「アスコルビン酸」の版間の差分

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{{Otheruses|アスコルビン酸の有機化合物としての側面|栄養素としての役割|ビタミンC}}
 
{{Chembox
 
| ImageFile = L-Ascorbic acid.svg
 
| ImageFile1 =L-ascorbic-acid-3D-balls.png
 
| IUPACName = (''R'')-3,4-ジヒドロキシ-5-((''S'')- 1,2-ジヒドロキシエチル)フラン-2(5''H'')-オン
 
| OtherNames = ビタミンC
 
| Section1 = {{Chembox Identifiers
 
|  CASNo = 50-81-7
 
|  EINECS = 200-066-2
 
|  FEMA = 2109
 
|  PubChem = 5785
 
| 日化辞番号 = J2.301I
 
| JGlobalID = 200907081023027887
 
| KEGG = D00018
 
|  SMILES =
 
|  InChI=1/C6H8O6/c7-1-2(8)5-3(9)4<br/>(10)6(11)12-5/h2,5,7-8,10-<br/>11H,1H2/t2-,5+/m0/s1
 
  }}
 
| Section2 = {{Chembox Properties
 
|  分子式 = C<sub>6</sub>H<sub>8</sub>O<sub>6</sub>
 
|  MolarMass = 176.1241 g/mol
 
|  Appearance = 白色または淡黄色の固体
 
|  Density = 1.65 g/cm<sup>3</sup>
 
|  MeltingPt = 190 - 192℃ (分解)
 
|  MeltingPtCL = 190
 
|  MeltingPtCH = 192
 
|  Melting_notes = 分解
 
|  BoilingPt =
 
|  Solubility = 33g/100ml
 
|  Solubility1 = 2g/100ml
 
|  Solvent1 = エタノール
 
|  Solubility2 = 1g/100ml
 
|  Solvent2 = グリセロール
 
|  Solubility3 = 5g/100ml
 
|  Solvent3 = プロピレングリコール
 
|  pKa = 4.17(1段階)11.6(2段階)
 
  }}
 
| Section3 = {{Chembox Hazards
 
|  ExternalMSDS = [http://www.sciencelab.com/xMSDS-Ascorbic_acid-9922972 ScienceLab.com]
 
|  MainHazards =
 
|  FlashPt =
 
|  Autoignition =
 
|  LD50 = 11.9 g/kg(経口、ラット)<ref>{{cite web |url=http://physchem.ox.ac.uk/MSDS/AS/ascorbic_acid.html |title=Safety (MSDS) data for ascorbic acid |accessdate= 2007-02-21 |date= 2005-10-09 | publisher= [[オックスフォード大学]]}}</ref>
 
  }}
 
}}
 
  
'''アスコルビン酸'''(アスコルビンさん、{{lang-en-short|ascorbic acid}})は、栄養素[[ビタミンC]] としてはたらく、[[ラクトン]]構造を持つ[[有機化合物]]の1種である。[[IUPAC命名法]]では、フランの誘導体と見なして、'''(''R'')-3,4-ジヒドロキシ-5-((''S'')-1,2-ジヒドロキシエチル)フラン-2(5''H'')-オン'''と表される。[[分子量]]は176.13 g/mol。[[光学活性]]化合物であり、ビタミンCとして知られるのは<small>L</small>体の方である。その[[CAS登録番号]]は [50-81-7]。[[食品添加物]]の[[酸化防止剤]]として、広く使用される。
+
'''アスコルビン酸'''(アスコルビンさん、{{lang-en-short|ascorbic acid}}
  
== 工業的製造法 ==
+
 ビタミンCのこと。抗壊血病効果をもつ酸(anti-scorbutic acid)にその名の由来がある。AsAと略記される。分子式C<sub>6</sub>H<sub>8</sub>O<sub>6</sub>、分子量176.13、融点190~192℃、還元力はC-2位および3位のエンジオール基-C(OH)=C(OH)-に由来する。白色またはわずかに黄色味を帯びた結晶で酸味があり、光によって徐々に着色する。乾燥状態では安定であるが、水溶液ではかなり不安定である。
<small>L</small>-アスコルビン酸は[[グルコース]]を原料として、主に2通りの経路で製造される。[[1930年代]]に開発された ライヒシュタイン法では、1段階の[[発酵]]のあとに、化学合成へ移る。より新しい2段階発酵法は、もとは[[1960年代]]に中国で開発された方法であるが、そこではその化学合成の後ろのほうの段階も酵素反応で置き換えている。どちらの経路も、用いたグルコースから約60%の収率でアスコルビン酸を産出する。全世界におけるアスコルビン酸の年間の生産量は約110,000トンにのぼる。
 
