サーカムフレックス

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テンプレート:ダイアクリティカルマーク サーカムフレックス (circumflex) または曲折アクセント(きょくせつアクセント)は欧文用の「山」形の記号で、フランス語ポルトガル語ベトナム語ルーマニア語エスペラント日本語ローマ字などで用いられるダイアクリティカルマーク(発音区別符号)の一種。

別名、キャレット (caret)、ハット記号 (hat [symbol])[1]。ただしUnicodeでは、「キャレット」は別の文字 U+028C の名称になっている(そちらが原義)。

有間隔のサーカムフレックス「ˆ」はASCIIに含まれ、他の文字を修飾しない独立した記号として使われる。

各言語における用法

以下は概観であり、詳細については各言語の関連項目を参照のこと。

ラテン文字

正書法

フランス語
アクサン・シルコンフレクス (accent circonflexe) という。â, ê, ô はそれぞれ /ɑ/, /ɛ/è と同じ), /o/ の音に確定するが、î, û はアクサンのない i, u と発音上の区別はなく、単に同綴語を識別するだけの機能しかもたない。歴史的には、この符号が付加される母音の後ろに s があったか、重母音であったことが多い。#関連項目にリンクのあるフランス語版の記事が詳しい。
ポルトガル語
アセント・シルクンフレクソ (acento circunflexo) といい、狭めの母音を表す。すなわち、アキュート・アクセントá, é, ó が広めの母音を表す[2]のに対し、â, ê, ô はそれぞれ /ɐ/, /e/, /o/ のような音を表す。
スロバキア語
ô は、/uo/ を表す。
ルーマニア語
îâ はどちらも同じ音で、中舌狭母音 /ɨ/ を表す。
ウェールズ語
â, ê, î, ô, û, ŵ, ŷ があり、それぞれサーカムフレックスのつかない母音に対して長母音を表す。ただしサーカムフレックスのつかない母音が常に短いわけではない。
エスペラント
ĉ, ĝ, ĥ, ĵ, ŝ があり、それぞれ /tʃ/, /dʒ/, /x/, /ʒ/, /ʃ/ を表す。
ベトナム語
â, ê, ô が使われる。ê, ô はそれぞれ狭い /e/, /o/ であり、â は中舌の /ə/ を表す。なお、声調記号はサーカムフレックスと複合して書かれる。

旧正書法

グリーンランド語
1973年以前の旧正書法では â, î, û があり、長母音を表していた。現在は母音字を重ねて aa, ii, uu のように記す。
イタリア語
アッチェント・チルコンフレッソ (accento circonflesso) といい、語の縮約を示していた(-io で終わる名詞の複数形を -î と書くなど)。現在では廃止され、詩文の中で用いられているだけである[3]

翻字

中国語
使用頻度は低いが、拼音ê/e/ を表す。声調記号はサーカムフレックスと複合して ê̄, ế, ê̌, ề と書かれる。
日本語
日本語のローマ字にはいくつかの方式があり、長音の表記方法も複数あるが、訓令式系のローマ字表記においては、母音にサーカムフレックスを添えることによって長音を表す。
これに対してヘボン式などの方式では母音にマクロン「¯」を添えることが一般的で、実際にはこちらのほうがずっと優勢である。
キリル文字
ISO 9:1995のキリル文字翻字体系では、キリル文字と1対1に対応させるために多くのアクセント記号つき文字を使用する。サーカムフレックスのついた文字には â, ĉ, , ê, î, , , , ô, ŝ, û, があり、それぞれキリル文字の я, ҹ, џ, є, ӥ, ҝ, љ, њ, ө, щ, ю, ѕ に対応する。

その他

ラトビア語
正書法上は使用しない。上昇下降調の声調を表す声調記号として学術書で用いられる。
セルビア語クロアチア語スロベニア語
下降調長母音を表す倒置ブレーヴェの代用として使われることがある。

ギリシャ文字

ギリシャ語は古典時代には高低アクセントを持ち、伝統的にサーカムフレックス(περισπωμένη ペリスポメニ)で下降調を表した。現代ギリシャ語では用いられていない。

