、略称: SIE[2])を置く。

年表

ファイル:Scei headquarter.jpg
かつて東京都・青山に存在していた旧SCE本社(2007年10月)
ファイル:US PlayStation HQ (30344827735).jpg
カリフォルニア州サンマテオにあるSIE本社

地域子会社と販売地域

各地域子会社がその地域のPlayStation販売を担当している。太字で記載されている販社が地域を代表して統括する。SIEAは中南米も統括。SIEEはオセアニアも統括している。

地域 地域子会社 販売地域
日本アジア ソニー・インタラクティブエンタテインメントジャパンアジア (Sony Interactive Entertainment Japan Asia) [SIEJA] 日本、台湾、香港、インドネシアシンガポールタイフィリピンベトナムマレーシア、韓国
北アメリカ中央アメリカ南アメリカ ソニー・インタラクティブエンタテインメントアメリカ (Sony Interactive Entertainment America LLC) [SIEA] アメリカ合衆国カナダメキシコエルサルバドルグアテマラコスタリカニカラグアパナマホンジュラスアルゼンチンエクアドルコロンビアチリブラジルベネズエラペルー
ヨーロッパオセアニア ソニー・インタラクティブエンタテインメントヨーロッパ (Sony Interactive Entertainment Europe Ltd.) [SIEE] ヨーロッパ各国

ハードウェアメーカーとしてのSIE

ハードウェアの方針

ゲーム機器を開発する際、テーマとする機能、性能が最も高くなるような味付けを行うことで他社との差別化を図っていた。例えばPSではGTEによるジオメトリ性能の強化を図り、またPS2ではエンベデッドDRAMを採用しピクセル描画性能を高めていた。PS3ではCellによる浮動小数点演算性能を強化し、物理演算などによる仮想世界の構築に焦点を合わせた。これらの特徴を得るために、最先端キーデバイスの自社開発を積極的に進めた。PSではジオメトリエンジン (GTE) の仕様策定に関わり、PS2では東芝とCPU (Emotion Engine) を共同開発した。また描画LSIのGSはソニー木原研究所(2006年4月1日にソニー技術開発本部に移管)との共同開発である。PS3ではソニー、東芝、IBM3社共同でSTI Design Centerを設立し、218GFLOPS 3.2GHzの強力なプロセッサ (Cell) を開発した。PSPのLSIはPS2に非常に近い特徴を持つとされる。

しかし、PS Vita以降はプロセッサの開発コストが高騰している半導体業界の情勢を踏まえ、プロセッサの自社開発やプロセッサメーカー標準品からの大幅なカスタマイズを避けている[25][26]

生産戦略

PS2からは主要半導体の自社(ソニーグループ内)生産を戦略とした。他社半導体メーカによる供給と異なり、部材確保のタイミングやコストをコントロールしやすく、製品の垂直立ち上げや発売初動から安価な値付けを行うなどの演出を実現した。PS2の国内初動100万台販売やPSPの約2万円の価格など、従来のこれらの規模の製品ではあまり例のない販売実績を積み上げた。特にPSPは立上げ当初から最先端のプロセス技術を用い、高いコスト性能比や電力性能比を実現した。自社生産のメリットを活かし、コストダウンを目的としたチップシュリンク(面積縮小)や統合を積極的に進めた。PS2のEEやGSなどはそれぞれ4度、6度のシュリンクの末に初期時の約1/6の大きさになるEE+GSへと統合を果たす成功を見た。PS3のCell等も初期は90nmプロセスを用い、65nmプロセスの工場を建設し、また45nmプロセス技術開発を東芝、NECエレクトロニクスと締結するなど、先々のコストダウンを見据えたが、PS3販売の苦戦や半導体プロセス開発コストの高騰、半導体技術の進歩の鈍化のため、コストダウンは目論見通りにはいかなかった[27]。積極的なコストダウン策による内部仕様の変更などで、上位互換性が多少損なわれたり、時には自機種向けのソフトウェアに対する互換も確保されない場合があるなど[28]、問題点もある。半導体工場への投資は、その規模が莫大でリスクを伴う反面、成功時の実りも大きく波及効果もある。

しかし、半導体のプロセス開発コストが高騰したため、PS4のメインプロセッサの製造では他社に製造を委託している[26][29]

