「カドモス」の版間の差分

提供: miniwiki
移動先:案内検索
(神話)
 
 
(同じ利用者による、間の1版が非表示)
1行目: 1行目:
[[File:Cadmus teeth.jpg|thumb|220px|[[マックスフィールド・パリッシュ]]の描くカドモス。]]
 
'''カドモス'''({{lang-grc-short|'''Κάδμος'''}}, {{ラテン翻字|el|Kadmos}}, {{lang-la|Cadmus}})は、[[ギリシア神話]]の登場人物である。
 
  
[[フェニキア]]の[[テュロス]]の王[[アゲーノール]]と[[テーレパッサ]](アルギオペーとも<ref name=Hy_6>ヒュギーヌス、6話。</ref><ref name=Hy_178>ヒュギーヌス、178話。</ref><ref>ヒュギーヌス、179話。</ref>)の子で、[[キリクス]]、[[ポイニクス]]、[[エウローペー]]と兄弟、また[[タソス]]と異父兄弟<ref name=Ap_3_1_1>アポロドーロス、3巻1・1。</ref>。[[アレース]]と[[アプロディーテー]]の娘[[ハルモニアー]]と結婚し<ref>ヘーシオドス、934行-937行。</ref><ref>ヘーシオドス、975行。</ref>、[[イーノー]]、[[セメレー]]、[[アガウエー]]、[[アウトノエー]]、[[ポリュイードス]]<ref>ヘーシオドス、976行-978行。</ref><ref name=Ap_3_4_2>アポロドーロス、3巻4・2。</ref>、[[イリュリオス]]をもうけた<ref name=Ap_3_5_4>アポロドーロス、3巻5・4。</ref>。
+
'''カドモス'''({{lang-grc-short|'''Κάδμος'''}}, {{ラテン翻字|el|Kadmos}}, {{lang-la|Cadmus}})
  
[[テーバイ]]の創建者<ref>ヒュギーヌス、275話。</ref>。[[青銅]]の発見者とも<ref>ヒュギーヌス、274話。</ref>、[[フェニキア文字]]の配列を変更し、[[ボイオーティア]]地方に伝えたという。
+
テーベ市の創建者として名高いギリシア神話の英雄。フェニキア王アゲノルの息子で,ゼウスにさらわれて行方不明になった姉妹のエウロペの捜索を父に命令されて国を離れ,デルフォイの神託に従い,テーベの建てられる場所に来た。そこでアレスの子の竜に従者たちを食い殺されると,この怪物を退治し,アテナに教えられたとおり,その死体の口から歯を取って耕した地面にまいて,[[スパルトイ]]と呼ばれる武装した戦士たちを生じさせて,彼らを互いに殺し合せ,生残った5人を家来にして,テーベの前身であるカドメイア市を建てた。そして8年間アレスの下僕となって,この神の怒りをやわらげ,そのあとでゼウスの計らいにより,アレスとアフロディテの娘[[ハルモニア]]と結婚し,アガウェ,イノ,アウトノエの3女と息子ポリュドロスをもうけたが,一家に不幸が絶えないため,ハルモニアと一緒にカドメイアを捨ててイリュリアに移住してそこの王となり,最後には夫妻そろって大蛇に姿を変えられ,楽園[[エリュシオン]]の野に住わせられたという。
 
+
== 神話 ==
 
=== エウローペーの捜索 ===
 
[[ゼウス]]がカドモスの姉妹であるエウローペーをさらったとき、アゲーノールは息子たちを捜索のために発たせ、エウローペーを見つけるまで帰ってくることを禁じた。このときカドモスは母テーレパッサとともに船出して[[ロドス島]]、[[テーラ島]]と経由して[[トラーキア]]に到着した<ref name=Ap_3_1_1 />。この地でテーレパッサが死んだため、カドモスは[[デルポイ]]まで赴いて今後の方針について神託を伺った。神託のお告げは「エウローペーを探すことはあきらめ、一頭の雌牛のあとをついてゆき、その牛が倒れたところに都を立てよ」というものだった<ref name=Ap_3_4_1>アポロドーロス、3巻4・1。</ref>。
 
