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'''シアノコバラミン'''(cyanocobalamin)は、[[ヒドロキソコバラミン]]などと共に'''ビタミンB<sub>12</sub>'''とも呼ばれる代表的な[[コバラミン]]の一種であり、[[ビタミン]]の中で[[水溶性ビタミン]]に分類される生理活性物質である。赤色又はピンク色を呈する。
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'''シアノコバラミン'''(cyanocobalamin)
  
== 概要 ==
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吸湿性暗赤色結晶。造血機構に関与し,アミノ酸代謝における補酵素の働きをする。肝臓抽出物質から発見された。ビタミンB<sub>12</sub>欠乏症の特徴は体細胞が巨大になることで,悪性貧血の場合の巨赤芽球性貧血が代表的である。このほか,胃全摘,妊娠,広節裂頭条虫症,盲管症候群などでも起る。肝臓から有効成分を抽出し製剤した 15~30μgのシアノコバラミン製剤の注射を行えば,悪性貧血をはじめとする各種貧血,栄養性神経疾患,肝硬変症,放射線障害などに卓効がみられる。吸収率の悪いのが欠点で,それを改善するために,ヒドロキソコバラミンや補酵素型のメコバラミンが研究・開発された。副作用の報告はほとんどない。
[[ビタミンB群|B群ビタミン]]のひとつだが、12は発見された順番を表す数字ではない。{{要出典範囲|相継いで発見されたB群ビタミンと重複しないように大き目の数字を付けたらしい|date=2016年9月}}。シアノコバラミンは化合物を単離する際に得られる人工産物で、喫煙者などの特殊な場合を除き、人間の体内ではシアノコバラミンは合成できない。[[草食動物]]は[[腸内細菌]]として[[プロピオン酸]]生産菌等を保有し、これがビタミンB<sub>12</sub>を生産するので、これらの菌からビタミンB<sub>12</sub>を摂取している<ref>[http://members2.jcom.home.ne.jp/bsel/Presearch.html 帝京科学大学生命環境学部生命科学科松岡研究室研究内容紹介]</ref><ref>山田惠子 [http://web.sapmed.ac.jp/ircc/seeds/pdf/category03/p704.pdf ビタミンB12の栄養学] [http://web.sapmed.ac.jp/ircc/seeds/category3.html 講座の紹介資料]</ref>。肝臓や筋肉に大量に貯蔵されているため、胃全摘術などによって吸収障害が起きても体内貯蔵分のシアノコバラミンによって充当されるので、欠乏症が出現するまでは3-5年を要する<ref>『メルクマニュアル医学百科』「ビタミンB12」</ref>。
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[[ポルフィリン]]類似の[[コリン (化合物)|コリン]]環(図の赤色部位)と[[ヌクレオチド]](図の緑色部位)の構造をもつ、[[コバルト]]の[[錯体]]である。[[アミノ酸]]や[[脂肪酸]]の代謝および[[葉酸]]の生合成に用いられる。これ自体に補酵素活性はなく、生体内で[[補酵素]]型である[[メチルコバラミン]]および[[アデノシルコバラミン]]に変換される。
 
 
 
シアノコバラミンは眼精疲労の治療薬として市販される[[点眼薬]]に配合されているほか、医療用として[[参天製薬]]より「サンコバ点眼液0.02%」として販売されている。他にも補酵素型ビタミンB<sub>12</sub>の[[メチルコバラミン]]も医療用医薬品として販売されており、[[末梢神経]]障害や[[悪性貧血]]の治療に用いられる。
 
 
 
シアノコバラミンは合成が極めて困難であるため、現在は[[放線菌]]などの細菌の培養液から生産されている<ref>[https://www.radishbo-ya.co.jp/rb/daijiten/outline/618.html シアノコバラミン] - [[らでぃっしゅぼーや]]・添加物大辞典</ref>。
 
== 機能 ==
 
[[File:Folicacid-B12.png|thumb|500px|[[テトラヒドロ葉酸]](THF)による代謝とビタミンB<sub>12</sub>によるTHFの再生産、[[:de:Folsäure|Folsäure]]=[[葉酸]]、DHF=[[ジヒドロ葉酸]]、THF=[[テトラヒドロ葉酸]]、Vit.B<sub>12</sub>=ビタミンB<sub>12</sub>、Methyl-Vit.B<sub>12</sub>=[[メチルコバラミン]]、Methionin=[[メチオニン]]、Methionin Syntase=[[5-メチルテトラヒドロ葉酸-ホモシステインメチルトランスフェラーゼ]]、Homocystein=[[ホモシステイン]]、N<sup>5</sup>-Methyl-THF=[[5-メチルテトラヒドロ葉酸]]、N<sup>5</sup>,N<sup>10</sup>-Methylene-THF=[[5,10-メチレンテトラヒドロ葉酸]]、N<sup>10</sup>-Formyl-THF=[[10-ホルミルテトラヒドロ葉酸]]、dUMP=[[デオキシウリジン一リン酸]]、[[NADPH]]、[[DNA]]]]
 
ビタミンB<sub>12</sub>は[[代謝]]に関与しており、特に[[DNA]]合成と調整に加え[[脂肪酸]]の合成とエネルギー産生に関与している。しかしながら、体内でビタミンB<sub>12</sub>が[[葉酸]]([[ビタミンB9|ビタミンB<sub>9</sub>]])の再生産に利用されているため、全てではないが多くのビタミンB<sub>12</sub>の機能は十分な量の葉酸によって代替される。[[チミン]]や[[プリン体]]の合成のための十分な量の葉酸が体内に存在しない場合にはDNA合成障害を引き起こし、その葉酸欠乏症状は[[悪性貧血]]症状や[[巨赤芽球性貧血]]を引き起こすため、ほとんどのビタミンB<sub>12</sub>欠乏症状は実際には葉酸欠乏症状である<ref>[http://www.victorherbert.com/cv812.htm Argument for providing B<sub>12</sub> with food fortification of folate, since otherwise folate will correct hematological symptoms while leaving neurological symptoms to progress]</ref>。
 