互換戦略

開発するゲーム機器は、かつて同一カテゴリ品においては下位(後方)互換性を確保する戦略を用いていた。PS2はI/OコントローラーにPSのCPU等を取り込む事によって互換を維持した。

PS3も初期の20GB・60GBモデルではPS・PS2互換機能を提供していた。しかしPS3は40GBモデルから低価格化・低消費電力化のために、PS2互換機能を廃止した。初代PS互換についてはPS3においてPS2互換廃止後も継続しており、ゲームアーカイブス版はPS3だけでなくPSP・PS Vitaでも動作する。PS4は過去のいかなるPSシリーズの互換機能も備えていない。

PS VitaはUMDドライブを装備していないためUMDで販売されたPSPタイトルを動作させることはできないが、PSNでオンライン販売されているPSPタイトルについては動作させることができるものと不可能なものが混在している。

互換性とは呼べないものの、2014年1月にはクラウドゲームストリーミングサービスによるPS1、PS2、PS3のゲームをPS3、PS4、PSVITAと一部の液晶テレビ(ブラビア)上でプレイできるサービス、「PlayStation Now」が発表された。

主な製品

広告などで新しいハードの発売日を覚えやすくするために、PlayStationの発売日を1994年123日、PlayStation 2の発売日を平成1234日、PlayStation Portableの発売日を2004年1212日とするなど、日付にぞろ目を起用する傾向がある。また、PlayStation Vitaを除く過去すべてのゲームハードの日本発売日を大安に設定している(PS Vitaのみ先負、詳細は「PlayStation#日本国内における発売日について」を参照)。

カテゴリ 製品 発売年(日本)
据え置き型ゲーム機
PlayStationシリーズ
PlayStation 1994年
PS one 2000年
PlayStation 2 2000年
PlayStation 3 2006年
PlayStation 4 2014年
PlayStation Vita TV (PlayStation TV) 2013年
携帯型ゲーム機 PocketStation 1999年
PlayStation Portable 2004年
PSP go 2009年
PlayStation Vita 2011年
その他 PSX(発売はソニーから) 2003年
nasne 2012年
PlayStation VR 2016年

ソフトウェアパブリッシャー・デベロッパーとしてのSIE

ワールドワイド・スタジオ

自社で発売する全世界のゲームソフトは、社内組織「SCEワールドワイド・スタジオ」の設立以降は全てこの下で統括されている。社内スタジオや子会社による開発のほか、外部デベロッパー開発のソフトも含まれる。

自社スタジオ
名称 概要
SCEジャパンスタジオ SIEJA本部。GENJIシリーズ、サルゲッチュシリーズ、SIRENシリーズ TOKYO JUNGLE KNACK(ナック)など
SIEフォスターシティースタジオ SIEA本部。Zipper InteractiveSOCOMシリーズの共同開発、サッカーパンチプロダクションズ怪盗スライ・クーパーシリーズの共同開発など
SIEロンドンスタジオ SIEE本部。2001年にSCEソーホースタジオ(ゲッタウェイシリーズ)とPsygnosysカムデンスタジオが合併して発足。EyeToy、SingStar、EyePet and Friendsなど
SCEサンタモニカスタジオ ゴッド・オブ・ウォーシリーズ、Kinetica、Incognito EntertainmentWARHAWKの共同開発など
SIEサンディエゴスタジオ マーク・オブ・クリィシリーズ、MLBNBAシリーズなど
SIEサンマテオスタジオ SIEA本部。
SCEベンドスタジオ 2000年に買収した旧・Eidetic。サイフォンフィルターシリーズなど。現在はPlayStation Vita作品の開発に特化
閉鎖・統合したスタジオ
SCEスタジオリバプール 1993年に買収した旧・Psygnosys。2012年閉鎖。ワイプアウトシリーズ、デストラクション・ダービーシリーズ、G-POLICEシリーズ、ファイヤーパニックなど
SCEアメリカ 1999年に989 Studiosに合併され、SCEA本部はSCEフォスターシティスタジオに置かれた。SingleTracと共同でツイステッド・メタルシリーズ、ESPN ストリートゲームスシリーズ、エアアサルトCOOL BOARDERSシリーズなど
開発子会社
名称 概要
ポリフォニー・デジタル 1998年にSCEから分社化。グランツーリスモシリーズ
ノーティドッグ 2001年に買収。クラッシュ・バンディクーシリーズ アンチャーテッドシリーズ
ゲリラゲームズ 2005年に買収。KILLZONEシリーズ
メディアモレキュール 2010年に買収。リトルビッグプラネットシリーズ
サッカーパンチプロダクションズ 2011年に買収。スライ・クーパーシリーズ、INFAMOUSシリーズ
閉鎖
ジッパーインタラクティブ 2006年に買収。2012年に閉鎖。SOCOMシリーズ MASSIVE ACTION GAME (MAG)
Evolution Studios 2007年に買収。2016年に閉鎖。モーターストームシリーズ DriveClub
ゲリラケンブリッジ SCEケンブリッジスタジオとして設立。MediEvilシリーズ、トランスフォーマー ビーストウォーズ (ゲーム)SAINTS 聖なる魔物ゴーストハンター、PlayTV、フロッガーなど
かつてあった子会社

