「キャリア (国家公務員)」の版間の差分

提供: miniwiki
移動先:案内検索
(1版 をインポートしました)
(内容を「'''キャリア(キャリア官僚)'''<ref>和製英語。英語の「career」は一般に職業を意味する。</ref> 国家公務員採用試験I種に合格...」で置換)
(タグ: Replaced)
 
1行目: 1行目:
{{Law}}'''キャリア(キャリア官僚)'''<ref>[[和製英語]]。英語の「career」は一般に職業を意味する。</ref>とは、[[日本]]における[[公務員試験#国家公務員試験|国家公務員試験]]の総合職試験、上級甲種試験又はI種試験(旧外務I種を含む)等に合格し、[[幹部]]候補生として[[日本の行政機関|中央省庁]]に採用された[[国家公務員]]の俗称である。
+
'''キャリア(キャリア官僚)'''<ref>[[和製英語]]。英語の「career」は一般に職業を意味する。</ref>
  
== 概説 ==
+
国家公務員採用試験I種に合格し,中央本省庁に採用された一般行政職公務員の俗称。それ以外の公務員をノン・キャリア組 non-careerと呼んでいる。両者の間には昇進スピード,最終ポストにおいて大きな差がある。最終ポストはキャリア組の平均が本省庁の中堅課長職,ノン・キャリア組は II種合格者が本省庁の課長補佐級,III種は上級係員である。幹部候補としてのキャリア組は1~2年単位で省庁内の多くの部局を異動したり,他の省庁へ出向したりしてジェネラリストとしてのトレーニングを積んでいく。幹部の頻繁な異動にもかかわらず行政を安定させているのは,スペシャリストとして長年同一部局にいるノン・キャリア組である。
=== キャリア制度 ===
 
高級[[官僚]]とその候補生の登用、昇進のシステムが'''キャリア制度'''(キャリアシステム)と呼ばれる。採用時の試験区分によって選抜された幹部候補グループ(「キャリア」と呼ばれる)は、その他の職員(「ノンキャリア」と呼ばれる)と区別して一律に人事管理が行われ、より早いスピードで昇進、高級官僚の地位をほぼ独占する。しかし、各府省ごとにシステムが若干異なり、府省ごとに違う意味で捉えられることが多いため、統一的な定義はない。どういう人までをキャリアと呼ぶかも、各府省で異なる。国家I種の「行政」「法律」「経済」区分に合格した者(総合職試験に合格した[[事務官]])を指すこともあるが、広義は[[技官]]を含めた国家I種合格者全体を指す。ただし、[[法務省]]では一部の[[検察官]]がキャリアとして扱われたり、[[都道府県警察]]を含め多くの職員を有する警察組織は国家II種[[警察庁]]採用の警察官について[[準キャリア]]と呼ぶ場合があるなど、例外もみられる。「制度」とは呼ばれるものの現行のキャリア制度について法的根拠は存在せず、全くの慣行として事実上の運用がなされている。
 
  
昇格や給与などの待遇は他の公務員(ノンキャリア)と比べ物にならないほど良いと思われがちだが、明らかな差がつくのは入省して相当の経験を積んでからとなる。キャリアは政策の企画・立案や法令案の作成といった法制担当などの責任の重い職務が割り振られることが多い。定時終業など先ず望めず、退庁時間が非常に遅くなることも少なくない(ただ本省勤務者はノンキャリアも含め、概して退庁時間が遅いのが常態ではある)。ほぼ全員が本省[[室長]]クラスまで横並びで昇進し、その後の出世競争から脱落した者は府省の[[地方支分部局]]、[[地方公共団体]]、[[外郭団体]]などの幹部職員として出向したり、[[民間企業]]に再就職あるいは[[政治家]]に転身する。一部は高級官僚(慣例的に本省[[局長]]クラス以上を指す)まで昇進し、一般に同期入省又は後年入省の[[事務次官]]が誕生するまでに、同年次のキャリアは定年を待たずに退官する。
+
{{テンプレート:20180815sk}}
 
 
[[日本銀行]]や元々国の機関であった組織(旧[[鉄道省]]→[[日本国有鉄道]]の[[JR]]や旧[[電気通信省]]→[[日本電信電話公社]]の[[日本電信電話|NTT]]、旧[[郵政省]]→[[郵政公社]]の[[郵便局株式会社|JP]])も、特定大学出身者の優遇などといった形でキャリア制度が残存し、[[特殊法人]]、[[地方公務員]]や戦前からある[[大企業]]でも、キャリア制度に類似した採用、昇進のシステムを存続させているところもある。
 
 
 
=== キャリア公務員の頂点 ===
 
キャリアの一般的な最高位は、各府省の官僚の最高位となる[[事務次官]]である。ただし、[[公正取引委員会]]は[[事務総長]]、[[警察庁]]は[[警察庁長官]]、[[金融庁]]は金融庁長官が官僚の最高位とされている。[[法務省]]では[[認証官]]の[[検事総長]]・次長検事・[[検事長]]の方が例外的に待遇が格上であり、給与面は検事総長は[[国務大臣]]級、[[東京高等検察庁]]検事長は[[副大臣]]級、次長検事と検事長(東京高検除く)は[[大臣政務官]]級と定められている<ref>[http://law.e-gov.go.jp/htmldata/S23/S23HO076.html 検察官の俸給等に関する法律で規定]</ref>。[[外務省]]では[[特別職]]の認証官である[[特命全権大使]]の一部(駐米大使等)の方が待遇が上である<ref>外務省は2001年頃の不祥事を受けた改革で、事務次官を名実ともに外務官僚の第一人者として指導力・求心力を強化し、キャリアの最終ポストとすべきとする、[http://www.mofa.go.jp/mofaj/annai/honsho/kai_genjo/change/saishu.html 外務省改革に関する「変える会」・最終報告書]が提出され、以後は事務次官経験者が大使職に就いた例は1例のみである。[[事務次官#外務省における事務次官]]も参照。</ref>。特別職である[[内閣官房]]の[[内閣官房副長官補]]、[[内閣広報官]]及び[[内閣情報官]]はいずれも政権中枢の業務を担う事務次官級のポストである<ref>[http://law.e-gov.go.jp/htmldata/S24/S24HO252.html#3000000001000000000000000000000000000000000000000000000000000000000000000000000 特別職の職員の給与に関する法律で事務次官と同じ給与]</ref>。
 
 
 
一般的に、その職務の重要性と権限から各省の事務次官を越えたキャリア官僚の頂点とされるのが[[内閣官房]]の[[内閣官房副長官]](事務担当)である。同職は副大臣級<ref name = "fukudaijin">特別職の職員の給与に関する法律で副大臣と同じ給与</ref>で特別職の認証官であり、[[閣議]]への陪席も認められ、[[事務次官等会議]]を主催している。旧[[内務省 (日本)|内務省]]系官庁の事務次官・[[長官]]経験者が就任するのが慣例となっている。官僚が就任する他の副大臣級の役職としては、認証官の[[公正取引委員会|公正取引委員会委員長]]と[[宮内庁|宮内庁長官]]、慣例的に閣議への陪席が認められている[[内閣法制局長官]]があり、いずれも特別職である<ref name = "fukudaijin"/>。
 
