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− | {{Otheruses||[[モーリス (自動車)|モーリス自動車会社]]の創始者|ウィリアム・モリス (初代ナフィールド子爵)}}
| + | [[ファイル:ウィリアム・モリス.jpg|サムネイル]] |
− | [[ファイル:Wmmorris3248.jpg|right|180px|ウィリアム・モリス]] | + | '''ウィリアム・モリス'''({{En|'''William Morris'''}}、 [[1834年]][[3月24日]] - [[1896年]][[10月3日]]) |
− | {{Portal|文学}}
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− | '''ウィリアム・モリス'''({{En|'''William Morris'''}}、 [[1834年]][[3月24日]] - [[1896年]][[10月3日]])は、[[19世紀]][[イギリス]]の[[詩人]]、[[デザイナー]]、[[マルクス主義]]者。多方面で精力的に活動し、それぞれの分野で大きな業績を挙げた。「モダンデザインの父」と呼ばれる。また、架空の中世的世界を舞台にした『世界のかなたの森』など多くのロマンスを創作し、モダン・[[ファンタジー]]の父と目される<ref>[[リン・カーター]] 『ファンタジーの歴史 - 空想世界』 中村融訳、東京創元社、2004年、28-29頁。</ref><ref>デイヴィッド・プリングル編 『図説 ファンタジー百科事典』 日本語版監修 井辻朱美、東洋書林、2002年、13頁、372頁。</ref>。[[ロード・ダンセイニ]]や[[J・R・R・トールキン]]にも影響を与えた<ref>デイヴィッド・プリングル編 『図説 ファンタジー百科事典』 日本語版監修 井辻朱美、東洋書林、2002年、13頁。</ref>。 | |
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− | == 経歴 ==
| + | イギリスのデザイナー,工芸家,詩人,社会運動家。ビクトリア朝の装飾芸術に革命をもたらし「近代化の父」とされる。オックスフォード大学のエクセター・カレッジではのちに画家となった[[エドワード・バーン=ジョーンズ]]と,卒業後は詩人で画家のダンテ・ゲーブリエル・[[ロセッティ]]と親交を結ぶ。建築装飾の仕事に打ち込み,1861年には装飾美術関係の制作会社を仲間とともに設立。以後は主として,植物モチーフを自然の姿に近い形で文様化した平面デザインを手がけ,壁紙,染色,織物,カーペット,ステンドグラスなどを制作。文学面では『地上楽園』 The Earthly Paradise (1868~70) により詩人として名声を博し,『裂かれる海の物語』 The story of Sundering Flood (1898) などのような空想物語を次々と発表。また,ケルムスコット印刷工房を設立 (1890) して活字のデザイン,造本印刷まで一貫して手がけ,中世のゴシック書体を復興させ,『チョーサー著作集』など 53種もの本を発刊した。一方,人間味のある製品こそ真の美術品であるとの主張に立って,「[[アーツ・アンド・クラフツ運動]]」というデザイン運動を興し,社会改革のための言論活動を積極的に行なった。この人間性追究のデザインは,[[アール・ヌーボー]] (世紀末芸術) に直接的な影響を及ぼした。 |
− | *1834年、[[シティ・オブ・ロンドン|ロンドン・シティ]]の証券仲買人の子として生まれた。父は投資で巨額の富を得たが、モリス13歳のときに死去。
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− | *聖職者になることを志し、[[オックスフォード大学]]に入学。[[ジョン・ラスキン]]の著書を愛読し、大きな影響を受けた。成年になり父の遺産を相続。友人[[エドワード・バーン=ジョーンズ]]らとフランスに旅行し、芸術家を志望するようになった。
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− | *[[1856年]]、建築家ストリートの事務所に入所、[[フィリップ・ウェッブ]]と知り合う。事務所を辞めた後、インテリア装飾や詩集の自費出版などを行う。
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− | *[[1859年]]、[[ジェーン・モリス|ジェーン・バーデン]]と結婚、翌年フィリップ・ウェッブ設計の新居・[[レッド・ハウス]](赤い家、1860年)に移る。
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− | ** ジェーンはモリスの年長の友人である画家[[ダンテ・ゲイブリエル・ロセッティ]]をはじめとする[[ラファエル前派]]のモデルで、2人はそこで知り合った。レッドハウスは、市街地から離れた郊外にあり、ジェーンが寂しさの余りノイローゼ気味になってしまったため数年後に転居した。
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− | *[[1861年]]、モリス・マーシャル・フォークナー商会を設立し、ステンドグラス、家具などを制作。
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− | *[[1865年]]、ブルームズベリに移転。叙事詩「地上の楽園」を1861-1870年に完成させ、詩人としても名声を得た。
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− | *[[1871年]]、{{仮リンク|ケルムスコット|en|Kelmscott}}の邸宅を別荘として借りた。
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− | *[[1875年]]、モリス・マーシャル・フォークナー商会を解散し、単独でモリス商会を設立。
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− | *[[1878年]]、[[ハマースミス]]に転居し、別荘のあったケルムスコットに因んで「ケルムスコット・ハウス」と名付けた。
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− | *[[1883年]]、民主連盟に参加し、マルクスの『資本論』を読んだ。
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− | *[[1885年]]、社会主義同盟を結成。
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− | *[[1891年]]、ケルムスコットプレスを設立、美しい装丁の書物を出版した(後に『チョーサー著作集』などを刊行)。
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− | *[[1892年]]、テニスンが死去し、モリスは[[桂冠詩人]]に推薦されたが辞退した。
