ケルビン

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ケルビン
kelvin
記号 K
国際単位系 (SI)
種類 基本単位
熱力学温度
定義 三重点熱力学温度の 273.16 分の 1
由来 標準大気圧下での水の沸点氷点の温度差の 100 分の 1
語源 ケルヴィン卿
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ケルビン英語: kelvin, 記号: K)は、熱力学温度(絶対温度)の単位である。国際単位系 (SI) において基本単位の一つとして位置づけられている。

ケルビンの名は、イギリス物理学者で、絶対温度目盛りの必要性を説いたケルビン卿ウィリアム・トムソンにちなんで付けられた。なお、ケルビン卿の通称は彼が研究生活を送ったグラスゴーにあるケルビン川English版から取られている。

定義

国際単位系におけるケルビンの定義は以下の通りである[1]

熱力学温度の単位、ケルビンは、水の三重点の熱力学温度の1/273.16である。
補足:この定義は、下記の物質量の比により厳密に定義された同位体組成を持つ水に関するものである(後述)。

ケルビンが熱力学温度の単位であることから、絶対零度は0ケルビンと定まる。さらに、1ケルビンを三重点熱力学温度の273.16分の1としている。これは、元々はセルシウス度の数値に 273.15 を足した(絶対零度を 0 とした)温度目盛りとして定義されたものであったが、現在では逆にセルシウス度がケルビンを元に定義されている[注 1]。水の三重点の値は厳密に273.16ケルビンである。

なお、セルシウス度の歴史的な定義であった標準大気圧の下での水の氷点沸点は、現在の定義ではそれぞれ {{safesubst:#invoke:val|main}} および {{safesubst:#invoke:val|main}} と厳密には一致せず、それぞれ{{safesubst:#invoke:val|main}}({{safesubst:#invoke:val|main}})、{{safesubst:#invoke:val|main}}({{safesubst:#invoke:val|main}}) である(水#物理的性質を参照)。

換算

セルシウス温度 t とそれに等しいケルビン T の関係
[math]t/{}^\circ\text{C} =T/\text{K} -273.15[/math]
[math]T/\text{K} =t/{}^\circ\text{C} +273.15[/math]

なお、量記号を単位記号で割ったものは、その量をその単位で計ったときの数値を表す。

カ氏温度 θ とそれに等しいケルビン T の関係
[math]\theta/{}^\circ\text{F} = \frac{9}{5}T/\text{K} -459.67[/math]
[math]T/\text{K} =\frac{5}{9}( \theta/{}^\circ\text{F} +459.67)[/math]
熱力学温度のエネルギーによる表現
プラズマ物理学の分野では温度を慣例的にエネルギーの単位である電子ボルト(記号: eV)で示すことがある。
その温度における分子の平均運動エネルギーに相当し、ボルツマン定数 k={{safesubst:#invoke:val|main}} により換算される。
1 eV/k=11,604 K
1 K ={{safesubst:#invoke:val|main}}/k

テンプレート:Temperature

歴史

1848年、ケルビン卿は論文「絶対温度目盛りについて」(On an Absolute Thermometric Scale) で、"infinite cold"(絶対零度)を目盛りのゼロ点とし、温度間隔はセルシウス度と同じとする温度目盛りの必要性を説いた。ケルビン卿は、当時の気温計により絶対零度は−273 °Cに等しいと計算した[2]。この絶対目盛りは今日では「ケルビン熱力学温度目盛り」として知られている。ケルビンが算出した"−273"という数値は、氷点におけるセルシウス度あたりの気体の膨張率 0.00366 の逆数から求めたものであり、現在認められている値ともほぼ一致している。

1954年の第10回国際度量衡総会 (CGPM) の第3決議にて、水の三重点を正確に273.16ケルビンとする現行の定義が採択された[3][4]

1967-1968年の第13回国際度量衡総会の決議3にて、それまでの単位名称「ケルビン度」(degree Kelvin)と記号 °K を改め、単位名称を「ケルビン」(kelvin)、記号を K とした[5][6]。そして、尺度ではなく単位であることを明示するために、決議4にて「熱力学温度の単位、ケルビンは、水の三重点の熱力学温度の1273.16である」と定められた[1]

2005年、国際度量衡委員会 (CIPM) は、定義に使用する水の同位体組成についての補足を追加した[7]。これは、水の物理的性質は、厳密には、その同位体組成の違いによって異なるため、三重点を測定するための水について特定の同位体組成を指定する必要があるからである。ここで指定された水は、ウィーン標準平均海水en:Vienna Standard Mean Ocean Water, VSMOW)と呼ばれるものであり、の厳密な物理的性質を計測する場合の国際標準物質となっているものである[8]

