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'''ヘイトスピーチ'''({{lang-en-short|hate speech}}、'''憎悪表現'''{{sfn|小谷|2013}}<ref name="kotan09"/><ref>「憎悪表現とは何か」菊池久一(頸草書房2001)</ref><ref name="kajiwara">{{PDFlink|[http://catalog.lib.kyushu-u.ac.jp/handle/2324/11004/KJ00004858554.pdf#search&#61;'%E6%A2%B6%E5%8E%9F+%E5%81%A5%E4%BD%91%2C%E3%83%98%E3%82%A4%E3%83%88%E3%83%BB%E3%82%B9%E3%83%94%E3%83%BC%E3%83%81%E3%81%A8%E3%80%8C%E8%A1%A8%E7%8F%BE%E3%80%8D%E3%81%AE%E5%A2%83%E7%95%8C' 「ヘイト・スピーチと「表現」の境界」梶原健祐(九大法学2007.2.26)]}} P.67,脚注10,PDF-P.20</ref><ref>{{Cite news|url=http://mainichi.jp/articles/20150703/ddm/005/010/133000c |title=ヘイトスピーチ 被害調査に前向き |newspaper=[[毎日新聞]] |date=2015-07-03}}</ref><ref>{{Cite news|url=http://www.sankei.com/affairs/news/150114/afr1501140002-n1.html |title=「ヘイトスピーチ、許さない」 法務省が啓発活動強化 |newspaper=[[産経新聞]] |date=2015-01-14}}</ref><ref>{{Cite news|url=http://www.yomiuri.co.jp/politics/20160116-OYT1T50102.html |title=全国初、ヘイトスピーチ規制条例…大阪市議会 |newspaper=[[読売新聞]] |date=2016-01-16}}</ref>)とは、狭義において[[人種]]、出身国、[[民族]]、[[宗教]]、[[性的指向]]、[[性別]]、[[容貌|容姿]]、[[健康]]([[障害]])など<ref name="dictionarycom" /><ref name="tiezoumini" />自分から主体的に変えることが困難な事柄に基づいて<ref name="tiezoumini">『[[知恵蔵|知恵蔵mini]]』[[朝日新聞出版]][[コトバンク]]、2013年5月13日、2015年7月21日更新。[http://kotobank.jp/word/%E3%83%98%E3%82%A4%E3%83%88%E3%82%B9%E3%83%94%E3%83%BC%E3%83%81 ヘイトスピーチ]</ref>、広義においては、[[職業]]、[[国民|所属国]]、[[文化]]、[[思想・良心の自由|思想]]、[[収入]]、[[学歴]]などに基づいて、属する[[個人]]または[[集団]]に対して[[攻撃]]、[[脅迫]]、[[侮辱]]する発言や言動のこととされる<ref name="dictionarycom">{{Cite web|url=http://dictionary.reference.com/browse/hate+speech |title=hate speech |publisher=Dictionary.com |accessdate=2015-04}}</ref><ref name="kotan09"/><ref name="tiezoumini"/><ref>Nockleby, John T. (2000),  “Hate Speech,” in ''Encyclopedia of the American Constitution'', ed. Leonard W. Levy and Kenneth L. Karst, vol. 3. (2nd ed.), Detroit: Macmillan Reference US, pp. 1277-1279. Cited in "Library 2.0 and the Problem of Hate Speech," by Margaret Brown-Sica and Jeffrey Beall, [http://southernlibrarianship.icaap.org/content/v09n02/brown-sica_m01.html#_edn2 ''Electronic Journal of Academic and Special Librarianship'', vol. 9 no. 2 (Summer 2008)].</ref>。
 
  
[[日本語]]では「憎悪表現」の他に「差別的憎悪表現」<ref>{{Cite news|url=http://www.asahi.com/topics/word/%E3%83%98%E3%82%A4%E3%83%88%E3%82%B9%E3%83%94%E3%83%BC%E3%83%81.html |title=ヘイトスピーチ |newspaper=[[朝日新聞]] |date=2015-07-21}}</ref>「憎悪宣伝」「差別的表現」「差別表現」<ref name="kotan09">小谷順子「[http://ir.lib.shizuoka.ac.jp/bitstream/10297/3884/1/091007001.pdf Hate Speech規制をめぐる憲法論の展開―1970年代までのアメリカにおける議論]」『静岡大学法政研究』第14巻1号 (2009)</ref><ref name="akedo">明戸隆浩「[http://www.keiho-u.ac.jp/research/asia-pacific/pdf/review_2014-03.pdf アメリカにおけるヘイトスピーチ規制論の歴史的文脈]」『アジア太平洋レビュー』第11号、[[大阪経済法科大学]],2014年</ref>「差別言論」<ref name="akedo"/>「差別扇動」{{Sfn|有田|2013|p=vi 師岡康子が提示した意訳。}}{{Sfn|安田|2015|p=85}}{{Sfn|中村|2014|p=75}}<ref>{{Cite web|url=http://www.pref.kyoto.jp/gikai/katsudo/tere/h2702-te/documents/03_heito.pdf |format=PDF |title=ヘイトスピーチ(差別扇動)被害に対する意見書 |author=京都府議会 |accessdate=2015-10}}</ref><ref>{{Cite news|url=http://www.jcp.or.jp/akahata/aik14/2015-03-02/2015030215_02_1.html |title=ヘイトスピーチ 市民対抗 「差別だめ」の声 日朝協会呼び掛け 東京・銀座 |newspaper=しんぶん赤旗 |date=2015-03-02}}</ref>「差別扇動表現(差別煽動表現)」<ref>[http://www.kansai-u.ac.jp/Fc_soc/column_professor/detail.cgi?id=20150422091443 社会学の価値] 宇城輝人 2015年04月22日</ref><ref>[http://repo.lib.ryukoku.ac.jp/jspui/bitstream/10519/6529/1/r-ho_048_01_004.pdf ヘイト -スピーチの定義] 金尚均 2015年</ref><ref>[http://aris.agu.ac.jp/aiguhp/KgApp?chosyouid=ymesgsodggy&chosyoseq=48 「日本型拝外主義」下における地方参政権問題――ヘイト・スピーチ(差別扇動表現)問題に即して] 岡崎勝彦</ref>{{Sfn|前田|2013|p=19}}{{Sfn|野間|2015|p=205 「有田芳生などが提唱している」と記述。}}<ref name="tokyo20141224">林啓太「「アイヌ」ヘイト頻発 反「差別」声上げる時」、[[東京新聞]]。2014年12月24日11版20、21面。</ref><ref>{{Cite news|title=時代の正体<78> 虚偽さえ交えた主張 |url=http://www.kanaloco.jp/article/81903 |newspaper=[[神奈川新聞]] |date=2015-03-29 |author=石橋学 |page=23面}}</ref><ref>[http://www.kanaloco.jp/article/160124 ヘイトスピーチ根絶へ学習会 川崎で市民ら150人参加] [[カナロコ]] 2016年3月18日</ref><ref>[http://www.tokyo-np.co.jp/article/kanagawa/list/201602/CK2016020102000160.html 差別から川崎守れ 市民ら500人がヘイトデモに抗議] [[東京新聞]] 2016年2月1日</ref><ref>[http://mainichi.jp/articles/20151130/ddl/k04/040/070000c 街頭で対立 在特会と差別反対市民 仙台 /宮城] [[毎日新聞]] 2015年11月30日</ref>などと訳される。
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'''ヘイトスピーチ'''({{lang-en-short|hate speech}}、'''憎悪表現'''
  
== 定義と様態 ==
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特定の個人や集団、団体などの人種、宗教、民族的な文化などを差別的な意図をもって貶(おとし)める言動。
憎悪表現が”[[地域]]の平穏を乱すことをもって規制されるべき”と議論する場合には「憎悪を煽る表現」とも呼ばれる<ref>「憲法理論III」阪本昌成(成文堂1995,P.63)</ref><ref name="kajiwara"/>。「[[:en:Fighting words|喧嘩言葉]]」{{efn|喧嘩言葉(Fighting words)は口に出すだけで治安の紊乱を煽る言論。米国のケースでは「言葉自体が侵害を与え、あるいは[[平和]]の破壊を即座に引き起こす傾向にある表現」を指し、[[合衆国最高裁判所|連邦最高裁]]の先例のなかでは「[[わいせつ]]や[[名誉毀損]]と並んで表現規制が許されるとされる表現領域」とされる{{sfn|小谷|2013}}。この解釈は1942年の[[:en:Chaplinsky v. New Hampshire]]連邦最高裁判決で確立しており、「少なくとも個人に対して発せられた中傷については表現の自由の枠外として」条例で規制することを合憲とした(明戸隆浩.2014.P.29)。一方でヘイトスピーチを含む扇動との区別は複雑で微妙であり、例えば「ユダヤ人を殺せ」などと煽り、破壊行為を生じさせた1946年の事件では、シカゴ市が起訴、100ドルの罰金刑とし、上訴裁判所、州裁判所は支持したが連邦最高裁は5対4で破棄した{{sfn|ブライシュ|2014|pp=127-128}}。}}と同様に相手方の内部に憎悪を生み出すような言論(表現)類型と考えられており、話者(表現者)の側の憎悪感情が問題とされる<ref name="kajiwara"/>。また、「憎悪と敵意に満ちた言論」<ref name="naragakuen">小林直樹「[http://www.naragakuen-u.jp/social_science/pdf/jss01_kobayashi.pdf 差別的表現の規制問題―日本・アメリカ合衆国の比較から―]」『社会科学雑誌』創刊号、2008年12月、奈良産業大学社会科学学会 87-148頁</ref>、「憎悪にもとづく発言」とも解説される<ref name="tiezoumini"/>。
 
ヘイトスピーチの対象は言論(speech)以外に表現(expression)全般に及び{{sfn|長峯|1997|p=186|loc=PDF-P.10}}、例えば宗教的象徴を[[中傷]]する[[漫画]]や動画の公開や<ref>「デンマークの風刺画事件2005年-2006年」ニルス・ヘンリック・グレーガーゼン(一神教学際研究5,2010年2月,同志社大学)[http://www.cismor.jp/jp/publication/jismor/documents/JISMOR5jp_Gregersen.pdf][http://www.cismor.jp/jp/publication/jismor/index.html]、脚注20</ref><ref>{{cite journal|和書|title=ドイツにおける信条冒涜罪正当化の試みの憲法学的一考察|author=菅沼博子|publisher=一橋大学大学院法学研究科|date=2016年11月10日|doi=10.15057/28233}}</ref>、歴史的経緯を踏まえた上で民家の庭先で[[十字架]]を焼却する行為{{sfn|榎|2006}}、[[国旗]]の焼却行為や[[反戦運動|反戦]]の腕章を身につけること、[[デモ活動|デモ行進]]、[[チラシ|ビラ]]配布行為といった非言語による意思表示形態<ref name="naragakuen"/>なども「スピーチ」に含まれるとされ、議論の対象となっている。
 
