サトイモ

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ファイル:Excavated satoimo (1)-(5).jpg
掘り出されたサトイモ(掘る前に葉と芋茎は切り落とされている);
(1) 種イモ(親イモ)から出た芋茎の残り
(2) 種イモ(親イモ;食べるに値しない)
(3) 子イモから出た芋茎の残り
(4) 子イモ(芋の子)
(5) 孫イモ(芋の子)
1個の種イモから画像内全部が1として成長し殖えた。

サトイモ里芋、学名:Colocasia esculenta (L.) Schott), : Eddoe)は、東南アジアが原産のタロイモ類の仲間でサトイモ科植物。茎の地下部分(塊茎)と、葉柄を食用にし、葉柄は芋茎(ズイキ)と呼ばれる。

特徴

日本のサトイモはを咲かせないと言われるが、実際には着花することがある。着花する確率は品種間の差が大きく、毎年開花するものからホルモン処理をしてもほとんど開花しないものまで様々である。着蕾したでは、その中心にではなくサヤ状の器官が生じ、次いでその脇から淡黄色の細長い仏炎苞を伸長させてくる。花は仏炎苞内で肉穂花序を形成する。山地に自生していたヤマイモに対し、里で栽培されることからサトイモという名が付いたとされる。

サトイモの栽培品種2倍体 (2n=28) 及び3倍体 (2n=42) である[1][2][3]。着果はほとんど見られないが、2倍体品種ではよく着果する。種子ウラシマソウなどと比較してかなり小さい。

呼び名

栽培の歴史が長いことから、「同音異種」「異名同種」が多く、イエツイモ、ツルノコモ、ハスイモ、ハタイモ(畑芋)、ヤツガシラ(八頭)、など[4]、ハイモ[5]など。またズイキイモとも呼ばれる[6]

栽培

適地

熱帯アジアを中心として重要な主食になっている多様なタロイモ類のうち、最も北方で栽培されている。栽培は比較的容易である。水田などの湿潤な土壌で日当たり良好かつ温暖なところが栽培に適する。

日本では、一般的にで育てるが、奄美諸島以南では水田のように水を張った湛水で育てている。湛水状態で育てた場合、畑で育てるよりも収穫量が2.5倍になるとの調査がある[7]。 昭和30年代頃までは、高知県や熊本県(五家荘)などでは山間地での焼き畑輪作農業により栽培されていた[8][9]

日本への伝播

日本への伝播はイネよりも早く[10]縄文後期と考えられている。なお、鳥栖自生芋(佐賀県鳥栖市)、藪芋、ドンガラ、弘法芋(長野県青木村)と呼ばれる野生化したサトイモが、本州各地にあることが報告されている[11]。伝播経路は不明であるが、黒潮の流れに沿って北上したと考える研究者がいる[12]

植付・播種

毎年繰り返される経済栽培である耕作では、サツマイモジャガイモと同様にもっぱら親株から分離した種芋を土中に埋める、いわゆる植付によって行われる。

種子繁殖は品種改良等の交配目的以外で行われることはほとんどない。実生苗が親株(成体)と比較して相当小さく、生育させるためにかなりの手間を要するためである。採種後乾燥させることなく直ちに播種することにより容易に実生苗が得られる。

収穫

晩夏から秋にかけて収穫される。

主産地

主な品種

ファイル:Colocasia esculenta Black Magic 1.jpg
サトイモの1品種'ブラックマジック'

昭和20年代の調査では、15品種群、35代表品種に分類されている[13]

日本で栽培される品種は、子イモでの休眠が必要な温帯適応した品種[14]が多く、子イモが多数できる系統の「石川早生」品種群で、生産の8割以上を占めるとされている。他に葉柄を利用するズイキ用の「赤ズイキ(八頭)」群や子イモ系統で比較的耐寒性がある「えぐいも」群、親イモが太っても子イモがほとんどできない系統である「筍芋」などがある。また、別種ではあるがハスイモの茎もズイキとして流通している[15]。京料理に使う唐芋などの「海老芋」群は別種のColocasia antiquorumの一種である。

その一方で欧米圏では観葉植物としての栽培がほとんどで、食用品種としての改良は稀である。

食用

ファイル:Kontomire.jpeg
ガーナで市場に並ぶいもがら

煮物の材料として、日本では極めて一般的な存在である。各地の芋煮会いもたき(又はいもだき)の主材料でもある。

親イモに寄り添うように、子イモ、孫イモとたくさんのイモができる、これら子イモや孫イモを「芋の子(いものこ)」と呼ぶ。親イモ、子イモ、孫イモが塊状になる品種にヤツガシラ(八頭)があり、子孫繁栄の縁起物として正月料理等にも用いられるほか、茎の部分をそのまま、あるいは干して乾燥させた物は『ずいき』と呼ばれ食用にされる。主に煮付けなどにして調理されることが多い。

栄養素

でんぷんを主成分とし、低カロリーで食物繊維も豊富である。独特の「ぬめり」があるが、これはマンナンムチンガラクタンという成分によるもので、マンナンは水溶性食物繊維による便秘予防、ムチンには消化促進、ガラクタンには免疫力向上作用があるとされる[15]。生ではえぐ味ないし渋みが強い.これはある種のタンパク質が付着したシュウ酸の針状結晶が多数あるためで、その結晶が口腔内に刺さることにより引き起こされる.このため加熱等でタンパク質を変性させることにより渋みは消える。