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− | *[[1896年]]、病気のため死去。
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− | == モリスの活動 ==
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− | [[ヴィクトリア (イギリス女王)|ヴィクトリア朝]]のイギリスでは[[産業革命]]の成果により工場で大量生産された商品があふれるようになった。反面、かつての職人は[[プロレタリアート]]になり、労働の喜びや手仕事の美しさも失われてしまった。モリスは[[中世]]に憧れて、モリス商会([[:en:Morris_%26_Co.|Morris & Co.]])を設立し、インテリア製品や美しい書籍を作り出した(植物の模様の壁紙や[[ステンドグラス]]が有名)。生活と芸術を一致させようとするモリスのデザイン思想とその実践([[アーツ・アンド・クラフツ]]運動)は各国に大きな影響を与え、20世紀のモダンデザインの源流にもなったといわれる。
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− | プロレタリアートを解放し、生活を芸術化するために、根本的に社会を変えることが不可欠だと考えたモリスはマルクス主義を熱烈に信奉し、[[E. B. バックス]]や[[エリノア・マルクス]]([[カール・マルクス]]の娘)らと行動をともにした。エリノアらと[[ヘンリー・ハインドマン]]の社会民主連盟を脱退し、1885年、社会主義同盟を結成、その後、再びエリノアらと脱退し、エリノアらとハマスミス社会主義協会を結成した。
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− | == 主な著作 ==
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− | * 民衆の芸術(1879年の講演)-[[中橋一夫]]訳、岩波文庫
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− | * ジョン・ボールの夢(1888年) [[ワット・タイラーの乱]]を題材にした小説-[[生地竹郎]]訳、未來社
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− | * ユートピアだより(1890年)-川端康雄訳、岩波文庫、2013年。旧版は[[松村達雄 (英文学者)|松村達雄]]訳/[[五島茂]]・[[飯塚一郎 (経済学者)|飯塚一郎]]訳、[[中公クラシックス]]
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− | * サンダリング・フラッド 若き戦士のロマンス(遺作)-[[中桐雅夫]]訳、[[平凡社ライブラリー]]
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− | * 理想の書物(晩年の講演・エセー集) [[川端康雄]]訳、[[晶文社]]/[[ちくま学芸文庫]]
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− | * 『ウィリアム・モリス・コレクション』全9巻、晶文社、2000年-2003年。
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− | ** 「世界のかなたの森」(新版)、小野二郎訳
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− | ** 「ジョン・ボールの夢」 横山千晶訳
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− | ** 「輝く平原の物語」 小野悦子訳
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− | ** 「ユートピアだより もしくはやすらぎの一時代」 川端康雄訳
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− | ** 「世界のはての泉」(上下) 川端康雄・兼松誠一訳
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− | ** 「不思議なみずうみの島々」(上下) [[斎藤兆史]]訳
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− | ** 「アイスランドへの旅」 大塚光子訳
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− | * 『地上の楽園 春から夏へ』 、『秋から冬へ』、[[森松健介]]訳、音羽書房鶴見書店、2016-2017年。長編物語詩
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− | * 『社会主義 その成長と帰結』 E・B・バックス共著、川端康雄監訳、晶文社、2014年。大内秀明監修
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− | === 伝記・紹介 ===
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− | * [[小野二郎]] 『ウィリアム・モリス ~ラディカル・デザインの思想~』 [[中公文庫]](解説小野悦子)、新版2011年。初版は[[中公新書]]
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− | * 小野二郎 『ウィリアム・モリス通信』 川端康雄編、[[みすず書房]]〈大人の本棚〉、2012年-日本における紹介者
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− | * 壽岳文章 『モリス論集』 沖積社(ちゅうせき叢書16)、1993年
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− | * 壽岳文章ほか 『モリス記念論集』 沖積社、1996(復刻)、原版はモリス生誕百年記念協会、川瀬日進堂書店、1934年
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− | * 加田哲二 『ウヰリアム・モリス』 岩波書店、1924年
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− | * [[藤田治彦]] 『ウィリアム・モリス 近代デザインの原点』 [[鹿島出版会]]〈[[SD選書]]〉、1996年-伝記
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− | * 藤田治彦 『<small>もっと知りたい</small> ウィリアム・モリスとアーツ&クラフツ』 [[東京美術]]、2009年-入門書