  
『[[知恵蔵|知恵蔵mini]]』([[朝日新聞出版]])の[[2013年]][[2月21日]]の版では「匿名化され、[[インターネット]]などの世界で発信されることが多い。定義は固まっていないが、主に[[人種]]、[[国籍]]、[[思想]]、[[性別]]、[[障害]]、[[職業]]、外見など、個人や集団が抱える欠点と思われるものを誹謗・中傷、貶す、差別するなどし、さらには他人をそのように扇動する発言(書き込み)のこと」を指すとされ、インターネットにおける書き込みも「スピーチ」に含むと解説している<ref name="tiezoumini"/>。また、それに続けて「ヘイトスピーチを行う目的は自分の表現を挑発的に押し付けること」にあり、あらゆる手法を用いて他者を低めようとし、表現に対する批判に「まともに耳を貸すことはない。」「憎悪、無力感、不信などを[[被害者]]に引き起こし、相互理解を深めようとする努力を無にする、不毛かつ有害な行為」と解説し、ヘイトスピーチ規制は全世界的に広がっているとした上で、規制の少ない国として[[アメリカ合衆国|アメリカ]]と[[日本]]を挙げている<ref name="tiezoumini"/>。さらに、同辞典[[2013年]][[5月13日]]更新では「憎悪に基づく差別的な言動」であり、「人種や[[宗教]]、性別、[[性的指向]]など自ら能動的に変えることが不可能な、あるいは困難な特質を理由に、特定の個人や集団をおとしめ、暴力や差別をあおるような主張をすることが特徴」と解説され、思想は除外された<ref name="tiezoumini"/>。また、[[朝日新聞]][[2013年]][[10月7日]]夕刊では「特定の人種や民族への憎しみをあおるような差別的表現」と定義され、[[在日韓国・朝鮮人]]への街頭活動が例とされた<ref name="tiezoumini"/>。また [[社会学者]]の[[ましこ・ひでのり]]はこの概念に「ヘイト」とか「憎悪」と言った表現を使うべきではないとして(心理的打撃を目的とする)「言語的リンチ」という用語を提案している<ref>「ヘイトスピーチ=暴力をあおる差別的言動」という概念の再検討──沖縄での「土人/シナ人」「日本語分かりますか」発言の含意から──、第73回多言語社会研究会(東京例会)、[[ましこ・ひでのり]]。2017年10月21日</ref>。
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英語の意味は「憎悪表現」であるが、一般的な悪口はヘイトスピーチにはあたらず、対象への明確な差別的な意図に基づく暴言や差別的行為を扇動する言動などをさす。韓国大統領李明博が竹島に上陸したことを受け、日本ではインターネットを中心に韓国を非難する発言が増加した。さらにネット上だけでなく、2013年(平成25)春には東京の新大久保や大阪の鶴橋など、韓国・朝鮮人が多く住む地域で日の丸を掲げたデモが頻繁に行われ、一部の参加者による暴言が在留韓国・朝鮮人に大きな不安を与えた。欧米では人種差別、性差別などをあおるヘイトスピーチを禁止する規制を敷いている国が多い。日本でも2013年5月の参議院予算委員会においてヘイトスピーチ問題が取り上げられ、首相安倍晋三(あべしんぞう)が懸念を表明した。しかし、ヘイトスピーチの法規制が行われると、行政や司法による発言内容の審査や処罰が行われるなど、言論の自由が圧迫される可能性もあり、現在のところ政府は立法化には慎重な態度をとっている。
  
=== 様態 ===
 
アメリカでは、1980年代後半以降、「ヘイト・スピーチ(hate speech)」という語句が一般的に用いられるようになり、2010年代に入ってから、その語や概念を輸入する形で、日本でも使用されるようになった{{sfn|小谷|2013}}。憎悪バイアスをもたらす表現形態として、[[ジェンダー]]論の立場からは、[[ポルノグラフィ#ポルノ規制論・批判運動|ポルノグラフィ規制論]]とも関係する<ref>「ヘイト・スピーチと「表現」の境界」梶原健佑(九大法学2007)</ref>。個人に対する[[嫌がらせ]]表現などは[[侮辱罪]]や[[ストーカー行為等の規制等に関する法律|ストーカー規制法]]などの対象となる。ほかに差別や偏見を動機とした暴行等の[[犯罪]]を[[ヘイトクライム]]といい、これも問題となっている<ref name="naragakuen"/>。現代アメリカ英語としてヘイトスピーチと言う時の憎悪はこのヘイトクライムを直接連想させる言葉である{{Sfn|菊池|2001|pp=159-160}}。日本の市民団体によると、[[日本のヘイトスピーチ|日本におけるヘイトスピーチ]]の対象は[[在日]]、反原発運動、広島の平和運動、生活保護など多岐にわたるとされる<ref>2013年の日本国内におけるレイシズム活動「ヘイトスピーチとレイシズムを乗り越える国際ネットワーク」[http://www.norikoenet.org/declaration 設立宣言]。同様の記事は朝日新聞2014年8月18日20時13分配信記事にもあり。{{Wayback|url=http://www.asahi.com/articles/ASG8L4RH7G8LPTIL00V.html|title=ヘイトスピーチ、在特会など提訴 在日朝鮮人女性|date=20140818123146}}</ref>。
 
 
また、ヘイトスピーチは多大な悪影響を及ぼすとして、様々な問題点が指摘されている。「互いの憎しみを煽る点」が最大の問題点であるという指摘や<ref>{{cite book |author =鈴木邦男 |authorlink =鈴木邦男 |title=「右翼」と「左翼」の謎がわかる本|publisher=PHP研究所|year=2014|pages=69}}</ref>、デモで行われると言論への責任感が希薄となって気持ちが刺激され「対象への憎悪感はさらに増幅しやすい」という指摘<ref>[http://www.sankei.com/column/news/150212/clm1502120001-n1.html 雰囲気「迎合」が言論の衰退招く 青山学院大学特任教授・猪木武徳] 産経新聞 2015.2.12 05:01</ref>、ヘイトスピーチが人種差別的な社会を構築してしまうという研究結果<ref name="kotan09"/>等があげられる。
 
 
== 喧嘩言葉 ==
 
喧嘩言葉({{lang-en-short|fighting words}})とは、挑発的に喧嘩を売る表現{{Sfn|小谷|2009|p=54}}。
 
 
=== カナダ ===
 
カナダでは[[言論の自由]]は通常[[:en:Canadian Charter of Rights and Freedoms|権利および自由に関するカナダ憲章]]第2章によって保護されているが、[[:en:Criminal Code of Canada|カナダの刑法]]319条で喧嘩言葉を含むいくつかの形態の処罰しうるヘイトスピーチを定義しこれらの自由を制限している<ref>[http://www.49thparallel.bham.ac.uk/back/issue13/brooks.htm Stephen Brooks, ''Hate Speech and the Rights Cultures of Canada and the United States'']</ref>。
 
{{quotation|公共憎悪扇動(319条)何人も公共の場の通信言辞によっていかなる識別可能な集団に対しても平和を侵害する恐れのある憎悪扇動は有罪[犯罪]とする。|カナダ刑法319条第1項}}
 
 
=== アメリカ ===
 
[[1940年]]、リーフレットと既成宗教に対する罵詈雑言で通行人から反発を受けていた[[エホバの証人]]の信者のウォルター・チャプリンスキーが、公序を乱したとして逮捕された後、警察に対し「ファシスト野郎(<span lang="en">a damned fascist</span>)」「くそチンピラ(<span lang="en">a God-damned racketeer</span>)」と罵った。こうした言論に対し、[[1942年]]、アメリカ連邦裁判所は判事9人一致で修正第一条が保護する言論の範囲を超えていると判断した{{Sfn|ブライシュ|2014|pp=120-121}}。(<span lang="en">Chaplinsky</span>判決)
 
 
{{quotation|表現の自由がいつもどのような状況でも絶対的に保障されるものではないことは、広く認識されている。禁止したり処罰したりすることがいかなる憲法上の問題も生じさせないような、明確に定義され注意深く限定された言論の種類が存在する。そうした種類の言論には、猥褻的、冒瀆的、名誉毀損的、侮辱的な言葉および、「喧嘩」言葉が含まれる。それらはまさに口に出されることによって他人の権利を侵害し、あるいは直接に治安の紊乱を煽る言論である。そうした発言は、本質的な点でいかなる思想の表明でもなく、真理へのステップとしてごくわずかな価値しか有しないので、そこからもたらされうるいかなる利益よりも、秩序と道徳における社会的利益のほうが明らかに重大であると認められてきた。 |''[[:en:s:Chaplinsky v. New Hampshire|Chaplinsky v. New Hampshire]]''|1942 明戸隆浩ら 訳{{Sfn|ブライシュ|2014|p=121}} }}
 
 
1946年、シカゴ市内で行われたデモ行進では、コーラーが「ユダヤ人を殺せ(<span lang="en">Kill the Jews.</span>)」「下品なユダヤ人(<span lang="en">Dirty kikes.</span>)」「そうだ、ユダヤ人はみな殺人者だ。我々が先に奴らを殺さねば我々が殺される(<span lang="en">Yes. the Jews are all killers, murderers, If we don't kill them first, they will kill us.)</span>」などと煽り、1000人から1500人の抗議者が叫び、破壊行為を生じさせた。この事件では、シカゴ市が起訴、100ドルの罰金刑とし、上訴裁判所、州裁判所は支持したが連邦最高裁は5対4で破棄した{{Sfn|ブライシュ|2014|pp=127-128}}。
 
 
ジョニー・ウィルソンが[[ベトナム戦争]]時、軍司令部を妨害しようとして警官に立ち退きを迫られ、「白人のくそったれめ、殺してやる(<span lang="en">White son of a bitch, I'll kill you.</span>、」)と言って罪に問われた。[[1972年]]、最高裁は、ジョージア州法は「治安紊乱を起こす恐れのある不名誉な言葉あるいは侮辱的な言葉」を対象にしておりその範囲が曖昧すぎるとして、本質的に違憲の疑いがあり、破棄されなければならないとした。これにより、喧嘩言葉は有名無実化し、公共の場での人種差別的言論は事実上保護されるようになった{{Sfn|ブライシュ|2014|pp=130-131}}。
 
 
== 論争 ==
 
===アメリカ合衆国===
 
米国では、[[アメリカ合衆国憲法修正第1条]](信教・言論・出版・集会の自由、請願権の保障)「言論または報道の自由を制限する法律、ならびに、市民が平穏に集会しまた苦情の処理を求めて政府に対し請願する権利を侵害する法律を制定してはならない」と定めており、現在言論の自由を規制する全ての法律は原則として憲法上ゆるされないとする建前をとる。思想と言論の自由を守ることと[[レイシズム]]の悪影響を押さえ込むことの価値のバランスをとることが自由民主主義にとっての基本的なジレンマである{{Sfn|ブライシュ|2014|p=15}}。また、言論の自由とのジレンマのほかに、結社の自由とのジレンマを挙げることができる{{Sfn|ブライシュ|pp=112-184}}。
 