使用上の慣例

ケルビンは国際単位系の単位であり、単位記号は大文字の K が正しい(人名に由来する単位には大文字が用いられる。)[9]。かつては「°K」と書かれていたが現在では誤りである。

英語など複数形と単数形を区別する言語では、ボルトオームなど他のSI単位と同様、数値が1以外のときには複数形で表記される(例:「水の三重点は正確に273.16ケルビンである」は "the triple point of water is exactly 273.16 kelvins" となる[10])。「ケルビン温度目盛り ("Kelvin scale")」という用語における"Kelvin"は形容詞として機能し、この場合は頭文字を大文字で書く。

他の大部分のSI単位の記号(例外は角度の単位(例:45°3′4″))と同様、数値と単位記号の間には、"99.987 K" のように空白を入れる[11][12]

1967年の第13回CGPMまで、ケルビンは他の温度の単位と同様、「」(degree)と呼ばれていた。他の温度の単位との区別のために「ケルビン度」("degree Kelvin") や「絶対度」("degree absolute") と呼び、記号を「 テンプレート:°K」としていた。1948年から1954年までは「絶対度」が正式な単位名称であったが、ランキン度のことも絶対度と呼ぶことがあり、曖昧さがあった。第13回CGPMで単位名称が「ケルビン」(記号:K)に改められた[13]

セルシウス温度との併用

ファイル:CelsiusKelvinThermometer.jpg
セルシウス温度とケルビンの両方の目盛りが振られた温度計

科学と技術の分野では、同じ文章中でセルシウス温度とケルビンを併用することがしばしばある(例えば「測定値は{{safesubst:#invoke:val|main}}で、不確かさは60 µK」)。ケルビンとセルシウス温度の温度の間隔は同じ(つまりケルビンとセルシウス度とは同じ)であり、SIにおいてはセルシウス度は「セルシウス温度を表すためのケルビンの特別な名称」とされているので、このような表記は許容される[14]。第13回CGPMの決議3は「温度間隔はセルシウス度によって表現しても良い」と公式に表明しており[5]、「°C」と「K」を併用する習慣は科学的な分野の広範囲にわたり見られる。「µ°C」(マイクロ度、microdegrees Celsius)のような、温度間隔を表すセルシウス度にSI接頭辞を伴った形の使用は、広く採用されなかった。

提案中の新しい定義

2007年、測温諮問委員会からCIPMに、現行の定義では、20 K以下と{{safesubst:#invoke:val|main}}以上で十分な計測ができない報告がなされた。測温諮問委員会では、現行の水の三重点による定義よりも、ボルツマン定数を基準にした方がより良い温度の計量ができ、低温や高温での計測困難を克服できると考えた[15]。CIPMは、ボルツマン定数を正確に{{safesubst:#invoke:val|main}}に固定することでケルビンを定義することを提案した[16]。CIPMは、この提案が2011年の第24回CGPMで採択されることを望んでいたが、第24回CGPMでは、この提案はSI基本単位全体の見直しの一部として考慮すべきとして、採択は2014年のCGPMに延期された[17]。2014年の第25回CGPMでは、「提示されたデータは、新しいSIの定義を採択するには、十分頑強ではない」として、2018年の第26回CGPMまで改訂を延期することとされた[18]

科学的な視点では、この再定義により、温度の単位が他のSI基本単位と関連づけられ、どんな特定の物質からも独立した安定した定義を得ることができる。実際的な視点では、再定義の影響はほとんどない。水が凍る温度(融点)は依然として273.152 519 K、すなわち 0.002 519°C である(水#融点[19]

温度以外の使用法

色温度

ケルビンは、光源の色温度の単位としても用いられる[20]。色温度は、黒体がその温度に応じた色の光を放射するという原理に基づく。約{{safesubst:#invoke:val|main}}以下の温度の黒体は赤みがかって見え、約{{safesubst:#invoke:val|main}}以上の黒体は青っぽく見える。画像投影と写真撮影の分野において、色温度は重要である。昼光用のフィルムの感光乳剤は約{{safesubst:#invoke:val|main}}の色温度が要求される。恒星のスペクトル分類ヘルツシュプルング・ラッセル図上の位置は、「有効温度English版」として知られる恒星の表面温度に基づいている。例えば、太陽光球は、{{safesubst:#invoke:val|main}}の有効温度を持つ。

デジタルカメラや画像編集ソフトウェアでは、編集や設定メニューで色温度(K)をよく使う。色温度が高くなると、画像は白または青っぽく見えるようになる。Kの値を小さくすると、画像は赤っぽく暖みのある色になる。

雑音温度

電子工学において、回路にどれくらいノイズが乗っているか(ノイズ・フロア)の指標としてケルビンが使われ、これを雑音温度という。熱雑音(ジョンソン–ナイキスト・ノイズ)は、ボルツマン定数に由来するノイズで、フリスの雑音の公式English版を使用している回路の雑音温度を決定するのに用いることができる。