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− | * 藤田治彦監修 『ウィリアム・モリス 原風景でたどるデザインの軌跡』 [[求龍堂]]、2017年-図版書
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− | * 『<small>図説</small> ウィリアム・モリス <small>ヴィクトリア朝を越えた巨人</small>』 [[河出書房新社]]〈ふくろうの本〉、2008年
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− | ** ダーリング・ブルース/ダーリング・常田益代編・解説。図版での入門書
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− | * [[大内秀明]] 『ウィリアム・モリスのマルクス主義』平凡社新書、2012年
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− | * [[蛭川久康]] 『<small>評伝</small> ウィリアム・モリス』 [[平凡社]]、2016年。大著
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− | * [[川端康雄]] 『ウィリアム・モリスの遺したもの』 岩波書店、2016年。研究書
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− | * [[海野弘]]編・解説 『ウィリアム・モリス クラシカルで美しいパターンとデザイン』パイインターナショナル、2013年-図版書
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− | * フィリップ・ヘンダースン 『ウィリアム・モリス伝』 川端康雄・志田均・永江敦訳、晶文社、1990年
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− | * ウィリアム・S・ピータースン 『ケルムスコット・プレス ~ウィリアムモリスの印刷工房~』 湊典子訳、平凡社、1994年
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− | * リンダ・パリー編 『ウィリアム・モリス』 多田稔監修、河出書房新社、1998年
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− | == モリスゆかりの地 ==
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− | *ウィリアム・モリス・ギャラリー(ロンドン郊外):幼少期を過ごした家。公開。
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− | *[[レッド・ハウス|赤い家]](ロンドン郊外):アーツ・アンド・クラフツの代表作。[[フィリップ・ウェッブ]]設計、インテリアはモリスや友人が手がけた。現在はナショナルトラストが所有。
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− | *[[ヴィクトリア&アルバート美術館]](ロンドン):モリスの部屋がある(1867年の作品)。
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− | *{{仮リンク|ケルムスコット・マナー|en|Kelmscott Manor}}(オックスフォード近く):モリスの別荘。
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− | *{{仮リンク|ケルムスコット・ハウス|en|Kelmscott House}}(ロンドン近郊):18世紀の建物、モリスが晩年まで過ごした。ウィリアム・モリス・ソサイアティ本部がある。
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− | *[[バイブリー]] - モリスが「イギリスで最も美しい村」と読んだ[[コッツウォルズ]]の村。
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− | ==註==
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− | {{Reflist}}
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− | == 関連項目 ==
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− | {{commons|William Morris}}
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− | *[[アーツ・アンド・クラフツ]]
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− | *[[柳宗悦]]
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− | *[[モダニズム建築]]
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− | *[[美術史]]
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− | == 外部リンク ==
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− | *{{Gutenberg author|107}}
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− | *{{Internet Archive author|name=William Morris}}
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− | *{{UK National Archives ID}}
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− | *{{Librivox author|id=961}}
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− | *{{NPG name}}
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− | {{ラファエル前派}}
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− | {{Normdaten}}
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| {{DEFAULTSORT:もりす ういりあむ}} | | {{DEFAULTSORT:もりす ういりあむ}} |
| [[Category:イギリスの詩人]] | | [[Category:イギリスの詩人]] |