 
 
内閣官房副長官を補佐する特別職の[[内閣危機管理監]]と[[国家安全保障会議 (日本)#国家安全保障局|国家安全保障局長]]は大臣政務官級<ref name ="seimukan">特別職の職員の給与に関する法律で大臣政務官と同じ給与</ref>であり政権中枢の業務を担っている<ref name=Tsuite>{{Cite web |date= |url=http://www.kantei.go.jp/jp/singi/ka_yusiki/dai6/siryou1.pdf |title=「国家安全保障会議」について(「国家安全保障会議の創設に関する有識者会議」説明資料) |publisher=内閣官房 国家安全保障会議設置準備室 |accessdate=2013-12-24}}</ref>。官僚が就任することもある他の大臣政務官級の役職としては、いずれも特別職の認証官である[[人事官]](人事院総裁除く)、[[検査官]](会計検査委員長除く)、[[侍従長]]がある<ref name ="seimukan"/>。
 
 
 
官僚出身者が就任する例の多い[[人事院総裁]]と[[会計検査院長]]は、更に格上の国務大臣級<ref>特別職の職員の給与に関する法律で国務大臣と同じ給与</ref>であり、特別職の認証官である。
 
 
 
== キャリア制度の歴史 ==
 
[[File:Uio098j.jpg|thumb|「高等官七等」辞令書。上は[[埼玉県警察部]]の某警視に、下は埼玉県庁の某理事官に発令されたもの]]
 
キャリア制度とは、[[明治|明治時代]]に[[大日本帝国]]を近代国家にするため[[ドイツ帝国]]の公務員採用制度を参考にし、[[1888年]]にスタートした試補制度に起源をもつ。このときは[[帝国大学]]出身者は無試験で任用できるようにし、不足した人数を帝国大学出身者以外の試験選抜という形で採用した。もっとも、帝国大学卒業者の無試験任用は批判が多く、[[1894年]]に[[高等文官試験]](高文試験)と呼ばれる今のキャリア採用制度と同様な制度が誕生した。高文合格者は[[高等官]]と呼ばれたが、他の官吏([[判任官]]など)とは勅令によって厳格に区別され、現在のキャリアと比べても極めて速いスピードで昇進した<ref>例えば、戦後まもなく次官となった[[池田勇人]]と[[佐藤栄作]]は当時いずれも40代であった。</ref>。
 
 
 
戦後、[[連合国軍最高司令官総司令部|GHQ]]は従来の身分制的な公務員制度を改めるべく、アメリカ的な[[職階制]]の導入をはじめ様々な改革を試みたが、各省の抵抗もあって不徹底に終わった。高文試験は名前を変え国家上級を経て国家I種となったが、採用制度と昇進制度は殆ど変化していない。戦後は制度上廃止された高等官に代わり、「キャリア」の語が俗称として定着した。
 
 
 
[[武官]]については、[[陸軍大学校]]と[[海軍大学校]]卒業者が高文合格者に類似した形で各軍における指導的な地位についていた(ただし、大学校を卒業していないものでも[[将官]]まで昇進する場合も散見された)。戦後に創設された[[自衛隊]]の[[自衛官]]は、[[防衛研究所]]一般課程、各自衛隊[[幹部]]学校の[[指揮幕僚課程]]・[[幹部高級課程]]、[[統合幕僚学校]]一般課程(2006年廃止、以降統合高級課程)及び外国陸・海・空軍大学等の卒業生が指導的地位に昇進している。
 
 
 
明治以来の高等文官制度、及び戦後それを非公式に継承したキャリア制度は、世襲や門閥、藩閥による高級官僚登用を防ぎ、かつ職員間の過当競争を回避し<ref>職務内容が国民への奉仕であり、数値化した業績の指標を出すことが難しい。</ref>、日本の近代国家化・発展に大きな役割を果たした。
 
 
 
[[2008年]]に成立した[[国家公務員制度改革基本法]]に基づき、国家I種・II種・III種試験は2011年度を最後に廃止され、2012年度から「総合職(院卒者試験、大卒程度試験)」「一般職(大卒程度・高卒程度)」「専門職」区分による国家公務員採用試験が導入された。新たに設けられた「総合職試験」は「政策の企画立案に係る高い能力」を試す試験とされたが、幹部候補の育成については、別途幹部候補育成課程を設けるものとし、課程対象者の選定については、採用後、一定期間の勤務経験を経た職員の中から、本人の希望及び人事評価に基づいて随時行うものとされている。
 
 
 
この制度変更によって「現行のキャリアシステムは廃止され、根本的に異なる仕組みができ上がる」と当時の[[渡辺喜美]]行政改革担当大臣は国会で答弁<ref>「昨年の国家公務員法改正による能力・実績主義の導入と併せてこれらの改革を実施していくことによって、まさに採用試験の種類にとらわれず、能力ある多様な人材が能力と実績の評価に基づいて幹部候補として育成され幹部へと登用されていくようになり、現行のキャリアシステムは廃止され、根本的に異なる仕組みができ上がるものと考えております。」( 平成20年6月3日参議院内閣委員会における[[渡辺喜美]]行政改革担当大臣答弁)</ref>しているが、実際の運用では、総合職試験は旧I種試験を、一般職試験はII種試験及びIII種試験を継承するものと見なされており、キャリア制度の修正に至っていない。
 
 
 
古代から[[官僚]]は存在し、[[資格任用制]]による官僚登用制度も存在していた(中国の[[科挙]]など)。しかしそれは、日本では基本的に[[貴族]]や[[武士]]を対象とした[[世襲]]と門閥即ち[[家系]]によるものであり、庶民が高級官僚になることは実際は厳しいものだった。やや例外的に、[[平安時代]]は、[[方略試]]という官僚登用試験が存在していた。この試験は当時の大学院生が対象であり、当時の大学([[大学寮]])は入学資格として、五位以上の官人の子弟であることが要求されるが、初期の大学寮は聡明な者なら[[無位]]の者でも入学が許され、大学寮での成績が優秀な学生であるなら[[式部省]]が行う[[官人]]登用試験である[[進士]]を受験し合格すれば官人になる道もあった。稀なことではあるが庶民から進士に合格し下級官人となり、最終的に[[貴族]]にまでなった人物として[[勇山文継]]が知られている。[[江戸時代]]では、[[旗本]]と[[御家人]]の子弟のみを対象とした官僚採用試験が行われていた。
 
 
 