十分な量の葉酸が利用できる場合には、[[メチルマロン酸]](MMA)を代謝するビタミンB<sub>12</sub>依存酵素である[[メチルマロニルCoAムターゼ]](MUT)や[[ホモシステイン]]を基質として[[メチオニン]]を合成する酵素として知られている[[5-メチルテトラヒドロ葉酸-ホモシステインメチルトランスフェラーゼ]](MTR)を助けることになり、ビタミンB<sub>12</sub>欠乏症として知られるほとんどの症状は正常化される。
 
 
 
ビタミンB<sub>12</sub>補酵素の反応性の高いC-Co結合が3つの主な酵素反応に関連している。
 
 
 
1番目は[[異性化酵素]]反応である。1番目の置換基である[[水素]]原子と[[酸素]]原子、[[アルコール]]基、[[アミノ基]]などと、1番目の置換基と隣り合った2番目の置換基である[[炭素]]原子(X基)を直接移動させる再配置である。例として、[[メチルマロニルCoA]]を[[スクシニルCoA]]に変換する反応である。
 
 
 
2番目は[[メチル基]][[転移反応]]である。メチル基が2つの[[分子]]間を移動する。例として[[5-メチルテトラヒドロ葉酸]]を脱メチル化して[[テトラヒドロ葉酸]]に変化させると同時に、[[ホモシステイン]]をメチル化して[[メチオニン]]へ変換させる。
 
 
 
3番目は脱[[ハロゲン]]反応である。有機化合物からハロゲン原子が離脱される反応である。この種の酵素は[[ヒト]]からは発見されていない。
 
 
 
ヒトにおいては、上記最初の2つの反応に対応した2つの主要なビタミンB<sub>12</sub>依存酵素が知られている。それらは次に示す2種類の酵素である。
 
 
 
=== 第1の酵素 ===
 
MUT([[メチルマロニルCoAムターゼ]])は、[[アデノシルコバラミン]]型と炭素骨格の再配置(X基は-COSCoA)を触媒する反応型1の[[異性化酵素]]である。MUTの反応は、[[メチルマロニルCoA]]を[[スクシニルCoA]]に変換し、[[タンパク質]]や[[脂肪]]からエネルギーを抽出する重要なステップを担っている。この機能はビタミンB<sub>12</sub>欠乏症により失われてしまい、その機能はメチルマロン酸血中濃度で医学的に測定することができる。メチルマロン酸の濃度上昇はビタミンB<sub>12</sub>欠乏症に鋭敏に反応するが、不運にもその濃度上昇が必ずしもビタミンB<sub>12</sub>欠乏症のみによるものではないことである。ビタミンB<sub>12</sub>欠乏症患者の90-98%は、メチルマロン酸の濃度が増加する。この試験は大変微妙なものがあり、70歳を超える被験者の20-25%はメチルマロン酸の濃度が増加するが、それらの25-33%はビタミンB<sub>12</sub>欠乏症ではない。この理由により高齢者にはメチルマロン酸濃度での判定は勧められない。ビタミンB<sub>12</sub>の欠乏が起こると体内組織は備蓄したビタミンB<sub>12</sub>を取り崩して血中濃度を維持するため、ビタミンB<sub>12</sub>欠乏症の黄金律試験は存在しないのである<ref name="p2407589"/>。それゆえ欠乏症を示し始めるビタミンB<sub>12</sub>血中濃度が、必要最低限のビタミンB<sub>12</sub>の状態を示しているわけではない。[[ミエリン]]形成や[[中枢神経]]の働きに必要なビタミンB<sub>12</sub>依存酵素MUTの機能は葉酸摂取に影響を受けることはない。MTR([[5-メチルテトラヒドロ葉酸-ホモシステインメチルトランスフェラーゼ]])機能障害に関連した[[DNA]]合成に関わるビタミンB<sub>12</sub>のその他の機能は葉酸摂取によって正常化することができるが、MTRによる[[メチオニン]]へ通常変換される[[ホモシステイン]]の濃度上昇を正常化することはできない。
 
 
 
[[file:Methylmalonic acid.svg|200px|メチルマロン酸]] ---> [[file:Kwas_bursztynowy007.svg|200px|コハク酸]]
 
[[Image:MUT.png|590px|thumb|MUT反応メカニズム]]
 
 
 
=== 第2の酵素 ===
 
MTR([[5-メチルテトラヒドロ葉酸-ホモシステインメチルトランスフェラーゼ]])は、メチオニン合成酵素として知られており、ビタミンB<sub>12</sub>の一種であるメチルコバラミンを利用してホモシステインをメチオニンに変換する第2の種類の反応を触媒するメチル基転移酵素である<ref name="p2407589">{{Cite journal|author=Banerjee RV, Matthews RG |title=Cobalamin-dependent methionine synthase |journal=The FASEB Journal |volume=4 |issue=5 |pages=1450-9 |year=1990 |pmid=2407589}}</ref>。
 
