キノコ雲

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長崎原爆のキノコ雲

キノコ雲(キノコぐも)は、大気中での熱エネルギーの局所的かつ急激な解放にともなう上昇気流によって生じる積乱雲の一種。

成因

ファイル:Mushroom cloud.svg
キノコ雲の構造。局所的で強い上昇気流が、外気を巻き込み、キノコ状の構造を形成する。
ファイル:Blowing Smoke.jpg
熱気を一瞬で放出し、霧や煙をマーカーに用いると、爆発や燃焼によらずキノコ雲様の現象を作ることができる。

急激な上昇気流を起こす熱源としては核爆弾や大量の爆薬爆発、大量の燃料の急激な燃焼(爆燃)、火山の噴火などがある。キノコ雲の生成される要件は熱気の塊の急速な出現であり、爆発や燃焼は必ずしも必要ではない。

原子雲

原子爆弾水素爆弾核爆発によって生じるキノコ雲は原子雲(radioactive cloud)ともいう[1]

大気圏内核爆発では瞬間的に巨大な火球ができるが、これは核反応時の莫大な熱や圧力などの膨張エネルギーや、核反応により放出されたX線ガンマ線が空気中の原子に衝突してそれらの原子励起するためで、周囲の条件にもよるが、広島・長崎級の核爆発では直径200メートルから300メートル程度であった。広島・長崎では原子爆弾が空中で爆発し球は地表面に達しなかったが、そのような場合でも火球から発する強い衝撃波が地表面を粉砕した。

また、火球がマイクロ秒単位の極めて短い時間で膨張し切るときに、火球が発達した体積内とその周囲に存在したあらゆる気体は核反応エネルギーと火球膨張により外側周囲全面に押し出され衝撃波と共に爆風として放散される。この爆風の持続時間と風速は核反応によって生じた火球の膨張速度と体積に比例し、火球が大きく膨張時間が短いほどパワーは強くなる。

火球は非常に高温度(太陽表面温度以上のレベル)であるため、地上付近での爆発では土砂や建造物などが気化して火球に取り込まれる。火球は極めて高温だが、上昇と時間経過につれ徐々に冷却されていく。その際、気化した物質や周囲から吸い込んだ水蒸気が凝結し、ドーナッツ状の還流運動をする雲の塊となる[1]。火球が上昇した後の地表付近では、気圧差から大量の空気が流入し、破砕物や水蒸気を含んで上昇するため、火球につながる雲の柱が生じる(これは地上だけでなく空中爆発でも同様)。それが上空に達すると冷却される。その後水平方向にも粒子が拡散し始め、かつ重力により地表に引き戻されて、全体としてキノコ型を呈することになる。

初期の段階では高温によって生じる亜硝酸窒素酸化物や核分裂などの核反応の残骸である核分裂生成物などのために赤味や茶色味を帯びているが[2]、温度の低下とともに水滴が多くなり、通常の雲と同様、白色となる[2]。周囲の空気より温度が高い間は上昇を続け、冷却が進むと停止する。雲の形成速度は速く、1Mtの核爆発の場合、気象条件にもよるが、高度約16㎞(10Mi)まで2.5秒、約19㎞(12Mi)まで3.8秒ほどである[3]

100ktを超える大規模な核爆発では頂部が成層圏まで到達し、1Mtでは高度約20㎞、雲の半径は約9㎞にも達する[4]。1954年3月1日のビキニ環礁での水爆実験(キャッスル作戦ブラボー実験)での15メガトン(正確には14.8メガトン)の核爆発では、キノコ雲の高度は約40km(130,000feet)、直径約100kmまで成長した[5]

原子雲を形成する火球は強い上昇力を持っているため、積乱雲と同じようにを伴う。広島長崎で降った黒い雨がその例である。ただし、雲中には核兵器やその他の残骸や塵等の放射性物質が含まれている[3]

通常の積乱雲は持続的な上昇気流によって数時間以上維持されるが、原子雲では火球が上昇を終えると成長は止まり、周囲に拡散して、1時間程度で崩壊する。

火山の噴煙

噴火する火山の噴煙も、状況によってはキノコ状となり、キノコ雲と呼ばれる。通常の高度は数千メートル程度であるが、特に巨大な爆発では成層圏に達する規模のものが見られる。

脚注

  1. 1.0 1.1 DOD & ERDA(1977) P28
  2. 2.0 2.1 DOD & ERDA(1977) P29
  3. 3.0 3.1 DOD & ERDA(1977) P31
  4. DOD & ERDA(1977) P34
  5. Operation Castle,nuclearweaponarchive.org

参考文献

関連項目

de:Kernwaffenexplosion#Pilzwolke (Atompilz)