 
「ヘイトスピーチ」とは、「人種、宗教、ジェンダーなどの要素に起因する憎悪や嫌悪(hatred)の表現」<ref>{{Cite journal|和書|author=小谷順子 |title=米国における表現の自由とヘイトスピーチ規制 : Virginia v. Black, 123 S. Ct. 1536(2003)判決を踏まえた検討 |date=2004-05-15 |publisher=日本法政学会 |journal=法政論叢 |volume=40 |number=2 |naid=110002803938 |pages=149-167, A17-A18 |ref=harv}}</ref>を指すとされるが、その定義および法律による規制については、米国内では古くから論争がある(1920年代にも問題になっている<ref name="naragakuen"/>)。
 
 
=== 言論表現の自由と規制 ===
 
==== 公共秩序に関する判例 ====
 
米国では1930年代に集団的名誉毀損法案が提出されたが、支持はほとんどなく、成立しなかった<ref name="naragakuen"/>。1940年のCantwell事件判決では、[[エホバの証人]]の信者が[[カトリック教会|カトリック教徒]]に対して攻撃的な内容のレコードを流したことが治安妨害罪に問われたが、連邦最高裁は全員一致で表現の自由によって保障されるとし、レコードを流した行為は公共の秩序にとって「明白かつ現在の危機([[明白かつ現在の危険]])を生じさせていない」と判断された<ref name="naragakuen"/>。
 
 
==== 戦時中の「ファシスト」発言判例 ====
 
[[1942年]]、[[ニューハンプシャー州]][[ロチェスター (ニューハンプシャー州)|ロチェスター]]におけるチャプリンスキー(Chaplinsky)事件では、前述と同じく[[エホバの証人]]の信者が「全ての[[宗教]]は詐欺である」という[[チラシ|ビラ]]を配布し、街路で混乱が生じた。さらに同教団の信者チャプリンスキーは、[[アメリカ合衆国の警察|警察]]の[[事情聴取]]で「[[ロチェスター (ニューハンプシャー州)|ロチェスター]]当局は[[ファシズム|ファシスト]]。ファシストの手先だ」と[[警察署長]]に面と向かって述べたため、[[逮捕]]された<ref name="naragakuen"/>。
 
 
その後、アメリカの[[合衆国最高裁判所|連邦最高裁判所(合衆国最高裁判所)]]は、「[[言論の自由]]の権利が、いかなる時を通じ、あらゆる事情のもとにおいても、絶対的であるとは限らない」「十分に定義付けされ、狭く限定されているにしても、それを禁止し処罰しても何ら[[アメリカ合衆国憲法|憲法]]上の問題を惹起させるとは決して考えられない言論が存在する」として、「発せられた言葉によって精神的傷害を生じさせ、あるいは即時的な[[治安]]妨害を引き起こす傾向のある言葉」を闘争的言辞として定義し、「わいせつ表現、侮辱的・名誉毀損的表現と同様に、憲法上の保障の埒外におかれる」とし、信者の「ファシスト」発言に有罪[[判決 (日本法)|判決]]を出した<ref name="naragakuen"/>。
 
 
==== 反戦運動家による暴言と闘争的言辞法理の衰退 ====
 
1970年には、[[ベトナム戦争]][[反戦運動|反戦運動家]]のポール・R・コーエンが、「Fuck the Draft」(徴兵くそくらえ)という上着をLA郡裁判所内で着用したため、州法415条の「不快な行為(offensive conduct)」に当たるとして逮捕され、有罪判決を受けた<ref name="naragakuen"/>。
 
 
連邦最高裁では「Fuck the Draft」という言葉について「多くの者にとって、この自由の直接的な結果は、しばしば単なる言葉の上での騒動、不和、不快な言葉として現れてくる。しかしながら、これらは…実際には開かれた討論のプロセスにより我々が達成することの出来るより広大な永続的な価値の必然的な副作用である。時々雰囲気が不協和音で満たされていると思われることは、ある意味では弱点のあらわれではなくて、長所のあらわれである」 とし、さらに「州は、公開討論を我々の間でもっとも神経質な人にとって文法上心地よいところへときれいにする権限を有していない」 「(Fuckのような)禁句は、おそらくは他の部類のものよりも好まれないけれども、しかしながらある人の下品さが別のひとの抒情詩ということがしばしば真実となるからである」 として、このような闘争的言辞を禁止し得ないと判示し、「この最高裁判決において、価値の低い不快な言葉であるとしても、言葉の不快さを理由として公開討論から排除することは、憲法上正当化されない」とする判決が出された<ref name="naragakuen"/>。
 
 
また、1971年のGooding事件では同じくベトナム戦争反戦運動家が[[警察官|警官]]に対して「Son of a bitch,殺すぞ」と侮辱的かつ攻撃的な発言を浴びせたため、ジョージア州法(コード)S26-6303にもとづき逮捕され、[[ジョージア州]]裁判所で有罪となった<ref name="naragakuen"/>。その後の連邦最高裁では、「ジョージア州法(コード)S26-6303に対して、法律は慎重に保護されない言論のみを処罰するように解釈しなければならず、保護される言論に適用されるべきではない」として、過度広汎に表現を規制することは憲法違反との判決が出された<ref name="naragakuen"/>。警官に対する罵倒が「闘争的言辞」に該当するかについては、該当しないとされ、この判例によって闘争的言辞の法理は衰退した<ref name="naragakuen"/>。
 
 
=== 憎悪表現規制条例に関する判例 ===
 
==== ネオナチ団体デモ規制に対する違憲判決 ====
 
1977年、[[イリノイ州]]スコーキー村で、[[ネオナチ]]団体NSPAが公園で集会を開こうとしたところ、公園側が保証金35万ドルを要求し、団体はこの保証金に対して抗議デモ計画のビラを配布した<ref name="naragakuen"/><ref name="kotan09"/>。これに対抗する[[ユダヤ人]]団体が対抗デモを計画し、ユダヤ系[[住民]]がネオナチ団体へのデモ差し止め命令を当局へ要求し、村ではデモ保証金、人種的憎悪を助長する文書の配布、軍事的な服を着用してのデモの禁止の3つの条例を制定した<ref name="naragakuen"/><ref name="kotan09"/>。これを不服としてネオナチ団体はアメリカ自由人権協会の支援をうけて提訴し、イリノイ州最高裁は[[ハーケンクロイツ]]の使用は[[表現の自由]]の象徴的な形態であり、[[平和]]的なデモにおける[[ハーケンクロイツ]]の使用はそれを見た人が[[暴力]]的な反応を起こしうるということを理由にすべて不可能とはされえないと判決、デモ禁止条例を憲法違反とした<ref name="naragakuen"/>。村は連邦最高裁へ上訴したが、受理されなかった<ref name="kotan09"/>。
 
 
==== イリノイ州法合憲判例 ====
 
[[アメリカ合衆国|米国]]の多くの法廷でも、ヘイトスピーチを処罰する州法の合憲性が争われたが、合憲とされた州法と、「過度に広範な規制を定める」として違憲とされた市条例とがある。
 
 
合憲とされた例として、イリノイ州刑法に関する[[1952年]]のボアルネ事件がある<ref>Beauharnais v. Illinois 343 U.S. 250(1952)</ref><ref name="kotan09"/>。この事件では、イリノイ州の集団誹謗法における、「[[人種]]・肌の色・信条、若しくは[[宗教]]を理由として、特定の[[市民]]に関する堕落・犯罪・不純若しくは道徳の欠如を描く、或いは特定の市民を侮辱・嘲笑、若しくは中傷にさらす」表現行為を処罰する規定について、連邦最高裁で合憲性が争点となった{{Sfn|ブライシュ|2014|p=123}}。
 
 
連邦最高裁の法廷意見は、同法は1917年6月29日に成立したが、イリノイ州が人種[[暴動]]にしばしば見舞われ、集団誹謗が重大な役割を果たした歴史的経緯を踏まえ、「このような歴史的事実と、人種的および宗教的[[プロパガンダ]]にしばしば伴うものを前にしたとき(中略)人種的および宗教的集団に対する悪質な名誉毀損を抑制するために、イリノイ州議会がとった手段に『正当な理由がなかった』とは言えないであろう。(言論および出版の)自由の行使には限界がある。人種的または宗教的自尊心に基づいて、誤った信念を持つに至った者の威圧的な行動が、他者の自由の行使に対する平等な権利を奪う目的で、暴力を引き起こしたり、平穏を破壊したりするであろうこの頃の危険は、すべての者によく知られている出来事によって強調される。そのように限界を超えて自由を行使した者を、州は適切なやり方で罰することができる」{{sfn|榎|2006|p=75|loc=PDF-P.7}}として、これを合憲とした{{efn|なお、このフランクファーター判事による法廷意見について、[[表現の自由]]の保障の観点から、反対意見が記述されている。詳しくは{{sfn|榎|2006|p=76|loc=PDF-P.8}}}}。
 
 
==== KKKの儀式行為と観点規制の法理 ====
 
[[クー・クラックス・クラン]]による[[十字架]]焼却の儀式はかつて[[黒人]]を[[私刑|リンチ]]し、[[迫害]]した歴史に起因する行為であり、たびたび[[裁判]]で問題となっている<ref name="kotan09"/>。
 
 
違憲とされた例として、十字架焼却を[[犯罪]]行為とした[[ミネソタ州]][[セントポール (ミネソタ州)|セントポール市]]条例の違憲性が問われたR.A.V. v. St.Paul(1992)判決がある<ref name="naragakuen"/><ref name="kotan09"/>。セントポール市条例は、「公共的または私的な財産の上に『人種・肌の色・信条・宗教・性別に基づいて、他者に怒り・不安・憤りを生ぜしめる』と知られている、またはそう知られることに理由のあるシンボルなどを設置した者を処罰する」と定めていたが、連邦最高裁は、条例は中立規制ではないと判定し<ref name="naragakuen"/>、「手段は必要不可欠なものでない、あるいは過度に広範である」として、[[権利章典 (アメリカ)|合衆国憲法修正第1条]]に違反し、条例を文面上無効とした。また連邦最高裁はこの条例が、当局によって「不快」と判断された言葉を差別的に規制する観点規制(viewpoint restriction)に該当するため、憲法違反と判定した<ref name="naragakuen"/>。さらに連邦最高裁は、ヘイトスピーチの聞き手の感情的な影響について、被差別集団に属することを理由に攻撃を受けた被害者への二次的効果であるとはいえないとし、セント・ポール市の主張を退けた<ref name="naragakuen"/>。
 