サテライトカンパニー

アニメーション映画

代表的な作品

タイトル 発売年
アークザラッドシリーズ 1995年 - 2004年
ワイプアウトシリーズ 1995年 - 2012年
クラッシュ・バンディクーシリーズ 1996年 - 2000年
ポポロクロイス物語シリーズ 1996年 -
ワイルドアームズシリーズ 1996年 - 2007年
Formula Oneシリーズ 1996年 - 2006年
グランツーリスモシリーズ 1997年 -
みんなのGOLFシリーズ 1997年 -
XI[sai](サイ)シリーズ 1998年 - 2006年
サルゲッチュシリーズ 1999年 -
どこでもいっしょシリーズ 1999年 -
高機動幻想ガンパレード・マーチ 2000年
ぼくのなつやすみシリーズ 2000年 - 2009年
ICO(イコ) 2001年
ジャック×ダクスターシリーズ 2001年 -
ラチェット&クランクシリーズ 2002年 -
SOCOMシリーズ 2002年 - 2011年
怪盗スライ・クーパーシリーズ 2003年 -
SIRENシリーズ 2003年 - 2008年
SingStarシリーズ 2004年 -
KILLZONEシリーズ 2005年 -
ゴッド・オブ・ウォーシリーズ 2005年 -
ローグギャラクシー 2005年
ワンダと巨像 2005年
モーターストームシリーズ 2006年 -
RESISTANCEシリーズ 2006年 -
MLB: The Showシリーズ 2006年 -
勇者のくせになまいきだ。シリーズ 2007年 -
アンチャーテッドシリーズ 2007年 -
リトルビッグプラネットシリーズ 2008年 -
Demon's Souls 2009年
inFAMOUSシリーズ 2009年 -
Invizimalsシリーズ 2009年 -
GRAVITY DAZE 2012年 - 2017年
SOUL SACRIFICE 2013年
The Last of Us 2013年

主なサービス

かつてPlayStation 2用の周辺機器PlayStation BB Unitを介したネットワークサービスを提供していたが、PlayStation 3の発売を機に標準で利用できるオンラインサービス「PlayStation Network (PSN)」を開始し、自社ゲーム機以外からも利用できるオンラインサービスの展開を進めている。

オンラインサービス
その他のサービス
終了

役員

2017年10月現在
役職 氏名 備考
代表取締役 社長兼CEO 小寺剛 ソニー 執行役員 ビジネスエグゼクティブ、前SIE副社長
取締役 会長 アンドリュー・ハウス 前SIE社長兼グループCEO
取締役 副社長 三浦和夫 グローバルR&D本部 本部長 兼 R&D戦略部 部長、前SCE設計・生産プラットフォーム担当EVP
伊藤雅康
取締役 盛田厚 ソニー・インタラクティブエンタテインメントジャパンアジア プレジデント、前SCE経営管理EVP、盛田昭夫ソニー共同創業者)の甥
金川文彦 エグゼクティブ・ヴァイス・プレジデント 兼 経営管理部 部長
監査役 武田和彦
柴田修

歴史

1993年(平成5年)、ソニーの技術者やソニー・ミュージックエンタテインメントのスタッフらによって東京に創立された[30][31]

創立の切っ掛けは、1990年代前半に任天堂と共同で計画していたCD-ROM対応型のスーパーファミコン開発の契約が任天堂側の締結後中途破棄によって決裂したことを発端としていて、後に参入ハード第1号に命名した「PlayStation」も共同開発ゲーム機のコードネームとして付けられたものであった(詳しくはPlayStation (ゲーム機)#沿革を参照)[32]

