インバネスコート

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インバネスコート(Inverness coat)は、男性用の外套の一種。単にインバネスと呼ばれることもある。

概要

丈が長いコートに、ケープを合わせたデザインを持つ。コート部分は袖のあるものと、無いものがある。ケープの長さは、袖無しの場合は手首程度までの丈の物が多く、袖のある場合は肘から手首程度の範囲の丈の物が多い。ケープは取り外せる物と取り外せない物があり、袖無しの物は取り外せない場合が多い。ケープの背中部分がコートの背中部分と一体化している物もある。

スコットランドインヴァネス地方で生まれたとされているため、こう呼ばれている。雨天など過酷な気象でもバグパイプ(スコットランドの楽器)を守り、演奏するのに作成されたといわれている。

鹿撃ち帽、パイプと合わせた姿は、シャーロック・ホームズのトレードマークとして知られている。ただし、この姿で居る描写は原作の中ではされておらず、挿絵や映像作品などから二次的に生じた姿である[注釈 1]

ギャラリー

日本におけるインバネスコート

日本では主に男性の和装用コートとして用いられ、「二重回し」「二重廻し」「二重マント」「とんび」「インバ」「エンバ」などと呼ばれる。一般に「インバネスコート」は袖があるもの、二重回しは袖が無くてケープの下はベスト状でケープが肩を覆っている。トンビはケープは背中まで達しておらず、背中の部分にケープが無いものを指すことが多い。着丈は二重回しもトンビも膝下まで達する。

これらの呼称は混乱しており、さまざまな定義が成されているが、歴史的にどれかが正しいと言える物ではない。参考までに比較的よくなされる定義を記す。

  • 「インバネスコート」 - 袖のあるケープ付きの外套。
  • 「二重回し」「二重マント」 - 袖の無いケープ付きの外套。
  • 「とんび」 - 袖が無く、ケープの背中部分がコートの背中部分と一体化している外套。

明治20年(1887年)ごろに伝わり、大正から昭和初期にかけて流行した。当時は「インバネスコート」「二重回し」「二重マント」「とんび」と呼ばれる外套は『お大尽』だけが着ることのできるものであった。インバネスコートのデザインは和服の大きな袖が邪魔にならないため、実用性が非常に高かったことが流行の一因と思われる。和装自体が衰退した現代ではあまり見られなくなったが、現在でも和装をする際には、防寒着としてレトロでエレガントな雰囲気を持ったインバネスコートは依然需要があり、和装用の外套を扱っている店では販売している店舗も多い。

映画監督の伊丹十三は「着物にインバネスってのは、ライスカレー福神漬け、と同じように和洋折衷大成功の一例である」と語っている。

長崎のグラヴァー邸で知られるトーマス・グラヴァーを筆頭に、開国直後の、スコットランドから日本への技術伝達、訪日・友好は深く、また日本人留学生をアバディーン(グラヴァーの故郷)、グラスゴーエディンバラなどに、当時混乱の日本政府に先立って受け入れている。この事により、帰郷した日本人やスコットランド人により「インバネスコート」・「蛍の光」・「ウイスキー(竹鶴政孝による。妻の竹鶴リタはスコットランド人)」などが日本に紹介・持ち込まれたと思われる。

注釈

  1. モーリス・ルブランの『リュパン対ホームズ』(Arsène Lupin contre Herlock Sholmes)第二部第2章では、ホームズ(ショルメス)がインヴァネス(macfarlane)からパイプを取り出すシーンが描かれている。

外部リンク


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