この転移機能はビタミンB<sub>12</sub>欠乏症で失われ、医学的にホモシステインの濃度の上昇で判定することができる。ビタミンB<sub>12</sub>は、葉酸の活性型である[[テトラヒドロ葉酸]](THF)の再生産を手助けしているため、葉酸欠乏症でもホモシステイン濃度の上昇が起こり得る。ビタミンB<sub>12</sub>なしではテトラヒドロ葉酸は[[5-メチルテトラヒドロ葉酸]]に変化してテトラヒドロ葉酸に戻ることができない。MTRはホモシステインの存在下で5-メチルテトラヒドロ葉酸と反応してメチオニンとTHFを生成し、それゆえ食事からの新たな葉酸の摂取の必要性が少なくなる。THFはホモシステインからメチオニンへの変換に伴って生成されるか、食事から得られることとなる。それはビタミンB<sub>12</sub>非依存のチミン合成に関わる[[5,10-メチレンテトラヒドロ葉酸]](5,10-メチレン-THF)のプロセスによって変換される。5,10-メチレン-THFの利用の減少はDNA合成に障害をもたらし、血球や吸収を司る腸壁細胞のように回転率の高い[[細胞分裂]]で障害が生じる。血球細胞の合成障害は、かつて致死性の病として恐れられていた悪性貧血を引き起こす。悪性貧血の巨赤芽球性貧血を含めたすべてのDNA合成の影響は、十分な葉酸の存在により解決される。これは十分な葉酸があれば必要な5,10-メチレン-THFが残るからである。DNA合成、細胞分裂や悪性貧血に関連するビタミンB<sub>12</sub>の最もよく知られている機能は、効率的なDNA生成に必要な活性型の葉酸のビタミンB<sub>12</sub>による維持機能である<ref>{{Cite journal|author=Wickramasinghe SN |title=Morphology, biology and biochemistry of cobalamin- and folate-deficient bone marrow cells |journal=Baillière's Clinical Haematology |volume=8 |issue=3 |pages=441-59 |year=1995 |pmid=8534956 |doi=10.1016/S0950-3536(05)80215-X}}</ref>。その他のコバラミンを必要とするメチル基転移酵素は、[[バクテリア]]中のMメチル転移酵素(Me-H<sub>4</sub>-MPT)が知られている。
 
 
 
=== 十分な葉酸存在下でのMUT及びMTR欠損疾患 ===
 
十分な葉酸が存在している場合には、ヒトにおいてビタミンB<sub>12</sub>依存酵素であるMUT関連反応は[[神経系]]に最も特徴的な副次影響を示す。これは、葉酸の再生産に関連したメチル基転移型のMTR反応が、葉酸が十分存在している場合にはその欠乏の影響が明らかでなくなるためである。
 
 
 
1990年代後半から多くの国々で強化[[小麦粉]]として葉酸が添加され始めてから葉酸欠乏症は稀となった。同時に貧血と[[赤血球]]のサイズに関連した[[DNA]]合成感受性試験が小規模の医学試験所でも日常的に行われているため、ビタミンB<sub>12</sub>欠乏症に影響を受けるMTRはDNA合成障害による貧血のような古典的症状のように明らかでなく、血中や尿中の[[ホモシステイン]]濃度の上昇のようにあまり明らかでない症状で判別されることになる。この症状は、[[動脈]]と([[脳卒中]]や[[心臓発作]]に影響する)[[凝固系]]へ長期間にわたりダメージを与えるが、この影響は[[アテローム性動脈硬化症]]や[[老化]]と関連したその他の要因と分離するのが難しい。
 
 
 
ビタミンB<sub>12</sub>欠乏症の結果による[[ミエリン]]の損傷は、適切な量の葉酸や[[メチオニン]]の存在があっても、より特徴的で明確なビタミン欠乏の問題となる。これは、[[メチルマロニルCoA]]から[[スクシニルCoA]]へ代謝されるに際して絶対必要なMUTと関連した反応により最も直接的に結び付いている。この2番目の反応の障害は[[メチルマロン酸]]の濃度の上昇をもたらし、ミエリンの不安定さをもたらす。過剰なメチルマロン酸は、通常の[[脂肪酸]]合成に障害をもたらし、通常の[[マロン酸]]よりもより通常の脂肪酸合成に悪影響を与えている。異常な脂肪酸がミエリンに影響を与えているのなら、結果としてミエリンは脆くなり、ミエリンの崩壊が発生する。しかしながら正確なメカニズムは解明されていない。結果として亜急性の[[中枢神経]]と[[脊髄]]の複合した崩壊が引き起こされる<ref>{{Cite journal|author=Naidich MJ, Ho SU |title=Case 87: Subacute combined degeneration |journal=Radiology |volume=237 |issue=1 |pages=101-5 |year=2005 |pmid=16183926 |doi=10.1148/radiol.2371031757}}</ref>。たとえ葉酸が十分に存在して貧血が発生していなくとも、原因が何であれ、ビタミンB<sub>12</sub>欠乏症は[[ニューロパチー]]を引き起こす。
 
 
 
ビタミンB<sub>12</sub>依存のMTR反応は、間接的なメカニズムではあるが神経に障害を与える影響を起こす。[[ミエリン鞘]]の[[リン脂質]]のメチル化に必要な[[S-アデノシルメチオニン]]を合成するには(もしビタミンB<sub>12</sub>によりホモシステインから再生産されない場合には、葉酸のように食事中から摂取しなければならないように)適切なメチオニンが必要である。S-アデノシルメチオニンの合成はビタミンB<sub>12</sub>に依存しないが、ビタミンB<sub>12</sub>は基質の原料となる[[必須アミノ酸]]のメチオニンの再利用を手助けしている。加えて、S-アデノシルメチオニンは[[神経伝達物質]]、[[カテコールアミン]]の合成や[[脳]]内の代謝に関わっている。これらの神経伝達物質は、気分を保つために重要で、ビタミンB<sub>12</sub>欠乏症が[[抑うつ]]となぜ関連しているかを説明しうるものである。葉酸を大量に摂取しない限り、ミエリン鞘のリン脂質のメチル化は、MTRの再利用に関係して適切な量の葉酸に依存するかもしれない。
 
 
 
== 類縁体 ==
 
コバルト上の[[シアノ基]]を[[メチル基]]に置き換えた[[メチルコバラミン]] (methylcobalamin) や、5-デオキシアデノシル基に置き換えた[[アデノシルコバラミン]] (adenosylcobalamin) などが存在する。[[ヒドロキシ基]]に置き換えると[[ヒドロキソコバラミン]]になる。
 
 
 
