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|国際化=2012年5月|領域=日本
 
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| Name = 自閉症<br>Autism
 
| Name = 自閉症<br>Autism
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[[File:Autism Spectrum Disorder.svg|thumb|400px|right|[[自閉症スペクトラム障害]]図{{Sfn|サイモン・バロン=コーエン|2011|loc=Chapt.2}}]]
 
従来からの呼称である'''自閉症'''(じへいしょう、{{lang-en|''Autism''}})、DSM-IVにおける診断名の'''自閉性障害'''(Autistic Disorder)は、[[人間関係|社会性の障害]]や他者とのコミュニケーション能力に障害・困難が生じたり、こだわりが強いといった特徴を持ち、多くが[[精神遅滞]]を伴う。先天性の要因が大きい。典型的には明白な状態。'''早期幼児自閉症'''、'''小児自閉症'''、'''カナー自閉症'''と呼ばれることもある。
 
 
DSM-IVでは[[広汎性発達障害]](PDD)の分類で、単に「自閉症」と称することが多いもので、従来型自閉症とか古典的自閉症と呼ばれる{{Sfn|サイモン・バロン=コーエン|2011|pp=21-22}}。この分類の中で別の概念を紹介すると、幼少期に発症したものは[[小児期崩壊性障害]]とされ、もう少し症状が軽い状態では[[アスペルガー症候群]]が含まれている。<!--早期幼児自閉症や小児自閉症またはカナー自閉症と呼ばれることもある。-->
 
 
<!-- Treatment -->
 
治療法は存在しないが<ref name="CCD">{{cite journal |author = Myers SM, Johnson CP |title = Management of children with autism spectrum disorders |journal = Pediatrics |volume = 120 |issue = 5 |pages = 1162–82 |year = 2007 |pmid = 17967921 |doi = 10.1542/peds.2007-2362 }}</ref>、回復した児童のケースが報告されてはいる<ref name="Helt">{{cite journal |author = Helt M, Kelley E, Kinsbourne M, Pandey J, Boorstein H, Herbert M, Fein D |title = Can children with autism recover? if so, how? |journal = Neuropsychol Rev |volume = 18 |issue = 4 |pages = 339–66 |year = 2008 |pmid = 19009353 |doi = 10.1007/s11065-008-9075-9 |author. =  |title. =  }}</ref>。早期の会話・行動介入は、自閉症を持つ児童の[[セルフケア]]や社会的・コミュニケーションスキルの助けとなるであろう<ref name=CCD/>。自閉症の児童は成人に達したのち、独立して生活することに成功しているケースは多くないが、しかしIQが70以上では一部ではうまくやることができる例も増加する<ref name="Howlin">{{cite journal |author = Howlin P, Goode S, Hutton J, Rutter M |title = Adult outcome for children with autism |journal = J Child Psychol Psychiatry |volume = 45 |issue = 2 |pages = 212–29 |year = 2004 |doi = 10.1111/j.1469-7610.2004.00215.x |pmid = 14982237}}</ref>。カナータイプ、典型的自閉症はその多くが要介護で自立できるのはごくわずかである。自閉症における社会的文化が存在し、一部の人々はケアを求めるべきだとしているが、一方で自閉症は個性と受け止めるべきであり障害として治療すべきではないと主張している人々もいる<ref name="Silverman">{{cite journal |journal=Biosocieties |year=2008 |volume=3 |issue=3 |pages=325–41 |title=Fieldwork on another planet: social science perspectives on the autism spectrum |author = Silverman C |doi=10.1017/S1745855208006236 }}</ref>。
 
 
<!-- Epidemiology -->
 
世界的には自閉症を持つ人は2,170万人ほど(2013年)<ref name="Collab">{{cite journal |author = Global Burden of Disease Study 2013 Collaborators |title=Global, regional, and national incidence, prevalence, and years lived with disability for 301 acute and chronic diseases and injuries in 188 countries, 1990–2013: a systematic analysis for the Global Burden of Disease Study 2013.|journal=Lancet|year = 2015|pmid=26063472 |doi=10.1016/S0140-6736(15)60692-4}}</ref>。世界において、1000人あたり約1〜2人が自閉症を持っているとされ、また男子には女子の5倍以上多い。
 
 
{{TOC limit|3}}
 
 
== 定義 ==
 
{{See also|精神障害#定義}}
 
自閉症の基本的特徴は、3歳位までに表れる。以下の3つを主な特徴とする行動的症候群である。
 
#[[社会的相互作用|対人相互反応]]の質的な障害
 
#意思伝達の著しい異常またはその発達の障害
 
#活動と興味の範囲の著しい限局性
 
 
[[世界保健機関]]によるICD-10では、[[広汎性発達障害]] (pervasive developmental disorders, PDD) に位置づけられている。[[アメリカ精神医学会]]によるDSM-IVでは同様にPDDに位置づけられていたが、その後の[[DSM-5]]では[[神経発達症群]]のひとつで[[自閉症スペクトラム障害]]のサブタイプとされる<ref name="Kaplan">{{Cite |和書| |author=B.J.Kaplan |author2=V.A.Sadock |title=カプラン臨床精神医学テキスト DSM-5診断基準の臨床への展開 |edition=3 |publisher=メディカルサイエンスインターナショナル |date=2016-05-31 |isbn=978-4895928526 |at=Chapt.6}}</ref>。
 
 
[[2008年]]3月までは、[[学校教育法]]上、[[情緒障害]]に包括されていた。同年4月以降は、「自閉症・情緒障害特別支援学級」と変更されている。
 
 
1980年のDSM-IVに、[[広汎性発達障害]]にアスペルガー障害が追加されたことによって、自閉症の概念の中に、より正常な場合と区別のつきにくい状態が含まれ変化が起きた。これらはDSM-5によって、[[自閉症スペクトラム障害]]の診断名の元に包括的となったため、広義に自閉症と言う時の範囲は広くなった。
 
 
本項では、狭義のDSM-IVにおける自閉性障害を扱い、広義については[[自閉症スペクトラム障害]]を参照。
 
 
== 症状 ==
 
{{出典の明記|section=1|date=2014年12月}}
 
言語の発達の遅れ、対人面での感情的な交流の困難さ、あるいは全くの無関心、反復的な行動を繰り返す、行動様式や興味の対象が極端に狭い、常同的に奇声を発する、手をひらひら動かす、極度の自己中心的思考になる、物を列や幾何学的に整然と配置する、被害妄想を持つ、ストレスによる他害行為などの様々な特徴がある。
 
 
なお、自閉症の症状は人によってかなり異なり、以上の特徴が当てはまらない場合もある。
 
 
長期に渡り[[社会的相互作用]]に障害を抱えている{{Sfn|英国国立医療技術評価機構|2012|Chapt.1.2.2}}。社会的コミュニケーションの不可能状態が続いている{{Sfn|英国国立医療技術評価機構|2012|Chapt.1.2.2}}。
 
 
=== DSMの診断基準 ===
 
[[精神障害の診断と統計マニュアル|DSM]]{{どれ|date=2018年4月}}の診断基準に挙げられている症状は次の通り。
 
* コミュニケーションにおける質的な障害
 
** 視線の相対・顔の表情・体の姿勢・身振り等、非言語行動がうまく使えない。
 
**:例:会話をしていても目線が合わない。叱られているのに、笑っている。
 
** 発達の水準にふさわしい仲間関係が作れない。
 
** 興味のあるものを見せたり指さしたりする等、楽しみ・興味・成果を他人と自発的に共有しようとしない。
 
** 対人的または情緒的な相互性に欠ける。
 
**:例:初対面の人に対する無関心。
 
* 意思伝達の質的な障害
 
** 話し言葉の発達に遅れがある。または全く話し言葉がない。
 
**:例:クレーン現象<ref group="注釈">何かして欲しいことがあった場合に、そのことを直接言葉では伝えず(伝えられず)、近くの人の手を引っ張って対象物の所まで連れていく行動。</ref>
 
** 言語能力があっても、他人と会話をし続けることが難しい。
 
**:例:一問一答の会話になってしまう。長文で会話ができない。
 
** 同じ言葉をいつも繰り返し発したり、独特な言葉を発する。
 
**:例:人と会話をする際に同じ返事や会話を何度もする。
 
** 発達の水準にふさわしい、変化に富んだ『ごっこ遊び』や社会性を持った『物まね遊び』ができない。
 
* 限定され、いつも同じような形で繰り返される行動・興味・活動(いわゆる「こだわり」)
 
** 非常に強く、常に繰り返される決められた形の一つ(もしくはいくつか)の興味にだけ熱中する。
 
**:例:特定の物、行動などに対する強い執着心。
 
** 特定の機能的でない習慣・儀式にかたくなにこだわる。
 
**:例:物を規則正しく並べる行動<ref group="注釈">「規則」といってもあくまで本人の基準による「規則」の場合があり、健常者から見た場合、乱雑であったり、規則性がないように見えることもある。</ref>。
 
**:例:水道の蛇口を何度も開け閉めする行動。
 
** 常同的で反復的な衒奇(げんき)的運動物体の一部に持続的に熱中する。
 
**:例:おもちゃや本物の自動車の車輪・理髪店の回転塔・換気扇など、回転するものへの強い興味。
 
**:例:手をヒラヒラする。体を前後に揺らす(ロッキング)。
 
 
===繰り返し行動===
 
[[File:Autistic-sweetiepie-boy-with-ducksinarow.jpg|thumb|right|玩具を一直線に並べた自閉症児]]
 
自閉症者は様々な繰り返し行動、限定的行動を持っており、反復的行動尺度修正版(Repetitive Behavior Scale-Revised ,RBS-R)によるカテゴライズには以下がある<ref name="Lam-Aman">{{cite journal |authors = Lam KS, Aman MG |title = The Repetitive Behavior Scale-Revised: independent validation in individuals with autism spectrum disorders |journal = J Autism Dev Disord |volume = 37 |issue = 5 |pages = 855-66 |year = 2007 |pmid = 17048092 |doi = 10.1007/s10803-006-0213-z }}</ref>。
 
 
* '''[[常同症]]'''({{en|''Stereotypy''}})。手を叩く、首振り、体振りなどの反復運動。
 
* '''[[強迫性障害|強迫行為]]'''。モノの並び・積み上げがルールで一意であることにこだわるなど。
 
* '''同一性'''。変化に対する抵抗。たとえば家具を動かすことに抵抗・拒否する。
 
* '''儀式的行動'''。特定の機能的でない習慣や儀式。日常生活における不変パターン。たとえばメニューや服が決まっている。盛られたご飯を2つに分割して食べる。
 
* '''限定された行動'''。方向性・興味・活動について、たとえば単一のテレビ番組、玩具、ゲームなどに没頭する。
 
* '''自傷'''。目潰し、肌引っ掻き、手を噛む、ヘッドバンギングなどの傷つけるような行為<ref name="Johnson">{{vcite2 journal |author = Johnson CP, Myers SM |title = Identification and evaluation of children with autism spectrum disorders |journal = Pediatrics |volume = 120 |issue = 5 |pages = 1183–215 |year = 2007 |pmid = 17967920 |doi = 10.1542/peds.2007-2361 |url = http://pediatrics.aappublications.org/cgi/content/full/120/5/1183 |archiveurl = http://web.archive.org/web/20090208013449/http://pediatrics.aappublications.org:80/cgi/content/full/120/5/1183 |archivedate = 2009-02-08 }}</ref>。
 
 
=== その他の特徴 ===
 
* 数字や風景など、特定のものに対する高い記憶能力。
 
* 音、光、におい、触覚に対する強い不快感(感覚過敏)。
 
* カナーの10人に一人の割合で、カレンダーも見ずに過去・未来の特定の日の曜日を瞬時に答えるカレンダー計算の能力が現れる。驚異的な記憶力を有する場合もある([[サヴァン症候群]])。
 
 
=== 視覚の優位性 ===
 
自閉症児者は、耳で聞くよりも眼で見るほうが認識しやすいという視覚優位の特性がある。このため、自閉症児に注意を与える時は紙などに書いて見せると効果があるとされる<ref>門 眞一郎{{PDFlink|「[http://www.interq.or.jp/japan/aschiba/autism_is_autism.pdf 自閉症の人の理解(認知)の特徴(視覚的構造化の理論的根拠)]」}}『自閉症は自閉症』2002年、4-5ページ</ref>。
 
 
=== 心の理論 ===
 
[[心の理論]]とは、「自己と他者の識別、自分や他者の心の動きを推測する能力」のことであり、自閉症者はこの「心の理論」において障害があるため、相互の人間関係に疎い、会話やその場の雰囲気を理解できない、冗談を冗談と受け止めず真に受けてしまう、言外の意味を捉えられないなど、対人関係に問題を生じやすい。
 
 
これは知的障害がない高機能自閉症においてもあてはまり、やはり対人関係に問題を生じるケースがある。
 
 
また、他人のすることを自分の立場に置き換えられずにそのまま真似するため、手のひらを自分側に向けてバイバイする。言語においても同様に相手の言葉を自分に置き換えて返答することが苦手で自分のことを「あなた」などの二人称で、相手のことを「わたし」などの一人称で呼んだりすることや、自分に対して「〜してあげようか」と聞かれると「〜してあげたい」等と返答したり、オウム返しなどの現象が見られる。
 
 
心の理論の能力を調べる検査として、「[[心の理論#誤信念課題|サリーとアン課題]]」などがある。
 
 
=== 時間の概念形成の未発達 ===
 
他の例として、時間の「概念」が希薄な場合もある。時計で時間が分かるような自閉症児者のなかには、時間に強迫的になり、全ての事柄がまさにその定められていた瞬間に起こることを要求する例が見られる。
 
:例:「5分待っていて」と約束したとき
 
:*少し遅れただけでも、6分17秒も待たせたと被害感をもつ。
 
:*4分20秒で戻れば、まだ5分たっていないと言って待ち続ける。
 
このような症状がある場合でも施設が利用できるよう、[[ウォルト・ディズニー・ワールド・リゾート]]では、提示すると待ち時間をゼロにする[[ゲストアシスタンスカード|ホワイトカード]]と呼ばれるサービスがある。このように、比較的認知された症状である。
 
 
=== 日常生活における困難 ===
 
当事者が普段の生活で気になったり困ったりする事項として、次のようなことが挙げられる。
 
 
* 同一性が保持されない。
 
*:例:本棚の本が巻数ごとにきちんと並んでいない(一見乱雑でも、本人のこだわりとして寸分違わず配置していることもある)。
 
*:例:同じ時間にくる電車・バスでも、形式、塗色、内装などが異なる(細部であっても許容できない場合もある)。
 
* 未経験、予想外の状況、急な予定変更(特に本人にとって不都合な事態が生じた場合)。
 
*:例:学校などで行事のため、普段と日課が変わってしまった。
 
*:例:楽しみにしていた行事が、突然中止になった。
 
*:例:気に入っていたおもちゃなどが、紛失・破損してしまった。
 
* 本人のこだわりが、内的要因、外的要因を問わず、できなくなってしまう。
 
*:例:周囲の人が本人のこだわりによる行為と理解しておらず、その行為をやめさせてしまう。
 
 
同一性のなさや、先の見通しが立たないこと、自分のやりたいこと(特にこだわり)が実現できないことに対して、非常に不安やストレスを感じる場合が多く、そういったことに対するストレス耐性は強くない人が多い。{{要出典|date=2013年3月}}
 
 
ストレスが過度に高まった状態で、さらにストレスを増加させる事態(普段は本人も気にしないような日常の些細な出来事でも)に遭遇すると、それをきっかけに突然奇声を上げるなどの「[[パニック]]」を起こしたり、[[自傷行為]]や他害行為を行うこともある。ストレスの原因が取り除かれるか、またはパニック行為が終わった後は、普段の状態に戻るが、情緒の不安定さはしばらく続くこともある。
 
 
しかし、事前に連絡を受けていたり、詳しい内容を把握できていれば、たいていのことは納得して受け入れることが多い。
 
 
== 原因 ==
 
{{quote box|
 
'''自閉症[[有病率]]の増加要素'''{{Sfn|英国国立医療技術評価機構|2011|loc=Chapt.1.3.3}}
 
* 兄弟の自閉症者
 
* 中枢神経系の奇形・機能不全に関連する先天性欠損症(脳性麻痺を含む)
 
* 在胎週数が35未満週間
 
* 親の[[精神病]](統合失調症のような)、または情動障害
 
* 妊娠中の[[バルプロ酸ナトリウム]]の使用
 
* [[知的障害]]
 
* 新生児脳症、てんかん性脳症(乳児痙攣を含む)
 
* ダウン症候群などの染色体障害
 
* [[脆弱X症候群]]などの遺伝性疾患
 
* [[筋ジストロフィー]]
 
* [[神経線維腫症]]
 
* 結節硬化症
 
}}
 
 
現在では先天的な要因が大きいとされており、多くの遺伝的因子が関与すると考えられている。双子研究によると、[[遺伝率]]は自閉症で0.7、自閉症スペクトラム(ASD)で0.9であり、自閉症児の兄弟は一般の集団よりも約25倍自閉症になりやすい<ref name="Geschwind-2009">{{cite journal | vauthors = Geschwind DH | title = Advances in autism | journal = Annu Rev Med | volume = 60 | pages = 367–80 | year = 2009 | pmid = 19630577 | pmc = 3645857 | doi = 10.1146/annurev.med.60.053107.121225 }}</ref>。しかし、自閉症リスクを増加させる変異のほとんどは同定されていない。
 
 
=== 父親の高齢との関連 ===
 
なお近年の米国の研究で、父親が中高年のときに授かった子供である場合に新生児が自閉症になりやすいという知見がある。同研究によると、父親が40歳以上の新生児は、自閉症や関連の症例が30歳未満の父親の場合の約6倍で、30〜39歳の父親と比較すると1.5倍以上であったとされている。一方、母親については、年齢が高い場合でも多少の影響を及ぼす可能性は排除できないものの、子供の自閉症に与える有意な影響は認められなかった<ref>{{cite journal |author=Reichenberg A, Gross R et al. |title=Advancing paternal age and autism. |journal=Arch Gen Psychiatry. |volume=63 |issue=9 |pages=1026-1032 |year=2006 |id=PMID 16953005}}</ref>。これらの研究では、得られた知見が社会的に晩婚になる男性の遺伝子特性であるのか、遺伝的個人差を問わず加齢が精子に及ぼした影響であるのかは、明らかにされていない。
 
 
=== 薬物との関連 ===
 
[[バルプロ酸ナトリウム]]<small>(VPA)</small>を妊娠中に使用することは、母体の[[てんかん]]を考慮しても、子孫が自閉症や自閉症スペクトラムになるリスクを増加させる<ref name="pmid23613074">{{cite journal |author=Christensen J, ''et al''. |title=Prenatal valproate exposure and risk of autism spectrum disorders and childhood autism. |journal=[[JAMA]]. |volume=309 |issue=16 |pages=1696-703 |date=2013-4-24 |url=https://jama.jamanetwork.com/article.aspx?articleid=1681408 |doi=10.1001/jama.2013.2270 |pmc=4511955 |pmid=23613074}}</ref><ref name="pmid23613078">{{cite journal |author=Meador KJ, Loring DW. |title=Risks of in utero exposure to valproate. |journal=[[JAMA]]. |volume=17 |issue=3 |page=84 |date=2013-4-24 |url=https://jama.jamanetwork.com/article.aspx?articleid=1681385 |doi=10.1001/jama.2013.4001 |nihms=473691 |pmc=3685023 |pmid=23613078}}</ref><ref name="pmid23973243">{{cite journal |author=Meador KJ, Loring DW. |title=Prenatal valproate exposure is associated with autism spectrum disorder and childhood autism. |journal=The Journal of pediatrics. |volume=163 |issue=3 |page=924 |date=2013-9 |url=https://linkinghub.elsevier.com/retrieve/pii/S0022-3476(13)00809-3 |doi=10.1016/j.jpeds.2013.06.050 |pmid=23973243}}</ref><ref name="pmid23999195">{{cite journal |author=Wood A. |title=Prenatal exposure to sodium valproate is associated with increased risk of childhood autism and autistic spectrum disorder. |journal=[[:en:Evidence-Based Nursing (journal)|Evidence-Based Nursing]]. |volume=17 |issue=3 |pages=84 |date=2014-7 |url=http://ebn.bmj.com/content/17/3/84.long |pmid=23999195 |doi=10.1136/eb-2013-101422}}</ref><ref name="pmid24026277">{{cite journal |author=Singh S. |title=Valproate use during pregnancy was linked to autism spectrum disorder and childhood autism in offspring. |journal=[[アナルズ・オブ・インターナル・メディシン]]. |volume=159 |issue=4 |page=JC13 |date=2013-8-20 |url=https://annals.org/article.aspx?articleid=1726872 |doi=10.7326/0003-4819-159-4-201308200-02013 |pmid=24026277}}</ref><ref name="pmid24692263">{{cite journal |author=Smith V, Brown N. |title=Prenatal valproate exposure and risk of autism spectrum disorders and childhood autism. |journal=[[:en:Archives_of_Disease_in_Childhood#Education_and_Practice|Education and Practice]]. Education and practice edition. |volume=99 |issue=5 |page=198 |date=2014-10 |url=http://ep.bmj.com/content/99/5/198.long |doi=10.1136/archdischild-2013-305636 |pmid=24692263}}</ref>。[[抗うつ薬]]、特に[[SSRI]]を妊娠中に使用することは、母体の[[うつ病]]を考慮しても、子供が自閉症スペクトラムになるリスクを増大させる<ref name="pmid26660917">{{cite journal |author=Boukhris T, ''et al''. |title=Antidepressant Use During Pregnancy and the Risk of Autism Spectrum Disorder in Children. |journal=[[:en:JAMA Pediatrics]]. |volume=170 |issue=2 |pages=117-24 |date=2016-2-1 |url=http://archpedi.jamanetwork.com/article.aspx?articleid=2476187 |doi=10.1001/jamapediatrics.2015.3356 |pmid=26660917}}</ref>。
 
 
非吸収性抗生物質の投与が、幼児自閉症の発症と増悪に関連があるのではないかという仮説が立てられ、仮設が実証されている。腸内細菌または腸内細菌由来の物質が腸管バリアや血液脳関門を通過して自閉症の病態に影響を与えている可能性が考えられている<ref name="asahi2016">特集 腸内細菌 up to gate 2016 p12-23 ASAHI Medical 3 2016</ref>。
 
 
====基礎研究====
 
胎児期に[[バルプロ酸ナトリウム]]<small>(VPA)</small>曝露した第一世代<small>(F1)</small>マウスは、自閉症様の障害を示す。「雄のF1マウス」と「雌の自然マウス」を[[交配]]させ、第二世代<small>(F2)</small>マウスを生産する。同様に、「雄のF2マウス」と「雌の自然マウス」を交配させ、第三世代<small>(F3)</small>マウスを生産する。マウスにおける自閉症様の障害は、F2とF3に認められる。身体的な[[催奇性]]は、F1マウスのみに認められ、F2以降の世代には認められない<ref name="pmid27819277">{{cite journal |authors=Chang Soon Choi, ''et al''. |title=The transgenerational inheritance of autism-like phenotypes in mice exposed to valproic acid during pregnancy. |journal=[[:en:Scientific Reports]]. ([[:en:Nature Publishing Group]]). |volume=6 |issue= |page=36250 |date=2016-11-7 |url=http://www.nature.com/articles/srep36250 |doi=10.1038/srep36250 |pmc=5098241 |pmid=27819277}}</ref>。
 
 
=== ミクログリア仮説 ===
 
; 幼少期の一過性の脳体積増加
 
: [[東京大学#大学院|東京大学大学院]]の研究では、自閉症スペクトラム者に特徴的な幼少期の一過性の脳体積増加が[[ニューロン]]以外の[[グリア細胞]]などの組織増加であることが間接的に示された。脳体積が正常化する成人期にかけては定型発達者と変わらないレベルになることも示された。幼少期にグリア細胞の一過性増加を引き起こす炎症の様な反応が自閉症の原因に関わることを支持している。出生直後の脳体積は健常群よりも小さかった<ref name="jst_yamasue_2012">{{cite web |title=自閉症の病態解明につながる成果 —世界初  自閉症に特徴的な脳体積変化と同時期に起こる化学的変化を同定— |url=http://www.sss.jst.go.jp/topics/pdf/TPronbundaijyesuto_yamasue.pdf |format=pdf |publisher=[[科学技術振興機構]]. (JST). |year=2012 |accessdate=2016-8-3}}</ref>。
 
 
=== 内因性カンナビノイド仮説 ===
 
出生前の[[バルプロ酸ナトリウム]]曝露が脳内の[[カンナビノイド#内因性カンナビノイド|内因性カンナビノイド]]系の変化に関連していた。[[カンナビノイド|カンナビノイド<sub>1</sub>受容体]]の変化や[[アナンダミド]]活性の異常など、内因性カンナビノイドの機能不全がASD行動の原因とする仮説を支持している<ref name="pmid27676443">{{cite journal |author=Servadio M, ''et al''. |title=Targeting anandamide metabolism rescues core and associated autistic-like symptoms in rats prenatally exposed to valproic acid. |journal=[[:en:Translational Psychiatry]]. ([[:en:Nature Publishing Group]]). |date=2016-9-27 |volume=6 |issue=9 |page=e902 |url=http://www.nature.com/tp/journal/v6/n9/full/tp2016182a.html |doi=10.1038/tp.2016.182 |pmc=5048215 |pmid=27676443}}</ref><ref name="pmid23643692">{{cite journal |author=Kerr DM, ''et al''. |title=Alterations in the endocannabinoid system in the rat valproic acid model of autism. |journal=[[:en:Behavioural Brain Research]]. |date=2013-7-5 |volume=249 |issue= |pages=124-32| url=http://www.sciencedirect.com/science/article/pii/S0166432813002519 |doi=10.1016/j.bbr.2013.04.043 |pmid=23643692}}</ref>。
 
 
=== 腸内細菌仮説 ===
 
自閉症児と健康児の[[腸内細菌]]を比較すると[[クロストリジウム属]]の細菌が平均して10倍程度多い状況が報告されている。乳幼児時に多種多量の[[抗生物質]]を投与され腸内細菌の組成が破壊され、クロストリジウム属の増殖とともに自閉症に至った例が紹介されている。幼い脳にダメージを与えるクロストリジウム属の神経毒素が原因であると指摘している<ref name=アランナ>アランナ・コリン著、矢野真千子訳『あなたの体は9割が細菌』 p111ほか、2016年8月30日、河出書房新社、ISBN 978-4-309-25352-7</ref>。
 
 
病原性クロストリジウム属菌は、{{Harv|Shaw|2010}}によって、自閉症をもつ小児の尿より本属が作り出す物質3-(3-ヒドロキシフェニル)-3-ヒドロキシプロパン酸(略称:HPHPA) が高濃度で検出される報告がなされ、カビ毒の向神経作用が注目された<ref>{{Cite journal|first=William |last=Shaw |date=2010-06 |title=Increased urinary excretion of a 3-(3-hydroxyphenyl)-3-hydroxypropionic acid (HPHPA), an abnormal phenylalanine metabolite of Clostridia spp. in the gastrointestinal tract, in urine samples from patients with autism and schizophrenia |journal=Nutritional Neuroscience |volume=13 |issue=3 |pages=135-43 |publisher=Maney Publishing |doi=10.1179/147683010X12611460763968 |pmid=20423563 |ref=harv }}
 
</ref>。
 
 
[[フィンランド]]の調査で、[[腸内フローラ]]が自閉症を予防する効果がある可能性が示唆されている<ref>[プロバイオティクスが子どものADHDを予防するかもしれない、13年間の追跡調査 https://www.mededge.jp/a/pedi/13667]</ref><ref>{{cite journal |author=Pärtty A, Kalliomäki M, Wacklin P, Salminen S, Isolauri E |title=A possible link between early probiotic intervention and the risk of neuropsychiatric disorders later in childhood: a randomized trial |journal=Pediatr. Res. |volume=77 |issue=6 |pages=823–8 |year=2015 |pmid=25760553 |doi=10.1038/pr.2015.51 |url=}}</ref>。
 
 
=== 遺伝子の影響 ===
 
フランス・[[パスツール研究所]]の研究チームが、[[フランス国立医学研究機構]]およびスウェーデン・[[ヨーテボリ大学]]と行った共同研究では、自閉症者の脳内で遺伝子「[[シャンク3]] (SHANK3)」に異常があることが指摘されている。ただし、研究チームからはシャンク3で自閉症の全ての症状を説明できるわけではないと警告が発せられており、主要な社会的障害についてある程度説明ができるかもしれないと述べるにとどまっている。また、ヒトの自閉症患者から見つかった[[シナプス]]タンパク質[[ニューロリギン]]の遺伝子変異を導入したマウスで自閉症症状が引き起こされることが確認されており<ref>{{cite journal|last=Tabuchi|first=K.|coauthors=''et al.''|journal=Science|year=2007|issue=318|doi=10.1126/science.1146221|pages=71-76|url=http://www.sciencemag.org/content/318/5847/71.full.pdf|title=*|format=PDF|accessdate=2012-05-10}}</ref>、この発見からシナプス異常と自閉症との関連が注目されている。日本でも[[理化学研究所]]の研究チームが、神経細胞の生存や分化に重要な神経栄養因子の分泌を調節する遺伝子(CAPS2遺伝子)の異常が、自閉症の発症メカニズムに関係しているとの研究成果を発表している<ref>{{Cite web |url=http://www.riken.jp/~/media/riken/pr/press/2007/20070323_1/20070323_1.pdf |title=自閉症に関連する遺伝子異常を発見 -自閉症の病因解明や早期診断に向けた新知見- |format=PDF |publisher=独立行政法人 [[理化学研究所]] |date=2007-03-23 |accessdate=2016-09-24}}</ref>。
 
 
=== ミラーニューロン仮説 ===
 
他者の動作を観察している際に自分が動いている時と同じように反応する[[ミラーニューロン]]の活動低下の影響を指摘する説も存在する。カリフォルニア大学の[[ヴィラヤヌル・S・ラマチャンドラン|V・S・ラマチャンドラン]]とL・M・オバーマン (Lindsay M. Oberman) らのグループ、スコットランドのセントアンドリューズ大学のホイッテン (Andrew Whitten) らのグループは、ほぼ同じ時期に、対人スキルや共感の欠如、言語障害、模倣が上手くできない等の自閉症の特徴は、すべてミラーニューロンの機能不全と同じ特徴を持つとの説を発表した<ref>マルコ・イアコボーニ『ミラーニューロンの発見』塩原通緒訳、早川書房、2009年、212、213頁</ref>。<!--親に自閉的傾向があると、子の正常なミラーニューロンの働きが阻害されることがある。-->[[ヘパラン硫酸]]の関与を指摘する説もあるが、原因として確定的であるという段階にまでは至っていない。
 
 
===俗説と謬説===
 
==== 母原病説 ====
 
未だに、自閉症は虐待や過保護が原因である「[[母原病]]」であるとの認識は一部に根強いが、それは明確に否定されている<ref name=Kaplan />。そもそもレオ・カナー自身自閉症児を統合失調がごく幼少期に発現したものと考えており、「自閉症」という言葉も統合失調の無為自閉からきている。なかでも、自閉症研究者として名が知られていた[[ブルーノ・ベッテルハイム]]が「[[冷蔵庫マザー]]」説をたたえ『虚ろな砦』等の著作も広く読まれたこともあって、これらの説が広く社会一般に信じられたばかりか、自閉症児を持つ母親を孤立させ、かえって対策を妨げる結果になったという悪影響が指摘されていたりする。
 
 
日本でも、[[七田眞]]や[[岩佐京子]]<ref>『危険!テレビが幼児をダメにする!!―現場カウンセラーが明かす驚くべき事実 言葉の遅れ、思考力の低下、自閉症児の原因が判明』1998年3月、コスモトゥーワン ISBN  978-4906361700。『自閉症の謎に挑む―活性酸素によるニューロンの破壊』ルナ子ども相談所 (2000) ISBN 978-4795248731</ref>らによって「テレビの見せすぎが自閉症の原因」などの環境原因説が流行し、同様に自閉症児を持つ母親を孤立させる弊害を生んだ(岩佐はのちに自説を一部撤回)が、2004年 - 2005年前後にかけて日本大学教授[[森昭雄]]が自閉症を持つ子供たちを「おかしい子供」の一言で表現したことなどと発言<ref group="注釈">「未熟な状態である赤ちゃんの頃から朝から晩までテレビを垂れ流して育てると、正常に育たず自閉症的な子供として育つ」<br>「最近自閉症の人数が増えているが、先天的なものは非常に少ない。テレビやビデオを見ている子供は自閉症の状態になることがある」</ref>しており、この手の説は現在も日本で流布されていたりする。
 
 
現在では、ごく一部の学者を除いて、自閉症の発症に育て方はほとんど関わっていないとする見解が多数である。幼少期に発症した場合は、[[小児期崩壊性障害]]として区別される。
 
 
==== 重金属(水銀) ====
 
[[水銀]]などの[[重金属]]の蓄積が原因だとする説<ref>Michael Lesserなど</ref>も広く流布されている。水銀を原因とする考え方から、水銀を除去する[[キレーション療法]]が提唱されたことがあるが有効性は疑問であり<ref>[http://child-neuro-jp.org/visitor/iken2/4.html 自閉症における水銀・チメロサールの関与に関する声明] 平成16年(2004年)6月 日本小児神経学会</ref>、[[英国国立医療技術評価機構]]はキレーション療法の禁止勧告を出している{{Sfn|英国国立医療技術評価機構|2013|loc=Chapt.1.6.4}}。
 
チメロサールはワクチンや食品などに含まれていることから米国で主に議論となっている。<ref>発達障害を治す 大森隆史 (</ref>
 
 
==== MMRワクチン説 ====
 
[[MMRワクチン]]が自閉症の原因であるとする[[アンドリュー・ウェイクフィールド]]の論文<ref name="WakefieldMurch1998">{{cite journal|last1=Wakefield|first1=AJ|last2=Murch|first2=SH|last3=Anthony|first3=A|last4=Linnell|first4=J|last5=Casson|first5=DM|last6=Malik|first6=M|last7=Berelowitz|first7=M|last8=Dhillon|first8=AP|last9=Thomson|first9=MA|last10=Harvey|first10=P|last11=Valentine|first11=A|last12=Davies|first12=SE|last13=Walker-Smith|first13=JA|title=RETRACTED: Ileal-lymphoid-nodular hyperplasia, non-specific colitis, and pervasive developmental disorder in children|journal=The Lancet|volume=351|issue=9103|year=1998|pages=637–641|issn=01406736|doi=10.1016/S0140-6736(97)11096-0}}</ref>をベースにしているが、この論文には[[データ]]に[[捏造 (科学)|捏造]]があったことが発覚し<ref>[http://www.timesonline.co.uk/tol/life_and_style/health/article5683671.ece “TIMESONLINE MMR doctor Andrew Wakefield fixed data on autism”]{{en icon}}</ref>、掲載した[[Lancet]]誌は2010年2月にこの論文を[[論文撤回|撤回]]した<ref>[http://www.autism-watch.org/news/lancet.shtml Lancet Retracts Wakefield Paper]</ref><ref>[http://www.city.yokohama.lg.jp/kenko/eiken/idsc/disease/thimerosal1.html チメロサールとワクチンについて] 横浜市衛生研究所</ref>。
 
