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[[Image:Cetaceans.svg|thumb|right|300px|およそ80 種におよぶ現生のクジラ類]]
 
[[Image:Cetaceans.svg|thumb|right|300px|およそ80 種におよぶ現生のクジラ類]]
'''クジラ'''('''鯨'''、''Whale'')は[[哺乳類]]の[[クジラ目]]、あるいは[[鯨偶蹄目]]の鯨凹歯類に属する水生動物の総称であり、その形態から[[ハクジラ]]と[[ヒゲクジラ]]に大別される。
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'''クジラ'''('''鯨'''、''Whale''
  
ハクジラの中でも比較的小型(成体の体長が4m前後以下)の種類を[[イルカ]]と呼ぶことが多いが、この区別は分類上においては明確なものではない。
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[[哺乳(ほにゅう)綱]]クジラ目に属する動物の総称。
  
== 生態 ==
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鯨類(げいるい)とも総称されるこの目Cetaceaのなかで、一般に体長4メートル前後以上の種類をクジラといい、それ以下の小形種をイルカとよんでいるが、その区別ははっきりしたものでなく、動物学的には両者に差はない。一生水中で生活し、陸上では生きられない。外形は魚に類似し、流線形で、頸(くび)は短く外見からは区別ができない。くちばしが伸びて口が大きく、鼻孔は頭頂に位置する。前肢は胸びれになり、後肢は退化して消失し、尾部は発達し、その先端の皮膚が水平に広がって尾びれとなっている。そのほかに背側の皮膚が隆起して背びれとなっている種類が多い。皮膚は肥厚し、体毛はハクジラ亜目ではまったく消失し、ヒゲクジラ亜目では口唇部に感覚毛としてまばらに残る。ハクジラ亜目の歯は、どの歯も形状が同じである同歯性で、オウギハクジラMesoplodon stejnegeriのように下顎(かがく)にわずかに2本しかない種類から、ハシナガイルカStenella longirostrisのように上下顎に合計220本も生える種類まで存在する。ヒゲクジラ亜目には歯はなく、かわりに口蓋(こうがい)にくじらひげというざるの役目をする特殊な口器が生じる。鯨類は全体に大形であり、最小種でも体長1.5メートル、最大種は34メートルに達する。
{{main|クジラ学}}
 
===特徴===
 
[[ファイル:Cetacean parts.png|thumb|300px|ハクジラとヒゲクジラの特徴と各部位]]
 
身体的特徴
 
# 前肢は[[魚類|魚]]の[[対鰭|胸びれ]]のような形に変化している。[[爪]]も存在しない。
 
# 後肢は退化し外見上は見当たらないが、その名残とも言える腰骨が、孤立した[[骨]]として[[筋肉]]中に埋もれて存在する。
 
# 尾部は良く発達し、その先端に[[尾びれ]]があり、遊泳器の役をなしている。尾びれは魚類と違って横向き(水平)であり、クジラが体を上下にくねらせて推進力を生み出すのに適応したものである(魚類は、[[エイ]]などの例外を除き体を左右にくねらせる。
 
# [[頸椎]]は陸生の[[ほ乳類]]と同じように七個あるが、平たくなり、ある種類では癒合し数が少なく見える。この為、外見上首にあたる部分がくびれていないので魚の形に似ている。
 
# [[鼓膜]]・[[三半規管]]等はあるが[[耳殻]]がなく、耳の穴もふさがっている。[[聴覚]]は[[骨伝導]]により行なっている。
 
# [[体毛]]は口の周りに少し残っていて、犬・猫のひげに似た感覚毛であり、その他の部位には見当たらなく、また[[鱗]]も無い。
 
# [[鼻孔]]は、「テレスコーピング現象」というクジラ独自の進化の特徴を獲得したため頭頂部に移動して、呼吸をする事が安易になっている。テレスコーピング現象は、クジラの進化の時系列を、語る上で指針となる特徴でもある。
 
# [[セミクジラ]]類や[[シロイルカ]]などわずかなものを除き、[[背びれ]]を持つ。ヒゲクジラでは小さいが、ハクジラ類では大きく発達している。
 
水中生活への適応
 
# [[エコーロケーション]]という[[超音波]]を使い情報を知覚し、周辺環境の確認や獲物の採取に役立てているといわれる。また群れの中の意思疎通も、エコーロケーションで行っていると考えられていて、調査研究が進んでいる。具体的な研究結果においては、エコーロケーションにより「[[X線写真|レントゲン]]のように対象物の[[骨格]]まで認識しているのではないか」という事や、[[シャチ]]などは、群れの生活域の距離が離れていたり、家系の血筋が遠ければ[[方言]]化などにより「意思の疎通が難しいのではないか」という事が推論されている。
 
# 摂食から出産・育児まで全て水中で行う完全な水生動物である。[[睡眠]]も水中で取るが、研究結果によれば、[[右脳]]と[[左脳]]を同時に睡眠状態にせず交互に休ませているので、[[睡眠]]しながら溺れることなく泳ぎ続けることができる。なお、このような右脳と左脳を交互に休ませる睡眠は、[[鳥類]]や多くの[[ほ乳類]]には一般的なものであることが知られている。
 
# 海に住むクジラは[[水]]に囲まれているので水を飲む必要がないように思われがちだが、[[海水]]と体液の[[浸透圧]]の差により少しずつ水分が体外へ失われて、水分を何らかの形で取り込まないと死んでしまう。クジラは、魚のように海水から塩分を直接[[濾過]]して水分を取り込む器官を持たないため、水分のほぼすべてを餌から得ることになる。すなわち、餌の[[脂肪]]、[[糖類]]、[[タンパク質]]などが体内の[[代謝]]によって[[燃焼]]したときにできる水である。これは、乾燥地帯に住む[[カンガルーネズミ]]が一生涯水を飲まず、水分を餌だけに頼っているのと似ている。なお、クジラは一般の哺乳類と比べて濃い[[尿]]を濾過できるように[[腎臓]]を進化させ、水分の消失を極力抑えながら余分な塩分などを効率良く排泄している。
 
# [[皮膚]]が乾燥に耐えられない事や、自重により[[内臓]]が圧迫され[[多臓器不全|臓器不全]]を起こす事などから、陸に上がる事は短時間であるか、若しくはまったく出来ない。
 
<!--鈴木早智子さんへ、水中への適応としているので、睡眠、出産、摂食、陸上をまとめて、意思の伝達と水分摂取を別ける理由が解りません。また、大型であってもただちに肺が潰れる種類だけではなく、死因は肺に特筆すべきではないと思います。リアルな表現もどうでしょうか、例えば「肺が閉塞し呼吸不全を起こす」などの表現をとられては?陸に上がるのは捕獲とは限らないし、死という言葉も使う必要があるのでしょうか?-->
 
哺乳類としての特徴
 
# 陸生哺乳類と同じく鼻孔(噴気孔)を有し、[[肺]]で[[空気呼吸]]をする。
 
# [[体温]]はほとんどの魚類<ref>[[マグロ]]、[[カジキ]]や[[アオザメ]]などごく一部の魚類は[[奇網]]と呼ばれる組織によって[[体温]]を[[海水温]]よりも高く保つことができる。</ref>のように外海の温度に左右されることなく一定で温血である。(種類により違うが概ね35度-36度)
 