CN基がヌクレオチドに置換されることによって、[[補酵素]]型であるコバミドとなる。
 
 
 
[[画像:vitamineB12.png]]
 
 
 
[[1964年]]、[[ドロシー・ホジキン]]らは、[[X線回折|X線構造解析]]によってシアノコバラミンの構造決定を果たし[[ノーベル化学賞]]を受賞した。
 
 
 
== 吸収メカニズム ==
 
[[ハプトコリン]]や内因子は、以下に述べるビタミンB<sub>12</sub>吸収メカニズムの一端を担っている<ref>渡辺文雄「ビタミンB12 の基礎」Modern physician 2007; 27: 1213‒5</ref>。
 
*ハプトコリンは、[[唾液腺]]から分泌され、Rタンパク質とも呼ばれている。
 
*食事中のビタミンB<sub>12</sub>は、[[タンパク質]]と結び付いており、[[胃]]の[[ペプシン]]がタンパク質を分解しビタミンB<sub>12</sub>が遊離される。
 
*胃の中で遊離したビタミンB<sub>12</sub>はハプトコリンと強く結び付き、安定化し、胃内の強酸性下でのビタミンB<sub>12</sub>の分解を防いでいる。
 
*ビタミンB<sub>12</sub>とハプトコリンの結合体は、胃から[[十二指腸]]に移動し、ハプトコリンが[[膵液]]によって消化され、ビタミンB<sub>12</sub>が遊離し、胃で分泌された[[内因子]]と結び付く。
 
*このビタミンB<sub>12</sub>と内因子との結合体は[[回腸]]終端部の[[柔毛]]から[[腸]][[上皮細胞]]に吸収される。
 
正常な胃の機能を有した([[萎縮性胃炎]]などにより内因子の分泌障害のない)健康な成人での食事中のビタミンB<sub>12</sub>の吸収率は50%程度であると言われている<ref>Food and Nutrition Board, Institute of Medicine. Vitamin B12. In: Institute of Medicine, ed. Dietary reference intakes: for thiamin, riboflavin, niacin, vitamin B6, folate, vitamin B12, pantothenic acid, biotin, and choline. National Academy Press, Washington D.C., 1998:
 
306‒56.</ref><ref>Watanabe F. Vitamin B12 sources and bioavalilability. Exp Biol Med 2007; 232: 1266‒74.</ref>。ビタミンB<sub>12</sub>は内因子と結び付かないと腸から効果的に吸収されないため、内因子の分泌量が制約要因となり食事当たり2μg 程度でビタミンB<sub>12</sub>の吸収が飽和する<ref name=Scott/><ref name=Berlin/>。このため、過剰のビタミンB<sub>12</sub>を摂取しても生理的には吸収されない。胃から分泌された内因子と結合して[[回腸]]から吸収されたビタミンB<sub>12</sub>は、輸送タンパク質である[[トランスコバラミン]]と結合して血液中を運搬され、主に[[肝臓]]に貯蔵されることとなる。平均排泄量2. 5 μg/日のビタミンB<sub>12</sub>化合物が[[胆汁]]中に排泄され<ref>{{cite journal |author=el Kholty S, Gueant JL, Bressler L, ''et al.'' |title=Portal and biliary phases of enterohepatic circulation of corrinoids in humans |journal=Gastroenterology |volume=101 |issue=5 |pages=1399-408 |year=1991 |month=November |pmid=1936810}}</ref>、胆汁中に排泄されるビタミンB<sub>12</sub>の半数は内因子と結びついて[[腸肝循環]]により再吸収され、残りは[[糞便]]へ排泄される<ref>{{Hfnet|177|ビタミンB12解説}}</ref>。
 
 
 
== 吸収源 ==
 
=== 食品 ===
 
海洋性食品である[[海苔]]、[[貝]]、[[動物]]性食品の[[肝]]に30-0µgと非常に多く含有される<ref name="fooddb5ed" /><!--。植物性の海苔はビタミンB<sub>12</sub>として有効であり、[[菜食主義者]]にとって貴重な摂取源となるとの意見もある--><ref>鈴木英鷹 「[http://ci.nii.ac.jp/naid/110004688287/ 完全菜食とビタミンB_12欠乏 : 完全菜食において海苔はビタミンB_12の供給源として有効である]」『大阪ソーシャルサービス研究』Vol.4(20031220)、pp19-25</ref>。[[魚類]]には、0.5-30µgほど含まれる<ref name="fooddb5ed" />。畜産食品では、肝臓と舌以外に、肉類は0.3-2.5µg、生卵は0.9µg、普通牛乳は0.3µgほどが含まれる<ref name="fooddb5ed" />。
 
 
 
==== 植物によるビタミンB<sub>12</sub>の摂取 ====
 
ビタミンB<sub>12</sub>は、穀類、芋類、砂糖類、豆類、野菜類、果実にはほとんど含有されない<ref name="fooddb5ed">[http://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/gijyutu/gijyutu3/toushin/05031802.htm 五訂増補日本食品標準成分表](文部科学省)</ref>。例外的に、野菜ではビタミンB<sub>12</sub>の水溶液をかいわれに吸収させた「マルチビタミンB<sub>12</sub>かいわれ」が開発され、6.8µg含んでいる<ref>[http://www.murakamifarm.com/info/release/040616/ 国内初のビタミンB<sub>12</sub>含有野菜「マルチビタミンB<sub>12</sub>かいわれ」の量産化に成功、出荷を開始] (スプラウト王国、2004年6月16日報道関係資料)</ref><ref>「[http://www.hiroshima-u.ac.jp/news/show/id/231 広島大学と(株)村上農園がビタミンB12入りカイワレ大根を共同開発] (広島大学 2004年1月22日)</ref>。
 
 
 
また、ビタミンB<sub>12</sub>が不足しやすい菜食主義者に対して、[[海苔]]が摂取源として有効かどうかには議論がある。
 
 
 
