ケッペンの気候区分
ケッペンの気候区分(ケッペンのきこうくぶん、Köppen-Geiger Klassifikation)は、ドイツの気候学者ウラジミール・ペーター・ケッペンが、植生分布に注目して考案した気候区分である。
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歴史
1884年に発表した論文では、季節ごとの温度分布を測定点ごとに示した単純なものであった。1900年に気候区分を拡張、1918年に今日知られている区分とほぼ同じ区分を公表した。この時点ではAからEまでの気候区分が定められていた。1936年に最後の論文を公表した。現在は、トレワーサなどによりH(高山気候)を追加するなどの補正が加わっている。
気候型の判定法
気候型を区分するには各月毎の平均気温と降水量のデータがあればよい。気温を折れ線、降水量を棒グラフで示した雨温図や、縦軸に気温、横軸に降水量をとった座標上に各月のデータをプロットしたハイサーグラフから読み取るのが便利である。
判定には、まず一般的な樹木が生育するのに必要な最低限の降水量があるかどうかを見る必要がある。この基準を乾燥限界といい、以下の計算式から求められる。計算式の違いは季節ごとの水分の蒸発量を考慮したもので、夏季は水分がすぐ蒸発するため乾燥限界を大きくして調整をはかっている。
気候帯
樹林気候と無樹林気候
5つの気候帯があり、低緯度から順に(赤道から極地に向け)A - Eと符号が付けられている。
乾燥帯(B)と寒帯(E)は樹木が生育できず、無樹林気候にまとめられる。ただし、無樹林気候と判別される基準はそれぞれで異なる。それらを除いた熱帯(A)・温帯(C)・亜寒帯(D)は、森林が生育する樹林気候(湿潤気候)にまとめられる。
乾燥帯(B)の判定
まず、最暖月の平均気温が10℃以上であること(寒帯では無いこと)。次に、乾燥帯であるかどうかを判定する。判定式 r=20(t+x)<で得られる乾燥限界を年平均降水量が下回っていれば、乾燥帯である。
記号の意味は以下のとおり。
x=14 | w(冬季乾燥/夏雨) | 最多雨月が夏にあり、10×最少雨月降水量<最多雨月降水量 |
x=0 | s(夏季乾燥/冬雨) | 最多雨月が冬にあり、3×最少雨月降水量<最多雨月降水量かつ最少雨月降水量が30mm未満 |
x=7 | f(年中湿潤/年平均降雨) | wでもsでもない |
寒帯(E)の判定
最暖月平均気温が10℃未満(樹木が育たない)なら寒帯となる。降水量は考慮しない。
樹林気候(A/C/D)の区別
乾燥帯でも寒帯でもない、つまり年平均降水量が乾燥限界を上回り最暖月平均気温が10℃以上ならば樹林気候(湿潤気候)である。
最寒月・最暖月平均気温を基準にして以下のように区分する。
- A(熱帯) - 最寒月が18℃以上(ヤシが生育できる)
- C(温帯) - 最寒月が-3℃以上18℃未満かつ最暖月が10℃以上(冬季の積雪は根雪にならないが、ヤシが生育するほどでもない)
- D(亜寒帯) - 最寒月が-3℃未満かつ最暖月が10℃以上(冬季の積雪は根雪になるが、樹木は生育できる)
高山気候(H)
高山気候(H)もしくは山地気候(G)が区別されることがあるが降水量や気温から判別されるものではなく、ケッペンは設定しておらず、後年になって作られたものである。
気候区
気候帯はそれぞれいくつかの気候区にさらに分類される。気候区の判定基準は樹林気候、寒帯、乾燥帯のそれぞれで異なるが樹林気候の3つの気候帯ではまったく同じではないもののよく似ている。
樹林気候(A/C/D)の気候区
A、C、Dの気候区は以下のようになるがA(熱帯)とC(温帯)・D(亜寒帯)では基準値が異なる。
熱帯(A)の気候区
- f - feucht(湿潤)
- m - Mittelform(中間)
- w - wintertrocken(冬に乾燥)
- s - sommertrocken(夏に乾燥)
温帯(C)と亜寒帯(D)の気候区
- w(冬季乾燥/夏雨) - 最多雨月が夏にあり、10×最少雨月降水量<最多雨月降水量
- s(夏季乾燥/冬雨) - 最多雨月が冬にあり、3×最少雨月降水量<最多雨月降水量かつ最少雨月降水量が30mm未満
- f(年中湿潤/年平均降雨) - wとsのどちらでもない
それぞれ、最暖月平均気温によってさらに細分される。
- a - 最暖月が22℃以上。
- b - 最暖月が10℃以上22℃未満 かつ 月平均気温10℃以上の月が4か月以上
- c(温帯) - 最暖月が10℃以上22℃未満 かつ 月平均気温10℃以上の月が3か月以下
- c(亜寒帯) - 最暖月が10℃以上22℃未満 かつ 月平均気温10℃以上の月が3か月以下かつ最寒月が-38℃以上-3℃未満
- d(亜寒帯) - 最暖月が10℃以上22℃未満 かつ 月平均気温10℃以上の月が3か月以下かつ最寒月が-38℃未満
なおトレワーサは亜寒帯をまず最暖月平均気温によりa - dに分け、それをw/s/fに分けた。
- Da,Db(湿潤大陸性気候|大陸性混合林気候=Dfa,Dfb,Dwa,Dwb,Dsa,Dsb)
- Dc,Dd(亜寒帯気候|針葉樹林気候=Dfc,Dfd,Dwc,Dwd,Dsc,Dsd)
乾燥帯気候(B)の気候区
WはWüste(砂漠)、SはSteppe(ステップ)の頭文字。
年平均気温によってさらに細分される。
- h - 年平均気温が18℃以上
- k - 年平均気温が18℃未満
hはheiß(暑い)、kはkalt(寒い)の頭文字。
寒帯気候(E)の気候区
TはTundre(ツンドラ)、FはFroste(氷点下)の頭文字。
気候型と植生等
上の記号の組み合わせにより、以下の組み合わせができる。太字は日本国内に、気象庁の観測地点が存在する気候である。
日本国内の分布
詳細は各気候の項目を参照のこと。
日本は寒帯、亜寒帯、温帯、熱帯まで幅広く分布するが、大部分が温帯・温暖湿潤気候である。
降水量は全体として多く、乾燥帯となっている観測地点は存在しない。冬季乾燥となる観測地点も稀で、ほとんどの地域は年中湿潤に分類される。
大陸の東岸に隣接するため、冬は大陸の季節風の影響を受け冷え込みは比較的厳しい。一方、夏は太平洋高気圧による南東風が優勢となり、高温多湿となる。
この結果、比較的高緯度である北海道の大部分は亜寒帯・亜寒帯湿潤気候に分類される(温暖湿潤気候との境界域では、例外的に西岸海洋性気候に分類される地点もある)。一方で、本州、四国、九州は、東北北部および高原・山地を除くほぼ全てが温暖湿潤気候に分類される。北海道の大雪山[1]、本州の富士山など、ごく一部の高山の山頂付近が寒帯・ツンドラ気候に分類される[2]。
東京都と沖縄県の離島は、最南端がそれぞれサバナ気候、熱帯雨林気候の北限に掛かっている。
ケッペンの気候区分は、世界を基準にしているため、日本の地域毎の気候の差異を示すにはあまり適していない。そのため、日本独自の気候区分を設けている。一例として下記がある。