# 普通一子が母体[[子宮]]内で成長し、出生後は一定期間[[母乳]]で保育される。
 
  
''[[ヒゲクジラ亜目]]及び[[ハクジラ亜目]]で生態も異なる為、それぞれの項も参照。また、クジラの骨格の特徴について詳しくは[[鯨骨]]を参照。''
+
{{テンプレート:20180815sk}}
  
=== 進化 ===
 
[[Image:Ambulocetus BW.jpg|thumb|right|220px| [[アンブロケトゥス]]の復元図。]]
 
{{Main|クジラ類の進化史}}
 
 
クジラの祖先は、新生代の始新世初期、南アジアで陸上生活をしていた肉食性哺乳類[[パキケトゥス]]の仲間とされている。かつては、暁新世の原始的な有蹄類である[[メソニクス]]との関係が考えられたが、近年では[[鯨偶蹄目]]に分類し、現在の[[カバ]]と共通の祖先を有する[[ウシ目]](偶蹄類)に起源を求める見解が有力である。当時インド亜大陸がアジア大陸に衝突しつつあって両者の間には、後にヒマラヤ山脈として隆起する浅い海が広がっており、クジラ類の陸から海中への進出は、その環境に適応したものとされる。
 
 
=== 分類 ===
 
[[ファイル:Cetacea.jpg|thumb|400px|1. [[ホッキョククジラ]]、 2. [[シャチ]]、 3. [[セミクジラ]]、 4. [[マッコウクジラ]]、 5. [[イッカク]]、 6. [[シロナガスクジラ]]、 7. [[ナガスクジラ]]、 8. [[シロイルカ]]]]
 
クジラ類は[[生物の分類|生物分類]]上は[[クジラ目]]に属し、[[ヒゲクジラ亜目]]と[[ハクジラ亜目]]に分けられる。ヒゲクジラ類は[[濾過摂食]]に適応し、小魚や[[プランクトン]]の様な小型の生物を主に食べるが、ハクジラ類は主に魚類やイカ類を食べる。近年のDNA解析で、クジラは[[ブタ]]や[[ウシ]]よりも[[カバ]]にもっとも近縁であるという説が提示されている。その説と[[分岐分類学]]に従い、[[ローラシア獣上目]]の下にクジラ目と偶蹄目を合わせた'''[[鯨偶蹄目]]'''(クジラ・ウシ目)を新設し、それに含むべきという意見もある(''[[クジラ目]]の項も参照'')。
 
 
;ハクジラ類
 
一生の間、必ず歯を持っており、「くじらひげ」は無い。外鼻孔は1個であるが、少し中に入ったところで2道に分かれている。現生の種類は10科、30余属、70余種にのぼる。[[マッコウクジラ科]]、[[アカボウクジラ科]]、[[ゴンドウクジラ属]]などに属する約20種の他はみな小型で、いわゆるイルカ類といわれている。
 
 
=== 分布 ===
 
クジラには一定の生息場所は無いが、元来は比較的暖海のものと考えられる。それが水温の高低に対して適応範囲が広くなり、かつ食物等の関係で寒冷な極海まで近寄るようになったものと思われる。例えば[[シロナガスクジラ]]、[[ナガスクジラ]]、[[イワシクジラ]]などのヒゲクジラ類においては世界中の海洋に分布しているが、食物を求める回遊の為南北両極付近に集まるのは有名である。然し南北両半球では季節が逆のため、鯨が赤道を越えて回遊する事はほとんどない。ただしザトウクジラでは観測例もある<ref>前田英雅 [http://naosite.lb.nagasaki-u.ac.jp/dspace/bitstream/10069/7300/1/kk_217_t.pdf 沖縄海域におけるザトウクジラの鳴音の音響特性に関する研究(PDF)]</ref>。
 
 
=== 鯨と生態系 ===
 
鯨の海洋におけるバイオマスの大きさは古くから知られるところであり、その生態系での役割も決して小さくはない。
 
 
鯨は小魚や[[オキアミ]]などの餌を大量に食べ、同時に大量に排泄する糞は[[動物プランクトン]]や小魚の餌となり、[[植物プランクトン]]に必要な[[栄養塩]]となって光合成を促進する。植物プランクトンの増加は動物プランクトンや[[イワシ]]などの魚類に栄養豊富な餌を与えて生育を促す事は自明の理であるが、{{いつ範囲|現在|date=2015年2月}}問題となっている二酸化炭素の大幅な増加が懸念される。中でも[[マッコウクジラ]]は垂直方向へも栄養塩を運ぶ。すなわち、深海に住む生物を餌にすることで、一旦沈んだ栄養塩を海面まで引き上げている<ref name="reuters">[http://jp.reuters.com/article/oddlyEnoughNews/idJPJAPAN-15844320100616 ロイター「マッコウクジラの「排泄物」、CO2削減に貢献=豪研究」]</ref>。
 
 
主にヒゲクジラの仲間には魚類がつき下記のえびす伝承の根拠となっており、特に[[カツオクジラ]]や[[ニタリクジラ]]に[[カツオ]]がつくのは共生であると指摘されるが、ノルウェーでは1900年代から、アイスランドの沖合いで十年の間に鯨を捕り尽くした(1300頭ほど捕れたものが、最終的に15頭しか捕れなくなった)際に、鯨について回遊する性質の魚までいなくなり、一般漁民からの抗議があり、ノルウェー政府は領海外での捕鯨を推奨した事例がある<ref>『クジラの世界』イヴ・コア著、宮崎信之監修 創元社 118頁</ref>。
 
 
鯨は死後も分解され、海底においては[[鯨骨生物群集]]を形成しているが、陸上に座礁した死骸も[[カラス]]や[[クマ]]、[[キツネ]]などの動物に食べられて生物分解される。海と陸では動植物に含まれる[[窒素]]の[[同位体]]の割合が異なり、環境中での窒素同位体比を測定することによって海洋生物も陸上生物の栄養源(窒素源)になっていることが明らかになっている。同様に、捕食された鯨の遺骸に含まれる「海の[[ミネラル]]」が糞などを介して、陸地の植物に吸収され重要な栄養分になり利用される。含有するミネラルには植物の成長を早める効果もある。
 
 
=== 知性 ===
 
主な記事:[[:en:Cetacean intelligence]] (クジラ目の知性)
 
 
クジラは指導、学習、協力、計画、苦悩することで知られている。多くのクジラ種の新皮質は、2007年以前はヒト科のみに存在するとされた細長い紡錘形神経細胞に存在する。人間ではこれらの神経細胞は社会的接触、情動、判断、精神理論に関連する。クジラの紡錘形神経細胞は、人間の紡錘形神経細胞の位置に相当する脳部分にあり、同様の機能を有すると考えられる。
 
 
以前は脳の大きさは動物の知性の主な指標として考えられていた。脳のほとんどの部分は身体機能の維持に使用されるため、脳重量比が高ければ高いほど、より複雑な認知技能に利用できる脳重量が増えることを示唆する。アロメトリー分析によると、哺乳類の脳の大きさは体重の約2/3乗または3/4乗に比例する。動物の脳の大きさをアロメトリー分析に基づいて予想する脳の大きさと比較するものに脳化指数があり、この指数は動物の知性の指標の一つとして使用される。マッコウクジラは地球上の動物では最大の脳重量を有し、成長した雄の平均の脳の大きさは8000立方センチメートル(490 in3)であり、重量は7.8キログラム(17lb)である。これに比較すると成人男子の平均の脳の大きさは1450立方センチメートル(88in3)である。ベルーガやイッカク等のハクジラの脳重量比は人間に次いで高い。
 