文部科学省の発行する五訂増補日本食品標準成分表では海苔類はビタミンB<sub>12</sub>を含有するとされている<ref>[http://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/gijyutu/gijyutu3/toushin/05031802.htm 五訂増補日本食品標準成分表] (文部科学省)</ref>。五訂増補日本食品標準成分表に掲載されている海苔のビタミンB<sub>12</sub>含有量は、近年の主流となってきた化学発光免疫測定法に基づく自動分析法ではなく、測定精度が低く、なおかつ熟練を要する微生物法により測定された値である<ref>柴田克己 [http://www.shc.usp.ac.jp/shibata/H13Report.II-01.pdf 日本人の水溶性ビタミン必要量に関する基礎的研究  (平成13年度厚生科学研究費)]</ref>。市販の複数の藻類のビタミンB<sub>12</sub>含有量を微生物法と化学発光法で測定した結果、スジアオノリとスサビノリが多量に含有するビタミンB<sub>12</sub>のほとんどが生理的に有効なOH-B12であり、人間が対象ではなく参考ではあるが、ビタミンB<sub>12</sub>欠乏ラットを用いた実験ではこれらの海苔がビタミンB<sub>12</sub>供給源として有効であると報告されている<ref>阿部捷男「食品中のビタミンB12の新規な定量法の開発とビタミンB12の栄養評価」『大阪府立大学学報』、号外第1号、2001年3月27日、pp30-33</ref>。
 
 
 
乾燥状態のスジアオノリ、スサビノリ、クロレラに含まれるビタミンB<sub>12</sub>は生理的に有効なビタミンB<sub>12</sub>であり、スサビノリから単離したビタミンB<sub>12</sub>を、人間ではないので参考ではあるが、ビタミンB<sub>12</sub>欠乏ラットを投与したところ供給源として有効と報告されている<ref name="vitamin200202">渡辺文雄「食用藻類に含まれるビタミンB12の特性と栄養評価」『ビタミン』76巻4号、2002年2月、pp246-248</ref>。
 
 
 
一方で、2002年に複数の文献を検査した海外のベジタリアンのサイトの報告によれば、生海苔を乾燥させた乾燥海苔はビタミンB<sub>12</sub>の供給源になるという結論を持った論文に対して、そのデータに対してそうではないとの見解を示し、[[テンペ]]、生海苔、円石藻類のみがビタミンB<sub>12</sub>源として確実な摂取源であるかさらに研究されるべきであるとする報告もある<ref name="veganB12">{{Cite web |author=Jack Norris |date=2002-05 |url=http://www.veganoutreach.org/health/B122002.pdf |title=Vitamin B12: Are You Getting It? |publisher=Vegan Outreach |accessdate=2017-01-24|archiveurl=http://web.archive.org/web/20030415130818/http://www.veganoutreach.org/health/B122002.pdf |archivedate=2003-04-15}} その解説個人サイト、[http://macrostarter.at.webry.info/200905/article_8.html 海藻とビタミンB12]</ref><ref name="b12plant">{{Cite web |author=Jack Norris (Registered Dietitian Director, Vegan Outreach) |date=2015-10 |url=http://www.veganhealth.org/b12/plant |title=B12 in Tempeh, Seaweeds, Organic Produce, and Other Plant Foods |publisher=VeganHealth.org |accessdate=2017-01-24}}</ref>。日本の研究者は、海外では藻類を食する文化がないため、適切でない乾燥方法を用いた藻類のビタミンB<sub>12</sub>が生理的に不活性になることがあるという報告があると指摘している<ref name="vitamin200202" />。
 
 
 
1995年に、鈴木英鷹が行った調査では、厳格な玄米菜食の菜食歴4~10年の7~14歳の子供6名を対象とした研究において、1日あたり2~4gの海苔を摂取した場合、コントロール群とビタミンB<sub>12</sub>値などに有意差がないために、厳格な玄米菜食を行う子供でも海苔を食べることによってビタミンB<sub>12</sub>の欠乏を防ぐことができると報告している<ref>鈴木英鷹「厳格な玄米菜食児における血清ビタミンB12値」『Journal if Nutritional Science and Vitaminolgy』41巻6号、1995年12月、pp587-594</ref>。この研究は血清ビタミンB<sub>12</sub>値とMCV(平均赤血球容積)だけの計測結果である。海外のベジタリアンのサイトの報告では、血清ビタミンB<sub>12</sub>値は、ビタミンB<sub>12</sub>欠乏症を悪化させる可能性のある有害なビタミンB<sub>12</sub>類似体もビタミンB<sub>12</sub>として計測されてしまうために、尿中メチルマロン酸を調査すべきで、海苔を食べることはビタミンB<sub>12</sub>の供給源であるという論文の結論に同意しないと主張し、その理由として統計上の有意差はないが改善もしていないためである<ref name="veganB12"/><ref name="b12plant"/>。
 
 
 
同じ鈴木英鷹が2003年に生後より厳格な玄米菜食をしている小中高生の菜食者6名(男4名、女2名)を対象にした研究において、1日あたり海苔を0~2グラム摂取していた2名は、体内ビタミンB<sub>12</sub>の減少を示す尿中メチルマロン酸の上昇を示したものの、1日あたり海苔を4グラム以上摂取していた4名は尿中メチルマロン酸の上昇を示さなかったことから、海苔を毎日4グラム以上摂取することで、ビタミンB<sub>12</sub>の供給源になることが示唆された<ref>鈴木英鷹「[http://ci.nii.ac.jp/naid/110004688287 鈴木英鷹 完全菜食とビタミンB12欠乏(完全菜食において海苔はビタミンB12の供給源として有効である)]」『大阪ソーシャルサービス研究』2003年12月20日、pp.19-25</ref>。<!--この測定にあたっては、採血1週間前の食事内容の聞き取りを行っただけである。食事内容の聞き取りを行うことは食事調査において一般的な手法である<ref>ウォルター・ウィレット『食事調査のすべて―栄養疫学』ISBN 978-4804110516.</ref>。-->
 
