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[[細胞質]]内には多数の分泌顆粒を有しており、刺激に応じて陰窩内に放出される。この顆粒は一般的な[[染色 (生物学)|組織染色]]であるヘマトキシリン・エオシン染色で明瞭な好酸性(赤色)に染められるため、パネート細胞を見分けることは容易である。特異性の高い同定のためには、[[免疫染色]]による[[リゾチーム]]、[[デフェンシン]]あるいはホスホリパーゼA2の染色を行う。
 
[[細胞質]]内には多数の分泌顆粒を有しており、刺激に応じて陰窩内に放出される。この顆粒は一般的な[[染色 (生物学)|組織染色]]であるヘマトキシリン・エオシン染色で明瞭な好酸性(赤色)に染められるため、パネート細胞を見分けることは容易である。特異性の高い同定のためには、[[免疫染色]]による[[リゾチーム]]、[[デフェンシン]]あるいはホスホリパーゼA2の染色を行う。
 
== 分泌 ==
 
細菌([[グラム陽性菌]]および[[グラム陰性菌]])あるいは細菌成分としての[[リポ多糖]]、ムラミールジペプチド、lipid Aなどへの暴露は、パネート細胞による抗菌物質分泌を刺激する。通常、[[カビ|真菌]]および[[原虫]]には分泌刺激を受けない。
 
 
=== デフェンシン ===
 
パネート細胞によって分泌される主要な防御因子がα-デフェンシン(cryptdinとも呼ばれる)である。デフェンシンは[[疎水性]]の正[[電荷]]を帯びた[[タンパク質ドメイン]]を有し、[[細胞膜]]の[[リン脂質]]と相互に影響し合う。この構造は膜へのデフェンシンの挿入を可能とし、微細孔と相互に影響し合い、膜の機能を崩壊させ、細胞溶解を促す。細菌は[[脊椎動物]]の細胞よりも高濃度の負電荷を帯びたリン脂質を有しており、デフェンシンはこの電荷の差異を利用して、宿主細胞を保護しながらの細菌との優先的結合・崩壊を成立させる<ref>{{cite journal | author = Ayabe T, Satchell D, Wilson C, Parks W, Selsted M, Ouellette A | title = Secretion of microbicidal alpha-defensins by intestinal Paneth cells in response to bacteria. | journal = Nat Immunol | volume = 1 | issue = 2 | pages = 113-8 | year = 2000 | id = PMID 11248802}}</ref>。
 
 
=== 他の分泌物 ===
 
パネート細胞が分泌する抗菌物質には、デフェンシンに加えて[[リゾチーム]]およびホスホリパーゼA2などがある。リゾチームは[[涙]]や[[唾液]]など多くの分泌物に含まれ、グラム陽性菌に対して効果が高い。多種類の抗菌物質を分泌することで、パネート細胞は幅広い病原体(細菌、[[寄生虫]]、[[エンベロープ (ウイルス)|エンベロープ]]を持つ一部の[[ウイルス]])に対して効果を発揮することができる。
 
  
 
== 参考文献 ==
 
== 参考文献 ==

2018/9/26/ (水) 08:26時点における最新版

パネート細胞(ぱねーとさいぼう、英:Paneth cell)とは小腸において微生物に対する防御因子を備える細胞。パネート細胞は機能的に好中球に類似し、小腸での自然免疫に関与する。細菌や細菌抗原に曝露された時、パネート細胞は陰窩(腺窩、crypt)の内腔に抗菌物質を分泌し、胃腸の障壁の維持に寄与する。パネート細胞はオーストリアの医師であるJoseph Paneth(1857~1890)の名前をとって命名された[1]

役割

侵入防御

小腸は腸絨毛と陰窩が発達しているため、表面積が非常に大きくなっている。また、他の粘膜とは異なり、腸上皮は単一の細胞層で構成される。このことは栄養分や水分の効率良い吸収を可能にする一方で、病原体の侵入機会をも増大させるというリスクをはらんでいる。吸収効率を維持しながら病原体の侵入を防ぐことが、パネート細胞の主たる役割と考えられている。

幹細胞保護

また、腸の上皮細胞は数日周期で腸絨毛の先端から脱落してゆく。新たな上皮細胞を供給するのが各々の腺窩に位置する幹細胞であり、腸上皮の長期にわたる保持に不可欠な存在である。パネート細胞は幹細胞に近接して存在していることから、免疫機能だけでなく上皮細胞の更新維持にも重要な役割を果たすことが示唆されている。

解剖学的特徴

パネート細胞は十二指腸から空腸回腸近位にかけて分布し、陰窩の最も底の部分に配置されている。一つの陰窩には5~12個のパネート細胞がある。すぐ上に存在すると見られる幹細胞および増殖帯から、パネート細胞は他の腸上皮細胞とは逆に下降して底部に位置し、比較的長い期間(20日程度)生存する。時折、絨毛部分にパネート細胞に似た細胞が観察されることがあり、intermediate cellと呼ばれる。

細胞質内には多数の分泌顆粒を有しており、刺激に応じて陰窩内に放出される。この顆粒は一般的な組織染色であるヘマトキシリン・エオシン染色で明瞭な好酸性(赤色)に染められるため、パネート細胞を見分けることは容易である。特異性の高い同定のためには、免疫染色によるリゾチームデフェンシンあるいはホスホリパーゼA2の染色を行う。

参考文献

  1. Paneth J (1888). “Uber die secernierenden zellen das dunndarm-epithels”. Archiv fur mikroskepisch anatomie 31: 113-192. 
  • Elphick DA, Mahida YR (2005). “Paneth cells: their role in innate immunity and inflammatory disease”. Gut 54 (12): 1802-1809. PMID 16284290. 
  • Ganz T (1999). “Defensins and host defense.”. Science 286 (5439): 420-1. PMID 10577203. 
  • Ganz T (2000). “Paneth cells--guardians of the gut cell hatchery.”. Nat Immunol 1 (2): 99-100. PMID 11248797. 

外部リンク

  1. REDIRECT Template:MeSH name