 
また、Virginia v. Black裁判(2003)では、黒人差別発言を行うKKK集会における十字架焼却について、[[ヴァージニア州]]はヴァージニア州法違反として、十字架焼却は不快であり、脅迫行為に該当し規制できると主張した{{sfn|榎|2006}}。州最高裁は州法は観点規制であり違憲と判決した<ref name="naragakuen"/>。連邦最高裁は一部合憲一部違憲として差し戻すとともに、クー・クラックス・クランは[[白人至上主義]]を擁護するが、目的達成を妨害する人であれば[[白人]]をも攻撃の対象としており、また、脅迫する故意をともなった「真の脅迫」を禁止するヴァージニア州が、特定の嫌われるトピックの一つにむけられる言論のみを非難の的として選び出していないことから連邦憲法第1修正および先例であるR.A.V.判決に反しないと結論づけ、また州法の「一応の証拠(prima facie evidence)」の規定につい ては過度広汎性を理由に文面上違憲と判断した<ref name="naragakuen"/>。オコナー判事は喧嘩言葉や「真の脅迫」は政府による規制が可能と述べた{{sfn|榎|2006}}。
 
 
この判決では表現行為そのものの規制については合衆国憲法修正第1条違反としたものの(他人を脅したり威嚇したりする)脅迫の目的で利用した場合、この行為を処罰する箇所の州法の規定は憲法違反とは言えないとした{{sfn|榎|2006}}。
 
 
=== 大学における規制と違憲判決 ===
 
==== スピーチコード ====
 
アメリカの大学ではヘイトスピーチを処罰するキャンパスコード、キャンパスポリシーを採用するところもあったが、憲法違反の判決がくだされることがほとんどである<ref name="naragakuen"/><ref>前嶋和宏「[http://dept.sophia.ac.jp/is/amecana/Journal/18-5.htm ヘイトクライム [憎悪犯罪]規制法とその問題点]」『アメリカ・カナダ研究』18: 77–96. 上智大学, 2000</ref>
 
 
キャンパスヘイトスピーチコードは1986年から1987年にかけての人種主義的な嫌がらせ事件が多発したため大学で制定されるようになったが、こうした規制について各地の大学で違憲訴訟が行われた<ref name="matsudah">松田浩「[http://hermes-ir.lib.hit-u.ac.jp/rs/bitstream/10086/5711/1/kenkyu0240100530.pdf 大学・差別・自由言論,合衆国のスピーチ・コード論争における「大学」分析]」『一橋研究』24(1): 53–78.1999.</ref>。こうした規制にはマリ・マツダ、チャールズ・ロレンスなど批判的人種理論を称する法学の学説が影響を与えた<ref name="matsudah"/>。批判的人種理論に対してはナディン・ストロッセンらが批判した<ref name="matsudah"/>。
 
 
[[ミシガン大学]]事件では、ミシガン大学の研究者が生物学の研究を「性差別的」であると制裁を受けることが危惧され、連邦裁判所判決では大学の規制が、闘争的言辞(fightingwords)、わいせつ表現、名誉投損の範囲では憲法問題も生じないが、「伝達を意図されている意見又はメッセージに不同意であることを理由に、一定の言論を禁止する効果を有する反差別政策を立てること」は大学が行ってはならないこととした。また、不快という理由だけで言論を禁止することも大学ではできないとされた<ref name="matsudah"/>。ミシガン大学の規制は過度に広汎なものであり、また 「汚名を着せる(Stigmatize)」や 「苦痛を与える (victimize)」は正確な定義ができないため、範囲の限界や保護される行為とそうでない行為との区別ができない極めて漠然なもので、デュー・プロセス条項に違反するとして憲法違反の判決が出された<ref name="matsudah"/>。
 
 
[[ウィスコンシン大学]]事件では、人種主義的な差別的な表現や行動をとった学生を懲戒できるとする学内規則について連邦裁判所判決では、この規則は闘争的言辞の法理の範囲を逸脱したもので、また過度に広汎なもので漠然としているとして憲法違反との判決が出された<ref name="matsudah"/>。
 
 
[[中央ミシガン大学|セントラルミシガン大学]]事件でも連邦裁判所判決は、大学の規制は過度に広汎なもので、また内容および観点(ビューポイント)の規制を含むもので、また「不快」であるとは主観的な言及を定義にふくむものであるため、憲法違反との判決が出された<ref name="matsudah"/>。
 
 
こうして、文言が明確なコードで規制されたとしても、主題ならびに観点差別的な規制にあたるとして憲法違反との判決が出されてきた<ref name="matsudah"/>。
 
 
== 法的な側面 ==
 
=== 国連規約 ===
 
1965年12月21日に[[国際連合総会|国連総会]]で採択された[[あらゆる形態の人種差別の撤廃に関する国際条約]](人種差別撤廃条約)は、その第4条a項において「人種的優越又は憎悪に基づく思想のあらゆる流布、人種差別の扇動、いかなる人種若しくは皮膚の色若しくは種族的出身を異にする人の集団に対するものであるかを問わずすべての暴力行為又はその行為の扇動及び人種主義に基づく活動に対する資金援助を含むいかなる援助の提供も、法律で処罰すべき犯罪であることを宣言すること」、またb項で「人種差別を助長し及び扇動する団体、及び組織的宣伝活動その他のすべての宣伝活動を、違法であるとして禁止するものとすること」と明記している<ref>[http://www.mofa.go.jp/mofaj/gaiko/jinshu/conv_j.html#1 和訳全文]、外務省「[http://www.mofa.go.jp/mofaj/gaiko/jinshu/index.html 日本と国際社会の平和と安定に向けた取組 人種差別撤廃条約]」平成25年12月24日</ref>。
 
 
また1966年に国連で採択された[[市民的及び政治的権利に関する国際規約]](国際人権B規約。[[世界人権宣言]]に強制力を付与した)では第20条第2項で、「差別、敵意又は暴力の扇動となる国民的、人種的又は宗教的憎悪の唱道は、法律で禁止する」、同規約第2条第2項では「この規約の各締約国は、立法措置その他の措置がまだとられていない場合には、この規約において認められる権利を実現するために必要な立法措置その他の措置をとるため、自国の憲法上の手続及びこの規約の規定に従って必要な行動をとることを約束する」と定める<ref>{{cite web|url=http://www.mofa.go.jp/mofaj/gaiko/kiyaku/2c_004.html|title=市民的及び政治的権利に関する国際規約(B規約)|accessdate=2016-01-11}}</ref>。
 
 
アメリカ合衆国は人種差別撤廃条約を1994年批准<ref>{{Cite web|url=http://www.mofa.go.jp/mofaj/gaiko/jinshu/table.html#section6|title=あらゆる形態の人種差別の撤廃に関する国際条約 締結国一覧|publisher=[[外務省]]|accessdate=2015-04}}</ref>。日本は[[1979年]]に国際人権B規約を批准し、また人種差別撤廃条約には[[1995年]]12月15日に[[加入]]書を寄託し、加盟国となっているが、「[[日本国憲法]]の下における『集会、結社及び表現の自由その他の権利』の保障に抵触しない限度において、これらの規定に基く義務を履行する」という[[留保]]の宣言を行なっている<ref name="naragakuen"/>。もっとも国際人権B規約が第5条で「他人の権利・自由を侵す権利自由は何人にもない」と定める。
 
 
=== 憎悪表現の各国における法的な扱い ===
 
ヨーロッパ諸国は人種差別表現(ヘイトスピーチ)の規制に対して共感的である一方{{Sfn|ブライシュ|2014|p=66}}、アメリカは人種差別的な意見に基づいた行為([[ヘイトクライム]])を規制することに積極的である{{Sfn|ブライシュ|2014|p=21}}。
 
 
;[[ヨーロッパ]]
 
ホロコーストの極小化と否定が、1970年代から1980年代にかけて急速に拡大した{{Sfn|ブライシュ|2014|p=87}}。
 
 
;ドイツ
 
[[ドイツ連邦共和国基本法]]で自分の意見を発する自由を保障する一方、「[[治安]]を妨害するような言論の濫用」を厳しく規制している。また、ナチスによる[[ホロコースト]]の経験をもつドイツでは、民族集団に対する憎悪を扇動するような行為を、刑法第130条で[[民衆扇動罪]]、180条で[[侮辱罪]]、189条で「死者の追憶に対する誹謗罪」、194条で「[[国家社会主義]]その他の暴力的恣意的支配を目的とする集団の一員による[[侮辱]]を非親告罪とする規定」が設けられている<ref name="naragakuen"/>。憲法裁判所は「ホロコーストが「偽りの真実」である以上は保護されるべき言論には含まれない」と明言している{{Sfn|ブライシュ|2014|p=96}}。フランスでは人種差別規制法が1972年に制定された<ref name="naragakuen"/>。その他の法を含め「出自あるいはエスニック集団・ネーション・人種・宗教への所属」を理由として、個人または集団に対して、中傷、名誉毀損、差別、憎悪、暴力を煽ることを禁止している{{Sfn|ブライシュ|pp=54-55}}。[[スイス]]では1994年に人種差別を禁止する刑法改正を行い、[[ハンガリー]]では刑法269条で国籍、民族、人種を理由とした憎悪の助長が禁止されている<ref name="naragakuen"/>。[[ロシア]]では1993年、憲法で差別的表現を認めないと明記した<ref name="naragakuen"/>。
 
 
;[[イギリス]]
 