ギリシャ文字のサーカムフレックスは、山形というよりはチルダ倒置ブレーヴェに似た形をしていることが多い。

IPA

国際音声記号 (IPA) では、下降声調を表す記号である。

数学での用法

単位ベクトルを指す。[math]\mathbf{\hat{r}}[/math]のように表す。

前進を伴う「^」

前進を伴う(spacing) サーカムフレックス、すなわち、それ自体が文字幅を持ち他の文字の上につくものではないサーカムフレックス「^」は、現行のASCII文字コードに含まれ、キーボード入力も容易であることから、とくにコンピューター言語などの分野において、多様な用途を生じている。

歴史

ASCIIの古いバージョン「ASCII-1963」にはサーカムフレックスはなく、符号点5Eには「アップアロー (uparrow)」すなわち上矢印「↑」があった[4]。ASCII-1963には矢印は左「←」と上「↑」のみあり、この特徴はテレタイプASR-33/35から引き継がれていた

ASCIIが現在の形になった1967年版で、5Eは上矢印から(前進を伴う)サーカムフレックスに変更された(なお、左矢印はアンダースコア「_」になった)。このため、現在のサーカムフレックスの用法の一部は、上矢印の用法に由来する。

用法

  • ASCII制御文字を、^ と表示可能文字の2文字で表す場合がある。例:^H(バックスペース)。
  • 上付き文字マークアップに使われる。たとえばLaTeXで「A^2」と書くと [math]A^2[/math]レンダリングされる。
  • 冪乗指数を表現する際に ^ を用いて表現することがある。たとえば「X²」のように表現できないときに、代わりに「X^2」と記述する。Visual Basicなど、いくつかのコンピューター言語でもこの書式を採用し、このとき「^」は二項演算子である。
  • より一般には、クヌースの矢印記号を「^」の連続で表す。たとえば、「A↑↑↑B」の代わりに「A^^^B」と記す。
  • C言語^ は「ビットごとの排他的論理和」のための二項演算子。
  • Pascalではポインタを示す記号として使用される。
  • C++/CLIではオブジェクトへのハンドル型を示す記号として使用される。例:System::Object^ o = gcnew System::Object ;
  • 正規表現では「文字列のはじまり」を指すマーカーである。また、「文字クラスリテラルの手前に置いて『〜以外』を意味する」ためにも用いられる。

実装

符号位置

記号 Unicode JIS X 0213 文字参照 名称
^ U+005E 1-1-16 ^
^
サーカムフレックス、アクサンシルコンフレックス
CIRCUMFLEX ACCENT
ˆ U+02C6 - ˆ
ˆ
ˆ
MODIFIER LETTER CIRCUMFLEX ACCENT
̂ U+0302 1-11-63 ̂
̂
サーカムフレックス(合成可能), 声調下降調
COMBINING CIRCUMFLEX ACCENT
̭ U+032D - ̭
̭
COMBINING CIRCUMFLEX ACCENT BELOW
大文字 Unicode JIS X 0213 文字参照 小文字 Unicode JIS X 0213 文字参照 備考

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HTMLの定義済み文字実体参照

HTMLでは、一部のサーカムフレックスのついた文字について文字実体参照が定義されている。これを使って「&母音字circ;」という形で書くことで、サーカムフレックスつきの文字を表現できる。以下に例を示す。

  • România」と書くと「România」と表示される。
  • Ôsaka」と書くと「Ôsaka」と表示される。

また、有間隔のサーカムフレックス「ˆ」は、「ˆ」と書くことで表現できる。

脚注

  1. hat とは有間隔文字であるASCIIの5Cの名称であるとも言われるが、Unicodeでは合成用(無間隔)文字である U+0302 combining circumflex accent の別名を hat としている。
  2. ただし、é に関しては、ém, én の綴りにおいてのみ、アクセントがあることだけを表し、広めの母音ではない。
  3. 坂本鉄男『現代イタリア文法』白水社、1979年、19頁。
  4. Character Set Issues & Unicode ; Erik Wilde ; UC Berkeley School of Information : ASCII 1963

関連項目