 
 
[[Image:Kadmos dragon Louvre E707.jpg|thumb|250px|アレースの竜と戦うカドモス。[[ルーブル美術館]]所蔵。]]
 
=== 泉の大蛇退治 ===
 
デルポイから[[ポーキス]]に通じる街道で牛飼いたちに出会ったので、カドモスは白い満月の模様のある<ref name=Hy_178 />雌牛を彼らから買い取り、一度も休ませずに追い立て、そのあとをついていった。雌牛はやがて疲れ果てて倒れたので、カドモスはその地に[[アテーナー]]の像を建て、牛を生贄にするために配下の者を近くの泉に水汲みに行かせた。しかし、その泉は[[アレース]]のもので、泉の番をしていた大蛇にカドモスの部下たちは殺されてしまった。怒ったカドモスは岩で<ref name=Hy_178 />大蛇の頭を打って殺した。生贄を捧げると、アテーナーが姿を現してカドモスの行為を誉め、大蛇の牙を地中に播くよう告げた。カドモスがいわれたとおりにすると、地中から武装した男たちが飛び出してきた。カドモスが彼らの真ん中に岩を投げつけると、男たちはてんでに殺し合いを始めた。最後まで生き残った5人がカドモスに忠誠を誓い、彼らは[[スパルトイ]]、すなわち「播かれた者たち」と呼ばれた<ref name=Ap_3_4_1 />。アレースが大蛇を殺した罪の償いを求めたので、カドモスは8年の間、アレースの奴隷として過ごすことになった<ref name=Ap_3_4_2 />。
 
 
 
=== ハルモニアーとの結婚 ===
 
そののち、カドモスはアテーナーに改めて[[ボイオーティア]]の土地を与えられ、この地を自分の名前にちなんでカドメイアと名付けた。のちのテーバイである。この地でカドモスは、アレースと[[アプロディーテー]]の娘[[ハルモニアー]]と結婚式を挙げた。カドモスとハルモニアーの結婚式は、[[オリンポス]]の神々が列席した最初のものといわれる<ref>ロバート・グレーヴス、59話b。</ref>。
 
 
 
このとき、アプロディーテーは、ハルモニアーに黄金の首飾りを贈った。アテーナーは黄金の上衣と一組の笛を贈った。[[ヘルメース]]は竪琴を贈った。アプロディーテーの首飾りは[[ヘーパイストス]]が作ったもので、もともとゼウスがエウローペーに贈ったものだが、これを身につける者は、見る者が悩ましくなるほどの美しさが得られたという。アテーナーの上衣もまた、身につける者に神々しい気品を与えたという。これらの贈り物は、後の「[[テーバイ攻めの七将]]」の伝説につながる。カドモスとハルモニアーは子宝に恵まれ、アウトノエー、イーノー、セメレー、アガウエーの4女、末子ポリュドーロスが生まれた<ref name=Ap_3_4_2 />。
 
 
 
=== 数々の不幸 ===
 
しかしカドモスの娘たちやその孫たちを多くの不幸が襲い、カドモスは深く悲しんだ。娘のセメレーはゼウスの子[[ディオニューソス]]を身ごもったために[[ヘーラー]]の怒りを買った。セメレーはヘーラーの策略でゼウスの本当の姿を見たいと望んだが、それを見たセメレーは落雷の炎で絶命した。ディオニューソスを預けられたイーノーもまたヘーラーも怒りによって気が狂い、わが子を殺して海に身を投げた<ref>アポロドーロス、3巻4・3。</ref>。アウトノエーと[[アリスタイオス]]の子[[アクタイオーン]]はうっかり[[アルテミス]]の水浴姿を見てしまい、アルテミスの呪いで殺された<ref>アポロドーロス、3巻4・4。</ref>。さらにアガウエーと[[スパルトイ]]の1人[[エキーオーン]]の息子[[ペンテウス]]はテーバイの王位を継いだが、ディオニューソスによって狂気にされた母アガウエーや叔母たちに殺されてしまった<ref>アポロドーロス、3巻5・2。</ref>。
 