== キャリアの現状 ==
 
戦前まで、[[高等官]]の採用数は[[昭和]]一桁時代までの旧[[大蔵省]]が5〜10人前後であったように現在のそれと比べれば少なかった。とりわけ戦後になって、各省ともキャリアの採用数を増やしたため、全員が局長まで辿り着けず、キャリア各人のモチベーションの維持にも大きな作用があったことが指摘されている。
 
 
 
1980年代までは、[[事務官]]として採用されると30歳で地方の[[税務署]]長、[[警察署]]長、[[郵便局]]長などに就き、本省[[課長]]クラスは大企業の社長に[[行政指導]]という形で号令をかける立場になれ、更に[[天下り]]して約70歳までは職に困ることは無いばかりか、生涯賃金で多くの民間企業を圧倒するということで、非常に人気が高かった。しかし、経済の[[グローバリズム|グローバル化]]による政府の存在感の相対的な低下、民間企業などとの給料の格差や著しい[[サービス残業]]、及び不祥事の頻発とマスコミの公務員バッシングによるイメージの低下等から、民間企業(主に外資系)への人材の流出が指摘されている。
 
 
 
一方で、低成長時代への突入とともに民間企業の魅力も落ちていること、就職の際の競合相手である[[法曹]]界が[[法科大学院]]制度導入とともに先行き不透明になっていること、[[自由民主党 (日本)|自民党]]・[[民主党 (日本 1998-2016)|民主党]]双方が官界出身の政策通議員をより幅広く受け入れるようになったことなどから、依然としてある程度の人気を保っている。
 
 
 
=== 人事院 ===
 
ここ最近は、総合職職員として4~10名程度採用されている。人事院のキャリアは、人事院規則などの法令の改正作業や企画立案、査定業務などの重要ポストを早くから経験し、他省庁などへの出向の機会も早くから与えられる。通常、係長は5年目以降に、課長補佐は10年目以降に昇進する。通常、ノンキャリアは係長になるまでに10年以上、課長補佐になるまでに20年以上かかる。人事院の事務方トップは、事務総長(事務次官級)である。
 
 
 
=== 内閣府 ===
 
ここ最近は、総合職職員として11~16名程度採用されている。キャリアは、内閣府本府のほか、[[内閣官房]]や旧内閣府[[国民生活局]]を改組した[[消費者庁]]などに数多く出向している。[[宮内庁]]、[[公正取引委員会]]、[[国家公安委員会]]([[警察庁]])、[[金融庁]]及び[[消費者庁]]は内閣府の外局であるが、完全な別採用であり、人事も独立している(宮内庁では現在事務系キャリアの採用を行っていない)。[[内閣官房]]同様、政府のその時々の課題に応じ、臨時の組織が設置されることが多いが、その場合の組織は、ほとんどは他省庁からの出向者で占められる。
 
 
 
=== 公正取引委員会 ===
 
ここ最近は、総合職職員として6~8名程度採用されている。[[公正取引委員会]]の所管法律は、[[私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律|独占禁止法]]、[[下請法]]及び[[官製談合防止法]]など限られているものの、その適用範囲は広汎であり、職権行使の独立性と広範な裁量を付与されていることが特徴である。キャリアも独占禁止法のスペシャリストとしての経験を積んでいくこととなり、退職後に法学部の教授に就任する例も多い。[[警察庁]]([[国家公安委員会]])と同様に、他府省における[[大臣]]・[[副大臣]]・[[大臣政務官]]のような政治家が任用されるポストはなく、幹部ポストは全て公正取引[[官僚]](行政官)が就任する。公正取引委員会の事務方トップは、事務総長(各府省次官級審議官(指定職7号)と同等)である。
 
 
 
=== 警察庁(国家公安委員会) ===
 
ここ最近は、総合職職員として25~35名程度採用されている。[[警察庁]]は他府省における[[主任の大臣|大臣]]・[[副大臣]]・[[大臣政務官]]のような政治家が任用されるポストはなく、幹部ポストは全て警察[[官僚]](行政官)が就任する。警察庁の事務方トップは、[[警察庁長官]](事務次官級)である。このため、警察組織は日本の国家機関の中でもとりわけ官僚主導型の運営がなされている。[[国家公安委員会]]は警察庁を管理するが、行政機関であるため、[[国務大臣]]たる[[国家公安委員会委員長]]が日本警察のトップという位置付けにならない。
 
 
 
[[日本の警察官|警察官]]は[[警察庁]]の旧国家I種採用者・旧国家II種採用者と、都道府県採用者に分かれている。警察官の場合、役職以外に[[階級 (公務員)|階級]]による区分もあるため、他府省より一層差別化が進んでいる。[[警部補]]を初任とする国家l種採用者(キャリア)は採用7年目に無試験で[[警視]]に一斉昇任する。他方、[[巡査]]を初任とする都道府県採用者(いわゆる「ノンキャリア」)で警視に昇任する者の数は少なく、最も早く昇任したとしても学歴に関係なく45歳程度であるため、両者の格差は大きい。旧・国家II種試験に合格して警察庁に採用された警察官は[[巡査部長]]を初任とし、キャリアと同様に無試験で昇任するなど、都道府県採用者に比べ有利に処遇されている。このため、公務員試験受験生の間では[[準キャリア]]と称されることもある。しかし、最高幹部(警察庁長官や[[警視総監]]、[[警視監]])へ至ることができないと見込まれる点では、他省庁の国家II種採用者と同様である。ただし、昭和61年に始まったこの制度の歴史はまだ浅く、それ以前は都道府県警察採用の警察官が推薦を受けて警察庁に入庁する制度が存在した。この制度の歴史は比較的新しいものであり、以前は、都道府県採用の警察官が推薦を受けて警察庁に転籍する制度が存在し(警察庁中堅・県警幹部候補)、それは非常に名誉なこととされたが、時代の変遷とともに若手職員の価値観が変わり、昇進・名誉よりも霞が関での激務や全国規模での転勤を敬遠する傾向が見られ、制度が形骸化したことも背景にある。キャリア・準キャリアとして採用された警察官は階級に関係なく国家公務員としての立場が確立するため、都道府県を跨ぐ全国異動がある。一方、ノンキャリアとして採用された警察官は都道府県単位で採用された地方公務員であるため、立場が国家公務員の扱いとなる警視正以上の階級に昇任しない限り都道府県を跨ぐ人事異動は無い。ただし、転籍届により他都道府県警察に移籍という形を採ることができる。ノンキャリアが都道府県を跨ぐ人事異動の例外的な例としては、人事交流が在る。この制度は違う都道府県警察同士がお互いに異動者を出す方式であり、一方的に異動する人事とは性格が異なる。
 
 
 
以上は警察官の場合であるが、キャリア[[技官]]の最高位は、警察庁[[情報通信局]]長である。キャリアは本庁でのみ採用される。技官や事務官は階級がない。技官のキャリアでも警察本部長に就任する場合があり、その場合は警察官として警視長の階級が付与される。
 
 
 
=== 金融庁 ===
 
ここ最近は、総合職職員として10~15名程度採用されている。[[金融庁]]は、平成10年に発足した金融監督庁が平成12年に改組して成立した比較的新しい官庁であり、金融庁(金融監督庁)採用のキャリア1期生は平成11年採用である。このため、現段階では、旧大蔵省出身者が同庁幹部(課長級以上)の大半を占めている。金融庁の事務方トップは、金融庁長官(事務次官級)である。
 
 
 
===  消費者庁 ===
 
ここ最近は、総合職職員として1~6名程度採用されている。[[消費者庁]]は、平成21年に発足した新しい官庁である。このため、現段階では、母体となった[[内閣府]]出身者が同庁幹部(課長級以上)や職員の大半を占めている。消費者庁の事務方トップは、消費者庁長官(事務次官級)である。
 
 
 
=== 総務省 ===
 
ここ最近は、総合職職員として46~54名程度採用されている。[[総務省]]は、旧[[総務庁]]・旧[[自治省]]・旧[[郵政省]]の3省庁の統合によって成立した。そのため総務系、自治系、郵政系と事実上別々に採用を行っているいる。自治系キャリアは、地方公共団体の幹部として出向して経験を積む機会が多く与えられる。早い者であれば30歳を前にして市役所の部長・都道府県の課長クラスに、さらに40歳前後で県の部長や政令市の局長に就任する。その後、県の副知事や政令市の副市長など最高幹部として派遣される者も少なくなく、そのまま知事選や市長選に出馬し当選する者も多い。国家II種試験を経て自治系職員として採用された職員も、地方公共団体の管理職として出向することが多い。総務省発足後の歴代[[総務事務次官]]は、前身の3省庁のうち、自治省出身者が最も多い。
 
 
 
=== 法務省・検察庁 ===
 
ここ最近は、総合職職員として30~34名程度採用されている。[[法務省]]は、[[防衛省]]の[[自衛官]]と[[厚生労働省]]の[[厚生労働技官|医系技官]]と並んで、他府省と異なったキャリア制度が採用されている官庁である。法務省のキャリアは、国家I種試験を経て法務省に採用された者と、司法試験を経て[[検察官]]ないし[[裁判官]]として採用後に法務省に出向している者(ただし、裁判官は法務省に出向する際は検事に転官する)に分けられ、後者が前者に比べ優位な地位に立っている。
 
 
 
もっとも、検事の場合、採用の段階で法務省の幹部候補として歩むこととなる者4~5名を事実上色分けして採用しており、彼らのみ通常の検事とは異なるキャリアパスを歩む(法務省本省での勤務、海外留学、在外公館勤務が多い等)こととなり、その他大勢の検事は退官まで検察の現場で働くこととなるため、検事が他府省におけるキャリア組にそのまま相当する訳ではない。採用時に幹部候補でなかった検事が後に法務省の幹部候補に合流することもある。
 
 
 
法務本省の要職の多くは、検事([[裁判官]]からの転官者を含む)で占められ、国家I種採用者が本省の局長になるケースは例外的である。法務省では、[[事務次官]]は[[検事総長]]を頂点とする[[検察庁]]のピラミッドの一過程として位置づけられており、刑事局長を経験した検事が法務事務次官、[[次長検事]]、[[東京高等検察庁]][[検事長]]等の要職を経て、[[検事総長]]あるいは[[最高裁判所判事]]に至るのが最高の出世コースと言われる。このように法務省は、人事面でも検察庁と密接な関係を有している。
 
 
 
国家I種採用の事務官にも局長級のポストは存在するが、出世は平均すると技官よりは恵まれるが、事務次官となった者は過去おらず、本省局長となれる可能性も極めて低く、他省庁のキャリアに比べると不遇といえる。これまでに本省局長に就任した事務系キャリアは、[[矯正局]]長1名(2016年就任)、[[人権擁護局]]長1名(2017年就任)及び[[入国管理局]]長2名(2006年と2011年就任)である([[矯正局]]長1名(2013年就任)は刑務官出身でキャリアではない)。
 
 
 
法務省は局ごとの縦割り意識が非常に強く、国家l種採用者の人事も、民事局 - [[法務局]]、[[矯正局]] - 矯正管区、入国管理局 - [[地方入国管理局]]などの局別に縦割りで行われている([[総務省]]や[[厚生労働省]]などの省庁再編に起因する縦割り行政ではなく、霞が関最古参の省の一つで、100年以上大きな組織改編もなく存続したことにより、各組織が細分化したことや、出自に違いがあること(例: 入国管理局が外務省から移管されたものである等)に起因するとみられている)。そのため、国家l種の採用も形式上は省として一括採用している。
 
 
 
=== 外務省 ===
 
{{See also|外交官#採用}}
 
ここ最近は、総合職職員として26~28名程度採用されている。かつては[[外務省]]は、国家公務員採用I種試験ではなく独自の「外務公務員採用I種試験」(いわゆる[[外交官]]試験)によりキャリアを採用していた。キャリアの多くが最終的に[[特命全権大使]]になるなど処遇の高さから人気が高く、合格者名簿の有効期間が1年(上級職の名簿は3年)しかなかったため、合格者の中に大学を中退し入省した者も多くいた。一方で、合格者の中に他府省と比較して外交官の子弟が多いことや、外交官が特権意識を抱きがちなことが問題視され、それらのことと外交官試験が独立していることとの関連が指摘され続けた。[[2001年]]より、外務キャリアは他省庁と同様に旧国家公務員採用I種試験合格者から採用されていた。
 
 
 
=== 財務省 ===
 
ここ最近は、総合職職員として37~41名程度採用されている。[[財務省 (日本)|財務省]]では、財務本省のほか、[[税関]]・[[財務局]]および[[国税庁]]がそれぞれ独自にキャリアを採用している。しかし、本省課長級以上のポストのほとんどは本省採用キャリアで占められ、キャリアといえども財務局・関税局・国税庁採用者は本省・本庁の一部の課長もしくは[[地方支分部局]]の長までしか昇進できないのが実状である。以前は財務省本省で採用されると入省5~6年目(30歳前後)で地方の税務署長に就任する慣行があったが、[[大蔵省接待汚職事件]]に端を発する大蔵省改革の中で、税務署長に就任するのは原則35歳以上とするように運用が改められた。
 
 
 