1994年、当時としては最先端の3D映像技術を武器とした家庭用ゲーム機PlayStation(PS)でゲームハード市場に参入。セガ(後のセガゲームス)のセガサターン任天堂NINTENDO64と激しい市場競争を繰り広げた。競争はしばらく続いたが、1997年の『ファイナルファンタジーVII』(スクウェア)のヒットが決定打となり、SCEはPSの発売から3年でハード市場における首位の座に立ったといわれる。創業当時副社長(のち会長)であった丸山茂雄は、SCEがゲーム業界に溶け込めたのは自身を含めたソニー・ミュージック出身者たちがエレクトロニクス業界とは異業種のエンターテインメント業界を知っていたことが理由であると述べている[31]1999年には携帯周辺機器、PocketStationを発売した[33]

2000年に発売したPlayStation 2(PS2)でも、セガのドリームキャストや任天堂のニンテンドーゲームキューブマイクロソフトXboxなどの競合商品を相手に優位を維持し、主導権を握りハード市場の首位の座にあり続けた。PS2はDVD再生機能を備えており、当時としては安価なDVDプレーヤーでもあったため、その普及の立役者にもなった。

2001年には経営危機にあったスクウェア(後のスクウェア・エニックス・ホールディングス)に支援のため出資。同社の立て直しに貢献した。

2004年に発売したPlayStationプラットフォーム初の携帯型ゲーム機PlayStation Portable(PSP)や、ブルーレイプレイヤーとしても普及の引導役を期待されていた2006年発売のPlayStation 3(PS3)は、任天堂のニンテンドーDSWiiとの普及競争に苦戦した。両ハードとも日本や欧州で一定の成功を収めていたが、PS3は北米市場においてマイクロソフトのXbox 360に先を越され、据置機の世界累計売上げは2013年までの6年間を3番手に甘んじることになった[34][35]

1994年に初代PlayStationを発売して以来、自社のハードの売り上げ数に関しては「生産出荷台数」(工場から自社倉庫へ出荷した数、すなわち生産台数)のみを公表していたが、2007年に他社同様の売上実績数(小売・卸への販売数、すなわち出荷台数)の公開に変更した[36]

こうした中、ソニー本体との連携強化のため、2010年4月1日に組織再編が行われた。同日をもってPlayStation Network(PSN)などを統括していたネットワーク部門をソニーに移管し、SCEは家庭用ゲーム機とソフトの開発・製造・販売に専念する体制に移行した。また、同年夏には本社を東京・青山から港南のソニーシティ内に移転[37]、開発部門も品川区に移転した[38]

2010年2月には旧SCEを「SNEプラットフォーム」と改称し、そこからゲーム機及びソフト開発などの部門を承継させる形で改めてSCEを新設、ネットワーク部門のみを残したSNEプラットフォームを即座にソニー本社が分割・吸収合併する形をとり、よりゲーム部門専業の体制へと再編された[39]

日本におけるソフトウェアの流通構造

SCEが初代PlayStationを発売する以前、任天堂はスーパーファミコン用ソフトにおいて、マスクROM方式を採用していた。しかしこの方法ではゲームソフトが品切れを起こした場合、追加発注から再生産による納品までに数ヶ月を要するという欠点があった。また、卸売業者を介する多段階流通構造から、見込み発注による過剰在庫、過少発注による品切れなどが発生しやすいという欠点を抱えていた[40]

SCEは、PlayStationのソフト媒体としてCD-ROMを採用することにより、短期間で製造できるCD-ROMの特性を活かし、こうした流通システムとは異なる「小売業者との直取引」を基本とした流通システムを採用し、値引き販売等が起き難い仕組み作りの実現を図った。この方法の採用によって、日本のテレビゲーム事業における、流通構造を市場の需給動向へ迅速に対応できるものにしようとした[40]

SCEは上記販売手法の一環として、中古品取り扱い禁止、横流し販売禁止および値引き販売禁止を日本の小売業者に徹底した。そのため、これらの手法は私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律に違反する疑いがあるとして、1996年(平成8年)5月に公正取引委員会の調査を受け[40]、1998年(平成10年)1月20日、公正取引委員会から「PlayStation用ソフトウェアの販売について、小売業者に対し希望小売価格で販売するように圧力を加えた」として独占禁止法に基づく排除勧告を受けることとなった。