1965年の人種関係法(Race Relation Act)第6条でも人種的憎悪扇動罪が犯罪とされていたが、同罪成立のためには扇動の意思の立証が必要であったため訴追も少なかった{{sfn|元山|1988|pp=98-99}}。ナショナル・フロントの集会でこれに抗議する[[アジア]]系青年が殺害された後、ブリティッシュ・ムーブメントの指導者ジョン・キングズリィ・リードが「一人殺った、次は百万人だ」「黒ん坊、アラブ野郎、まぬけ者」と演説で発言した事件についての[[裁判]]では、訴追側が人種的憎悪を扇動する意思を立証できなかったため[[無罪]]とされた{{sfn|元山|1988|pp=98-99}}。その後、1976年に公共秩序法(Public Order Act)第5A条が改正され{{sfn|元山|1988|pp=98-99}}、[[1986年]]の改正では暴動罪(第1条)、暴力的秩序紊乱罪(violent disorder、第2条)などとともに第三編第18条で人種的憎悪扇動罪が規定され、人種的憎悪とは「肌の色、[[人種]]、[[国籍]]([[市民#市民権|市民権]]を含む)、若しくは[[民族]]的又は[[国家]]的出自に照らして定義される大ブリテン内の人々の集団に敵対する憎悪」と定義された{{sfn|元山|1988|pp=60,62,101-102}}。また、人種的憎悪扇動罪を訴追するには法務長官の同意が必須であるが、歴代の長官は同意に消極的であった{{sfn|元山|1988|p=107}}。人種的憎悪扇動罪違反への罰則は、正式[[起訴]]による場合は2年以下の拘禁、又は[[罰金]]、若しくはその両方、略式の有罪[[判決 (日本法)|判決]]による場合は6か月以下の拘禁、または罰金、若しくはその両方(第27条3項目)とされる{{sfn|元山|1988|p=108|loc=PDF-P.52}}。2001年の[[アメリカ同時多発テロ事件]]を受け、[[反テロリズム犯罪と安全法]]{{仮リンク|Anti-terrorism, Crime and Security Act 2001|en|Anti-terrorism, Crime and Security Act 2001}}によって、人種的憎悪扇動罪(Racial hatred offences)は刑罰を2年から最高7年に引き上げられた<ref>Anti-terrorism, Crime and Security Act 2001. Part5 Race and Religion. 40 Racial hatred offences: penalties In section 27(3) of the Public Order Act 1986 (c. 64) (penalties for racial hatred offences) for “two years” substitute “ seven years ”.(legislation.gov.uk)[http://www.legislation.gov.uk/ukpga/2001/24]</ref>。なお本法の保護法益は公共の秩序であり、居室内や閉鎖されたグループ内での行為を制限するものではない。また[[イギリス政府]]は人種的憎悪の見解そのものの表現への処罰については認めていない{{sfn|元山|1988|pp=100-101|loc=HOME OFFICE &amp; SCOTISH OFFICE,supra note49,para,111}}。またイスラム教徒との摩擦を背景に2006年、人種的および宗教的憎悪法(Racial and Religious Hatred Act)が制定されたが、[[Mr.ビーン]]で知られる俳優の[[ローワン・アトキンソン]]らアーティストによる反対運動が展開した<ref name="naragakuen"/>。
 
 
;[[アメリカ合衆国]]
 
[[権利章典 (アメリカ)|合衆国憲法修正第1項]]では「[[アメリカ合衆国連邦政府|連邦政府]]による言論規制」を禁じており、「政府は、その思想自体が攻撃的あるいは不快であるからという理由だけで思想を禁止するべきではない」 としている<ref>Texas v. Johnson, 491 U.S. 397, 414 (1989)</ref>。[[1992年]]、アメリカ連邦最高裁は、RAV判決において、憎悪表現規制は違憲であると判断した{{Sfn|ブライシュ|138-143}}。2004年には[[全世界反ユダヤ主義監視法]]が制定された<ref>[http://2001-2009.state.gov/g/drl/rls/79640.htm Global Anti-Semitism Review Act]</ref>。
 
 
;[[カナダ]]
 
1982年に施行されたカナダ憲法で人権が保障され、表現の自由も保障されているが、法律の留保がつけられており、これはアメリカ合衆国憲法修正第一条の絶対的な表現の自由の保障とは異なる<ref name="kotanicanada">小谷順子「[http://ci.nii.ac.jp/naid/110004436702 カナダにおける表現の自由の保障と憎悪表現の禁止]」『法政論叢』42(1):145–160,2005.</ref>。[[反ユダヤ主義]]、反[[黒人]]主義、[[白人至上主義|白人優越主義]]集団が[[社会問題]]となったため1970年に憎悪表現(ヘイト・プロパガンダ)を刑法で禁止した<ref name="kotanicanada"/>。ただし、正当な言論の自由を制限しないための免責規定があり、「真実性の証明がある場合」「誠意をもって[[宗教]]上の題材に関する意見を述べた場合」「公共の利益のためになされた場合」「憎悪感情の除去を目的としていた場合」を免責条件としている{{sfn|小谷|2013}}。ほかに連邦人権法がある<ref>[http://laws-lois.justice.gc.ca/eng/acts/H-6/FullText.html Canadian Human Rights Act (R.S.C., 1985, c. H-6)]</ref>。刑法319条とカナダ憲章との整合性については1990年のKeegstra事件、また白人国家主義を唱えるカナダナショナリスト党の非[[白人]][[移民]]排除などを説いたAndrews事件訴訟で合憲との[[判決 (日本法)|判決]]が出された<ref name="kotanicanada"/>。一方、エルンスト・ツンデル事件では[[ホロコースト]]を[[ユダヤ人]]の陰謀とした内容に対する刑法181条による[[起訴]]では同条は過度に広汎であり、適切な範囲を超えた規制であるとして憲法違反との判決がだされた<ref name="kotanicanada"/>。しかし、[[2012年]]に人権法13条に制定されたヘイトスピーチ規制は撤廃された<ref>[http://news.nationalpost.com/2013/06/27/hate-speech-no-longer-part-of-canadas-human-rights-act/ Hate speech no longer part of Canada’s Human Rights Act] カナダ [[ナショナル・ポスト]]</ref>。これは2007年以降、職場での軽口まで人権委員会に訴えるケースが目立つようになったり、イスラム社会に対する一般的批評や[[ムハンマド]]の[[風刺]]画が訴えられるようになり、[[言論統制]]の危険性が顕わになったためである<ref name="newsweek20140624"/>。
 
 
;[[ラテンアメリカ]]
 
[[ジャマイカ]]や[[セントルシア]]はジェノサイドの唱道または促進を規制、[[アンティグア・バーブーダ]]は「ジェノサイドを行う共謀又は扇動」を禁止、[[ガイアナ]]は「その人権を理由に、口中の一部又は個人に対して、敵意又は悪意を故意に扇動し、又は扇動しようとした者」を規制、[[バハマ]]は「民族、国籍、人種、ジェンダー、性的志向、年齢、宗教又は心身の障害を根拠に、個人又は集団に対して憎悪または敵意を扇動しそうになること」を行政犯としている{{Sfn|前田|2013|pp=176-178}}。
 
 
;[[オーストラリア]]
 
2001年に[[ビクトリア州]]で人種的宗教的寛容法(Racial and Religious Tolerance Act 2001)<ref>[http://www.austlii.edu.au/au/legis/vic/consol_act/rarta2001265/ Racial and Religious Tolerance Act 2001]</ref>が制定され、「人種(SECT 7)や宗教(SECT 8)を理由に、人を嫌悪・憎悪・侮蔑・愚弄する行為に関わること」が禁じられた。しかし[[名古屋大学]]の[[浅川晃広]]によれば、オーストラリアで「表現の自由」への萎縮効果を問題視する空気が社会に広がっていて、反人種差別法改正が審議されており、「現行法では「差別された」と集団が不快感を訴えるだけでヘイトスピーチとされ、改正案では一般社会的に名誉毀損や脅迫に当たる表現のみが反人種差別法の対象になる」と述べた<ref name="newsweek20140624">ニューズウィーク日本版 2014年6月24日号 p32-35「反差別」という差別が暴走する</ref>。
 
 
;[[日本]]
 
[[日本国憲法第21条|憲法21条]]で[[表現の自由]]が規定されており、2015年現在、憎悪表現自体を取り締まり対象とした一般法、特別法、条例は制定されていないが、[[民法]]により[[不法行為]]が成立する場合は、このような行為を行った者に[[損害賠償]]責任が発生し<ref name="nihon_seifu_ans">[http://www.mofa.go.jp/mofaj/gaiko/jido/pdfs/0804_kj03.pdf 児童の権利に関する条約 第3回日本政府報告(日本語仮訳)]</ref>、この際、[[差別]]に該当するものは[[日本国憲法第14条|憲法14条]]及び[[人種差別撤廃条約]]の趣旨が忖度される<ref>[http://www.courts.go.jp/app/files/hanrei_jp/675/083675_hanrei.pdf 平成22年(ワ)第2655号 街頭宣伝差止め等請求事件 判決] 京都地方裁判所第2民事部 平成25年6月13日</ref>。さらに、差別行為が[[刑法|刑罰法令]]に触れる場合は、当該刑罰法令に違反した者は処罰されることとなっている<ref name="nihon_seifu_ans"/>。この他、[[刑法 (日本)|刑法]]では「特定人物や特定団体に対する」偏見に基づく差別的言動は[[侮辱罪]]や[[名誉毀損罪]]の対象であるが<ref name="kyotoshinbun">[http://www.kyoto-np.co.jp/politics/article/20131007000205 「表現の自由」割れる賛否 ヘイトスピーチ規制] 京都新聞 2013年10月7日 {{webarchive|url=https://web.archive.org/web/20131105151200/http://www.kyoto-np.co.jp/politics/article/20131007000205 |date=2013年11月5日 }}</ref>、この場合は、特定しきれない漠然とした集団([[民族]]・[[国籍]]・[[宗教]]・性的指向等)に対するものについては該当しない<ref name="kyotoshinbun"/>。
 
{{Main|日本のヘイトスピーチ}}
 
 
;[[大韓民国|韓国]]
 
2017年現在、韓国全土でヘイトスピーチを明確に取り締まる法律は存在しない<ref name="asahi-gp-korea">{{Cite web | author = 原美和子 | url = http://webronza.asahi.com/global/2014021700003.html | title = 韓国のヘイトスピーチ 根強い外国人への偏見 対日デモには冷ややかな視線も | work = WEBRONZA | publisher = [[朝日新聞社]] | date = 2014-02-22 | archiveurl = https://archive.fo/20140619120233/http://webronza.asahi.com/global/2014021700003.html | archivedate = 2014年6月19日 | accessdate = 2017-02-12 | deadurldate = 2017年9月 }}</ref>。2017年9月[[ソウル特別市|ソウル市]]は学校内において学校経営者、設立者、教員、生徒、及び学生のヘイト表現を禁止する「ソウル特別市学生人権条例一部改正案」を成立させた。違反の罰則規定はないが宗教、性別、出身地、性的志向を理由に嫌がらせ、差別行為をした場合教育当局が積極的に介入出来る<ref>[http://www.recordchina.co.jp/b172078-s0-c30.html ソウル市、教師の「チャイナ」発言きっかけに学校でのヘイト表現を条例で禁止=韓国ネット「いまさら?」「いい決断だけど、まずは…」]</ref>。
 
 
== 国連の意見表明 ==
 
これらは[[国際連合安全保障理事会|国連安保理]]による決議と違い[[法的拘束力]]はなく、[[国際機関]]としての意見表明に留まる。
 
* [[ホロコースト否認]]を非難する決議が[[2007年]]の[[国際連合総会|国連総会]]で採択されている<ref>[http://www.afpbb.com/article/politics/2173259/1276682 「ホロコーストの否定」に対する非難決議、全会一致で採択 - 米国|AFPBBニュース]。なおここでいう「全会一致」とはコンセンサス方式を指す。詳しくはリンク先記事参照</ref>。
 
* 2011年5月3日、[[国際連合]][[自由権規約人権委員会]]は、[[言論の自由]]とその限界を定めた[[市民的及び政治的権利に関する国際規約|国際人権B規約]]第19条と、差別や暴力を扇動する「[[国民]]的、人種的、宗教的憎悪の唱道」を法律で禁止することを求めた同規約第20条との関係について、「『ヘイトスピーチ』の多くが、同規約第20条の水準にそぐわないことを懸念する」、とした総括所見草案を発表した<ref>[http://www2.ohchr.org/english/bodies/hrc/docs/GC34.pdf Draft general comment No. 34]</ref>。
 