=== 文部科学省 ===
 
ここ最近は、総合職職員として31~44名程度採用されている。[[文部科学省]]は省庁再編後、事務系・技術系・施設系の3つに分けて総合職の採用がなされる。事務系と技術系は旧文部省・旧科学技術庁の[[事務官]](理系出身の者を含む)の流れを汲むもので、官庁訪問の窓口は、官房人事課の各担当になる。昇任昇格はほぼ対等で、入省3〜4年で[[係長]]級、7年で課長補佐級、17年で[[企画官]]、22年前後で[[課長]]級。係長級の段階で海外留学へ、課長補佐級になる段階で国立大学の[[部長]]や各[[地方公共団体]]の[[教育委員会]]の課長として出向する場合がある。他府省への出向もある。従来I種採用者は本省課長までは同期が対等に就くことができたが、省庁再編による課長クラスの減少で、課長補佐・企画官の段階で外部への出向を兼ねてフェードアウトするケースが出てきている。最近ではI種新採用者が減少しているため、I種採用者が[[係員]]のまま(昇任せずに)係長の席に就くケースや、従来I種採用者の係員・係長がいた席(主に各課の法規・企画ライン)に補充的に本省II種採用者を就かせるケースが出てきている。昨今の教育改革政策により[[大臣官房]]や初等中等教育局等でのプロジェクトチームの増設により(特に中堅の)I種採用者をこれらの非常設のチームに投入する一方で、他局原課への(特に中堅の)I種採用者の配置が不足しているという指摘もなされている。
 
 
 
課長級以上に、原課の課長から各局筆頭課長、総括官、官房[[審議官]]、部長、[[局長]](次長)、[[文部科学審議官]]、[[事務次官]]があるが、他府省と同様に選抜が始まり、徐々に内部に残る者が減少する。この段階では、従来は各地方公共団体の教育委員会への[[教育長]]ポストへの出向や、[[国立大学]]・青少年の家などの文部科学省の施設等機関に出向することが多かったが、地方分権化や施設等機関の大学法人化・独法化により、徐々に出向先が減り、その結果、内部での昇進が遅くなっている。
 
 
 
施設系のI種採用者は主に国家公務員採用I種試験の「理工I」(旧建築)区分合格者から採用され、大臣官房の文教施設企画部が官庁訪問の窓口である。採用後は同部を中心に国立大学等にも出向する。
 
 
 
=== 厚生労働省 ===
 
ここ最近は、総合職職員として50~57名程度採用されている。[[厚生労働省]]では、国家公務員採用I種試験合格者に加え、[[医師]]・[[歯科医師]]である[[厚生労働技官|医系技官]]もキャリアに準じた扱いとされる。ただし、医系技官は局長([[医政局]]長、[[健康局]]長、[[老健局]]長。このうち2つが医系技官に割り当てられる。)が最高位であり、[[事務次官]]に就任した例はない。旧厚生省採用と、旧労働省採用の幹部については人事上の統合は進んでいないが、中央省庁再編以後に採用された平成12年採用以降は一括採用しており、厚生部局と労働部局を交互に経験させるなど統合が進んでいる。厚生労働省は旧内務省系官庁にあたり、[[事務次官]]経験者は、[[内閣官房副長官]]や[[宮内庁長官]]に進む例もある。
 
 
 
=== 農林水産省 ===
 
ここ最近は、総合職職員として75~93名程度採用されている。
 
 
 
=== 経済産業省 ===
 
ここ最近は、総合職職員として42~45名程度採用されている。
 
 
 
=== 国土交通省 ===
 
ここ最近は、総合職職員として105~113名程度採用されている。[[国土交通省]]は[[技官]]が強い巨大官庁である。技官が[[国土交通事務次官|事務次官]]になれるのは、ここと[[文部科学省]]、[[環境省]]のみである。しかし、異動などでキャリア事務官は本省内にとどまり早い段階で本省課長に就任できるものの、技官(試験職種問わず)は全国の出先機関(地方整備局、各事務所、[[公益法人]]等)や[[地方公共団体]]の要職(所長、室長・部長級役職)として出向することが多いと言われている。そのため事務官よりも昇進は遅れがちになる。
 
 
 
技官で[[事務次官]]に就任できるのは、[[技監]]([[次官]]級で技官の最高職)経験者のみである。基本的に技監には[[道路局]]長または[[水管理・国土保全局]]長(旧河川局長)経験者が就任するのが慣例となっている。道路局企画課、水管理・国土保全局河川計画課は予算配分権限を担うとともに、建設技官中心で構成されるのが特徴であり、力の源泉となっていると言えよう。運輸技官については、省庁再編によって建設技官との統合を図ったものの、[[国土交通省]]になってから、2018年7月31日に旧運輸省技官出身者の港湾[[局長]]が技監に初めて就任した。なお、旧運輸省技官出身の局長経験者が就任する技術総括審議官を技監の運輸側カウンターパートとみなして事実上、局長よりも高位に取扱っている。旧建設技官の中でも試験区分により区別があり、「[[土木]]」が一番強く、事務次官に就任できるのも「土木」のみである。「土木」以外の職種である「砂防(砂防部長)」、「建築(住宅局長(事務官と交互)・官庁営繕部長)」、「機械・電気・電子(海事局長(事務官と交互)、自動車局次長、航空局安全部長)」などは原則的に( )内のポストまでしか昇進できない(ただし、例外はある)。技官が本省局長に就任できる局は道路局、水管理・国土保全局、住宅局、海事局、港湾局、北海道局のいずれかで、技術的な行政能力・判断を特に必要とする部局のみ(技官の就任できる指定職ポストは他に各地方整備局長、一部の地方運輸局長、大阪航空局長、北海道開発局長、[[国土技術政策総合研究所]]長をはじめ、[[国土地理院]]長、[[気象庁]]長官、技術総括[[審議官]]など)。[[外局]]である[[海上保安庁]]の長官・次長はこれまで例外なく旧運輸省出身のキャリアが就任するのが通例となっていたが、2013年に初めてプロパー(生え抜き)の[[海上保安大学校]]出身者が長官職に就いた。
 
 
 
=== 環境省 ===
 
ここ最近は、総合職職員として19~33名程度採用されている。[[環境省]]は事務系・理工系・自然系の3つに分けて総合職の採用がなされる。
 
 
 
=== 防衛省・自衛隊 ===
 
ここ最近は、総合職職員として27~33名程度採用されている。[[自衛隊員]]([[自衛官]]だけでなく、[[事務官]]・[[技官]]の[[防衛省]]職員も含む)の身分は、ほぼ全員が[[特別職]][[国家公務員]]である。このうち事務官が防衛省のキャリア組(防衛キャリア)とされる。[[文官]]<ref>官吏のうち武官以外のものをいう。</ref>である防衛キャリアは政策的・法律的見地から[[防衛大臣]]を補佐するのに対し、[[武官]]<ref>職業軍人に相当する。</ref>である自衛官は各[[幕僚監部]]等に所属し軍事的見地から大臣を補佐する。自衛官は制服を着用していることから『'''制服組'''』と呼ばれるのに対し、防衛キャリアは背広を着用するため『'''背広組'''』と呼ばれる。
 
 
 
防衛キャリアは20代後半で「[[防衛部員|部員]]」と呼ばれる他省の「課長補佐」に相当するポストに昇進し、事務官は[[事務次官]]等の最高幹部まで昇進が可能である。一方、技官の防衛省I種採用者は[[防衛装備庁]]長官等が最高ポストである。防衛省II種試験採用者が「部員」相当級へ昇進するのは早くとも30代後半以降になる。
 