 
小規模なクジラは複雑な遊戯を行うことで知られている。例として、水中で安定した空心のドーナツ状
 
渦巻きリングや「バブルリング」を作る遊びがある。バブルリングの作成には、水中で急速に空気を吐き、これが水面上にリングとして表出するものと反復的にリング状に泳ぎ、停止することでらせん渦に空気が噴出する主な2つの方法がある。彼らはまた渦巻き状のリングを噛むことを楽しむようで、多数の別々のバブルに飛び込み、急速に水上に上昇したりする。これをある種のコミュニケーションと考える者もいる。クジラはまた漁のためにバブルネット(泡の網)を作ることで知られている。
 
 
大規模なクジラもある程度、遊ぶと考えられている。例えばセミクジラは尾ヒレを水上に上げ、長時間そのままのポジションを保つ。これは「セーリング」として知られる行動で、遊びの一種と考えられ、アルゼンチンや南アフリカの沿岸で最もよく見られる。ザトウクジラもこれを行う。
 
 
=== コミュニケーション ===
 
{{see also|クジラの歌}}
 
クジラの発声は幾つかの目的を果たすと考えられている。ザトウクジラなどの特定の種に属するクジラはクジラの歌として知られるメロディのような音を発して交信する。クジラは種によって極めて大きな音を発する。ザトウクジラの発する音はクリック音などの突発音であるが、ハクジラ類は2万ワットの音(+73dBmまたは+43dBw)を発するソナーを使用し、その音は遠方からでも聞こえるとされる。
 
 
捕獲されたクジラは人間のスピーチを模倣することで知られている。
 
科学者にはクジラは人間との意思伝達を強く希望するが、人間とは異なる発声構造を持つため相当な努力を払って人間のスピーチを模倣するという説を提唱する者もいる。
 
 
クジラはホイッスルとクリックスと呼ばれる音響信号を発する。クリックスは広帯域での急速な突発音で、ソナーに使用されるが、低い周波数帯の発声はコミュニケーションのような非エコロケーション用途に使用されることがある。例としてベルーガが発するパルス音がある。一連のクリック音のパルスは35-50ミリセカンドの間隔で発せられ、一般的にクリック音の間隔はターゲットに対する音の往復時間より多少長い。ホイッスルは狭帯域の周波数変調(FM)信号で、交信などのコミュニケーションの目的に使用される。
 
 
== クジラと人間と環境 ==
 
詳しい情報:[[:en:Cetacean bycatch]](付随漁獲物としてのクジラ目)および[[:en:Cetacean stranding]](クジラ目の座礁)
 
 
人間が間接的にクジラの脅威になることがある。クジラが商業漁業の網に誤って付随漁獲物として引っかかったり、釣り針をのみ込むことがある。クジラやその他の海洋哺乳類の死の大きな原因に刺し網や巻き網漁がある。アカボウクジラは漁網に頻繁に絡まる。クジラはまた海洋汚染にも影響される。これらの動物は食物連鎖で上位にあり、大量の有機薬品が体内に蓄積しやすい。特にハクジラはヒゲクジラと比較して食物連鎖の上位にあるため多量の脂肪層を有し、母親の毒素が授乳により子クジラに伝達されることがある。これらの汚染物質は胃腸ガンを起こしたり、感染病にかかりやすくなる体質を形成したりする。またプラスチックの袋などの廃棄物を飲み込み、汚染されることがある。環境保護論者は高度な海軍のソナーがクジラを危険にさらすと考える。科学者の中には、クジラが減圧障害を経験する症候を指摘し、ソナーがクジラの浜辺乗り上げを引き起こすことを示唆する者もいる。
 
 
=== 環境保全 ===
 
IWCは南極海鯨サンクチュアリとインド洋海鯨サンクチュアリという二つのクジラ保護区を指定した。南極海鯨サンクチュアリは30,560,860平方キロメートル(11,799,610平方マイル)を範囲とし、南極を含む。インド洋海鯨サンクチュアリは南緯55度以南のインド洋を禁漁区に指定する。IWCは有志団体で条約ではない。いかなる国の国民もこれに束縛されることはなく、IWCは同団体が定める法を施行することはできない。
 
 
2013年の時点で国際自然保護連合(IUCN)は86種のクジラ目種を認識し、そのうち40種はクジラと考慮される。6種が「深刻な危機」(タイセイヨウセミクジラ)、「危機」(シロナガスクジラ、セミクジラ、イワシクジラ)、「危急」(マッコウクジラ)に分類され、危機に瀕していると認識される。21種は「データ不足」と分類される。南極や北極に生息する種は最近の気候変動、特に海氷が生じ溶ける時期の影響を受け危機に瀕していると考慮される。
 
 
=== 鯨と言葉 ===
 
{{See also|クジラ目#呼称}}
 
 
[[万葉集]]では、今の鯨(クジラ)を指すとされる言葉は「イサナ(鯨魚、鯨名、勇魚、不知魚、伊佐魚)」又は「イサ」であり、捕鯨は「イサナトリ」「イサナトル」である。
 
 
「'''鯨鯢'''(けいげい)」という呼称も一般的であった。
 
 
==== 「クジラ」という語の歴史 ====
 
[[貝原益軒]]著『日本釈名 中魚』(元禄13年、[[1700年]])や[[新井白石]]著『東雅 十九鱗介』([[享保]]4年、[[1719年]])によれば、「ク」は古語で[[黒]]を表し「シラ」は[[白]]を表し「黒白」で「クシラ」であった。その後「シ」は「チ」に転じて「クチラ」になり「チ」が「ヂ」に変り「クヂラ」になったと解説している。また、『日本古語大辞典』では「ク」は古韓語で「大」を意味し、「シシ」を「獣」、「ラ」を[[接尾語]]としている。その他、『[[大言海]]』では「クチビロ(口広)が変化したものとし、『日本捕鯨語彙考』では「クジンラ(九尋羅)」が変化したものとしている。
 
 
;「クジラ」の表記の時代による移り変わり
 
{{節スタブ}}
 
*奈良時代(710 - 794年)
 
** [[古事記]] - 「区施羅」クヂラ。
 
** [[日本書紀]] - 「久治良」クヂラ。記紀共に今の鯨(クジラ)を指すかどうかは諸説ある。
 
*平安時代(794年-1185年)
 
** [[新撰字鏡]] - オスは「鼇(本来は大亀の意味)」クチラ(久治良)。メスは「鯢」メクチラ(女久治良)。
 
** [[類聚名義抄]] - オスは「巨京(渠京を略した文字としている)」クヂラ、ヲクヂラ。メスは「鯢」クヂラ、メクヂラ。
 
 
;「鯨」という漢字の由来
 
くじらは古来哺乳類ではなく「魚」と思われていたが、大きさが普通ではなかったことから、[[京 (数)|京]](兆の万倍の単位、10の16乗)のような計り知れない魚ということで「魚」と「京」をあわせて「鯨」となった{{要出典|date=2014年9月}}という説がある。
 
 
====クジラにまつわる表現====
 
鯨体あるいは[[鯨肉]]の本皮(黒い表皮と白い脂肪層)に見立てた黒白のデザインに由来するものが多い。また、鯨の大きさを受けた言葉も多い。[[ファイル:Kujira Youkan.jpg|thumb|100px|[[新富町]]のくじらようかん]]
 