  
== 化学的性質 ==
+
 アスコルビン酸は抗壊血病性ビタミンとよばれていた。壊血病は13世紀の十字軍時代にすでに記載され、1535年にはカルチエがカナダのセント・ローレンス川の探検中に、彼の部下たちの「何人かは力がなくなり、立つことができなくなり、他のものは体中の皮膚が内出血し紫の斑点(はんてん)でまだらになった。彼らの口は悪臭を放ち、歯肉は腐り、歯はほとんど抜け落ちた」と記載されている。壊血病の予防法は、1753年にスコットランドの医師リンドJames Lind(1716―1794)によって「検証はできていないが、青菜か新鮮な野菜、熟した果物が壊血病の最上の治療薬となるので、これらが同病に対するもっとも有効な予防薬であることは明らかである」と提示された。有効物質の抽出は、1927年セント・ジェルジーがウシの副腎(ふくじん)皮質から取り出した結晶(ヘキスロン酸)で、これがビタミンCそのものであり、抗壊血病性であるところからアスコルビン酸と命名された。このビタミンはヒトその他の霊長類やモルモットの食餌(しょくじ)には欠かせないが、ほかの動物はこれを体内で合成できる。現在では純度の高い結晶が工業的に大量生産され、天然品からの抽出は行われていない。
=== 酸性 ===
 
アスコルビン酸は[[ビニル性]][[カルボン酸]]のように振る舞い、[[二重結合]]のπ電子が[[ヒドロキシ基]]と[[カルボニル基]]の間に伝わることにより高い酸性を示す ({{pKa}}{{sub|1}} = 4.17、pH = 2 (50 mg/mL))。これは、プロトンを放出した後の共役塩基が[[共鳴理論|共鳴構造]]を持ち、負電荷を非局在化させて安定化できるためである。
 
[[ファイル:Ascorbic acidity.PNG|center|450px|アスコルビン酸の共鳴構造]]
 
アスコルビン酸は還元性を示す。適当な酸化剤(空気中の酸素およびハロゲンなど)の作用により、プロトンを2個放出して[[デヒドロアスコルビン酸]]に変わる。この性質により、酸化防止剤として用いられる。
 
  
=== 互変異性 ===
+
 結合組織の主要なタンパク質であるコラーゲンタンパクの三重螺旋(らせん)構造は4-ヒドロキシプロリンによって構成されている。このアミノ酸はプロリンからプロリン水酸化酵素の触媒でつくられる。この酵素が活性化するときにアスコルビン酸が特異的な抗酸化剤として働く。生体内でアスコルビン酸のない条件下で合成されたコラーゲンのプロリンはヒドロキシル化されにくく、このようなコラーゲン繊維が壊血病でみられる皮膚の変化や血管のもろさの一因となる。アスコルビン酸は、鉄イオンの運搬体であるフェリチンから鉄イオンを遊離し、組織が鉄イオンを利用するのを助ける。そして、その欠乏によって組織内の遊離鉄イオンが減少するので、骨髄細胞のヘモグロビン合成が低下して貧血をおこすと考えられる。アスコルビン酸欠乏症では貧血のほか、骨の発育障害や創傷治癒の遅れなどもみられるが、これらはコラーゲンとコンドロイチン硫酸の合成障害によるものである。アスコルビン酸は腸から容易に吸収され、代謝活動の盛んな臓器に多く含まれる。血液中の濃度が1~1.5ミリグラム%(mg/dl)以上になると尿中に排泄(はいせつ)される。1日10ミリグラムが最低必要量で、イギリスでは20ミリグラム、アメリカでは70ミリグラムを摂取基準としている。なお、動物の場合は大量に与えても毒性は低い。
[[ファイル:Ascorbic diketone.png|center|274px|アスコルビン酸のエノールをプロトンが求核攻撃し、1,3-ジケトンを与える。]]
 
  
アスコルビン酸はプロトンの移動によって不安定なジケトンに互変異性する。この場合、エノール側が優勢である。エノールがプロトンを失うと、その二重結合からπ電子を受け取り、ジケトンが生成する。この互変異性では1,2-ジケトンと1,3-ジケトンが生成可能である。
+
 キュウリやカボチャなどの野菜にはアスコルビン酸を酸化するアスコルビン酸オキシダーゼがあるので、食品を短時間煮沸するとこの酵素が不活性となり、食品中のアスコルビン酸の保存がよくなる。
  
=== 定量法 ===
 
アスコルビン酸の定量分析は、[[酸化還元滴定]]により行える。試料を[[メタリン酸]]水溶液に溶かし 0.05 mol/L [[ヨウ素]]溶液で[[滴定]]する。指示薬は、[[デンプン]]試液を用いる。この方法の中で、ヨウ素は酸化剤としてはたらく。<!--前の版にあった記述を文章体に直したものですが、裏はとれておりません-->
 
  
== その他 ==
 
ドイツ連邦リスク評価研究所 (BfR) の報告によれば、清涼飲料水中に[[安息香酸]]とアスコルビン酸が共存する場合には微量の[[ベンゼン]]が生成する可能性があり、生成量は [[水素イオン指数|pH]]、温度、他の不純物(主に[[金属]][[イオン]]が影響するものと思われる)、[[紫外線]]の影響を受けると言う<ref>
 