 
 
他官庁では、政策系部局と実施系部局が混在しているのが当然であるが、防衛省における実施系の部局は各幕や機関等に属するため内局は全体として政策系を担当する。このため人事が狭い範囲にとどまっていることに賛否両論がある。[[2006年]]の旧防衛施設庁(現: 防衛省地方協力局)技術審議官他3名が天下りを背景にした[[官製談合]]で逮捕された[[防衛施設庁談合事件]]は記憶に新しく、防衛庁(現: 防衛省)発表資料を見る限り、これらセクショナリズムの弊害を是正しようという動きが起こっているようである。
 
 
 
キャリアの採用人数が[[局長]]級ポストより少なかった時代は、人数・能力ともに他省庁から格段に見劣りしていたため、大蔵・警察などから送り込まれた出向者により課長級以上のポストの大多数が占められており、植民地省庁と言われていた。しかし、近年のキャリア採用人数の大幅な拡大と学生間で防衛省の人気が高まり優秀な人材が集まるようになると、内局課長級以上のポストのほぼ全てをプロパーの人間が占めるに至った。
 
 
 
武官のうち[[士官]]に相当する[[幹部自衛官]]はキャリアとは呼ばれないが、制服最高ポストである[[統合幕僚長]](俸給表上は、[[事務次官]]や[[警察庁長官]]等と同様、[[指定職]]8号の俸給を受ける)を頂点とし、陸・海・空の各[[幕僚長]]まで上り詰めることが可能であり、[[指定職]]ポストは事務系・技術系を合わせた文官ポストの指定職よりも多く、指揮する部下の数や責任を持つ装備品の金額も桁違いに多い。
 
 
 
幹部自衛官は基本的に[[防衛大学校]]出身者及び、一般大学出身で幹部候補生採用試験により採用される『一般幹部』は[[一尉]]までは横並びに昇進するが、それから先は各人に差が出る。さらに『上級の幹部』を養成する[[幹部学校]]で教育を受けた者は、[[一佐]]まではほぼ確実に昇進する。すなわち[[幹部学校]]等の[[指揮幕僚課程]]を修めた自衛官が、キャリア相応の待遇を受けると考えてよい。一佐は各幕僚監部([[統合幕僚監部|統幕]]・[[陸上幕僚監部|陸幕]]・[[海上幕僚監部|海幕]]・[[航空幕僚監部|空幕]])の課長職や、[[連隊#陸上自衛隊|連隊長]]、[[艦長]]等に補せられ、数百名の人員を指揮し、場合によっては1千億円を超える装備に対する責任を負う。[[師団長]]や[[司令官]]、各幕の幕僚長・部長等は[[将官]]のポストである。
 
 
 
[[防衛医科大学校]]出身者は[[医師国家試験]]に合格すれば『医科幹部』として[[二尉]]で任官する。部隊の指揮よりも医師として[[自衛隊病院]]での勤務が中心であり、厚労省の医系技官よりも[[国立病院]]で勤務する公務員医師に近い存在である。
 
 
 
他省庁との違いとして防大や防医大、一般大以外にも、幹部への昇進が確約される採用区分([[航空学生]])、一般隊員から選抜する制度(部内選抜試験、[[陸曹航空操縦学生]])など高卒でも幹部に昇進できる制度が複数存在する。これらは[[陸上自衛隊高等工科学校]]から進むこともできるため、制度上は中卒で自衛隊に入隊<ref>陸上自衛隊高等工科学校の[[高等工科学校生徒]]は[[自衛隊員]]([[防衛省職員]])であり、課程を修了する同時に提携高等学校(通信制)の卒業資格を得る。</ref>し最高ポストまで昇進が可能である。しかし内部的に『一般幹部』、『医科幹部』、航空学生や陸曹航空操縦学生ら『飛行幹部』、部内選抜者などは入隊の時点で人事的に区別されており、それぞれ横並び昇進の限度やスピードが異なるなど格差が存在する。複数人が[[陸上自衛隊生徒]]<ref>旧制度であり現在は[[高等工科学校生徒]]に改定</ref>から防大や一般大を経由して陸将・海将<ref>第29代[[航空集団]]司令官の[[高橋亨 (海上自衛官)|高橋亨]]元海将は7期陸上自衛隊生徒出身である。[http://jbpress.ismedia.jp/search/author/%E9%AB%98%E6%A9%8B%20%E4%BA%A8 JBPressコラムニスト]</ref>に昇進しているが、2017年現在、各幕の幕僚長まで昇進できた例は無い。この他に大卒・院卒の社会人から公募する公募幹部課程など外部からの中途採用枠も存在し、同様に制度上は最高ポストまで昇進が可能である。
 
 
 
行政組織法上の「特別の機関」たる統合・陸上・海上幕僚監部は、それぞれ[[大本営]]、[[陸軍省]]・[[参謀本部]]と[[海軍省]]・[[軍令部]]両方の機能を持っており、それを内局が内閣の一員の省として調整するという組織構成である。つまり、軍政・軍令を内局・幕僚監部が完全に分化して所掌するのではなく、幕僚監部の軍令・軍政事務を、内局が包括的に管理し調整するという融合型の組織形態がとられている。企画立案・政策実施(運用)を二段階で行う以上、内局と幕僚監部は同程度のカウンタパート(例えば内局の防衛政策課と陸幕の防衛課のように)が必要であり、この点で幕僚監部の課長は、戦前における陸・海軍省の課長と同等の職階(俸給制度上も同様)であり、中央省庁の課長級と同じ職階であると意識してよい。頻繁に各幕に勤務するような旧軍で言う「軍官僚」的な自衛官も多数存在している。
 
 
 
=== 最高裁判所 ===
 
裁判所は日本国憲法の三権分立の原則に基づき、行政府より独立しているものの、裁判所職員の身分は特別職の[[国家公務員]]である。裁判所キャリアは裁判所職員採用総合職試験(法律経済・人間科学区分(旧裁判所職員I種・家庭裁判所調査官補I種))を行政府とは別途設けてこれを採用しているが、司法行政の中心をなす最高裁判所事務総局の事務総長、事務次長並びに各局局長は全て[[キャリア裁判官|裁判官]]によって占められており、法務省・検察庁と同様法曹有資格者がその中心をなしている。最高裁判所事務総局は「司法省の戦後の再編成版」とも呼ばれ、これら最高裁判所事務総局の要職(事務総長・局長・課長など)の経験者は、その多くが後に最高裁判所裁判官(国務大臣級・最高裁判所長官を含む)や高等裁判所長官(認証官)へと昇進している(詳しくは「[[最高裁判所事務総局]]」の項を参照)。三権の一府であることから事務方の担当する指定職ポストも少なからず存在しており、大庁(東京や大阪等の大都市各裁判所)の事務局長や首席家庭裁判所調査官等は概ね一般行政職の指定職俸給表に準じた俸給が支払われる。これらの中から一部の人間は[[最高裁判所大法廷首席書記官]]や[[最高裁判所事務総局家庭審議官]]など最高裁判所における重要ポストに昇ることもある。別途試験を受ける事により、[[簡易裁判所判事]]や[[執行官]]、[[副検事]]などへの道も開かれている。2013年8月1日付で[[最高裁判所大法廷首席書記官]]に初の女性が起用された<ref>{{Cite web |url=http://mainichi.jp/select/news/20130801k0000e040272000c.html|accessdate=不明 |title=最高裁大法廷:首席書記官に初の女性|publisher= [[毎日新聞]]|archiveurl=https://archive.is/20130820001548/mainichi.jp/select/news/20130801k0000e040272000c.html#selection-1245.0-1245.17 |archivedate=2013-08-20}} </ref>。
 