サトイモを使った主な料理

簡単な調理法として、丸ごと茹でて皮を剥き、塩や醤油をつけて食べるということも行われる。

洗う

サトイモのを洗って除く場合、皮が付いたままのイモを数多く「」か「たらい」に入れを張る。ほぼ隙間なく数多くを入れ、棒か板で左右に掻き回す。板の方が効率的であるが、桶やたらいの内径より少し少ない幅のものとし、板の両端を持って左右に約60ほど交互に回転させる。棒や板で掻き回すことによって、サトイモ同士が触れ合いぶつかり、その摩擦によって皮が剥がれる[16]。この作業を「芋の子を洗う」または「芋を洗う」と言い、スイミングプールでの混雑などの状況を「芋の子を洗うような」または「芋を洗うような」と比喩的表現に使うことがある。

なお、各地の生産地では中が空洞でそこに水が入るようになっている小型の水車の中にサトイモを入れ、それを川や水路の岸に軸を渡して水車を回す事で、洗浄と皮むきを同時に行う事がある。

手がかゆくなる

里芋を洗うと手が痒くなるが、これは茎や球茎にシュウ酸カルシウムの結晶が含まれているためである。食品として芋を洗う場合では、この球茎の皮の下2-3mmほどにある細胞内に多くのシュウ酸カルシウム結晶が含まれており、大きな結晶が僅かな外力によって壊れて針状結晶へ変わり、外部へと飛び出る。調理者や作業者が手袋などを用いずに洗うと、皮膚にこの針が刺さって痒くなる。手のかゆみを防ぐには、手に重曹、または塩をまぶした状態で作業するとよい[15]。なお、里芋の茎が野菜として販売されている場合もあるが、これは茎を食べられるように品種改良したものが販売されており、そうではない普通の里芋の生の茎を調理すると、突き刺さるような「えぐ味」があり、食用には向かない。

里芋は極めて若い時からシュウ酸カルシウムを針状結晶や細かい結晶砂として細胞内に作り始める。やがてこれらが集合して、大きく脆い結晶の固まりとなる。シュウ酸カルシウムは「えぐ味」の原因ともなり、えぐ味はシュウ酸カルシウムが舌に刺さることによって起きるとする説や、化学的刺激であるとする説があり、他にもタンパク質分解酵素によるとする説がある。里芋は昆虫から身を守るためにこのようなものを作り出していると考えられている[17]

出典

脚注

  1. 山口裕文、島本義也編著『栽培植物の自然史 : 野生植物と人類の共進化』北海道大学図書刊行会、2001年、p.153 ISBN 9784832999312
  2. 2倍体サトイモ(CoIocasia esculenta (L.) Schott)における4酵素のアイソザイムの遺伝分析 日本育種学会 Breeding science 48(3), 273-280, 1998-09-01
  3. 坂本寧男:イモと雑穀ー作物と環境 Tropics Vol.3 (1994) No.1 P19-32
  4. 『漢字に強くなる本―これは重宝』編集:佐藤一郎、浅野通有 出版:光文書院 1978/09
  5. 胡麻を作らない話 週刊 上田
  6. 『佐久市志民俗編下』長野県佐久市平成2年2月20日発行1391頁
  7. “新しいサトイモの栽培方法を開発、収量が2倍に。農学部の岩井純夫教授らの研究グループ。”. (2015年11月14日). http://www.kagoshima-u.ac.jp/topics/2014/01/post-614.html . 2015閲覧. 
  8. 横川末吉:高知縣の燒畑耕作 人文地理 Vol.7 (1955-1956) No.1 P41-48
  9. 上野福男:五家荘の燒畑耕作 地理学評論 Vol.14 (1938) No.2 P93-120
  10. 小西達夫:世界のタロイモ -種の多様性と利用について- 有名野菜品種特性研究会 「有名野菜品種特性研究会(サトイモ)」報告
  11. 佐賀県鳥栖市に自生しているサトイモについて 佐賀大学農学部彙報 佐賀大学農学部 Vol.71 p.113 -122
  12. 橋本征治:台湾蘭嶼におけるタロイモ栽培 関西大学東西学術研究所紀要, 第40輯, 2007.04.01, pp.55-77
  13. 熊沢三郎、二井内清之、本多藤雄:邦における里芋の品種分類 園芸学会雑誌 Vol.25 (1956-1957) No.1 P1-10
  14. 吉野煕道:東アジアとオセアニアのタロ 熱帯農業 Vol.49 (2005) No.5 P317-322
  15. 15.0 15.1 15.2 講談社編『旬の食材:秋・冬の野菜』、講談社、2004年、pp.84-85.
  16. 抱えて持ち運べる程の小型の専用の水車の中にサトイモを入れ、小川用水路などで水の流れによって回転させ洗う場合もある。サトイモの皮は付着が緩やかでありこのようにして除けるが、サツマイモジャガイモはこのようにして皮を除くことは出来ない。
  17. 日本調理科学会編、『料理のなんでも小事典』、講談社、2008年9月20日第1版発行、ISBN 9784062576147

関連項目

外部リンク