 
== 各国の現状 ==
 
<!--チープな媒体からwikipedianが個人的に発見した、些末膨大な事例を引っ張ってくるのではなく、百科事典に採録しておくべきと考えられる各国の法制や著名な事例・判例等を二次資料・三次資料から執筆してください。-->
 
=== アメリカ ===
 
{{See|アメリカ合衆国の人種差別}}
 
<!--[[2013年]][[10月16日]]、米国・[[アメリカン・ブロードキャスティング・カンパニー|ABCテレビ]]の番組「[[ジミー・キンメル・ライブ!]]」の中の企画で「子ども円卓会議」が放送されていた。この企画の中で、[[中華人民共和国|中国]]の[[米国債|アメリカ国債]]保有問題の解決法について採り上げたところ、ある白人の少年が「地球の裏側まで行って[[中国人]]を皆殺しにしよう」と発言した。司会の[[ジミー・キンメル]]は笑いながら、「面白い考えだ」と応じた。
 
 
在米中国人などからの抗議が殺到し、ABCは「社会全般の気分を害するような内容を意図的に放送することは決してない」として謝罪し、再放送の問題部分を削除した。
 
中国人団体は[[ホワイトハウス]]の[https://petitions.whitehouse.gov/ オンライン請願サイト]に、政府による調査・番組の[[打ち切り]]・正式な謝罪を求める運動を始め、署名数はサイトの規定数に達した。規定により、2014年1月に[[アメリカ合衆国連邦政府|米国政府]]は立場を明らかにした。それによれば、ABCが番組内で謝罪し再発防止策を講じ問題の放送部分を削除していることからABCの対応が十分であるとした。また、中国の平和的台頭を歓迎するという[[アメリカ合衆国大統領|大統領]]の考えを紹介した。その上で、ABCの番組を打ち切らせるべく政府が介入することを拒否し「他人の気分を害する可能性があったとしても、[[アメリカ合衆国憲法|合衆国憲法]]は[[言論の自由]]を保証しています」と説明した<ref>[http://www.afpbb.com/articles/-/3002416 米番組で子どもが「中国人皆殺し」発言、ABCテレビが謝罪] AFPBB News 2013-10-31</ref><ref>[http://www.peeep.us/73376c7b 「中国人皆殺し」発言の番組、ホワイトハウスが打ち切り強制を拒否=「言論の自由ある」―中国メディア] Record China 2014-01-13</ref>。
 
 
[[2015年]]、共和党大統領候補の[[ドナルド・トランプ]]の発言に対し、ヒスパニック系の著名な知識人67名が、「数百万の死者を出すことに繋がった異民族に対する歴史的運動を想起させる」危険なヘイトスピーチであるとして非難声明を発表した<ref>{{Cite journal|url=http://www.forbes.com/sites/doliaestevez/2015/11/04/prominent-hispanic-intellectuals-call-donald-trumps-hate-speech-dangerous/ |title=Prominent Hispanic Intellectuals Call Donald Trump's 'Hate Speech' Dangerous |author=Dolia Estevez |journal=Forbes |date=2015-11-04}}</ref>。
 
 
=== オランダ ===
 
[[自由党 (オランダ)|自由党]]の党首[[ヘルト・ウィルダース]]は、[[イスラム教]]の聖典[[クルアーン|クルアーン(コーラン)]]を「[[ファシズム]]的」と呼び、[[アドルフ・ヒトラー]]の著作『[[我が闘争]]』になぞらえて批評し扇動罪などの容疑で[[起訴]]されたが、2011年6月23日に[[無罪]][[判決 (日本法)|判決]]を受けた。ウィルダースは「言論の自由の勝利だ」と宣言し、クルアーン批判は「[[政治]]的議論の一部で[[犯罪]]ではない」としている。
 
 
=== ドイツ ===
 
2015年2月、ギリシャの新聞が、財務大臣[[ヴォルフガング・ショイブレ]]に第二次大戦時のドイツ軍服を着せた風刺画を掲載した。ギリシャの経済危機に対してドイツが強硬な姿勢を取っていることへの批判であった。これに対して、ショイブレは「あなたたちの灰を肥料にすることを検討している」と[[ホロコースト]]を想起させる発言をした<ref>[http://jp.reuters.com/article/topNews/idJPKBN0LK0K120150216 ギリシャ支援、16日の財務相会合での合意には懐疑的=独財務相] 2015-02-16 ロイター</ref>。
 
 
2015年10月、検察当局は、[[Facebook]]社に対し、ヘイトスピーチとなる書き込みの削除および取り扱い状況について、他者に対する憎悪扇動の促進に該当しないか調査を開始した<ref>{{Cite news|url=http://www.wsj.com/articles/germany-probes-complaint-alleging-facebook-facilitates-incitement-1445280328 |title=Germany Probes Complaint Alleging Facebook Facilitates Incitement to Hatred |author=Natascha Divac and
 
Ulrike Dauer |newspaper=The Wall Street Journal |date=2015-10-19 }}</ref>。同年12月、ドイツ政府は[[Facebook]]、[[Google]]、[[Twitter]]に投稿されたヘイトスピーチを24時間以内に削除することで合意したと発表、[[ロイター]]は、難民危機によって膨れ上がるネット上のヘイトスピーチに対する戦いの新たな一歩になったと報じた<ref>{{Cite news|url=http://www.reuters.com/article/us-germany-internet-idUSKBN0TY27R20151215 |title=Facebook, Google, Twitter agree to delete hate speech in 24 hours: Germany |newspaper=Reuters |date=2015-12-15}}</ref>。
 
 
=== フランス ===
 
フランス領[[ギアナ]]出身の[[司法省 (フランス)|法務大臣]][[クリスチャーヌ・トビラ]]の[[政策]]によって2001年に[[フランス]]では過去の[[奴隷制|奴隷制度]]は[[人道に対する罪]]であったと認定され、公立学校では奴隷制に関する授業が義務づけられた<ref name="france">「黒人女性大臣への差別発言が示すフランスの人権感覚」Global Press,Web Ronza,[[朝日新聞]],[[2013年]][[12月13日]]</ref>。しかし、[[右翼|右派]]の[[国民戦線 (フランス)|国民戦線]]などはこうした[[政策]]を批判し、2013年10月25日にトビラが11歳の女子に「雌猿」と野次られた事件を受けて、右派の雑誌Minuteは表紙で「[[サル|猿]]のように賢いトビラは[[バナナ]]をみつける」と掲載し、非難された<ref name="france"/>。
 
 
[[2006年]]、[[ムハンマド・イブン=アブドゥッラーフ|ムハンマド]]とされる男性に「ばかに愛されるのはつらい」と付記したイラスト、ターバンに爆弾がし込まれたイラスト、天国に向かって並ぶ自爆テロ犯をムハンマドが迎え「待て待て、もう処女はいないぞ」と呼びかけているイラストなど12点を配した「ムハンマドと原理主義者」と題した特集が組まれた{{Sfn|ブライシュ|2014|pp=70-72}}。この特集はイスラム教徒の反発を招き、[[ジャック・シラク|シラク大統領]](当時)からは「行き過ぎた挑発だ」と批判された<ref name="yomi0115">読売新聞、2015年1月15日付朝刊</ref>。ムスリム団体は宗教的な侮辱だとして提訴したが、2007年3月の1審では、風刺雑誌におけるよく練られた挑発や誇張は、社会批判や政治批判の手段となりうるものであり、一定の制約は受けるが表現の自由として守られる、ユーモアがなく、不快感や恐怖、ショックを与え、傷つけるものも認められるが、特集全体の方向性を踏まえると、過激派に限定され、ムスリム全体を不快にさせようとしたものではないとして、これを無罪とした{{Sfn|ブライシュ|2014|pp=70-72}}<ref>{{Cite web|url=http://www.maitre-eolas.fr/archive/2007/03 |title=Le jugement de l'affaire Charlie Hebdo |accessdate=2015-04}}</ref>。2008年2審も「ムスリムのごく一部に向けられたものであり、ムスリム社会全体を対象にしたものではない」として無罪となった{{Sfn|ブライシュ|2014|pp=70-72}}<ref>『ル・フィガロ』2008年3月12日</ref>。
 
 
;サルコジ大統領
 
2007年には[[共和国大統領 (フランス)|大統領]][[ニコラ・サルコジ]]が[[セネガル]]の[[植民地]]支配を認めたが謝罪はせず、「[[アフリカ]]の悲劇は、人類の歴史のなかでいまだ大きな業績を残していないことである」と述べ、2010年には[[暴動]]を起こした[[ロマ]]人に対して強硬策ととるなか、演説でヘイトスピーチ的な内容を語り、非難された<ref name="france"/>。
 
 
;エリック・ゼムール
 
[[ジャーナリスト]]の[[エリック・ゼムール]]は、「[[テレビ]]や[[ラジオ]]で「[[ポリティカル・コレクトネス|ポリティカリー・コレクトな(政治的・社会的に正しい)]]ことばかり言っている」と論議が発展しない」「[[イスラム教]]とフランス共和国法は共存できない」「[[麻薬]]の密売をする人のほとんどは[[アラブ人]]と[[黒人]]、だから彼らが[[警察]]の身体検査や身分証明検査の標的になるのは当然」「アラブ人や黒人を雇わないという[[雇用]]者側の権利を認めるべきだ」と発言し、人種差別発言として[[罰金|罰金刑]]を受けた<ref name="france"/>。
 
 
;ジョン・ガリアーノ
 
ファッションデザイナーの[[ジョン・ガリアーノ]]は、ディオール在職中の2011年、ヒトラー賛美や、[[外国人]]に対する人種差別発言を行った疑いで[[逮捕]]され、罰金刑を受け[[解雇]]された。
 
 
=== 北欧 ===
 
増加する[[ムスリム|イスラム教徒]][[移民]]との軋轢から[[2005年]]に[[デンマーク]]、[[2007年]]に[[スウェーデン]]でも[[ムハンマド風刺漫画掲載問題]]が発生し、[[イスラム世界|イスラム諸国]]と[[北ヨーロッパ|北欧]]諸国との対立が深刻化し、2010年には[[イラク]]系[[スウェーデン人]]による[[自爆テロ]]である[[2010年ストックホルム爆破事件|ストックホルム爆破事件]]が発生した。
 