 
 
== キャリア制度の問題 ==
 
{{独自研究|date=2013年8月}}
 
キャリア制度については、優秀な人材の誘致、幹部職員の早期育成・高い士気の維持といった観点からその有効性を評価する意見がある一方で、戦前の高等文官試験を継承し、法令になんらの根拠を持たない非民主的システムとの批判がある。そもそも、[[国家公務員法]]は「職員が、民主的な方法で、選択され、かつ、指導される」(第1条第1項)、「すべて職員の任用は、能力の実証に基づいて、これを行う」(第33条第1項)と、職員の民主的な任用のために成績主義を根本原則として規定しており、採用時の1回限りの試験で幹部職員の選抜を行う人事管理は想定していない。過去の国家公務員採用上級甲種試験もI種試験も、[[人事院規則]]により創設された単なる大学卒業者を採用するための試験の一つに過ぎず、それに合格し採用されることは、幹部候補としての[[資格]]・[[免許]]を法制度上与えられるものではない<ref>平成19年6月30日に成立した改正[[国家公務員法]]では、「職員の採用後の任用、給与その他の人事管理は、職員の採用年次及び合格した採用試験の種類にとらわれてはならず、第58条第3項に規定する場合を除くほか、人事評価に基づいて適切に行われなければならない。」(第27条の2)という条文が新たに加えられた。</ref>。
 
 
 
キャリア職員を中心とした早期退職慣行がいわゆる「[[天下り]]」の温床となっていること、採用時の1回限りの試験で幹部要員の選抜を行うため、優秀なノンキャリア職員の意欲を削いだり、キャリア職員の誤った特権意識につながる場合があるなどの問題点が指摘されている。試験区分、出身大学、および性別による区別、差別も問題化している。特に[[事務官]](国家I種の場合、試験区分が「行政」「法律」「経済」)と[[技官]](国家I種の場合、かつての「機械」「建築」「土木」など)の確執は根強い。例としては旧[[建設省]](現: [[国土交通省]])で技官キャリアが、事務官との“パワーバランス”により、1949年より事務次官就任への道が開かれたことが挙げられる。
 
 
 
=== 技官・事務官の処遇(例: 国土交通省) ===
 
[[内務省 (日本)|内務省]]が存在していた1935年、土木局(現: [[国土交通省]])で[[技官]]・[[事務官]]の人事面における内紛が勃発した。当時、[[局長]]・課長等の主要ポストに就任できたのは法文系の事務官のみであった。社会資本整備で技官主導(現在とは違い戦前は、調査、設計、施工監理、管理等を全て技官が担当していた)が最も必要とされた土木局で技官はことのほか“蔑視”されており、昇格したとしても良くて地方出張所長(今で言う地方整備局長)等に甘んじるなど、長らく苦汁をなめていた。当時の土木局技監(当時の技術官僚の最高職で、土木局の次長職相当)だった[[青山士]](土木学会23代会長、[[パナマ運河]]建設従事者)でさえも、技監でありながら一度も本省勤務できなかった有様であったといわれる。技官の不満は、戦時中に待遇改善の是正などを求めたが受け入れてもらえず、[[宮本武之輔]]ら技官の不満は頂点に達した。結果、内紛が生じ、青山がその責任を取る形で技監を辞職した。
 
 
 
=== ノンキャリアの処遇 ===
 
'''ノンキャリア'''とは、[[公務員試験]]で国家公務員採用I種試験(旧外務公務員採用I種試験を含む)以外の試験に合格し、採用された公務員を指す俗称である(ただし、厚生労働省の医系技官・法務省の検事は除き、[[防衛大学校]]卒業後[[自衛隊]]([[防衛省]])に採用された自衛官も除くことがある)。広義は[[地方公務員]]も含むが、キャリアの概念が一様でないため、ノンキャリアの概念も一律に定義することは難しい。
 
 
 
キャリア制度の元では、キャリアでない者=ノンキャリアは[[事務次官]]など高位の職への昇格・昇進が望めず、現状ではどんなに出世した者でも本省の[[課長]]級(本省以外で小規模管区の局長等)までの昇進で終わることが多く、同じ「課長職」であっても、キャリアが着任するポストとは分けられていることが多い。そのため、ノンキャリア職員の[[モチベーション]]維持や、身分制的な待遇差から生じるキャリア職員との感情的な軋轢などが問題となっている。近年ではノンキャリア職員の高学歴化が進み、キャリア職員との待遇の格差が以前ほどの正当性を得られなくなってきたとの指摘もある。
 
 
 
昨今のキャリア制度批判を受け、最近はわずかではあるがノンキャリアにも[[指定職]]など幹部への扉が開きつつある(例: 2011年、外務省領事局長に初めてノンキャリア出身のキャリア職員が着任した([[沼田幹男]])。ただし、外務省のキャリアは外務公務員I種試験であったため、他省庁と若干相違がある事を留意しなければならない。2013年に、法務省矯正局長に検事以外初で、さらにノンキャリアで刑務官出身職員が着任した([[西田博]]))。[[人事院]]は、ノンキャリア職員の幹部登用を進めるため、[[1999年]]に「II種・III種等採用職員の幹部職員への登用の推進に関する指針」を作成し各省庁に対し計画的育成者の選抜、育成を促すとともに人事院公務員研修所でII種・III種等採用職員の登用研修を始めている。
 
 
 
平成24年度より、国家公務員採用I種試験、II種試験及びIII種試験は、国家公務員採用総合職試験(院卒者試験、大卒程度試験)及び一般職試験(大卒程度試験、高卒者試験)などに再編された。
 
 
 