 
 
=== 晩年 ===
 
老年になったカドモスは、[[アレース]]の怒りがまだ完全に解けていないことを知り、[[テーバイ]]の王位を退いて、[[ハルモニアー]]とともに[[エンケレイス]]人の国へ向かった。エンケレイスの国は、[[イリュリア]]人によって攻められており、[[ディオニューソス]]の神託に従い、カドモスとハルモニアーが指導者に選ばれた<ref name=Ap_3_5_4/>。アガウエーはペンテウスの死後、イリュリア王[[リュコテルセース]]のもとに逃れて王妃になるが<ref>ヒュギーヌス、184話。</ref>、父カドモスが敵方エンケレイス人を率いていることを知ったアガウエーは今度はリュコテルセースを殺し、イリュリアの国を父に献上したという<ref>ヒュギーヌス、240話。</ref><ref>ヒュギーヌス、254話。</ref>。
 
 
 
カドモスとハルモニアーは最後には大蛇になり、ゼウスによって[[エーリュシオン]]に住むことを許されたという<ref name=Ap_3_5_4 />。別の説ではアレースが2人を蛇<ref name=Hy_6 />、あるいはライオンの姿に変えたのだともいう。2人の晩年の息子イリュリオスがイリュリアの王となった<ref name=Ap_3_5_4 />。
 
 
 
== 系図 ==
 
{{カドモスの系図}}
 
 
 
== 脚注 ==
 
{{Reflist|2}}
 
 
 
== 参考文献 ==
 
* [[アポロドーロス]]『ギリシア神話』[[高津春繁]]訳、[[岩波文庫]](1953年)
 
* [[ヒュギーヌス]]『ギリシャ神話集』[[松田治]]・青山照男訳、[[講談社学術文庫]](2005年)
 
* [[ヘシオドス]]『[[神統記]]』[[廣川洋一]]訳、岩波文庫(1984年)
 
* 高津春繁『ギリシア・ローマ神話辞典』、[[岩波書店]](1960年)
 
* [[ロバート・グレーヴス|R・グレーヴス]]『ギリシア神話(上巻)』[[高杉一郎]]訳、[[紀伊国屋書店]](1962年)
 
 
 
== 関連項目 ==
 
{{Commonscat|Cadmus}}
 
* [[エリピューレー]]
 
* [[ハルモニアー]]
 
* [[アレース]]
 
* [[ティルス]]
 
  
 
{{ギリシア神話}}
 
{{ギリシア神話}}
{{Normdaten}}
+
{{テンプレート:20180815sk}}
 
{{デフォルトソート:かともす}}
 
{{デフォルトソート:かともす}}
 
[[Category:ギリシア神話の人物]]
 
[[Category:ギリシア神話の人物]]

2018/10/26/ (金) 00:10時点における最新版

カドモス古希: Κάδμος, Kadmos, ラテン語: Cadmus

テーベ市の創建者として名高いギリシア神話の英雄。フェニキア王アゲノルの息子で,ゼウスにさらわれて行方不明になった姉妹のエウロペの捜索を父に命令されて国を離れ,デルフォイの神託に従い,テーベの建てられる場所に来た。そこでアレスの子の竜に従者たちを食い殺されると,この怪物を退治し,アテナに教えられたとおり,その死体の口から歯を取って耕した地面にまいて,スパルトイと呼ばれる武装した戦士たちを生じさせて,彼らを互いに殺し合せ,生残った5人を家来にして,テーベの前身であるカドメイア市を建てた。そして8年間アレスの下僕となって,この神の怒りをやわらげ,そのあとでゼウスの計らいにより,アレスとアフロディテの娘ハルモニアと結婚し,アガウェ,イノ,アウトノエの3女と息子ポリュドロスをもうけたが,一家に不幸が絶えないため,ハルモニアと一緒にカドメイアを捨ててイリュリアに移住してそこの王となり,最後には夫妻そろって大蛇に姿を変えられ,楽園エリュシオンの野に住わせられたという。





楽天市場検索: