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[[File:Seal of the United States Marine Corps.svg|thumb|200px|right|アメリカ海兵隊[[紋章]]]]
 
 
 
'''アメリカ海兵隊'''(アメリカかいへいたい、{{Lang-en|'''United States Marine Corps'''}}、略称:'''USMC''')は、[[アメリカ合衆国]]の[[海兵隊]]。[[アメリカ沿岸警備隊|沿岸警備隊]]を含めた[[アメリカ軍]]を構成する5軍では2番目に小さく、最高位の軍人を[[アメリカ統合参謀本部|統合参謀本部]]の構成員として送り込む4軍の中では最も小さい組織である。[[2017年]]6月の時点で約18万人の現役将兵と4万人の予備役を擁している。''Marines, Devil Dogs'' とも呼ばれることがある。
 
 
 
== 概要 ==
 
[[ファイル:Teufel Hunden US Marines recruiting poster.jpg|thumb|200px|right|「トイフェル・フンテン(デビル・ドッグ)、ドイツでの合衆国海兵隊の仇名」。海兵隊の募集ポスター(1914年~1918年)。[[ピッケルハウベ]]を被った[[ダックスフント]]がドイツ軍、追いかける[[ブルドッグ]]が海兵隊である。]]
 
[[File:US Navy 091012-M-8752R-072 Marines and Sailors conduct an amphibious landing demonstration at Egyptian beaches near Alexandria during Exercise Bright Star 2009.jpg|thumb|200px|right|エジプトで上陸作戦の演習を行う第22海兵隊遠征隊]]
 
アメリカ海兵隊(本稿にてしばしばアメリカとつけず単に「海兵隊」とよぶ。アメリカ陸海空軍や他の機関についても同様)は、[[アメリカ合衆国]]の法律に基づき、海外での武力行使を前提とし、アメリカ合衆国の[[国益]]を維持・確保するための緊急展開部隊として行動する。また、必要に応じ水陸両用作戦([[上陸戦]])を始めとする軍事作戦を遂行することも目的とする。本土の防衛が任務に含まれない外征専門部隊であることから海兵隊は「殴り込み部隊」とも渾名される。
 
 
 
独自の[[海兵隊航空団|航空部隊]]を保有することで航空作戦も実施でき、[[航空機]]をヘリコプターや[[艦載機]]とすることで[[アメリカ海軍|海軍]]の[[航空母艦]]や[[強襲揚陸艦]]などを利用し、さらに活動範囲を広げることができる。地上戦用装備も充実しており、[[アメリカ陸軍|陸軍]]と同様の[[主力戦車]]も配備している。戦闘艦艇は保有しないが、独自の物資輸送船を保有する。
 
 
 
今でこそアメリカ海兵隊は「陸海空軍の全機能を備え、アメリカ軍が参加する主な戦いには最初に、上陸・空挺作戦などの任務で前線に投入され、その自己完結性と高い機動性から脚光を浴びている緊急展開部隊」と認識されているものの、後述するように[[第二次世界大戦]]の直前に海軍によるテコ入れがあるまでは、アメリカ軍部内で組織としてのアイデンティティや独自の存在価値を設立当初から問われ続けており、幾度となく消滅の危機に立たされた組織であった。
 
 
 
海兵隊の任務に関しては、在外公館を含む海外の拠点の警備も含むため、比較的戦闘に巻き込まれやすい要件を備えているが、海兵隊も陸海空軍と同じく[[戦争権限法]]による拘束を受け、海兵隊が戦闘を行ったことがそのまま「[[戦争]]」になるわけではない。つまり、[[アメリカ合衆国議会|議会]]の承認を受けずに[[大統領令 (アメリカ合衆国)|大統領命令]]のみに基づいて出撃した場合、事後48時間以内に[[アメリカ合衆国下院議長|下院議長]]と[[アメリカ合衆国上院仮議長|上院臨時議長]]宛の書面での報告が必要であり、議会が[[宣戦布告]]についての審議をする。宣戦布告が議決されない場合、開始した戦闘は議会への報告後60日以内のみが認められ、さらに30日以内の撤兵が義務付けられている<ref>[http://www.law.cornell.edu/uscode/html/uscode50/usc_sup_01_50_10_33.html 50 USC Chapter 33 - WAR POWERS RESOLUTION] コーネル大学法学大学院・法学情報院</ref>。このため、アメリカの法解釈上では、“海兵隊が警備している在外公館等の防衛のためにやむを得ず行う”戦闘行為は同法による拘束の下に行われる自衛行為といえる。
 
 
 
軍政面からみると海兵隊は[[アメリカ合衆国海軍省|海軍省]]下の部局であり、装備の調達などは海軍省が行う。軍令面では法律によって単独の軍としての独立性が保障されている<ref group="注">「Act for establishing and organizing a Marine Corps」という法律が[[1798年]][[7月11日]]に連邦議会で可決されている。</ref>ことから、指揮系統において海軍省内では海軍と並列になっている<ref group="注">海兵隊総司令官 (Commandant of the Marine Corps) は、陸軍参謀総長、海軍作戦部長、空軍参謀総長たちとの間で指揮命令系統の上下関係はない。米大統領の下で戦略の立案といった軍事顧問の役を務める統合参謀本部 (Joint Chiefs of Staff) の長である統合参謀本部議長も、長年、海兵隊出身者からは出なかったので四軍の中で海兵隊だけが格下である印象を持たれていたが、2005年にピーター・ペース海兵隊大将 (Gen. Peter Pace) が第16代統合参謀本部議長に就任したことで、四軍が並列の関係とみなされるようになった。</ref>。海兵隊は海軍の艦船で共に勤務するなど、連携した活動を行っている<ref name ="アメリカ海兵隊のドクトリン"/>。
 
 
 
海兵隊は、大統領搭乗時に[[マリーンワン]]のコールサインを使用する大統領専用ヘリコプターの運用をも担当している。
 
 
 
== モットー ==
 
公式の標語は、[[ラテン語]]の "''Semper fidelis''"。英語では ''Always faithful''. 直訳すれば「常に忠誠を」となり、通常口語体では ''Semper Fi!'' (センパーファーイ)と言う。この標語は、紋章のスクロールにも記されている。
 
 
 
"''The Few, The Proud.''" (誇り高き少数精鋭)や ''Once a Marine, Always a Marine.''(一度なったら、常に海兵)といった標語もあり、「一度海兵隊に入隊したなら、除隊しようとも一生『海兵隊員としての誇り』を失わず、アメリカ国民の模範たれ」とされている。
 
 
 
== 沿革 ==
 
[[File:USMC War Memorial 02.jpg|thumb|250px|right|[[1945年]][[2月23日]]に硫黄島摺鉢山で星条旗を立てる海兵隊の兵士達を撮った写真『[[硫黄島の星条旗]]』を元に作られた記念碑 当番兵が棹の後ろに控えている事から分かるように、旗は掲揚・降納できる またこの記念碑はそのまま海兵隊憲兵隊のバッジに意匠が取り入れられている]]
 
[[File:Plate I, Officers' Service Uniforms - U.S. Marine Corps Uniforms 1983 (1984), by Donna J. Neary.jpg|thumb|250px|right|士官クラスのサービスドレス]]
 
[[File:Plate II, Enlisted Service Uniforms - U.S. Marine Corps Uniforms 1983 (1984), by Donna J. Neary.jpg|thumb|250px|right|下士官・兵クラスのサービスドレス]]
 
[[File:U.S. Marines Combat Utility Uniforms 2003, Full-Color Plate (2003), by John M. Carrillo.png|thumb|250px|right|MARPAT(MARines corps PATtern)[[迷彩]]戦闘服]]
 
[[File:Marine Blue dress uniform.gif|thumb|100px|right|ブルードレスを着用した一等兵]]
 
 
 
=== 創設期 ===
 
アメリカ海兵隊は[[アメリカ独立戦争]]中の[[1775年]][[11月10日]]、[[大陸会議]]によって設立された<ref group="注">自らの組織を生き物だと捉えるアメリカ海兵隊では、毎年11月10日になるとバースデーケーキで誕生日を祝う。</ref>[[大陸海兵隊]] (''Continental Marines'') を起源としている。この組織が創設されたのは、本国の[[イギリス軍]]に[[イギリス海兵隊|海兵隊]]という組織があったから単に同様のものを設置しただけのことであり、海兵隊という組織ならではの特別な創設理由や責任任務は無かった。[[ジョージ・ワシントン]]は、自らが率いる[[大陸軍 (アメリカ)|大陸軍]]から兵士を引き抜かれるのに反対したため、大陸海兵隊は部隊設立の人員を新たに募集しなければならなかった。この募集は「タン・タバーン (''Tun Tavern'')」という居酒屋で、その所有者のキャプテン・ロバート・ムランによって始められた。この居酒屋は今も海兵隊の誕生の地とされている。しかし、大陸会議で承認された公式の軍事組織であったとはいえ、得体の知れない大陸海兵隊などという組織への入隊希望者はいなかったので、酒場で若者を泥酔させたところで入隊のサインをさせてそのまま入営させるようなことも行われたという。こうして創設時に集めることができたのは、10人の将校と約200人の兵卒に過ぎなかった。彼らの大半は取り立てて技能のない移民であり、戦闘についての知識を持っている者は皆無に近かった。それは将校も似たようなもので、初代海兵隊総司令官に任命された[[サミュエル・ニコラス]]という人物は、実は居酒屋経営者であった。
 
 
 
大陸海兵隊は、当時の艦船乗り組みの海兵隊員の一般的な任務であった荒々しい水兵達の海上での反乱防止など、艦内秩序の維持を目的とする警備任務等を普段は行い、戦闘時には強行接舷した敵艦に斬り込み隊として[[白兵戦]]を行ったり、接近した敵艦の乗組員を[[小銃]]で狙撃したりする任務をこなした他、[[コマンド部隊]]としてイギリス軍の物資集積所を海から上陸して襲ったりしていたが、これらは言わば[[大陸海軍]]や大陸軍の助っ人的な立ち回りをしていたに過ぎず、アメリカ独立戦争が大陸側勝利で目処がついた[[1783年]]に解散した。
 
 
 
その後、[[フランス革命]]の影響による'''「[[擬似戦争]]」'''と呼ばれる[[フランス第一共和政|フランス]]との緊張状態の発生により、[[1798年]][[7月11日]]に'''アメリカ海兵隊''' (''United States Marine Corps'') として再建された。
 
 
 
総司令官には[[ウィリアム・バローズ|ウィリアム・W・バローズ]]少佐が任命され、その当時の構成は次の通りであった。
 
:*[[大尉]]:4名
 
:*[[中尉|中]]・[[少尉]]:28名
 
:*[[軍曹]]:48名
 
:*[[伍長]]:48名
 
:*[[鼓手]]:32名(当時必須の兵士)
 
:*[[兵卒]]:720名
 
::※[[将校]]は[[アメリカ合衆国上院|上院]]による任命制で、兵の任期は3年であった。
 
再建時に海兵軍楽隊が組織され、[[1801年]][[1月1日]]に第2代[[アメリカ合衆国大統領]]の[[ジョン・アダムズ]]の求めに応じて大統領府における演奏会を行って以来、大統領の面前で演奏できる唯一の[[軍楽隊]]としての栄誉を与えられた。
 
 
 
アメリカ海兵隊構成員のことを別名“Leather Necks”(レザーネックス)と呼ぶが、これはこの再建時に士官・兵士を問わず共通して支給された唯一の装備である、刃物から首を守る防具も兼ねた黒い皮革製のカラー(襟)に由来する。現代の軍服はスーツ型の[[開襟]]ジャケットが主流であるにも関わらず、アメリカ海兵隊の礼装であるブルードレスが[[詰襟]]なのも、この伝統が引き継がれていることによるものである。
 
 
 
=== 海賊退治、米墨戦争、第一次世界大戦 ===
 
アメリカ海兵隊の海外派遣は、[[地中海]]の自由航行権をめぐるトラブルから[[オスマン帝国]]の独立採算州であるバーバリ諸国との間で発生した[[第一次バーバリ戦争]]([[1801年]]-[[1805年|05年]])が初めてで、この時は、[[1804年]]に[[アレクサンドリア]]に上陸した[[プレスリー・オバノン|プレスリー・N・オバノン]]中尉の率いる部隊が、[[1805年]][[4月27日]]、トリポリの要塞を占領<ref group="注">描写は[[海兵隊讃歌]]の歌詞「''To the shores of Tripoli''」に反映された。</ref>したことにより、勝利を確定的なものにし、拿捕された自国艦の乗組員の[[身代金]]6万ドルを支払ったものの、今後はアメリカ合衆国船籍の船の航行を妨害しないことを約束させることに成功した。
 
 
 
このとき与えられた[[マムルーク剣]]の改良型は、海兵隊将校の儀礼用のみならず、戦闘用も含め、一時期を除いた現在に至るまで制式装備となっている。
 
 
 
[[米墨戦争]]では[[アメリカ陸軍|陸軍]]に先んじて宮殿を占領する等の活躍を見せたほか<ref group="注">星条旗を立てた部屋の名前が海兵隊讃歌の歌詞に反映された。</ref>、[[第一次世界大戦]]では兵力も増強され、士官4千人、兵7万5千人となり、アメリカ合衆国欧州派遣軍の一部として[[フランス]]の[[ベロー・ウッドの戦い|ベロー・ウッド]]で逃げ腰の[[フランス軍]]に代わって[[ドイツ軍]]と激戦を繰り広げ、崩れかけた体勢を立て直してドイツ軍を撃退し、その他にも地上戦において戦果を挙げている。
 
 
 
しかし、これらの海兵隊の勇敢な戦果の数々は、結局は陸軍と区別がつけられるものではなく、同じ地上戦を所管する陸軍からは「戦果を横取りされた」として敵視されたあげくに予算の配分を巡って争う始末であり、海兵隊不要論は[[アメリカ軍]]部内に燻りつづけて、ときおり火を吹いていた。
 
 
 
[[1910年代]]から[[1930年代]]の戦間期の海兵隊は、独立した戦闘能力を維持するために小規模な師団的な部隊を大隊単位で恒常的に設置するようになり、人員も大体、士官1千人、兵2万人で推移して、海兵隊総司令官も少将から中将になった。
 
 
 
この頃になると水兵の気質も昔に比べて穏やかになり、白兵戦が生起することも無くなって、海兵隊を[[アメリカ海軍|海軍]]艦内に常駐させる必要性は薄れていた。艦内での海兵隊の役割は海軍水兵のものと区別がつかなくなっており、当然、指揮系統上も海軍と対立が起きていたので、海兵隊はアメリカ国内外の海軍基地の警備、海外緊急派遣という新たな任務が与えられた。
 
 
 
1903年に締結されたパナマ運河条約によって、アメリカ合衆国がパナマから「パナマ運河地帯」と呼ばれる[[パナマ運河]]の中心から両側5マイルの地域を租借し、海兵隊がその警備を割り当てられると、数個大隊を集めてパナマへ派遣するための連隊が例外的に編成された。この時代の海兵隊の組織は基本的に中隊であり、総兵員も19世紀で士官は100人以下、兵が1千〜2千人、20世紀初頭で士官200人台、兵1万人弱程度であった。それでも海兵隊不要論者からは「アメリカ軍が獲得した前進基地を防衛する任務は、海兵隊では能力不足だ」として攻撃されていた。
 
 
 
海兵隊はこの当時、[[中央アメリカ|中米]]・[[カリブ海諸国]]の[[ハイチ]]、[[ドミニカ共和国]]、[[パナマ]]、[[メキシコ]]、[[ニカラグア]]などに派遣されていたが([[バナナ戦争]])、[[1927年]]にニカラグアで始まった[[サンディーノ戦争]]で、[[アウグスト・セサル・サンディーノ]]将軍率いる[[ゲリラ]]部隊に苦戦すると[[1933年]]に撤退した。ニカラグアから撤退すると、[[フランクリン・ルーズベルト]]大統領は[[善隣外交]]を導入し、他の中米諸国からも撤退させた。
 
 
 
海兵隊は、設立当初から組織としてのアイデンティティや独自の存在価値を問われ続けて平時には常に規模が縮小され、議会などでも海兵隊の維持経費は「'''無駄な経費'''」と罵倒され、解体されて海軍や陸軍に吸収される危機に何度もさらされていた。このような状況にも関わらず、海兵隊が解散しなかったのは、他国の海兵隊のように陸海軍の傘下として設置したのではなく、1798年の再建時に海兵隊を陸海軍と並列の立場で別に設置することを法律で定めたことに端を発しており、議会の決議で法律を制定して設置した以上、アメリカ軍部内の独自判断では解散させることができず、解散についても議会の決議が必要であったためであり、議会に海兵隊擁護論者がいたためであった。
 
 
 
そのような逆境下において、アメリカ合衆国と同じ[[連合国 (第一次世界大戦)|連合国]]として第一次世界大戦に参戦した日本が[[赤道]]以北の[[南洋諸島|ドイツ領ニューギニア各諸島]]を占領し、大戦後は[[ヴェルサイユ条約]]によって正式に日本の[[委任統治|委任統治領]]とされたことに伴い、[[米西戦争]]で獲得した西[[太平洋]]における[[フィリピン]]、[[グアム]]の[[アメリカ合衆国の海外領土|海外領土]]や中国での各種権益を持つアメリカにとって、わずか半世紀と少し前に[[マシュー・ペリー]]率いる自国の[[東インド艦隊 (アメリカ海軍)|東インド艦隊]]が訪問して開国させた日本が急速に発展膨張し、中部太平洋に割り込む形で旧ドイツ領ニューギニア地域にまで進出してきたことは、脅威となり始めていた。そこで、海兵隊という組織としての存在価値を新たに明示するため、[[1921年]]{{仮リンク|アール・H・エリス|en|Earl Hancock Ellis}}海兵隊少佐が日本本土侵攻作戦についての論文「ミクロネシア前進基地作戦行動 (Advanced Base Operations in Micronesia)」を7ヶ月で書き上げた。この論文は、海軍が以前より研究し[[1919年]]に非公式に立案された[[オレンジ計画]]を肉付けすることとなり、[[1924年]]アメリカ陸海軍合同会議 (Joint Army and Navy Board) で採用された。
 
 
 
=== 第二次世界大戦 ===
 
[[第二次世界大戦]]が勃発・拡大してくると、海軍の海兵隊に対する扱いがそれまでのものから180度変わるようになった。
 
 
 
陸軍は戦略上、ヨーロッパ戦線に主眼を置き、太平洋方面の戦いに消極的であったので、太平洋方面は大規模な地上戦兵力を持たない海軍が島嶼の制圧も含めて単独で戦わざるを得ない状況に陥ったことで海軍と連携する地上戦兵力を確保する必要に迫られ、それには海軍と同じ海軍省の所管にある陸上戦闘集団である海兵隊と連携する以外に打開策がなくなったからである。[[アーネスト・キング]]合衆国艦隊司令長官は、[[ジョージ・マーシャル]]陸軍参謀総長による海兵隊の陸軍吸収案に強硬に反対すると共に、従来、海軍長官の指揮下にあった海兵隊を、海軍長官ではなく大統領に直属している合衆国艦隊の指揮下に置く手続きを取った。そして陸軍の反対を押し切って海兵隊の兵力を4個師団に増やし、さらに1個師団を追加しようとした。
 
 
 
第二次世界大戦時の海兵隊は、戦間期の[[オレンジ計画]]を元に[[1930年代]]から島嶼における、敵前強行上陸を主体とする作戦展開を研究したほか、[[海兵隊航空団]]を拡充し、海兵隊装備委員会では敵前強行上陸において効率的に作戦が進むよう [[LVT]] など海兵隊独自の戦闘車両を始めとする装備の研究が行われており、[[太平洋戦争]]開戦後は海軍と連携しての三次元作戦が行える段階にまで調整されていた。
 
 
 
このような経緯で第二次世界大戦時の海兵隊は太平洋を主な戦場として戦い、水陸両用軍団として参加した[[ガダルカナル島の戦い|ガダルカナル島]]、[[タラワの戦い|タラワ環礁]]、[[サイパンの戦い|サイパン島]]、[[ペリリューの戦い]]を始めとする[[マリアナ・パラオ諸島の戦い|マリアナ諸島]]、[[硫黄島の戦い|硫黄島]]、[[沖縄戦|沖縄]]などにおける[[日本軍]]との激戦の経験は、現在のアメリカ海兵隊の基礎となり、敵前強行上陸などでの活躍は海兵隊の存続に貢献した。
 
 
 
ちなみに[[1945年]][[2月19日]]の[[硫黄島 (東京都)|硫黄島]]への敵前強行上陸で生じた戦死者501名は、1日の戦闘によって生じた戦死者数としては、海兵隊創設以来、2011年までの間において最大である。硫黄島擂鉢山に星条旗が掲げられた日は、後日「アメリカ海兵隊記念日」に制定されている。
 
 
 
同年3月には連邦議会の決議によって海兵隊の最高階級は大将となり、[[アレクサンダー・ヴァンデグリフト]]海兵隊総司令官は同年4月4日付けで海兵隊初の大将となった。この頃には海兵隊は6個師団、士官3万7千人、兵卒48万人にまで膨らんでおり、来るべき[[ダウンフォール作戦|日本本土上陸作戦]]に備えていたが、作戦発動前に日本は降伏した。
 
 
 
第二次世界大戦中の[[アメリカ統合参謀本部|統合参謀長会議]]には海兵隊司令官は招かれなかったが、戦後は必要に応じて招かれるようになり、やがて正規メンバーとなった。
 
 
 
=== 第二次世界大戦以後 ===
 
第二次世界大戦後は[[朝鮮戦争]]において[[大韓民国|韓国]]救援の先遣部隊として派遣され、[[釜山広域市|釜山]]に追い詰められた[[国連軍]]の中の米軍の中核として困難な時期を支え、[[ダグラス・マッカーサー|マッカーサー]][[元帥 (アメリカ合衆国)|元帥]]の立案した[[仁川上陸作戦]](クロマイト作戦)に中核戦力として用いられ、上陸後の[[ソウル特別市|ソウル]]奪還にも一番乗りの一翼を担った。また、[[中華人民共和国]]の参戦によって総崩れとなった国連軍の[[殿 (軍事用語)|殿]](しんがり。最後尾防衛)を務めたのも海兵隊であった。その後もゲリラの掃討戦に従事し、アメリカ軍や[[イギリス軍]]([[イギリス連邦]]軍)、[[大韓民国軍]]や[[ベルギー軍]]などから構成された国連軍が行った攻勢には常に主力として用いられ、海兵隊は朝鮮戦争の休戦を[[38度線]]の防御陣地で迎えることになる。
 
 
 
その後も、[[ベトナム戦争]]、[[グレナダ侵攻]]、[[湾岸戦争]]、[[イラク戦争]]など、米国の行った大規模軍事行動には常に最前線に投入され、米海兵部隊は規模の大小はあるものの全世界に展開されており、有事の際には世界中どこにでも展開できる能力<ref group="注">部隊だけでなく、世界中に散らばった物資輸送船([[海上事前集積船隊|事前集積船]])を持つ。派遣地域の近くにいる物資輸送船が保管していた重装備と、素早く輸送できる軽装備の人員を合流させることで、展開速度と重装備を両立する</ref>を保有している。
 
 
 
創設以来、志願制による補充を原則としてきたが、第二次世界大戦中及びベトナム戦争中には[[徴兵]]による補充を行っている。
 
 
 
== 組織 ==
 
軍政・部隊管理面では海軍と同じく、[[アメリカ合衆国海軍省|海軍省]]([[アメリカ合衆国海軍長官|海軍長官]])の監督下にある。[[アメリカ海兵隊総司令官|海兵隊総司令官]]は海兵隊の中で最高位の[[軍人]]であって、官職としての海兵隊総司令官は海兵隊の最高指揮官である。[[アメリカ統合参謀本部|統合参謀本部]]の一員でもあり、海軍長官(文官)に直属している。これは[[アメリカ海軍作戦部長|海軍作戦部長]](海軍軍人最高位)と同格の職位である。海兵隊総司令官は、軍政・部隊管理面での権限を有し、海兵隊をいつでも戦闘可能な状態に保つ責任があるが、軍令・作戦指揮権限は有していない。軍令・作戦指揮については、各[[統合軍 (アメリカ軍)|統合軍]]司令官を通じて行なわれる。
 
 
 
海兵隊の上部機構として、海兵隊司令部 (HQMC) が[[バージニア州]]に設置されている。作戦部隊 (Marine Corps Forces, MARFOR) は海兵隊総軍 (United States Marine Corps Forces Command, MARFORCOM) および太平洋海兵隊 (MARFORPAC, Marine Forces Pacific)、海兵隊予備役 (MARFORRES, Marine Forces Reserve) で構成されており、海兵隊総軍は第2海兵遠征軍を、太平洋海兵隊は第1海兵遠征軍・第3海兵遠征軍を、海兵隊予備役は第4海兵師団を指揮する。これらは各統合軍へ兵力を派遣している。
 
 
 
海兵隊は航空部隊も含めた諸兵科統合部隊であり、米陸軍とは異なった編制を取っている。通常編制が戦闘を見越した[[海兵空地任務部隊]](MAGTF、マグタフ、Marine Air-Ground Task Force)編制となっている。MAGTF の最大規模のものは[[海兵遠征軍]] (MEF, Marine Expeditionary Force) であり、1個[[海兵師団]]および1個[[海兵航空団]]からなる。必要に応じ、より小規模な[[海兵遠征旅団]] (MEB, Marine Expeditionary Brigade) や[[海兵隊遠征隊]] (MEU, Marine Expeditionary Unit) が編成される。平時において MAGTF は、MEF で3隊、MEB で3隊、MEU で7隊を編制し、有事にはこれらが組み合わされ、組み替えられて作戦が実行される。
 
 
 
特殊部隊として海兵隊特殊作戦司令部 (MARSOC, Marine Forces Special Operations Command) に2個大隊基幹の戦力を有するほか、常設されている7つの海兵遠征隊 (MEU) すべてが特殊作戦能力を有している<ref group="注">従来は特定の海兵遠征隊 (MEU) のみが特殊作戦能力 (Special Operations Capable) を有していたのでその海兵遠征隊だけを特に "MEU (SOC)" と呼んだが、今ではすべての海兵遠征隊が特殊作戦能力を有しているので MEU (SOC) とは呼ばれなくなった。</ref><ref name ="アメリカ海兵隊のドクトリン"/>。
 
 
 
=== 編制 ===
 
{{col|
 
*[[アメリカ海兵隊総軍|海兵隊総軍]] (MarForCom)
 
**[[第2海兵遠征軍 (アメリカ軍)|第2海兵遠征軍]]
 
***[[第2海兵師団 (アメリカ軍)|第2海兵師団]]
 
***[[第2海兵航空団 (アメリカ軍)|第2海兵航空団]]
 
***[[第2海兵兵站群 (アメリカ軍)|第2海兵兵站群]]
 
***[[第2海兵遠征旅団]]
 
***[[第22海兵遠征部隊]]
 
***[[第24海兵遠征部隊]]
 
***[[第26海兵遠征部隊]]
 
|
 
*[[アメリカ太平洋海兵隊|太平洋海兵隊]] (MarForPac)
 
**[[第1海兵遠征軍 (アメリカ軍)|第1海兵遠征軍]]
 
***[[第1海兵師団 (アメリカ軍)|第1海兵師団]]
 
***[[第3海兵航空団 (アメリカ軍)|第3海兵航空団]]
 
***[[第1海兵兵站群 (アメリカ軍)|第1海兵兵站群]]
 
***[[第1海兵遠征旅団]]
 
***[[第11海兵隊遠征隊]]
 
***[[第13海兵隊遠征隊]]
 
***[[第15海兵隊遠征隊]]
 
**[[第3海兵遠征軍 (アメリカ軍)|第3海兵遠征軍]]
 
***[[第3海兵師団 (アメリカ軍)|第3海兵師団]]
 
***[[第1海兵航空団]]
 
***[[第3海兵兵站群 (アメリカ軍)|第3海兵兵站群]]
 
***[[第3海兵遠征旅団]]
 
***[[第31海兵隊遠征隊]]
 
|
 
*[[アメリカ海兵隊予備役集団|海兵隊予備役集団]] (MarForRes)
 
**[[第4海兵師団 (アメリカ軍)|第4海兵師団]]
 
**[[第4海兵航空団 (アメリカ軍)|第4海兵航空団]]
 
**[[第4海兵兵站群 (アメリカ軍)|第4海兵兵站群]]
 
}}
 
=== 解散した部隊 ===
 
*[[第5海兵師団 (アメリカ軍)|第5海兵師団]]
 
*[[第6海兵師団 (アメリカ軍)|第6海兵師団]]
 
 
 
== 階級 ==
 
=== 士官 ===
 
*[[士官]] (Officers) の階級に[[元帥]]は設定されていない。
 
{|style="border:1px solid #8888aa; background:#f7f8ff; padding:5px; font-size:95%; margin:0 12px 12px 0;"
 
|-style="background:#ccc;"
 
![[給与等級 (アメリカ軍)|給与等級]]||O-1||O-2||O-3||O-4||O-5||O-6||O-7||O-8||O-9||O-10
 
|-align=center
 
||階級章
 
||[[File:US-OF1B.svg|center|22px|alt=gold vertical bar]]
 
||[[File:US-OF1A.svg|center|22px|alt=silver vertical bar]]
 
||[[File:US-O3 insignia.svg|center|60px|alt=two silver vertical bars]]
 
||[[File:US-O4 insignia.svg|center|60px|gold oak leaf]]
 
||[[File:US-O5 insignia.svg|center|60px|silver oak leaf]]
 
||[[File:US-O6 insignia.svg|center|70px|silver eagle with shield clutching arrows]]
 
||[[File:US-O7 insignia.svg|center|30px|single silver star]]
 
||[[File:US-O8 insignia.svg|center|60px|two silver stars]]
 
||[[File:US-O9 insignia.svg|center|95px|three silver stars]]
 
||[[File:US-O10 insignia.svg|center|130px|four silver stars]]
 
|-align=center
 
||階級名称
 
|style="vertical-align:top"|[[少尉]]<br/>(Second Lieutenant)
 
|style="vertical-align:top"|[[中尉]]<br/>(First Lieutenant)
 
|style="vertical-align:top"|[[大尉]]<br/>(Captain)
 
|style="vertical-align:top"|[[少佐]]<br/>(Major)
 
|style="vertical-align:top"|[[中佐]]<br/>(Lieutenant Colonel)
 
|style="vertical-align:top"|[[大佐]]<br/>(Colonel)
 
|style="vertical-align:top"|[[准将]]<br/>(Brigadier General)
 
|style="vertical-align:top"|[[少将]]<br/>(Major General)
 
|style="vertical-align:top"|[[中将]]<br/>(Lieutenant General)
 
|style="vertical-align:top"|[[大将]]<br/>(General)
 
|-align=center
 
||略称
 
||2ndLt
 
||1stLt
 
||Capt
 
||Maj
 
||LtCol
 
||Col
 
||BGen
 
||MajGen
 
||LtGen
 
||Gen
 
|- align=center
 
||NATOコード
 
|colspan=2|OF-1
 
||OF-2
 
||OF-3
 
||OF-4
 
||OF-5
 
||OF-6
 
||OF-7
 
||OF-8
 
||OF-9
 
|}
 
 
 
=== 准士官 ===
 
[[准士官]](Warrant Officers) の階級の最上位は5等、最下位は1等である。1等は国防長官によって任命され、2等以上は大統領によって任命される。また、准尉以上は階級章が袖から肩に移る。
 
{|style="border:1px solid #8888aa; background:#f7f8ff; padding:5px; font-size:95%; margin:0 12px 12px 0;"
 
|-style="background:#ccc;"
 
!'''[[給与等級 (アメリカ軍)|給与等級]]'''||W-1||W-2||W-3||W-4||W-5
 
|-align=center
 
||階級章
 
||[[File:USMC WO1.svg|25px|gold bar with two red squares]]
 
||[[File:USMC CWO2.svg|25px|gold bar with three red squares]]
 
||[[File:USMC CWO3.svg|25px|silver bar with two red squares]]
 
||[[File:USMC CWO4.svg|25px|siver bar with three red squares]]
 
||[[File:USMC CWO5.svg|25px|silver bar with a red line down the long axis]]
 
|-align=center
 
||階級名称
 
||1等准尉<br/>(Warrant Officer 1)
 
||2等准尉<br/>(Chief Warrant Officer 2)
 
||3等准尉<br/>(Chief Warrant Officer 3)
 
||4等准尉<br/>(Chief Warrant Officer 4)
 
||5等准尉<br/>(Chief Warrant Officer 5)
 
|-align=center
 
||略称||WO1||CWO2||CWO3||CWO4||CWO5
 
|-align=center
 
||NATOコード
 
||WO-1
 
||WO-2
 
||WO-3
 
||WO-4
 
||WO-5
 
|}
 
 
 
=== 下士官・兵 ===
 
[[下士官]]・[[兵]](Enlisted)
 
*伍長より制服(ブルードレスB)のズボンに赤い線が入る
 
{|style="border:1px solid #8888aa; background:#f7f8ff; padding:5px; font-size:95%; margin:0 12px 12px 0;"
 
|-style="background:#ccc;"
 
![[給与等級 (アメリカ軍)|給与等級]]||E-1||E-2||E-3||E-4||E-5||E-6||E-7||colspan=2|E-8||colspan=3|E-9
 
|-align=center
 
||階級章
 
||''階級章なし''
 
||[[File:USMC-E2.svg|50px|single chevron]]
 
||[[File:USMC-E3.svg|50px|single chevron with crossed rifles]]
 
||[[File:USMC-E4.svg|50px|two chevrons with crossed rifles]]
 
||[[File:USMC-E5.svg|50px|three chevrons with crossed rifles]]
 
||[[File:USMC-E6.svg|50px|three chevrons up and one down with crossed rifles]]
 
||[[File:USMC-E7.svg|50px|three chevrons up and two down with crossed rifles]]
 
||[[File:USMC-E8-MSG.svg|50px|three chevrons up and three down with crossed rifles]]
 
||[[File:USMC-E8-1SG.svg|50px|three chevrons up and three down with diamond]]
 
||[[File:USMC-E9-MGyS.svg|50px|three chevrons up and four down with bursting bomb]]
 
||[[File:USMC-E9-SGM.svg|50px|three chevrons up and four down with star]]
 
||[[File:USMC-E9-SGMMC.svg|50px|three chevrons up and four down with Eagle, Globe, and Anchor insignia flanked by two stars]]
 
|-align=center
 
||階級名称
 
|style="vertical-align:top"|[[二等兵]]<br/>(Private)
 
|style="vertical-align:top"|[[一等兵]]<br/>(Private First Class)
 
|style="vertical-align:top"|[[上等兵]]<br/>(Lance Corporal)
 
|style="vertical-align:top"|[[伍長]]<br/>(Corporal)
 
|style="vertical-align:top"|三等軍曹<br/>(Sergeant)
 
|style="vertical-align:top"|二等軍曹<br/>(Staff Sergeant)
 
|style="vertical-align:top"|一等[[軍曹]]<br/>(Gunnery Sergeant)
 
|style="vertical-align:top"|[[曹長]](専門職)<br/>(Master Sergeant)
 
|style="vertical-align:top"|先任曹長(管理職)<br/>(First Sergeant)
 
|style="vertical-align:top"|上級曹長(専門職)<br/>(Master Gunnery Sergeant)
 
|style="vertical-align:top"|最上級曹長(管理職)<br/>(Sergeant Major)
 
|style="vertical-align:top"|海兵隊最[[上級曹長]]<br/>(Sergeant Major of the Marine Corps)
 
|-align=center
 
||略称
 
||Pvt
 
||PFC
 
||LCpl
 
||Cpl
 
||Sgt
 
||SSgt
 
||GySgt
 
||MSgt
 
||1stSgt
 
||MGySgt
 
||SgtMaj
 
||SgtMajMarCor
 
||
 
|-align=center
 
||NATOコード
 
||OR-1
 
||OR-2
 
||OR-3
 
||OR-4
 
||OR-5
 
||OR-6
 
||OR-7
 
|colspan=2|OR-8
 
|colspan=3|OR-9
 
|}
 
 
 
== 入除隊と昇進 ==
 
=== 入隊 ===
 
[[File:Rleeermeygfdl.jpg|180px|thumb|一等軍曹への名誉昇進で、ブルードレスを着た[[R・リー・アーメイ]]。左腕の2本の帯は[[精勤章]](service stripe)で、勤続10年を表している]]
 
[[File:Dale Dye.jpg|180px|thumb|大尉としてブルードレスを着る[[デイル・ダイ]]。胸には[[ブロンズスターメダル]]と[[パープルハート章]]を着けている]]
 
[[File:MCMAPstretch MCRDSD 20060818.jpg|180px|thumb|サンディエゴ訓練所での訓練(2006年)]]
 
伝統的に志願制を採り、少数精鋭を目指している海兵隊では、入隊志願者は採用時に選別されるため、入隊する人数はそれほど多くない<ref group="注">米海兵隊の人数は、2008年夏時点で195,000名ほどである。また、米海兵隊は将校の割合が他の軍種と比べ低く、米陸軍16%、米海軍18%、米空軍20%に比べて、約10%である。</ref>。
 
;兵卒
 
:志願者は海兵隊ブートキャンプという志願者訓練所(カリフォルニア州[[:en:Marine Corps Recruit Depot San Diego|サンディエゴ訓練所]]と、サウスカロライナ州[[:en:Marine Corps Recruit Depot Parris Island|パリス・アイランド訓練所]]の2か所が存在)に入所して訓練を受ける。
 
:訓練所内では男女は同様の訓練を受けるが、訓練そのものは別々で行われる。海兵隊の入隊教育期間は13週間におよび、4軍の中でも最も長く、苛烈な[[ブートキャンプ|練兵]]を行う。練兵では入営者の個性を徹底的に否定し、団体の一員として活動させ、命令に対する即座の服従を叩き込まれる。ついて来られない者は容赦なく民間社会に投げ戻され、練兵訓練を修了した者のみが「海兵」と名乗ることを許される。海兵隊除隊後に他の軍に入隊しても再度練兵訓練を受ける必要は無いが、他軍を除隊して海兵隊に入隊した者は、それまでの功績を問わず海兵隊の練兵訓練を受けなければならない。
 
:厳しい体力錬成や戦闘訓練などの試練に3ヶ月余り耐えた者は、訓練期間終了と同時に1等兵または2等兵として任用され、海兵隊隊員となる。志願採用時に各人の経歴に応じてブートキャンプ後に1等兵か2等兵になるかがあらかじめ契約されており、訓練所内での成績、席次は関係ない。ブートキャンプを修了した新人海兵は、歩兵は歩兵学校(School of Infantry)、他の兵科では戦闘訓練課程(Marine Combat Training)および兵科別学校において継続訓練を受けた後に、各部隊に配属される。
 
;士官
 
:海兵隊は[[アメリカ陸軍|陸軍]]の[[陸軍士官学校 (アメリカ合衆国)|ウエストポイント]]や[[アメリカ海軍|海軍]]の[[海軍兵学校 (アメリカ合衆国)|アナポリス]]、[[アメリカ空軍|空軍]]の[[空軍士官学校 (アメリカ合衆国)|コロラドスプリングス]]といった独自の士官学校を持たず、入隊する士官は大学卒業が最低条件で全米の大学からの卒業生や多様な職業の者が入隊を希望して来る。
 
:これらの士官希望者は、まず海兵隊の士官候補生学校 (Officer Candidate School、OCS) に入校し、10週間の訓練を受けて修了することが求められる。アナポリス卒の[[士官候補生]]が海兵隊将校に任官する道もある。各大学に設けられている[[予備役将校訓練課程]]を修了すれば海兵隊少尉に任官される。教育は前半2年間は海軍関係を、後半2年間は海兵隊について学ぶ。無事にOCSを修了すると海兵少尉 (2nd Lieutenant) に任官され、すぐに続けて[[バージニア州]]クアンティコの米海兵隊基礎訓練校 (TBS、The Basic School) に入校し、6ヶ月間の訓練と教育を受ける。期間中に TBS での成績が規定レベルに達しない者は海兵少尉の任官が取り消される。TBS の卒業によって真の米海兵隊士官となる<ref name="アメリカ海兵隊のドクトリン">北村淳・北村愛子著 『アメリカ海兵隊のドクトリン』 芙蓉書房出版 2009年2月25日第1版発行 ISBN 9784829504444</ref>。
 
 
 
=== 昇進 ===
 
;兵卒
 
:海兵隊に入隊した兵は、[[二等兵]]に任用される。入隊契約で初期教育課程終了後[[一等兵]]への昇進が確約されている者は課程修了を以って直ちに昇進するが、その他は入隊から6ヶ月後。一等兵昇進から9ヵ月後に[[上等兵]]に昇進する。
 
;士官
 
:士官候補生として入隊して小隊指揮官課程 (Platoon Leader Course) を終えると少尉に任官し、1年に及ぶ基本術科学校 (The basic School) の課程を終えると専門別に1週間から16ヶ月の教育を受ける。
 
:少尉任官後の5-6年の勤務を経て、成績がよければ大尉に昇進し、10年から12年経つと有望な士官は少佐となるための専門教育を受けて昇進するが、佐官は非常に狭き門であり少佐にまでなれる人間は少ない。
 