1996年(平成8年)には、デジキューブによるコンビニエンスストア流通、有力メーカー各社による自主流通といった「SCEを介さない流通」が始まり、前述の公正取引委員会の介入も相まって、SCEの日本における流通システムは崩壊した[40]

セガもまた、SCEの後追いでSCE同様の手法を自社製品の流通システムに取り入れたが[40]、公正取引委員会に独占禁止法違反容疑をかけられ、子会社から自社に流通業務を移す形で摘発を免れた[41]

この流通構造の変転を受けて、テレビゲームソフトウェア流通協会は、利益確保のため中古ゲームソフト販売を拡大させた。SCE、セガ、有力ゲームメーカー各社は、『違法中古ゲームソフト撲滅キャンペーン』を展開し、中古ゲームソフト販売を違法として、販売差し止めを求める訴訟を起こしたが[42]、2001年(平成13年)、最高裁判所は『中古ゲームソフト販売は合法である』と判示され、テレビゲームソフトウェア流通協会が勝利し、コンピュータソフトウェア協会は全面敗訴した(中古ゲーム裁判)[40][43]

2006年(平成18年)11月11日に、SCEはPlayStation 3の発売と同時にPlayStation Storeを開設して、ゲームソフトのダウンロード販売を開始。2013年(平成25年)2月には、日刊SPA!の取材に対し「具体的な数値は公開していませんが、DL版の利用度が劇的に増加しています」とコメントしている[44]

アメリカでのPlayStation振動機能特許を巡る訴訟

2002年アメリカ合衆国イマージョン社が起こしたPlayStation、およびPlayStation 2のコントローラー振動技術(バイブレーション機能デュアルショック)の特許権をめぐる訴訟で、カリフォルニア州オークランド連邦地裁がSCEなどにアメリカでのPlayStation、およびPlayStation 2の販売差し止めと約9,070万ドル(日本円で約96億円)の損害賠償を命じる判決を2005年3月24日に下した[45]。この裁判の影響により一時PlayStation、およびPlayStation 2がアメリカの販売店舗より一時撤去される騒動も起きた。

SCEの再審理請求は2006年3月14日にアメリカ連邦判事に棄却されたが、2007年3月1日にはイマージョン社の請求金額とライセンス料を全面的に支払う形で和解した[46]。なお、2007年9月の東京ゲームショウにおいて再び振動に対応したデュアルショック3が発表された[47]

財務状況

円高やハードの不振により、旧SCEは2008年度(2009年3月期)の時点で104億円の債務超過に陥る事となる[48]。こうした中、前述したソニー本体との連携強化の為として、2010年4月1日に組織再編が行われた。しかし、その後官報の決算公告により平成23年度(2012年3月期)、平成24年度(2013年3月期)、平成25年度(2014年3月期)と組織再編後も依然として巨額の債務超過であると明らかになる[8][14][49]

SCEは単独の決算を親会社であるソニーの業績発表会等で公表しておらず、官報決算公告でSCE単独の貸借対照表を開示している。それによると、平成25年度(2014年3月期)は売上高6515億1900万円、営業利益88億1400万円、経常利益76億5100万円、純利益37億8400万円、資産2514億8800万円、負債3097億3800万円、純資産マイナス582億5000万円であると発表され[49]3年度連続の債務超過である[8][14][49]

PlayStation 4が発売された平成25年度において、平成24年度に比べ売上高は1725億6600万円増加、流動負債は1112億8900万円増加、売上高総利益率(粗利率)は約16.46%から約12.80%、売上高営業利益率は約1.76%から約1.35%、売上高経常利益率は約1.67%から約1.17%、売上高当期純利益率は約1.64%から約0.58%へと利益率は低下し、売上げは増大したが利潤は減少した。また、有価証券評価差額金が平成24年度のマイナス53億5600万円から33億5400万円へと転じその差額分である87億1000万円と純利益等を合わせ債務超過額は124億9600万円減少した[14][49]