 
 
=== 細菌 ===
 
ビタミンB<sub>12</sub>は、特定の[[真正細菌]]及び[[古細菌]]による[[原核生物]]によってのみ天然に産生され、多細胞または単細胞の[[真核生物]]によって産生されたものではないと主張されている<ref>{{cite journal|last1=Moore|first1=SJ|last2=Warren|first2=MJ|title=The anaerobic biosynthesis of vitamin B12.|journal=Biochemical Society transactions|date=1 June 2012|volume=40|issue=3|pages=581–6|doi=10.1042/BST20120066|pmid=22616870}}</ref><ref>{{cite book|last1=Graham|first1=Ross M.|last2=Deery|first2=Evelyne|last3=Warren|first3=Martin J.|editor1-last=Warren|editor1-first=Martin J.|editor2-last=Smith|editor2-first=Alison G.|editorlink2=Alison Gail Smith|title=Tetrapyrroles Birth, Life and Death|date=2009|publisher=Springer-Verlag New York|location=New York, NY|isbn=978-0-387-78518-9|page=286|chapter=18: Vitamin B12: Biosynthesis of the Corrin Ring|doi=10.1007/978-0-387-78518-9_18}}</ref>。[[ヒト]]や他の動物のいくつかの[[腸内細菌]]によって合成されるが、[[内因子]]と結びついたビタミンB<sub>12</sub>が吸収される[[回腸]]の部位からさらに遠位の[[大腸]]でビタミンB<sub>12</sub>が産生されているので、ヒトは大腸で作られたビタミンB<sub>12</sub>を十分に吸収することができない<ref name=Gille2015rev>{{cite journal|last1=Gille|first1=D|last2=Schmid|first2=A|title=Vitamin B12 in meat and dairy products.|journal=Nutrition reviews|date=February 2015|volume=73|issue=2|pages=106–15|doi=10.1093/nutrit/nuu011|pmid=26024497}}</ref>。しかし、[[牛]]や[[羊]]のような[[反芻動物]]は細菌を第一胃と第二胃で培養し産生されたビタミンB<sub>12</sub>を小腸内で吸収することができる<ref name=Gille2015rev/>。反芻動物の腸内細菌がビタミンB<sub>12</sub>を産生するには、動物は十分な量の[[コバルト]]を細菌に提供しなければならない<ref name=McDowell>{{cite book|last1=McDowell|first1=Lee Russell|title=Vitamins in Animal and Human Nutrition.|date=2008|publisher=John Wiley & Sons|location=Hoboken|isbn=9780470376683|pages=525, 539|edition=2nd|url=https://books.google.com/books?id=UR9MnQ806LsC&pg=PA525}}</ref>。
 
 
 
反芻動物以外の反芻胃を有さない[[草食]]の放牧動物はビタミンB<sub>12</sub>とそれを産生する細菌をそれらの動物が食べる植物の根に付着した土壌から摂取することになる<ref name=BPE>{{cite news|last1=Rooke|first1=Jennifer|title=Do carnivores need Vitamin B12 supplements?|url=http://baltimorepostexaminer.com/carnivores-need-vitamin-b12-supplements/2013/10/30|work=Baltimore Post Examiner|date=October 30, 2013}}</ref>。
 
 
 
== 過多症 ==
 
ビタミンB<sub>12</sub>は水溶性なので、過多症の心配はないと考えられている。しかし、血漿中のビタミンB<sub>12</sub>濃度が高かった人ほど、血液学的な[[癌]]、[[喫煙]]関連癌、[[飲酒]]関連癌などの特定の癌を1年以内に発症するリスクが高かった旨の[[コホート研究]]による調査結果が報告されている<ref>Arendt JF, et al. "[http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/24249744 Elevated plasma vitamin B12 levels as a marker for cancer: a population-based cohort study.]" Journal of the National Cancer Institute; 2013 Dec 4;105(23): p 1799-805. DOI: 10.1093/jnci/djt315, PMID 24249744</ref>。
 
 
 
== 欠乏症 ==
 
[[ビタミンB12欠乏症]]は、ビタミンの供給、吸収にかかわる[[タンパク質]]、このビタミンを利用する酵素の異常、など非常に複雑な要因が絡んで起こる。ビタミンB<sub>12</sub>の一日の必要量は極めて少なく(2.6[[マイクログラム|µg]])程度とされる。ビタミンB<sub>12</sub>の正常な成人の必要量は1.0µg/日で、吸収率を50%として必要な摂取量は2.0µg/日である。摂取推奨量は、1.2を乗じて2.4µg/日である<ref name=kijun/>。体内の備蓄量はミリグラム単位で存在するため、ビタミンB<sub>12</sub>が摂取できなくなっても、欠乏症に至るまでには3-5年間かかる。しかし、胃全切除後では、ビタミンB<sub>12</sub>の吸収に必須の蛋白質である[[内因子]]の分泌能が恒久的に失われるのでビタミンB<sub>12</sub>欠乏症を発症しやすい。また、[[野菜]]・[[果物]]類にはほとんど含まれないので、極度の[[菜食主義]]でも欠乏症になることがある。
 
 
 
=== DNA合成障害による悪性貧血等 ===
 
ビタミンB<sub>12</sub>あるいは葉酸が不足して、葉酸が触媒的に再生産されないとDNA合成に異常が起こり細胞の成熟が正常に行われなくなるのは[[巨赤芽球]]を呈する[[赤芽球]]だけではなく、[[顆粒球]]系や[[巨核球]]系、さらに他の細胞とくに増殖の盛んな[[上皮]]や[[精子]]など細胞にも同様の影響をあたえる<ref name="三輪血液病学p974">浅野茂隆、池田康夫、内山卓 監修『三輪血液病学』文光堂、2006年、ISBN 4-8306-1419-6、p.974</ref><ref name="小川p72">小川聡 総編集『内科学書』Vol.6 改訂第7版、中山書店、2009年、ISBN 978-4-521-73173-5、p.72</ref>。
 