{{PDFlink|[http://www.bfr.bund.de/cm/208/hinweise_auf_eine_moegliche_bildung_von_benzol_aus_benzoesaeure_in_lebensmitteln.pdf BfRによる原著文献(ドイツ語)]}}</ref><ref>{{PDFlink|[http://www.nihs.go.jp/hse/food-info/foodinfonews/2006/foodinfo200605.pdf P30に国立医薬品食品衛生研究所安全情報部による日本語の摘要]}}</ref>。
 
 
アスコルビン酸の構造を決定した[[ウォルター・ハース]]は、[[1937年]]、[[ノーベル賞]]を受賞した。
 
 
アスコルビン酸の名前の由来は、[[壊血病]] (scurvy) の治療に効果があったことによる。【a(否定)+ scorbutic(壊血病に罹った)】。
 
 
== 脚注 ==
 
{{脚注ヘルプ}}
 
{{Reflist}}
 
 
== 関連項目 ==
 
* [[エリソルビン酸]]
 
  
 
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{{DEFAULTSORT:あすこるひんさん}}
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[[Category:ビタミン]]
 
[[Category:ビタミン]]
 
[[Category:補酵素]]
 
[[Category:補酵素]]

2019/6/16/ (日) 08:38時点における最新版

アスコルビン酸(アスコルビンさん、: ascorbic acid

 ビタミンCのこと。抗壊血病効果をもつ酸(anti-scorbutic acid)にその名の由来がある。AsAと略記される。分子式C6H8O6、分子量176.13、融点190~192℃、還元力はC-2位および3位のエンジオール基-C(OH)=C(OH)-に由来する。白色またはわずかに黄色味を帯びた結晶で酸味があり、光によって徐々に着色する。乾燥状態では安定であるが、水溶液ではかなり不安定である。

 アスコルビン酸は抗壊血病性ビタミンとよばれていた。壊血病は13世紀の十字軍時代にすでに記載され、1535年にはカルチエがカナダのセント・ローレンス川の探検中に、彼の部下たちの「何人かは力がなくなり、立つことができなくなり、他のものは体中の皮膚が内出血し紫の斑点(はんてん)でまだらになった。彼らの口は悪臭を放ち、歯肉は腐り、歯はほとんど抜け落ちた」と記載されている。壊血病の予防法は、1753年にスコットランドの医師リンドJames Lind(1716―1794)によって「検証はできていないが、青菜か新鮮な野菜、熟した果物が壊血病の最上の治療薬となるので、これらが同病に対するもっとも有効な予防薬であることは明らかである」と提示された。有効物質の抽出は、1927年セント・ジェルジーがウシの副腎(ふくじん)皮質から取り出した結晶(ヘキスロン酸)で、これがビタミンCそのものであり、抗壊血病性であるところからアスコルビン酸と命名された。このビタミンはヒトその他の霊長類やモルモットの食餌(しょくじ)には欠かせないが、ほかの動物はこれを体内で合成できる。現在では純度の高い結晶が工業的に大量生産され、天然品からの抽出は行われていない。

 結合組織の主要なタンパク質であるコラーゲンタンパクの三重螺旋(らせん)構造は4-ヒドロキシプロリンによって構成されている。このアミノ酸はプロリンからプロリン水酸化酵素の触媒でつくられる。この酵素が活性化するときにアスコルビン酸が特異的な抗酸化剤として働く。生体内でアスコルビン酸のない条件下で合成されたコラーゲンのプロリンはヒドロキシル化されにくく、このようなコラーゲン繊維が壊血病でみられる皮膚の変化や血管のもろさの一因となる。アスコルビン酸は、鉄イオンの運搬体であるフェリチンから鉄イオンを遊離し、組織が鉄イオンを利用するのを助ける。そして、その欠乏によって組織内の遊離鉄イオンが減少するので、骨髄細胞のヘモグロビン合成が低下して貧血をおこすと考えられる。アスコルビン酸欠乏症では貧血のほか、骨の発育障害や創傷治癒の遅れなどもみられるが、これらはコラーゲンとコンドロイチン硫酸の合成障害によるものである。アスコルビン酸は腸から容易に吸収され、代謝活動の盛んな臓器に多く含まれる。血液中の濃度が1~1.5ミリグラム%(mg/dl)以上になると尿中に排泄(はいせつ)される。1日10ミリグラムが最低必要量で、イギリスでは20ミリグラム、アメリカでは70ミリグラムを摂取基準としている。なお、動物の場合は大量に与えても毒性は低い。

 キュウリやカボチャなどの野菜にはアスコルビン酸を酸化するアスコルビン酸オキシダーゼがあるので、食品を短時間煮沸するとこの酵素が不活性となり、食品中のアスコルビン酸の保存がよくなる。





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