*'''山鯨'''(やまくじら) - 主に[[猪]]の肉の意味であるが、その他の獣肉(特に野獣)をさす場合もある。
 
*'''皮鯨'''(かわくじら) - 鯨の背と腹の色の違いを模して器の口が黒くなっている茶碗や湯呑などのこと。あるいは鯨肉の本皮の断面を模したともいう。
 
*'''鯨帯'''(くじらおび) - 昼夜帯という[[和服]]の帯で表と裏があり、鯨の背と腹の色の違いを模して鯨帯と呼ばれる。
 
*'''鯨尺'''(くじらじゃく) - 鯨差しともいい和裁用の物差し。元は鯨の髭から作られていた。
 
*'''鯨豆腐'''(くじらとうふ) - [[豆腐]]の片面を[[昆布]]などで色付けして白黒にした物。
 
*'''鯨羊羹'''(くじらようかん) - 鯨羊羹とは鯨肉の外観を模した[[和菓子]]。地域差がある。
 
*'''鯨餅'''(くじらもち) - [[くぢらもち|鯨餅]]とは鯨肉の外観を模した[[餅菓子]]。地域差がある。
 
[[ファイル:Byodoin-Bell-M1271.jpg|thumb|150px|鯨鐘(梵鐘)]]
 
*'''鯨幕'''(くじらまく) - 黒と白の布を交互に縫い合わせた(主に[[仏教|仏式]]の[[葬儀]]の際に用いられる)垂れ幕、鯨帯同様に鯨の体になぞらえて[[鯨幕]]と呼ばれる。
 
*'''鯨百合'''(くじらゆり) - [[ユリ根]]の料理法の一つ。板に薄く伸ばすと形が皮鯨に似るから「鯨百合」の名が付いた。
 
*'''鯨飲'''(げいいん) - がぶがぶと[[酒]]を飲む様。
 
*'''鯨音'''(げいおん) - [[釣鐘]]や[[鐘]]の音や音が響き渡る様。鯨吼(げいほう)も同じ意味である。
 
*'''鯨鯢'''(けいげい・げいげい・げいじ) - 鯨が雄鯨で鯢が雌鯨をさし、あわせて鯨を意味する。大きな口で小さな[[蝦]]や魚を飲み込む様から多数の弱者に被害を与える極悪人またはその首謀者をさし、大きな刑罰や罪人を意味する。
 
*'''鯨鐘'''(げいしょう) - [[梵鐘]]のことで、別称として他に華鯨、巨鯨などがある。吊り金具の部分([[龍頭]])が龍を模しているのは、鯨を抑える事が出来るのは[[龍]]以外に無いという説がある。
 
 
[[ファイル:Musashi on the back of a whale.jpg|thumb|350px|[[歌川国芳]]:[[宮本武蔵]]と大鯨と鯨涛]]
 
*'''鯨呑'''(げいどん) - 大きな口で小さな蝦や魚を飲み込む様から強者や覇者が弱者などを取り込む事や強い国や地域が弱い国や地域を吸収合併または、[[併合]]する事をさす。
 
*'''鯨波'''(とき、げいは)
 
:大波や 鬨の声「えいえい おうおう」をあらわす。「とき」という[[大和言葉]]に「鯨波・鬨・時」という字が充てられたようで時間や間合いや機会といった意味で使い分けられていたとする説がある(一部の辞書で同じ括りになっている)鯨浪(くじらなみ)鯨涛 (げいとう)も大波を意味する。
 
*'''鯨鵬'''(げいほう) - 大きいこと。または、大きいもののたとえ。
 
*'''すんくじら''' - [[鹿児島弁]]で端や隅の意味。<!--例:「こん部屋のすんくじらにアマメがおっど」(この部屋の隅っこに[[ゴキブリ]]がいます。)用法より、何故クジラが隅と関係するのか、理由や謂れを説明して記述していただけませんか?でないとクジラとの関連がわかりません。-->
 
 
;慣用句
 
*'''鯨波の声'''(ときのこえ) - 上記の鯨波と書いても同じ意味である。ただし上記の鬨が戦いを示すので戦場での大人数の声を表し主に「勝鬨の声」と解釈されることもあるが、鯨吼という言葉との関連や日本の合戦における史実から[[合戦]]の合図や大将戦をはじめとする代表戦の名乗りなどという諸説がある。
 
*'''鯨に鯱'''(くじらにしゃち) - 付きまとう事または、付きまとって相手に被害を与える事。現在なら「[[ストーカー]]」とほとんど同意である。
 
*'''鯨の喧嘩に海老の背が裂ける'''(くじらのけんかにえびのせなかがさける) - 強者の争いに弱者が巻き込まれ被害を受ける事。
 
*'''鰯網で鯨捕る'''(いわしあみでくじらとる) - 予想せず大きな獲物や収穫を得ること、思いがけず幸運に恵まれたりすることをさす。同義語で「棚から[[牡丹餅]]」などがある。
 
*'''長鯨の百川 吸うが如し'''(ちょうけいのひゃくせん すうがごとし) - 大酒のみのことで元は[[漢詩]]である。
 
*'''鯨鯢の顎にかく'''(けいげいのあぎとにかく) - 鯨の[[顎|あご]]に引っ掛かり飲み込まれそうになったという言葉から、九死に一生を得る様な体験をさす。
 
*'''虎伏 野辺 鯨の寄 浦'''(とらふす、のべ。くじらのよる、うら。) - [[トラ|虎]]や鯨が出没する様な原野や海がある様な所という言葉から、未開の地をさす。
 
 
;クジラと文化
 
* [[くじら座]]
 
* [[:en:Royal fish]] - イギリスやデンマークなどの法律では、浜に打ち上がったり釣ったクジラやイルカ、[[チョウザメ]]は王の所有物である<ref>[http://www.news-digest.co.uk/news/features/5695-it-is-illegal.html あ、それ違法です! ─ イギリスの変な法律]([[ニュースダイジェスト]])</ref><ref>[[ウィリアム・ブラックストン]], ''Commentaries on the Laws of England(イギリス法釈義)'', book I, ch. 8 "Of the King's Revenue", ss. X, p. *280</ref> 。
 
* [[マリンジャンボ]] - [[全日本空輸]]がかつて運航した機体全体を鯨に見立てた特別塗装機。
 
* [[ゴジラ]] - [[怪獣映画]]「ゴジラ (Godzilla)」は「[[ゴリラ]]」と「クジラ」を合わせた造語。
 
* [[宝くじ]] - クジラの「クーちゃん」というキャラクターを使用している。
 
 
=== クジラと信仰 ===
 
クジラは[[世界]]の様々な地域で神聖視されている。[[日本]]においても、漁業神や漂着神・「寄り神信仰」として神格化されてきた。
 
 
==== 世界各国 ====
 
;ノルウェー
 
:[[ノルウェー]]など北欧でも鯨が魚を追い込んで豊漁をもたらすとの伝承があり、これも[[イワシクジラ]]にSei(サイ)という魚が付き、それを集めるとされている<ref>[[スズキ科]]の魚。[[:en:Sei Whale|Sei Whale]]の名もそれに由来する(『ニタリクジラの自然誌 ―土佐湾に住む日本の鯨―』平凡社、加藤秀弘、2000年、68頁)。</ref>。なお、北欧の事例については後には[[キリスト教]]と結びつけられて、神が漁獲の助けとしてクジラをもたらしてくれているとの説明が教会関係者によってされたこともあったようである。ある教会関係者は、漁民が争いごとを起すと、神の不興を招いてクジラが助けてくれなくなるとの説明をしているが、一般的理解であったかどうかは不明である。
 