== キャリアを扱った作品 ==
 
=== ノンフィクション ===
 
* [[松本清張]]『現代官僚論』文藝春秋社、1963年
 
* [[草柳大蔵]]『官僚王国論』文藝春秋社、1975年
 
* [[柿澤弘治]]『霞ヶ関3丁目の大蔵官僚は、メガネをかけたドブネズミといわれる挫折感に悩む凄いエリートたちから』学陽書房、1977年
 
* [[テリー伊藤]]『お笑い大蔵省極秘情報』飛鳥新社
 
* テリー伊藤『大蔵官僚の復讐―お笑い大蔵省極秘情報2』飛鳥新社
 
* 小林道雄『日本警察腐敗の構造』ちくま文庫
 
* 川北隆雄『官僚たちの縄張り』[[新潮社]](新潮選書)、1999年。ISBN 4106005581
 
* 神一行『警察官僚 完全版』[[角川書店]]([[角川文庫]])、2000年。ISBN 4043533012
 
* 西村健『霞が関残酷物語―さまよえる官僚たち』[[中央公論新社]]([[中公新書]]ラクレ)、2002年。ISBN 4121500563
 
* [[宮崎哲弥]]、小野展克『ドキュメント平成革新官僚―「公僕」たちの構造改革』中央公論新社(中公新書ラクレ)、2004年。ISBN 4121501195
 
* [[佐藤優 (外交官)|佐藤優]]『国家の罠―外務省のラスプーチンと呼ばれて』新潮社、2005年。ISBN 4104752010
 
 
 
=== 小説 ===
 
* [[城山三郎]]『[[官僚たちの夏]]』新潮社([[新潮文庫]])
 
* [[高杉良]]『局長罷免―小説通産省』講談社 ([[講談社文庫]])
 
* 高杉良『烈風―小説通商産業省』文藝春秋社 ([[文春文庫]])
 
* [[大沢在昌]]『[[新宿鮫シリーズ]]』[[光文社]]
 
* [[横山秀夫]]『[[震度0]]』[[朝日新聞社]]
 
 
 
=== 漫画 ===
 
* 國栖治雄、岡田ユキオ『[[林太郎の恋 通産省課長補佐]]1-2』[[講談社]]、1996年
 
* 毛利甚八、幡地英明『[[地の子]]1-3』[[集英社]]、2002年
 
* 鍋田吉郎、[[並木洋美]]『[[現在官僚系 もふ]]1-3』[[小学館]]、2005年
 
 
 
=== テレビドラマ・映画 ===
 
* 映画『[[黄金の犬]]』(主演:[[鶴田浩二]]、[[夏八木勲]]、[[島田陽子]]など)
 
* TVドラマ『官僚たちの夏』(NHK版主演:[[中村敦夫]]、[[地井武男]]など \ TBS版主演:[[佐藤浩市]]、[[堺雅人]]など)
 
* TVドラマ『[[踊る大捜査線]]』シリーズ(主演: [[織田裕二]]、[[柳葉敏郎]]など)
 
* TVドラマ『[[相棒]]』シリーズ(主演: [[水谷豊]]など)
 
*TVドラマ 『[[キャリア〜掟破りの警察署長〜]]』シリーズ(主演: [[玉木宏]]など)
 
 
 
== 脚注 ==
 
{{脚注ヘルプ}}
 
{{Reflist}}
 
 
 
== 参考文献 ==
 
* [[城山英明]]、[[鈴木寛]]、細野助博編著『中央省庁の政策形成過程―日本官僚制の解剖』[[中央大学]]出版部、1999年。ISBN 4805711183
 
* 城山英明、細野助博編著『続・中央省庁の政策形成過程』前川喜平「第6章 文部省の政策形成過程」中央大学出版部、2002年。ISBN 4805711264
 
* 川手摂『戦後日本の公務員制度史―「キャリア」システムの成立と展開』[[岩波書店]]、2005年。ISBN 4000236598
 
* [[加藤寛 (経済学者)|加藤寛]]『官僚主導国家の失敗』東洋経済新報社、1997年。ISBN 4492392440
 
* [[大前研一]]『平成官僚論』小学館、1994年。ISBN 4093794510
 
* 『官僚くんが行く』菊池信輝「[http://cruel.org/other/stupidburo.html 官僚神話の源流を追う]」[[宝島社]](別冊宝島)、1998年
 
* 谷沢永一『人間通』新潮社
 
 
 
== 関連項目 ==
 
* [[官僚]]
 
* [[エリート]] - [[エリート主義]]
 
* [[天下り]]
 
* [[中央集権]]
 
* [[法服貴族]] - [[法服貴族 (フランス)]]
 
* [[党官僚]] - [[共産貴族]] - [[ノーメンクラトゥーラ]]
 
* [[科挙]]
 
* [[進士]] - [[進士 (日本)]]
 
* [[高等文官試験]]
 
* [[東京大学大学院法学政治学研究科・法学部|東京大学法学部]]
 
* [[総力戦研究所]] - [[ベスト・アンド・ブライテスト]]
 
* [[ハーベイロードの前提]]
 
* [[キャリア形成]]
 
 
 
== 外部リンク ==
 
* [http://law.e-gov.go.jp/cgi-bin/idxselect.cgi?IDX_OPT=1&H_NAME=%8d%91%89%c6%8c%f6%96%b1%88%f5%96%40&H_NAME_YOMI=%82%a0&H_NO_GENGO=H&H_NO_YEAR=&H_NO_TYPE=2&H_NO_NO=&H_FILE_NAME=S22HO120&H_RYAKU=1&H_CTG=1&H_YOMI_GUN=1&H_CTG_GUN=1 国家公務員法(総務省法令データ提供システム)]
 
* [http://www.gyoukaku.go.jp/ 行政改革推進本部事務局ホームページ]
 
* [http://www.shugiin.go.jp/itdb_shitsumon.nsf/html/shitsumon/b156050.htm 衆議院議員長妻昭君提出キャリア官僚のエリート度に関する質問に対する答弁書]
 
* [http://www.jinji.go.jp/kisya/0907/kanbutoyo20.htm 人事院人材局 平成20年度におけるII種・III種等採用職員の幹部職員への登用の取組状況等について]
 
  
 
{{DEFAULTSORT:きやりあ}}
 
{{DEFAULTSORT:きやりあ}}
 
[[Category:日本の行政官職]]
 
[[Category:日本の行政官職]]

2019/4/27/ (土) 11:53時点における最新版

キャリア(キャリア官僚)[1]

国家公務員採用試験I種に合格し,中央本省庁に採用された一般行政職公務員の俗称。それ以外の公務員をノン・キャリア組 non-careerと呼んでいる。両者の間には昇進スピード,最終ポストにおいて大きな差がある。最終ポストはキャリア組の平均が本省庁の中堅課長職,ノン・キャリア組は II種合格者が本省庁の課長補佐級,III種は上級係員である。幹部候補としてのキャリア組は1~2年単位で省庁内の多くの部局を異動したり,他の省庁へ出向したりしてジェネラリストとしてのトレーニングを積んでいく。幹部の頻繁な異動にもかかわらず行政を安定させているのは,スペシャリストとして長年同一部局にいるノン・キャリア組である。



楽天市場検索:


  1. 和製英語。英語の「career」は一般に職業を意味する。