<!--
 
重金属を原因とする説はMMRワクチン([[新三種混合ワクチン]])に含まれる水銀化合物<ref>[[チメロサール]]。ワクチンの保存剤である。分解して[[エチル水銀]]([[水俣病]]は同じ[[有機水銀]]の一種であるが違う種類の[[メチル水銀]]が原因)になることから、疑いの対象となった。</ref>が自閉症の原因であるとする論文<ref>[http://www.thelancet.com/journals/lancet/article/PIIS0140-6736(97)11096-0/abstract RETRACTED:A J Wakefield et al.: "Ileal-lymphoid-nodular hyperplasia, non-specific colitis, and pervasive developmental disorder in children",] Lancet 1998; 351: 63741</ref>をベースにしているが、この論文にはデータに捏造があったことが発覚し<ref>[http://www.timesonline.co.uk/tol/life_and_style/health/article5683671.ece “TIMESONLINE MMR doctor Andrew Wakefield fixed data on autism”]{{en icon}}</ref>、掲載したLancet誌は2010年2月にこの論文を撤回した<ref>[http://www.autism-watch.org/news/lancet.shtml Lancet Retracts Wakefield Paper]</ref><ref>[http://www.city.yokohama.lg.jp/kenko/eiken/idsc/disease/thimerosal1.html チメロサールとワクチンについて]横浜市衛生研究所</ref>。
 
--><!--以上、新三種混合ワクチン説とチメロサール説とを混同した話と思われる。英語版では区別されている。ノート参照。-->
 
<!-- ref>森の「自閉症」と「[[ゲーム脳]]」についての発言は、共に'''ゲームが原因で起こる'''と主張している点で共通しているため、ゲーム自体を偏見で見て発言している可能性がある。</ref -->
 
<!-- これら発言は音声による記録が残っています http://digital-pocket.hp.infoseek.co.jp/game_brain.html -->
 
<!-- ここで出典としている音声ではテレビ・ビデオが原因としており、ゲームと自閉症とは関連づけていないので、脚注はコメントアウトします。ゲームが原因と発言した話が先に出ていましたが、記録が残ってなく「テレビが原因」を聞き間違えた可能性を否定することはできません。(どちらにしろ問題発言なので無理に示す必要はないと思っています)-->
 
 
なお、[[イタリア]]では、MMRワクチンへの噂から信頼性が低下し、[[予防接種]]を受ける子供の数が減った結果、[[麻疹]]患者が3倍になるという余波も生じた<ref>[http://www.afpbb.com/articles/-/3128922 イタリア、予防接種を就学の条件に] AFP(2017年5月20日)2017年5月20日閲覧</ref>。
 
 
== 疫学 ==
 
{{Main|en:Epidemiology of autism}}
 
統計的には国際的に増加傾向にある。ただし自閉症が実際に増加しているのではなく、疾患が世の中に認知されるにつれ、従来診断されなかった軽度のものも含まれるようになってきているからと考えられている。
 
 
[[有病率]]は、カナダにて0.68%、デンマークにて0.45%、フランスで0.67%、ノルウェーで0.21-0.87%(ASD)とされている。日本では1000人に1 - 3人の割合で生じているが、どこまでを自閉症の範囲とするかによって発生率は大きく違う。男性と女性の比率は4 : 1程度と言われている<ref>氏家・松田・森・若山・村上・山本[http://www13.ocn.ne.jp/~ujiieiin/autism309.html 「自閉症児309例の臨床特徴の分析:高機能自閉症とアスペルガー症候群の臨床特徴に関する調査研究」] 他</ref>。
 
 
しかし、この障害を持つ女子は、より重度の精神遅滞を示す傾向がある(典型的自閉症ではない)<ref>高橋・大野・染矢訳『DSM-IV 精神疾患の診断・統計のマニュアル』</ref>。X染色体の異常に起因する[[脆弱X症候群]]による説明の可能性が考慮される。
 
 
また、自閉症の女性には男性とは違う特徴があり、多岐に渡る症状・主訴に惑わされる重ね着症候群の様相を呈するために[[心身症]]や[[統合失調症]]と[[誤診]]される場合も多い<ref>[[宮尾益知]]:監修『女性のアスペルガー症候群 : イラスト版』([[講談社]]、2015年3月)ISBN 978-4-06-259790-6</ref>。
 
 
日本自閉症協会によると現在日本国内に推定36万人(重度自閉、義務教育に支障がある程度の障害、暗数が少ない)の自閉症者がいる。これはアメリカの1万人に5人程度とされるカナー型自閉症発生率と比べても極めて高い。[[知的障害]]や[[言語障害]]を伴わない高機能自閉症など含めると120万人いるといわれている。
 
 
[[DSM-IV]]発表前の米国の自閉症発生率は2000人〜5000人に1人だったが、DSM-IVで自閉症に[[アスペルガー症候群|アスペルガー障害]]が加えられて以降、20〜40倍に増加している。DSM-IVの[[アレン・フランセス]]編纂委員長は「米国で88人に1人、韓国では38人に1人が自閉症と診断されるようになった」と述べている。米国では、自閉症と診断されると教育面で優遇されるなどの社会的背景があり、診断数の増加につながっているとの見方もある。フランセスは、「精神科の診断を、法医学的判断、障害判断、学校の判断、養子縁組の判断などから切り離すべきだと思います。精神科の診断は意思決定の一部であるべきであって、唯一の決定要因ではありません」と強調している<ref>佐藤光展、精神医療ルネサンス「[http://web.archive.org/web/20121129022325/http://www.yomidr.yomiuri.co.jp/page.jsp?id=66961 DSMの功罪 小児の障害が20倍!]」読売新聞の医療サイトyomiDr.(ヨミドクター)2012年10月24日</ref><ref>精神医学「[http://ej.islib.jp/ejournal/1405102246.html? DSM-5をめぐって─Dr. Allen Francesに聞く]」医学書院2012年8月(54巻8号)</ref><ref>{{cite journal |author=Michael Mechanic |date=2013-05-14 |title=[http://www.motherjones.com/politics/2013/05/psychiatry-allen-frances-saving-normal-dsm-5-controversy Psychiatry's New Diagnostic Manual: "Don't Buy It. Don't Use It. Don't Teach It."] |journal= [[w:Mother Jones (magazine)|Mother Jones]]}}</ref>。
 
 
[[発達心理学者]]の[[サイモン・バロン=コーエン]]は、著書『共感する女脳、システム化する男脳』にて、自閉症は極端な「男性型の脳」であるとの見解を述べている。この考えを最初に提唱したのは、[[アスペルガー症候群]]の生みの親[[ハンス・アスペルガー]]であることも紹介している。実際に自閉症の患者の80%は男性であるとされる。ただし、サイモンは「性別による自閉症出現率の違いをそれほど重大な要件とはみなしていない」と明記している。
 
 
== 診断 ==
 
医学的には[[精神障害の診断と統計マニュアル|DSM-IV]]([[アメリカ精神医学会]])か[[疾病及び関連保健問題の国際統計分類|ICD-10]]([[世界保健機構]])の診断基準により診断される。なお、知的障害の有無は診断に関係ないが、ICDの基準ではその4分の3に重度の知的障害があるとされる。
 
 
[[英国国立医療技術評価機構]](NICE)は、自閉症が疑われ、重い学習障害のない成人のアセスメントには、自閉症スペクトラム指数テストを10質問(AQ-10)を検討し、もしスコアが6点以上の場合は包括的な自閉症アセスメントを行うとしている{{Sfn|英国国立医療技術評価機構|2012|loc=Chapt.1.2.3}}。包括的な自閉症アセスメントは、訓練を受けた技能を有する専門科によってなされるべきである{{Sfn|英国国立医療技術評価機構|2012|loc=Chapt.1.2.5}}。ツールだけを用いて診断を行ってはならない{{Sfn|英国国立医療技術評価機構|2012|loc=Chapt.1.5.11}}。
 
 
=== 鑑別診断 ===
 
以下の鑑別疾患を除外する{{Sfn|英国国立医療技術評価機構|2011|loc=Chapt.1.5.7}}。
 
 
* [[神経発達症]]: 特定言語遅延または障害 / [[知的障害]]または全般性発育遅延 / [[協調運動障害]](DCD)
 
* 精神障害:[[注意欠陥・多動性障害]](ADHD)/ [[気分障害]] /[[不安障害]] / [[愛着障害]] / [[反抗挑戦性障害]](ODD)/ [[行為障害]](CD)/ [[強迫性障害]](OCD)/ [[精神病]]([[統合失調症]]等)
 
* 発達退行:[[レット症候群]] / [[てんかん性脳症]]
 
* その他:重度聴覚障害 / 重度視覚障害 / 呵責 / [[場面緘黙症]]
 
 
自閉症は、[[注意欠陥・多動性障害]] (ADHD) や[[学習障害]] (LD) などと合併する場合がある。[[知的障害]]は「高機能」を冠さないあらゆる自閉症において診断の必須要素として具備される障害である。まれに[[ダウン症候群|ダウン症]]と合併する例もある。
 
 
なお統合失調症と診断されている人達のうち、もともと高機能広汎性発達障害であって不適応のため状態が悪化しており単に統合失調症と[[誤診]]されている事例が多くある。(杉山登志郎の著書にこれらに関する記載がある。)
 
 
=== 合併症 ===
 
{{出典の明記|date=2015-07|section=1}}
 
合併症と認定されるうち8割は知的障害を伴うカナータイプだと言われてる。
 
自閉傾向もさらに悪化している。
 
注意欠陥多動性障害や学習障害などを伴うケースは自閉症障害だと認定される。
 
まれにダウン症も見られる。
 
 
自閉症障害と認定では療育手帳B1(中等度)の取得もできる。カナータイプではB1またはA(重度または最重度)である。
 
高機能自閉症に関しては精神障害者保健福祉手帳3級の取得も可能であり、療育手帳の認定ではB2(軽度)程度である。
 
なおアスペルガー症候群では、自閉症と該当されないため療育手帳の交付対象にはならないよう。
 
 
=== 分類 ===
 
{{出典の明記|date=2015-06|section=1}}
 
自閉症は[[広汎性発達障害]](PDD)グループの5疾患のうちの一つである<ref name="ICD-10-F84.0">{{cite web|url=http://apps.who.int/classifications/apps/icd/icd10online/?gf80.htm+f84 |year=2007 |accessdate=2009-10-10|work=ICD-10: International Statistical Classification of Diseases and Related Health Problems: Tenth Revision|publisher=World Health Organization |title=F84. Pervasive developmental disorders |archiveurl=http://web.archive.org/web/20130421042448/http://apps.who.int:80/classifications/apps/icd/icd10online/?gf80.htm+f84|archivedate=2013-04-21}}</ref>。
 
 
自閉症は症例が多彩であり、[[健常者]]から重度自閉症者までの間にははっきりとした境界はなく、[[虹]]のように境界が曖昧であるため、その多様性・連続性を表した概念図を[[自閉症スペクトラム障害]]や自閉症スペクトラム障害({{Lang-en-short|''Autistic Spectrum Disorders''}})などと呼ぶ。
 
 
知的障害を伴う場合が多いが、知的能力(一般的にIQで判断される)が低くない自閉症のことを高機能自閉症と呼ぶことがある。なお、「高機能自閉症」と「[[アスペルガー症候群]]」、「低機能自閉症」と「カナー症候群」は基本的には類似しており、臨床的には区別がつきにくい場合が多い(DSM-IV、ICD-10では[[言語障害]]がないものをアスペルガー症候群、言語障害があるものを自閉性障害、小児自閉症(カナー症候群)と分類する)。本記事では同一のものとして扱う。
 