;ベトナム
 
:[[ベトナム]]ではクジラのことを cá ông (カー・オン)と呼んで古くから信仰対象としてきた。cá は「魚」の意。修飾語の ông は漢字「翁」に由来し「おじいさん」の意味だが、年長男性一般への敬称としても汎用される言葉。全体として「おやっさん魚」または“Sir fish”(魚卿)とでも言うべき意味になるが、いずれにしても敬意と親愛の情がこめられた呼び名である。
 
<!--“Sir fish”、言わば「魚卿」とでも表すべき語義を持っている。-->
 
;アボリジニ
 
:[[オーストラリア]]の北海岸やその周辺の島々に住む[[アボリジニ]]は[[バンドウイルカ]]を[[トーテム]]として神格化し、シャーマンと交信して豊漁をもたらすとされる<ref>『イルカと一緒に遊ぶ本』青春出版社 、鳥羽山照夫(監修)、1998年、169、170頁。ISBN 4-413-08387-3。</ref>。
 
 
==== 日本 ====
 
[[アイヌ]]民族は寄り鯨をもたらすとしてハクジラ(歯鯨)類の[[シャチ]]を沖の神としており、同様の例として捕鯨地であった石川県の宇出津(うしつ)でも、捕鯨対象の鯨を追い込んでくれるシャチを「神主」と呼んでいた。
 
 
日本では鯨は捕獲の対象であると同時に[[信仰]]の対象であった。
 
 
;恵比寿との同一視
 
[[ファイル:Statue_of_Ebisu_the_God_of_Fishermen_(Kesen-numa,_2005-07-16).jpg|thumb|160px|恵比寿]]
 
日本では、鯛と釣竿を持つ姿で知られ[[漁業]]の[[神]]でもある「[[えびす|恵比寿]]」との同一視がなされた。由来については諸説あるが、現在でも漁師が、鯨に[[カツオ]]がつく様子を「鯨付き」と呼ぶように、魚群の水先案内として鯨類を目印としていて、その魚群を見つけ出す力を神聖視していたためといわれる。[[東北地方|東北]]、[[近畿地方|近畿]]、[[九州地方|九州]]の各地方をはじめ日本各地で、鯨類<ref>[[イルカ]]を含め鯨とした。</ref>を「'''エビス'''」と呼んでいて、恵比寿の化身や仮の姿と捉えて「[[神格化]]」していた。これらは[[ニタリクジラ]]に[[カツオ]]が付いたり、[[イルカ]]に[[キハダ]]マグロがつくように、鯨類に同じ餌(鰯などの群集性小魚類)を食べる魚が付く生態から生まれた伝承であると考えられ、[[水産庁]]の[[加藤秀弘]]はニタリクジラとカツオの[[共生]]関係および、えびす信仰との共通点を指摘している。
 
 
;漂着神
 
[[島嶼部]]性(とうしょうぶせい)の高い日本において「寄り鯨」・「流れ鯨」<ref>「流れ鯨」、「寄り鯨」の意味については[[捕鯨]]を参照。</ref>と呼ばれた漂着鯨<ref>ほかに漂着物や水死体などをも同様の信仰対象とした例がある。詳細は[[えびす]]参照。</ref>もエビスと呼んで、後述のような資源利用が盛んであり、「寄り神信仰」の起源ともいわれている。特に[[三浦半島]]や[[能登半島]]や[[佐渡島]]などに顕著に残り、伝承されている。寄り鯨の到来は、七浦が潤うともいわれ、恵比寿が身を挺して住民に恵みをもたらしてくれたものという理解もされていた。もっとも土地によって逆の解釈もあり、恵比寿である寄り鯨を食べると不漁になるという伝承も存在した。
 
 
;水神
 
海浜地域において海上の安全や大漁祈願などの「漁業の神」として祀っているが、幾つかの地域では内陸部においても[[河川]]や[[水源]]の近くにある岩や石を鯨と見立てて、鯨石や鯨岩と呼び、[[治水]]や水源の「水の神」として祭っているところもある。
 
 
=== 捕鯨 ===
 
{{main|捕鯨|捕鯨文化|捕鯨問題}}
 
[[太地町]] - 和歌山県。日本における捕鯨発祥の地であると言われている。
 
* [[えびす]]、[[海豚参詣]]
 
* [[鯨塚]]/[[鯨墓]]
 
* [[水産庁]]/[[日本鯨類研究所]]
 
* 反捕鯨団体([[グリーンピース (NGO)|グリーンピース]] / [[シーシェパード]])
 
 
== 鯨の利用 ==
 
=== 鯨骨 ===
 
{{main|鯨骨}}
 
[[ファイル:Riyadh whale.JPG|thumb|250px|クジラの[[骨格標本]]]]
 
鯨骨(クジラの骨)は[[先史時代]]から世界各地で[[狩猟具]]として加工利用されてきた事が、[[貝塚]]の発掘から判明している。
 
 
日本においては[[縄文時代]]や[[弥生時代]]の貝塚から狩猟具だけでなく、工業製品を加工する作業台や、宗教儀式で使われたと推察される装飾刀剣が発見され、色々な形でクジラの骨の利用がなされてきた。
 
 
[[江戸時代]]には[[鯨細工]]として[[根付]]を始め様々な工芸品を生み出し日本の伝統文化として受け継がれている。近代において、マッコウクジラの歯は、[[象牙]]などと同様に彫り物などの工芸品に加工されることがある。[[パイプ (たばこ)|パイプ]]や[[印材]]などに用いられた例がある。
 
 
古来からイヌイットは木の育たない環境で生きてきた為、[[住居]]の骨組みにクジラの骨を使っている。また近年では[[カナダ]]、[[アメリカ合衆国|アメリカ]]の先住民である[[イヌイット]]や、[[ニュージーランド]]の先住民である[[マオリ]]が、歴史的にクジラを利用してきた経緯から、クジラの歯や骨を加工した工芸品を作製している。
 
 
[[イッカク]]の牙は、中近世では薬として用いられた(ただし、[[ユニコーン|一角獣]]の角とされ、鯨の歯であることが知られずに使われる事も多かった)。
 
 
=== 鯨肉 ===
 
{{main|鯨肉}}
 
古くからクジラから採取した肉や皮を食べる習慣がある国や地域が存在する。
 
日本、インドネシア、フィリピン、ノルウェー、アイスランド、グリーンランド、フェロー諸島、アラスカ、カナダなどであり、民族的・文化的な伝統の食材として、調理法も多岐に渡っている。日本でも多様で高度に洗練された調理法が存在し、和食文化の重要な一部分を占めている。食用部位も赤身の肉のみならず、脂皮や内臓、軟骨など国や地域によって多様である。イギリスやフランスなどの西ヨーロッパでも食用習慣がなかったわけではないが、近海資源の枯渇などから消滅した。
 