-->
 
=== 日本 ===
 
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{{See|日本のヘイトスピーチ}}
 
日本では特定の民族や国籍を有する人々に対するヘイトスピーチそれ自体を禁止し処罰する法律はないが、表現行為や表現行為と同時に行われる行為が現行法による処罰の対象となることはありうる<ref>[[市川正人]]「{{PDFlink|[http://www.ritsumei.ac.jp/acd/cg/law/lex/15-2/ichikawa.pdf 表現の自由とヘイトスピーチ]}}『立命館法学』2015年2号、pp122-134、[[立命館大学]] PDF-P.5</ref>。2016年6月3日に、外国人に対する差別的言動の解消を目的とした「[[本邦外出身者に対する不当な差別的言動の解消に向けた取組の推進に関する法律]]」が施行されている<ref>{{Cite web |date= |url =http://www.shugiin.go.jp/internet/itdb_housei.nsf/html/housei/kaiji190_l.htm |title =68 本邦外出身者に対する不当な差別的言動の解消に向けた取組の推進に関する法律 |work=第190回国会 制定法律の一覧 |publisher =衆議院  |accessdate =2017-02-11  }}</ref>。
 
 
法務省は、ヘイトスピーチの典型例として、脅迫的言動・著しく侮辱する言動・地域社会から排除することを扇動する言動等の具体例を紹介している<ref name="nikkeihs">{{Cite web |date=2017-02-04 |url =http://www.nikkei.com/article/DGXLASDG04H53_U7A200C1CR8000/ |title =法務省、ヘイトスピーチの具体例を提示 |work=web刊 社会面 |publisher =[[日本経済新聞]]  |accessdate =2017-02-11 }}</ref>。
 
 
法務省は「ヘイトスピーチ、許さない」というコピーのポスターを作成し、省内の人権擁護機関による「外国人の人権を尊重しましょう」をテーマにした啓発に加え、調査で判明した実例・典型例等を整理し、「脅迫的言動、著しく侮辱する言動、地域社会から排除することを扇動する言動」などのヘイトスピーチはあってはないないとする各種啓発・広報活動等に取り組んでいくことを示している<ref>{{Cite web|url=http://www.moj.go.jp/JINKEN/jinken04_00101.html|title=外国人の人権を尊重しましょう|accessdate=2017-6-14}}</ref>。
 
 
== インターネットサイト ==
 
[[インターネット]]で[[クー・クラックス・クラン|KKK]]の元指導者が1995年に開設したサイト・ストームフロント以来、[[人種主義]]的サイトが増加し、[[ネオナチ]]のナショナル・アライアンス、元KKKの全米白人地位向上協会、[[反ユダヤ主義]]で黒人や他のマイノリティを劣った泥人形とみなすアイデンティティチャーチ運動、ザ・ワールド・チャーチ・オブ・クリエイター(WCOTC)といったサイトがアニー・カレルによって問題視された<ref name="annie">アニー・カレル、中原美香訳「[http://blhrri.org/info/book_guide/kiyou/ronbun/kiyou_0167-03.pdf サイバースペースにおける人種主義および排外主義と闘う―ヘイトスピーチに影響する法的問題および国際協力を促進する方法(上)]」『部落解放研究』167、2005年、「[http://blhrri.org/info/book_guide/kiyou/ronbun/kiyou_0168-05.pdf サイバースペースにおける人種主義および排外主義と闘う(下)]『部落解放研究』168、2006</ref>。
 
 
[[オーストラリア]]では2002年のHagan事件で「nigger」というサイト上の表現が連邦裁判所では合法とされたが、国連人種差別撤廃委員会は削除を勧告した<ref name="hujiicyber">藤井樹也「[http://www.law.seikei.ac.jp/~fujii/works/tlj-01-2007.pdf IT化時代における表現の自由と差別規制――オーストラリアにおけるサイバー・レイスィズム問題を素材に]」『筑波ロー・ジャーナル』1: 95–108.2007</ref>。また[[ドイツ]]からの[[移民]]研究者フレデリック・トーベン事件では[[ホロコースト否認]]に関する記載を削除するよう連邦裁判所は命じた<ref name="hujiicyber"/>。
 
 
[[2015年]]には、[[YouTube]]への投稿動画で[[シンガポール]]の[[リー・クアンユー]]を批判した少年が、ヘイトスピーチ規制法違反でシンガポール警察に逮捕された<ref>[http://www.theguardian.com/world/2015/mar/31/singapore-teenager-amos-yee-pang-sang-charged-critical-lee-kuan-yew-video Singapore teenager charged over critical Lee Kuan Yew video]</ref>。この事件ではシンガポール当局によるヘイトスピーチ規制法の濫用が指摘されている<ref>[http://asiancorrespondent.com/131853/critics-are-missing-the-point-problem-lies-with-hate-speech-law-amos-yee-case/ Critics miss the point, problem lies with hate speech law in Amos Yee case]</ref>。
 
 
[[2016年]]、[[Facebook]]、[[Twitter]]、[[YouTube]]([[Google]]社)、[[マイクロソフト|Microsoft]]は[[欧州委員会]]のコードに従い、[[欧州連合|EU]]圏内でのヘイトスピーチを24時間以内に削除することで合意した<ref>{{Cite news|title=Facebook and Twitter pledge to remove hate speech within 24 hours |url=http://money.cnn.com/2016/05/31/technology/hate-speech-facebook-twitter-eu/index.html |newspaper=CNN |author=Ivana Kottasova|date=2016-05-31}}</ref><ref>{{Cite news|title=Facebook, Twitter, YouTube, Microsoft back EU hate speech rules |url=http://uk.reuters.com/article/us-eu-facebook-twitter-hatecrime-idUKKCN0YM0VJ |newspaper=Reuters |author1=Julia Fioretti  |author2=Foo Yun Chee |date=2016-05-31}}</ref><ref>{{Cite news|title=Facebook, YouTube, Microsoft, Twitter Crack Down on Hate Speech |url=http://abcnews.go.com/Technology/facebook-youtube-microsoft-twitter-crack-hate-speech/story?id=39499583 |newspaper=ABC |author=Alyssa Newcomb |date=2016-05-31}}</ref>。
 
 
== 言及 ==
 
ミルドベリー大学教授のエリック・ブライシュは「反マイノリティの発言を標的にして精緻に作られた法制度が、むしろ人種的・宗教的マジョリティの支配を批判するマイノリティに適用されてしまう、というものがある。(中略)しかし、最悪のシナリオは、最も可能性の高いシナリオというわけではない。」とし{{Sfn|ブライシュ|2014|p=53-54}}、「どの程度の[[自由]]を[[人種差別|レイシスト]]に与えるべきなのか。その最終的な答えはこれである。歴史を見て、文脈と影響に注意せよ。原則を練り上げ、友人を説得し、議員に訴えよ。そして、うまくつきあっていける[[価値]]と[[バランス]]とともに歩んで行くのだ。」と結論した{{Sfn|ブライシュ|2014|p=1-352}}。
 
 
[[バード大学]]教授でジャーナリストのイアン・ブルマの意見記事としてヘイトスピーチの規制は間違っていると主張、「法律で特定の意見を禁止することが賢明だろうか。特定の意見の表明を禁じても、その意見はなくならない。水面下で表現され続け、さらに有害なものになる。中東やほかの地域でテロの社会的・政治的基盤を成すものは、外国人差別的な言論を公的に禁じただけでは、決して消えない」とした<ref>[http://toyokeizai.net/articles/-/61632 ヘイトスピーチの法的規制は間違っている 「自由」という名の下の言論統制に過ぎない]2015年2月28日 週刊東洋経済2015年2月28日号</ref>。
 
 
[[ニューヨーク大学]]ロースクール教授のジェレミー・ウォルドロンは、ヘイトスピーチを法規制する根拠は、不快感からの保護にあるのではなく、人の尊厳を傷つけられることから保護することにあるとした{{Sfn|ウォルドロン|2015|pp=124-171}}。
 
 
[[ジュディス・バトラー]]は「もしも憎悪発話がつねに前からの引用でしかないなら、その使用者はその責任をとる必要がないということなのか。(中略)あらゆる言説が引用であるという事実は、言説に対する責任を増し、強めるものだと主張したい。憎悪発話をする人は、憎悪発話をどう反復したかということに対して、また憎悪発話にふたたび活力を与えたということに対して、また憎悪と中傷の文脈をふたたび作り出したということに対して、責任がある。」と述べた{{Sfn|バトラー|2004|pp=43-44}}。<!--反復性や引用性とは、「行為遂行性を「引用する」主体を行為推遂性の起源―ただし後から作られた虚構的起源―」とする[[換喩]]であるとした上で{{Sfn|バトラー|2004|p=78}}、「もしも行為遂行性が暫定的に成功するなら、その理由は、意図が発話行為を取りしきるのに成功したからではなくて、その行為がそれに先立つ行為を反響させ、そして先行する権威的な一連の実践を反復・引用することをつうじて、権威の力を自分の中に蓄積したからにすぎない。(中略)行為遂行性が「機能する」のは、ひとえに、それを起動させている構築的な慣習に頼る限りにおいてである。この意味でどのような言葉も表明も、その力を蓄積しつつ隠蔽する歴史性がなければ行為遂行的に機能することはできない。」と論じた{{Sfn|バトラー|2004|p=81}}。-->
 
  
 
== 脚注 ==
 
== 脚注 ==
{{脚注ヘルプ}}
+
{{Reflist}}
=== 注釈 ===
 
{{notelist}}
 
=== 出典 ===
 
{{Reflist|2}}
 
 
 
== 参考文献 ==
 
*新恵里「[http://www.jcas.jp/jcas_review/JCAS_Review_03_01/JCAS_Review_03_01_009.pdf アメリカ合衆国におけるヘイトクライム法とその問題点]」『地域研究論集』3(1):75–93,2000年
 
*アニー・カレル、中原美香訳「[http://blhrri.org/info/book_guide/kiyou/ronbun/kiyou_0167-03.pdf サイバースペースにおける人種主義および排外主義と闘う―ヘイトスピーチに影響する法的問題および国際協力を促進する方法(上)]」『部落解放研究』167、2005年、「[http://blhrri.org/info/book_guide/kiyou/ronbun/kiyou_0168-05.pdf サイバースペースにおける人種主義および排外主義と闘う(下)]『部落解放研究』168、2006
 
*安西文雄, 「ヘイト・スピーチ規制と表現の自由」『立教法学』59: 1–44.2001
 
*植木淳「[http://www.lib.kobe-u.ac.jp/repository/thesis/d1/D1002297.pdf 憲法学における平等の基礎的考察]」2001、神戸大学、法博い51
 
*上村都「[http://ci.nii.ac.jp/naid/110002803533 集団に対する侮辱的表現 ドイツの憲法判例を素材に]」日本法政学会法政論叢36巻1号1999年
 
*内野正幸『差別的表現』有斐閣, 1990年
 
*{{cite journal|和書|author=榎透|url=http://www.senshu-u.ac.jp/School/horitu/publication/hogakuronshu/96/96-enoki.pdf|title=米国におけるヘイト・スピーチ規制の背景|journal=専修法学論集|year=2006|ref={{SfnRef|榎|2006}}}}
 
*榎透「[http://www.senshu-u.ac.jp/School/horitu/publication/hogakuronshu/100/enoki.pdf ステイト・アクション法理にみる国家]」専修法学論集 (100), 211-243, 2007
 
*大和田敢太「[http://www.biwako.shiga-u.ac.jp/eml/Ronso/369/owada.pdf 平等原則と差別禁止原則の交錯― オランダ平等法の示唆]」彦根論叢 第369号、2007年
 
*梶原健佑「ヘイト・スピーチと「表現」の境界」(九大法学2007-02-26)[https://qir.kyushu-u.ac.jp/dspace/bitstream/2324/11004/1/KJ00004858554.pdf]
 
*{{Cite book|和書|author=[[菊池久一]]|title=ヘイト・スピーチとは何か―<差別表現>の根本問題を考える|publisher=[[勁草書房]]|date=2001-01-25 |ref={{SfnRef|菊池|2001}} }}
 
*小谷順子, 「[http://ci.nii.ac.jp/naid/110002803535 合衆国憲法修正一条の表現の自由とヘイトスピーチ]」『日本法政学会法政論叢』, 36(1):160–169,1999.
 