 
[[File:自閉症.PNG|thumb|590px|right|自閉スペクトラム概念。この図は、自閉度と[[知能指数]]の2つの要素をもとに[[自閉スペクトラム]]を表した分類図である。DSM-5を受けて新たな分類図も公表されている。]]
 
[[File:Asperger Syndrome hist.svg|thumb|350px|right|自閉症とアスペルガーの比較{{Sfn|サイモン・バロン=コーエン|2011|pp=21-22}}]]
 
 
[[自閉症スペクトラム障害]]のうち、認知機能が高い場合(一般的にはIQ70以上とされる<ref group="注釈">ボーダーとされるIQ70〜85を除いた、IQ85以上とする場合もある</ref>)を高機能自閉症(知的遅れのないカナータイプ)、略称は、'''HA'''または'''HFA''')と呼ぶことがある<ref name="Sanders2009">{{cite journal|last1=Sanders|first1=James Ladell|title=Qualitative or Quantitative Differences Between Asperger’s Disorder and Autism? Historical Considerations|journal=Journal of Autism and Developmental Disorders|volume=39|issue=11|year=2009|pages=1560-1567|issn=0162-3257|doi=10.1007/s10803-009-0798-0|pmid=19548078}}</ref><ref name="arn">{{cite journal |last1=Carpenter |first1=Laura Arnstein |last2=Soorya |first2=Latha |last3=Halpern |first3=Danielle |title=Asperger's Syndrome and High-Functioning Autism |journal=Pediatric Annals |year=2009 |volume=38 |issue=1 |pages=30-5 |doi=10.3928/00904481-20090101-01}}</ref>。「高機能」というのは知能指数が高いという意味であるが、平均的な健常者より高いとは限らず、知的障害との境界域の場合もあれば、一部平均的な健常者をはるかに上回る場合もある。1980年代以降、急速に認知されてきた。
 
 
また定義的には高機能自閉症に当てはまるが自覚がない人も多く、無自覚な高機能自閉症対象者には個人の生まれ持った性格と認識されることも多い。
 
 
とりわけ、言語性の発達の部分で、当人の[[生育歴]]や言語性・動作性知能検査などで未解明・判断不能の場合は、[[アスペルガー症候群]]との線引きができない場合もあり、両者をひとくくりにして、「[[高機能広汎性発達障害]]」、あるいは「[[知的障害]]のない[[自閉症スペクトラム障害]]」の状態にあるという見立て(あるいは、スペクトラム上のアスペルガー寄りないしは高機能自閉症寄りという判断のいずれかとされるケースと、スペクトラム上の高機能自閉症とアスペルガーの間のいずれかの位置にいることは相違ないが、明確に位置が判断できない、という判断)がなされることがある。
 
 
自閉症と診断されるうち、高機能自閉症は100万人前後、もしくは100人に1人いる程度で全体の半数以上を占める。大多数は男性を占める。知的障害を伴う方はカナータイプで、30万人を超えるとも言われている。言語障害や肢体不自由などを伴う割合がとても多い。多くは30歳未満で生活習慣病を引き起こす。
 
 
'''カナー'''は乱暴性があり、他人を噛み付いたりや叩いたり(他傷行為)、騒がしいのも特有である。また、識字力などの低下傾向が見られる。言語発達に関して極端に遅れがあり、言語すら発しないことが多い。小児期に身体障害(最悪の場合も寝たきりも)を伴う場合も多く、健康診断に異常があることが非常に多く、健康寿命などに大きく影響を与える。食べ物に関しては嗜好の偏りがよく見られ、嫌いなものに関しては全く口にしない場合も。免疫力が低下していることもあり、伝染病にかかることも多い。場合によっては強度行動障害や障害者医療割引などの支援もできる。3人に1人以上は重度(最重度を含む)にあてはまり、突然のことで急にパニック(自傷行為)を引き起こしたりケアをするのが困難な場合が多い。大きな音が嫌いな場合が多く見られ、イヤーマフや耳栓を日常的に着用している場合も。合併症とはして知られる中でも、痙攣やてんかんなどを伴うことが非常に多いとされる。未成年のうちで精神状態などの理由で繰り返し入院をさせられたり、交通事故の死傷率も異常に高い(危険が全くわからない場合も想定される)。だっこされて嫌がることも多く、こだわり面も非常に強い。自閉症と知られる中でも非常に自閉傾向が強いと知られてる。状態悪化や重い自閉症とも呼ばれている。いずれも精神科などに通うのが必要になる。
 
 
'''高機能自閉症'''は特徴面が違って文字や記号などに異様に反応したり、一定のものに関しては優れた発揮能力もある。人と接するのは困難とみられるが、メールのやり取りなどはできたりする場合もある。自分の思ったことがうまくいかなかったら、批判性の強い話し方をしたりそれらの特徴もあてはまる。症状は比較的軽い方で、軽度自閉症と呼ばれる場合も多い。マニュアルで知られ、ごく一般的で、障害者雇用でも多く雇われてる。実際は3歳児以前から言語に遅れ(表情もおかしい場合も)がみられ、ほかにも言動が尊大に見られたり。ドッジボールやごっこ遊びなどで人と触れ合うのが著しく困難になることもみられたり、自分が興味のないことにはすぐに飽きてしまったり、方言を喋るのが困難になることも幅広く知られてる。独特の特徴面があることから、療育手帳(B2)も10年以上前から比較的に普及しているほうである。障害基礎年金(第2種)の申請も比較的に認められやすい。
 
 
一方、'''折れ線型自閉症'''は、成長の途中で言語の退行が起きるもので、成長曲線が折れ線状に右下がりになることから名付けられた。自閉症の1/3が該当すると言われている<ref>[http://www.aoitori-center.com/jiheisho/jiheisho02.html 第2回掲載分 自閉症ってどんな子なの?] - 愛知県青い鳥医療福祉センター</ref>。0〜1歳の頃に徴候が表れ、2歳を迎える頃にはっきりと症状が表面に出るケースが多いが、一時的な赤ちゃん返りと間違えられたり、他の子より少し後れているだけだと考えられて、発見が遅れる場合もある。また、[[小児期崩壊性障害]]は退行という点で似ているが、人に対する愛情表現が豊かでかわいがってもらえるなど、一般的な自閉症とは異なる。
 
 
== 検査 ==
 
{{Seealso|精神医学で使われる診断分類と評価尺度の一覧}}
 
 
* 言語検査
 
** イリノイ式言語学習能力診断検査 (ITPA)
 
** 絵画語い発達検査 (PVT)
 
** 国リハ式〈S-S法〉言語発達遅滞検査
 
* 行動検査
 
** ブラゼルトン新生児行動評価法 ([[:en:Neonatal Behavioral Assessment Scale|Brazelton Neonatal Behavioral Assessment Scale; BNBAS]])
 
* [[発達検査]]
 
** 乳幼児発達スケール
 
** 遠城寺式乳幼児分析的発達検査
 
** 津守式乳幼児精神発達診断法
 
** TK式幼児発達検査
 
** 改訂新版幼児総合発達診断検査
 
** 改訂日本版デンバー式発達スクリーニング検査
 
** 早期発達診断検査
 
** 新訂版自閉児・発達障害児教育診断検査
 
** 新版K式発達検査
 
** 日本版ミラー幼児スクリーニング検査
 
* 絵画検査
 
** DAP(人物画)
 
* 成人を対象とした評価ツール
 
** [[:en:Autism Diagnostic Observation Schedule|Autism Diagnostic Observation Schedule]] - Generic (ADOS-G)  {{Sfn|英国国立医療技術評価機構|2012|loc=Chapt.1.2.8}}
 
** Adult Asperger Assessment (AAA) {{Sfn|英国国立医療技術評価機構|2012|loc=Chapt.1.2.8}}
 
** [[:en:Autism Diagnostic Interview|Autism Diagnostic Interview – Revised]] (ADI-R) {{Sfn|英国国立医療技術評価機構|2012|loc=Chapt.1.2.8}}
 
** Asperger Syndrome (and high-functioning autism) Diagnostic Interview (ASDI)  {{Sfn|英国国立医療技術評価機構|2012|loc=Chapt.1.2.8}}
 
** Ritvo Autism Asperger Diagnostic Scale – Revised (RAADS-R)  {{Sfn|英国国立医療技術評価機構|2012|loc=Chapt.1.2.8}}
 
 
=== 自閉スペクトラム指数 ===
 
{{仮リンク|自閉スペクトラム指数|en|Autism-spectrum quotient}} (AQ)とは、自閉度(自閉症傾向)を測る指標の一種<ref>Baron-Cohen他、Autism-Spectrum Quotient、2001</ref>。'''正常知能の成人を対象'''にしており、自己回答方式で、自分の「自閉症傾向」を測ることができる<ref>[http://www.wired.com/wired/archive/9.12/aqtest.html 自閉症スペクトラム指数]{{en icon}}</ref><ref>{{PDFlink|[http://www.nise.go.jp/kenshuka/josa/kankobutsu/pub_f/F-112/05.pdf 自閉症スペクトラム指数(日本語版)]}}</ref>。
 
 
AQは自閉症傾向のスクリーニング用ツール、つまり、自閉かどうか診断する前の、おおまかなふるい分け用のツールなので、'''AQだけで自閉症であるかどうかの診断はできない'''{{Sfn|英国国立医療技術評価機構|2012|loc=Chapt.1.2.3}}。
 
 
* AQ測定による調査でわかったこと
 
** 社会人や大学生の中にも、少数だがAQ上でAS/HFA群と同じ程度の高得点を示す人がいる。
 
** 自閉症の診断を受けていない人にも、自閉症的な傾向を持つ人がいる。
 
** AQで測定される[[自閉スペクトラム]]傾向にはかなりの個人差がある。
 
** 今後自閉症症状のメカニズムを解明する上で、アナログ研究的アプローチが可能である。
 
** コントロール群の平均スコアは16.4 (♂〜17、♀〜15)<ref>{{cite journal |author= Baron-Cohen S, Wheelwright S, Skinner R, Martin J, Clubley E|url=http://autismresearchcentre.com/docs/papers/2001_BCetal_AQ.pdf|format=PDF |title= The Autism-Spectrum Quotient (AQ): evidence from Asperger syndrome/high functioning autism, males and females, scientists and mathematicians |journal= J Autism Dev Disord |volume=31 |issue=1 |pages=5-17 |year=2001 |doi=10.1023/A:1005653411471 |pmid=11439754}}</ref>。
 
 
* [[自閉スペクトラム]]指数のカット・オフ点
 
** 自閉スペクトラム指数で高得点(33点以上)をとった学生12名を診断したところ、12名中7名が自閉性障害またはアスペルガー障害の診断基準にあてはまった(ただし、生育史が不明であることと、現在不適応を起こしていないため、自閉性障害とは診断されていない)。
 
** 自閉スペクトラム指数33点以上には成人のアスペルガー症候群・高機能自閉症者群の9割近く (87.8%) が含まれるのに対し、健常群で33点以上をとるのはわずかに3%弱であることから、自閉スペクトラム指数のカット・オフ点(健常者と自閉症の識別点)は33点と決定された<ref>若林明雄{{PDFlink|「[http://www.nise.go.jp/kenshuka/josa/kankobutsu/pub_f/F-112/05.pdf 自閉症スペクトラム指数AQ 日本語版について]」}}『自閉症とADHDの子どもたちへの教育支援とアセスメント』国立特殊教育総合研究所科学研究費報告書、2003年、47-56ページ</ref>。
 
** アスペルガー症候群の診断スクリーニングとして使用する場合、スコア26以下で有効に除外可能であることが示唆される<ref>{{cite journal |journal= J Autism Dev Disord |year=2005 |volume=35 |issue=3 |pages=331-5 |title= Screening adults for Asperger Syndrome using the AQ: a preliminary study of its diagnostic validity in clinical practice |author= Woodbury-Smith MR, Robinson J, Wheelwright S, Baron-Cohen S |doi=10.1007/s10803-005-3300-7 |pmid=16119474 |url=http://autismresearchcentre.com/docs/papers/2005_Woodbury-Smith_etal_ScreeningAdultsForAS.pdf |format=PDF |accessdate=2009-01-02}}
 
