うま味調味料

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うま味調味料「味の素」(アジパンダ瓶)

うま味調味料(うまみちょうみりょう)とは、うま味を刺激する物質を人工的に精製した調味料である。ナトリウムと結合した結晶のかたちで扱われ、砂糖のように、などに溶かして使うことが多い。主成分はグルタミン酸ナトリウムイノシン酸ナトリウムグアニル酸ナトリウムなど。

かつては「化学調味料」と称されていたが、1990年代から「うまみ調味料」と呼びかえられるようになった(後述)。現在は、加工食品において原材料名として、「アミノ酸等」と表記されていることが多い。

初めて登場したうま味調味料は、1909年に発売された、グルタミン酸ナトリウムを主成分とする「味の素」である。

歴史

1907年明治40年)、日本の化学者池田菊苗が、ヒトの味覚には「酸・甘・塩・苦」の4つに加えて「うま味」が存在すると提唱。その後昆布に由来する「うま味」の主成分が「グルタミン酸」であることを発見した。これをナトリウム塩として精製したものが、1909年から「味の素」という商品名で発売された。これが世界で初めて売られた化学調味料(うま味調味料)である。

1968年、アメリカで中華料理店で食事をした人々の一部が頭痛等の広範な症状を発症[1]。これが中華料理店症候群(CRS; Chinese Restaurant Syndrome)と名付けられた[1]。中華料理店症候群の原因がグルタミン酸ナトリウムであると見られたため、これ以降グルタミン酸ナトリウムの安全性をめぐった論争がはじまった[1]

うま味調味料の種類・食品添加物

欧州連合では以下のうま味調味料を食品添加物(E番号)として定義している。

E番号 名前 目的 状況
E620 グルタミン酸 調味料 EU認可[2]
E621 グルタミン酸ナトリウム (MSG) 調味料 EU認可[2]
E622 グルタミン酸カリウム 調味料 EU認可[2]
E623 グルタミン酸カルシウム 調味料 EU認可[2]
E624 グルタミン酸アンモニウム 調味料 EU認可[2]
E625 グルタミン酸マグネシウム 調味料 EU認可[2]
E626 グアニル酸 調味料 EU認可[2]
E627 グアニル酸ナトリウム 調味料 EU認可[2]
E628 グアニル酸カリウム 調味料 EU認可[2]
E629 グアニル酸カルシウム 調味料 EU認可[2]
E630 イノシン酸 調味料 EU認可[2]
E631 イノシン酸ナトリウム 調味料 EU認可[2]
E632 イノシン酸カリウム 調味料 EU認可[2]
E633 イノシン酸カルシウム 調味料 EU認可[2]
E634 5'-リボヌクレオチドカルシウム 調味料 EU認可[2]
E635 5'-リボヌクレオチド二ナトリウム 調味料 EU認可[2]

他にE640としてアミノ酸の「グリシンとそのナトリウム塩」を認可しているがグリシンはうま味というより甘味を持つ。

製法

製品や各国により製法の違いがあるが、廃糖蜜砂糖を抽出した残りカス)を微生物(菌)に与えるなどをしてグルタミン酸を生成させ、それを水酸化ナトリウムと反応させてナトリウム塩とする方法がコスト的な理由によって主流である[3]トウモロコシなどの澱粉酵母に与えて原料の糖を作る場合もある。

インドネシアでは2000年(平成12年)、タンパク質を分解する菌の栄養源を作る触媒として由来の酵素を使用していたため、イスラム教の禁止食品(ハラールの項を参照)に認定され、発売禁止になった。その後製法を変えて問題を解決している[4]

批判

グルタミン酸ナトリウムの摂取が病的な肥満(obesity)につながるという研究[5][6]がある。しかし、この様な研究に反対する形で、長期的なグルタミン酸ナトリウムの摂取は病的な肥満を引き起こさないという製造業者の研究所(Institute for Innovation, Ajinomoto Co. Inc.)の研究[7]も出されている。

1970年代に加工食品の増量剤として40%超の割合で使用して健康被害を起こした例がある[8]

この他2002年弘前大学の研究グループによってグルタミン酸ナトリウムの摂取と「緑内障」の発症の因果関係の可能性について報告されている[9][10]