 
=== 鯨ひげ ===
 
{{main|鯨ひげ}}
 
「'''[[鯨ひげ]]'''」はヒゲクジラ類にのみ見られる部位で、上あごの本来[[歯]]が生えるべき部分の[[皮膚]]が変化してできたものである。[[爪]]と同じく終始のびつづける特性を持ち、両側あわせて600枚近くになることもある。鯨の髭は捕食の際に歯の代りを行うもので、ヒゲクジラ類は大量の[[海水]]とともに[[餌]]を吸いこんだ後、海水だけを吐きだして餌だけを食べるのだが、このときに餌を[[口]]のなかにとどめておくフィルターの役割を果たすのが髭である。主な餌の違いから、鯨種によって形状・性質はかなり異なる。
 
[[ファイル:Skull of a whale.png|thumb|250px|クジラのヒゲ]]
 
鯨の髭は適度な硬さと柔軟性、軽さを備えており、[[捕鯨]]の発達した地域では、[[プラスチック]]がなかった[[時代]]には[[工芸]]などの分野で盛んに用いられた。特にセミクジラのものが長大で柔軟なため珍重された。[[日本]]における鯨の髭の利用は[[釣竿]]の先端部分、[[ぜんまいばね|ぜんまい]]、[[裃]]の肩衣を整形するための部品など多岐にわたるが、特に有名なのは[[尺|呉服ざし]](ここからいわゆる「[[鯨尺]]」という[[単位]]の名が生まれた)と[[文楽]]人形の頭を動かすための操作索である。[[西洋]]では[[コルセット]]や[[ドレス]]の[[腰]]を膨らませるための骨としても用いられた。
 
 
=== 鯨油 ===
 
{{main|鯨油}}
 
[[鯨油]]はクジラの脂皮や骨などから採取した油であって、シロナガスクジラ、ナガスクジラ、イワシクジラ等のヒゲクジラ類からとったナガス鯨油と、マッコウクジラ、ツチクジラ等のハクジラ類からとったマッコウ鯨油があるが、単に鯨油といった場合は前者を指すことが多い。
 
 
鯨油は古くから灯用、[[セッケン]]原料、[[グリセリン]]原料、製革工業、減摩剤等に使用されていたが、近年では硬化鯨油として食用油([[マーガリン]]原料など)、[[化粧品]]原料などさらに広範囲に利用された。
 
クジラ一頭から取れる油量はシロナガスクジラで約120バレルである。シロナガスクジラからとれる油量は他のクジラからとれる油量の最小公倍数であった為、捕鯨頭数などはシロナガスに換算して表示された(BWU方式)。
 
 
=== その他の部位 ===
 
;メロン体
 
マッコウクジラ頭部の[[メロン (動物学)|メロン体]]周囲の繊維束(千筋)は、テニス[[ラケット]]のガットに用いられた。メロン体の皮膜は、[[太平洋戦争]]中には[[皮革]]原料に使用された。
 
 
; 特別な部位
 
マッコウクジラの腸内生成物は[[竜涎香]]と称し、香料として珍重された。
 
 
一部の部位は薬品類の原料にも用いる。[[肝臓]]からは[[肝油]]が採取される。[[下垂体|脳下垂体]]や[[膵臓]]、[[甲状腺]]などからは[[ホルモン]]剤が生産されていた。
 
 
; 残滓の利用
 
鯨油の採取後の絞りかすや、食用外の肉などは、[[肥料]]用に使用されることがあった。日本では'''鯨肥'''と呼ばれた。肉・骨・皮などを煮て石臼などで粉砕したものであり、鰯肥などと同様の海産肥料として使われた。江戸時代から鯨油の絞り粕の再利用等として行われている。ただし鯨油の採取後の絞りかすは食用([[油かす (食品)|油かす]])にされることもあった。
 
 
明治時代以降に近代捕鯨基地として使われた[[宮城県]][[牡鹿町]]鮎川浜(現[[石巻市]])などでは、鯨肥生産が地場産業として栄えていた<ref>鮎川浜の場合、食用に適さないマッコウクジラが対象鯨種であったことなどから食用とされた鯨肉はごく一部であり、余剰鯨肉が生じていた。これらは当初は海洋投棄されていたが、周辺海面を汚染するとして地元漁民の反発を受けたこともあって工業資源化され成功したものである。</ref>。
 
 
食用習慣の無い多くの近代欧米諸国では、採油に向かない赤身の主要な用途であった。同様に[[飼料]]用にも用いられたことがある。特に[[毛皮]]用の[[ミンク]]の飼料に多く用いられた。[[イギリス]]などでは[[ペットフード]]用にも用いた。
 
 
=== 観光・ホエールウォッチング ===
 
{{main|ホエールウォッチング}}
 
2008年には北極地方を除くすべての海洋で1300万人の人々がホエールウォッチングに参加した。クジラへの害を最小化するためにルールや行動規範が制定された。アイスランド、日本、ノルウェイには捕鯨とホエールウォッチングの両産業が存在する。ホエールウォッチング・ロビイストはボートに近付いたり、ホエールウォッチングトリップで観光客を楽しませる最も探究的なクジラが同領域で捕鯨が再開された時、捕鯨の最初の対象になるのではと懸念している。ホエールウォッチングは世界中の旅行産業で年間21億米ドル(14億英ポンド)の収益を計上し、約13000人を雇用する。これに対し、捕鯨産業は捕鯨の一次禁止を含んでも年間3100
 
米ドル(2000万英ポンド)の収益を計上する。産業の大きさと急成長のために、クジラの自然資源としての最善使用に関する複雑な論争が捕鯨産業との間で起こり、いまだに継続している。
 
 
ホエールウォッチングは、クジラが到来する地域の貴重な観光資源となっている。{{仮リンク|エリック・ホイト|en|Erich Hoyt}}による2000年の調査によると、全世界でホエールウォッチングに訪れる客の数は1130万人(おそらく「/年」)で、産業規模としては14億ドル以上となっているという。
 
 
== 鯨が食す餌の消費量 ==
 
 
=== 世界の海洋における鯨類の食物消費量 ===
 
[[財団法人]][[日本鯨類研究所]]の計算によると、世界中の鯨が食する餌の消費量は魚、[[イカ]]などの[[軟体動物]]、[[オキアミ]]などの[[甲殻類]]を合わせると、2.8 - 5億トンとされている。これは、世界中の人間の魚の消費量9千万トンの3倍-6倍と計算される<ref>"''It is an important issue in the context of world food security since it is estimated that cetaceans consume three to five times the amount of marine resources harvested for human consumption.''": {{cite journal |url=ftp://ftp.fao.org/FI/DOCUMENT/reykjavik/pdf/09Tamura.pdf |author=Tsutomu Tamura |title=Competition for food in the ocean: Man and other apical predators |journal=Reykjavik Conference on Responsible Fisheries in the Marine Ecosystem |date=2001 |doi= }}</ref>。保護されたために増えすぎた鯨によって海洋の[[バイオマス]](生物資源)は減少しており、捕鯨は海洋生物資源の保全に繋がるという意見もある。
 
 
クジラの消費するバイオマスの量については、捕鯨に賛成、反対のそれぞれの立場からの説明となってしまうことが多いが、必ずしも捕鯨に賛成、反対の立場からのみ発生した見解が出ると限ることはできない。
 