</ref>。
 
 
* 自閉症の極端男性脳理論
 
** [[サイモン・バロン=コーエン]]は、[[自閉スペクトラム]]指数の調査結果から、「自閉症の極端男性脳理論」を提唱した<ref>Baron-Cohen S. The extreme male brain theory of autism. Trends in Cognitive Sciences 6: 248-254, 2002. [http://www.synapse.ne.jp/~shinji/jyajya/ronbun/male-b2.html 和訳]</ref><ref>同上 [http://www.boston.com/news/globe/ideas/articles/2004/02/22/the_autism_quotient?mode=PF 解説新聞記事]{{en icon}}</ref>。
 
 
== 治療 ==
 
{{Seealso|[[:en:Autism therapies|Autism therapies]]}}
 
現代医学では根本的な原因を治療することは不可能とされている。原因が完全に究明されていない現在、疫学・予防策は確立されていない。
 
 
NICEは自閉症を持つ児童青年に対し、いかなる文脈においても[[セクレチン]]療法、[[キレーション療法]]、[[高気圧酸素治療]]などによる治療を試みてはならないとしている{{Sfn|英国国立医療技術評価機構|2013|loc=Chapt.1.6.4}}。
 
 
自閉症の中核症状である社会性の問題は、集中的な行動介入によく反応し鍛えることが可能であることが実証されているが、薬としては見つかっておらず、社会的動機と社会的認知を高めるような向社会的化合物(Prosocial Compounds)として、[[オキシトシン]]と[[バソプレッシン]]は注目されている<ref name="pmid23052292">{{cite journal|last=Insel|first=T. R.|authorlink=トーマス・インセル|title=Next-Generation Treatments for Mental Disorders|journal=Science Translational Medicine|volume=4|issue=155|pages=155ps19–155ps19|year=2012|month=October|pmid=23052292|doi=10.1126/scitranslmed.3004873}}</ref>。
 
 
=== 心理社会的療法 ===
 
療法として、代表的なものをあげると、応用行動分析(Applied Behavior Analysis、略してABA)、TEACCH、言語聴覚療法、ソーシャルスキルトレーニング、作業療法、フロアタイム等いろいろとがあるが、応用行動分析(ABA)が化学的にもっとも効果的な療法と証明されており、世界中から注目されている。海外(主にアメリカ、イギリス)では応用行動分析(ABA)の資格、認定行動分析士(BCBA)になるための専門的な授業、試験を設けており、資格保有者のもとで運営されている自閉症児療育機関が多い。
 
「TEACCH ('''T'''reatment and '''E'''ducation of '''A'''utistic and related '''C'''ommunication handicapped '''CH'''ildren)」「[[ソーシャルスキルトレーニング]]」などの各種プログラムなどによって、健常者に近い社会生活が送れるようになる場合もあるが、これらのプログラムは本人の社会生活における困難を軽減するものであって、根本的な原因が治癒したわけではないとされる。また、「デンバー治療モデル」や「グリーンスパン・モデル (DIR)」なども有効であるとされる<ref>サリー・オゾノフ、ジェラルディン・ドーソン、ジェームズ・マックパートランド『みんなで学ぶアスペルガー症候群と高機能自閉症』田中 康雄・佐藤 美奈子(訳)2004年、星和書店、110-111頁。</ref>。
 
 
ミラーリング(自閉症児との遊び方として知られている、いわゆる模倣)を行って自閉症児に対することで、衒奇的運動が一時的に消えるという事例の報告がある<ref>マルコ・イアコボーニ『ミラーニューロンの発見』塩原通緒訳、早川書房、2009年、220-224頁</ref>。これも(もし多くの自閉症児に効果があるとしても)根本的な治癒ではないものの、コミュニケーションの向上につながる可能性が指摘されている。
 
 
[[自助グループ]]、支援グループへの参加も奨励される{{Sfn|英国国立医療技術評価機構|2012|loc=Chapt.1.1.7}}。
 
 
なお、副次的な症状として[[社交不安障害]]などの[[不安障害]]や[[うつ病]]を併発することもあり、その際には主症状に取り組み社会性の向上を目指す上記の治療法やプログラムと、副次的な症状(不安や抑うつ)の軽減を目的とする[[認知行動療法]](「[[社交不安障害#治療]]」・「[[不安障害#治療]]」・「[[うつ病#認知行動療法]]」も参照)を併用する<ref>桐山 佳奈・石川 信一 (2014).[https://doors.doshisha.ac.jp/duar/repository/ir/16755/047004010005.pdf 不安症状を中心とした二次障害を抱える自閉症スペクトラム障害の子どもに対する認知行動療法の課題と展望].心身臨床科学、''4''、39-51.</ref><ref>藤野 博 (2013).[https://www.jstage.jst.go.jp/article/tokkyou/51/1/51_63/_pdf/-char/ja 学齢期の高機能自閉症スペクトラム障害児に対する社会性の支援に関する研究動向].特殊教育学研究、''51''、63-72.</ref>。
 
 
=== 薬物療法 ===
 
「[[小児|小児期]]の自閉症スペクトラム障害に伴う易刺激性」への適応承認を有する医薬品はあるものの、治療や症状の緩和として正式に承認された医薬品は存在しない。[[英国国立医療技術評価機構]](NICE)は自閉症の中核症状の管理について、[[抗精神病薬]]、[[抗うつ薬]]、[[抗けいれん薬]]を用いてはならないとしている{{Sfn|英国国立医療技術評価機構|2013|loc=Chapt.1.3.2}}。
 
 
[[アリピプラゾール]](エビリファイ)と[[リスペリドン]](リスパダール)の適応には、小児期の自閉症スペクトラム障害に伴う易刺激性があり、日本の医薬品添文書には、漫然と長期に投与しないよう注意書きが書かれている。
 
 
研究レベルではオキシトシンが効果があったとの研究もあるが、臨床での使用はまだ認められていない。<ref>[http://www.47news.jp/CN/201410/CN2014101001001995.html] [[共同通信]] 2014年10月10日付</ref>。
 
 
====研究事例====
 
[[オキシトシン]]を放出する[[メチレンジオキシメタンフェタミン|MDMA]]が注目されており、継続的な投与を必要としない可能性がある。LSDやシロシビンを用いた過去の臨床試験では、会話技能を快復させる可能性は低いとされたが、他人との接触性を高めることができたと結論付けており、1970年には薬物の規制によって研究は困難となった。後に登場したMDMAには、共感能力を高めるといった作用があり、インターネットが導入される時代となると、英語圏のオンライン・フォーラムにMDMAによって機能の改善が報告されるようになり、臨床試験の実施につながっていった。<ref name-"">{{cite journal|last1=Danforth|first1=Alicia L.|last2=Struble|first2=Christopher M.|last3=Yazar-Klosinski|first3=Berra|last4=Grob|first4=Charles S.|title=MDMA-assisted therapy: A new treatment model for social anxiety in autistic adults|journal=Progress in Neuro-Psychopharmacology and Biological Psychiatry|volume=64|pages=237–249|year=2016|pmid=25818246|doi=10.1016/j.pnpbp.2015.03.011|url=http://www.sciencedirect.com/science/article/pii/S0278584615000603}}</ref>
 
 
リスペリドンと抗生物質ミノサイクリン併用療法の有効性と安全性が示された。より多数で長期試験の結果が待たれる<ref name="pmid27128958">{{cite journal |author=Ghaleiha A, Alikhani R, Kazemi MR, Mohammadi MR, Mohammadinejad P, Zeinoddini A, Hamedi M, Shahriari M, Keshavarzi Z, Akhondzadeh S. |title=Minocycline as Adjunctive Treatment to Risperidone in Children with Autistic Disorder: A Randomized, Double-Blind Placebo-Controlled Trial |journal=[[:en:Journal of child and adolescent psychopharmacology]] |date=2016-4-29 |url=https://online.liebertpub.com/doi/10.1089/cap.2015.0175 |pmid=27128958 |doi=10.1089/cap.2015.0175}}</ref>。[[薬剤耐性|薬剤耐性菌]]を生む問題があり感染症においても適正使用が言われ、感染症でもない状況での抗生物質の不適切使用は戒められる<ref>{{cite report|author=厚生労働省健康局結核感染症課|title=抗微生物薬適正使用の手引き 第一版|publisher=厚生労働省 |date=2017-06|url=http://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-10900000-Kenkoukyoku/0000166612.pdf|format=pdf|accessdate=2017-12-10}}</ref>。出生前の[[バルプロ酸]]曝露によって自閉症の[[モデル生物]]を作成した研究では、その自閉症様行動がミノサイクリン投与で減衰したとされる<ref name="pmid26551768">{{cite journal |author=Kumar H, Sharma B. |title=Minocycline ameliorates prenatal valproic acid induced autistic behaviour, biochemistry and blood brain barrier impairments in rats |journal=[[:en:Brain research]]. |volume= |issue=1630 |pages=83-97 |date=2016-1-1 |url=http://linkinghub.elsevier.com/retrieve/pii/S0006-8993(15)00839-2 |pmid=26551768 |doi=10.1016/j.brainres.2015.10.052}}</ref>。
 
 
アフリカ睡眠病治療薬として開発された、スラミンなども自閉症向けに研究されている<ref>[http://www.sciencedaily.com/releases/2014/06/140617102457.htm Single dose of century-old drug approved for sleeping sickness reverses autism-like symptoms in mice]</ref>。
 
 
=== 代替療法 ===
 
飯田医院等の一部医師により漢方薬での治療が試みられており、証にあわせた漢方を処方し、一定の成果を出している。[[大柴胡湯]]の処方例が示されている<ref>自閉症は漢方でよくなる!(健康ライブラリ) 飯田 誠</ref>。中国の[[中医学]]では、中医儿科杂志等の研究組織が弁証論治別に分別し、中薬で出すべき生薬を示している。<ref>[http://wenku.baidu.com/view/19e581ecaeaad1f346933f3c.html 中医对自闭症的认识及治疗现状]</ref>
 
 
鍼治療による治療もあり、特に中国、アメリカにおいて診療で試みられている。<ref>「米国における自閉症、注意欠陥・多動症等の発達障害児のはり治療」 日本小児はり学会 特別講習会2015</ref>言語能力の改善対する治療効果<ref>Scalp acupuncture effect on language development in children with autism: a pilot study. Clinical Trial Allam H, et al. J Altern Complement Med. 2008. Show full citation</ref>や、社会適応能力が向上したという発表もある。<ref>[Treatment of autism with scalp acupunctur]. Li N, et al. Zhongguo Zhen Jiu. 2011. Show full citation</ref>一方、中国[[四川大学]]の調査では自閉症への効果は不明とされている。<ref>[https://www.mededge.jp/a/pedi/15872 子どもの鍼治療「おねしょ」に効果、チック障害を含めた5つの問題に有望 Medエッジ]</ref><ref>{{cite journal |author=Yang C, Hao Z, Zhang LL, Guo Q |title=Efficacy and safety of acupuncture in children: an overview of systematic reviews |journal=Pediatr. Res. |volume=78 |issue=2 |pages=112–9 |year=2015 |pmid=25950453 |doi=10.1038/pr.2015.91 |url=}}</ref>
 
 
== 歴史 ==
 
[[ファイル:Leo-Kanner.jpeg|thumb|right|[[レオ・カナー]] (1955)]]
 
