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中島 河太郎(なかじま かわたろう、1917年6月5日 - 1999年5月5日)は日本のミステリー文学評論家、アンソロジスト、国文学者。ホラー・恐怖小説や怪奇色が強いミステリ小説にも造詣が深かった。本名は中嶋馨(なかじま かおる)。別名に小城魚太郎[1]、石羽文彦、玉井一二三。
略歴
鹿児島県鹿児島市生まれ。1942年東京帝国大学文学部国文科卒業後。東京府立第七中学校(のち東京都立墨田川高等学校)の教諭をつとめながら、柳田國男、正宗白鳥に師事。旧制中学教師時代はまだ若かったので生徒から「あんちゃん」と呼ばれ、怒ると生徒を並べて「ホイホイ」と言いつつ後ろから尻を蹴り上げることで知られていた[2]。戦時中に授業を受けた半藤一利からは「軍事教練をさぼると思いっきり殴る軍国教師だった」と批判されている[3]。その他、佐野眞一も墨田川高等学校での教え子のひとりである[3]。佐野によると、当時の中島は「由比正雪のような総髪をし、達意の文章、特に古典の名文を読むときは音吐朗々、独特の髪形とも相俟って、書かれた世界に引きずりこむ魔力めいたものがあ」り、1964年5月、『宝石』廃刊の時は憔悴した表情で「今日は大変悲しいことがあったので、授業はできません」と発言した、という[4]。
柳田の書誌研究や「正宗白鳥全集」の編集にあたる。のちに和洋女子大学教授、その後同大学の学長を務めた。
その一方で、1947年に探偵新聞に連載した「日本推理小説略史」でミステリー小説評論家として名を馳せ、活動を開始する。1955年、まだ書き下ろし小説を募集していなかった第1回江戸川乱歩賞を外国・日本推理小説をまとめ、評論した『探偵小説事典』で受賞した。さらに『推理小説展望』で日本推理作家協会賞を単独で受賞。
1985年から4年間日本推理作家協会理事長を務め、ミステリー文学資料館の初代館長も務めた。1999年、第2回日本ミステリー文学大賞を受賞。
著作
- 『推理小説ノート』社会思想研究会出版部 現代教養文庫 1960
- 『日本推理小説史 第1巻』桃源社 1964 のち東京創元社
- 『推理小説展望』世界推理小説大系 別巻 東都書房 1965 のち双葉文庫 1995
- 『推理小説の読み方』岩井泰三絵 ポプラ社 1971
- 『ルパンとホームズ 推理小説のなぞをとく』ポプラ社 少年ブックス 1976
- 『日本推理小説史』第2-3巻 東京創元社 1994-96
- 『探偵小説辞典』(江戸川乱歩賞全集)講談社〈講談社文庫〉、1998年9月 ISBN 4-06-263875-4
編纂
- 『推理小説への招待』荒正人共編 南北社 1959
- 『ポケット・ミステリィ』編 光書房 1959
- 『異端の文学 怪奇・幻想・恐怖名作選』編 新人物往来社 1969
- 『新青年傑作選』全5巻 編 立風書房 1969-70 (角川文庫版『新青年傑作選集』とは別内容)
- 『ビーストン傑作集』編 創土社 1970
- 『ルヴェル傑作集』編 創土社 1970
- 『大衆文学大系』全30巻+別巻 監修: 大佛次郎, 川口松太郎, 木村毅. 編集委員: 尾崎秀樹,中島河太郎, 和田芳恵、講談社, 1971 - 1980
- 『あなたは挑戦者 犯人捜し』山村正夫等著 中島編 青樹社 1972
- 『犯人当て傑作選』編 サンポウ・ノベルス 1973
- 『名探偵傑作選』選 サンポウ・ノベルス 1973
- 『現代怪奇小説集』全3巻 紀田順一郎共編 立風書房 1974
- 『密室殺人傑作選』編 サンポウ・ノベルス 1974
- 『恐怖推理』編 ベストセラーズ 1975
- 『三億円事件 小説推理』編 グリーンアロー出版社 1975
- 『日本代表ミステリー選集』全10冊 権田万治共編 角川文庫 1975-76
- 『名探偵13人登場』編 ベストセラーズ 1975
- 『恐怖の大空 航空ミステリー傑作集』編 ワールドフォトプレス 1976