解散した旧SCEも前年度より債務超過に陥りながらもPSP goを発売した2009年度(2010年3月期)に1012億6300万円の債務保証を受けており[50]、同様に債務超過という財務状況下においてSCE、SCEA、SCEEの三社は平成24年度、ソニー本社より三社合計2629億6100万円という非常に高額の債務保証を受けている(SCE単独では1209億300万円)[51]。更に平成25年度、SCE、SCEA、SCEEの三社はソニー本社より三社合計2150億8600万円の債務保証を受けている(SCE単独では1128億3900万)[52]。 なお、株主総会の資料がネット開示されるようになった2008年度以降確認出来るだけでも SCEAは債務保証を毎年受けて事業展開している[53] [50][54][55]
尚、ソニー本体のゲーム&ネットワーク事業としてのセグメント別決算では2014年度にはPS4の世界的な好調を受けて481億円の営業利益を上げ、黒字に転換している。

脚注

  1. ソニー株式会社から株式会社ソニー・インタラクティブエンタテインメントへの会社分割(簡易吸収分割・略式吸収分割)に関するお知らせ (PDF)”. ソニー (2017年2月24日). . 2017閲覧.
  2. 2.0 2.1 社名変更およびコーポレートサイトURL変更のお知らせ”. ソニー・インタラクティブエンタテインメントLLC (2016年4月1日). . 2017閲覧.
  3. 第48回 丸山 茂雄氏”. musicman-net. . 2014閲覧.
  4. アーカイブされたコピー”. 2008年5月17日時点のオリジナルよりアーカイブ。. 2007年12月26日閲覧.
  5. PSP「プレイステーション・ポータブル」専用タイトル開発環境をさらに強化~PSP向けグラフィック描画ツールを今春より提供開始~” (日本語). ソニー・コンピュータエンタテインメント (2010年3月10日). . 2013-2-2閲覧.
  6. “ゲームソフトウェア開発力のさらなる強化に向け、米国Sucker Punch Productionsを買収” (プレスリリース), Sony Computer Entertainment, (2011年8月2日), http://www.scei.co.jp/corporate/release/110802.html . 2014閲覧. 
  7. “ソニー・コンピュータエンタテインメントアジア 「中国語ローカライズセンター」を台北にて本格稼働開始” (プレスリリース), ニー・コンピュータエンタテインメントアジア, (2012年5月24日), http://www.scei.co.jp/corporate/release/120524.html . 2014閲覧. 
  8. 8.0 8.1 8.2 n-seikei.jp (2012年6月28日). “ソニー (株)SCE/▲943億円の大赤字で債務超過転落”. . 2013閲覧.
  9. “ソニー・コンピュータエンタテインメント、米国Gaikai Inc.を買収” (プレスリリース), Sony Computer Entertainment Inc., (2012年7月2日), http://www.scei.co.jp/corporate/release/120702.html . 2014閲覧. 
  10. PlayStation延長保証サービス公式サイト”. SCE (2013年1月15日). . 2013閲覧.
  11. “ソニー・コンピュータエンタテインメント「プレイステーション 4」(PS4™)発表” (プレスリリース), Sony Computer Entertainment Inc., (2013年2月21日), http://www.scei.co.jp/corporate/release/130221c.html . 2014閲覧. 
  12. “ソニー・コンピュータエンタテインメントとユニティ・テクノロジーズ、戦略的提携について合意「プレイステーション」向け「Unity」の提供を通じ、あらゆる開発者様の効率的なコンテンツ開発をサポート” (プレスリリース), SCE, (2013年3月22日), http://www.jp.playstation.com/info/release/nr_20130322_unity.html 
  13. “人事・組織変更のお知らせ” (プレスリリース), SCE, (2013年4月1日), http://www.scei.co.jp/corporate/release/130401.html 
  14. 14.0 14.1 14.2 14.3 官報号外第133号”. 国立印刷局 (2013年6月24日). 2013年6月24日時点のオリジナルよりアーカイブ。. 2013閲覧.
  15. “PS4本体の発売日やローンチタイトル情報など,今後の展開が大々的に発表された「SCEJA Press Conference 2013」詳報”. 4Gamer.net (Aetas, Inc.). (2013年9月9日). http://www.4gamer.net/games/990/G999024/20130910065/ . 2014閲覧. 
  16. 16.0 16.1 2014 International CES(国際家電ショー)オープニングキーノート”. Sony. . 2014閲覧.
  17. “ソニーが中国でプレステ販売へ、上海貿易試験区に合弁2社設立”. ロイター. トムソン・ロイター. (2014年5月26日). http://jp.reuters.com/article/topNews/idJPKBN0E604R20140526 . 2014閲覧. 