=== 病気の発見(認知)の歴史的変遷 ===
 
[[アメリカ合衆国|アメリカ]]の[[ジョンズ・ホプキンス大学]]の[[児童精神医学|児童精神科医]]である[[レオ・カナー]](Leo Kanner)が「早期幼児自閉症」として[[1943年]]に報告した<ref>{{cite journal |author=Kanner L |title=Autistic disturbances of affective contact |journal=Acta Paedopsychiatr |volume=35 |issue=4 |pages=100–36 |year=1968 |pmid=4880460 |doi= |url=}}</ref>。カナーは、「聡明な容貌・常同行動・高い記憶力・機械操作の愛好」などを特徴とする一群の幼児に対し、[[統合失調症]](精神分裂病)の一症状を表す用語である「自閉」という言葉を用い、「自閉症」(オーティズム)と名づけたのである。カナー自身自閉症を統合失調が幼児期に発症したものと考えており、クレペリンが統合失調を痴呆症が早期に発症したものという考えであったように、最期まで遺伝的なものとみなさなかった。カナーの報告した子供たちは、現在の低機能自閉症に当たるとされる。なお、カナーは自閉症の研究で自説に反する新事実が発見されると、自説の誤りを認識し訂正していった。
 
 
翌年の[[1944年]]、[[オーストリア]]の[[ウィーン大学]]の[[小児科学|小児科]]医[[ハンス・アスペルガー]]が、カナーの報告よりも一見軽度ではあるが、共通点がある一群の子供たちのことを報告した(両者に交流はない)<ref>Asperger, H.: Die“Autistischen Psychopathen”im Kindesalter. Archiv. fur Psychiatrie und Nervenkrankheiten, 117: 76-136, 1944.</ref>。当時ヨーロッパは大戦中であり、オーストリアは敗戦国側であったため、この報告は戦勝国側では[[1980年代]]まで脚光を浴びることはなかった。アスペルガーの報告した子供たちは、現在の高機能自閉症に当たるとされる。
 
<!--
 
* 病気概念の歴史的変遷*:
 
* 病態の理解の歴史的変遷*:
 
-->
 
 
=== 原因の発見の歴史的変遷 ===
 
カナーの報告から[[1960年代]]ごろまで、[[精神分析学|精神分析]]家の[[ブルーノ・ベッテルハイム]]らにより後天的原因説(「[[冷蔵庫マザー]]」理論)が唱えられていた。
 
 
[[1960年代]]後半、[[イギリス]]のモズレー病院の[[マイケル・ラター]]によって、自閉症は先天性の[[脳障害]]だという説が発表され、自閉症の学界はコペルニクス的転回を迎えることになった。現在でも自閉症の原因は諸説あるが、現在主流の説はラターの説が元となっている。
 
 
日本では[[1980年代]]頃まで、(専門家を除き)心理的な[[ストレス (生体)|ストレス]]によって自閉症になる(本当は[[場面緘黙症]])と信じられていた。
 
<!--
 
* 統計の歴史的変遷*:
 
* 疫学の歴史的変遷*:
 
-->
 
=== 症状の歴史的変遷 ===
 
カナーは自閉症児について、「先天的な知的障害があるわけではなく、心を閉ざしているだけであり、本来は聡明なのだろう」と考えた。
 
 
=== 分類の歴史的変遷 ===
 
アスペルガーの死去の翌年の[[1981年]]に、自身にも自閉症の娘がいるモズレー病院の医師[[ローナ・ウィング]]が、英語圏ではほとんど忘れられていたアスペルガーの論文を英訳して再発表し、高機能自閉症の存在を広く知らせた。それまでのイギリスでは知的障害のある自閉症児にしか福祉の手が差し伸べられていなかったのであるが、自閉症の本質は知的障害や言語障害ではなく対人関係の障害であるため、高機能自閉症も支援の対象にするべきだとの考えである。
 
<!--
 
* 検査の歴史的変遷*:
 
-->
 
=== 診断の歴史的変遷 ===
 
カナーは自閉症を統合失調症の幼児版であると考え、「小児分裂病」とも呼んだ。
 
 
ラターによる脳障害説以降、自閉症と統合失調症はまったく違う障害であることが分かってくる。
 
 
=== 治療の歴史的変遷 ===
 
カナー、ベッテルハイムにより唱えられた後天的原因説によって、各地の治療施設では、虐待によって発症したのならばその逆をやればよいとの考えのもと、「絶対受容」という治療方針が取られたが、あまり治療効果はなく、むしろ成年以降の社会適応が困難になったといわれる。ベッテルハイム自身も障害児の入所施設の所長であったが、入所児童への虐待やデータ捏造などがあったという疑惑がある。なお、ベッテルハイムはのちに自殺した。
 
 
アメリカの精神分析のメッカであるカール・メニンガー病院では、一時期自閉症も精神分析治療の対象としたが、精神分析が自閉症に効果がないと判明すると、潔く自閉症部門を閉鎖した。このように精神分析や受容療法などの試みが一時期脚光を浴びたが、あまり効果がないと次第に分かってきた。
 
<!--
 
* 予後の歴史的変遷*:
 
* 診療科の歴史的変遷*:
 
-->
 
== 日本での社会的影響 ==
 
=== 病気概念への誤解と偏見 ===
 
「自閉症」の語感から、内気な性格や[[引きこもり|ひきこもり]]に至るような精神状態、または[[うつ病]]を含んでいるように思われ、しばしば混同されることもあるが、これは自閉症に対する誤った認識である。
 
 
今でも一部の創作作品などで「自閉症」を誤用したり、また「後天的な自閉症」の存在をほのめかす間違った描写がされる場合がある。
 
 
*[[上野千鶴子]]の著書
 
*: 著書『マザコン少年の末路』(1986年) で「自閉症や登校拒否症は母親が甘やかして育てたことが原因で、自立心を失ったマザコン」といった趣旨の記述をして、当事者団体から抗議を受けた。その後この著書は絶版処置が取られている<ref>『[[上野千鶴子]]著「マザコン少年の末路」の記述をめぐって : [[河合おんぱろす]]増刊号』(1994年、河合文化教育研究所)</ref><ref>「『マザコン少年の末路』増補版をめぐって:『[[月刊社会教育]]』」([[谷口郁子]]1994-12,38(12):70-74)</ref>。一方で「昔の発言には責任をとらない」と言明している<ref>[[学陽書房]]1990-1995年『ニュー・フェミニズム・レビュー』</ref>。
 
* ロックバンド[[黒夢]]の曲、『autism-自閉症-』<ref>この曲が収録されていた『LIVE OR DIE-Corkscrew A Go Go』(VHS:1999、DVD:2000) と『pictures vol.1』(DVD:2000) は廃盤、回収された。</ref>。
 
*: 「自閉症」という言葉の意味を歌詞内で取り違えていたことにより、自閉症協会から抗議を受け、曲自体が絶版となる。ただし、この曲は自閉症患者のことを歌ったものではなく、当時のレコード会社を批判した歌である。
 
*大阪市の「家庭教育支援条例案」
 
*: 2012年5月、[[大阪市]]では[[大阪維新の会]]の中の一部の市議が提案した「家庭教育支援条例案」の素案には、児童虐待や非行などを「発達障害」と関連させ、親の愛情不足に起因しているかのように記載されていた。この素案に対し、発達障害の子を持つ保護者らの13団体が議会を訪れ提案中止を要望した。また、大阪維新の会代表である[[橋下徹]]は、同条例案を「科学的ではない」とした上で<ref>[http://twitter.com/#!/t_ishin/statuses/197959342383828992]</ref>、「発達障害の子どもを抱えているお母さんに愛情欠如と宣言するに等しい」と苦言を呈し、発案市議グループに内容の見直しを求めた。これを受け、市議団は5月議会での同条例提案の見送りを決めた<ref>毎日新聞、2012年5月7日。</ref>。
 
*クイズ番組
 
*: 2012年5月14日に放送された[[テレビ朝日]]の[[クイズ番組]]・『[[クイズプレゼンバラエティー Qさま!!]]』において、ここ10年で患者数が増えている病気についての問題が出題された。その正答の一つとして自閉症が挙げられ、さらに、男性が頭を抱えながら落ち込んでいる様子を映した絵図が放送された。番組放送中に視聴者などからの指摘が多数寄せられたため、同局は番組公式[[ウェブサイト|サイト]]上に訂正・お詫び文を掲載した(現在は削除)<ref>[https://www.sponichi.co.jp/entertainment/news/2012/05/16/kiji/K20120516003262880.html テレ朝「Qさま!!」がおわび 自閉症を「病気」と放送] スポニチ 2012年5月16日</ref>。
 
*[[一条ゆかり]]のマンガ
 
*:『ロマンチックください』(1990) には、内気な女子高生に対して校医が「これで登校拒否にでもなってだな そうなるとあのタイプだと自閉症になるよなあ きっと」(P.57) と評するセリフがあり、[[ひきこもり]]や[[うつ病]]との混同が見られる。
 
<!--
 
* 病態の理解*:
 
-->
 
 
=== 福祉制度 ===
 
日本では2005年に[[発達障害者支援法]]が施行されるなど、高機能自閉症患者に対する福祉の整備が進められている。“発達障害者福祉手帳”という障害者福祉手帳は存在しないので、低機能自閉症者に対しては[[知的障害者]]として[[療育手帳]]が、高機能自閉症者には[[精神障害者]]として[[精神障害者保健福祉手帳]]の取得が認められる。
 
 
低機能自閉症では「知的障害」、高機能自閉症では「精神障害」として[[障害年金]]の受給が認められる場合もある。高機能自閉症では、手帳(精神障害者福祉手帳)の等級は3級程度であり、就業が可能なら[[障害年金]]の受給は認められない。就業ができない、または難しい場合(理解ある良心的な職場に運よく就業することができたという場合)でも、3級の認定を受けていると、障害基礎年金の受給資格からは除外される。この除外の廃止は、今後の課題と言える。
 
 
高機能自閉症はほかの発達障害者と違って、療育手帳の普及率も高いという。障害者更生相談所ではB2程度の申請ができる。
 
 
低機能自閉症はB1程度が半数あまりを占めているが、状態がさらに酷ければA又はA2・A1程度の申請ができる。
 
 
== 関連人物 ==
 
* [[バーナード・リムランド]](アメリカ自閉症協会創立者)
 
* [[テンプル・グランディン]](アメリカの動物学者)
 
 
== 自閉症を題材とした作品 ==
 
{{See also|障害を扱った作品の一覧|実在する特定の病気を主題とした映画の一覧}}
 
 
;書籍
 
*[[星の国から孫ふたり]]
 
*[[妻を帽子とまちがえた男]]
 
*[[火星の人類学者]]
 
*イマ イキテル 自閉症兄弟の物語――知ろうとするより、感じてほしい
 
*僕ら星屑のダンス
 
 
;小説
 
*[[ぼくはうみがみたくなりました]]
 
*[[くらやみの速さはどれくらい]]
 
*[[レギュレイターズ]]
 
*[[フラッシュフォワード]]
 
 
;漫画
 
*[[光とともに…]]
 
*[[はだしの天使]]
 
*[[おなかまるだしこちゃん]]
 
*[[格闘探偵団]]
 
 
;映画
 
{{Columns-list|2|
 
*[[星の国から孫ふたり|星の国から孫ふたり〜「自閉症」児の贈りもの〜]]
 
*[[マラソン (映画)|マラソン]]
 
*[[レインマン]]
 
*[[テンプル・グランディン 自閉症とともに]]
 
*[[マーキュリー・ライジング]]
 
*[[モーツァルトとクジラ]]
 
*[[心の扉 (映画)|心の扉]]
 
*[[学校 (映画)|学校]]
 
*[[ブレス・ザ・チャイルド]]
 
*[[海洋天堂]]
 
*[[ぼくはうみがみたくなりました]]
 
*[[音符と昆布]]
 
*[[ニワトリはハダシだ]]
 
*[[親愛なるきみへ]]
 
*[[こわれゆく世界の中で]]
 
*[[彼女の名はサビーヌ]]
 
*[[アナザー・ハッピー・デイ ふぞろいな家族たち]]
 
*[[スウィート・ロード]]
 
*[[ザ・コンサルタント]]
 