符号位置

記号 Unicode JIS X 0213 文字参照 名称
U+212A - K
K
ケルビン

ケルビンの単位記号は、コードポイントテンプレート:UnicharUnicodeにコード化されている。しかしこれは、既存の文字コードとの互換性のために用意されている互換文字である。Unicode標準では、この文字の代わりにテンプレート:Unichar、つまり普通のアルファベットの大文字のKを使うことを推奨している。「次の3つの文字様記号は、普通の文字と正準等価である: テンプレート:Unichar, テンプレート:Unichar, and テンプレート:Unichar。これら3つの全ての文字については、普通の文字が使われなければならない。」[21]

関連項目

テンプレート:温度の単位の比較

参考文献

脚注

注釈

  1. 温度の単位としてケルビンを用いることで、シャルルの法則をより簡便に表すことができる。

出典

  1. 1.0 1.1 Resolution 4: Definition of the SI unit of thermodynamic temperature (kelvin)”. Resolutions of the 13th CGPM. Bureau International des Poids et Mesures (1967年). . 2008閲覧.
  2. Lord Kelvin, William (October 1848). “On an Absolute Thermometric Scale”. Philosophical Magazine. http://zapatopi.net/kelvin/papers/on_an_absolute_thermometric_scale.html . 2008閲覧.. 
  3. Resolution 3: Definition of the thermodynamic temperature scale”. Resolutions of the 10th CGPM. Bureau International des Poids et Mesures (1954年). . 2008閲覧.
  4. 国際文書 国際単位系 (SI) 第 8 版日本語版 (2006) pp. 20, 24。
  5. 5.0 5.1 Resolution 3: SI unit of thermodynamic temperature (kelvin)”. Resolutions of the 13th CGPM. Bureau International des Poids et Mesures (1967年). . 2008閲覧.
  6. 国際文書 国際単位系 (SI) 第 8 版日本語版 (2006) pp. 59, 61。
  7. 国際文書 国際単位系 (SI) 第 8 版日本語版 (2006) pp. 85–86『CIPM, 2005年 熱力学温度の単位, ケルビンの定義の明確化』 。
  8. Unit of thermodynamic temperature (kelvin)”. SI Brochure, 8th edition. Bureau International des Poids et Mesures. pp. Section 2.1.1.5 (1967年). . 2008閲覧.
  9. 国際文書 国際単位系 (SI) 第 8 版日本語版 (2006) p. 42。
  10. Rules and style conventions for expressing values of quantities”. SI Brochure, 8th edition. Bureau International des Poids et Mesures. pp. Section 2.1.1.5 (1967年). . 2012閲覧.
  11. SI Unit rules and style conventions”. National Institute of Standards and Technology (2004年9月). . 2008閲覧.
  12. Rules and style conventions for expressing values of quantities”. SI Brochure, 8th edition. Bureau International des Poids et Mesures. pp. Section 5.3.3 (1967年). . 2015閲覧.
  13. Barry N. Taylor (2008) (.PDF). Guide for the Use of the International System of Units (SI). Special Publication 811. National Institute of Standards and Technology. http://physics.nist.gov/cuu/pdf/sp811.pdf . 2011閲覧.. 
  14. Units with special names and symbols; units that incorporate special names and symbols”. SI Brochure, 8th edition. Bureau International des Poids et Mesures. pp. Section 2.2.2, Table 3 (2006年). . 2016閲覧.
  15. Fischer, J. et al (2007年5月2日). “Report to the CIPM on the implications of changing the definition of the base unit kelvin (PDF)”. . 2011閲覧.
  16. Ian Mills (2010年9月29日). “Draft Chapter 2 for SI Brochure, following redefinitions of the base units”. CCU. . 2011閲覧.
  17. “General Conference on Weights and Measures approves possible changes to the International System of Units, including redefinition of the kilogram.” (プレスリリース), Sèvres, France: 国際度量衡総会, (2011年10月23日), http://www.bipm.org/utils/en/pdf/Press_release_resolution_1_CGPM.pdf . 25 October 2011閲覧. 
  18. Resolution 1 of the 25th CGPM (2014)”. Sèvres, France: International Bureau for Weights and Measures (2014年11月21日). . 2014閲覧.
  19. Updating the definition of the kelvin”. 国際度量衡局. . 2010閲覧.
  20. 技術情報”. スガツネ工業. . 2015閲覧.
  21. (August 2015) The Unicode Standard, Version 8.0. Mountain View, CA, USA: The Unicode Consortium. ISBN 978-1-936213-10-8. Retrieved on 6 September 2015. 

外部リンク