ビタミンB<sub>12</sub>の吸収不足の原因となる[[萎縮性胃炎]]では大球性高色素性貧血 ([[平均赤血球容積]](MCH)の高値)が認められることがある<ref>松田 晃、「[http://doi.org/10.2169/naika.95.2010 2. 巨赤芽球性貧血]」、『日本内科学会雑誌』 Vol. 95 (2006) No. 10</ref>。胃全摘や高度な[[萎縮性胃炎]]では、内因子が不足するためビタミンB<sub>12</sub>の吸収障害が起こる。赤血球のDNAの合成が阻害され大球性貧血([[巨赤芽球]]性貧血)が起こることがあり、[[悪性貧血]]と呼ばれている<ref>栗山 貴久子ほか、[https://www.jstage.jst.go.jp/article/jjph1987/12/5/12_5_359/_pdf 12歳で発症した若年性悪性貧血II型の1例]、日本小児血液学会雑誌、Vol. 12 (1998) No. 5</ref>。
 
{{main|悪性貧血}}
 
 
 
=== 亜急性連合性脊髄変性症 ===
 
[[亜急性連合性脊髄変性症]](ICD-10:E53.8)は、[[脊髄]]の側索と後索が同時に障害される疾患である。側索と後索の[[髄鞘]]の形成が阻害される。同時に阻害される事から連合性と呼ばれる。
 
{{main|亜急性連合性脊髄変性症}}
 
 
 
=== 精神的影響 ===
 
ビタミンB<sub>12</sub>欠乏症は、潜在的に深刻で不可逆的な障害を[[脳]]と[[神経]]にもたらしうる。ビタミンB<sub>12</sub>欠乏症は、[[躁病]]や[[精神病]]、[[疲労]]、[[記憶障害]]、神経過敏、[[抑うつ]]、[[運動失調]]及び人格変化の症状を引き起こす可能性もある<ref name="ijnwvitaminb12">{{cite journal |vauthors=Sethi NK, Robilotti E, Sadan Y |title=Neurological Manifestations Of Vitamin B-12 Deficiency |journal=The Internet Journal of Nutrition and Wellness |volume=2 |issue=1 |year=2005 |url=https://ispub.com/IJNW/2/1/4476 |doi=10.5580/5a9}}</ref><ref name="imajvitaminb12">{{cite journal | vauthors = Masalha R, Chudakov B, Muhamad M, Rudoy I, Volkov I, Wirguin I | title = Cobalamin-responsive psychosis as the sole manifestation of vitamin B12 deficiency | journal = The Israel Medical Association Journal | volume = 3 | issue = 9 | pages = 701–703 | date = Sep 2001 | pmid = 11574992 | doi =  | url = http://www.ima.org.il/IMAJ/ViewArticle.aspx?year=2001&month=09&page=701 }}</ref><ref name="nlm.nih.gov">{{cite web |url=https://www.nlm.nih.gov/medlineplus/ency/article/000569.htm |title=Pernicious anemia: MedlinePlus Medical Encyclopedia |publisher=[[National Institutes of Health]]: National Library of Medicine|date= |accessdate=2013-12-29}}</ref>。
 
 
 
=== 脳収縮 ===
 
オックスフォード大学が61歳から87歳の107人に対して行った研究によると、ビタミンB<sub>12</sub>濃度が最も低い群は脳収縮を引き起こす可能性が6倍高いと報告されている<ref>[http://www.news.com.au/couriermail/story/0,23739,24336544-23272,00.html Going veggie shrinks the brain] (The Courier-Mail, September 12 2008)</ref>。
 
 
 
=== 治療 ===
 
[[葉酸]]、[[グリシンベタイン|ベタイン]]などとともに[[自閉症]]児へのサプリメンテーションが有効という報告があるが、シアノコバラミンは適切なビタミンB<sub>12</sub>ではない。[[補酵素]]型である[[メチルコバラミン]]を使うのがよい<ref>宮尾益知監修『アスペルガー症候群 治療の現場から』出版館ブック・クラブ、2009年、81ページ。</ref>。
 
 
 
注射やパッチは、消化器からの吸収が不十分な場合に用いられるが、0.5から1mg以上の高容量の経口摂取であれば注射やパッチは必要ではないとの証拠もある。悪性貧血であっても経口投与で治療が十分に可能であるとも言われている<ref>{{cite journal |author=Bolaman Z, Kadikoylu G, Yukselen V, Yavasoglu I, Barutca S, Senturk T |title=Oral versus intramuscular cobalamin treatment in megaloblastic anemia: a single-center, prospective, randomized, open-label study |journal=Clin Ther |volume=25 |issue=12 |pages=3124-34 |year=2003 |pmid=14749150 |doi=10.1016/S0149-2918(03)90096-8}}</ref><ref>{{cite journal |author=Lane LA, Rojas-Fernandez C |title=Treatment of vitamin b(12)-deficiency anemia: oral versus parenteral therapy |journal=Ann Pharmacother |volume=36 |issue=7-8 |pages=1268-72 |year=2002 |pmid=12086562 |doi=10.1345/aph.1A122}}</ref><ref>{{cite journal |author=Butler CC ''et al.'' |title=Oral vitamin B12 versus intramuscular vitamin B12 for vitamin B12 deficiency: a systematic review of randomized controlled trials |journal=Fam Pract |volume=23 |issue=3 |pages=279-85 |year=2006 |pmid=16585128 |doi=10.1093/fampra/cml008}}</ref>。このような主張があるものの、ビタミンB<sub>12</sub>は内因子と結び付かないと腸から効果的に吸収されないため、内因子の分泌量が制約要因となり食事当たり2μg 程度でビタミンB<sub>12</sub>の吸収が飽和する<ref name=Scott>{{cite journal |author=Scott JM |title=Bioavailability of vitamin B12 |journal=Eur J Clin Nutr |volume=51 Suppl 1 |issue= |pages=S49-53 |year=1997 |month=January |pmid=902348}}</ref><ref name=Berlin>{{cite journal |author=Berlin H, Berlin R, Brante G |title=Oral treatment of pernicious anemia with high doses of vitamin B12 without intrinsic factor |journal=Acta Med Scand |volume=184 |issue=4 |pages=247-58 |year=1968 |month=October |pmid=5751528}}</ref>。このため、ビタミンB<sub>12</sub>は胃から分泌される内因子を介した吸収機構が飽和すれば食事中から過剰に摂取しても吸収されない。また大量(500 μg 以上)のシアノコバラミンを経口投与した場合でも内因子は非依存的に投与量の1%程度が吸収されるのみである<ref name=kijun>「[http://www.mhlw.go.jp/shingi/2009/05/dl/s0529-4t.pdf ビタミンB12]」『[http://www.mhlw.go.jp/shingi/2009/05/s0529-4.html 日本人の食事摂取基準」(2010年版)]』pp159-161</ref>。[[ピロリ菌]]感染等による萎縮性胃炎による内因子の分泌障害とそれに伴うビタミンB<sub>12</sub>の吸収不全が疑われる場合には、ビタミンB<sub>12</sub>の錠剤の舌下での服用と吸収も考えられる。
 