}}
 
;テレビドラマ
 
{{Columns-list|2|
 
*[[君が教えてくれたこと]]
 
*[[マラソン (テレビドラマ)|マラソン]]
 
*[[光とともに…|光とともに…〜自閉症児を抱えて〜]]
 
*[[おふくろシリーズ]]
 
*[[天使が消えた街]]
 
*[[僕の歩く道]]
 
*[[抱きしめたい (2002年のテレビドラマ)|抱きしめたい]]
 
*[[Dr.倫太郎]]
 
*[[若草学園物語]]
 
*[[TOUCH/タッチ]]
 
*[[イレブンス・アワー (アメリカ合衆国のテレビドラマ)|イレブンス・アワー]]
 
*[[フラッシュフォワード]]
 
*[[グッド・ドクター]]
 
}}
 
 
;その他
 
*[[みてハッスルきいてハッスル]](NHK教育テレビの学校放送番組)
 
 
== 脚注 ==
 
{{脚注ヘルプ}}
 
=== 注釈 ===
 
{{Reflist|group="注釈"}}
 
  
=== 出典 ===
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従来からの呼称である'''自閉症'''(じへいしょう、{{lang-en|''Autism''}})、DSM-IVにおける診断名の'''自閉性障害'''(Autistic Disorder)
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== 参考文献 ==
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 幼児自閉症infantile autismまたは小児自閉症childhood autismともいう発達障害で、広範かつ重篤な全人格的発達障害pervasive developmental disorderの中核的存在とされる障害。出生からほとんど例外なく30か月以内にみいだされる症候群で、現時点ではまだ原因不明であるが、おそらくは生来性のハンディキャップによるものらしいというのが、現在国際的にほとんど一致した見解である。したがって、どのような意味でも生後に発病するものではない。
'''臨床ガイドライン'''
 
* {{Cite report|publisher=[[英国国立医療技術評価機構]] |title=CG128 - Autism diagnosis in children and young people: Recognition, referral and diagnosis of children and young people on the autism spectrum |url=http://www.nice.org.uk/guidance/cg128 |date=2011-07 |ref={{SfnRef|英国国立医療技術評価機構|2011}} }} - 児童青年における自閉症の診断
 
* {{Cite report|publisher=[[英国国立医療技術評価機構]] |title=CG170 - Autism: The management and support of children and young people on the autism spectrum |url=http://www.nice.org.uk/guidance/cg170 |date=2013-08 |ref={{SfnRef|英国国立医療技術評価機構|2013}} }} - 児童青年の自閉症スペクトラムの管理とサポート
 
* {{Cite report|publisher=[[英国国立医療技術評価機構]] |title=CG142 - Autism: recognition, referral, diagnosis and management of adults on the autism spectrum |url=http://www.nice.org.uk/guidance/cg142 |date=2012-06 |ref={{SfnRef|英国国立医療技術評価機構|2012}} }} - 自閉症スペクトラム成人の理解、紹介、診断、管理
 
  
'''その他'''
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 聴覚ならびに視覚刺激に対する反応は異常であり、通常、話されたことばの理解に重篤な困難がある。言語の発達はほとんど認められない場合もあれば、通常の場合より遅れることが多く、発達する場合でも反響言語(おうむ返し)やそれに基づく代名詞の反転(あなたと私が逆になったりする)、未熟な文法的構文および抽象語を用いることの稚拙(ときに不能)などによって特徴づけられる。ほかの障害児では、たとえば、ことばによるコミュニケーションが障害されている場合にはなにか他の方法(身ぶりなど)でコミュニケートしようとする努力が認められるが、自閉症児の場合にはそういうことを行おうとするところに大きな障害があって、できないわけである。こうした人間関係の障害は5歳以下の場合もっとも重篤であり、それには、まなざしをあわせること、社会的な触れ合い、および他児(他人)との共同の遊びなどを行う発達が妨げられることも含まれる。また奇妙な儀式的なふるまいがよくみられ、それには異常な一定のパターン、変化に対する抵抗、奇妙な物体や生物などに対する愛情、恐れや遊びの常同的パターンなどが含まれる。
* {{Cite |和書|title=自閉症スペクトラム入門 脳・心理から教育・治療までの最新知識 |date=2011-08 |author=[[サイモン・バロン=コーエン]] |isbn=978-4805835234 |ref=harv}}
 
  
== 関連項目 ==
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 抽象的または象徴的思考や想像的遊びの能力は低い。知能は著しい低格から正常またはそれ以上の限られた面の優秀さを示すことがあるが、平均すると水準以下に機能している。また行動は通常、単純記憶や視覚空間的技能を要するもののほうが、象徴的ないし言語的技能を要するものよりも優れているし、この傾向は前述の知能についてもいえる。
=== 機能 ===
 
* [[遺伝子疾患]]
 
* [[定型発達]]
 
* [[心の理論]]
 
  
=== 支援 ===
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 原因はまだ不明であるが、おそらくは脳に器質的ななにかがあるに違いないという考え方に変わってきている。頻度はだいたい児童人口1万に対して3人か4人といわれていたが、自閉症概念の変化とともに若干大きい数字になっていると考えてよい。男女比は4対1、場合によっては10対1で断然男に多い。
* [[日本自閉症協会]]
 
* [[日本発達障害ネットワーク]]
 
* [[アメリカ自閉症協会]]
 
* [[特別支援教育]] / [[特別支援学校]] / [[特別支援学級]] / [[つぼみ学級]]
 
* [[養護教諭]] / [[スクールカウンセラー]]
 
* [[ジョブコーチ]]
 
* [[ファシリテイテッド・コミュニケーション]](FC法)- [[グレン・ドーマン]]によって考案され自閉症児などに有効な学習及び介護法とされたが、盲検法を用いた実験にて自閉症児は介護者からの誘導で回答を得ていた事が実証され、FC法は役に立たないか無意味という結果が出た。[[奇跡の詩人]]も参照。
 
* [[世界自閉症啓発デー]] (4月2日)
 
  
=== 医学 ===
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 治療としては、行動療法を軸とした治療教育が現在ではもっとも効率の高い治療と考えられている。従来の精神分析学的方向づけをもつ精神療法は、少なくとも第一の選択ではなくなった。薬物療法は現在研究段階であり、なにかが発見されたとしても、それが原因療法になるか、便宜的な対症療法であるかについては、臨床的にも慎重な検討を必要とする。
* [[小児科学]] - [[精神医学]]/[[児童精神医学]] - [[神経学]]
 
* [[精神科医]]
 
* [[小児科医]]
 
* [[臨床心理士]]
 
  
== 外部リンク ==
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 将来への見通しについては、約15%内外の子がほとんど独立の生産的生活をすることができるようになるが、25%くらいはだれか保護者の介助を得てわずかながらでも半独立の方向に向かえばよしとしなければならないであろう。残りの60%内外は精神科病院児童病棟、または特殊な施設の長期患者としてとどまることになろう。だいたい5歳までに周囲の人とコミュニケーションの役を果たせることばが出た子や、知能水準の平均が高い子は、見通しが明るい、すなわち予後はよいといわれている。
* [http://www.autism.or.jp/ 社団法人 日本自閉症協会]
 
* [http://www.rehab.go.jp/ddis/ 発達障害情報センター](厚生労働省)
 
* [http://www.rehab.go.jp/ddis/ 発達障害教育情報センター](文部科学省)
 
* {{政府インターネットテレビ|3288|「自閉症」を知ってください|2010-04-01|8分47秒}}
 
* [http://jiheishoall.jp/ 自閉症全書] - 有限会社みのり
 
* [http://www.autism-society.org/ アメリカ自閉症協会]
 
* [http://www.nas.org.uk/ イギリス自閉症協会]
 
* {{脳科学辞典|自閉症障害}}
 
* {{脳科学辞典|ニューロリギン|nolink=yes}} 一部の症例で変異が見つかっているタンパク質についてかの解説。
 
* {{脳科学辞典|Shank|nolink=yes}} 一部の症例で変異が見つかっているタンパク質についてかの解説。
 
* {{Mpedia|英語版記事名=Autism|英語版タイトル=Autism}}
 
* {{Mpedia|英語版記事名=Autism_Spectrum_Disorders|英語版タイトル=Autism Spectrum Disorders|同Medpediaより。「自閉症スペクトラム」について}}
 
  
{{広汎性発達障害}}
 
  
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{{テンプレート:20180815sk}}
 
{{DEFAULTSORT:しへいしよう}}
 
{{DEFAULTSORT:しへいしよう}}
 
[[Category:自閉症|*]]
 
[[Category:自閉症|*]]
 
[[Category:精神医学的診断]]
 
[[Category:精神医学的診断]]

2018/11/13/ (火) 01:23時点における最新版


従来からの呼称である自閉症(じへいしょう、英語: Autism)、DSM-IVにおける診断名の自閉性障害(Autistic Disorder)

 幼児自閉症infantile autismまたは小児自閉症childhood autismともいう発達障害で、広範かつ重篤な全人格的発達障害pervasive developmental disorderの中核的存在とされる障害。出生からほとんど例外なく30か月以内にみいだされる症候群で、現時点ではまだ原因不明であるが、おそらくは生来性のハンディキャップによるものらしいというのが、現在国際的にほとんど一致した見解である。したがって、どのような意味でも生後に発病するものではない。

 聴覚ならびに視覚刺激に対する反応は異常であり、通常、話されたことばの理解に重篤な困難がある。言語の発達はほとんど認められない場合もあれば、通常の場合より遅れることが多く、発達する場合でも反響言語(おうむ返し)やそれに基づく代名詞の反転(あなたと私が逆になったりする)、未熟な文法的構文および抽象語を用いることの稚拙(ときに不能)などによって特徴づけられる。ほかの障害児では、たとえば、ことばによるコミュニケーションが障害されている場合にはなにか他の方法(身ぶりなど)でコミュニケートしようとする努力が認められるが、自閉症児の場合にはそういうことを行おうとするところに大きな障害があって、できないわけである。こうした人間関係の障害は5歳以下の場合もっとも重篤であり、それには、まなざしをあわせること、社会的な触れ合い、および他児(他人)との共同の遊びなどを行う発達が妨げられることも含まれる。また奇妙な儀式的なふるまいがよくみられ、それには異常な一定のパターン、変化に対する抵抗、奇妙な物体や生物などに対する愛情、恐れや遊びの常同的パターンなどが含まれる。

 抽象的または象徴的思考や想像的遊びの能力は低い。知能は著しい低格から正常またはそれ以上の限られた面の優秀さを示すことがあるが、平均すると水準以下に機能している。また行動は通常、単純記憶や視覚空間的技能を要するもののほうが、象徴的ないし言語的技能を要するものよりも優れているし、この傾向は前述の知能についてもいえる。

 原因はまだ不明であるが、おそらくは脳に器質的ななにかがあるに違いないという考え方に変わってきている。頻度はだいたい児童人口1万に対して3人か4人といわれていたが、自閉症概念の変化とともに若干大きい数字になっていると考えてよい。男女比は4対1、場合によっては10対1で断然男に多い。

 治療としては、行動療法を軸とした治療教育が現在ではもっとも効率の高い治療と考えられている。従来の精神分析学的方向づけをもつ精神療法は、少なくとも第一の選択ではなくなった。薬物療法は現在研究段階であり、なにかが発見されたとしても、それが原因療法になるか、便宜的な対症療法であるかについては、臨床的にも慎重な検討を必要とする。

 将来への見通しについては、約15%内外の子がほとんど独立の生産的生活をすることができるようになるが、25%くらいはだれか保護者の介助を得てわずかながらでも半独立の方向に向かえばよしとしなければならないであろう。残りの60%内外は精神科病院児童病棟、または特殊な施設の長期患者としてとどまることになろう。だいたい5歳までに周囲の人とコミュニケーションの役を果たせることばが出た子や、知能水準の平均が高い子は、見通しが明るい、すなわち予後はよいといわれている。




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