- 『殺意の死角』篇 日本文華社 文華新書 小説選集 1976
- 『戦慄の蒼空 航空ミステリー傑作集』編 ワールドフォトプレス 1976
- 『血染めの怨霊』編 ベストブック社 1976
- 『日本探偵小説ベスト集成 戦前篇』編 徳間ノベルス 1976
- 『ハードボイルド傑作選 1』編 ベストブック社 1976
- 『凶悪の空路 航空ミステリー傑作集』編 ワールドフォトプレス 1977
- 『現代怪奇小説集』紀田順一郎共編 立風書房 1977
- 『死の懸垂下降 山岳推理ベスト集成』編 徳間ノベルス 1977
- 『戦慄の旅路』篇 日本文華社 文華新書 小説選集 1977
- 『血ぬられた海域 海洋推理ベスト集成』編 徳間ノベルス 1977
- 『日本探偵小説ベスト集成 戦後篇』編 徳間ノベルス 1977
- 『新青年傑作選集』全5巻 編 角川文庫 1977 (立風書房版『新青年傑作選』とは別内容)
- 『怪談ミステリー集』編 双葉新書 1978 のち文庫
- 『「宝石」傑作選集』全5冊 編 角川文庫 1978-79
- 『本格推理傑作集』編 双葉新書 1978
- 『名探偵読本 8 金田一耕助』編 パシフィカ 1979
- 『名探偵読本 5 シャーロック・ホームズのライヴァルたち』押川曠共編 パシフィカ 1979
- 『動物ミステリー集 殺人の影に意外な生物』編 双葉新書 1979
- 『江戸川乱歩-評論と研究』編 講談社 1980
- 『殺人鬼の饗宴 恐怖ミステリー集』編 双葉新書 1981
- 『猫が見ていた 猫ミステリー傑作選』編 広済堂出版 1981 のち文庫
- 『正宗白鳥全集』全30巻 紅野敏郎共編 福武書店、1983-86
- 『日本ミステリーベスト集成』全4冊 編 徳間文庫 1984-85
- 『あなたは名探偵 Mystery puzzle』編 青樹社 1985
- 『日本推理小説辞典』編 東京堂出版 1985
- 『新青年ミステリ倶楽部 幻の探偵小説』編 青樹社 1986
- 『江戸川乱歩推理文庫』全65冊 平井隆太郎共責任編集 講談社 1987-89
- 『江戸川乱歩ワンダーランド』(責任編集)沖積舎、1989
- 『現代ミステリー傑作選』権田万治共編 角川文庫、1989
- 『日本縦断殺人』編 天山文庫 1991
- 『日本列島殺人』編 天山文庫 1992
翻訳
- バン・ダイン『グリーン家殺人事件』斎藤寿夫絵 秋田書店 1973
- フィルポッツ『闇からの声』杉尾輝利絵 秋田書店 1973
- 『列車消失事件 短編傑作集』斎藤寿夫 等絵 秋田書店 世界の名作推理全集 1974
- モーリス・ルブラン『怪盗ルパン名作選集』全6巻 松村喜雄共訳 秋田書店 1985-86
監修
- 『世界の推理小説総解説 翻訳ミステリーと国内推理小説名作典』権田万治共監修 自由国民社、1982
- 『日本探偵小説全集』全12巻(監修)東京創元社〈創元推理文庫〉、1984年 - 1996年
- 『ポピュラー・ミステリーワールド』全15巻(監修)リブリオ出版、1997
- 『くらしっくミステリーワールド』全15巻(監修)リブリオ出版、1997
- 『もだんミステリーワールド』全15巻(監修)リブリオ出版、1998
- 『げんだいミステリーワールド』全15巻(監修)リブリオ出版、1999
- 『乱歩文献データブック』平井隆太郎共監修 名張市立図書館、1997年
- 『江戸川乱歩執筆年譜』平井隆太郎共監修 名張市立図書館、1998年
脚注
- ↑ 小栗虫太郎の『黒死館殺人事件』や「白蟻」などに登場する、小栗自身をモデルにした探偵小説家の名前。
- ↑ 東大・日本近代史研究会・部落問題 : 川村善二郎氏に聞く Author(s) 今西, 一 Citation アリーナ (2010), 9: 223-258
- ↑ 3.0 3.1 江戸川乱歩 子供には読ませてはいけぬ変態作家と佐野眞一氏
- ↑ 江戸川乱歩 子供には読ませてはいけぬ変態作家と佐野眞一氏