:さらに将官を目指すものは[[アメリカ海兵隊指揮幕僚大学]] (Marine Corps Command and Staff College) へ入学して教育を受ける。
 
:ごく少数ではあるが、兵卒から選抜された優秀な者はOCSへの入校資格が与えられる。OCSで必要な研修を終了すると准士官に任命され、さらに少尉以上への昇進も可能である。著名な選抜者には[[ブロンズスターメダル]]と[[パープルハート章]]を授与された[[デイル・ダイ]]などがいる。
 
 
 
=== 除隊 ===
 
;[[名誉除隊]]
 
:軍人として在役中の成績が概ね良好で、軍法会議または民事訴訟などの対象にならずに一定の条件を満たして除隊した者は、名誉除隊となり、名誉除隊証書が交付される。名誉除隊証書の交付を受けると、福利厚生・生活保障の面においてさまざまな恩典を受けることができる。海兵隊において名誉除隊となる勤務成績以外の主な条件は、次のようなもの。
 
:*20年以上の勤続('''大尉で'''定年を迎える・佐官に昇進している。)
 
:*傷痍除隊(戦傷によって職務への復帰が不可能と判断された場合がこれに当たる。勤続年数を問わない。)
 
:*名誉ある職業<ref group="注">[[警察官]]など。一部の地方警察では元海兵隊員に、“同志の証し”として特別なバッジを作成し斡旋している。[[シカゴ市警察]]での[http://www.access-overseas.com/images/badge_cpd_marineM.jpg 例]。</ref>への転職(勤続年数を問わない。)
 
;普通除隊
 
:軍人として在役中の成績が概ね良好で、軍法会議または民事訴訟などの対象にならなかったが、名誉除隊の条件を満たせずに除隊した者は普通除隊になる。例としては以下の通り。
 
:*二度昇進を見送られた者
 
:*尉官(中尉・少尉)のまま勤続20年目を迎え、佐官に昇進出来なかった者
 
:*勤続19年目以前に昇進見送りとなった者
 
;[[不名誉除隊|不品行除隊]]
 
:[[軍法会議]]による有罪判決の確定、[[犯罪]]で逮捕されるなど、軍人として不名誉な行為に対する[[懲戒処分]]の一種で、強制的に除隊させられる。
 
:不名誉除隊となった場合、軍人年金や退職金の不支給をはじめとして事実上退役軍人としてのあらゆる権利を剥奪される他、不名誉除隊後は、次のような不利益を被ることがある。
 
:*医療保険の停止
 
:*[[アメリカ合衆国の市民権|市民権]]の停止
 
:*再就職の際においては、[[履歴書]]に不名誉除隊の旨の記載を義務付けられる。
 
:*銃器所持の制限([[アメリカ合衆国の銃規制|銃規制]]で非海兵隊員の民間人と同等になる)
 
 
 
''Once a Marine, Always a Marine.''なので、除隊後も「元海兵隊員」ではなく「海兵隊員」と呼ばれ続けるが、'''もし不名誉除隊となった場合は「海兵隊員」はおろか「元海兵隊員」と名乗ることすら禁止される'''{{要出典|date=2017年8月}}
 
 
 
== 基地 ==
 
基地については、{{仮リンク|アメリカ海兵隊基地一覧|en|List of United States Marine Corps installations}}を参照。
 
 
 
== 広報誌 ==
 
*[[Okinawa Marine]] - 沖縄県内の米軍基地で配布、Web版もある。
 
 
 
== 主な装備 ==
 
{{col|
 
;装甲戦闘車輌
 
*[[M1エイブラムス|M1A1戦車]]
 
*[[LAV-25|LAV-25装輪装甲車]]
 
*[[AAV7|AAV7A1水陸両用強襲車]]
 
;多用途装輪車
 
*[[ハンヴィー|HMMWV高機動多用途車]]
 
*[[MTVR|MTVR (中型戦術車両後継型)]] - 7トントラック
 
*[[LVS (軍用車両)|LVS/LVSR]] - 10トントラック
 
*[[MRAP|MRAP耐地雷・伏撃防護車]]
 
**[[クーガー装甲車|クーガー]]
 
**[[M-ATV]]
 
*[[グロウラーITV]]
 
;火砲
 
*[[ダネルMGL |M32 グレネードランチャー]]
 
*[[SMAW ロケットランチャー]]
 
*[[M224 60mm 迫撃砲]]
 
*[[M252 81mm 迫撃砲]]
 
*[[120mm迫撃砲 RT |M327 120mm 迫撃砲]]
 
*[[M198 155mm榴弾砲]]
 
*[[M777 155mm榴弾砲]]
 
*[[HIMARS|M142 高機動ロケットシステム]]
 
;対空車輌
 
*[[アベンジャーシステム|M1097 アベンジャーシステム]]
 
*[[LAV-25|LAV-AD対空戦闘車]]
 
;刀剣類
 
*[[Ka-Bar]]
 
|
 
;小火器
 
*[[M16自動小銃]]
 
*[[M4カービン]]
 
*[[M27 IAR]]
 
*[[ベレッタM92|ベレッタM9]]
 
*[[M1911]]
 
*[[M240機関銃]]
 
*[[M249軽機関銃]]
 
;航空機
 
*[[ハリアー II (航空機)|AV-8B ハリアー II]]
 
*[[F/A-18 (航空機)|F/A-18A-D ホーネット]]
 
*[[EA-6 (航空機)|EA-6B プラウラー]]
 
*[[C-130J (航空機)|KC-130J スーパーハーキュリーズ]]
 
*[[AH-1W スーパーコブラ]]
 
*[[AH-1Z ヴァイパー]]
 
*[[UH-1N ツインヒューイ]]
 
*[[UH-1Y ヴェノム]]
 
*[[V-107|CH-46 シーナイト]]
 
*[[CH-53 (航空機)|CH-53D シースタリオン]]
 
*[[CH-53E (航空機)|CH-53E スーパースタリオン]]
 
*[[V-22 (航空機)|MV-22B オスプレイ]]
 
*[[アメリカ合衆国大統領|大統領]]専用要人輸送ヘリコプター([[マリーンワン]]用ヘリコプター)
 
:*[[シコルスキー S-61|VH-3D シーキング]]
 
:*[[VH-60N プレジデントホーク]]
 
;開発・運用試験中航空機
 
*[[F-35 (戦闘機)|F-35B/C ライトニングII]]
 
*[[CH-53K (航空機)|CH-53K スーパースタリオン]]
 
}}
 
 
 
== アメリカ海兵隊出身の有名人 ==
 
=== 政治家・官僚 ===
 
{{col|
 
*[[フセイン・モハメド・ファラー・アイディード]] - [[ソマリア]]の政治家
 
*[[ジェイムズ・ウェッブ]] - [[NASA長官]]
 