 
* 試算には、捕鯨対象種以外の種を含んでおり、捕鯨禁止という形で保護されているのは鯨類全80種余りの中のIWCで管理された13種に過ぎない。
 
* 世界中の鯨が食べる餌は種類によって異なり、魚やイカの中には漁業と競合しないものや、プランクトンや深海凄のイカなどは、そもそも食用資源に向かないものもあり、直接競合しているのは二割程度である。
 
* 人類が利用しにくい資源をより多く利用するため、[[リン酸]]資源や鯨油として使用するなど食用に不向きなクジラの利用が推奨されることもある。例えば深海凄のハクジラ類の生息数は南極においてクロミンククジラよりも多いにも関わらず資源として利用されていない<ref>南極のミナミツチクジラや[[ミナミトックリクジラ]]の数はクロミンククジラに匹敵し、食べるイカをオキアミ換算するとクロミンククジラを上回るが、食料資源としての調査自体が行われていない。こういったハクジラ類の数少ない利用例は千葉の[[ツチクジラ]]であり、これは地域的な嗜好によるものであり、特殊な事例である。</ref>。だが、深海凄のハクジラであるマッコウクジラ調査捕鯨の対象としても僅か5頭程度しか捕られていないが、これは鯨油の需要が少なく、経済価値が殆どないからである<ref>『世界クジラ戦争』PHP研究所、小松正之、2010年、138頁 ISBN 978-4-569-77586-9 尚、小松は「常識はウソだらけ」ワック ISBN 978-4-89831-573-6 では「鯨80種は全て食用になる」ともコメントしてはいる。</ref>。
 
 
といった事実から、捕鯨がどの程度、特にクジラを除く生物資源の管理に役立つのか明確でない点が多く、それを示す研究結果も少ない。
 
 
現在の[[群集生態学]]によれば、実際の[[生態系]]はピラミッド上の単純な[[食物連鎖]]ではなく、[[食物網]]と呼ばれる網の目のような複雑な関係にあるとする知見が得られてきている<ref>[http://www2.fisheries.com/archive/projects/fdmfw.php Fishing Down Marine Food Webs]{{リンク切れ|date=2015年6月}}, Fisheries Centre, University of British Columbia</ref>。食物網の概念によれば、たとえどの網の箇所でも引っ張れば全体に影響し歪みを与え、それと同様に、乱獲や過剰保護<ref>俗に過剰保護の影響であるかのようにいわれるクロミンククジラの増加は飽くまでも他の鯨種が乱獲された生態系破壊の結果とされ([[クロミンククジラ#形態・生態]]参照)、過剰保護とは無縁の現象である。他の種でも過剰保護が具体的に何かを引き起こした事例は未確認である。</ref>などの極端な資源運営を行えば、[[バイオマス]]のバランスが崩れる要因になる。近年では[[:en:Ecopath with Ecosim|Ecopath with Ecosim]]などの[[生態系]]モデル ([[:en:Ecosystem model|Ecosystem model]]) が開発され、日本でもクジラと[[漁業]]の競合関係を調べるためにジャルパン2 ([[:en:Institute_of_Cetacean_Research#JARPN_II|JARPN II]]) と呼ばれる研究が行われており、その目的の一つがクジラを含めたFood webを数値モデル化するための科学的データの提供とされる<ref>{{cite journal |url=http://www.icrwhale.org/eng/SC-J09-JR1.pdf |author=Luis A. Pastene et al. |title=The Japanese Whale Research Program under Special Permit in the western North Pacific Phase-II (JARPN II): origin, objectives and research progress made in the period 2002-2007, including scientific considerations for the next research period |journal=SC/J09/JR1 |date=2009 |doi= |archiveurl=http://web.archive.org/web/20100911192357/http://www.icrwhale.org/eng/SC-J09-JR1.pdf |archivedate=2010-09-11 }}</ref><ref>『なぜクジラは座礁するのか? 「反捕鯨」の悲劇』河出書房、森下丈二、2002年、59頁 この書籍の「食物網」の記述に添付されている図版は「生態ピラミッド」である。</ref>。
 
 
=== 鯨食害論 ===
 
日本鯨類研究所の[[大隅清治]]と田村力による『世界の海洋における鯨類の食物消費量』を基にしたとされるのが、鯨食害論である。
 
 
『世界の海洋における鯨類の食物消費量』が飽くまでも食物網の研究から、漁業と鯨類の捕食の競合を示そうとしているのに対して、こちらの論説では、「鯨が増えすぎると魚類を食い尽くす」という論旨であり、水産庁などが監修した一般書籍には多く見られる。日本捕鯨協会による簡単な説明は以下の通りである<ref name=whaling-taiou>[http://www.whaling.jp/taiou.html 反捕鯨団体の言われなき批判に対する考え方 - II 鯨資源の利用の是非について] 日本捕鯨協会 </ref>。{{quotation|世界中の鯨類が捕食する海洋生物の量は、世界の漁業生産量の3-5倍に上ります。また、日本近海において鯨類が、[[カタクチイワシ]]、[[サンマ]]、[[スケソウダラ]]など、漁業の重要魚種を大量に捕食していることが胃内容物調査で明らかになっています。鯨類が大量の魚を捕食していることは事実であり、鯨を間引くことでその分人間が魚を利用できることは間違いありません。実際に、沿岸漁業者などからクジラによる漁業被害に対する苦情が出ており、早急な対策が必要です。<br />また、クジラは海の食物連鎖の中で最上位の捕食者であり、クジラだけをいたずらに保護することは海洋生態系のバランスを崩すことになります。<ref name=whaling-taiou/>}}
 
 
基本的に、クジラ目を二分するヒゲクジラ亜目の鯨の殆どは1年のうち1/4は極地で採餌し、残りの3/4の期間は赤道付近で餌を食べずに繁殖を行なう為<ref>[[ヒゲクジラ亜目#生態]]参照</ref>、例としてシロナガスクジラでは年間に自分の体重の4倍程度しか食事をしないため、見た目のイメージで大食漢と決め付けられるものではないという意見もある<ref>『クジラはなぜ優雅に大ジャンプするのか』実業之日本社、中島将行、1994年、162-164頁、年に120日しか食事をしないシロナガスクジラが毎日6トンのオキアミを捕食すると年間720トン。対して人間は年間に体重の15-16倍の量の食事をするとされる。</ref>。特にヒゲクジラ亜目の鯨は前述のように極地で採餌する為、地球上の半分である南半球では主として、南極海でもっとも豊富な[[ナンキョクオキアミ]]が消費されるが、これは年間数千万トンの余剰資源がある<ref>[[ナンキョクオキアミ#地理的分布]]の「南極圏の生態系における地位」及び「バイオマスおよび生産量」も参照。</ref>とされる。ほかにもマッコウクジラは主に深海の軟体動物を食べ、ハクジラ亜目の鯨類には深海凄のイカ類に依存するものが多い。他には砂浜の[[ゴカイ]]などの生き物を捕食するコククジラや鯨類そのものを捕食するシャチなど、80種近いクジラの生態及び食性は様々であり、また、ナガスクジラ科の鯨種のようにその時期に多い餌生物を食べるため、餌生物も特定のものに限定される訳ではない為<ref>食性に関しては各鯨種の項目を参照。ヒゲクジラ亜目の[[鯨ひげ]]もまた餌や生態にあわせて様々な形態に進化している。</ref>、人間の漁業と間接的にしか競合していない部分も大きい。
 