*小谷順子「[http://ci.nii.ac.jp/naid/110002803938 米国における表現の自由とヘイトスピーチ規制――Virginiav, Black,123S, Ct, 1536(2003)判決を踏まえた検討]」『法政論叢』40(2): 149–167.2004
 
*小谷順子, 「[http://ci.nii.ac.jp/naid/110004436702 カナダにおける表現の自由の保障と憎悪表現の禁止]」『法政論叢』42(1):145–160,2005.
 
*{{Cite journal|和書|url= http://doi.org/10.14945/00003884 |title=Hate Speech規制をめぐる憲法論の展開 : 1970年代までのアメリカにおける議論 |journal=静岡大学法政研究 |volume=14 |number=1 |page=3-25|author=小谷順子|date=2009-09-30 |ref={{SfnRef|小谷|2009}} }}
 
*小谷順子「アメリカにおけるヘイトスピーチ規制」駒村圭吾・鈴木秀美編『表現の自由I―状況へ』(尚学社、2011)
 
*{{Cite web |url=http://synodos.jp/society/4013|title=憎悪表現(ヘイト・スピーチ)の規制の合憲性をめぐる議論|author=小谷順子|publisher=SYNODOS.Inc. (JAPAN) |accessdate=2015-08-07|date=2013年5月23日|ref={{SfnRef|小谷|2013}}}}
 
*小林直樹「[http://www.naragakuen-u.jp/social_science/pdfs/jss01_kobayashi.pdf 差別的表現の規制問題―日本・アメリカ合衆国の比較から―]」『社会科学雑誌』創刊号、2008年12月、奈良産業大学社会科学学会 87-148頁
 
*駒村圭吾・鈴木秀美編著『表現の自由I 状況へ』尚学社, 2011年
 
*鈴木尊紘「[http://www.ndl.go.jp/jp/diet/publication/legis/242/024202.pdf フランスにおける差別禁止法及び差別防止機構法制]」外国の立法 : 立法情報・翻訳・解説. (242)、国立国会図書館、2009.
 
*{{cite journal|和書|author=長峯信彦|url=http://jairo.nii.ac.jp/0069/00003529|title=人種差別的ヘイトスピーチ――表現の自由のディレンマ(1)]|journal=早稲田法学|volume=72 |issue=2|pages=177–241|year=1997|ref={{SfnRef|長峯|1997}}}}
 
*奈須祐治「[http://ci.nii.ac.jp/naid/110004033683 ヘイト・スピーチの害悪と規制の可能性(一)――アメリカの諸学説の検討]」『関西大学法学論集』53(6): 53–103.2004
 
*奈須祐治, 「[http://ci.nii.ac.jp/naid/110004033693 ヘイト・スピーチの害悪と規制の可能性(二・完)――アメリカの諸学説の検討]」『関西大学法学論集』54(2): 313–366.2004
 
*藤井樹也「[http://ir.library.osaka-u.ac.jp/dspace/handle/11094/9080 ヘイト・スピーチの規制と表現の自由―アメリカ連邦最高裁のR.A.V.判決とBlack判決]」大阪大学大学院国際公共政策研究科 『国際公共政策研究』9(2) : 1–15,2005年。
 
*藤井樹也「[http://www.law.seikei.ac.jp/~fujii/works/tlj-01-2007.pdf IT化時代における表現の自由と差別規制――オーストラリアにおけるサイバー・レイスィズム問題を素材に]」『筑波ロー・ジャーナル』1: 95–108.2007
 
*前嶋和宏「[http://dept.sophia.ac.jp/is/amecana/Journal/18-5.htm ヘイトクライム [憎悪犯罪]規制法とその問題点]」『アメリカ・カナダ研究』18: 77–96. 上智大学, 2000
 
*松田浩「[http://hermes-ir.lib.hit-u.ac.jp/rs/bitstream/10086/5711/1/kenkyu0240100530.pdf 大学・差別・自由言論,合衆国のスピーチ・コード論争における「大学」分析]」『一橋研究』24(1): 53–78.1999.
 
*{{cite journal|和書|author=元山健|title=現代イギリスにおける公共秩序法の研究|journal=早稲田法学|date=1988年12月25日|publisher=早稲田大学法学会|url=http://jairo.nii.ac.jp/0069/00003299|ref={{SfnRef|元山|1988}}}}
 
*光信一宏「[http://iyokan.lib.ehime-u.ac.jp/dspace/bitstream/iyokan/4080/1/AN00025020_2014_40_1_02.pdf フランスにおける人権差別的表現の法規制(1)]」愛媛法学会雑誌. vol.40, no.1/2, p.39-54、2014.
 
*[[師岡康子]]『ヘイト・スピーチとは何か』(岩波書店、2013)
 
*山崎公士「差別撤廃における国内人権機関の役割」『部落解放研究』167: 2–13.2005.
 
*{{Cite book|和書|date=2014-02-01|author=[[エリック・ブライシュ]]|title=[[ヘイトスピーチ 表現の自由はどこまで認められるか]]|translator=[[明戸隆浩]], [[池田和弘]], [[河村賢]], [[小宮友根]], [[鶴見太郎]], [[山本武秀]] |publisher=[[明石書店]] |isbn=978-4-7503-3959-4 |ref={{SfnRef|ブライシュ|2014}} }}
 
*{{Cite book|和書|author=[[有田芳生]]|title=ヘイトスピーチとたたかう!|date=2013-09-27|publisher=[[岩波書店]]|isbn=978-4-00-024716-0|ref={{SfnRef|有田|2013}} }}
 
*{{Cite book|和書|author=[[野間易通]] |title=「在日特権」の虚構 増補版|publisher=[[河出書房新社]] |date=2015-12-10 |isbn=978-4309246109 |ref={{Sfnref|野間|2015}} }}
 
*{{Cite book|和書|author=[[前田朗]]|title=なぜ、いまヘイト・スピーチなのか―差別、暴力、脅迫、迫害―|publisher=三一書房|date=2013-11-10|isbn=978-4-380-13009-0|ref={{SfnRef|前田|2013}} }}
 
*明戸隆浩「[http://ci.nii.ac.jp/naid/40020235257 アメリカにおけるヘイトスピーチ規制論の歴史的文脈]」アジア太平洋レビュー2014年[http://www.keiho-u.ac.jp/research/asia-pacific/pdf/review_2014-03.pdf]
 
*{{Cite book|和書|title=ヘイト・スピーチという危害 |author=ジェレミー・ウォルドロン |translator=谷澤正嗣、川岸令和 |publisher=[[みすず書房]] |date=2015-04-10 |isbn=978-4-622-07873-9 |ref={{Sfnref|ウォルドロン|2015}} }}
 
*{{Cite book|和書|title=触発する言葉 言語・権力・行為体 |author=[[ジュディス・バトラー]] |translator=[[竹村和子]] |publisher=[[岩波書店]] |date=2004-04-27 |isbn=978-4-00-023392-7 |ref={{Sfnref|バトラー2004}} }}
 
 
 
== 関連項目 ==
 
* [[差別]] - [[人種差別]]
 
* [[行動する保守]]
 
* [[ヘイトクライム]]
 
* [[社会的排除]]
 
* [[言論の自由]] - [[表現の自由]]
 
* [[ゲソ法]]
 
* [[全世界反ユダヤ主義監視法]]
 
* [[反日]] - [[反日感情]] - [[嫌韓]] - [[嫌中]] - [[反米]]
 
<!--国連人権委員会[http://daccess-ods.un.org/TMP/3265856.20641708.html]-->
 
* [[モラル・パニック]]
 
* [[日本のヘイトスピーチ|日本における事例]]
 
 
 
== 外部リンク ==
 
<!--ヘイトスピーチに関連があり、特に有用な情報のみ追加してください。-->
 
*[http://www.mofa.go.jp/mofaj/gaiko/jinshu/conv_j.html 人種差別撤廃条約](外務省)
 
*[http://www.mofa.go.jp/mofaj/gaiko/kiyaku/2c_004.html 市民的及び政治的権利に関する国際規約 第三部](同上)
 
  
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[http://webronza.asahi.com/synodos/2013072300004.html ヘイト・スピーチ規制論について――言論の自由と反人種主義との相克 桧垣伸次] シノドス・ジャーナルSYNODOS JOURNAL、2013年7月24日
 
[http://webronza.asahi.com/synodos/2013072300004.html ヘイト・スピーチ規制論について――言論の自由と反人種主義との相克 桧垣伸次] シノドス・ジャーナル 2013年7月24日
 
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2018/9/28/ (金) 06:47時点における版

ヘイトスピーチ: hate speech憎悪表現

特定の個人や集団、団体などの人種、宗教、民族的な文化などを差別的な意図をもって貶(おとし)める言動。

英語の意味は「憎悪表現」であるが、一般的な悪口はヘイトスピーチにはあたらず、対象への明確な差別的な意図に基づく暴言や差別的行為を扇動する言動などをさす。韓国大統領李明博が竹島に上陸したことを受け、日本ではインターネットを中心に韓国を非難する発言が増加した。さらにネット上だけでなく、2013年(平成25)春には東京の新大久保や大阪の鶴橋など、韓国・朝鮮人が多く住む地域で日の丸を掲げたデモが頻繁に行われ、一部の参加者による暴言が在留韓国・朝鮮人に大きな不安を与えた。欧米では人種差別、性差別などをあおるヘイトスピーチを禁止する規制を敷いている国が多い。日本でも2013年5月の参議院予算委員会においてヘイトスピーチ問題が取り上げられ、首相安倍晋三(あべしんぞう)が懸念を表明した。しかし、ヘイトスピーチの法規制が行われると、行政や司法による発言内容の審査や処罰が行われるなど、言論の自由が圧迫される可能性もあり、現在のところ政府は立法化には慎重な態度をとっている。


脚注






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