 
 
== ビタミンB12に関連した遺伝子疾患 ==
 
===メチルマロン酸尿症===
 
[[哺乳動物]]では、奇数鎖脂肪酸の代謝や一部の[[アミノ酸]]の代謝で[[プロピオン酸]]が生成される。このプロピオン酸と[[CoA]]が結び付いた[[プロピオニルCoA]]は、[[ビオチン]]依存性酵素である[[プロピオニルCoAカルボキシラーゼ]]によって(S)-[[メチルマロニルCoA]]に変換され、さらに(R)-[[メチルマロニルCoA]]に変換される。(R)-メチルマロニルCoAは、[[メチルマロニルCoAムターゼ]]によって[[クエン酸回路]]で代謝される[[スクシニルCoA]]に変換されるが、この酵素は炭素-炭素結合の移動を触媒するための[[コバラミン]](ビタミンB<sub>12</sub>)を要する。メチルマロニルCoAムターゼの欠如は、メチルマロン酸の蓄積をもたらし[[血液]]の[[水素イオン指数|pH]]が低下するメチルマロン酸血症を引き起こす<ref name="nanbyou">{{Cite web|url=http://www.nanbyou.or.jp/kenkyuhan/syorei/2142.htm|title=メチルマロン酸血症|work=厚生労働省難治性疾患克服研究班報告|publisher=難病医学研究財団/難病情報センター|accessdate=2010-10-31}}</ref>。[[新生児マススクリーニング]]の1つとなっている。
 
{{main|メチルマロン酸尿症}}
 
===ホモシステイン尿症===
 
[[必須アミノ酸]]の一つである[[メチオニン]]の代謝経路において、中間生成物ホモシスチンの代謝酵素であるシスタチオニン-β合成酵素(シスタチオニン-β-シンターゼ)の先天的欠損によりホモシスチンが[[シスチン]]に変換されず、体内に多量に蓄積され尿中へ排出される[[先天性代謝異常症|先天性アミノ酸代謝異常症]]のひとつである。メチオニン代謝経路において、代謝不良によるメチオニン蓄積にあわせて、中間生成物ホモシスチンの一部がメチオニン合成酵素(メチオニンシンターゼ)によってメチオニンへと還元されることから血中メチオニン濃度が上昇するという特徴も併せ持つ。新生児マススクリーニングの1つとなっている。
 
{{main|ホモシステイン尿症}}
 
 
 
== 脚注 ==
 
=== 注釈 ===
 
{{Reflist|group=注}}
 
 
 
=== 出典 ===
 
<references />
 
 
 
== 関連項目 ==
 
*[[ビタミンB]]
 
*[[5-メチルテトラヒドロ葉酸-ホモシステインメチルトランスフェラーゼ]]
 
*[[ビタミンB12全合成]]
 
 
 
==外部リンク==
 
*{{PaulingInstitute|mic/vitamins/vitamin-B12 Vitamin B12}}
 
*{{Hfnet|177|ビタミンB<sub>12</sub>解説}}
 
*{{Hfnet|46|ビタミンB<sub>12</sub> (シアノコバラミン)|nolink=yes}}
 
*[http://www.mhlw.go.jp/shingi/2009/05/s0529-4.html 日本人の食事摂取基準(2010年版)]
 
*[http://merckmanual.jp/mmpej/sec01/ch004/ch004j.html merckmanual、ビタミンB12](MSD)
 
  
 
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+
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[[Category:ビタミン]]
 
[[Category:ビタミン]]

2018/10/16/ (火) 22:22時点における最新版

シアノコバラミン(cyanocobalamin)

吸湿性暗赤色結晶。造血機構に関与し,アミノ酸代謝における補酵素の働きをする。肝臓抽出物質から発見された。ビタミンB12欠乏症の特徴は体細胞が巨大になることで,悪性貧血の場合の巨赤芽球性貧血が代表的である。このほか,胃全摘,妊娠,広節裂頭条虫症,盲管症候群などでも起る。肝臓から有効成分を抽出し製剤した 15~30μgのシアノコバラミン製剤の注射を行えば,悪性貧血をはじめとする各種貧血,栄養性神経疾患,肝硬変症,放射線障害などに卓効がみられる。吸収率の悪いのが欠点で,それを改善するために,ヒドロキソコバラミンや補酵素型のメコバラミンが研究・開発された。副作用の報告はほとんどない。




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