「化学調味料」と「うま味調味料」

化学調味料」という呼称は、昭和30年代にNHK商標を放送内で扱うことを回避する目的で(「味の素」が商標であるため)使用したのが最初といわれている[11]。業界団体である日本うま味調味料協会自身、1960年代後半から1985年(昭和60年)まで「日本化学調味料工業協会」と名乗っていた[12]

しかし1980年代、グルメブームにおいて「化学調味料不使用」と謳う店が増えるなか、現在の日本うま味調味料協会は「化学」という言葉から連想される「化学合成食品である」とか「非自然由来食品である」といった負のイメージの転換を図るため「うま味調味料」という語を造り、その使用を提唱した。協会はこの理由を、味覚のひとつとしてのうま味が世界的に認められたこと、現在は天然原料による発酵法で製造されているため「化学」という語がもはや製品の特性を正確に表していないこと、「化学調味料」よりも「うま味調味料」とした方が「料理にうま味を付与する」という製品の特性を良く表す、などとしている[13]

その後、1990年平成2年)に日本標準商品分類(現総務省[14]が、1993年(平成5年)に計量法経済産業省[15]が、2002年(平成14年)に日本標準産業分類(総務省)[16]が「うま味調味料」の表記を採用した。現在では各種法令等でもこちらの表記が使われている[11]。報道においては、共同通信社『記者ハンドブック』、NHK『新用字用語辞典』などが「うま味調味料」の表記を採用している。辞書においては『大辞泉』増補・新装版が「化学調味料」、『大辞林』第2版と『広辞苑』第5版が「旨(うま)味調味料」を見出し語としている。

日本における加工食品の原材料名としては、調味料として「調味料(アミノ酸等)」などと表示される。それ以外の目的(栄養目的等)では「グルタミン酸ナトリウム」あるいは単に「グルタミン酸Na」と表記される場合が多い。

「化学調味料無使用」という表記

「うま味調味料」を使用しなければ「化学調味料無使用」を標榜できるため、タンパク加水分解物などの人工的な調味料が使用されている場合がある。これらには原料を塩酸で加水分解反応を起こしたものが多い[17]

主な商品

参考文献

  1. 1.0 1.1 1.2 ロバート・ウォルク 「第4章 キッチンの科学」『料理の科学 1 素朴な疑問に答えます』 ハーパー保子訳、楽工社、2012-12-20、第1刷、pp. 189-190。ISBN 9784903063577。
  2. 2.00 2.01 2.02 2.03 2.04 2.05 2.06 2.07 2.08 2.09 2.10 2.11 2.12 2.13 2.14 2.15 http://www.food.gov.uk/policy-advice/additivesbranch/enumberlist#Others
  3. 『食品の裏側2 実態編: やっぱり大好き食品添加物』安部司著(ISBN 978-4492223369 2014年3月 東洋経済新報社)(「調味料(アミノ酸等)」)驚くべきその製法
  4. 宗教徒食”. 北海道新聞. . 2014閲覧.
  5. http://www.nytimes.com/2008/08/26/health/nutrition/26nutr.html?_r=0
  6. http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/23620336
  7. http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/23727643
  8. 食品添加物(グルタミン酸ナトリウム)の使用に関する指導の徹底について 昭和47年4月25日 環食第255号
  9. Ohguro, H.; Katsushima, H.; Maruyama, I.; Maeda, T.; Yanagihashi, S.; Metoki, T.; Nakazawa, M. Experimental Eye Research 2002, 75, 307-315. DOI: 10.1006/exer.2002.2017
  10. Too much MSG could cause blindness - 26 October 2002 - New Scientist
  11. 11.0 11.1 商品についてのQ&A - 味の素株式会社
  12. 日本うま味調味料協会Webサイト - プロフィールの項
  13. 化学調味料無添加表示:協会はこう考えます - 日本うま味調味料協会
  14. 工業統計調査の分類について
  15. 特定商品の販売に係る計量に関する政令
  16. 日本標準産業分類
  17. 食品中のクロロプロパノール類に関する情報 - 農林水産省

関連項目

外部リンク