 
科学的に不確かな部分が多いと言う指摘に対して、田村力はオキアミだけを捕食していた種類もあり、不確かな部分も多く、この説は世界に[[叩き台]]を提供する為のものであると、それを認めたうえで更なる調査が必要であるとしている<ref name="yomiuri">『読売新聞』2002年5月21日</ref>。
 
 
=== 批判 ===
 
イギリスの水産大臣(当時)エリオット・モーリーは科学的に不確かな点が多く、鯨の影響も分からないので、商業捕鯨再開の理由たりえないとしている。
 
 
かつて鯨類研究所に所属していた粕谷俊雄教授は鯨(特にナガスクジラ科の鯨)は過去にはもっと多く生息していたが魚がいなくなる現象は起きておらず前提に無理がある。漁獲対象にしていない魚類を鯨がどの程度食べているか明確でなく、あくまで仮定に過ぎないとしている<ref name="yomiuri"/>。
 
 
関口雄祐は前述の捕鯨によって生物網を調整し漁業資源を増やす案の現実性について、それは熱帯域から極地に生息するおよそ80種類の鯨類を管理しなければならない、つまり地球上の海洋全体のコントロールが可能でなければ出来ないことであり、現代の科学技術では当面不可能である<ref>『イルカを食べちゃダメですか? 科学者の追い込み漁体験記』光文社、2010年、155-156頁。ISBN 4-334-03576-0。</ref>とみている。
 
 
[[世界自然保護基金|WWFジャパン]]はこの見解に関しては非科学的なものであると批判している<ref>[http://prweb.org/press06/00697.htm WWFJapan>クジラ問題に関する見解について]{{リンク切れ|date=2015年6月}} 日本政府は危機を煽るだけ煽って資源管理に真剣に取り組んでいないと非難されるだろうとしている。</ref>。
 
 
WWFジャパン自然保護委員の松田横浜国立大学教授は確かに、日本鯨類研究所は鯨が沢山捕食するのを証明しているが、主要な生態学の教科書に引用される「ピーター・ヨッジスの間接効果理論」によれば、食物網の効果で必ずしも捕食が水産資源の減少になるわけではない点が数学論的に立証されており、多数の生態学者からも批判されていると農林水産省の会議で発言している<ref>[http://www.jfa.maff.go.jp/j/study/enyou/pdf/gizigaiyo3.pdf 第3回 鯨類捕獲調査に関する検討委員会議事概要 農林水産省]</ref>。
 
 
大久保東海大学海洋学部専任講師は2009年のIWC会合では日本の政府代表団が、鯨による水産資源の減少を決め付けてはいないとした点を踏まえた上で、前述の関口氏の説に連なる、水産庁が目指す鯨類の複数種一括管理は実現可能性が低い事実(既存のRMPを尊重するべきであるとのこと)と仮説にすぎないものを大々的にアピールするのは日本の科学の信頼性を損ねると農林水産省の会議で発言している<ref>[http://www.jfa.maff.go.jp/j/study/enyou/pdf/gizigaiyo4_1.pdf 第4回 鯨類捕獲調査に関する検討委員会議事概要 農林水産省]</ref>。
 
 
前[[国際連合食糧農業機関|FAO]]水産局長の野村一郎は上記の松田、大久保の指摘する、この説の科学的な信憑性が低い点を踏まえて、捕鯨再開のために鯨による漁業被害をPRするのはむしろイメージ的に良くないのではないかとしている。
 
 
AAP通信によると世界自然保護会議においては、この説は科学的証拠が不足しているとする動議に、日本を含めた捕鯨国も署名する予定であったと報道している<ref>[http://www.25today.com/news/2008/10/post_2788.php 日豪プレス (AAP). (2008年10月15日). ]{{リンク切れ|date=2015年6月}} ただし、オーストラリア代表の[[ピーター・ギャレット]]環境相が、この動議を台無しにした。</ref>。
 
 
[[捕鯨問題#自然保護問題としてのクジラ]]の鯨食害論も参照。
 
 
== 脚注 ==
 
{{脚注ヘルプ}}
 
{{Reflist|2}}
 
 
== 関連項目 ==
 
{{Commons category|Whales}}
 
クジラの遺骸
 
* [[鯨骨生物群集]]
 
* [[鯨の爆発]] - 打ち上げられたクジラの死骸がもたらす災厄。
 
 
自治体
 
* [[昭島市]] - 東京都。クジラの化石が発見され、クジラ祭りが毎年開催される
 
 
その他
 
* [[52ヘルツの鯨]] - 世界でもっとも孤独とされる鯨。
 
 
{{Authority control}}
 
 
{{DEFAULTSORT:くしら}}
 
{{DEFAULTSORT:くしら}}
 
[[Category:鯨|*]]
 
[[Category:鯨|*]]
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[[Category:民間信仰]]
 
[[Category:民間信仰]]
 
[[Category:冬の季語]]
 
[[Category:冬の季語]]
 
[[bs:Kit]]
 
[[ca:Balena]]
 
[[chr:ᎤᏔᎾ ᎠᏣᏗ]]
 
[[cu:Китъ]]
 
[[cy:Morfil]]
 
[[gd:Muc-mhara]]
 
[[hak:Kîn-ǹg]]
 
[[ht:Balèn]]
 
[[io:Baleno]]
 
[[iu:ᐊᕐᕕᒃ]]
 
[[jv:Iwak lodan]]
 
[[kbd:Джейхэр]]
 
[[ln:Mondɛ́lɛ́ (nyama)]]
 
[[mi:Ika moana]]
 
[[mk:Кит]]
 
[[mn:Халим]]
 
[[my:ငါးဝန်]]
 
[[nah:Huēyimichin]]
 
[[nso:Leruarua]]
 
[[ps:نهنګ]]
 
[[sah:Хаалым балык]]
 
[[su:Lauk Paus]]
 
[[xal:Тул]]
 

2018/8/26/ (日) 13:08時点における最新版

およそ80 種におよぶ現生のクジラ類

クジラWhale

哺乳(ほにゅう)綱クジラ目に属する動物の総称。

鯨類(げいるい)とも総称されるこの目Cetaceaのなかで、一般に体長4メートル前後以上の種類をクジラといい、それ以下の小形種をイルカとよんでいるが、その区別ははっきりしたものでなく、動物学的には両者に差はない。一生水中で生活し、陸上では生きられない。外形は魚に類似し、流線形で、頸(くび)は短く外見からは区別ができない。くちばしが伸びて口が大きく、鼻孔は頭頂に位置する。前肢は胸びれになり、後肢は退化して消失し、尾部は発達し、その先端の皮膚が水平に広がって尾びれとなっている。そのほかに背側の皮膚が隆起して背びれとなっている種類が多い。皮膚は肥厚し、体毛はハクジラ亜目ではまったく消失し、ヒゲクジラ亜目では口唇部に感覚毛としてまばらに残る。ハクジラ亜目の歯は、どの歯も形状が同じである同歯性で、オウギハクジラMesoplodon stejnegeriのように下顎(かがく)にわずかに2本しかない種類から、ハシナガイルカStenella longirostrisのように上下顎に合計220本も生える種類まで存在する。ヒゲクジラ亜目には歯はなく、かわりに口蓋(こうがい)にくじらひげというざるの役目をする特殊な口器が生じる。鯨類は全体に大形であり、最小種でも体長1.5メートル、最大種は34メートルに達する。



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