*[[ジョン・ウォーナー]] - [[アメリカ合衆国海軍長官|海軍長官]]、[[アメリカ合衆国上院|上院]]議員
 
*[[ジョン・ハーシェル・グレン|ジョン・グレン]] - 宇宙飛行士、上院議員
 
*[[ジョージ・シュルツ]] - [[アメリカ合衆国国務長官|国務長官]]、[[アメリカ合衆国労働長官|労働長官]]、[[アメリカ合衆国財務長官|財務長官]]
 
|
 
*[[ジェイムズ・ベイカー (国務長官)|ジェイムズ・ベイカー]] - [[アメリカ合衆国財務長官|財務長官]]、国務長官
 
*[[ジェームズ・マティス]] - 海兵隊大将(退役)、'''国防長官(現職)'''
 
*[[マイク・マンスフィールド]] - 駐日大使
 
*[[ロバート・ミュラー]] - [[連邦捜査局|FBI]]長官
 
}}
 
 
 
=== 俳優 ===
 
{{col|
 
*[[R・リー・アーメイ]]<ref group="注">2002年5月に、当時の海兵隊司令官ジェームズ.L.ジョーンズ大将によって一等軍曹(E-7)に名誉昇進した。アメリカ海兵隊の歴史上退役者が昇進したのはR・リー・アーメイが初めてである。</ref>
 
*[[ブライアン・キース]]
 
*[[スコット・グレン]]
 
*[[ジョージ・C・スコット]]
 
*[[ジーン・ハックマン]]
 
|
 
*[[リー・マービン]]
 
*[[スティーブ・マックイーン]]
 
* [[デイル・ダイ]]<ref group="注">兵卒として入隊したが選抜されて士官へ昇進した(最終階級は大尉)。</ref>
 
}}
 
 
 
=== 音楽 ===
 
{{col|
 
*[[ジョン・フィリップ・スーザ]] - 作曲家、指揮者
 
*[[ドン・エバリー]] - ロック歌手
 
*[[フィル・エバリー]] - ロック歌手
 
}}
 
 
 
=== スポーツ選手 ===
 
{{col|
 
*[[テッド・ウィリアムズ]] - プロ野球選手
 
*[[ロベルト・クレメンテ]] - プロ野球選手
 
*[[レオン・スピンクス]] - ボクシング世界チャンピオン、[[モントリオールオリンピック]]金メダリスト
 
*[[リー・トレビノ]] - プロゴルファー
 
*[[ケン・ノートン]] - ボクシング世界チャンピオン
 
|
 
*[[ボブ・マサイアス]] - [[ロンドンオリンピック (1948年)|ロンドン]]・[[ヘルシンキオリンピック]]金メダリスト、後に政治家
 
*[[ビリー・ミルズ]] - 1964年[[前東京オリンピック|東京オリンピック]]金メダリスト
 
*[[サージェント・スローター]](ロバート・リーマス) - [[プロレスラー]]
 
*[[ランディ・オートン]] - [[プロレスラー]]。[[不名誉除隊]]処分
 
*[[バーニー・ロス]] - ボクシング世界チャンピオン
 
*[[ブライアン・スタン]] - 総合格闘家。[[シルバースター]]受賞者
 
*[[ジェイク・エレンバーガー]] - 総合格闘家
 
}}
 
 
 
=== 実業家 ===
 
{{col|
 
*[[アーサー・オークス・ザルツバーガー・ジュニア]] - [[ニューヨーク・タイムズ]]代表者
 
*[[フレデリック・W・スミス]] - [[FedEx]]創立者
 
*[[トム・モナガン]] - [[ドミノピザ]]創立者
 
*[[ポール・タトル・シニア]] - バイクメーカー「[[オレンジ・カウンティ・チョッパーズ]]」CEO
 
}}
 
 
 
=== その他 ===
 
{{col|
 
*[[ロン・コーヴィック]] - 作家
 
:映画「7月4日に生まれて」の原作者
 
*[[アンソニー・スウォフォード]] - 作家
 
:映画「ジャーヘッド」の原作者
 
*[[グスタフ・ハスフォード]] - 作家
 
:映画「フルメタルジャケット」の原作者
 
*[[ユージン・ストーナー]] - 銃器設計者
 
:彼が設計したAR-15が改良の後に[[M16自動小銃|M16]]としてアメリカ軍に採用される
 
*[[アンソニー・ジニ]] - 外交政策評論家、元[[アメリカ中央軍]]司令官
 
|
 
*[[エドワード・G・サイデンステッカー]] - [[文学者]]、[[評論家]]
 
:日本文学を世界に紹介。海兵隊員としては[[硫黄島の戦い]]に従軍。
 
*[[チュー・イェン・リー]]
 
:アジア系初の海兵隊士官
 
*[[リー・ハーヴェイ・オズワルド]]
 
:[[ジョン・F・ケネディ]]大統領暗殺犯
 
}}
 
 
 
===アニメ・ゲーム・漫画・小説の登場人物===
 
*[[バッグス・バニー]] - アニメキャラクター
 
*[[ビリー・コーエン]] - [[バイオハザードシリーズ]]のキャラクター
 
*ジェド・豪士 - [[工藤かずや]]原作・[[浦沢直樹]]画「[[パイナップルARMY]]」の主人公(本編では既に除隊―[[ベトナム戦争]]時代に所属)
 
*ケネス・ヤマオカ - [[かわぐちかいじ]]作「[[イーグル (漫画)|イーグル]]」主人公である城鷹志の父で米大統領選候補(本編では既に除隊―[[ベトナム戦争]]時代に所属)
 
*メリッサ・マオ - [[賀東招二]]作の小説を原作とする[[メディアミックス]]作品、「[[フルメタル・パニック!]]」シリーズの登場人物(本編では既に除隊―[[不名誉除隊]])
 
*南雲弓-著者 [[野上武志]] 原案[[アナステーシア・モレノ]] 「[[まりんこゆみ]]」の主人公(夢はアメリゴ大統領、現在は沖縄にあるキャンプ・コートニーの隊舎で生活)
 
*ジャック・ライアン - [[トム・クランシー]]作「ジャック・ライアンシリーズ」の主人公(本編では既に除隊―ヘリコプターの墜落事故による負傷のため)
 
 
 
== 脚注 ==
 
{{脚注ヘルプ}}
 
=== 注釈 ===
 
{{Reflist|group="注"}}
 
=== 出典 ===
 
{{Reflist}}
 
 
 
== 関連項目 ==
 
{{Commons|Category:United States Marine Corps}}
 
*[[海兵隊]]
 
*[[マリーンワン]]
 
*[[ジャーヘッド]] - アメリカ海兵隊に対する蔑称。
 
 
 
== 外部リンク ==
 
*[http://www.usmc.mil/ Official Website for the United States Marine Corps](公式サイト)
 
*[http://www.marines.com/ United States Marine Corps]
 
*[http://fas.org/main/content.jsp?formAction=297&contentId=257#CMC Structure of USMC]
 
{{アメリカ合衆国}}
 
{{アメリカ軍}}
 
{{アメリカ海兵隊}}
 
{{Normdaten}}
 
{{Gunji-stub}}
 
{{デフォルトソート:あめりかかつしゆうこくかいへいたい}}
 
[[Category:アメリカ合衆国海兵隊|*]]
 

2018/9/23/ (日) 13:36時点における最新版



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