  18. 上海东方明珠(集团)股份有限公司 关于与索尼(中国)成立合资公司的提示性公告 (PDF)” (中国語(簡体字)). 上海东方明珠(集团)股份有限公司 (2014年5月26日). . 2014閲覧.
  19. “ソニー・ネットワークエンタテインメントとソニー・コンピュータエンタテインメント 革新的なテレビの視聴体験を実現するクラウドベースの新しいテレビサービス「プレイステーション ヴュー」概要発表” (プレスリリース), Sony Computer Entertainment Inc., (2014年11月13日), http://www.scei.co.jp/corporate/release/141113b.html . 2014閲覧. 
  20. 2014年1月のCES 2014で同様のサービスの提供予定を発表済み[16]
  21. 「ソニー・インタラクティブエンタテインメントLLC」 設立のお知らせ”. ソニー・コンピュータエンタテインメント、ソニー・ネットワークエンタテインメントインターナショナル (2016年1月26日). . 2017閲覧.
  22. “社名変更のお知らせ” (プレスリリース), ソニー・コンピュータエンタテインメント, (2016年1月26日), http://www.scei.co.jp/corporate/release/160126b.html . 2016閲覧. 
  23. 2015年度有価証券報告書 (PDF)”. ソニー. . 2017閲覧.
  24. ソニー・インタラクティブエンタテインメントの新経営体制について”. ソニー・インタラクティブエンタテインメント (2017年10月3日). . 2017閲覧.
  25. 後藤弘茂 (2011年6月9日). “SCEがE3で発表した次世代携帯ゲーム機「PS Vita」の戦略”. 後藤弘茂のWeekly海外ニュース. Impress Watch Corporation. . 2014閲覧.
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  27. 後藤弘茂 (2012年9月21日). “スリムになったPS3に見える半導体チップの状況の変化”. 後藤弘茂のWeekly海外ニュース. Impress Watch Corporation. . 2014閲覧.
  28. 「プレイステーション 2」(SCPH-75000シリーズ以降のモデル)における「プレイステーション」および「プレイステーション 2」規格ソフトウェアの互換性についてのお知らせ” (日本語). ソニー・コンピュータエンタテインメント (2005年10月20日). . 2013-2-2閲覧.
  29. 後藤弘茂 (2013年2月22日). “PlayStation 4のCPUコアはなぜ「Jaguar」なのか”. 後藤弘茂のWeekly海外ニュース. Impress Watch Corporation. . 2014閲覧.
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  31. 31.0 31.1 プレステ初期の躍進を支えた音楽業界の経験”. 東洋経済新報社 (2014年7月16日). . 2014閲覧.
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  33. ascii.jp (1998年11月11日). “開発者インタビュー『プレイステーションと連携して楽しむ携帯ゲーム機です。』” (日本語). . 2012閲覧. しかし、携帯ゲーム機という言葉の意味するものがSCE広報とそれ以外で違っている。
  34. 奥谷海人 (2013年1月11日). “PlayStation 3の出荷台数が世界累計で7700万台を超え,Xbox 360を上回る。北米のリサーチ会社の最新レポートで明らかに”. 4Gamer.net. http://www.4gamer.net/games/000/G000000/20130111033/ . 2013閲覧. 
  35. 2013年1月に北米リサーチ会社IDCからPS3の世界販売台数が7700万台となり、Xbox360の7600万台を追い越したとの統計が発表になった。Wiiの世界販売台数(2013年3月31日時点)は(“任天堂株式会社 連結販売実績数量推移表 )によると9984万台。
  36. PS3「売上台数」は1Qで71万台 ソニー、「生産出荷」から変更”. ITmedia (2007年7月26日). . 2007-7-26閲覧. 同じ管轄であるアジア含むと表記した上での発表なので、日本国内での出荷台数は厳密には不明。
  37. 株式会社ソニー・コンピュータエンタテインメント (2010年8月9日). “本社移転のお知らせ” (日本語). . 2010閲覧.
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  40. 40.0 40.1 40.2 40.3 40.4 40.5 和田剛明「家庭用テレビゲームソフトの流通―リスクとリターンの構造と市場への影響―」、『赤門マネジメント・レビュー』第2巻第11号、特定非営利活動法人グローバルビジネスリサーチセンター(GBRC)、2003年11月、 563-580頁。
  41. セガ・ミューズの立ち入り検査、とうとう打ち切りに!!”. FAMITSU.com (2000年11月1日). . 2014閲覧.
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関連項目

外部リンク